(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Mで表される金属は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の希土類ドープ硫酸バリウム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、(Ba
XM
1−X)SO
4(Mは金属元素、0.5≦X<1)で表わされる化合物(以下、「希土類ドープ硫酸バリウム」と記す)に関するものである。
【0016】
本発明の希土類ドープ硫酸バリウムの組成においては、0.5≦X<1の範囲である。より好ましくは、0.7≦X<1であり、最も好ましくは0.8≦X≦0.95である。0.5≦Xとすることで、母体粒子の物理的な性状を損なうことなく金属Mが固溶することができ、X<1とすることで、紫外線吸収性能や屈折率、着色性を発現することができる。
【0017】
上記希土類ドープ硫酸バリウムの組成におけるMは、希土類元素をあらわすものである。このような希土類元素は分子構造中に固溶したものである。このため、Mを有さない硫酸バリウムに比べて、紫外線〜可視光領域における吸収能が変化し、特に紫外線領域において高い吸収能を有する粒子となる。
【0018】
このような、硫酸バリウムに希土類元素をドープすることによる紫外線吸収能の発現は、ドープした希土類元素の4f軌道間もしくは4f−5d軌道間の光エネルギーによる電子遷移によると考えられる。ドープする希土類元素の量を変化させることにより、吸収率を高めることができ、種類を変えることで、吸収する波長を変えることができる。
【0019】
Mとしては、具体的には例えば、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。なかでも、高い紫外線吸収能を付与するためには、Ce、EuおよびYbからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することが特に好ましい。
【0020】
上記希土類ドープ硫酸バリウムは、化学合成により得られ、白色系で色相にばらつきがなく、品質の安定した顔料として得られる特長を有する。また、その紫外線吸収能によって、化粧料原料として好適に使用することができる。
【0021】
本発明の希土類ドープ硫酸バリウムは、その形状を限定されるものではなく、板状、球状、針状、鱗片状、角柱形、粒状、円筒状、八面体形、十二面体形、管状、立方体形、六角形、卵形、樹枝状、扁平形状等の任意の形状のものとすることができる。化粧料分野において使用する場合には、特に板状とすることが好ましい。板状硫酸バリウムは化粧品分野において汎用される原料であるから、これに紫外線吸収能を付与することによって、より機能の優れた硫酸バリウム粒子として使用することができる。
【0022】
更に、板状の形状を有する希土類ドープ硫酸バリウムは、化粧料への分散性が良好であり、滑り性、付着性、ソフトフォーカス性等において優れた性能を有するものであるから、化粧品の体質顔料として特に好適に使用することができる。
【0023】
上記板状の希土類ドープ硫酸バリウムは、薄片状の形状を有する粒子をいい、板状粒子の厚み方向の長さ1に対する平面方向の最小長さの比率が、平均で5以上の状態にあることが好ましい。なお、ここでの厚み方向の長さ1に対する平面方向の最小長さの比率は、以下で示す粒子径と同様の方法で測定した値である。
【0024】
本明細書の希土類ドープ硫酸バリウムの平均粒子径は、3〜70μmであることが好ましい。上記平均粒子径が3μm未満であると、滑り性が著しく損なわれ、70μmを超えると、ざらざらした肌触りとなり、いずれも化粧品として使用することに適さないので、上記範囲に限定される。なお、上記粒子径は、粒子の走査型電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線状にある粒子20個の最大径を平均して、得られた粒子の粒子径としたものである。上記粒子径の上限は、50μmであることがより好ましい。
【0025】
上記板状の希土類ドープ硫酸バリウムは、上述した粒子径と同様の測定方法によって、厚みを測定した場合、その平均値が0.05μm〜2μmであることが好ましい。厚みが0.05μm未満であると、板状粒子の強度が低下し、肌に塗布すると容易に割れることから、板状粒子としての特長が生かせないという点で好ましくなく、2μmを超えると、肌に延ばして塗布した場合に透明感が低下するとともに平面が平滑に維持できないという点で好ましくない。
【0026】
本発明の希土類ドープ硫酸バリウムを得る方法は、特に限定されるものではなく、公知の硫酸バリウム粒子の製造方法において、原料のバリウム化合物の一部を希土類化合物に置換して行うことができる。
【0027】
上記板状の希土類ドープ硫酸バリウムを得る方法として、より具体的には、例えば、バリウム化合物、硫酸類化合物および希土類化合物を、pH1.0〜12.0、反応温度50〜100℃の条件で反応させることによって得ることができる。
【0028】
上記方法で用いるバリウム化合物は可溶性バリウム塩であれば特に制限されず、水酸化バリウム、塩化バリウム、硫化バリウム、硝酸バリウムおよび酢酸バリウムなどから選ばれる1種以上を用いることができる。これらの中でも水酸化バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウムまたは酢酸バリウムが好ましく、反応により生成する副産物の処理および入手の容易さから水酸化バリウムが更に好ましい。
【0029】
上記硫酸類化合物は可溶性硫酸塩であれば特に制限されず、例えば、硫酸;硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸リチウムなどの硫酸塩;および硫酸水素ナトリウムなどの硫酸水素塩などから選ばれる1種以上を用いることができる。これらの中でも、硫酸、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムおよび硫酸水素ナトリウムが好ましく、入手の容易さおよび価格の面から硫酸が更に好ましい。
【0030】
本発明で用いる希土類元素Mが含まれる希土類化合物としては、水等の溶媒中で希土類イオンを生じるものであれば特に制限されず、希土類元素の炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物および酸化物を挙げることができる。
【0031】
反応は、反応系のpHを1.0〜12.0に、反応温度を50〜100℃、好ましくは60〜95℃に設定保持して行う。このような条件の範囲外であると得られる硫酸バリウムの結晶構造が崩れるので、これを化粧料に配合した場合の使用感も悪く、光透過性も低下する。
【0032】
上記反応は、連続式で行うことも回分式で行うこともできる。いずれの方式の場合も、バリウム化合物、硫酸類化合物および希土類化合物の化学当量を、撹拌機を備えた反応容器に、同時に連続供給して反応させる。
【0033】
このようにして得られる希土類ドープ硫酸バリウムは、そのまま化粧料へ配合することもできるが、更に撥水性、撥油性を付与する目的で、公知の方法により表面処理を施して配合しても良い。
【0034】
表面処理の種類については、化粧料に使用できる物質であれば、いかなる物質で処理しても良く、特に制限されないが、例えば、ケイ素、亜鉛、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ等の酸化物あるいは水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等の無機化合物の被覆層を設けることもできる。また、撥水性を付与する目的で、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン等又はそれらの共重合体、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸およびそれらの金属塩(アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等)、ポリビニルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、モノエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、アミノシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン、クロロアルキルシラン、アルキルシラン、フルオロアルキルシラン、ヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールが挙げられる。これらの有機化合物は1種を用いても、2種以上を積層又は混合して用いても良い。
【0035】
また、これらの表面処理は、1種でもよく、数種類を組み合わせて処理しても良い。更に、無機化合物で処理した後に有機化合物の被覆層を設けても良いが、本来もつ滑沢性を損なわないことが重要である。
【0036】
無機化合物、有機化合物の被覆量は、希土類ドープ硫酸バリウムに対し、0.1〜30重量%の範囲が好ましく、0.1〜20重量%の範囲が更に好ましい。0.1重量%以上とすることで、表面処理による機能性向上効果を発現することができ、30重量%以下とすることで、本来の滑沢性を損なわず処理することができ、また経済的な観点で有利である。
【0037】
表面処理方法は、特に限定されないが、希土類ドープ硫酸バリウムの水性ディスパージョン中で、無機化合物あるいは有機化合物を添加し、pHを最適化することで被覆することができる。また、水溶性ではない有機化合物を被覆するには、有機化合物を乾式にて添加し、粉砕や混合を行い、必要に応じて加熱することで、表面処理することができる。
【0038】
本発明の化粧料は、上述したような希土類ドープ硫酸バリウムを1〜90重量%の割合で含有することが好ましい。含有量が1重量%未満であると、上述したような効果を充分に得られない点で好ましくない。含有量が90重量%を超えると、本発明による粉体が過剰となり、化粧料として配合の自由度が小さくなり、扱いづらくなるという点で好ましくない。
【0039】
本発明の化粧料としては、ファンデーション、化粧下地、アイシャドウ、頬紅、マスカラ、口紅、サンスクリーン剤等を挙げることができる。本発明の化粧料は、油性化粧料、水性化粧料、O/W型化粧料、W/O型化粧料の任意の形態とすることができる。なかでも、特にファンデーション、化粧下地、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料やサンスクリーン剤において特に好適に使用することができる。
【0040】
本発明の化粧料は、上記混合物を構成する成分以外に、化粧品分野において使用することができる任意の水性成分、油性成分を併用するものであってもよい。上記水性成分及び油性成分としては特に限定されず、例えば、油分、界面活性剤、保湿剤、高級アルコール、金属イオン封鎖剤、天然及び合成高分子、水溶性及び油溶性高分子、紫外線遮蔽剤、各種抽出液、無機及び有機顔料、無機及び有機粘土鉱物等の各種粉体、金属石鹸処理又はシリコーンで処理された無機及び有機顔料、有機染料等の色剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等の成分を含有するものであってもよい。具体的には、以下に列挙した配合成分の1種又は2種以上を任意に配合して常法により目的の化粧料を製造することが可能である。これらの配合成分の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
【0041】
上記油分としては特に限定されず、例えば、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、流動パラフィン、オゾケライト、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等を挙げることができる。
【0042】
上記親油性非イオン界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α´−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等のグリセリンポリグリセリン脂肪酸類、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル等を挙げることができる。
【0043】
親水性非イオン界面活性剤としては特に限定されず、例えば、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンテトラオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POEモノオレエート、POEジステアレート、POEモノジオレエート、システアリン酸エチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル類、POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE2−オクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル類、POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEジノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類、ブルロニック等のプルアロニック型類、POE・POPセチルエーテル、POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類、テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ・ラノリン誘導体、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE
脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POE ノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸等を挙げることができる。
【0044】
その他の界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン、高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、アルキルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体等のカチオン界面活性剤、及び、イミダゾリン系両性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等の両性界面活性剤を安定性及び皮膚刺激性に問題のない範囲で配合してもよい。
【0045】
上記保湿剤としては特に限定されず、例えば、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イサイヨバラ抽出物、セイヨウノキギリソウ抽出物、メリロート抽出物等を挙げることができる。
【0046】
上記高級アルコールとしては特に限定されず、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等を挙げることができる。
【0047】
金属イオン封鎖剤としては特に限定されず、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1− ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸四ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸等を挙げることができる。
【0048】
上記天然の水溶性高分子としては特に限定されず、例えば、アラアビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子を挙げることができる。
【0049】
半合成の水溶性高分子としては特に限定されず、例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子等を挙げることができる。
【0050】
合成の水溶性高分子としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン等のビニル系高分子、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000等のポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体共重合系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等を挙げることができる。
【0051】
無機の水溶性高分子としては特に限定されず、例えば、ベントナイト、ケイ酸A1Mg(ビーガム)、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等を挙げることができる。
【0052】
紫外線遮蔽剤としては特に限定されず、例えば、パラアミノ安息香酸(以下PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル等の安息香酸系紫外線遮蔽剤;ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線遮蔽剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線遮蔽剤;オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等のケイ皮酸系紫外線遮蔽剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−
カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤;3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5− メチルベンゾキサゾール、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等を挙げることができる。
【0053】
その他薬剤成分としては特に限定されず、例えば、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸DL−α−トコフェロール、アルコルビン酸リン酸マグネシウム、2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類;エストラジオール、エチニルエストラジオール等のホルモン;アルギニン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、メチオニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸;アラントイン、アズレン等の抗炎症剤、アルブチン等の美白剤、;タンニン酸等の収斂剤;L−メントール、カンフル等の清涼剤やイオウ、塩化リゾチーム、塩化ピリドキシン等を挙げることができる。
【0054】
各種の抽出液としては特に限定されず、例えば、ドクダミエキス、オウバクエキス、メリロートエキス、オドリコソウエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、キナエキス、ユキノシタエキス、クララエキス、コウホネエキス、ウイキョウエキス、サクラソウエキス、バラエキス、ジオウエキス、レモンエキス、シコンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、スギナエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、キイチゴエキス、メリッサエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、モモエキス、桃葉エキス、クワエキス、ヤグリマギクエキス、ハマメリスエキス、プラセンタエキス、胸腺抽出物、シルク抽出液、甘草エキス等を挙げることができる。
【0055】
上記各種粉体としては、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化チタン被覆ガラスフレーク等の光輝性着色顔料、マイカ、タルク、カオリン、セリサイト、二酸化チタン、シリカ等の無機粉末やポリエチレン末、ナイロン末、架橋ポリスチレン、セルロースパウダー、シリコーン末等の有機粉末等を挙げることができる。好ましくは、官能特性向上、化粧持続性向上のため、粉末成分の一部又は全部をシリコーン類、フッ素化合物、金属石鹸、油剤、アシルグルタミン酸塩等の物質にて、公知の方法で疎水化処理して使用してもよい。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0057】
実施例1(セリウムドープ板状硫酸バリウムの製造方法)
水酸化バリウム0.97gと硫酸0.15gをイオン交換水1Lにそれぞれ溶解し、0.0057mol/Lの水酸化バリウム溶液と0.0015mol/Lの硫酸溶液とした。硫酸セリウム四水和物1.75gを硫酸溶液に添加後、撹拌して溶解させ、セリウム含有硫酸溶液とした。3Lのフラスコに70℃のイオン交換水0.3Lを張り込み、撹拌した。70℃に調整した水酸化バリウム溶液と、70℃に調整したセリウム含有硫酸溶液を、微調整可能なマイクロチューブポンプを使って、Ba
2+、希土類元素MおよびSO
42−のモル比が0.57:0.43:1となるように添加量を調整し、上記反応容器に同時に連続添加した。その後、撹拌を継続して反応を終了させた。次に、常温まで冷却し、5Cの濾紙により濾過した後イオン交換水を用いて水洗し、その後120℃で5時間乾燥して得られた化合物をA−1とした。
更に上記合成方法のうち、水酸化バリウムを1.45g、硫酸を0.69gおよび硫酸セリウム四水和物を0.62gと変更して得られた化合物をA−2とした。また、水酸化バリウムを1.70g、硫酸を0.97gおよび硫酸セリウム四水和物を0.032gとして得られた化合物をA−3とした。
【0058】
実施例2(ユウロピウムドープ板状硫酸バリウムの製造方法)
水酸化バリウム1.45gと硫酸0.75gをイオン交換水1Lにそれぞれ溶解し、0.0085mol/Lの水酸化バリウム溶液と0.0076mol/Lの硫酸溶液とした。硫酸ユウロピウム八水和物0.45gを硫酸溶液に添加後、撹拌して溶解させ、ユウロピウム含有硫酸溶液とした。3Lのフラスコに70℃のイオン交換水0.3Lを張り込み、撹拌した。70℃に調整した水酸化バリウム溶液と、70℃に調整したユウロピウム含有硫酸溶液を、微調整可能なマイクロチューブポンプを使って、Ba
2+、希土類元素MおよびSO
42−のモル比が0.85:0.15:1となるように添加量を調整し、上記反応容器に同時に連続添加した。その後、撹拌を継続して反応を終了させた。次に、常温まで冷却し、5Cの濾紙により濾過した後イオン交換水を用いて水洗し、その後120℃で5時間乾燥して得られた化合物をB−1とした。
【0059】
比較例1(ドープなし板状硫酸バリウムの製造方法)
水酸化バリウム1.71gと硫酸0.98gをイオン交換水1Lにそれぞれ溶解し、0.01mol/Lの水酸化バリウム溶液と0.01mol/Lの硫酸溶液とした。3Lのフラスコに70℃のイオン交換水0.3Lを張り込み、撹拌した。70℃に調整した水酸化バリウム溶液と、70℃に調整した硫酸溶液を、微調整可能なマイクロチューブポンプを使って、Ba
2+およびSO
42−のモル比が1:1となるように添加量を調整し、上記反応容器に同時に連続添加した。その後、撹拌を継続して反応を終了させた。次に、常温まで冷却し、5Cの濾紙により濾過した後イオン交換水を用いて水洗し、その後120℃で5時間乾燥して得られた化合物をC−1とした。
【0060】
上記実施例1〜2及び比較例1で得られた化合物に関して、ドープする希土類元素Mとバリウム元素の組成比を整理したものを表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
評価例1(形状評価)
上記実施例1〜2及び比較例1で得られた化合物を、日本電子製JSM−7000F型走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、板状粒子であることが確認できた。電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線状にある粒子20個の長さを平均して、平均粒子径を測定した。また、得られた板状硫酸バリウム粉末の試料を90度回転して撮影対象の厚み方向が観察できるようにした。その後、走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線状にある粒子20個の厚みを平均して、厚みの平均値を測定した。
測定結果を表2に示す。なお、評価に際しては、板状硫酸バリウム・H(堺化学工業社製)を比較とした。測定に際しては、すべてのサンプルにおいて、100個の粒子のうち、粒子径が3〜70μmの範囲であり、尚且つ、板状粒子の厚み方向の長さ1に対する平面方向の最小長さの比率が、平均で5以上の状態にあることを確認した。
【0063】
【表2】
【0064】
また、実施例1で得られたA−1の走査型電子顕微鏡写真を
図2に、実施例1で得られたA−2の走査型電子顕微鏡写真を
図3に、実施例1で得られたA−3の走査型電子顕微鏡写真を
図4に、実施例2で得られたB−1の走査型電子顕微鏡写真を
図5に、比較例1で得られたC−1の走査型電子顕微鏡写真を
図6にそれぞれ示した。
図2、
図3、
図4および
図5の板状硫酸バリウム粒子は、板状形状が変化していないため、滑り性が損なわれていないことが分かる。
【0065】
評価例2(紫外線吸収スペクトル評価)
上記実施例1〜2及び比較例1で得られた各サンプルについて、紫外線吸収性を以下の様にして測定した。
サンプル粉末を、分光光度計(日本分光社製、V−570型分光光度計及びILN−472型積分球)測定用セルに充填し、分光光度計を用いて200nm〜800nmの波長領域で反射率を測定した。
UV−A領域とUV−B領域の境界波長である320nm、そして、可視光領域の最も視感度の高い550nm、更に可視光領域の最も端である800nmでの測定数値を表3に示す。なお、評価に際しては、板状硫酸バリウム・H(堺化学工業社製)を比較とした。
【0066】
【表3】
【0067】
以上の結果より、金属Mをドープしていない比較例1のサンプルC−1及び板状硫酸バリウム・Hに比べて、実施例1〜2で得られたサンプルは、320nmでの反射率が小さく、紫外線を吸収する能力を有することが示された。特に、実施例1で得られたA−1及びA−2は、紫外線吸収率が大きく、ファンデーション用基材としてのみならず、紫外線吸収剤としても有用な性能を有するものである。
【0068】
とりわけ、実施例1で得られたA−1、A−2及びA−3のサンプルについては、金属Mのドープ量が増えるに連れて、320nmでの反射率が小さくなっていることから、金属Mのドープ量により紫外線吸収能力の調整が可能であることを示している。
【0069】
評価例3(滑り性評価)
実施例1で得られたA−2及び比較例1で得られたC−1の各サンプルの滑り性評価は次のような方法で行った。
スライドガラスに両面テープを貼り付け、粘着面に薬さじ半分程度の粉末を載せ、化粧用スポンジで粉末を展ばし、その上に摩擦子をセットした。スライドガラスを移動させて摩擦子にかかる負荷から平均摩擦係数と平均摩擦係数の変動を測定した。測定は摩擦感テスター(カトーテック製KES−SE)により行った。
測定結果を表4に示す。なお、評価に際しては、板状硫酸バリウム・H及び顔料用の酸化チタンを比較とした。
【0070】
【表4】
【0071】
平均摩擦係数MIUは、数値が小さいほど粉体が滑ることを示し、摩擦係数の変動値MMDは数値が小さいほど滑らかでざらつきが無いことを示す指標である。
表4から、実施例1で得られたA−2は、金属Mをドープしているにもかかわらず、比較例1の金属MをドープしていないサンプルC−1や、板状硫酸バリウム・Hとほとんど変わらない滑り性を示した。これは、本来の板状粒子の、特に表面性状に影響せずに、金属が結晶内部にドープされたことを示す。
このことは、板状粒子本来が有する滑り性を損なうことなく、紫外線吸収性能などのその他の機能を付加することができることを示しているものである。
【0072】
評価例4(ソフトフォーカス性評価)
実施例1で得られたA−2及び実施例2で得られたB−1の各サンプルのソフトフォーカス性評価は、次のような方法にて行った。
粉末とジメチルポリシロキサン(1000cps)を、1:9の重量比になるように測り採り、よく混合した後、フーバー式マラーを用いて、1rpmの回転速度で50回転させ、ペーストを調製した。
そのようにして調製したペーストを、1MILのアプリケーターを用いてガラス板上に均一に成膜した。
このようにして得られた塗膜を、ヘイズメーター(日本電色工業製NDH2000型)でヘイズと全光透過率を測定し、ソフトフォーカス性を評価した。
表5にその結果を示す。なお、評価に際しては、板状硫酸バリウム・H(堺化学工業社製)、超微粒子酸化チタン及び顔料用酸化チタンを比較とした。
【0073】
【表5】
【0074】
この結果、まず超微粒子酸化チタンは全光透過率が大きく、ヘイズが小さいことから、非常に透明な塗膜であることが示され、その逆に、顔料用酸化チタンは、全光透過率が小さく、ヘイズが大きいことから、隠蔽性の高い塗膜ということが示された。
実施例1で得られたA−2及び実施例2で得られたB−1の各サンプルについては、全光透過率が比較的大きく、またヘイズもある程度大きな数値であることより、顔料用酸化チタンのように素地を隠蔽することが少ない上に、超微粒子酸化チタンのように透明でないことが示される。
【0075】
とりわけ、A−2及びB−1のサンプルについては、希土類元素をドープしていない板状硫酸バリウム・Hに比べてヘイズが大きいことから、板状硫酸バリウムへの希土類元素のドープにより、板状粒子のソフトフォーカス性が更に向上することを示している。すなわち、希土類ドープ板状硫酸バリウムは、高い紫外線吸収能に加えて、ソフトフォーカス性においても有用な性能を有するものである。