(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、一度容器に貯めた水道水をフィルターでろ過し、得られた浄水を貯水する浄水器が知られている。
図11に、特許文献1に提案されている浄水器を示す。浄水器101は、ろ過前の原水である水道水を貯留する原水容器であるロート(以降、「原水容器」)112、ろ材を収納しているカートリッジ(以降、「フィルターカートリッジ」)102、及び原水容器112とフィルターカートリッジ102を収容すると共にろ過された水道水である浄水を貯留する浄水容器111を含む。フィルターカートリッジ102は、原水容器112の底部のほぼ中央部に、フィルターカートリッジ102の上部(以降、「カートリッジ上部」)102t及び下部(以降、「カートリッジ下部」)102bがそれぞれ原水容器112の内部及び外部に位置するように、着脱自在に装着されている。
【0003】
なお、浄水容器111は、原水容器112とカートリッジ上部102tとを収容する原水収容部111tと、カートリッジ下部102bを収容すると共に浄水を貯留する浄水収容部111bとが一体的に構成されている。原水容器112に注ぎ込まれた水道水は原水容器112で貯留されると同時に、カートリッジ上部102t及びカートリッジ下部102bを経て、フィルターカートリッジ102でろ過されて浄水収容部111bに貯留される。最終的に、原水容器112に注がれた水道水のほぼ同量の浄水が浄水収容部111bで貯留される。
【0004】
浄水器101において、フィルターカートリッジ102を取り付けた状態で、原水容器112の貯留容積と浄水容器111の貯留容積とは、ほぼ同一になるように構成されることが好ましい。つまり、注ぎ込まれた水道水は原水容器112で貯留されると同時にフィルターカートリッジ102でろ過されるので、原水容器112を一杯にしたときに浄水容器111に落ちる分だけ原水容器112の貯留容積の方が小さめに設定される。これにより、原水容器112に、その貯留容積まで水道水を注げば、以降は少ない回数の水道水の繰り返し(継ぎ足し)注水によって、浄水収容部111bを浄水で一杯にすることができる。
【0005】
つまり、原水のろ過貯留に必要とされる貯留容積(フィルターカートリッジ102を取り付けた状態での原水容器112の貯留容積と浄水収容部111bの貯留容積の和)の半分(浄水収容部111bの貯留容積)しか、浄水の貯留に利用できない。浄水器のコンパクト化の観点から見れば、原水収容部111tは原水のろ過後は不要なものであり、いわば無用の長物とも言える存在である。特に、浄水を浄水器ごと、冷蔵庫内で保管する場合には、原水容器112やフィルターカートリッジ102などの浄水貯留に不必要な部材は冷蔵庫内の収容空間を無駄に消費することになる。
【0006】
冷蔵庫内の収納効率向上のために、原水収容部111tと原水容器112とを浄水収容部111bに着脱自在に構成して、水道水をろ過する時にのみ浄水器101(浄水収容部111b)に取り付けることが考えられる。この場合、冷蔵庫内の収容空間の利用効率は改善されるが、ろ過後に浄水器101から取り外された原水収容部111t及び原水容器112を浄水器101とは別に保管する保管場所が新たに必要とされる。
【0007】
図12に、特許文献2に提案されている浄水器を示す。浄水器201は、原水容器212、フィルターカートリッジ202、及び原水容器212とフィルターカートリッジ202を収容すると共にろ過された水道水である浄水を貯留する浄水容器211を含む。原水容器212は、側壁が蛇腹状で伸縮する原水貯水槽212bと、底部のほぼ中央に開口が設けられた原水容器212cとを含む。原水貯水槽212bの側壁の下端は、原水容器212cの底部の周辺部に液密に接合されている。フィルターカートリッジ202は、原水容器212c(原水容器212)の底部のほぼ中央部に、カートリッジ上部202t及びカートリッジ下部202bがそれぞれ原水容器212の内部及び外部に位置するように、着脱自在に装着されている。
【0008】
なお、浄水容器211は、原水容器212とカートリッジ上部202tとを収容する原水収容部211tと、カートリッジ下部202bを収容すると共に浄水を貯留する浄水収容部211bとが一体的に構成されている。原水貯水槽212bの蛇腹状側壁は通常折りたたまれて、原水貯水槽212bは原水容器212cの内部に収納されている。そして、ろ過時には、蛇腹状側壁が引き延ばされる。これにより、原水貯水槽212bの貯留容積が浄水収容部211bの貯留容積に近づく。
【0009】
よって、蛇腹状側壁が引き延ばされた状態の原水貯水槽212bに、その貯留容積まで水道水を注げば、以降は少ない回数の継ぎ足し注水で、浄水収容部211bを浄水で一杯にすることができる。そして、ろ過完了後には、蛇腹状側壁を畳んで原水貯水槽212bを原水容器212cの内部に収納させることにより、浄水器201の体積をろ過時に比べて小さくできる。つまり、浄水器201においては、ろ過に必要とされる原水貯水槽212bの体積(容積)を、ろ過時の前後で増減させることにより、原水収容部211t或いは原水容器212の保管場所を新たに必要とせずに、浄水保管に必要とされる冷蔵庫内の収容効率の向上を実現している。
【0010】
しかしながら、同浄水器201においては、繰り返し伸縮によって、原水貯水槽212bの蛇腹状側壁が劣化損傷して、原水のろ過時に問題が生じる。たとえば、伸ばした蛇腹状側壁が自重で縮んだり切れたりして、水道水が原水容器212(原水貯水槽212bや原水容器212c)からあふれたり漏れ出したりする。いずれの場合も、原水のろ過に支障を来すと共に、原水がろ過後の浄水に混入したり、浄水器201の外部に流出して周囲をぬらしたりする。また、伸縮性の蛇腹状側壁は洗浄しにくいという問題点も有している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る浄水器について説明する。
図1に示すように、浄水器1Aは、上部にろ過前の原水である水道水を貯留する原水容器12と、原水容器12の一部とフィルターカートリッジ2とを収容すると共にろ過された水道水(浄水)を貯留する浄水容器11とを備えている。そして、原水容器12の底部に、ろ材を収納しているフィルターカートリッジ2が交換可能に取り付けられている。
【0019】
原水容器12は、第1の構成部材である原水容器下部12bと第2の構成部材である原水容器側周部12sとを含む。原水容器下部12bは浅鍋(パン)状に形成されて、浄水容器11の内部に固定されている。原水容器側周部12sは、原水容器側周本体部12sbと原水容器側周拡張部12ssとを含む。原水容器側周本体部12sbは、原水容器下部12bの外形と概ね相似形である内形を有する筒状に形成されており、その内周壁が原水容器下部12bの外周壁に対して概ね平行な方向(
図1において、Dv)に、上下に移動可能に形成されている。原水容器側周拡張部12ssは、原水容器側周本体部12sbの下端の一部から概ね棒状に延在している。原水容器下部12bはその外周壁に、原水容器側周部12sの内周壁に対して摺動する面を有する。
【0020】
原水容器側周部12sを上下に動かして、原水容器側周部12s(原水容器側周本体部12sb)を上下2カ所の位置(以降、上位置及び下位置)の何れかで原水容器下部12bに係止させることによって、原水容器12の容積が変更可能である。なお、
図1においては、原水容器側周部12sは上位置に在る。下位置に関しては、後ほど
図3を参照して説明する。
【0021】
浄水容器11は、原水容器下部12bを保持すると共に、原水容器下部12bを収容する原水容器下部収容部11fと、浄水を貯留する浄水収容部11bとが一体的に構成されている。原水容器下部収容部11fには、所定の大きさを有する出水口H11fが設けられている。そして出水口H11fの外周面には、出水口H11fの周囲に接続周壁W11が設けられている。浄水収容部11bには、その表面に把持しやすいように凹みや表面を荒らすなど処理が施されたグリップ部GRPが設けられている。
【0022】
原水容器側周拡張部12ssには、浄水収容部11bに設けられた出水穴H11tに対応した入水口H12ssが設けられている。入水口H12ssは好ましくは出水穴H11tと同じ大きさに形成される。なお、原水容器側周部12sが上位置に在るときに、入水口H12ssが出水穴H11tと概ね同心であると共に、入水口H12ssの周囲と接続周壁W11とがパッキングPK11によって液密に接続されるように構成されている。これにより、浄水容器11(浄水収容部11b)内に貯留されている浄水は、浄水器1Aを原水容器側周拡張部12ss側(
図1においては、左側)に傾けることにより、出水穴H11t、接続周壁W11、及び入水口H12ssを介して、原水容器側周拡張部12ssの先端部に設けられている注ぎ口Sから外部に供給することができる。
【0023】
次に、
図2を参照して、上下2カ所における原水容器側周部12sと原水容器下部12bとの係止について説明する。原水容器側周本体部12sbの上端部近くの内周壁から垂直方向(中心方向)に、向かって延在する爪CL12sbが設けられている。また、原水容器側周本体部12sbの下端部の内周壁には、原水容器下部12bの外周部に設けられ、ブロック状の外周壁OW12bの外形に対応した形状の座部R12sbが設けられている。
【0024】
原水容器側周部12sがDv方向に引き上げられた上位置(
図1)において、座部R12sbが原水容器下部12bの外周壁OW12bと液密に係止される。この時、座部R12sbから上端までの部分が原水貯留に利用できるので、原水容器12の容積は最大になる。この状態で、浄水器1Aは原水のろ過に用いられる。なお、座部R12sbと外周壁OW12bと液密係止については、後ほど
図7を参照して説明する。
【0025】
図3に、原水容器側周部12sが下位置に在る状態の浄水器1Aを示す。原水のろ過完了後に原水容器側周部12sが上位置からDv方向に引き下げられると、座部R12sbと外周壁OW12b及び注ぎ口Sと接続周壁W11との係止が解かれる。そして、爪CL12sbの下面が外周壁OW12bの上面に当接して、原水容器側周部12sが下位置で保持される。この時、爪CL12sbが原水容器側周本体部12sbに当接している部分より下の部分、つまり原水容器下部12bの容積しか原水貯留に利用できないので、原水容器12の容積は最小になる。原水容器側周部12sがその内部に浄水容器11の少なくとも一部を収容するので、浄水器1Aの冷蔵庫内の収容効率を改善できる。なお、ろ過完了後或いは浄水の保管時に、浄水が外部に漏れ出さないように、一度に貯留された原水のろ過後の浄水の水位が出水穴H11tより下部になるように、原水容器12及び浄水収容部11bの容積が設定されることが好ましい。
【0026】
次に、
図4を参照して、座部R12sbと外周壁OW12bとの係止について述べる。なお、
図4においては、視認性を考慮して、原水容器側周拡張部12ssの無い部分、つまり
図2において円C1で囲まれた部分を拡大して示している。
【0027】
図4(a)に示す例では、ブロック状に形成された外周壁OW12bの外周側中央に溝(凹部)Grが全周に渡って形成されている。溝Grの断面形状より大きな断面形状を有するリング状のパッキングPK11が、溝Grに装着されている。なお、座部R12sbは、外周壁OW12bの下面及び外周面にそれぞれ対応する水平部Mh及び垂直部Mvとで規定されるL字状断面形状を有している。よって、原水容器側周部12sを下位置から引き上げると、外周壁OW12bの下面が座部R12sbの水平部分に当接して停止する。この時、リング状のパッキングPK11は、座部R12sbの内周面と外周壁OW12bの溝Grとの間で、浄水器1Aの径方向(中心側)に押しつぶされることによって、原水容器下部12bと原水容器側周本体部12sbとを液密に接続する。
【0028】
図4(b)に示す例では、外周壁OW12bには溝Grは設けられずに、座部R12sbの垂直部Mvの内周面に全周に渡って形成されている点を除いて、
図4(a)に示したのと同様である。つまり本例においても、パッキングPK11が、外周壁OW12bの外周面と座部R12sbの溝Grとの間で、浄水器1Aの径方向(中心側)に押しつぶされることによって、原水容器下部12bと原水容器側周本体部12sbとは径方向に液密に接続される。
【0029】
図4(c)に示す例では、リング状のパッキングPK11は、ブロック状に形成された外周壁OW12bの下面に配されている。さらに、垂直部Mvの内周面上で、座部R12sbの水平部Mhの上面から高さHcの位置に、係止用爪CL2が設けられている。外周壁OW12bの高さをHb、パッキングPK11のつぶされる前の太さをTとすると、次式(1)で表される関係がある。
Hb+T>Hc ・・・・ (1)
【0030】
このように構成することによって、原水容器側周部12sを引き上げる過程で、外周壁OW12bは係止用爪CL2に上方から接近して、パッキングPK11をDv方向に押しつぶしながら係止用爪CL2を乗り越える。その後手を離すと、押しつぶされたパッキングPK11は元の形状に戻ろうとする復元力によって押し戻されて、係止用爪CL2に押しつけられる。結果、原水容器下部12bと原水容器側周本体部12sbとはパッキングPK11によってDv方向に液密に接続される。
【0031】
図4(d)に示す例では、パッキングPK11が水平部Mhの上面に配されている点を除いて、
図4(c)に示したのと同様である。つまり本例においても、パッキングPK11が、外周壁OW12bの下面と水平部Mhの上面との間で、Dv方向に押しつぶされることによって、原水容器下部12bと原水容器側周本体部12sbとはDv方向に液密に接続される。
【0032】
(実施の形態2)
図5を参照して、本発明の実施の形態2に係る浄水器について説明する。
図5に示すように、本実施の形態に係る浄水器1Bは、浄水容器11及び原水容器12が、浄水容器11’及び原水容器12’に置き換えられている点を除いて、上述の浄水器1Aと同様に構成されている。なお、浄水容器11’は、出水口H11f’及び浄水収容部11b’が一体的に構成されている。原水容器12’は原水容器側周部12s’と原水容器下部12bを含む。以降、浄水器1Aと比較しながら、主に浄水器1Bの特徴について具体的に説明する。
【0033】
浄水器1Bにおいて、浄水収容部11b’に設けられている注ぎ口Sは、浄水収容部11b’ではなく出水口H11f’に設けられている。これを受けて、原水容器側周部12s’は、原水容器側周部12sに於ける原水容器側周拡張部12ssが廃止されて、基本的には原水容器側周本体部12sbに相当する構成となっている。そして、浄水収容部11b’は底部近くに、外周から垂直に係止用爪CL11b’が設けられている。係止用爪CL11b’は、下げられた原水容器側周部12s’の下端部を受け止め係止する手段である。
【0034】
よって、浄水器1Bにおける下位置は、原水容器側周部12s’の下端が係止用爪CL11b’に当接する位置であり、この時原水容器側周部12s’の上端部は概ね浄水収容部11b’の周囲に在って注ぎ口Sが露出されている。このために、原水容器側周部12s’には、原水容器側周部12sの上端部に設けられている爪CL12sbが廃止されている。この状態で、浄水器1Bから浄水を注ぎだすために、グリップ部GRPは原水容器下部収容部11f’に設けられている。
【0035】
上述のように、浄水器1Aにおいては、原水容器12が上位置に在るろ過(非収納)時状態で浄水を注ぎ出すことができる。これに対して、本実施の形態に係る浄水器1Bにおいては、原水容器12’が下位置に在る非ろ過(収納)時状態で浄水を注ぎ出すことができる。
【0036】
(実施の形態3)
図6、
図7、及び
図8を参照して、本発明の実施の形態3に係る浄水器について説明する。
図6に示すように、本実施の形態に係る浄水器1Cは、浄水器1Aにおいて原水容器下部12b、原水容器側周本体部12sb、及び原水容器下部収容部11fが、原水容器下部12b’、原水容器側周本体部12sb’及び原水容器下部収容部11f’に置き換えられている。この変更を反映して、原水容器12、原水容器側周部12s、及び浄水容器11をそれぞれ、原水容器12”、原水容器側周部12s”、及び浄水容器11”と呼んで識別する。主に浄水器1Cの特徴について具体的に説明する。
【0037】
蓋Lは、原水容器側周本体部12sb’の上に載置されて、原水容器側周本体部12sb’の開口を覆う形状の天板部Ptと、天板部Ptの周囲から垂直にDv方向に延在するリム状の周壁Wcと、天板部Pt上に設けられた取手Hとを含む。周壁Wcの先端部には、原水容器側周本体部12sb’の先端部に設けられている係止用爪CL12sb’と係止可能な係止用爪CLLが設けられている。これについては、後ほど、
図7を参照して説明する。
【0038】
浄水器1Cにおいては、係止用爪CLLと係止用爪CL12sb’とを係止させた状態(
図7において、円C2で囲まれた部分)で、取手HをDv方向に引き上げることにより、下位置に在る原水容器側周部12s”を上位置まで容易に移動させることができる。ただし、取手Hを用いることにより、浄水器1A及び1Bに於けるよりも、大きな力で原水容器側周部12s”(原水容器側周本体部12sb’)を引きあげることができるので、原水容器下部収容部11f’の上端部に、係止用爪CL11f’(
図8)が設けられている。係止用爪CL11f’が係止用爪CL12b’に当接する(
図6において円C3で囲まれた部分)ことにより、原水容器下部12b’が浄水容器11”(原水容器下部収容部11f’)から外れないように構成されている。これについては、後ほど
図8を参照して説明する。
【0039】
図7を参照して、上述の
図6において、係止用爪CLLと係止用爪CL12sb’と係止構造について述べる。
図7(a)に示す例では、周壁Wcの内周から中心(径方向)に向かって係止用爪CLLが延在すると共に、係止用爪CL12sb’の先端部の外周から中心から離れる(周壁Wcに近づく)方向に延在している。
【0040】
天板部Ptの下面から係止用爪CLL上面までの距離をHLとし、原水容器側周本体部12sb’の上面から係止用爪CL12sb’までの距離をHsb’とし、係止用爪CL12sb’のDv方向(
図6)の厚みをTsb’とすると、次式(2)で表わされる関係がある。
Hsb’+Tsb’<HL ・・・・ (2)
【0041】
このように構成することによって、蓋Lを原水容器12”(係止用爪CL12sb’)に装着するには、係止用爪CLLを係止用爪CL12sb’に載置した状態で、蓋L(天板部Pt)をDv方向に押しつけると、係止用爪CLLが係止用爪CL12sb’に当接する。さらに押しつけると、係止用爪CLLが係止用爪CL12sb’を乗り越えた時点で、蓋Lの原水容器12”(係止用爪CL12sb’)への装着が完了する。この状態で、取手HをDv方向に引きあげると、係止用爪CL12sb’が係止用爪CLLに引かれて、原水容器12”がついて上がる。原水容器12”が上位置に到達した以降、さらに取手Hを引き上げると、係止用爪CLLが係止用爪CL12sb’を乗り越えて係止が解かれる。係止手段としては、このような係止用爪以外に、バヨネット構造やねじなども有効である。さらに、
図7(b)に例示するように、互いに嵌合し合える凸部Pcllと凹部Rcll2sb’を組み合わせる構成にしてもよい。
【0042】
図8を参照して、上述の
図6における係止用爪CL11f’と係止用爪CL12b’との係止構造(
図6において円C3で囲まれた部分)について述べる。本例においては、原水容器下部12b’は、外周壁OW12bの下部から外側(原水容器下部収容部11f’)に向かって延在する係止用爪CL12b’が設けられている。原水容器下部収容部11f’の上端部にも、内側(係止用爪CL12b’)に向かって延在する係止用爪CL11f’が設けられている。さらに、
図4(c)を参照して上述したように、座部R12sbの垂直部Mvの内周面上で、水平部Mhの上面から高さHcの位置に、係止用爪CL2が設けられている。浄水器1Cにおいては、原水容器側周本体部12sb’の係止用爪CL2と座部R12sbとの間に係止された原水容器下部12b’(
図6)の外周壁OW12bと、係止用爪CL12b’との間に、係止用爪CL11f’が嵌まりこんだ状態で、原水容器側周本体部12sb’は、原水容器下部収容部11f’(浄水容器11”)に保持されている。なお、このような係止爪構造の代わりに、螺子やバヨネットを用いても良い。ただし、円筒形である必要がある。
【0043】
取手HをDv方向に引きあげた時に、係止用爪CLLが係止用爪CL12sb’を乗り越えるのに要する力を抵抗F1とし、外周壁OW12bが係止用爪CL2を乗り越えるに要する力を抵抗F2とし、座部R12sbが外周壁OW12bの下端部を乗り越えるのに要する力を抵抗F3とすると、次式(3)で表す関係がある。
F3>F1>F2 ・・・・ (3)
【0044】
(実施の形態4)
図9及び
図10を参照して、本発明の実施の形態4に係る浄水器について説明する。本実施の形態に係る浄水器1Dは、上述の実施の形態1に係る浄水器1Aにおいて原水容器12が原水容器12dに置き換えられている。以降、主に原水容器12dについて説明する。
【0045】
原水容器12dは、第1の構成部材である原水容器下部12bと、第2の構成部材である原水容器側周部12sdとを含む。原水容器側周部12sdは、原水容器側周部本体12mと、原水容器側周部拡張ユニット12uとを含む。原水容器側周部本体12mは、上述の原水容器12(浄水器1A)の原水容器側周部12sの外周上端部に、環状突起Peが一体的に形成されている。環状突起Peは、原水容器12dの径方向に所定の長さRe、Dv方向に所定の長さHeだけ延在している。原水容器側周部本体12mは、上述の原水容器側周部12s(
図2、
図3)と同様に、原水容器下部12bに対してDv方向に上下に移動可能に形成されている。
【0046】
浄水器1Dは、浄水器1Aが原水容器側周部12sの位置を変更(上下)させることによりろ過時状態と非ろ過時状態とで原水容器12の容積を変更できるのと同様に、原水容器側周部本体12mの位置を変更(上下)させることにより、原水容器12dの容積を変更できる。但し、原水容器12(浄水器1A)の容積の変化が1段階であるのに対して、原水容器12dの容積の変化は多段階(本実施の形態においては、2段階)である点が異なる。
【0047】
原水容器側周部拡張ユニット12uは、原水容器側周部本体12mの環状突起Peの外形と概ね相似形である内形を有する筒状に形成されている。原水容器側周部拡張ユニット12uは、その内周壁が原水容器側周部本体12mの環状突起Peの外周壁に対して概ね平行な方向(
図9において、Dv方向)に、上下に移動可能に形成されている。
【0048】
原水容器側周部拡張ユニット12uの上端部の内周壁から垂直方向(中心方向)に向かって延在する爪CL3bが設けられている。原水容器側周部拡張ユニット12uの下端部近傍の内周面には、係止用爪CL3が設けられている。原水容器側周部拡張ユニット12uの周壁において、係止用爪CL3の下端から所定の距離だけ下側の位置に、原水容器側周部本体12mの周壁に対してほぼ垂直な方向に、且つ原水容器側周部本体12mの周壁の手前までストッパUsが挿入されている。
【0049】
原水容器側周部拡張ユニット12uの内周壁の下端部には、好ましくはその下端がストッパUsの上に位置するように溝(凹部)Gr3が全周に渡って形成されている。溝Gr3の断面形状より大きな断面形状を有するリング状のパッキングPK3が、溝Gr3に装着されている。ストッパUsとしては、ピン状の形状を有する部材を用いることができる。なお、ストッパUsの原水容器側周部拡張ユニット12uの周壁に対する取り付けは、当該周壁にストッパUsを圧入することにより行ってもよい。また、ストッパUsは3個以上設けてもよい。
【0050】
係止用爪CL3の下端と、ストッパUsの上端との間の距離をHsとすると、次式(4)で表される関係がある。
He≦Hs ・・・・ (4)
【0051】
原水容器側周部拡張ユニット12uの内周壁において、この距離Hsに対応する領域を係止領域Arと呼ぶ。係止領域Arについては、後ほど
図10を参照して説明する。
【0052】
原水容器側周部拡張ユニット12uを原水容器側周部本体12mに対して上下に動かして、上下2カ所の位置(以降、上位置及び下位置)の何れかで原水容器側周部本体12mに係止させることによって、原水容器12dの容積を変更することが可能である。
図9においては、原水容器側周部拡張ユニット12uは下位置に在る。上位置に関しては、後ほど
図10を参照して説明する。
【0053】
次に、原水容器側周部本体12m、原水容器側周部拡張ユニット12uの爪CL3b、係止用爪CL3、パッキングPK3、及びストッパUsの寸法関係について説明する。これには、下記式(5)〜(8)で表される関係がある。
【0054】
原水容器側周部本体12mの上端部の外径Do(12m)、及び原水容器側周部拡張ユニット12uの上端部の内径D(CL3b)は、次式(5)を満たす。
Do(12m)>D(CL3b) ・・・・ (5)
【0055】
原水容器側周部拡張ユニット12uの内径(係止用爪CL3及びCL3間の距離)D(CL3)及びDo(12m)は、次式(6)を満たす。
Do(12m)>D(CL3) ・・・・ (6)
【0056】
リング状のパッキングPK3のつぶされる前の内径Di(PK3)、及びDo(12m)は、次式(7)を満たす。
Do(12m)>Di(PK3) ・・・・ (7)
【0057】
2個のストッパUsの、互いに対向する内側壁間の距離D(Us)、及びDo(12m)は、次式(8)を満たす。
Do(12m)>D(Us) ・・・・ (8)
【0058】
次に、原水容器12dにおける原水容器側周部拡張ユニット12uと原水容器側周部本体12mとの係止における、各部品の役割について説明する。まず、
図9を参照して、原水容器側周部拡張ユニット12uが下位置に在るときの、原水容器側周部拡張ユニット12uと原水容器側周部本体12mとの係止について説明する。
図9において、原水容器側周部拡張ユニット12uの爪CL3bの下面が、原水容器側周部本体12mの環状突起Peの上面に当接している。爪CL3bが環状突起Peに当接すると、上述したように原水容器側周部拡張ユニット12uの上端部の内径D(CL3b)は、原水容器側周部本体12mの上端部の外径Do(12m)より小さい(式(5))ため、原水容器側周部拡張ユニット12uは原水容器側周部本体12mに係止されて、原水容器側周部本体12mから外れることはない。
【0059】
原水容器12dは
図9に示す状態において、原水容器下部12bから原水容器側周部本体12mの上端までの部分のみが原水貯留に供される。つまり、浄水器1Dのろ過時状態において、原水容器12dの容積は最小になる。なお、浄水器1Dの非ろ過時(原水容器側周部12sdを引き下げた)状態の容積は、原水容器下部12bの容積となることは上述の通りである。
【0060】
次に
図10を参照して、原水容器側周部拡張ユニット12uが上位置に在るときの、原水容器側周部拡張ユニット12uと原水容器側周部本体12mとの係止における各部品の役割について説明する。原水容器側周部拡張ユニット12uがDv方向に引き上げられた上位置において、原水容器側周部拡張ユニット12uの係止領域Ar(
図9)が原水容器側周部本体12mの環状突起Peの外周壁と液密に係止される。上述したように係止用爪CL3及びCL3間の距離D(CL3)は、原水容器側周部本体12mの上端部の外径Do(12m)より小さい(式(6))ため、係止用爪CL3の下面が環状突起Peの上面に当接することにより、原水容器側周部拡張ユニット12uは原水容器側周部本体12mに係止される。
【0061】
次に、原水容器側周部拡張ユニット12uを下位置(
図9)から上位置(
図10)に向かって引き上げる際の各部品の動作と役割について説明する。原水容器側周部拡張ユニット12uを下位置(
図9)から上位置(
図10)に向かって引き上げる際に、原水容器側周部拡張ユニット12uは、その内周壁が環状突起Peの外周壁に対して摺動しながら上方へ移動される。移動の過程で、係止用爪CL3は環状突起Peに下方から接近して当接し、環状突起Peを乗り越える。その際パッキングPK3は、環状突起Peの外周壁により、Dv方向と直交する方向(径方向)に押しつぶされる。その後、ストッパUsの上面が環状突起Peの下面に当接すると、原水容器側周部拡張ユニット12uの上方への移動は阻止されて、原水容器側周部拡張ユニット12uは停止する。つまり、ストッパUsにより、原水容器側周部拡張ユニット12uが原水容器側周部本体12mから外れてしまうことが防止される。
【0062】
原水容器側周部拡張ユニット12uが上位置に位置決めされた状態で、リング状のパッキングPK3は、環状突起Peの外周壁と原水容器側周部拡張ユニット12uの溝Gr3との間で、浄水器1Dの径方向(中心側)に押しつぶされる。押しつぶされたパッキングPK3は元の形状に戻ろうとする復元力によって押し戻されて、環状突起Peの外周壁に押しつけられる。結果、原水容器側周部本体12mと原水容器側周部拡張ユニット12uとはパッキングPK3によって液密に接続される。
【0063】
原水容器12dは
図10に示す状態において、原水容器下部12bから原水容器側周部拡張ユニット12uの上端までの部分が原水貯留に供される。つまり、浄水器1Dのろ過時状態において、原水容器12dの容積は最大になる。
【0064】
上述の構成を有する原水容器12dを用いることによって、浄水器の体積に占める原水容器の体積の割合を小さくできる。特に、非ろ過時状態の浄水器1Dにおいて原水容器側周部本体12mが原水容器下部12bに対して下位置(
図3)に在る時の、浄水器の体積に対する原水容器の体積の割合が小さくでき、冷蔵庫内の収容効率を改善できる。
【0065】
なお、原水容器12dは1個の原水容器側周部拡張ユニット12uを備えているが、複数個の原水容器側周部拡張ユニット12uを備えるように構成してもよい。複数個の原水容器側周部拡張ユニット12uを備えることにより、原水容器の容積を多段階(3段階以上)で変化させることができる。原水容器を構成する原水容器側周部拡張ユニット12uの個数Nを大きくする(N≧2)ことにより、上述の効果に加えて、原水容器12dの貯留容積を大きくすることが可能である。この場合1つの原水容器12dを、異なる容積を有する浄水容器11に適用することもできる。