特許第6051867号(P6051867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051867
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】造水方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20161219BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20161219BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C02F1/00 S
   C02F1/44 D
   C02F3/12 S
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-539528(P2012-539528)
(86)(22)【出願日】2012年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2012071035
(87)【国際公開番号】WO2013027713
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2011-182206(P2011-182206)
(32)【優先日】2011年8月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅英
(72)【発明者】
【氏名】前田 智宏
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−337488(JP,A)
【文献】 特開平06−218390(JP,A)
【文献】 特開昭57−094389(JP,A)
【文献】 特開2004−313923(JP,A)
【文献】 特開2005−305410(JP,A)
【文献】 特開2008−307487(JP,A)
【文献】 特開2004−058026(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/021420(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/077815(WO,A1)
【文献】 米国特許第04416786(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
B01D 21/00 − 21/01
B01D 21/02 − 21/34
C02F 1/44
C02F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を処理して生産水を得るための造水方法において、原水が流れる水流ラインの少なくとも一部を分岐ラインA1および分岐ラインA2を含む複数の分岐ラインに分岐させ、分岐ラインA1と分岐ラインA2へ実質的に同時に原水を供給し、分岐してから合流するまでの滞留時間を分岐ラインA1と分岐ラインA2で異なるようにし、かつ、分岐ラインA1および分岐ラインA2が沈降分離の機能を有することを特徴とする造水方法。
【請求項2】
分岐ラインA1の容積と分岐ラインA2の容積を異なるようにすることを特徴とする請求項1に記載の造水方法。
【請求項3】
分岐ラインA1への供給流量と分岐ラインA2への供給流量を実質的に等量とすることを特徴とする請求項1または2に記載の造水方法。
【請求項4】
分岐してからの滞留時間を分岐ラインA1と分岐ラインA2とで異なるようにした後、分岐ラインA1および分岐ラインA2のそれぞれの分岐ラインにおいて前処理ユニットで処理してから合流することを特徴とする請求項1−のいずれかに記載の造水方法。
【請求項5】
分岐ラインA1での滞留時間と分岐ラインA2での滞留時間の差が4時間以上8.5時間以下である請求項1−のいずれかに記載の造水方法。
【請求項6】
分岐ラインがn系列(ただし、nは3以上の自然数である。)からなり、異なるライン同士の滞留時間の差が、8/n時間以上17/n時間以下、または、(8−8/n)時間以上(17−17/n)時間以下である請求項1−のいずれかに記載の造水方法。
【請求項7】
複数の分岐ラインが合流した後の原水を用いて淡水を製造することを特徴とする請求項1−のいずれかに記載の造水方法。
【請求項8】
複数の分岐ラインが合流した後の原水を用いて生物処理を行うことを特徴とする請求項1−のいずれかに記載の造水方法。
【請求項9】
原水の全塩分濃度が1年間で2倍以上変動することを特徴とする請求項1−のいずれかに記載の造水方法。
【請求項10】
分岐ラインA1と分岐ラインA2へ原水を供給するに際し、原水水質を測定し、原水水質が予め定められた条件を満足する場合に取水し、条件を満足しない場合には、分岐ラインA1と分岐ラインA2のいずれへも原水を供給しないことを特徴とする請求項1−のいずれかに記載の造水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水、河川水、地下水、排水処理水などの原水を処理して生産水を得るための造水方法に関するものであり、さらに詳しくは、原水の濃度変動に応じて効率的に原水を処理できる造水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水資源の枯渇が深刻になりつつあり、これまで利用されてこなかった水資源の活用が検討されつつある。とくに、もっとも身近でそのままでは利用できなかった海水から飲料水を製造する技術、いわゆる“海水淡水化”が注目されてきている。海水淡水化は、従来、水資源が極端に少なく、かつ、石油による熱資源が非常に豊富である中東地域で蒸発法を中心に実用化されてきているが、熱源が豊富でない中東以外の地域ではエネルギー効率の高い逆浸透法が採用され、カリブ諸島や地中海エリアなどで多数のプラントが建設され実用運転されている。最近では、逆浸透法の技術進歩による信頼性の向上やコストダウンが進み、中東においても多くの逆浸透法海水淡水化プラントが建設されるとともに、アジア、アフリカ、オセアニア、中南米へと世界的な展開を見せている。
【0003】
海水淡水化プラントに供する原水は、その清澄性や環境影響を小さくする観点からなるべく海岸から離れたところから取水することが好ましいが、遠浅の場合は取水配管を長くしなければならないため、コスト上の問題が生じやすかったり、湾のように入り組んでいたりする場合は、取水配管を長くしても海水淡水化に適した清澄な海水を得られない場合もある。そのため、海岸付近から取水する場合も少なくないが、取水ポイント近傍に河川がある場合は、河川からの淡水が流れ込みやすく、しかもその割合は、潮の干満や降雨などによって大きく変動してしまう。例えば、トリニダード・トバゴの海水淡水化プラントは大きな河川の影響を受け、原水の塩分濃度が1.5%から3.5%まで変動する(非特許文献1)。原水の濃度変動は浸透圧の変動、すなわち運転圧力の変動につながるため、ポンプの出力を適宜調整することが必要となっていた。
【0004】
ポンプの出力を変動させるためにはポンプの吐出部分に流量調節バルブを装備するかインバーターで制御するかの選択肢から選ばれることが一般的である。しかし、前者では、簡便かつ低コストであるものの圧力損失によるエネルギーロスが避けられない。後者ではエネルギーロスを抑えることはできるものの設備コストの増大につながるほか、近年増え続ける巨大海水淡水化プラントに適用する大型ポンプにインバーターをつけることはコスト的に大きな制約となる。
【0005】
また、運転圧力を頻繁に変動させることは配管、バルブ、逆浸透膜にストレスを与え続けることになり、材料の疲労を加速することにもなるので、好ましい状況ではない。
【0006】
さらに、原水濃度が変動すると、生産水質も変動することになるが、生産水質という観点からは、最も厳しい場合を前提に設計することが必要となるため、オーバースペックのプラントになってしまうことが多い。これを解決するための方法としては、特許文献1に示すように原水濃度が低い場合は濃縮水を還流させたり、特許文献2に示すように水質を満足しない生産水を還流させたりすることが挙げられるが、循環再処理は生産水量の低下、運転コストの上昇につながる。
【0007】
この濃度変化を軽減できる方策としては、原水貯留水槽を設ける方法が挙げられるが、単に貯留水槽を設けるだけでは、自然滞留に頼ることになり、しかも水の流れが入口から出口への一方通行であるため、あまり濃度の均一化が図れない。原水貯留水槽を設けた上で撹拌を実施すれば、濃度を均一にできるが、撹拌エネルギーが必要となり、とくに巨大プラントではエネルギー的にも設備的にも現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3270211号公報
【特許文献2】特開2008−307487号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】房岡良成、「トリニダードトバゴの例」、日本海水学会誌、2004年6月1日、第58巻、第3号、p.264−267
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、原水水質が変動した場合でも、安定的かつ効率的に目標水質を満足する生産水を低コストで得ることが可能な造水方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は次の構成をとる。
【0012】
(1)原水を処理して生産水を得るための造水方法において、原水が流れる水流ラインの少なくとも一部を分岐ラインA1および分岐ラインA2を含む複数の分岐ラインに分岐させ、分岐ラインA1と分岐ラインA2へ実質的に同時に原水を供給し、分岐してから合流するまでの滞留時間を分岐ラインA1と分岐ラインA2で異なるようにし、かつ、分岐ラインA1および分岐ラインA2が沈降分離の機能を有することを特徴とする造水方法。
【0013】
(2)分岐ラインA1の容積と分岐ラインA2の容積を異なるようにすることを特徴とする(1)に記載の造水方法。
【0014】
(3)分岐ラインA1への供給流量と分岐ラインA2への供給流量を実質的に等量とすることを特徴とする(1)または(2)に記載の造水方法。
【0017】
)分岐してからの滞留時間を分岐ラインA1と分岐ラインA2とで異なるようにした後、分岐ラインA1および分岐ラインA2のそれぞれの分岐ラインにおいて前処理ユニットで処理してから合流することを特徴とする(1)−()のいずれかに記載の造水方法。
【0018】
)分岐ラインA1での滞留時間と分岐ラインA2での滞留時間の差が4時間以上8.5時間以下である(1)−()のいずれかに記載の造水方法。
【0019】
)分岐ラインがn系列(ただし、nは3以上の自然数である。)からなり、異なるライン同士の滞留時間の差が、8/n時間以上17/n時間以下、または、(8−8/n)時間以上(17−17/n)時間以下である(1)−()のいずれかに記載の造水方法。
【0020】
)複数の分岐ラインが合流した後の原水を用いて淡水を製造することを特徴とする(1)−()のいずれかに記載の造水方法。
【0021】
)複数の分岐ラインが合流した後の原水を用いて生物処理を行うことを特徴とする(1)−()のいずれかに記載の造水方法。
【0022】
)原水の全塩分濃度が1年間で2倍以上変動することを特徴とする(1)−()のいずれかに記載の造水方法。
【0023】
10)分岐ラインA1と分岐ラインA2へ原水を供給するに際し、原水水質を測定し、原水水質が予め定められた条件を満足する場合に取水し、条件を満足しない場合には、分岐ラインA1と分岐ラインA2のいずれへも原水を供給しないことを特徴とする(1)−()のいずれかに記載の造水方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によって、原水水質が変動した場合でも、安定的かつ効率的に目標水質を満足する生産水を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の造水方法に係る、分岐ラインとして沈澱池を備えた海水淡水化用水処理装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
図2】本発明の造水方法に係る、分岐ラインとして中間水槽を備えた海水淡水化用水処理装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
図3】本発明の造水方法に係る、分岐ラインとして沈澱池および中間水槽を備えた海水淡水化用水処理装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
図4】本発明の造水方法に係る、分岐ラインとして沈澱池を備えた生物処理装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
図5】本発明の造水方法に係る、分岐ラインを3つ有する海水淡水化用水処理装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
図6】本発明の造水方法に係る、それぞれの分岐ラインに前処理ユニットを有する海水淡水化用水処理装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
図7】従来の海水淡水化用水処理装置のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の望ましい実施の形態を、図面を用いて説明する。ただし、本発明の範囲がこれらに限られるものではない。
【0027】
本発明の造水方法に係る水処理装置の一例として、原水が2つのラインに分岐される海水淡水化逆浸透膜装置を図1に示す。図1に示す水処理装置は、原水1が沈殿槽2a、2bに分岐され、その後、合流した後、前処理供給ポンプ3によって前処理ユニット4で処理され、前処理された原水は中間水槽5を経て、昇圧ポンプ6で逆浸透膜ユニット7に送られる。逆浸透膜ユニット7の透過水は、生産水槽9に貯留され、配水ライン10を通して使用に供される。逆浸透膜ユニット7の濃縮水は、エネルギー回収ユニット8を経て圧力エネルギーを回収された後に、排水ライン11から系外に放流される。
【0028】
ここで、前処理ユニット4としては、固液分離や吸着分離など一般的な分離処理を適用することが出来る。特に海水淡水化の前処理に適した固液分離としては、ミリオーダーの分離を行うスクリーンフィルター、ミクロンオーダーの分離を行う砂ろ過やろ布、サブミクロンの除去分離が出来る精密ろ過膜や限外ろ過膜、更に精密なろ過が出来るナノろ過膜などを挙げることが出来る。その他にも、凝集剤や吸着剤の適用、また、凝集剤や吸着剤と固液分離とを併用することによって、有機物などの分離を効率的に行うことも可能である。
【0029】
この例では、沈殿槽2aと2bの滞留時間に差が生じる構成となっているが、本発明では、原水が流れる水流ラインの少なくとも一部を複数の分岐ラインに分岐させ、分岐してから合流するまでの滞留時間がそれぞれ異なるようにすることを特徴とする[上記(1)の実施態様]。滞留時間を異なるものとする方法に制限はなく、例えば、各分岐ラインへの供給流量が同じ場合は、分岐ラインの容積が異なるようにすればよく[上記(2)の実施態様]、その他にも、分岐ラインの流路長さを変えたり、流路幅を変えたり、ユニットの台数を変えたりすることによって実現することができる。ただし、本発明の主旨である、原水水質変動を平準化するためには、滞留時間の差Dを少なくとも水質変動サイクルCの10分の1以上10倍以下に設定する。水質変動サイクルCがある程度一定の場合には、沈殿槽2aと2bから出てくる水が水質変動サイクルの逆位相にある、すなわち、滞留時間の差を水質変動サイクルの2分の1にすることである。水質変動のサイクルCが不定期の場合でもおおよその最小水質変動サイクルを把握し、その10分の1以上10倍以下の滞留時間差を設定すれば、本発明の主旨を達成することが可能である。
【0030】
例えば、河口付近の海水を原水として使用する場合は、潮汐による海水位変動が大きな影響を及ぼすため、潮汐サイクルすなわち、12.5時間の1/2の近傍である6.25時間を中心に変動を考慮し、4時間以上8.5時間以下を滞留時間の差Dとして設定することが好ましく、より好ましくは、5時間以上7.5時間以下を滞留時間の差Dとして設定するとよい[上記(7)の実施態様]。また、沈殿槽2aと2bに供給する流量に関しても特に制約はないが、実質的に等量にすることによって最も原水変動を小さくすることが可能である[上記(3)の実施態様]。なお、図1では、滞留時間を変えるための沈殿槽2を2ラインとしているが、図5に例示するように、3ライン以上にすることも好ましい態様である。nライン(ただし、nは3以上の自然数である。)とした場合、異なるライン同士の滞留時間の差Dを水質変動サイクルCの(1/n)倍、または、(1−1/n)倍に設定することが好ましい。すなわち、より具体的には、河口付近の海水を原水として使用する場合は、異なるライン同士の滞留時間の差Dを8/n時間以上17/n以下、または、(8−8/n)時間以上(17−17/n)時間以下に設定することが好ましい[上記(8)の実施態様]。
【0031】
図1の水処理装置においては、滞留時間の差を異なるものとする手段として沈殿槽2a、2bを使用しているが、この例のように、本発明における分岐ラインは沈降分離の機能を有することが好ましい[上記(4)の実施態様]。沈降分離の機能を有するものとしては、単純に重力で沈殿させる普通沈殿槽や凝集剤を添加して沈殿を促進させる凝集沈殿槽に大別され、さらに、それぞれ、沈降速度や沈降面積を大きくするために傾斜板を適用することも可能である。
【0032】
また、図1では沈殿槽2a,2bにおける滞留時間に差を設けているが、本発明の目的を達成するには、例えば、取水を元々異なる位置から行うことも出来れば、沈殿槽2a,2bに至る取水ラインの配管長さを変えることも出来る。ただし、必要な滞留時間差を設けるためには、取水ラインの配管長も相当長くなるので、図1のように沈殿槽2a,2bまでの原水供給ラインは共通にし、水槽のように安価で十分に容積を保有できることが好ましい。すなわち、各分岐ラインへ実質的に同時に原水を供給するようにすることが好ましい[上記(5)の実施態様]。この観点から、図1では沈殿槽2a,2bにその機能を持たせているが、図2に示すように、中間水槽5a,5bに持たせることも出来れば、図3に示すように沈殿槽2a,2bと中間水槽5a,5bの両方に持たせても良い。ただし、図2のように変動する原水1を前処理ユニット4で処理する場合は、原水1の水質変動によって、前処理ユニット4への負荷が変動するため、前処理ユニット4への負荷変動が大きく運転困難な状況が想定される場合は、沈殿槽2a,2bの代わりに中間水槽5a,5bに滞留時間差を設ける機能を備えることは好ましくない。ただし、前処理ユニット4の設計を負荷変動に耐えられるようにすれば、逆に前処理ユニット4の環境変化が大きくなり生物繁殖のリスク低減につながるため、沈殿槽2a,2bと中間水槽5a,5bの両方に滞留時間差を設ける機能を持たせることは好ましい態様である。
【0033】
また、図3に示すような沈殿槽と中間水槽のように複数の滞留時間に差を設ける機能を有するような場合、沈殿2a,2bと中間水槽5a,5bそれぞれの滞留時間のずれの合計を4時間以上8.5時間以下、より好ましくは、5時間以上7.5時間以下を滞留時間の差として設定するとよい。とくに、分岐した流量が異なる場合には、一度の滞留時間差で原水水質の均質化を図ることが容易でないため、図3に示す沈殿槽2a,2bと中間水槽5a,5bの両方に滞留時間差を設ける機能を持たせる方法が非常に効果的である。
【0034】
本発明によって、原水水質変動を抑制された水は、その後段において様々な水処理を施すことが出来るが、特に、図1に例示するように原水濃度によって運転圧力や生産水質が変動する逆浸透膜水処理装置、中でも浸透圧変動が大きく、また、生産水質変動も大きな海水淡水化によって淡水を製造することが好適であるし[上記(9)の実施態様]、また、原水濃度の変動によって安定的な処理が困難になる生物処理にも適している[上記(10)の実施態様]。図4に生物処理を伴った膜分離活性汚泥法を例示する。
【0035】
ところで、本発明に適した原水としては、運転条件や生産水質に影響を及ぼす水質の変動が大きなものが適している。前述のように塩分濃度が高い海水やかん水の処理にも適しているし、塩分濃度のみならず、有機物濃度の変動が大きい下廃水などの処理にも適している。具体的には、原水の全塩分濃度が1年間で2倍以上変動する場合に本発明が好適に利用できる[上記(11)の実施態様]。また、原水の有機物濃度が1年間で2倍以上変動する場合にも本発明が好適に利用できる。ここで、全塩分濃度や有機物濃度の変動幅について、それらの最大値および最小値は、1年間原水水質をモニタリングしたうちの全塩分濃度などの最大値と最小値によって定義され、本発明ではその最大値と最小値の比が2倍以上であれば好ましい。なお、原水の全塩分濃度の測定方法としては、原水を蒸発乾固させてその重量を測定する、「全蒸発残留物」濃度による測定方法や、簡易的には電気伝導度計、それを塩分濃度に換算する塩分濃度計を用いることが例示される。また、有機物濃度の測定方法としてはTOC(全有機炭素濃度)を指標とする測定方法が最も一般的であるが、他にCOD(化学的酸素要求量),BOD(生物学的酸素要求量),UV(紫外線吸収),IR(赤外吸収),GC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析)を指標とする測定方法が例示される。
【0036】
さらに、本発明をさらに効果的にするためには、原水供給に際し、原水水質を測定し、原水水質が予め定められた条件を満足する場合に取水することも好ましい[上記(12)の実施態様]。ここでいう水質とは、前述のように後段の膜分離の運転条件に大きく影響を及ぼすもの、例えば、逆浸透膜の場合は、浸透圧に大きな変動をもたらす全塩分濃度が例示され、膜分離活性汚泥法の場合は、生物活性や処理効率に大きな影響を及ぼす有機物濃度や全塩分濃度が例示される。これらの原水水質が予め設定した範囲内の時に取水するように制御するのが好ましい。
【0037】
例えば、原水が前述の非特許文献1のような河口付近の海水(全塩分濃度1.5〜3.5%)の場合、全塩分濃度2.5%以上の海水を取水しないことによって、全塩分濃度3.5%の場合に比べて浸透圧が5〜10bar低下するため、必要な昇圧ポンプのスペックを下げることが可能であるし、運転時の圧力低下(=所要動力の低下)にもつながる。さらに、これによって、本発明の目的とする原水濃度の変動も抑制することが容易となるため、非常に好ましい。ただし、閾値を狭くすると、取水可能時間が短くなるので取水ポンプの能力が大きくなるため、コストバランスを考慮することが必要となる。なお、河口付近の海水を原水として使用する際にこの方法を適用した場合、例えば潮汐による海水位変動の一部を取水しないことになるため、取水に関わるサイクルは、12.5時間より短くなるので、前述の「12.5時間の1/2の近傍」よりも短くすることが好ましい。具体的には、1日あたりの取水可能時間がT時間の場合、滞留時間の差D=C×T/48近傍を設定(例えば、T=12時間の場合は、6時間以上6.5時間以下)することが好ましい。もちろん、滞留時間を変えるための沈殿槽2などを3ライン以上にすることも好ましい態様である。nラインとした場合、滞留時間の差Dは水質変動サイクルCのT/24/n倍、もしくは、T/24×(1−1/n)倍に設定することが好ましい。
【0038】
また、逆浸透膜ユニット7の濃縮水濃度が流入時の原水1の濃度よりも小さい場合は、図3に例示するように、バルブ12a,12bを開けて濃縮水を還流させることも可能である。図3では、濃縮水を沈殿槽2a,2bの前に還流しているが、沈殿槽2a,2bの後でも、中間水槽5a,5bの前後でも差し支えない。また、生産水質の変動を抑える観点からは、図3に例示するように、生産水槽9をカスケード状に生産水槽9a,9b,9cのように設置し、生産水質変動に対して、三方弁13を制御して、変動を抑制することも好ましい。具体的には、例えば、生産水槽9aと9bに定期的に切り替えて貯留することによって、9aと9bの濃度差を低減し、それを9cで混合することで、9aと9bの平均濃度とすることが出来る。
【0039】
さらに、本発明においては、図1のように、分岐混合後の水質が安定した水を前処理ユニット4で処理することもできれば、図2に示すように、分岐前に前処理ユニット4で処理することも出来る。さらに、図6に例示するように、分岐後の水を沈殿槽2a,2bを用いて滞留時間をずらし、それぞれ前処理ユニット4a,4bを用いて独立して前処理を行った後で混合することも好ましい。この方法を採用することで、前処理ユニット4aと4bの水質が異なるため、前処理ユニットへの負荷が分散させることができる、すなわち、4aに大きく負荷がかかっているときは、4bへの負荷を小さくすることが可能となるため、好ましい態様である[上記(6)の実施態様]。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、海水、河川水、地下水、排水処理水などの原水を処理して安定的かつ効率的に目標水質を満足する生産水を得る造水方法に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1:原水
2:沈殿槽
3:原水供給ポンプ
4:前処理ユニット
5:中間水槽
6:昇圧ポンプ
7:逆浸透膜ユニット
8:エネルギー回収ユニット
9:処理水槽
10:配水ライン
11:排水ライン
12:バルブ
13:三方弁
14:吸引ポンプ
15:生物処理水槽
16:浸漬式分離膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7