特許第6051793号(P6051793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051793
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/02 20060101AFI20161219BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20161219BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F02D13/02 J
   F02D9/02 311
   F02D9/02 315B
   F02D45/00 312E
   F02D45/00 312F
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-244992(P2012-244992)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-92146(P2014-92146A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健児
(72)【発明者】
【氏名】荒井 勝博
(72)【発明者】
【氏名】吉野 太容
【審査官】 山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−208741(JP,A)
【文献】 特開2008−106699(JP,A)
【文献】 特開2010−196588(JP,A)
【文献】 特開2005−188284(JP,A)
【文献】 特開平11−050867(JP,A)
【文献】 特開2005−315130(JP,A)
【文献】 特開昭60−156927(JP,A)
【文献】 特開平03−225038(JP,A)
【文献】 特開2006−170096(JP,A)
【文献】 特開2001−065370(JP,A)
【文献】 特開2003−106176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/02
F02D 9/02
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関弁のバルブタイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構と、吸入空気量を調整するスロットル弁と、運転状態に応じて内燃機関に要求される目標トルクを算出する目標トルク算出手段と、を有し、
上記目標トルクに応じて上記機関弁のバルブタイミングと上記スロットル弁の開度を制御する内燃機関の制御装置において、
上記目標トルクが変化する際には、上記スロットル弁の開度変化により吸入負圧が変化し始めるタイミングと上記機関弁のバルブタイミングが変化し始めるタイミングとが同期するように、上記可変バルブタイミング機構と上記スロットル弁を制御し、
上記目標トルクが増加する加速時には、目標スロットル弁開度を運転点が同じで目標トルクが一定となる定常状態のときに比べて大きくなるように補正し、
上記目標トルクが減少する減速時には、上記目標スロットル弁開度を上記定常状態のときに比べて小さくなるように補正することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
過渡時における上記スロットル弁の開度補正量は、機関回転速度と上記目標トルクに応じて算出され、上記機関回転速度と上記目標トルクから決まる過渡時の目標吸入空気量の変化量が大きくなるほど大きくなるよう設定されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
上記内燃機関は、スロットル弁下流側の吸気流路長を変更可能な可変吸気機構を備え、
過渡時における上記スロットル弁の開度補正量は、機関回転速度と上記目標トルクとスロットル弁下流側の吸気容積に応じて算出され、上記機関回転速度と上記目標トルクから決まる過渡時の目標吸入空気量の変化量が大きくなるほど、または上記吸気容積が大きくなるほど、大きくなるよう設定されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
上記目標スロットル弁開度の変化が上記スロットル弁の応答限界を超えないように、上記目標トルクの変化量を制限することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
減速時においては、スロットル弁開度の時間面積を増加させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
吸入負圧が安定した状態のときに、上記目標スロットル弁開度の補正を許可することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
上記機関弁のバルブタイミングが変化する際に、上記目標スロットル弁開度の補正を許可することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
上記スロットル弁は、電制スロットル弁であり、バッテリ電圧が所定電圧以上の場合に、上記目標スロットル弁開度の補正を許可することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項9】
機関弁のバルブタイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構と、吸入空気量を調整するスロットル弁と、運転状態に応じて内燃機関に要求される目標トルクを算出する目標トルク算出手段と、を有し、
上記目標トルクに応じて上記機関弁のバルブタイミングと上記スロットル弁の開度を制御する内燃機関の制御装置において、
上記内燃機関は、スロットル弁下流側の吸気流路長を変更可能な可変吸気機構を備え、
上記目標トルクが変化する際には、上記スロットル弁の開度変化により吸入負圧が変化し始めるタイミングと上記機関弁のバルブタイミングが変化し始めるタイミングとが同期するように、上記可変バルブタイミング機構と上記スロットル弁を制御し、
上記目標トルクが増加する加速時には、目標スロットル弁開度を運転点が同じで目標トルクが一定となる定常状態のときに比べて大きくなるように補正し、
上記目標トルクが減少する減速時には、上記目標スロットル弁開度を上記定常状態のときに比べて小さくなるように補正し、
過渡時における上記スロットル弁の開度補正量は、機関回転速度と上記目標トルクとスロットル弁下流側の吸気容積に応じて算出され、上記機関回転速度と上記目標トルクから決まる過渡時の目標吸入空気量の変化量が大きくなるほど、または上記吸気容積が大きくなるほど、大きくなるよう設定されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変バルブタイミング機構を有する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、過渡運転時に、アクセル開度が変化してから実際のスロットル弁開度が変化するタイミングと、目標バルブタイミングが変化してから実際のバルブタイミングが変化するまでのタイミングとを略一致させることで、実際のスロットル弁開度に応じて変化する実負荷(実吸気圧)と、実際のバルブタイミングとを同期させて略同時に変化させようにした技術が開示されている。このような特許文献1においては、上記実負荷と略同時に、実際のバルブタイミングを変更させることができるため、過渡運転時に可変バルブタイミング機構の応答遅れによる燃焼状態の悪化を防止することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−208741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際のスロットル弁開度の変化による実吸気圧(実負荷)の変化は、スロットル弁下流の吸気系の容積分だけ遅れて筒内に到達するため、アクセル開度が変化してから実際のスロットル弁開度が変化するタイミングと、目標バルブタイミングが変化してから実際のバルブタイミングが変化するまでのタイミングとを略一致させるだけでは、目標トルクに応じた吸入空気量を得られない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は、目標トルクが変化する際には、スロットル弁の開度変化により吸入負圧が変化し始めるタイミングと機関弁のバルブタイミングが変化し始めるタイミングとが同期するように、可変バルブタイミング機構とスロットル弁を制御し、上記目標トルクが増加する加速時には、目標スロットル弁開度を運転点が同じで目標トルクが一定となる定常状態のときに比べて大きくなるように補正し、上記目標トルクが減少する減速時には、上記目標スロットル弁開度を上記定常状態のときに比べて小さくなるように補正することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、スロットル弁からシリンダに至る吸気系の容積に起因する吸入負圧の応答遅れを補正(改善)することができるため、過渡時において、内燃機関の運転性能を悪化させることなく、内燃機関を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明が適用される内燃機関の全体構成を示したシステム図。
図2】目標トルクが変化する過渡時の制御の流れを示したブロック図。
図3】開度補正量を算出する際の手順を示したブロック図。
図4】目標トルクが変化する過渡時の制御を示すタイミングチャート。
図5】吸気弁のバルブタイミングと吸入負圧との相関を模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明が適用された内燃機関1の全体構成を示したシステム図である。
【0009】
車両用の火花点火式ガソリン機関からなる内燃機関1の燃焼室2には、吸気通路3を介して空気(吸気)が導入される。燃焼室2は、シリンダヘッド4と、シリンダブロック5と、このシリンダブロック5のシリンダ6内に嵌合するピストン7により構成される。この燃焼室2からは、排気通路8を介して排気が排出される。また、各気筒の燃焼室2毎に、点火プラグ9が設けられている。
【0010】
吸気通路3は、シリンダヘッド4内に形成された各気筒毎の吸気ポート10と、各吸気ポート10に接続される吸気マニホールド11と、を含んで構成されている。
【0011】
吸気マニホールド11は、各気筒の吸気ポートにそれぞれ接続されるブランチ部12と、ブランチ部12の上流側に位置するコレクタ部13とを有している。
【0012】
コレクタ部13には、コレクタ部13内の吸気圧を検出する吸気圧センサ14が設けられている。
【0013】
吸気マニホールド11の上流側には、電動モータ(図示せず)によって駆動される電制のスロットル弁15が配置されている。スロットル弁15の開度は、スロットル開度センサ16によって検出される。
【0014】
各気筒の吸気ポート10には、各気筒毎に燃料を噴射供給するように燃料噴射弁17が設けられていると共に、その下流端に吸気弁18が設けられている。
【0015】
排気通路8は、シリンダヘッド4内に形成された各気筒毎の排気ポート19と、各排気ポート19に接続される排気マニホールド20と、を含んで構成されている。各気筒の排気ポート19の上流端には、排気弁21が設けられている。排気マニホールド20の下流側には、排気浄化用の触媒22が設けられている。
【0016】
そして、本実施例においては、吸気弁18側の動弁機構と、排気弁21側の動弁機構が、双方ともにバルブタイミングを変更可能な周知の可変バルブタイミング機構25となっている。
【0017】
可変バルブタイミング機構25は、機関弁(吸気弁18または排気弁21)のリフト中心角の位相をクランクシャフト23の回転位相に対して連続的に遅進させることが可能なものであり、機関弁のバルブリフトにおけるリフト中心角が遅進する。つまり、可変バルブタイミング機構25により、リフト特性の曲線自体は変わらずに、全体が進角もしくは遅角することで、機関弁の開弁時期及び閉弁時期を変化させることが可能となっている。
【0018】
本実施例における吸気弁18側の可変バルブタイミング機構25aは、ソレノイドバルブ26により供給油圧を制御することによって、吸気弁18のバルブタイミングを変更する。可変バルブタイミング機構25aの制御状態は、吸気カムシャフト27の回転位置に応答する吸気カムシャフトセンサ28によって検出される。この吸気カムシャフトセンサ28により、吸気弁18の開弁時期や閉弁時期等が検出可能となっている。
【0019】
本実施例における排気弁21側の可変バルブタイミング機構25bは、ソレノイドバルブ30により供給油圧を制御することによって、排気弁21のバルブタイミングを変更する。可変バルブタイミング機構25bの制御状態は、排気カムシャフト31の回転位置に応答する排気カムシャフトセンサ32によって検出される。この排気カムシャフトセンサ32により、排気弁21の開弁時期や閉弁時期等が検出可能となっている。
【0020】
なお、このような可変バルブタイミング機構25としては、ベーンを用いたタイプ、ヘリカルスプラインを用いたタイプ等が公知であるが、詳細な説明は省略する。
【0021】
上述した吸気圧センサ14、スロットル開度センサ16、吸気カムシャフトセンサ28、排気カムシャフトセンサ32で検出された検出信号は、ECU(エンジンコントロールユニット)35に入力されている。
【0022】
ECU35は、マイクロコンピュータを内蔵し、内燃機関1の種々の制御を行うものであって、各種のセンサからの信号を基に処理を行うようになっている。これら各種のセンサとしては、上述したセンサ類のほかに、吸入空気量を検出するエアフローメータ36や、クランク角度とともに機関回転速度を検出可能なクランク角センサ37や、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ38等からの信号が入力されている。
【0023】
そして、ECU35では、これらの検出信号に基づいて、燃料噴射弁17の噴射量や噴射時期、点火プラグ9による点火時期、スロットル弁15の開度、可変バルブタイミング機構25a、25bによる吸気弁18と排気弁21のバルブタイミングなどを制御する。
【0024】
本実施例のように、機関弁(吸気弁18または排気弁21)の動弁機構にバルブタイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構25が適用されている場合、燃焼室2(シリンダ6)内の空気量(吸入空気量)は、スロットル弁15の開度と機関弁のバルブタイミングの双方によって制御されることになる。
【0025】
そのため、スロットル弁15の開度とバルブタイミングのどちらか一方でも目標値からずれてしまうと、燃焼室2(シリンダ6)内に実際に吸入される空気量が変化し、燃焼状態が相対的に悪化してしまい、実際に内燃機関から発生するトルク(内燃機関の出力トルク)が目標トルクからずれてしまうことになる。
【0026】
ここで、スロットル弁15の開度の変化による吸入負圧の変化は、スロットル弁15から燃焼室2(シリンダ6)に至るスロットル弁15下流の吸気系の容積(吸気マニホールド11及び各気筒の吸気ポート10の容積)分だけ遅れて燃焼室2(シリンダ6)に到達することになる。そのため、過渡時においては、スロットル弁15の開度変化により吸入負圧が変化し始めるタイミングと吸気弁18のバルブタイミングが変化し始めるタイミングとを同期させるだけでは、スロットル弁15の開度に変化に対して吸入負圧の変化が追従しなくなり、目標トルクに応じた吸入空気量を得られない可能性がある。
【0027】
そこで、本実施例では、目標トルクが変化する過渡時において、スロットル弁15の開度変化によりスロットル弁15下流側の吸入負圧が変化し始めるタイミングと、吸気弁18のバルブタイミングが変化し始めるタイミングとが同期するように、可変バルブタイミング機構25aとスロットル弁15を制御するとともに、スロットル弁15の目標開度を過渡の状態に応じて増減補正する。すなわち、目標トルクが増加する加速時には、目標トルクに対して、スロットル弁15の開度が定常状態に比べて大きくなるよう補正することで、吸入負圧の増加量を大きくする。また、目標トルクが減少する減速時には、目標トルクに対して、スロットル弁15の開度が定常状態に比べて小さくなるよう補正することで、吸入負圧の減少量を大きくする。
【0028】
これによって、過渡時において、スロットル弁15から燃焼室2(シリンダ6)に至る吸気系の容積に起因する吸入負圧の変化の応答遅れを補正(改善)することができ、運転性能を悪化させることなく内燃機関1を制御することが可能となる。
【0029】
図2は、目標トルクが変化する過渡時の制御の流れを示したブロック図である。
S1では、アクセル開度に応じて目標トルクを算出する。S2では、スロットル弁15の開度変化が、後述するスロットル開度補正を実施しても、スロットル弁15の応答限界を超えることがないように、S1で算出された目標トルクの変化量を制限する。すなわち、S2では、スロットル弁15の応答限界を超えないように、S1で算出された目標トルクを補正して制御目標トルクを算出する。これにより、目標とするスロットル弁15の開度に、実際のスロットル弁15の開度が追従できなくなることが防止され、狙いとする吸入負圧の応答性に対して実際の吸入負圧の応答性を精度よく追従させることが可能となる。
【0030】
S3では、S2で算出された制御目標トルクに基づいて、吸気弁18の目標バルブタイミングを算出する。
【0031】
S4では、S2で算出された制御目標トルクに基づいて、スロットル弁15の目標開度を算出する。
【0032】
S5では、S4で算出されたスロットル弁15の目標開度を、S6で算出されたスロットル弁15の開度補正量(後述)を用いて補正して、最終目標開度を算出する。
【0033】
S7では、吸入負圧が変化し始めるタイミングと吸気弁18のバルブタイミングが変化し始めるタイミングとが同期するように無駄時間補正を行う。すなわち、可変バルブタイミング機構25aにバルブタイミングを変更する制御指令を出してから、実際に吸気弁18のバルブタイミングが変化し始めるまでの遅れ時間を算出し、スロットル弁15の開度を最終目標開度とする制御指令を出してから実際にスロットル弁15下流側の吸入負圧が変化し始めるタイミングと、吸気弁18のバルブタイミングを目標バルブタイミングとする制御指令を出してから実際に吸気弁18のバルブタイミングが変化し始めるタイミングとが同期するように、可変バルブタイミング機構25a及びスロットル弁15を駆動するタイミングを算出する。なお、スロットル弁15は、可変バルブタイミング機構25aよりも応答性が良いため、本実施例では、目標トルクが変更されると、可変バルブタイミング機構25aにバルブタイミングを変更する制御指令を出してから、スロットル弁15に開度を変更する制御指令を出している。また、本実施例における可変バルブタイミング機構25は、油圧駆動されるものであるが、電気モータ等により駆動される電制の可変バルブタイミング機構であっても、その応答性はスロットル弁15に比べて遅くなる。
【0034】
そして、S8及びS9では、吸入負圧が変化し始めるタイミングと吸気弁18のバルブタイミングが変化し始めるタイミングとが同期するように、可変バルブタイミング機構25a及びスロットル弁15を駆動する。また、スロットル弁15については、開度補正量(後述)を用いて補正された最終目標開度となるように制御される。
【0035】
図3は、上述したS6の開度補正量を算出する際の手順を示したブロック図である。S61では、応答協調制御許可判定を実施する。すなわち、過渡時においてスロットル弁15の開度補正量を算出し、スロットル弁15から燃焼室2(シリンダ6)に至る吸気系の容積に起因する吸入負圧の変化の応答遅れを補正(改善)してもよい状況であるか否かを判定する。
【0036】
具体的には、例えば、吸入負圧が不安定な場合や、吸気弁18のバルブタイミングが変化しない場合や、車載バッテリ(図示せず)のバッテリ電圧が所定電圧未満の場合に、応答協調制御が禁止されるようになっている。
【0037】
吸入負圧が不安定な場合、過渡時におけるスロットル弁15の目標開度の補正を許可すると、定常安定状態になるまでの時間が増加してしまうので、このような事態を回避するために、応答協調制御が禁止される。例えば、内燃機関1の始動直後においては、吸入負圧が不安定なので応答協調制御が禁止される。
【0038】
目標トルクが変化するものの、吸気弁18のバルブタイミングが変化しないような場合、吸入負圧が変化し始めるタイミングを合わせる対象がないので、応答協調制御が禁止される。これにより、スロットル弁15が電制スロットル弁の場合、スロットル弁15の開度補正を実施しない分、消費電力を低減することが可能となる。
【0039】
また、スロットル弁15が電制スロットル弁の場合、バッテリ電圧が低下しているときに過渡時におけるスロットル弁15の目標開度の補正を許可すると、スロットル弁15の目標開度に対して実際の開度の追従性が電圧不足により悪化している状態で、スロットル弁15の目標開度を過渡の状態に応じて増減補正することにより、意図しないトルク変動により運転性が悪化する可能性があるので、このような事態を回避するために、応答協調制御が禁止される。
【0040】
応答協調制御許可判定の結果、応答協調制御が許可された場合はS62へ進み、応答協調制御が許可されない場合は、スロットル弁15の開度補正量を算出しない。つまり、応答協調制御が許可されない場合は、上述したS5にて、S4で算出されたスロットル弁15の目標開度を、最終目標開度とする。
【0041】
S62では、機関回転速度と目標トルクから決まる過渡時の目標吸入空気量の変化量を算出する。
【0042】
S63では、スロットル弁15下流の吸気容積(スロットル弁15から燃焼室2に至る吸気系の容積)を読み込む。
【0043】
S64では、S62で算出された過渡時の目標吸入空気量と、S63で検出された吸気容積とに基づいて、スロットル弁15の開度補正量を算出する。この開度補正量は、S62で算出された過渡時における目標吸入空気量の変化量が大きくなるほど大きくなるよう設定される。
【0044】
なお、本実施例では、スロットル弁15下流側の吸気通路長は一定であるが、例えば各気筒の実質的な吸気管長を運転状態に応じて切り換えられるような場合には、運転状態に応じてスロットル弁15下流の実質的な吸気容積が変化することなる。このように運転状態に応じてスロットル弁15下流の実質的な吸気容積を変化させる可変吸気システムに適用されるような場合には、S63で検出された吸気容積が大きくなるほど、開度補正量は大きくなるよう設定される。
【0045】
このようにして開度補正量を設定することで、内燃機関の運転領域や吸気容積によらず、吸入負圧の変化の応答遅れを補正(改善)することが可能となる。
【0046】
図4は、目標トルクが変化する過渡時の制御を示すタイミングチャートである。時刻t1において目標トルクが増加すると、スロットル弁15の開度補正量が変化する。そして、この開度補正量により、スロットル弁15の最終目標開度が増量補正される。加速時には、目標トルクに対して、スロットル弁15の開度が定常状態に比べて大きくなり、吸入負圧の増加量が大きくなるように、スロットル弁15の開度補正量が設定される。なお、図4中に破線で示した特性線Aは、定常状態において目標トルクを実現するためのスロット弁15の開度を示したものである。
【0047】
ここで、可変バルブタイミング機構25aには、時刻t1にて、吸気弁18のバルブタイミングが制御目標トルクに応じた目標バルブタイミングとなるように制御指令が出される。その結果、時刻t2にて、吸気弁18の実際のバルブタイミングが変化し始める。つまり、時刻t1から時刻t2までの時間が可変バルブタイミング機構25aの遅れ時間(無駄時間)となっている。この遅れ時間は、例えば、機関回転速度と油温と可変バルブタイミング機構25aを制御する方向が進角側なのか遅角側なのか等に応じて予め算出される。
【0048】
そして、予め算出された可変バルブタイミング機構25aの遅れ時間から、時刻t2にて、吸気弁18のバルブタイミングが実際に変化し始めるタイミングと、スロットル弁15の開度変化によりスロットル弁15下流側の吸入負圧が実際に変化し始めるタイミングと、が同期するように、スロットル弁15を制御する。
【0049】
時刻t4において目標トルクが減少すると、スロットル弁15の開度補正量が変化する。そして、この開度補正量により、スロットル弁15の最終目標開度が減量補正される。減速時には、目標トルクに対して、スロットル弁15の開度が定常状態に比べて小さくなり、吸入負圧の減少量が大きくなるように、スロットル弁15の開度補正量が設定される。
【0050】
可変バルブタイミング機構25aには、時刻t4にて、吸気弁18のバルブタイミングが制御目標トルクに応じた目標バルブタイミングとなるように制御指令が出される。その結果、時刻t5にて、吸気弁18の実際のバルブタイミングが変化し始める。
【0051】
そして、予め算出された可変バルブタイミング機構25aの遅れ時間から、時刻t5にて、吸気弁18のバルブタイミングが実際に変化し始めるタイミングと、スロットル弁15の開度変化によりスロットル弁15下流側の吸入負圧が実際に変化し始めるタイミングと、が同期するように、スロットル弁15を制御する。
【0052】
なお、目標トルクが変化する過度時において、本実施例では、スロットル弁1の目標開度が過渡状態に応じた開度補正量により補正されているので、スロットル弁15から燃焼室2(シリンダ6)に至る吸気系の容積に起因する吸入負圧の変化の応答遅れを考慮しない場合(図4中に破線で示した特性線B)に比べて、応答性よく吸入負圧を変化させることが可能となっている。
【0053】
図5は、吸気弁18のバルブタイミングと吸入負圧との相関を模式的に示した説明図である。図5中のプロット及びプロットを結ぶ細実線は、定常状態において目標トルクを実現する吸気弁18のバルブタイミングと吸入負圧の組み合わせを示している。定常状態では、吸気弁18のバルブタイミングと吸入負圧の組み合わせは、プロットを結ぶ細実線に沿って変化する。
【0054】
図5中の破線は、目標トルクが変化する過渡時において、スロットル弁15の目標開度を過渡の状態に応じて増減補正せずに、吸気弁18のバルブタイミングが実際に変化し始めるタイミングと、吸入負圧が実際に変化し始めるタイミングとを単に同期させた場合の吸入負圧と吸気弁18のバルブタイミングの組み合わせの変化を示す比較例である。この比較例では、スロットル弁15の目標開度を過渡の状態に応じて増減補正していないので、過渡時において吸入負圧の変化よりも吸気弁18のバルブタイミングの変化が早くなり、吸気弁18のバルブタイミングと吸入負圧の組み合わせが、定常状態において目標トルクを実現する吸気弁18のバルブタイミングと吸入負圧の組み合わせから大きく乖離してしまう。
【0055】
一方、上述した本実施例のように、目標トルクが変化する過渡時において、吸気弁18のバルブタイミングが実際に変化し始めるタイミングと、吸入負圧が実際に変化し始めるタイミングとを同期させ、かつスロットル弁15の目標開度を過渡の状態に応じて増減補正すると、吸気弁18のバルブタイミングと吸入負圧の組み合わせは、図5中に太実線で示すように変化することになる。すなわち、本実施例では、過渡時において吸入負圧の変化が吸気弁18のバルブタイミングの変化に対応するよう補正されるため、過渡時における吸入負圧と吸気弁18のバルブタイミングの組み合わせを、定常状態において目標トルクを実現する組み合わせに近づけることが可能となる。そのため、過渡時における運転性能を定常時の運転性能に近づけることができ、運転性能の相対的に向上させることができる。また、変化の遅い吸入負圧を、変化の早いバルブタイミングに合わせて補正しているので、運転者の運転要求に速やかに対応することができる。
【0056】
なお、目標トルクが減少する減速時において、スロットル弁15の目標開度は制御上全閉となり吸入空気量がゼロとなるように制御されるが、実際にはスロットル弁15は全閉とはなっておらず、わずかに開弁した状態となっている。そこで、目標トルクが減少する減速時においては、スロットル弁開度の時間面積が増加するように、スロットル弁15を制御すれば、吸入負圧の応答性を向上させる上で有利である。具体的には、スロットル弁15の最終目標開度が全閉となっている期間の間にスロットル弁15を通過した空気量が相殺されるように、スロットル弁15が全閉状態から開弁するタイミングを遅らせるようにすればよい。
【0057】
本実施例では、吸気弁18側及び排気弁21側の双方の動弁機構が可変バルブタイミング機構25となっているが、吸気弁18側及び排気弁21側の動弁機構のうちの双方が可変バルブタイミング機構25である必要はなく、たとえば吸気弁18側の動弁機構のみを可変バルブタイミング機構25とし、排気弁21側の動弁機構を、そのバルブリフト特性が常に一定となる、いわゆる直動型のものとしてもよい。
【0058】
また、上述した実施例では、吸入負圧が変化し始めるタイミングと吸気弁18のバルブタイミングが変化し始めるタイミングとを同期させ、過渡の状態に応じてスロットル弁15の目標開度を増減補正しているが、吸入負圧が変化し始めるタイミングと排気弁21のバルブタイミングが変化し始めるタイミングとを同期させ、過渡の状態に応じてスロットル弁15の目標開度を増減補正するようにしてもよい。そして、吸入負圧が変化し始めるタイミングと吸気弁18及び排気弁21のバルブタイミングが変化し始めるタイミングとを同期させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…内燃機関
2…燃焼室
6…シリンダ
15…スロットル弁
18…吸気弁
25a…可変バルブタイミング機構
35…ECU
図1
図2
図3
図4
図5