(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051877
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】車輪速センサ
(51)【国際特許分類】
G01P 1/02 20060101AFI20161219BHJP
G01P 3/488 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
G01P1/02
G01P3/488 F
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-3557(P2013-3557)
(22)【出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2014-134492(P2014-134492A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勝敏
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−227156(JP,A)
【文献】
特開2007−170964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 1/02
G01P 3/487 − 3/488
G01D 5/12 − 5/245
G01B 7/30
G01R33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石及び車輪用ハブの間に位置しており、前記車輪用ハブの回転による磁束変化量を検出し電気信号に変換して出力する磁電変換子と、屈曲した帯状をなし、一端部を前記磁電変換子に接続してあるリードと、直方体状をなし、前記磁電変換子を保持する保持部を一面に有し、前記リードの他端部を前記一面に連なる他面に載置するホルダと、前記他面側から前記ホルダを覆うカバーとを備える車輪速センサにおいて、
前記カバーは、前記他面との対向部分に、前記リードに向けて突出した片持ち梁状をなし、前記リードを押圧する押圧部を有すること
を特徴とする車輪速センサ。
【請求項2】
前記カバーは前記リードの一端部から中途部までを覆っており、
前記リードの中途部に、前記カバー側に突出した電子部品を設けてあり、
前記押圧部は前記リードにおける前記磁電変換子及び前記電子部品の間を押圧し、
前記カバーは前記電子部品との対向部分に、前記電子部品をその内側に配置する凹部又は孔を有すること
を特徴とする請求項1に記載の車輪速センサ。
【請求項3】
前記カバーは、前記リードの長手方向に交差する方向にて前記リードに隣り合う突部を備えること
を特徴とする請求項1又は2に記載の車輪速センサ。
【請求項4】
前記リードを二つ備え、
両リードの間から突出し、前記リードに沿う仕切板が前記ホルダの前記他面に設けてあり、
前記他面における前記仕切板の端部に連なる箇所に凹部が形成してあり、
前記カバーに前記凹部に嵌合する嵌合部が設けてあること
を特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の車輪速センサ。
【請求項5】
前記嵌合部に前記仕切板が嵌入する嵌入溝が設けてあることを特徴とする請求項4に記載の車輪速センサ。
【請求項6】
前記保持部を被覆し、前記保持部との対向部分に開口を有する金属製の保護カバーを備えること
を特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の車輪速センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の車輪速センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行の安全性を高めるためにアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)を車両に搭載することが行われている。ABSは車輪の減速度が設定された値を下回った場合、換言すれば車輪が急ブレーキによってロックされた状態にある場合、車輪に対するブレーキを緩め、車輪のロック状態を解除し、運転者による操舵を回復させるシステムであり、車輪の速度を検出する構成を備える。
【0003】
車輪の速度を検出する構成は、車輪用ハブに同軸的に取り付けた環状のセンサロータと、該センサロータに対向する車輪速センサとを備える。車輪速センサ又はセンサロータの一方に磁石を設け、他方に磁性体を設けてある。車輪速センサはセンサロータの回転による磁束変化量を検出して電気信号に変換し、ABSの制御装置に出力する。
【0004】
車輪速センサは、例えばホールIC(磁電変換子)を含む検出部と、該検出部を載置する直方体状のホルダと、該ホルダに載置された検出部を覆うカバーとを備える(例えば特許文献1参照)。ホルダの一面に検出部が載置される。カバーは、ホルダの前記一面及び該一面の対向二辺に連なる二つの他面に対向する断面コの字状をなす。前記ホルダの前記一面に検出部が載置され、その上からカバーが装着され、カバー及びホルダの一面の間に検出部が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−268016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしカバー及びホルダの間に保持するだけでは、保持力が不十分となるおそれがある。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、磁電変換子を含む検出部をホルダに確実に保持させることができる車輪速センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車輪速センサは、磁石及び車輪用ハブの間に位置しており、
前記車輪用ハブの回転による磁束変化量を検出し電気信号に変換して出力する磁電変換子と、屈曲した帯状をなし、一端部を前記磁電変換子に接続してあるリードと、直方体状をなし、前記磁電変換子を保持する保持部
を一面に有し、前記リードの他端部を前記一面に連なる他面に載置するホルダと、前記他面側から前記ホルダを覆うカバーとを備える車輪速センサにおいて、前記カバーは、前記他面との対向部分に
、前記リードに向けて突出した片持ち梁状をなし、前記リードを押圧する押圧部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、カバーに設けた押圧部によってリード及び磁電変換子をホルダに確実に保持させる。
また押圧部をリードに当接させて、押圧部の押圧力をリードに確実に作用させる。
【0012】
本発明に係る車輪速センサは、前記カバーは前記リードの一端部から中途部までを覆っており、前記リードの中途部に、前記カバー側に突出した電子部品を設けてあり、前記押圧部は前記リードにおける前記磁電変換子及び電子部品の間を押圧し、前記カバーは前記電子部品との対向部分に、前記電子部品をその内側に配置する凹部又は孔を有することを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、前記カバーにおける電子部品に対向する部分に凹部又は孔を形成して電子部品の配置空間を確保し、電子部品をその内側に配置させて、車輪速センサの小型化を実現する。
【0014】
本発明に係る車輪速センサは、前記カバーは、前記リードの長手方向に交差する方向にて前記リードに隣り合う突部を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、カバーは、リードの長手方向に交差する方向にて、リードに隣り合う突部を備える。リードの上に電線が載置され、半田付けがなされるが、電線が載置された場合、突部によって電線の位置決めがなされ、電線及びリード片の確実な半田付けが実現される。
【0016】
本発明に係る車輪速センサは、前記リードを二つ備え、両リードの間から突出し、前記リードに沿う仕切板が前記ホルダの前記他面に設けてあり、前記他面における前記仕切板の端部に連なる箇所に凹部が形成してあり、前記カバーに前記凹部に嵌合する嵌合部が設けてあることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、仕切板の端部付近においてホルダの他面に凹部を形成し、カバーに設けた嵌合部を凹部に嵌合させる。これにより仕切板の端部付近に隙間が発生することを防止し、仕切板によって隔てられた二つの電線が短絡することを回避する。
【0018】
本発明に係る車輪速センサは、前記嵌合部に前記仕切板が嵌入する嵌入溝が設けてあることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、嵌合部の嵌入溝に仕切板を嵌入して仕切板及び側板部を確実に連結させる。
【0020】
本発明に係る車輪速センサは、前記保持部を被覆し、前記保持部との対向部分に開口を有する金属製の保護カバーを備えることを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、ホルダの端部に金属製の保護カバーを設けて磁電変換子を保護する。ホルダは保護カバーの取付後に樹脂によってモールドされるが、気泡等の発生により、モールドが不十分となっていないか、モールド後に、保護カバーに形成した開口から確認する。
【発明の効果】
【0022】
本発明にあっては、カバーに設けた押圧部によってリードを押圧し、リード及び磁電変換子をホルダに確実に保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図4】
図3に示すIV−IV線を切断線とした断面図である。
【
図5】樹脂部材によってモールド成形された車輪速センサを略示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明を実施の形態に係る車輪速センサを示す図面に基づいて詳述する。
図1及び
図2は車輪速センサを略示する分解斜視図、
図3は車輪速センサを略示する平面図、
図4は
図3に示すIV−IV線を切断線とした断面図である。
【0025】
車輪速センサは、車輪用ハブに取付けたロータの回転による磁束変化量を検出する検出ユニット10と、該検出ユニット10を保持するホルダ1と、該ホルダ1に保持された検出ユニット10を覆うカバー20とを備える。
【0026】
ホルダ1は直方体状をなし、その一端面(一面)に保持凹部2(保持部)を備える。ホルダ1の一端部(前記一端面側の端部)の内部に、後述する磁石30を収容する収容室8を設けてあり、保持凹部2の底面は開口し、収容室8に連通している。保持凹部2の一縁部には、ホルダ1の一側面4(他面)側に開口した切欠3を設けてあり、保持凹部2は一端面から視認した場合、コの字状をなす。前記一側面4はホルダ1の他端部に向けて下降傾斜している。
【0027】
該一側面4の中央部に凹部6が形成してあり、該凹部6から一側面4の他端に亘って仕切板5が一側面4に延設してある。仕切板5の凹部6側の端部には、後述する嵌入溝26aに嵌入する嵌入突起5aが設けてある。嵌入突起5aは凹部6の内側に位置し、凹部6の底面に連なる。また嵌入突起5aは前記一側面4に交差する方向に延びている。一側面4に交差するホルダ1の両側面それぞれに、後述する係合孔27a,27aに係合する係合突起7,7が設けてある。
【0028】
検出ユニット10は帯状をなす二つのリード12,12を有し、両リード12,12は互いに略平行である。リード12の一端部は屈曲し、該一端部の先端は磁電変換子11(例えばホールIC)に接続されている。磁電変換子11は、車輪用ハブに取付けたロータの回転による磁束変化量を検出し電気信号に変換して出力する。なおロータは導電性部材からなる。
【0029】
両リード12、12に亘ってコンデンサを含む電子部品13がリード12の他端部に設けてある。電子部品13はリード12から突出しており、その突出方向はリード12の一端部が屈曲している方向と反対である。検出ユニット10は、磁電変換子11が切欠3から保持凹部2に挿入され、電子部品13よりも他端側において両リード12の間に仕切板5が挿入されるように、前記一側面4側からホルダ1に取り付けてある。
【0030】
前記カバー20は矩形板状のボディ21を備え、ボディ21の一端部に開口22を設けてある。舌状をなし、リード12を押圧する押圧部23が開口22の内縁部分からボディ21の一面21a側に向けて突出している。押圧部23は片持ち梁状をなす。
図4に示す如く、ボディ21の他端部において、ボディ21の一面21aに凹部24aが形成してあり、凹部24aの底には貫通した孔24が設けてある。
【0031】
なお上述した押圧部23の位置は電子部品13と磁電変換子11との間に対応し、凹部24a及び孔24の位置は電子部品13に対応する。
【0032】
長手方向に平行なボディ21の両縁部それぞれから前記一面21a側に係合片27、27が突出している。係合片27には貫通した係合孔27aが設けてある。ボディ21の他端部から一面21a側に矩形の端面板21cが突出している。端面板21cの突出端部において、端面板21cの二隅それぞれに突部25、25が設けてある。突部25は端面板21cから外向きに突出している。なお突部25、25それぞれは、一のリード12の二つの長手縁の内、他のリード12の反対側に位置する縁(以下外縁という)に隣接するように配してある。
【0033】
端面板21cの突部25、25の間に、凹部6に嵌合する嵌合部26が設けてある。嵌合部26はボディ21に直角な方向に長い直方体状をなし、端面板21cよりも前記一面21a側に突出している。端面板21cに平行な嵌合部26の側面には、ボディ21に直角な方向に延びており、前記嵌入突起5aが嵌入する嵌入溝26aが設けてある。ボディ21の他面21b側において嵌入溝26aは閉鎖されており、ボディ21の一面21a側において嵌入溝26aは開口している。
【0034】
カバー20は、前記リード12及び電子部品13をホルダ1との間で挟持するように配してあり、係合孔27aに係合突起7を係合させ、嵌入溝26aに嵌入突起5aを挿入させてホルダ1に取り付けてある。係合片27、27は弾性変形して係合突起7、7を乗り越え、係合突起7、7が係合孔27a、27aに係合する。押圧部23は電子部品13と磁電変換子11との間において、リード12に当接して弾性変形し、弾性復元力によってリード12を押圧する。
【0035】
嵌入突起5aは、開口している側から嵌入溝26aに挿入され、嵌入溝26aの閉鎖されている部分まで嵌入する。各突部25はリード12の外縁に隣接する。このとき嵌合部26は凹部6に嵌合する。上述した構成によって、カバー20及びホルダ1の間にて検出ユニット10は確実に保持される。
【0036】
図5は樹脂部材60によってモールド成形された車輪速センサを略示する断面図である。前記収容室8には磁石30が収容されており、磁電変換子11に対向している。磁電変換子11には、帯状の金属シートをコの字状に折り曲げて成型された保護カバー40が設けてある。保護カバー40の中央部分の内面が磁電変換子11に対向している。前記中央部分には樹脂部材60によるモールドが充分に行われたか否かを確認するための開口41が設けてある。なお金属シートの材料としては例えば鉄、アルミ製のシートが挙げられるが、特に限定されるものではなく、磁電変換子11を保護するに充分な硬度を有する材料であればよい。
【0037】
電線51の正及び負の二つの先端部51aそれぞれは、仕切板5の両面側において、リード12に載置され、半田付けされている。なお電線51の先端部51aがリード12に載置された場合、リード12の外縁に隣接した突部25、25によって先端部51aの位置決めがなされるので、半田付けを迅速且つ確実に行うことができる。
【0038】
半田付けの後、樹脂部材60によって、ホルダ1、検出ユニット10、カバー20及び電線51に対しインサート成形(モールド成形)が行われる。インサート成形後、保護カバー40の開口41からモールドされた樹脂部材60の状態(気泡が発生しているか否か等)を確認し、充分なインサート成形が行われたか否か確認する。充分なインサート成形が行われている場合、樹脂ブラケット50が取り付けられる。そして車輪用ハブに取り付けたロータに磁電変換子11が対向するように、樹脂ブラケット50を車体に取り付ける。ロータと磁石30との間に磁電変換子11が位置し、磁電変換子11はロータの回転による磁束変化量を検出して電気信号に変換し、出力する。出力された電気信号はリード12及び電線51を伝達し、例えばABSの制御装置に入力される。
【0039】
実施の形態に係る車輪速センサにあっては、カバー20に設けた押圧部23によってリード12を押圧し、押圧部23の押圧力をリード12に確実に作用させて、リード12及び磁電変換子11をホルダ1に確実に保持させることができる。またカバー20における電子部品13に対向する部分に凹部24a及び孔24を形成して電子部品13の配置空間を確保し、電子部品13をその内側に配置させて、車輪速センサの小型化を実現する。
【0040】
またカバー20は、リード12の長手方向に交差する方向にて、リード12に隣り合う突部25を備える。リード12の上に電線51が載置され、半田付けがなされるが、電線51が載置された場合、突部25によって電線51の位置決めがなされるので、電線51及びリード12の確実な半田付けを実現することができる。
【0041】
また仕切板5の端部付近においてホルダ1の側面に凹部6を形成し、カバー20に設けた嵌合部26を凹部6に嵌合させる。これにより仕切板5の端部付近に隙間が発生することを防止し、仕切板5によって隔てられた二つの先端部51aが短絡することを回避することができる。
【0042】
またホルダ1の端部に金属製の保護カバー40を設けて磁電変換子11を保護する。ホルダ1は保護カバー40の取付後に樹脂によってモールドされるが、気泡等の発生により、モールドが不十分となっていないか、モールド後に、保護カバー40に形成した開口41から確認することができる。
【0043】
なお実施の形態に係る車輪速センサは磁石30を備えるが、磁石30に代えて導電性部材を車輪速センサに設けて、磁石30をハブに設けてもよい。また電子部品13の配置空間を確保するために、カバー20に凹部24a及び孔24を設けているが、凹部24aのみでもよい。またカバー20に孔24のみを設けて孔24から電子部品13を突出させてもよい。また車輪速センサは駆動輪、従動輪のいずれに対しても適用することができる。
【0044】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0045】
1 ホルダ
2 保持凹部(保持部)
5 仕切板
6 凹部
11 磁電変換子
12 リード
13 電子部品
20 カバー
24 孔
23 押圧部
24a 凹部
25 突部
26 嵌合部
26a 嵌入溝
40 保護カバー
41 開口