(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、予め樹脂を含浸させた繊維束を芯材に巻き付けていくパイプ製造装置が公知となっている(例えば特許文献1参照)。このようなパイプ製造装置は、芯材を回転させながら移送することで、該芯材の外周面に繊維束を巻き付ける。
【0003】
ところで、このようなパイプ製造装置は、繊維束の巻き付け作業が完了すると、オペレータが芯材を取り外して新たな芯材を取り付ける。つまり、かかるパイプ製造装置は、オペレータによる芯材の脱着作業が不可欠であり、連続的に繊維束を巻き付けることができない。このため、芯材の脱着作業をなくして連続的に繊維束を巻き付け可能とすることで、繊維製直管を効率良く製造できるパイプ製造装置が求められていた。
【0004】
また、繊維製直管を製造した後に該直管を曲げるとした曲管の製造方法が公知となっている(例えば特許文献2参照)。このような曲管の製造方法は、芯材に繊維束を巻き付けた後に該芯材を抜き取り、繊維製直管に対して曲げ加工が施される。
【0005】
ところで、このような曲管の製造方法は、繊維製直管を製造するために、上述したようなパイプ製造装置を用いると考えられる。従って、かかる曲管の製造方法においても、オペレータによる芯材の脱着作業が不可欠であり、連続的に繊維束を巻き付けることができない。更に、かかる曲管の製造方法では、繊維束が巻き付けられた芯材を取り外し、繊維層から芯材を抜き取らなければ曲げ加工を施すことができない。このため、芯材の脱着作業をなくして連続的に繊維束を巻き付け可能とするとともに、繊維束が巻き付けられた芯材を取り外さず、繊維層から芯材を抜き取らなくても曲げ加工を行なえるとすることで、繊維製曲管を効率良く製造できる
曲げパイプ製造方法が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、パイプ製造装置100の構成について説明する。
【0020】
図1は、一実施形態のパイプ製造装置100の構成を示す図である。図中に示す矢印Xは、芯材1の送り出し方向(走行方向)を示している。なお、ここでは、芯材1が送り出される方向Fを「順方向」とし、その反対方向Rを「逆方向」と定義する。
【0021】
パイプ製造装置100は、繊維製曲管を製造するものである。但し、繊維製曲管の製造過程から曲げ工程を省くことで、繊維製直管を製造することも可能である。パイプ製造装置100は、主に送出部10と、巻付部20と、曲げ部30と、で構成されている。
【0022】
送出部10は、芯材1を送り出す部分である。送出部10は、一台の押出装置11を有している。押出装置11は、順方向若しくは逆方向に摺動するラック11rを備えており、該ラック11rによって芯材要素1eを押し出す(
図2、
図3参照)。こうして、本送出部10は、芯材要素1eを次々に押し出して該芯材要素1eを連結し、一本の芯材1として送り出すことを可能としている。
【0023】
また、送出部10は、芯材1に接した状態で回転するローラ12を備えている。送出部10は、ローラ12の回転方向を切り替えることができるので、芯材1を順方向から逆方向に戻すことも可能である(
図3参照)。なお、本送出部10は、芯材要素1eを連結させて芯材1として送り出すものであるが、いわゆる絞り加工によって円筒形状を形成し、該円筒形状を芯材として送り出すとしても良い。
【0024】
巻付部20は、芯材1に繊維束Fp・Ffを巻き付ける部分である。巻付部20は、一又は複数のパラレル巻き装置21を有している。パラレル巻き装置21は、芯材1を中心として放射状にノズル(図示せず)を備えており、該ノズルから走行する芯材1に向けて繊維束Fpを案内する。ノズルは、芯材1の軸心Lに先端が近づくように傾ける。傾きが小さければ(軸心Lに略平行)、繊維束Fpに無理なテンションがかからない。また傾きが大きければ(軸心Lに略垂直)、装置全体の寸法を抑えることができる。こうして、本パラレル巻き装置21は、芯材1の軸心Lに対して略平行(ほぼ角度0度)に繊維束Fpを送り出すことを可能としている(
図2、
図3、
図6参照)。なお、本巻付部20は、二台のパラレル巻き装置21を有しているが、繊維層の積層構造に応じて任意に増減可能である。なお、繊維束Fpは、ボビンから引き出される炭素繊維を採用でき、この場合、芯材1に巻き付ける直前に浸漬又は吹付により合成樹脂を含浸させる。或いは、繊維束Fpは、炭素繊維に予め合成樹脂を含浸させて半硬化状態としたプリプレグを採用できる。
【0025】
また、巻付部20は、一又は複数のフープ巻き装置22を有している。フープ巻き装置22は、芯材1を中心として回転するガイド22gを備えており、該ガイド22gから走行する芯材1に向けて繊維束Ffを案内する。こうして、本フープ巻き装置22は、芯材1の軸心Lに対して略垂直(ほぼ角度90度)に繊維束Ffを巻き付けていくことを可能としている(
図2、
図3、
図6参照)。なお、本巻付部20は、二台のフープ巻き装置22を有しているが、繊維層の積層構造に応じて任意に増減可能である。なお、繊維束Ffは、ボビンから引き出される炭素繊維を採用でき、この場合、芯材1に巻き付ける直前に浸漬又は吹付により合成樹脂を含浸させる。或いは、繊維束Ffは、炭素繊維に予め合成樹脂を含浸させて半硬化状態としたプリプレグを採用できる。
【0026】
曲げ部30は、芯材1を曲げる部分である。具体的に説明すると、曲げ部30は、繊維束Fp・Ffが巻き付けられた芯材1を曲げる部分である。曲げ部30の具体的な構成については後述する。なお、本曲げ部30は、巻付部20の下流側に配置され、繊維束Fp・Ffが巻き付けられた芯材1を曲げるとしているが、繊維束Fp・Ffが巻き付けられる前やその途中で芯材1を曲げるとしても良い。また、芯材要素1eを連結して芯材1とした時点で既に曲げられていても良い。
【0027】
次に、芯材1に繊維束Fp・Ffを巻き付ける際の動作について説明する。
【0028】
図2及び
図3は、芯材1に繊維束Fp・Ffを巻き付ける際の動作について示す図である。図中に示す矢印Xは、芯材1の送り出し方向(走行方向)を示している。また、図中に示す矢印Yは、ラック11rの摺動方向を示している。
【0029】
図2に示すように、送出部10は、芯材1を順方向へ連続的に送り出すことができる。巻付部20を構成するパラレル巻き装置21は、芯材1の軸心Lに対して略平行に繊維束Fpを送り出していく(
図6参照)。そして、巻付部20を構成するフープ巻き装置22は、芯材1の軸心Lに対して略垂直に繊維束Ffを巻き付けていく(
図6参照)。
【0030】
このような構成において、巻付部20は、パラレル巻き装置21を上流側に配置し、その下流側にフープ巻き装置22を配置している。これは、フープ巻き装置22が繊維束Ffを巻き付けることによって、パラレル巻き装置21から送り出された繊維束Fpを芯材1の外周に巻き留めていくためである。
【0031】
詳細に説明すると、本実施形態のパイプ製造装置100は、芯材1が回転せずに走行し、自ら回転しないパラレル巻き装置21を通過する。従って、パラレル巻き装置21から送り出された繊維束Fpは、芯材1の外周に螺旋状に巻き付くことはない。このため、本パイプ製造装置100は、フープ巻き装置22が繊維束Ffを巻き付けることによって、パラレル巻き装置21から送り出された繊維束Fpを巻き留めていく必要があるのである。このような理由から、芯材1を順方向へ連続的に送り出す場合は、パラレル巻き装置21が上流側に配置され、その下流側にフープ巻き装置22が配置されて、パラレル巻き繊維をフープ巻き繊維で巻き留める。但し、パラレル巻き装置21及びフープ巻き装置22の配置は、繊維層の積層構造に応じて任意に変更可能であり、これに限定するものではない。また、上述したように、パラレル巻き装置21とフープ巻き装置22は、繊維層の積層構造に応じて任意に増減可能である。
【0032】
また、
図3に示すように、送出部10は、芯材1を一時的に逆方向へ戻す動作を繰り返しながら順方向へ間欠的に送り出すこともできる。巻付部20を構成するパラレル巻き装置21は、芯材1の軸心Lに対して略平行に繊維束Fpを送り出していく(
図6参照)。そして、巻付部20を構成するフープ巻き装置22は、芯材1の軸心Lに対して略垂直に繊維束Ffを巻き付けていく(
図6参照)。
【0033】
このような構成において、巻付部20は、パラレル巻き装置21の上流側と下流側にフープ巻き装置22を配置している。これは、芯材1の走行方向が変化しても、フープ巻き装置22が繊維束Ffを巻き付けることによって、パラレル巻き装置21から送り出された繊維束Fpを繊維束Ffが巻き留めていくためである。
【0034】
詳細に説明すると、本実施形態のパイプ製造装置100は、芯材1の走行方向を順方向から逆方向へ又は逆方向から順方向へ変更できる。そして、パイプ製造装置100は、芯材1の走行方向が変化しても、フープ巻き装置22が繊維束Ffを巻き付けることによって、パラレル巻き装置21から送り出された繊維束Fpを巻き留めていく構成としている。このような理由から、芯材1を一時的に逆方向へ戻す動作を繰り返しながら順方向へ間欠的に送り出す場合は、その繰り返し箇所に、パラレル巻き装置21の上流側と下流側にフープ巻き装置22が配置されるのである。但し、パラレル巻き装置21及びフープ巻き装置22の配置は、繊維層の積層構造に応じて任意に変更可能であり、これに限定するものではない。また、上述したように、パラレル巻き装置21とフープ巻き装置22は、繊維層の積層構造に応じて任意に増減可能である。
【0035】
このように、パイプ製造装置100の送出部10は、芯材1を順方向へ連続的に送り出し、又は芯材1を一時的に逆方向へ戻す動作を繰り返しながら順方向へ間欠的に送り出す。そして、巻付部2は、芯材1に連続的に繊維束を巻き付ける。これにより、芯材1の脱着作業をなくして連続的に繊維束Fp・Ffを巻き付けることができるので、繊維製直管を効率良く製造することが可能となる。
【0036】
次に、繊維束Fp・Ffが巻き付けられた芯材1を曲げる際の動作について説明する。
【0037】
図4及び
図5は、繊維束Fp・Ffが巻き付けられた芯材1を曲げる際の動作について示す図である。図中に示す矢印Xは、芯材1の送り出し方向(走行方向)を示している。
【0038】
曲げ部30は、芯材1を曲げる部分である。具体的に説明すると、曲げ部30は、繊維束Fp・Ffが巻き付けられた芯材1を曲げる部分である。曲げ部30は、複数のガイドローラ31を有している。
図4に示すように、ガイドローラ31は、芯材1の軌道が直進する順方向から徐々に反れるように配置されており、走行している芯材1を所定の方向へ案内する。芯材1の外周に形成されている繊維製直管は、未だ樹脂が硬化していないので、芯材1とともに破損することなく曲げられる。こうして、曲げ部30は、芯材1の外周に形成されている繊維製直管を芯材1ごと曲げることを可能としている。なお、曲げ部30は、三対のガイドローラ31を有しているが、曲げ角度の大きさなどに応じて増減可能である。また、各ガイドローラ31の配置も、製造する繊維製曲管の形状に応じて変更可能となっている。
【0039】
このように、パイプ製造装置100の曲げ部30は、走行している芯材1を所定の方向へ案内することによって曲げる。これにより、繊維束Fp・Ffが巻き付けられた芯材1を取り外さず、繊維層から芯材1を抜き取らなくても曲げ加工を行なうことができるので、繊維製曲管を効率良く製造することが可能となる。
【0040】
なお、曲げ部30は、切断装置32を有している。
図4に示すように、切断装置32は、曲げ部30の上流側に配置されており、曲げ加工が施された後の芯材1を切断する。こうして、曲げ部30は、繊維製曲管を所望の長さに切断することを可能としている。
【0041】
また、
図5に示すように、ガイドローラ31は、芯材1の軌道に対して垂直となる方向(上下左右を含む)に移動自在とされ、走行又は停止している芯材1を所定の方向から押すとしても良い。芯材1の外周に形成されている繊維製直管は、未だ樹脂が硬化していないので、芯材1とともに破損することなく曲げられる。こうして、曲げ部30は、芯材1の外周に形成されている繊維製直管を芯材1ごと曲げることを可能としている。なお、本曲げ部30は、三対のガイドローラ31を有しているが、曲げ角度の大きさなどに応じて増減可能である。また、各ガイドローラ31の移動方向や移動距離も、製造する繊維製曲管の形状に応じて変更可能となっている。
【0042】
このように、パイプ製造装置100の曲げ部30は、走行又は停止している芯材1をその軌道に垂直な方向から押すことによって曲げる。これにより、繊維束Fp・Ffが巻き付けられた芯材1を取り外さず、繊維層から芯材1を抜き取らなくても曲げ加工を行なうことができるので、繊維製曲管を効率良く製造することが可能となる。
【0043】
なお、曲げ部30は、切断装置32を有している。
図5に示すように、切断装置32は、曲げ部30の上流側に配置されており、曲げ加工が施される前の芯材1を切断する。こうして、曲げ部30は、繊維製直管を所望の長さに切断するとともに、停止している芯材1に対して曲げ加工を施すことを可能としている。この場合、曲げ部30は、パイプ製造装置100の一部として巻付部20の下流側に配置されている必要はなく、別途に配置されていても良い。
【0044】
次に、繊維束Fp・Ffが巻き付けられた芯材1を曲げる際の留意点について説明する。
【0045】
図6は、繊維束Fp・Ffが巻き付けられた芯材1を曲げる際の留意点について示す図である。図中に示す矢印Tは、芯材1を曲げる際に該芯材1に掛かる荷重を示している。
【0046】
図6Aに示すように、芯材1の外周には、繊維束Fp・Ffが巻き付けられている。芯材1の外周には、該芯材1の軸心Lに対して略平行に繊維束Fpが巻き付けられ、該芯材1の軸心Lに対して略垂直に繊維束Ffが巻き付けられている。
【0047】
図6Bに示すように、芯材1を曲げると、曲げ部分の外側に引張荷重が掛かり、曲げ部分の内側に圧縮荷重が掛かる。すると、芯材1の外周には、該芯材1の軸心Lに対して略平行に繊維束Fpが巻き留められているので、曲げ部分の外側を通る繊維束Fpには引張荷重が掛かり、曲げ部分の内側を通る繊維束Fpには圧縮荷重が掛かることとなる。これにより、曲げ部分の内側では、繊維束Fpが弛むので、かかる部分で強度が低下するという懸念があった。
【0048】
そこで、
図6Cに示すように、繊維束Fp・Ffが巻き付けられた芯材1を曲げる際には、曲げ部分の内側を通る繊維束Fpの弛みをとる必要があることに留意すべきである。つまり、繊維束Fp・Ffが巻き付けられた芯材1を曲げる際には、曲げ部分の内側を通る繊維束Fpを軸心Lの方向へ引っ張り(図中の矢印P参照)、該繊維束Fpの弛みをなくすことに留意すべきである。これにより、かかる部分で強度が低下するのを防止できる。
【0049】
この点、芯材1に巻き留められた複数の繊維束Fpのうち、いずれの繊維束Fpを引っ張れば良いかが把握しにくいという問題がある。これは、繊維束Fpは、その周方向位置に応じて引っ張る荷重が異なることからも重要である。従って、
図7に示すように、芯材1にセパレートリングSRを嵌めた状態で繊維束Fp・Ffを巻き付け、セパレートリングSRの外周上を通過する繊維束Fpの位置からいずれの繊維束Fpを引っ張れば良いかを把握すれば良い。具体的に説明すると、セパレートリングSRに曲げ部分の内側を通る繊維束Fpが通過する区間を示しておけば、いずれの繊維束Fpを引っ張れば良いかを把握することができる。
【0050】
また、パラレル巻き装置21は、芯材1へ送り出す複数の繊維束Fpのうち、必要な繊維束Fpのみを高い張力で送り出すことが可能である。このため、パラレル巻き装置21は、曲げ部分の内側を通る繊維束Fpのみを高い張力としておき、芯材1を曲げると全ての繊維束Fpの張力が適切になるとすることも可能である。
【0051】
次に、本パイプ製造装置100における他の特徴点について説明する。
【0052】
本パイプ製造装置100は、台床40によって支持されている(
図1参照)。具体的に説明すると、パイプ製造装置100は、床面に設置される台床40を具備しており、該台床40の上に各部が配置されている。
【0053】
このように、パイプ製造装置100の送出部10と巻付部20はと曲げ部30は、一の台床40によって支持される。これにより、各部が一体化するので、据付容易性や移設容易性を向上させることが可能となる。
【0055】
芯材1は、外力によって曲がる構造でなければならない。パイプ製造装置100において、芯材1は、螺旋状に巻かれた金属線で円筒形状に形成したものを採用できる。但し、芯材1は、外力によって曲がる構造であれば良く、これに限定するものではない。例えば、外力によって曲がるように設計された金属製や樹脂製の中空管が挙げられる。また、内部に空気や水、砂などを詰めたゴム製の芯材とすれば、繊維製曲管を形成した後に内部の空気などを抜けば良いので、取り扱いが容易となる。更に、蝋で形成した芯材としても、繊維製曲管を形成した後に硬化工程において溶かせば良いので、取り扱いが容易となる。