(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照しながら、本実施形態を説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面における各部材の大きさや比率は、説明の都合上誇張され実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
【0013】
(本実施形態)
本実施形態に係る成形方法、その成形方法を具現化した成形装置1、およびその成形装置1によって成形した成形品50aについて、
図1〜
図24を参照しながら説明する。
【0014】
まず、成形装置1の構成について、成形装置1を後部に備えた加工機100の構成も含め、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、成形装置1を後部に備えた加工機100を示す模式図である。
図2は、成形装置1の主要部を一側面から示す端面図である。
図3は、
図2に図示した成形装置1に係る打抜部10aと搬出部40とを示す端面図である。
図3(a)は、打抜部10aと搬出部40とを一側面から示している。
図3(b)は、打抜部10aと搬出部40とを一側面に隣接する他側面から示している。
【0016】
成形装置1を備えた加工機100について、その構成を概説する。加工機100は、後で参照する
図24に示す成形品50aとなる領域内に対して、開口または凹凸を成形する。開口は、たとえば後述するカソードガス供給口51に相当する。凹凸は、たとえば後述する凸状部57に相当する。一連の加工工程を経た後、成形装置1によって、最終工程に相当する外形トリム工程を行う。すなわち、成形装置1によって被加工部材50を打ち抜き、成形品50aを成形する。成形装置1は、加工機100の後部に設けている。加工機100は、たとえば、上型110、下型120、コイル130、フィーダー140および150、フィーダー制御部160、プレス制御部170、高圧チャンバー180、および液圧制御部190を含んでいる。
【0017】
加工機100の上型110および下型120を用いて、板金状の被加工部材50に相当するコイル130に対して、開口または凹凸を成形する。上型110および下型120の上流側には、コイル130を搬入するフィーダー140を設けている。一方、上型110および下型120の下流側には、コイル130を搬出するフィーダー150を設けている。フィーダー制御部160は、フィーダー140によるコイル130の搬入速度やタイミング、およびフィーダー150によるスクラップとなったコイル130の搬出速度やタイミングを制御する。プレス制御部170は、移動型である上型110を、固定型である下型120に対して付勢させた後、その下型120から離間させるように制御する。液圧制御部190は、高圧チャンバー180から成形装置1に対して流体を送液させる。
【0018】
成形装置1について、詳細に説明する。成形装置1は、板状の被加工部材50から成形品50aを打ち抜く。成形装置1は、挟持部10、充填部20、制御部30に加えて、たとえば搬出部40を有している。
【0019】
挟持部10は、被加工部材50を付勢して挟持する。
【0020】
挟持部10は、
図2および
図3に示すように、打抜部10aと封止部10bとによって、被加工部材50を付勢して挟持する。打抜部10aは、成形品50aの外周形状に対応した打抜孔11aを開口している。打抜部10aは、たとえば、下型11、保持部材12、側部支持部材13、および下部支持部材14を含んでいる。下型11は、たとえば、鋼材からなり、長方形状に形成している。下型11の中央には、成形品50aの外周形状に対応した打抜孔11aを上部から下部に向かって貫通するように開口している。下型11の上面に、被加工部材50を載置する。下型11は、固定型である。保持部材12は、たとえば、鋼材からなり、成形品50aの外周形状に対応した形状に形成している。保持部材12は、打抜孔11aの内部において、上下方向に移動可能に備えている。
【0021】
側部支持部材13は、たとえば、鋼材からなり、円柱形状に形成している。側部支持部材13は、たとえば、
図2および
図3(a)に示すように下型11の下方であって、
図3(b)に示すように両端と中央に3組設けている。側部支持部材13は、保持部材12の下部を、その保持部材12の側方から支持している。3組の側部支持部材13は、下型11から保持部材12の下部に突出した状態から、後で参照する
図13に示すように下型11の内部に収納することができる。すなわち、側部支持部材13は、水平方向に対して伸縮可能に設けている。側部支持部材13が保持部材12の下部に突出してその保持部材12の下部を支持している状態では、
図2に示すように下型11の上面と保持部材12の上面との位置が一致している。側部支持部材13が下型11の内部に収納されると、後で参照する
図13に示すように、保持部材12は下方に移動する。
【0022】
下部支持部材14は、たとえば、
図2および
図3(a)に示すように下型11の下方であって、
図3(b)に示すように下型11の両端に位置するように2個設けている。下部支持部材14は、保持部材12の下部を、その保持部材12の下方から支持している。2個の下部支持部材14は、保持部材12を下方に移動させることができる。すなわち、下部支持部材14は、垂直方向に伸縮可能に設けている。2個の下部支持部材14が下方に移動していない状態で、下型11の上面と保持部材12の上面との位置が一致している。2個の下部支持部材14が、等しい移動距離で下方に移動すると、後で参照する
図15に示すように、保持部材12は傾斜していない状態で下方に移動する。2個の下部支持部材14の一方を移動させず他方を下方に移動させると、後で参照する
図18に示すように、保持部材12は傾斜した状態になる。保持部材12を傾斜させることによって、保持部材12に載置した成形品50aを滑らせて、搬出部40に移動させる。
【0023】
挟持部10の封止部10bは、被加工部材50との間に空間部15bを備え打抜孔11aの外方の全周に沿って封止する。封止部10bは、たとえば、上型15、被押圧部材16、移動基準フランジ17、押圧部材18、および伸縮バネ19を含んでいる。上型15は、たとえば、鋼材からなり、下部に開口を設けた凹状部に形成している。上型15は、内部に空間部15bを設けている。空間部15bには、後述する充填部20から供給された水60を充填する。上型15は、開口の縁の全周に沿って、たとえば伸縮性を備えた樹脂材からなる密着部15aを設けている。上型15は、被加工部材50を載置した下型11に対して、密着部15aを介して密着する。上型15は、移動型である。
【0024】
封止部10bの被押圧部材16は、たとえば、鋼材からなり、長方形状に形成している。被押圧部材16の下部は、上型15の上部に接合している。移動基準フランジ17は、たとえば、鋼材からなり、円柱形状に形成している。移動基準フランジ17は、被押圧部材16の中央に備えられた開口に対して、上下方向に移動可能に挿入している。移動基準フランジ17の下方は、径方向外方に突出して形成し、その移動基準フランジ17が被押圧部材16の上方に突き抜けることを防止している。
【0025】
封止部10bの押圧部材18は、たとえば、鋼材からなり、長方形状に形成している。押圧部材18の下部の中央に、移動基準フランジ17の上部を接合結している。押圧部材18によって被押圧部材16を押圧すると、上型15の密着部15aが下型11に載置した被加工部材50に密着する。伸縮バネ19は、被押圧部材16の上部に開口した穴に挿入され、移動基準フランジ17の上部を挿通している。押圧部材18が被押圧部材16を押圧するときに、伸縮バネ19の伸縮力を用いて、その押圧部材18が被押圧部材16に対して衝撃を与えないようにしている。押圧部材18が被押圧部材16を押圧していない状態のときに、伸縮バネ19の伸縮力を用いて、押圧部材18と被押圧部材16とを離間させている。伸縮バネ19は、たとえば、金属からなり、螺旋形状に形成している。
【0026】
充填部20は、空間部15bに流体を充填する。
【0027】
充填部20は、制御部30の制御に基づき、空間部15bに流体を充填する。充填部20は、たとえば、送液ポンプ21、高圧チャンバー22、および供給バルブ23を含んでいる。送液ポンプ21は、後で参照する
図7等に示すように、挟持部10の打抜部10aと封止部10bとによって被加工部材50が挟持された状態で、空間部15b内に流体を充填する。流体には、たとえば、非圧縮性流体である水60を用いる。送液ポンプ21は、水60を所定の圧力に加圧しつつ送液する。高圧チャンバー22は、送液ポンプ21と空間部15bとの間に設け、加圧した水60を一時的に貯蔵する。供給バルブ23は、被押圧部材16および上型15に挿通して設け、高圧チャンバー22内の水60を空間部15bに供給する。
【0028】
制御部30は、充填部20の動作を制御する。
【0029】
制御部30は、たとえば、コントローラ31を含んでいる。コントローラ31は、成形装置1の制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、制御プログラムに基づいて成形装置1の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)、制御中の各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいる。コントローラ31は、後で参照する
図7に示すように、空間部15bに充填されている流体を被加工部材50が打抜孔11aによって打ち抜かれない第1圧力P1に加圧して、被加工部材50に生じる歪みを除去するように、充填部20を制御する。その後、コントローラ31は、後で参照する
図9等に示すように、流体を第1圧力P1よりも高圧であって被加工部材50が打抜孔11aによって打ち抜かれる第2圧力P2に加圧して、被加工部材50から成形品50aを打ち抜くように充填部20を制御する。制御部30は、
図1に示す液圧制御部190を含む。
【0030】
搬出部40は、被加工部材50から打ち抜かれた成形品50aを成形装置1の外部に搬出する。
【0031】
搬出部40は、
図3(b)に示すように、搬出ベルト41、駆動ローラ42、および図示せぬ従動ローラを含んでいる。搬出ベルト41は、無端状のベルトからなる。駆動ローラ42および図示せぬ従動ローラは、搬出ベルト41の内周面の両端にそれぞれ設けている。駆動ローラ42を駆動すると搬出ベルト41が回転し、その搬出ベルト41に載置された成形品50aが、成形装置1の外部に搬出される。
【0032】
つぎに、成形装置1で具現化される成形方法について、
図4〜
図19を参照しながら説明する。
【0033】
図4は、成形装置1を用いた成形加工を示すフローチャートである。
図5は、
図4のS1およびS2に係る成形装置1の主要部を一側面から示す端面図である。
図6は、
図5に図示した成形装置1の空間部15bの圧力値を示す図である。
図7は、
図4のS3〜S5に係る成形装置1の主要部を一側面から示す端面図である。
図8は、
図7に図示した成形装置1の空間部15bの圧力値を示す図である。
図9は、
図4のS6に係る成形装置1の主要部を一側面から示す端面図である。
図10は、
図9に図示した成形装置1の空間部15bの圧力値を示す図である。
図11は、
図4のS6の終端に係る成形装置1の主要部を一側面から示す端面図である。
図12は、
図11に図示した成形装置1の空間部15bの圧力値を示す図である。
【0034】
図13は、
図4のS7に係る成形装置1の主要部を一側面から示す端面図である。
図14は、
図13に図示した成形装置1の空間部15bの圧力値を示す図である。
図15は、
図13に図示した成形装置1に係る打抜部10aおよび搬出部40を示す端面図である。
図15(a)は、打抜部10aおよび搬出部40を一側面から示している。
図15(b)は、打抜部10aおよび搬出部40を一側面に隣接する他側面から示している。
図16は、
図4のS8に係る成形装置1の主要部を一側面から示す端面図である。
図17は、
図16に図示した成形装置1の空間部15bの圧力値を示す図である。
【0035】
図18は、
図4のS9に係る成形装置1の打抜部10aおよび搬出部40を示す端面図である。
図18(a)は、打抜部10aおよび搬出部40を一側面から示している。
図18(b)は、打抜部10aおよび搬出部40を一側面に隣接する他側面から示している。
図19は、
図18に図示した状態に引き続き成形装置1の打抜部10aおよび搬出部40を示す端面図である。
図19(a)は、打抜部10aおよび搬出部40を一側面から示している。
図19(b)は、打抜部10aおよび搬出部40を一側面に隣接する他側面から示している。
【0036】
成形装置1で具現化される成形方法は、挟持工程、歪除去工程、打抜工程に加えて、たとえば挟持解除工程および搬送工程を含んでいる。以下、各工程について順に説明する。
【0037】
挟持工程では、被加工部材50を付勢して挟持する。挟持工程は、
図4のS1およびS2に相当する。挟持工程では、成形装置1を
図3に示す状態から
図5に示す状態に動作させる。具体的には、押圧部材18を用いて被押圧部材16を下方に押圧することによって、封止部10bを挟持部10の打抜部10aに対して接近させる(S1)。さらに、上型15の密着部15aと被加工部材50とを密着させた状態で、被加工部材50を打抜部10aと封止部10bとによって挟持する(S2)。
図5に示す状態では、成形装置1の空間部15bに水60が充填されていないことから、
図6に示す空間部15bにおける水60の水圧Paは0である。
【0038】
歪除去工程では、被加工部材50に生じる歪みを除去する。歪除去工程は、
図4のS3〜S5に相当する。歪除去工程では、成形装置1を
図5に示す状態から
図7に示す状態に動作させる。具体的には、封止部10bの空間部15bに水60を充填し(S3)、空間部15bに充填された水60を第1圧力P1に加圧し(S4)、被加工部材50に生じる歪みを除去する(S5)。成形装置1の空間部15bに充填された水60の水圧Pbは、
図8に示す第1圧力P1の範囲内で上昇させる。第1圧力P1は、空間部15bに充填した水60で被加工部材50を押圧しても、その被加工部材50から成形品50aが打ち抜かれない圧力である。第1圧力P1に加圧した水60を用いて、被加工部材50に生じる歪みを除去する。
【0039】
打抜工程では、被加工部材50から成形品50aを打ち抜く。打抜工程は、
図4のS6およびS7に相当する。打抜工程では、まず成形装置1を
図7に示す状態から
図9を介して
図11に示す状態まで動作させる。具体的には、空間部15bに充填された水60を第2圧力P2に加圧する(S6)。第2圧力P2は、空間部15bに充填した水60で被加工部材50を押圧すると、その被加工部材50から成形品50aが打ち抜かれる圧力である。
図10に示すように、成形装置1の空間部15bに充填された水60の水圧Pcを、所定の時間にわたり一定の値に維持させる。つぎに、成形装置1を
図9に示す状態から、さらに
図11に示す状態に動作させる。具体的には、空間部15bに充填された水の圧力を、
図10に示す一定の値に維持された圧力Pcから、
図12に示す圧力Pdまで増加させる(S6)。圧力Pdは、第2圧力P2の上限値である。
【0040】
ここで、打抜工程において、成形装置1を
図11に示す状態から
図13および
図15に示す状態に動作させる。すなわち、空間部15bに充填された水の圧力を
図12に示す圧力Pdにした直後に、被加工部材50から成形品50aを打ち抜く(S7)。具体的には、たとえば、空間部15bに充填された水の圧力を
図12に示す圧力Pdにした直後に、3組の側部支持部材13を下型11の内部に収納し、かつ2個の下部支持部材14を等しい移動距離で下方に移動させて、保持部材12を下方に移動させる。被加工部材50から打ち抜かれた成形品50aが、保持部材12に載置された状態で下方に移動する。このとき、上型15の密着部15aと被加工部材50とが密着した状態で、上型15の空間部15bに充填されていた水60が打抜孔11aを介して排出され始める。成形品50aが打ち抜かれた直後、
図14に示す水60の水圧Peは、
図12に示す水60の水圧Pdよりも低下する。
【0041】
挟持解除工程では、被加工部材50の挟持を解除する。この被加工部材50は、成形品50aが打ち抜かれた後のものである。挟持解除工程は、
図4のS8に相当する。挟持解除工程では、成形装置1を
図13に示す状態から
図16に示す状態に動作させる。具体的には、被押圧部材16を下方に押圧していた押圧部材18を上昇させることによって、上型15の密着部15aと被加工部材50との密着を解き、挟持部10の打抜部10aから封止部10bを離間させる(S8)。成形装置1の空間部15bから水60が排出されたことから、
図17に示す水60の水圧Pfは0となっている。
【0042】
搬送工程では、被加工部材50から打ち抜かれた成形品50aを搬送する。搬送工程は、
図4のS9に相当する。搬送工程では、成形装置1を
図16に示す状態から
図18に示す状態を介して
図19に示す状態に動作させる。具体的には、
図18に示すように、2個の下部支持部材14の一方(
図18中の右側)を移動させず、他方(
図18中の左側)を下方に移動させることによって、保持部材12を傾斜した状態にさせる。保持部材12を傾斜させることによって、
図19に示すように、保持部材12に載置した成形品50aを滑らせて搬出部40に移動させる。搬出部40は、成形品50aを搬出ベルト41に載置した状態で成形装置1の外部に搬出する。
【0043】
ここで、成形方法における水60の圧力制御および保持部材12の位置制御について、
図20〜
図23を参照しながら説明する。
【0044】
図20は、成形装置1を用いた成形加工時の水60の圧力と保持部材12の位置との関係(例1)を示すタイムチャートである。
図21は、成形装置1を用いた成形加工時の水60の圧力と保持部材12の位置との関係(例2)を示すタイムチャートである。
図22は、成形装置1を用いた成形加工時の水60の圧力(例3)を示すタイムチャートである。
図23は、成形装置1を用いた成形加工時の水60の圧力(例4)を示すタイムチャートである。
【0045】
図20は、
図4〜
図19を参照しながら前述した成形装置1の成形加工に係るタイムチャートである。時刻T0〜T1において、
図7に示す空間部15bに充填された水60を第1圧力P1の範囲内で徐々に加圧して、被加工部材50に生じる歪みを除去する。時刻T1を超えた直後から時刻T2において、
図9に示す空間部15bに充填された水60を第2圧力P2の範囲内において一定の圧力で加圧する。時刻T2を超えた直後から時刻T3において、
図13に示す空間部15bに充填された水60を第2圧力P2の上限値まで増加させる。時刻T3に被加工部材50から成形品50aが打ち抜かれる。その打ち抜かれるタイミングに合わせて、保持部材12を
図15に示すように水平のまま降下させ、その状態で所定の時間にわたり保持する。水60は、空間部15bから排出される。その後、時刻T4までに保持部材12を
図18(b)に示すように傾斜した状態で降下させ、その状態で時刻T5まで保持する。時刻T5までに搬出部40によって成形品50aを搬出する。時刻T5の直後から時刻T6にかけて、保持部材12を
図5に示す元の位置まで上昇させる。
【0046】
図21は、
図4〜
図19を参照しながら前述した成形装置1の成形加工において、第1圧力P1および第2圧力P2を変動させる構成としたものである。このように構成した成形方法によれば、水60を用いて押圧している被加工部材50に局所的な歪みが残留している場合、その水60に印加する第1圧力を変動させることによって、その局所的な歪みを除去することができる。一方、水60に印加する第2圧力を変動させることによって、被加工部材50から成形品50aをスムーズに打ち抜くことができる。
【0047】
図22は、
図21に示す成形加工において、パルス状に変動させて印加した第1圧力P1の周期L1と、パルス状に変動させて印加した第2圧力P2の周期L2とが、段階的に短くなるように、第1圧力P1および第2圧力P2を変動させる構成である。一方、
図23は、
図21に示す成形加工において、パルス状に変動させて印加した第1圧力P1の圧力値S1と、パルス状に変動させて印加した第2圧力P2の圧力値S2とが、段階的に高まるように、第1圧力P1および第2圧力P2を変動させる構成である。上記の構成したいずれの成形方法によっても、水60を用いて押圧している被加工部材50に対して段階的に高負荷を掛けることが可能である。したがって、被加工部材50に残留している局所的な歪みをスムーズに除去したり、被加工部材50から成形品50aをスムーズに打ち抜いたりすることができる。
【0048】
つぎに、成形装置1によって被加工部材50から打ち抜いて成形した成形品50aについて、
図24を参照しながら説明する。
【0049】
図24は、成形装置1によって被加工部材50から打ち抜いて成形した成形品50aを示す斜視図である。
【0050】
成形品50aは、たとえば、燃料電池用の金属セパレータに相当する。成形品50aは、その長手方向の一端に、カソードガス供給口51、冷却流体供給口52、およびアノードガス供給口53を、それぞれ開口している。一方、成形品50aは、長手方向の他端に、カソードガス排出口54、冷却流体排出口55、およびアノードガス排出口56を、それぞれ開口している。これらの開口は、成形装置1によって外形トリム工程を行う前に、加工機100によって加工したものである。
【0051】
成形品50aは、その長手方向の中央に、凹凸状部58を設けている。凹凸状部58は、成形品50aの長手方向の一端から他端に向かってU字状の溝を形成している。凹凸状部58は、成形品50aの長手方向の一端から他端に向かって流す冷却水の流路に相当する。成形品50aは、凹凸状部58の長手方向に沿った両端に、凸状部57を設けている。凸状部57は、凹凸状部58と同様に、成形品50aの長手方向の一端から他端に向かって流す冷却水の流路に相当する。凸状部57および凹凸状部58は、成形装置1によって外形トリム工程を行う前に、加工機100によって加工したものである。
【0052】
ここで、加工機100による加工によって被加工部材50に蓄積した歪みを、成形装置1を用いて吸収する。具体的には、成形装置1によって空間部15bに充填した水60を第1圧力P1に加圧したときに、被加工部材50に蓄積した歪みを、打抜孔11aで打ち抜かれる領域内に成形済みの凸状部57または凹凸状部58に吸収させる。この結果、外形寸法が高精度に成形された成形品50aを得ることができる。凸状部57または凹凸状部58は、たとえば冷却水の流路を確保することを目的とする場合、その形状が多少歪んでいても性能上の問題は無い。
【0053】
上述した本実施形態に係る成形方法、その成形方法を具現化した成形装置1、およびその成形装置1によって成形した成形品50aによれば、以下の作用効果を奏する。
【0054】
成形方法では、板状の被加工部材50から成形品50aを打ち抜く。成形方法は、挟持工程、歪除去工程、および打抜工程を有している。挟持工程では、成形品50aの外周形状に対応した打抜孔11aを開口した打抜部10aと、被加工部材50との間に空間部15bを備え打抜孔11aの外方の全周に沿って封止する封止部10bとによって、被加工部材50を付勢して挟持する。歪除去工程では、空間部15bに充填した流体を被加工部材50が打抜孔11aによって打ち抜かれない第1圧力P1に加圧して、被加工部材50に生じる歪みを除去する。打抜工程では、流体を第1圧力P1よりも高圧であって被加工部材50が打抜孔11aによって打ち抜かれる第2圧力P2に加圧して、被加工部材50から成形品50aを打ち抜く。
【0055】
成形装置1は、板状の被加工部材50から成形品50aを打ち抜く。成形装置1は、挟持部10、充填部20、および制御部30を有している。挟持部10は、成形品50aの外周形状に対応した打抜孔11aを開口した打抜部10aと、被加工部材50との間に空間部15bを備え打抜孔11aの外方の全周に沿って封止する封止部10bとによって、被加工部材50を付勢して挟持する。充填部20は、空間部15bに流体を充填する。制御部30は、充填部20の動作を制御する。ここで、制御部30は、空間部15bに充填されている流体を被加工部材50が打抜孔11aによって打ち抜かれない第1圧力P1に加圧して、被加工部材50に生じる歪みを除去した後、流体を第1圧力P1よりも高圧であって被加工部材50が打抜孔11aによって打ち抜かれる第2圧力P2に加圧して、被加工部材50から成形品50aを打ち抜くように充填部20を制御する。
【0056】
成形品50aは、板状の被加工部材50から打ち抜いて成形している。成形品50aは、成形品50aの外周形状に対応した打抜孔11aを開口した打抜部10aと、被加工部材50との間に空間部15bを備え打抜孔11aの外方の全周に沿って封止する封止部10bとによって、被加工部材50を付勢して挟持し、空間部15bに充填した流体を被加工部材50が打抜孔11aによって打ち抜かれない第1圧力P1に加圧して、被加工部材50に生じる歪みを除去し、流体を第1圧力P1よりも高圧であって被加工部材50が打抜孔11aによって打ち抜かれる第2圧力P2に加圧し、被加工部材50から打ち抜いて成形している。
【0057】
このように構成した成形方法、その成形方法を具現化した成形装置1、およびその成形装置1によって成形した成形品50aによれば、たとえば金型のような加工部材の調整精度に依存することなく、被加工部材50から成形品50aを精度良く打ち抜いて成形することができる。
【0058】
また、このように構成した成形方法、その成形方法を具現化した成形装置1、およびその成形装置1によって成形した成形品50aによれば、被加工部材50から打ち抜く成形品50aの全面に対して水60を用いて均等に押圧することができる。したがって、被加工部材50から成形品50aを打ち抜くときに、その成形品50aが部分的に撓んだり歪んだりすることを防止できる。
【0059】
さらに、たとえば成形方法において、流体に、非圧縮性流体を用いる構成としてもよい。
【0060】
このように構成した成形方法によれば、非圧縮性流体は、たとえば空気のような圧縮性流体を用いた場合と比較して、速やかに加圧できる。したがって、この成形方法によれば、被加工部材50を加圧して歪みを除去してから打ち抜くまでに要する時間を短縮することができる。
【0061】
さらに、たとえば成形方法において、第1圧力P1または第2圧力P2を変動させる構成としてもよい。
【0062】
このように構成した成形方法によれば、流体を用いて押圧している被加工部材50に局所的な歪みが残留している場合、流体に印加する第1圧力を変動させることによって、その局所的な歪みを除去することができる。一方、流体に印加する第2圧力を変動させることによって、被加工部材50に対して衝撃を与え、被加工部材50から成形品50aを打ち抜くことができる。
【0063】
さらに、たとえば成形方法において、第1圧力P1または第2圧力P2を、その周期が段階的に短くなるように、またはその圧力値が段階的に高くなるように変動させる構成としてもよい。
【0064】
このように構成した成形方法によれば、流体を用いて押圧している被加工部材50に対して段階的に高負荷を掛けることによって、被加工部材50に局所的に残留している歪みをスムーズに除去することができる。一方、被加工部材50から成形品50aをスムーズに打ち抜くことができる。
【0065】
さらに、たとえば成形方法において、流体に対して第2圧力P2を所定の時間にわたり印加した後、第2圧力P2の圧力値を増加させるように変動させた直後に被加工部材50から成形部を打ち抜く構成としてもよい。
【0066】
このように構成した成形方法によれば、被加工部材50に第2圧力P2よりも高圧力で付勢して、被加工部材50から成形品50aを高速で打ち抜くことできる。被加工部材50から高速で成形品50aを打ち抜くと、低速で成形品50aを打ち抜いた場合と比較して、その成形品50aの外周部分の形状を担保し易い。さらに、第2圧力P2の圧力値を増加させて被加工部材50を打ち抜く構成とすれば、被加工部材50から成形品50aを打ち抜くタイミングを調整することができる。
【0067】
さらに、たとえば成形方法において、挟持工程では、打抜孔11aの内部に移動可能に備えた保持部材12によって、第1圧力P1に加圧されているときに、被加工部材50が移動しないよう規制した状態で被加工部材50を保持する構成としてもよい。この場合、第2圧力P2に加圧されているときには、被加工部材50が移動可能なように規制を解除した状態で被加工部材50を保持する。
【0068】
このように構成した成形方法によれば、被加工部材50から成形品50aを打ち抜くまでに、成形品50aとなる領域全体が撓んだり凹んだりすることを防止でき、その成形品50aを打抜孔11aに沿って高精度で打ち抜くことができる。
【0069】
さらに、たとえば成形方法において、挟持工程の前に、成形品50aとなる領域内に対して、開口または凹凸を成形する加工工程をさらに有する構成としてもよい。
【0070】
このように構成した成形方法によれば、開口または凹凸を成形する加工工程で被加工部材50に蓄積した様々な歪みを、成形装置1による外形トリム工程において、被加工部材50から成形品50aを打ち抜く直前に除去することができる。さらに、このように構成した成形方法によれば、開口または凹凸を成形する加工工程で被加工部材50に蓄積した様々な歪みに依存して、金型同士が干渉したり、成形品50aの一部に切断不良が生じたりすることがない。
【0071】
さらに、たとえば成形方法において、被加工部材50に金属板を用い、金属セパレータからなる成形品50aを成形する構成としてもよい。
【0072】
このように構成した成形方法によれば、被加工部材50から成形品50aを精度良く打ち抜かれ、成形品50aの寸法精度に偏りが生じていないことから、積層した成形品50aの寸法精度の偏りが一方方向に累積してしまうことがない。したがって、たとえば、燃料電池において、膜電極接合体と金属セパレータとを交互に数百層以上積層するような場合においても、積層ずれによる不具合が生じない。
【0073】
さらに、たとえば成形品において、空間部15bに充填した流体を第1圧力P1に加圧して、被加工部材50に生じる歪みを、打抜孔11aで打ち抜かれる領域内に成形された凸状部57または凹凸状部58で吸収させる構成としてもよい。
【0074】
このように構成すれば、成形装置1によって空間部15bに充填した水60を第1圧力P1に加圧したときに、被加工部材50に蓄積した歪みを、打抜孔11aで打ち抜かれる領域内に成形済みの凸状部57または凹凸状部58に吸収させることができる。この結果、外形寸法が高精度に成形された成形品50aを得ることができる。凸状部57または凹凸状部58は、たとえば冷却水の流路を確保することを目的とする場合、その形状が多少歪んでいても性能上の問題は無い。
【0075】
そのほか、本発明は、特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
【0076】
たとえば、空間部15bに充填する流体は、液体に限定されることはなく、たとえば気体を用いてもよい。流体は、水60に限定されることはなく、たとえば冷媒を含有させた水溶液を用いてもよい。被加工部材50から打ち抜いて成形する成形品50aは、セパレータに限定されることはなく、たとえば電気デバイスに用いる各種部品としてもよい。被加工部材50は、金属板に限定されることはなく、たとえば樹脂材を用いてもよい。成形装置1においては、下型11を固定型とし上型15を移動型として説明したが、下型11を移動型とし上型15を固定型として構成してもよい。