特許第6051818号(P6051818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051818
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】高周波溶着装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/04 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   B29C65/04
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-261083(P2012-261083)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-104711(P2014-104711A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小平 和季
(72)【発明者】
【氏名】竹野 幸三
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−085660(JP,A)
【文献】 特開昭59−198117(JP,A)
【文献】 特開平07−262808(JP,A)
【文献】 特開平09−220766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の被溶着物を挟持して熱溶着するための第1及び第2金型と、
上記第1及び第2金型の少なくとも一方を他方に接離する方向に駆動する駆動手段と、
上記第1及び第2金型に高周波電流を供給して該金型を上記樹脂の溶融温度となるまで発熱させる高周波電流供給部と、
上記第1及び第2金型の離間距離によって変わる該第1及び第2金型への給電流値を検出する電流検出部と、
上記電流検出部で検出された電流値に基づいて上記被溶着物の溶着中における電流値の変化を得て、その電流値が変化しなくなったときに上記第1及び第2金型に供給する電流を遮断する制御装置とを備えていることを特徴とする高周波溶着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波溶着装置において、
上記高周波電流供給部は、自励発振回路を有していることを特徴とする高周波溶着装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の高周波溶着装置において、
上記被溶着物の溶着完了状態となるまで上記第1及び第2金型を接近させた際に、該第1及び第2金型がそれ以上接近するのを阻止する阻止部を備えていることを特徴とする高周波溶着装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の高周波溶着装置において、
上記電流検出部は、上記高周波電流供給部が有するダイオードに配線を介して接続されており、
複数の抵抗器が上記配線とアース間に並列に接続されていることを特徴とする高周波溶着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材等からなる被溶着物を熱溶着する際に用いられる高周波溶着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば樹脂材からなる被溶着物を熱溶着することが広く行われており、その方法の一つとして高周波溶着法がある。この高周波溶着法では、一対の金型に被溶着物を挟持した状態で、高周波電流発生回路から金型に高周波電流を供給して金型を発熱させて、金型の熱を被溶着物に伝達して被溶着物を溶着する。
【0003】
このときの高周波電流の制御方法としては、供給する高周波電流の大きさや、供給時間を所定の値に予め設定する方法が一般的であるが、そのように電流の大きさや供給時間によって一律に制御すると、被溶着物の状態等によっては過溶着となったり、溶着不足となってしまうことがある。
【0004】
それ以外の方法として、例えば特許文献1に開示されている溶着制御方法では、一対の金型を有する高周波溶着処理部に供給される電流値を計測し、その電流値に基づいて高周波電流を制御するようにして、高周波電流の供給時間を変化させるようにしている。
【0005】
具体的には、一対の金型と被溶着物とによってコンデンサを形成するとともに、金型に接続された電線によってコイルを形成し、これらコンデンサ容量及びコイル容量によって固有の共振周波数が決定されるようになっている。溶着装置の発振周波数は金型間距離に影響されずに一定とする。金型間距離が短くなるにつれて上記共振周波数が低下して発振周波数に近づいていき、発振周波数と共振周波数とが一致した時に最大の電流が流れることになり、それ以上時間が経過すると、逆に電流値は低下していく。その電流値を計測する電流計に、被溶着物の溶着開始点の電流値(Low基準値)と、溶着完了点の電流値(Hi基準値)とを表示しておき、この2点間の電流値の推移を確認しながら、所定の推移を示した場合に高周波電流の出力を遮断するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4765205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、被溶着物の溶着が進むにつれて金型間距離が短くなっていくことを利用して高周波電流の供給時間を決定することができるので、高周波電流の供給時間を、被溶着物の溶着状態に応じた時間とすることができるように思われる。
【0008】
ところが、実際に上記特許文献1の制御方法を用いて溶着した場合に溶着不良が発生することがあった。その原因は金型温度の変化にあった。すなわち、溶着を行う際、金型の温度は一定ではなく変化しており、この金型温度の変化によって金型の熱膨張度合いが変化して金型の成形面間の距離が変動してしまう。このことは特許文献1の制御方法においてコンデンサ容量、即ち電流値を変動させる結果となるが、特許文献1では、電流計のLow基準値とHi基準値とが予め一定の値に設定されているので、金型の熱膨張度合いが変動しても高周波電流の出力を遮断する際の基準(Low基準値、Hi基準値)は変わらないことになる。従って、高周波電流の供給時間が、金型の熱膨張度合いを考慮しない供給時間となってしまい、このことが溶着不良を招く原因となっていた。金型の熱膨張が悪影響するのは、特に精密な溶着が要求される薄いフィルム状の樹脂材を被溶着物とする場合である。
【0009】
そこで、被溶着物を溶着する過程でそのときの金型温度(金型の膨張度合い)に対応するように電流計のLow基準値とHi基準値とを随時変更することが考えられるが、現場においてスピーディに、かつ、適切に基準値を変更するのは困難である。
【0010】
また、金型温度の影響を抑制するため、高周波電流の供給時間が不足しないように供給時間をタイマーで長めに設定する方法も考えられるが、そのようにした場合には、溶着不足は解消できるものの、過溶着の恐れがあり、根本的な解決策とはならない。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被溶着物を高周波溶着する場合に、金型温度の変化が起こっても高周波電流の供給時間を実際の溶着状態に応じて適切に設定できるようにして高品質な溶着を安定して行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、金型に供給される電流を検出し、被溶着物の溶着中に電流値が変化しなくなったときに電流を遮断するようにした。
【0013】
第1の発明は、樹脂製の被溶着物を挟持して熱溶着するための第1及び第2金型と、
上記第1及び第2金型の少なくとも一方を他方に接離する方向に駆動する駆動手段と、
上記第1及び第2金型に高周波電流を供給して該金型を上記樹脂の溶融温度となるまで発熱させる高周波電流供給部と、
上記第1及び第2金型の離間距離によって変わる該第1及び第2金型への給電流値を検出する電流検出部と、
上記電流検出回路で検出された電流値に基づいて上記被溶着物の溶着中における電流値の変化を得て、その電流値が変化しなくなったときに上記第1及び第2金型に供給する電流を遮断する制御装置とを備えていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、第1及び第2金型と被溶着物とによってコンデンサが形成されるので、駆動手段によって第1金型と第2金型との少なくとも一方が駆動されて第1金型と第2金型との離間距離が変化すると、それが電流検出部によって電流値の変化として検出される。被溶着物の溶着開始から終了までは被溶着物が溶融しながら第1金型と第2金型とが接近していき、第1金型と第2金型とが最も接近して停止した状態で被溶着物が第1金型と第2金型とで挟持されて溶着が完了する。すなわち、溶着が完了した時点で第1金型と第2金型とが相対的に動かなくなり、電流検出部で検出された電流値が変化しなくなる。その電流値が変化しなくなったときに、制御装置は、第1及び第2金型への電流を遮断する。従って、被溶着物が完全に溶着されるまでは金型の熱膨張の度合いに関係なく電流が供給され続けるので溶着不足が起こることはなく、また、溶着が完了した時点で、金型の熱膨張の度合いに関係なく電流が遮断されるので過溶着になることもない。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
上記高周波電流供給部は、自励発振回路を有していることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、自励発振回路を用いることによって金型間距離に対応した電流値の検出を確実に行うことが可能になる。
【0017】
第3の発明は、第1または2の発明において、
上記被溶着物の溶着完了状態となるまで上記第1及び第2金型を接近させた際に、該第1及び第2金型がそれ以上接近するのを阻止する阻止部を備えていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、被溶着物が溶着完了状態となったときに、第1及び第2金型がそれ以上接近しなくなるので、溶着完了時点を確実に検出することが可能になる。
【0019】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、
上記電流検出部は、上記高周波電流供給部が有するダイオードに配線を介して接続されており、
複数の抵抗器が上記配線とアース間に並列に接続されていることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、ダイオードから出力される電流を低くして電流検出部に入力することが可能になるので、電流値の検出を安全、かつ、確実に行えるようになる。また、複数の抵抗器の使用により、例えばそのうちの1つの抵抗器が断線した場合に高電圧が発生する可能性が極めて少なくなり、安全で安定した電流検出を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、被溶着物の溶着中に金型に供給される電流値が変化しなくなったときに金型に供給する電流を遮断するようにしたので、金型温度の変化が起こって熱膨張度合いが変化しても高周波電流の供給時間を実際の溶着状態に応じて適切に設定することができ、高品質な溶着を安定して行うことができる。
【0022】
第2の発明によれば、高周波電流供給部が自励発振回路を有しているので、金型間距離に対応した電流値の検出を電流検出部によって確実に行うことができる。
【0023】
第3の発明によれば、被溶着物の溶着完了状態となるまで第1及び第2金型を接近させた際に、第1及び第2金型がそれ以上接近するのを阻止できるので、溶着完了時点を確実に検出して過溶着を未然に防止でき、より一層高品質な溶着を行うことができる。
【0024】
第4の発明によれば、電流検出部を、高周波電流供給部が有するダイオードに配線を介して接続し、配線とアース間に複数の抵抗器を並列に設けたので、電流検出部に入力する電圧を低くすることができる。これにより、安全、かつ、容易に電流値を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る高周波溶着装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る高周波溶着装置のブロック図である。
図3】溶着中の電流値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る高周波溶着装置1の概略構成を示す図である。この高周波溶着装置1は、例えば樹脂製のフィルム(被溶着物)と樹脂製のチューブ(被溶着物)とを熱溶着する場合などに使用することができるものである。被溶着物は、これらに限られるものはなく、各種樹脂材を溶着することができる。被溶着物は図1中に符号Wで模式的に示している。
【0028】
高周波溶着装置1は、溶着を実際に行う部分に相当する高周波溶着処理部2を備えており、この高周波溶着処理部2の基本的な構成は特許4765205号公報に開示されている高周波溶着処理部と同様な構成であり、高周波発振回路及び高周波同調回路を含み電源部から供給される電力を高周波エネルギーに変換し、金型に伝達する。すなわち、高周波溶着処理部2は、上側金型(第1金型)10及び下側金型(第2金型)11と、上側金型10を下側金型11に対し接離する方向(図1の上下方向)に駆動するためのシリンダ装置(駆動手段)12と、高周波電流供給装置(高周波電流供給部)14と、電流検出器(電流検出部)15と、溶着制御装置(本発明の制御装置)16とを備えている。
【0029】
上側金型10の下面は、被溶着物Wを加熱溶融させて所定形状に成形する加熱面10aとなっている。また、下側金型11の上面は、被溶着物Wを加熱溶融させて所定形状に成形する加熱面11aとなっている。加熱面10a,11aで加熱された被溶着物Wが溶着すると同時に所定形状に成形されることになる。加熱面10a,11aの熱源は、高周波電流供給装置14から供給される高周波電流である。従って、加熱面10a,11aは高周波電流の供給によって発熱するように構成されている。
【0030】
上側金型10には、ストッパ(阻止部)10bが設けられている。ストッパ10bは、上側金型10を下側金型11に接近させていったとき、上側金型10の加熱面10aと下側金型11の加熱面11aとが所定の離間距離よりも接近してしまうのを防止するためのものである。この所定の離間距離とは、被溶着物Wが溶着後に設計通りの形状となるように成形することができる距離であり、溶着が完了する距離である。つまり、ストッパ10bは、被溶着物Wの溶着完了状態となるまで上側及び下側金型10,11を接近させた際に、第1及び第2金型10,11がそれ以上接近するのを阻止するためのものである。ストッパ10bは第1及び第2金型10,11のいずれに設けてもよい。また、シリンダ装置12にストッパを設けてもよい。
【0031】
上側金型10には、上側配線20が接続されている。また、下側金型11には、下型配線21が接続されている。
【0032】
上側金型10及び下側金型11は、被溶着物Wと共にコンデンサ6を形成する。コンデンサ6の容量Cは、上側金型10及び下側金型11の加熱面10a,11aの面積をA、加熱面10a,11aの離間距離をl、被溶着物Wの誘電率をεとすると次式(1)で示される。
【0033】
コンデンサの容量 C = 8.855×10−12εA/1・・・(1)
また、上側金型10及び下側金型11は、上側及び下側配線20,21によってコイルを形成する。従って、コンデンサ6の容量をC(F)とし、コイルの容量をL(H)とすると、固有の共振周波数fは次式(2)により示される。
【0034】
共振周波数 f = 1/2π√(L・C)・・・(2)
溶着を開始するときは、被溶着物Wをセットするために上側金型10及び下側金型11の離間距離を広くする。このとき(溶着開始点)には、共振周波数fが高い。溶着が進んで上側金型10及び下側金型11の離間距離が狭くなるにつれて(上記離間距離lが小さくなるにつれて)、共振周波数fは徐々に低くなる。
【0035】
上記シリンダ装置12は、例えば油圧シリンダや空気圧シリンダ等の各種アクチュエータを用いることができる。シリンダ装置12は、型制御装置18によって制御されて所定のタイミングで作動するように構成されている。尚、シリンダ装置12は、下側金型11に設けて下側金型11を駆動するようにしてもよいし、上側金型10と下側金型11の両方に設けて両方を駆動するようにしてもよい。
【0036】
溶着開始直前に上側金型10の加熱面10a及び下側金型11の加熱面11aが被溶着物Wに接触するようになっている。そして、被溶着物Wは、溶着中、両加熱面10a,11aによって所定の押圧力を受ける。
【0037】
高周波電流供給装置14は、上側金型10及び下側金型11に高周波電流を供給するためのものであり、いわゆる発振器を構成している。高周波電流供給装置14は、高圧電源となる昇圧トランス30と、整流ダイオード31と、発振管32とを備えている。昇圧トランス30には、スイッチ35を介して電源が接続されている。スイッチ35は、溶着制御装置16によって制御される。昇圧トランス30は整流ダイオード31に接続されており、昇圧トランス30から出力された電流は整流ダイオード31によって整流される。発振管32は整流ダイオード31に接続されるとともに、上記上側配線20にも接続されている。発振管32は、自励発振回路を構成するものであり、本実施形態では真空管である。
【0038】
高周波電流供給装置14の発振周波数は、上側金型10及び下側金型11の離間距離に影響されずに一定である。
【0039】
整流ダイオード31には、上側金型10及び下側金型11に流れる電流値の大きさを検出するための配線37が接続されている。配線37は、電流検出器15に接続されている。配線37の整流ダイオード31と電流検出器15との間には、第1〜第3抵抗器41〜43が並列に設けられている。第1抵抗器41は、電気回路の安全対策のためのものであり、例えば10Ω程度の抵抗器である。第2抵抗器42及び第3抵抗器43は、第1抵抗器41よりも電流検出器15に近い側に、配線37の延びる方向に間隔をあけて設けられている。第2抵抗器42及び第3抵抗器43を設けることで配線37のインピーダンスを低下させて電流検出器15に入力される電圧を十分に低くすることが可能になる。よって、電流検出器15は高電圧対応型の特別なものは必要なく、また、安全性を高めることができる。
【0040】
溶着制御装置16は、電流検出器15で検出された電流値に基づいて被溶着物Wの溶着中における電流値の変化を得て、その電流値が変化しなくなったときに上側金型10及び下側金型11に供給する電流を遮断するように構成されており、いわゆるPLC( Programmable Logic Controller)を使用することができる。
【0041】
図2に示すように、溶着制御装置16には、電流検出器15及びスイッチ35が接続されている。制御装置16は、マイクロコンピュータ16aを内蔵している。マイクロコンピュータ16aには、電流検出器15から出力される電流値信号が常時入力されるようになっているとともに、型制御装置18から出力される型駆動信号も入力されるようになっている。型駆動信号は、溶着開始時にあるか、上側金型10が駆動中であるかを表す信号であり、型制御装置18から出力される。
【0042】
マイクロコンピュータ16aは、型駆動信号に基づいて、溶着開始時にあるか否か、及び上側金型10が駆動中であるかを判定するように構成されている。さらに、マイクロコンピュータ16aは、溶着開始時にあると判定した場合には、スイッチ35をON状態にするよう制御信号を出力する。また、マイクロコンピュータ16aは、溶着開始時から上側金型10が駆動されていると判定している間には、電流検出器15から入力された電流値の変化割合を所定のサイクルで継続して求める。そして、変化割合が0、即ち、電流値が変化しなくなったか否かを判定し、変化割合が0になったらスイッチ35をOFF状態にするように制御信号を出力する。
【0043】
次に、上記のように構成された高周波溶着装置1を用いて被溶着物Wを溶着する場合について説明する。型開き状態の上側金型10及び下側金型11の間に被溶着物Wを配置して溶着をスタートする。型制御装置18がシリンダ装置12を制御して上側金型10を下側金型11に接近させていくと、上側金型10及び下側金型11が被溶着物Wに接触する。このとき、溶着制御装置16は、型制御装置18から出力される信号に基づいて溶着開始時にあると判定し、スイッチ35をON状態にする。すると、高周波電流が高周波電流供給装置14によって上側金型10及び下側金型11に供給される。これにより、上側金型10及び下側金型11の加熱面10a,11aが加熱し、加熱面10a,11aの熱が被溶着物Wに伝達して被溶着物Wが溶融する。その間、上側金型10は下側金型11に接近し続けている。
【0044】
上側金型10が下側金型11に接近していくことで、コンデンサ6の容量が変化していき、このことで共振周波数fが徐々に低くなっていく。一方、発振周波数は、溶着初期の共振周波数fよりも低い周波数としており、その周波数に固定である。従って、溶着が進み、上側金型10及び下側金型11間の距離が低下するに伴って最初高かった共振周波数fは発振周波数に近づいてくるので、図3にAとして示すように電流値が上昇していく。そして、発振周波数と共振周波数fとが一致した時に最大電流が流れる。
【0045】
上側金型10及び下側金型11間の離間距離が更に短くなり、共振周波数が発振周波数よりも小さくなると逆に電流値は低下していく(図3のBの領域)。図3のA及びBの領域では電流値が変化しているので、溶着制御装置16は上側金型10が駆動されていると判定し、スイッチ35をON状態のままにする。
【0046】
そして、上側金型10のストッパ10bが下側金型11に当接すると、上側金型10が停止して上側金型10及び下側金型11間の距離が変動しなくなる。上側金型10が停止すると、電流値が変動しなくなる(図Cの領域)。すると、溶着制御装置16は電流値の変化割合が0になったと判定して、スイッチ35をOFF状態にするように制御信号を出力する。これにより、電流が遮断される。
【0047】
尚、この高周波溶着装置1では、共振周波数を変更する際には、上側金型10及び下側金型11の加熱面10a,11aの面積、コイルの容量、コンデンサーの容量等の変更により容易に行うことが可能である。この実施形態では、上側金型10及び下側金型11の離間距離が変動する際に、これら金型10,11の変動範囲内に、発振回路を流れる電流値の極大が存在するように上記変更を行う。
【0048】
以上説明したように、溶着が完了して上側金型10と下側金型11とが相対的に動かなくなり、電流検出器15で検出された電流値が変化しなくなったときに、溶着制御装置16は、上側金型10と下側金型11への供給電流を遮断する。従って、被溶着物Wが完全に溶着されるまでは金型10,11の熱膨張の度合いに関係なく電流が供給され続けるので溶着不足が起こることはなく、また、溶着が完了した時点で、金型10,11の熱膨張の度合いに関係なく電流が遮断されるので過溶着になることもない。これにより、金型10,11の熱膨張度合いが変化しても高周波電流の供給時間を実際の溶着状態に応じて適切に設定することができ、高品質な溶着を安定して行うことができる。
【0049】
また、自励発振回路を有しているので、金型10,11間距離に対応した電流値の検出を電流検出器15によって確実に行うことができる。
【0050】
また、電流検出器15をダイオード31に配線37を介して接続し、配線37とアース間に第1〜第3抵抗器41〜43を並列に設けたので、電流検出部に入力する電圧を低くすることができる。これにより、安全、かつ、容易に電流値を検出することができる。
【0051】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明にかかる高周波溶着装置は、例えば、医療用の樹脂製器具を製造する場合に使用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 高周波溶着装置
10 上側金型(第1金型)
10a 加熱面
10b ストッパ(阻止部)
11 下側金型(第2金型)
11a 加熱面
12 シリンダ装置(駆動手段)
14 高周波電流供給装置(高周波電流供給部)
15 電流検出器(電流検出部)
16 溶着制御装置(制御装置)
18 型制御装置
31 ダイオード
32 発振管
37 配線
41〜43 第1〜第3抵抗器
W 被溶着物
図1
図2
図3