(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の画像形成装置の実施形態を示す構成図である。
【0014】
図1に示す画像形成装置1は、シアン(C)、マゼンタ(M)、高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、およびブラック(K)の各色の画像ユニット10C,10M,10HC,10HM,10Y,10Kを有している。そして、この画像形成装置1は、これら6台の画像ユニット10C,10M,10HC,10HM,10Y,10Kを並列的に配置してなるタンデム型のカラープリンタとなっている。
【0015】
この画像形成装置1では、単色の画像のプリントが実行されるほか、6色のトナー像からなるフルカラーの画像のプリントも実行される。また、画像形成装置1では、用紙の片面のみへの画像のプリントが実行されるほか、用紙の両面への画像のプリントも実行される。
【0016】
トナーカートリッジ18C,18M,18HC,18HM,18Y,18Kには、上記の6色それぞれの色のトナーが収容されている。トナーは、例えば平均粒径が2μm以上7μm以下であり、円相当径が0.95以上1.0以下である。また、トナーカートリッジ18C,18M,18HC,18HM,18Y,18Kには、トナーの外添剤として潤滑剤も含まれている。
【0017】
6台の画像ユニット10C,10M,10HC,10HM,10Y,10Kは、ほぼ同様の構成を有しているため、これらを代表してシアンに対応する画像ユニット10Cを取り上げて説明する。画像ユニット10Cは、感光体11、帯電器12、露光器13、現像器14、および一次転写器15を備えている。また、画像ユニット10Cには、感光体11を清掃する感光体クリーナ16が設けられている。
【0018】
感光体11は円筒状の基体表面に感光体層が設けられたドラムであり、表面に形成される像を保持して円筒の軸周りである矢印A方向に回転する。帯電器12、露光器13、現像器14、一次転写器15、および感光体クリーナ16は、感光体11の周囲に矢印A方向の順に配置されている。
【0019】
帯電器12は、感光体11の表面を帯電させる。帯電器12は、感光体11の表面に接触する帯電ロールである。帯電器12には、現像器14におけるトナーと同極性の電圧が印加されており、接触する感光体11の表面を帯電させる。
【0020】
露光器13は、感光体11に露光光を照射することで、感光体11の表面を露光する。露光器13は、画像形成装置1外部から供給される画像信号に応じたレーザ光を発光し、レーザ光で感光体11の表面を走査する。
【0021】
現像器14は、現像剤を用いて感光体11の表面を現像する。現像器14にはトナーカートリッジからトナーが供給される。現像器14は、磁性キャリアとトナーが混合された現像剤を撹拌することでトナーおよび磁性キャリアを帯電し、帯電したトナーで感光体11表面を現像する。
【0022】
一次転写器15は、中間転写ベルト20を挟んで感光体11に対向したロールである。一次転写器15は、感光体11に対する電圧が印加されることで、感光体11上のトナー像を中間転写ベルト20に転写する。
【0023】
感光体クリーナ16は、感光体11の表面のうち、一次転写器15で転写が行われた部分に残ったトナー(残留トナー)を除去することによって、感光体11の表面を清掃する。
【0024】
また、画像形成装置1には、中間転写ベルト20、2台の用紙収納部30、二次転写器40、定着部50、用紙搬送部60、用紙冷却部70、カール矯正部80、用紙積載部90、制御部100、およびユーザインタフェース部110も備えられている。
【0025】
中間転写ベルト20は、ベルト支持ロール21に架け渡された無端のベルトである。中間転写ベルト20は、画像ユニット10C,10M,10HC,10HM,10Y,10K、および二次転写器40を経由する矢印Bの方向に循環移動する。中間転写ベルト20には、画像ユニット10C,10M,10HC,10HM,10Y,10Kから各色のトナー像が転写される。中間転写ベルト20は、これら各色のトナー像を保持しながら移動する。また、循環移動について、二次転写器40の下流側でシアンの画像ユニット10Cの上流側には、ベルトクリーナ22が配置されている。二次転写器40による転写後に中間転写ベルト20上に残った残留トナー等が、このベルトクリーナ22によって除去される。
【0026】
2台の用紙収納部30は、互いに寸法等が異なる用紙を収容する。各用紙収納部30には、その用紙収納部30に寸法等が対応した用紙が積み重ねられた状態で収容される。
【0027】
二次転写器40は、ベルト支持ロール21のうちの一つとの間に中間転写ベルト20および用紙を挟んで回転するロールである。二次転写器40は、トナーの帯電極性とは逆極性の電圧が印加されることで、中間転写ベルト20上のトナー像を用紙に転写する。
【0028】
画像ユニット10C,10M,10HC,10HM,10Y,10K、中間転写ベルト20、および二次転写器40を合わせたものが、本発明にいう像形成部の一例に相当する。
【0029】
定着部50は、トナー像を用紙上に定着させる装置である。定着部50が、本発明にいう定着装置の一実施形態に相当する。また、この定着部50は、本発明にいう画像形成装置が有する定着部の一例にも相当している。この定着部50については、後で詳細に説明する。
【0030】
用紙搬送部60は、用紙収容部30に収容された用紙を取り出して二次転写器40へと搬送する主搬送路R1と、両面プリント時に、片面への画像のプリントが終了した用紙を裏返して主搬送路R1に合流させる両面用搬送路R2とを有している。
【0031】
主搬送路R1には、用紙収容部30に収容された用紙を取り出す取出ロール61、取り出された用紙を捌く捌きロール62、この主搬送路R1上を矢印Cの方向に用紙を搬送する複数の搬送ロール63が配置されている。主搬送路R1には、さらに、用紙を二次転写器40に搬送するレジストレーションロール64、および、用紙を定着部50に搬送する搬送ベルト65も配置されている。
【0032】
両面用搬送路R2には、カール矯正部80からの用紙を用紙積載部90と、この両面用搬送路R2上とのいずれかに振り分ける振分部66、この両面搬送路R2上を矢印Dの方向に用紙を搬送する複数の搬送ロール63が配置されている。両面用搬送路R2には、さらに、用紙を裏返すために一時的に収容する一時収容部67、一時収容部67から用紙を送り出す送出ロール68が配置されている。
【0033】
これら主搬送路R1および両面用搬送路R2における用紙の動きについては、後で、画像形成装置1の基本動作と併せて説明する。
【0034】
用紙冷却部70は、定着部50での定着の際に加熱された用紙を冷却するものである。
【0035】
カール矯正部80は、定着部50での加熱および用紙冷却部70での冷却によって生じる用紙の曲がりを矯正するものである。
【0036】
用紙積載部90は、プリントが終了して排出される用紙が積載されるものである。
【0037】
次に、画像形成装置1の基本動作を説明する。
【0038】
図1に示す画像形成装置1の基本動作を説明すると、シアンの画像ユニット10Cでは、感光体11が矢印A方向に回転し、感光体11の表面が帯電器12によって帯電する。露光器13は、外部から供給される画像信号のうちのシアンに対応する画像信号に基づく露光光を感光体11の表面に照射することで、感光体11の表面に静電潜像を形成する。現像器14は、トナーカートリッジ18Cからシアンのトナーの供給を受け、感光体11の静電潜像をトナーで現像することで、トナー像を形成する。感光体11は、表面に形成されたシアンのトナー像を保持して回転する。感光体11の表面に形成されたトナー像は、一次転写器15によって中間転写ベルト20に転写される。転写後、感光体11に残留した残留トナーは、感光体クリーナ16によって除去される。
【0039】
中間転写ベルト20は、矢印B方向に循環移動している。シアン以外の色に対応する画像ユニット10M,10HC,10HM,10Y,10Kは、シアンの画像ユニット10Cと同様、それぞれの色に対応するトナー像を形成する。そして、中間転写ベルト20に、シアンのトナー像に重ねられて、それぞれの色のトナー像が転写されていく。
【0040】
用紙収容部30からは、用紙が取出ロール61によって取り出される。用紙は、搬送ロール63およびレジストレーションロール64によって、主用紙搬送路R1を二次転写器40に向かって矢印C方向に搬送される。レジストレーションロール64は、用紙を、中間転写ベルト20上にトナー像が転写されるタイミングに基づいて二次転写器40に送り込む。二次転写器40は、中間転写ベルト20のトナー像を用紙に転写する。転写後、中間転写ベルト20に残留した残留トナーは、ベルトクリーナ22によって除去される
トナー像が転写された用紙は搬送ベルト65によって定着部50に搬送される。定着部50は、用紙を加熱および加圧し、これにより、トナー像を用紙上に定着する。定着後の用紙は用紙冷却部70で冷却され、さらにカール矯正部80で曲がりが矯正される。
【0041】
本実施形態の画像形成装置1では、ユーザインタフェース部110において、用紙の片面のみへの画像のプリントを行うか、用紙の両面への画像のプリントを行うかが指定される。
【0042】
片面のみへの画像のプリントが指定された場合、制御部100からの指示により、振分部66が、カール矯正部80からの用紙を用紙積載部90へと向かわせる。
【0043】
一方、両面への画像のプリントが指定された場合、振分部66は用紙を両面用搬送路R2へと向かわせる。この両面用搬送路R2では、用紙は、まず複数の搬送ロール63によって矢印Dの方向に一時収容部67まで搬送される。その後、用紙は、一時収容部67から送出ロール68によって送り出され、さらに、搬送ロール63によって矢印Dの方向に搬送されて主搬送路R1に合流する。合流後、主搬送路R1を矢印Cの方向に搬送され、先にトナー像の転写を受けた面とは反対側の面を中間転写ベルト20に向けた状態で、レジストレーションロール64によって二次転写器40に送り出される。そして、この反対側の面にトナー像が転写され、定着部50で定着され、用紙冷却部70で冷却され、さらにカール矯正部80で曲がりが矯正される。そして、今度は、振分部66によって用紙積載部90へと振り分けられる。
【0044】
以上に説明したように、片面のみ、あるいは両面に画像が形成されて用紙積載部90へと排出された用紙は、この用紙積載部90上に積載される。
【0046】
図2は、定着部の内部構造を示す模式図である。
【0047】
この定着部50は、筐体51、無端の定着ベルト521を備えたベルトモジュール52、定着ロール53、ニップ入口案内部54、およびニップ出口案内部55を備えている。また、ベルトモジュール52は、定着ベルト521に加えて、固定パッド522、第1支持ロール523、第2支持ロール524、およびベルト温度検出センサ525を備えている。
【0048】
固定パッド522は筐体51に固定されており、第1支持ロール523および第2支持ロール524は、各ロールの長手方向に延びる回転軸の回りに回転自在に、筐体51に支持されている。そして、固定パッド522、第1支持ロール523、および第2支持ロール524に定着ベルト521が掛け回されている。
【0049】
定着ベルト521は、定着ベルト521における内面側から外面側にかけて、ベース層、弾性体層、および離型層とが積層されたものである。ベース層は、ポリイミド樹脂で形成されている。弾性体層は、シリコーンゴムで形成されている。また、離型層は、PFA(テトラフルオロエチレン ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)で形成されている。尚、定着ベルトの構造や材質は、上述した本実施形態における構造や材質に限るものではなく他の構造や材質であっても良い。
【0050】
固定パッド522は、ここでは特定しないが、外周面が、例えばアルミニウムやSUS(Special Use Stainless steel)で形成されたものである。また、本実施形態では、固定パッド522には、1本のハロゲンヒータ522aが内蔵されている。固定パッド522は、定着時には、このハロゲンヒータ522aによって約150℃に加熱される。尚、固定パッド内のハロゲンヒータの本数や、ハロゲンヒータによる加熱温度については、上記の本数(1本)および温度(150℃)に限るものではなく、他の本数や温度であっても良い。
【0051】
第1支持ロール523は、ここでは特定しないが、例えばアルミニウムやSUSで形成されたロールである。また、本実施形態では、第1支持ロール523には、4本のハロゲンヒータ523aが内蔵されている。第1支持ロール523は、定着時には、このハロゲンヒータ523aによって約190℃に加熱される。尚、第1支持ロール内のハロゲンヒータの本数や、ハロゲンヒータによる加熱温度については、上記の本数(4本)および温度(190℃)に限るものではなく、他の本数や温度であっても良い。
【0052】
第2支持ロール524は、例えばアルミニウムやSUSで形成されたロールである。また、本実施形態では、第2支持ロール524には、3本のハロゲンヒータ524aが内蔵されている。第2支持ロール524は、定着時には、このハロゲンヒータ524aによって約190℃に加熱される。尚、第2支持ロール内のハロゲンヒータの本数や、ハロゲンヒータによる加熱温度についても、上記の本数(3本)および温度(190℃)に限るものではなく、他の本数や温度であっても良い。
【0053】
また、本実施形態では、第2支持ロール524は、用紙にトナー像を定着する際に定着ベルト521に約150kgfの張力を付与すべく矢印Eが示す方向にバネ付勢されている。このバネ付勢については後で詳細に説明する。尚、第2支持ロールによって定着ベルト521に付与される張力については、約150kgfに限るものではなく、他の大きさの張力であっても良い。
【0054】
また、第2支持ロール524は、循環移動中の定着ベルト521を矢印Fが示す方向に捩じることで、定着ベルト521の幅方向の位置を制御する機構を介して筐体51に支持されている。この定着ベルト521の幅方向の位置を制御する機構については公知であり、ここでは説明を割愛する。
【0055】
筐体51には、定着ロール53が、定着ロール53の長手方向に延びる回転軸の回りに回転自在に支持されている。定着ロール53は、ここでは特定しないが、例えばアルミニウムやSUSで形成されたロールを基体として、この基体側から順に、弾性層と離型層が積層されたものである。弾性層はシリコーンゴムで形成され、離型層はPFAで形成されている。尚、定着ロールの構造や材質は、上述した本実施形態における構造や材質に限るものではなく他の構造や材質であっても良い。
【0056】
定着ロール53は、定着の際には定着ベルト521を挟んで固定パッド522に押し付けられ、定着時以外には固定パッド522から離される。この定着ロール53の固定パッド522に対する接離は不図示の機構によって行われるが、この機構についても公知であるので、ここでは説明を割愛する。また、定着の際には定着ロール53は不図示のモータによって回転駆動される。そして、定着ベルト521を挟んで固定パッド522に押し付けられた状態での定着ロール53の回転駆動により、定着ベルト521が定着ロール53の回転に従動して循環移動する。また、この循環移動中は、固定パッド522の、定着ロール53側の面を、定着ベルト521の内面が摺動する。
【0057】
ベルト温度検出センサ525は、定着ベルト521の温度を検出するセンサである。このベルト温度検出センサ525での検出結果は、
図1に示す制御部100に送られる。
【0058】
定着ベルト521が本発明にいう定着ベルトの一例に相当し、ベルトモジュール52が本発明にいうベルト組立体の一例に相当し、定着ロール53が本発明にいう加圧部材の一例に相当する。また、筐体51が本発明にいう支持部材の一例に相当し、固定パッド522が本発明にいう固定部材の一例に相当し、第1支持ロール523および第2支持ロール524が本発明にいう1つ以上の支持ロールの一例に相当する。
【0059】
本実施形態では、固定パッド522、第1支持ロール523、および第2支持ロール524それぞれに上述したようにハロゲンヒータが内蔵されており、定着時には、これらのハロゲンヒータに通電される。これにより、定着時の定着ベルト521は、これらのハロゲンヒータによって加熱される。また、上述したように、定着時には、定着ロール53が回転駆動されるとともに定着ベルト521を挟んで固定パッド522に押し付けられる。
【0060】
ここで、ハロゲンヒータによる固定パッド522、第1支持ロール523、および第2支持ロール524の加熱、定着ロール53の固定パッド522への押付け、および定着ロール53の回転駆動は、
図1に示す制御部100の制御の下に行われる。
【0061】
制御部100には、この画像形成装置1の外部から、形成対象の画像を表す画像信号が供給される。制御部100は、画像信号が供給されると、定着部50における固定パッド522、第1支持ロール523、および第2支持ロール524それぞれのハロゲンヒータに通電し、定着ロール53の固定パッド522への押付けおよび回転駆動を実行する。また、このときには、制御部100は、画像ユニット10C,10M,10HC,10HM,10Y,10Kや用紙搬送部60等を動作を開始させる。
【0062】
一方、供給された画像信号について画像形成が終了し、新たな画像信号の供給が無い場合には、制御部100は、上記の各部の動作を停止するとともに、定着ロール53の回転駆動の停止および固定パッド522からの離隔を実行する。また、制御部100は、固定パッド522、第1支持ロール523、および第2支持ロール524それぞれのハロゲンヒータへの通電を停止する。
【0063】
この制御部100の制御下で実行される定着時には、上記の押付けによって定着ベルト521と固定パッド522とが互いに圧接される領域(ニップ領域N)に、未定着のトナー像を保持した用紙が、ニップ入口案内部54によって矢印Cの方向に送り込まれる。用紙は、定着ロール53と定着ベルト521とに挟みつけられて加圧されるとともに、定着ベルト521からの熱によって加熱されつつ、ニップ領域Nから送り出される。そして、ニップ領域Nを通過中に受ける加圧と加熱とによって、トナー像が用紙上に定着される。その後、用紙は、ニップ出口案内部55によって、定着装置50外の用紙冷却部70(
図1参照)へと案内される。
【0064】
ここで、本実施形態では、固定パッド522の、ニップ領域Nに対応した外周面が次のような形状を有している。
【0065】
図3は、固定パッドの、ニップ領域Nに対応した外周面の形状を示す拡大図である。
【0066】
固定パッド522の外周面の、ニップ領域Nに対応した、定着ロール53が押し付けられる被押圧部分522bは、本実施形態では、曲率35mmの凹面形状をなしている。そして、矢印Cが示す用紙の搬送方向について、この被押圧部分522bの上流側のニップ入口部分522cと、下流側のニップ出口部分522dが、曲率4mmの凸面形状をなしている。尚、被押圧部分522bやニップ出口部分522dの曲率は、上記値の曲率に限るものではなく、他の値の曲率であっても良い。
【0067】
ニップ領域Nの入り口では、固定パッド522のニップ入口部分522cに倣って上方に曲率4mmで曲がっている定着ベルト521に案内されて、用紙がこの定着ベルト521と定着ロール53との間に滑り込む。
【0068】
ニップ領域Nでは、固定パッド522の被押圧部分522bの曲率35mmの形状に応じた範囲にわたって用紙が定着ベルト521と定着ロール53に挟みつけられて加熱および加圧される。ここで、本実施形態では、上述したように、固定パッド522の外周面が、アルミニウムやSUS等といった相対的に硬い材料で形成され、この固定パッド522に押し付けられる定着ロール53にはシリコーンゴム等の弾性層が設けられている。このため、ニップ領域Nでは専ら定着ロール53の外周面が、固定パッド522の外周面に倣って変形する。そして、変形の無い固定パッド522に巻き付いている定着ベルト521は、循環移動に当たって移動速度を一定に維持してニップ領域Nを通過する。これにより、ニップ領域Nにおける定着ベルト521のシワや歪みが抑制され、良質の定着画像が安定的に提供される。
【0069】
ニップ領域Nの出口では、固定パッド522のニップ出口部分522dに倣って上方に曲率4mmで曲げられる定着ベルト521と用紙上のトナー像との間にマイクロスリップが生じて、定着ベルト521とトナー像との付着力が弱められる。その結果、ニップ領域Nの出口では、用紙は、用紙自身が有している紙のコシによって定着ベルト521から剥離する。
【0070】
ここで、上述したように定着ベルト521には、
図2に示す第2支持ロール524によって約150kgfの張力が付与されている。定着時には、定着ベルト521は加熱されて柔軟性が増しているために、この張力の下、固定パッド522の上記の外周面の形状に倣って曲げられて循環移動する。
【0071】
一方、非定着時で定着ベルト521の加熱が停止されている場合、この定着ベルト521が、仮に、上記の張力が付与されたまま冷えていくとすると、定着ベルト521に次のような圧痕が生じてしまう恐れがある。
【0072】
上記のように、ニップ領域Nの入り口および出口では、張力が付与された定着ベルト521は、固定パッド522のニップ出口部分522dおよびニップ出口部分522dに倣って曲率4mmで曲げられる。定着ベルト521の循環経路の中では、このニップ領域Nの入り口および出口での曲率が最も小さい。そして、この曲率は、冷えて柔軟性が低下した定着ベルト521が、自身の復元力で元の延びた状態に戻れる曲率よりも小さい。
【0073】
このため、張力が付与されたまま定着ベルト521が冷えると、このように曲げられて張力が掛かったままで柔軟性が低下して、定着ベルト521には、その曲げられた形状の痕、即ち圧痕が生じる恐れがある。
【0074】
ここで、本実施形態では、
図1に示す制御部100の指示で、定着ベルト521の張力を緩和する張力緩和機構が設けられている。制御部100は、非定着時で加熱が停止している定着ベルト521について、
図2に示すベルト温度検出センサ525での検出温度が100℃を下回ると、張力緩和機構に定着ベルト521の張力を緩和させる。
【0075】
このベルト温度検出センサ525での検出温度が100℃を下回ったときが、本発明にいう「電源投入期間中の当該定着装置の不使用時」の一例に相当する。
【0076】
尚、この本発明にいう「電源投入期間中の当該定着装置の不使用時」はこれに限るものではない。本発明にいう「電源投入期間中の当該定着装置の不使用時」は、例えば、制御部100が、供給された画像信号について画像形成が終了し、新たな画像信号の供給が無いと判断したときであっても良い。あるいは、本発明にいう「電源投入期間中の当該定着装置の不使用時」は、定着装置において、用紙の定着後、予め定められた時間を経過しても次の用紙が供給されないとき等であっても良い。
【0077】
本実施形態では、この張力緩和機構は、第2支持ロール524のロール支持部の中に組み込まれている。
【0078】
図4は、張力緩和機構を含む、第2支持ロールのロール支持部を示す模式図である。
【0079】
第2支持ロール524のロール支持部526は、軸受け526a、支持ブロック526b、第1ガイド部材526c、圧縮バネ526d、第2ガイド部材526e、およびカム526fを備えている。
【0080】
軸受け526aは、第2支持ロール524の回転軸524bを回転自在に支持している。この軸受け526aは、支持ブロック526bに固定されている。
【0081】
第1ガイド部材526cは、第2支持ロール524が定着ベルト521に張力を付与する方向(矢印E1)あるいは張力を緩和する方向(矢印E2)に延びるガイド溝526c_1を有している。そして、このガイド溝526c_1に、支持ブロック526bが、矢印E1が示す方向および矢印E2が示す方向の双方に移動自在に嵌めこまれている。さらに、このガイド溝526c_1の底と支持ブロック526bとの間に圧縮バネ526dが配置されている。
【0082】
第2ガイド部材526eは、第1ガイド部材526cを側面から挟んで、この第1ガイド部材526cを、矢印E1と同方向の矢印F1が示す方向、および矢印E2と同方向の矢印F2が示す方向に移動自在に支持している。
【0083】
カム526fは、矢印G1が示す方向の回転により第1ガイド部材526cの外底面を定着ベルト521に向かって押上げる位置に配置されている。
【0084】
このロール支持部526では、カム526fが、矢印G1が示す方向に回転すると、第1ガイド部材526cが矢印F1方向に移動する。
【0085】
すると、支持ブロック526bが圧縮バネ526dを介して押し上げられ、その支持ブロック526bによって支持されている第2支持ロール524が矢印E1が示す方向に移動して定着ベルト521に張力を付与する。
【0086】
本実施形態では、圧縮バネ526dによる付勢力が、カム526fが第1ガイド部材526cの外底面を定着ベルト521に向かって押上げたときに第2支持ロール524が定着ベルト521に約150kgfの張力を付与する付勢力となっている。
【0087】
一方、カム526fが、矢印G1とは反対の矢印G2が示す方向に回転すると、第1ガイド部材526cが矢印F2方向に移動する。すると、この第1ガイド部材526cごと支持ブロック526b、延いては、第2支持ロール524が矢印E2が示す方向に移動する。これにより、定着ベルト521への張力が緩和される。
【0088】
このロール支持部526が、本発明にいう張力緩和機構の一例に相当する。
【0089】
本実施形態では、ロール支持部526におけるカム526fの矢印G1が示す方向あるいは矢印G2が示す方向への回転が、
図1に示す制御部100の制御の下に次のように行われる。この制御部100が、本発明にいう張力緩和制御部の一例に相当する。
【0090】
画像形成装置1の外部から供給された画像信号について画像形成が終了し、新たな画像信号の供給が無い場合、上述したように、制御部100は、定着ロール53の回転駆動の停止および固定パッド522からの離隔を実行する。さらに、制御部100は、固定パッド522、第1支持ロール523、および第2支持ロール524それぞれのハロゲンヒータへの通電を停止する。そして、制御部100は、通電停止後、定着ベルト521について、
図2に示す温度センサ525での検出温度が100℃を下回ると、カム526fを矢印G2が示す方向に回転させる。これにより、ロール支持部526で上記の動作が行われて定着ベルト521の張力が緩和される。このため、非定着時には、定着ベルト521は、ニップ領域Nの入り口および出口で緩んだ状態で冷え、ニップ領域Nの入り口および出口での上述した圧痕の程度が抑えられることとなる。
【0091】
ここで、定着ベルト521の張力を緩和する方法として、本実施形態とは異なり、固定パッド522を定着ベルト521から離れる方向に動かして、定着ベルト521の張力を緩和するという方法が考えられる。しかしながら、固定パッド522を動かす場合、可動部分の製造上のガタ等に起因して、定着ベルト521の移動方向についての固定パッド522の位置がズレる恐れがある。このような固定パッド522の位置のズレはニップ状態の不安定化を招く。
【0092】
本実施形態では、定着ベルト521の張力の緩和が、固定パッド522は動かさずに、第2支持ロール524を動かすことで行われる。このため、本実施形態では、上記のように固定パッド522を動かして定着ベルト521の張力を緩和する場合と比べて、ニップ状態の変化を抑えつつ定着ベルト521の張力が緩和されることとなる。
【0093】
また、本実施形態では、ユーザから電源遮断が指示されたとき、定着ベルト521の張力が既に緩和されていた場合は、定着ベルト521の張力を緩和したままで制御部100により電源遮断処理が行われる。一方、電源遮断が指示されたとき、定着ベルト521の張力が緩和されていなかった場合には、制御部100は、ロール支持部526に定着ベルト521の張力を緩和させた後に電源遮断処理を行う。
【0094】
尚、本実施形態では、本発明にいう張力緩和機構および張力緩和制御部の一例として、電源遮断時と定着ベルトの温度が100℃を下回ったときとの双方について定着ベルトの張力を緩和するロール支持部526および制御部100を例示している。しかしながら、本発明にいう張力緩和機構および張力緩和制御部は、これらに限るものではない。本発明の張力緩和機構および張力緩和制御部は、例えば電源遮断時にのみ定着ベルトの張力を緩和するものであっても良い。
【0095】
また、本実施形態では、本発明の画像形成装置の一例としてタンデム型のカラープリンタが例示されている。しかしながら、本発明の画像形成装置は、複数の現像器が回転軸の回りに配置されたいわゆるロータリー型のカラープリンタであっても良く、あるいはモノクロのプリンタであっても良い。また、本発明の画像形成装置は、プリンタに限るものではなく、複写機やファクシミリ等であっても良い。