(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基台に設けたコラムと、前記コラムに昇降可能に設けた主軸ヘッドと、前記主軸ヘッドに回転可能に支持し且つ工具を装着する主軸と、前記コラムに設け、前記主軸ヘッドに近接するフレームと、前記フレームに旋回可能に設け、複数の工具を保持可能な工具マガジンとを備えた工作機械の制御を行うものであって、前記主軸ヘッドを機械原点から前記工具マガジンが旋回可能となるATC原点まで上昇する際に、前記主軸に装着した前記工具を取り外して前記工具マガジンへ受け渡し、前記主軸ヘッドが前記ATC原点に位置するときに前記工具マガジンを旋回して所望の工具を前記主軸と対向するように位置決めし、前記主軸ヘッドを前記ATC原点から前記機械原点まで下降する際に、前記工具マガジンから前記主軸に前記所望の工具を装着する数値制御装置において、
前記コラムに設け、前記主軸ヘッドを昇降可能に支持するヘッド支持機構と、
前記ヘッド支持機構の動作を制御する制御手段と、
前記主軸ヘッドに設け、前記主軸に装着した前記工具を保持する工具保持機構と、
前記主軸ヘッドに設け、前記工具保持機構のアンクランプ部材を押圧することにより前記主軸に装着した前記工具を開放するアンクランプ操作部材と、
前記アンクランプ操作部材に設けたアンクランプカムと、
前記コラムに設け、前記主軸ヘッドを加工位置から前記ATC原点まで上昇する上昇行程と前記ATC原点から前記機械原点まで下降する下降行程において、前記アンクランプカムのカム面に接離することにより前記アンクランプ操作部材を操作するローラと
を備え、
前記制御手段は、
前記上昇行程と前記下降行程の夫々において、
前記主軸ヘッドを第一速度で移動を開始した後で、前記主軸ヘッドの移動速度を、前記第一速度よりも低速である第二速度に切り替える第一制御手段と、
前記第一制御手段が前記移動速度を前記第二速度に切り替えた後で、前記移動速度を前記第二速度よりも高速である第三速度に切り替える第二制御手段と
を備え、
前記第一制御手段は、
前記上昇行程において、前記カム面に前記ローラが接触する位置で、前記第二速度に切り替え、
前記下降行程において、前記工具が前記主軸に装着する位置で、前記第二速度に切り替えることを特徴とする数値制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。以下説明は、
図1の左斜め下方、右斜め上方、右方、左方を、夫々、工作機械1の前方、後方、右方、左方とする。工作機械1の左右方向、前後方向、上下方向は、夫々、工作機械1のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。
【0012】
図1を参照し、工作機械1の構造を説明する。工作機械1は、基台2、機械本体3、テーブル10、工具交換装置20等を備える。基台2は鉄製の略直方体状の土台である。機械本体3は基台2上部後方に設け、テーブル10上面に保持したワーク(図示略)を切削する。テーブル10は基台2上部中央に設け、X軸モータ53、Y軸モータ54(
図3参照)、ガイド機構(図示略)により、X軸方向とY軸方向に移動可能である。工具交換装置20は機械本体3上部に設けたフレーム8に固定し、機械本体3の主軸9に装着した工具4を他の工具と交換する。
【0013】
工作機械1は操作パネル(図示略)を備える。操作パネルは入力部24と表示部25(
図3参照)を備える。作業者は入力部24により、NCプログラム、工具の種類、工具情報、各種パラメータ等を入力する。作業者が入力部24を操作すると、表示部25は各種入力画面又は操作画面等を表示する。
【0014】
図1を参照し、機械本体3の構成を説明する。機械本体3は、コラム5、主軸ヘッド7、主軸9、制御箱6等を備える。コラム5は基台2上部後方に立設する。主軸ヘッド7はコラム5前面に沿ってZ軸方向に昇降可能である。主軸9は主軸ヘッド7内部に回転可能に支持する。主軸9は工具ホルダ17(
図2参照)を装着し、主軸モータ52(
図2,
図3参照)の駆動により高速回転する。工具ホルダ17は工具4を保持する。制御箱6は数値制御装置30(
図3参照)を格納する。数値制御装置30は工作機械1の動作を制御する。
【0015】
図2に示す如く、主軸ヘッド7はコラム5前面に設けたZ軸移動機構(本発明のヘッド支持機構に相当)によってZ軸方向に昇降する。Z軸移動機構は一対のZ軸リニアガイド(図示略)、Z軸ボール螺子26(
図2参照)、Z軸モータ51(
図3参照)を備える。Z軸リニアガイドはZ軸方向に延出し且つ主軸ヘッド7をZ軸方向に案内する。Z軸ボール螺子26は一対のZ軸リニアガイドの間に配置し、上側軸受部27と下側軸受部(図示略)によって回転可能に設ける。主軸ヘッド7は背面にナット29(
図2参照)を備える。ナット29はZ軸ボール螺子26に螺合する。Z軸モータ51はZ軸ボール螺子26を正逆方向に回転する。故に主軸ヘッド7はナット29と共にZ軸方向に移動する。主軸ヘッド7は上部に主軸モータ52を備える。
【0016】
図2を参照し、主軸ヘッド7の内部構造を説明する。主軸ヘッド7は前方下部の内側に主軸9を回転可能に支持する。主軸9は上下方向に回転軸を有する。主軸9は主軸モータ52の駆動軸にカップリング23を介して連結する。故に主軸9は主軸モータ52の回転駆動で回転する。主軸9はテーパ穴18とホルダ挟持部材19とドローバー81を備える。テーパ穴18は主軸9の先端部(下端部)に設ける。ホルダ挟持部材19はテーパ穴18の上方に設ける。ドローバー81は主軸9の中心を通る軸穴の中に同軸上に挿入して設ける。
【0017】
図2に示す如く、工具ホルダ17は一端側に工具4を保持し、他端側にテーパ装着部17Aとプルスタッド17Bを備える。テーパ装着部17Aは円錐状である。プルスタッド17Bはテーパ装着部17Aの頂上部から軸方向に突出する。テーパ装着部17Aは主軸9のテーパ穴18に装着する。テーパ穴18にテーパ装着部17Aを装着すると、ホルダ挟持部材19はプルスタッド17Bを挟持する。ドローバー81がホルダ挟持部材19を下方に押圧すると、ホルダ挟持部材19はプルスタッド17Bの挟持を解除する。
【0018】
主軸ヘッド7は後方上部の内側にクランクレバー60を備える。クランクレバー60は略L字型であり支軸61を中心に揺動自在である。支軸61は主軸ヘッド7内に固定する。クランクレバー60は縦方向レバー63と横方向レバー62を備える。縦方向レバー63は支軸61からコラム5側に対して斜め上方に延びて中間部65で上方に折曲して更に上方に延びる。横方向レバー62は支軸61からコラム5前方に略水平に延びる。横方向レバー62の先端部はドローバー81に直交して突設したピン58に上方から係合可能である。縦方向レバー63は上端部の背面に板カム体66を備える。板カム体66はコラム5側にカム面を備える。板カム体66のカム面は上側軸受部27に固定したカムフォロア67と接離可能である。カムフォロア67は板カム体66のカム面を摺動する。引張コイルバネ(図示略)は縦方向レバー63と主軸ヘッド7との間に弾力的に設ける。クランクレバー60を右側面から見た場合、引張コイルバネはクランクレバー60を時計回りに常時付勢する。故にクランクレバー60は横方向レバー62によるピン58の下方向への押圧を常時解除する。
【0019】
図6〜
図9を参照し、主軸9のテーパ穴18への工具ホルダ17の脱着動作を説明する。
図6に示す如く、主軸9のテーパ穴18に、工具ホルダ17のテーパ装着部17Aを装着した状態で、主軸ヘッド7は上昇する。クランクレバー60に設けた板カム体66はカムフォロア67に接触して摺動する。
図7に示す如く、板カム体66のカム形状に沿ってカムフォロア67が摺動する。クランクレバー60は右側面から見た場合に支軸61を中心に反時計回りに回転する。横方向レバー62はピン58に上方から係合してドローバー81を下方に押圧する。ドローバー81はホルダ挟持部材19を下方に付勢する。故に、ホルダ挟持部材19はプルスタッド17Bの挟持を解除する。
図8,
図9に示す如く、工具ホルダ17は主軸9のテーパ穴18から取り外し可能となる。
【0020】
これとは逆に、主軸9のテーパ穴18に、工具ホルダ17のテーパ装着部17Aを装着する場合、
図8,
図7の順に示す如く、主軸9のテーパ穴18に、工具ホルダ17のテーパ装着部17Aを挿入した状態で、主軸ヘッド7は下降する。クランクレバー60に設けた板カム体66はカムフォロア67に摺動する。板カム体66のカム形状に沿ってカムフォロア67が摺動する。クランクレバー60は右側面から見た場合に支軸61を中心に時計回りに回転する。故に、横方向レバー62はピン58から離れ、ドローバー81の下方への押圧を解除する。ドローバー81はホルダ挟持部材19の下方への付勢を解除し、ホルダ挟持部材19はプルスタッド17Bを挟持する。
図6に示す如く、主軸9のテーパ穴18に対して、工具ホルダ17のテーパ装着部17Aの装着が完了する。
【0021】
図2を参照し、工具交換装置20の構造を説明する。工具交換装置20は工具マガジン21を備える。工具マガジン21はタレット式である。工具マガジン21はマガジンベース71と複数のグリップアーム90を備える。マガジンベース71は円盤状である。複数のグリップアーム90はマガジンベース71の外周に沿って前後方向に揺動可能に設ける。マガジン支持台45はフレーム8に固定する。フレーム8はコラム5に固定し且つ主軸ヘッド7に近接して配置する。マガジン支持台45は支軸75を回転可能に支持する。支軸75は工作機械1の前方に対して斜め下方に延びる。支軸75はマガジンベース71を回転可能に支持する。マガジンベース71は工作機械1の前方に対して正面を向けて配置する。
【0022】
図2を参照し、マガジンベース71の構造を説明する。マガジンベース71はボス部73と鍔部72を備える。ボス部73は筒状である。支軸75はボス部73内に挿入する。鍔部72はボス部73の外周面の前端側に軸方向に直交して設ける。ボス部73は後端部に割出円板77を固定する。割出円板77は支軸75を中心とし、背面側(主軸ヘッド7に対向する面)に複数のカムフォロア(図示外)を備える。複数のカムフォロアは複数のグリップアーム90の各位置に夫々対応して配置する。
【0023】
ケーシング41はマガジン支持台45の上部に固定する。ケーシング41は回転割出機構を格納する。回転割出機構は複数のギヤとカム(図示略)を有する。マガジンモータ55はケーシング41上部に固定する。マガジンモータ55の回転軸は回転割出機構と連結する。割出円板77の複数のカムフォロアは回転割出機構のカムに形成したカム溝(図示外)に夫々嵌合する。故に割出円板77は複数のグリップアーム90の中の一つを割り出し、マガジンベース71の最下方位置に移動できる。
【0024】
マガジンベース71は裏面外周に沿って複数の支点台82を固定する。支点台82はグリップアーム90を枢支軸85を中心に揺動可能に軸支する。グリップアーム90は一端に把持部91を備える。把持部91は工具を把持可能である。グリップアーム90は枢支軸85の近傍に主軸ヘッド7側に向けてカムフォロア93を回転自在に軸支する。カムフォロア93は主軸ヘッド7の昇降によって、主軸ヘッド7前面に固定されたカム体11の傾斜面を摺動する。グリップアーム90は枢支軸85を中心に揺動する。マガジンベース71の最下方位置に割り出したグリップアーム90の把持部91は近接位置と退避位置との間を揺動できる。近接位置は主軸9に近接して対向する位置である。退避位置は主軸9から前方に離間する位置である。
【0025】
グリップアーム90は把持部91とは反対側の他端に、鋼球92を圧縮コイルバネ(図示略)で外側に付勢した状態で出退可能に保持する。ボス部73は断面円弧状の案内面83が周設された円筒状のグリップ支持カラー80を外挿する。グリップアーム90の他端から出退する鋼球92の一部はグリップ支持カラー80の案内面83に弾力的に当接する。案内面83はグリップアーム90の他端側を案内する。故にグリップアーム90は安定して揺動できる。
【0026】
案内面83は第一ノッチ溝98と第二ノッチ溝99を備える。第一ノッチ溝98は案内面83におけるマガジンベース71の前側に設ける。第二ノッチ溝99は案内面83における主軸ヘッド7側に設ける。第一ノッチ溝98に鋼球92が嵌着すると、把持部91が近接位置に移動した状態で、グリップアーム90は姿勢を保持する。第二ノッチ溝99に鋼球92が嵌着すると、把持部91が退避位置に移動した状態で、グリップアーム90は姿勢を保持する。
【0027】
図3を参照し、数値制御装置30の電気的構成を説明する。数値制御装置30は、CPU31、ROM32、RAM33、不揮発性記憶装置34、入出力部35、駆動回路51A〜55A等を備える。CPU31は数値制御装置30を制御する。ROM32は制御プログラムと工具交換プログラム等を記憶する。制御プログラムはNCプログラムを解析して実行する為のものである。工具交換プログラムは後述する工具交換処理(
図4参照)を実行する為のものである。RAM
33は各種処理実行中の各種データを一時的に記憶する。不揮発性記憶装置34は作業者が入力部24で入力して登録した複数のNCプログラム等を記憶する。NCプログラムは各種制御指令を含む複数のブロックで構成し、工作機械1の軸移動、工具交換等を含む各種動作をブロック単位で制御するものである。
【0028】
駆動回路51AはZ軸モータ51とエンコーダ51Bに接続する。駆動回路52Aは主軸モータ52とエンコーダ52Bに接続する。駆動回路53AはX軸モータ53とエンコーダ53Bに接続する。駆動回路54AはY軸モータ54とエンコーダ54Bに接続する。駆動回路55Aはマガジンモータ55とエンコーダ55Bに接続する。駆動回路51A〜55AはCPU31から指令を受け、対応する各モータ51〜55に駆動電流を夫々出力する。駆動回路51A〜55Aはエンコーダ51B〜55Bからフィードバック信号を受け、位置と速度のフィードバック制御を行う。フィードバック信号はパルス信号である。入出力部35は入力部24と表示部25に夫々接続する。
【0029】
使用者は複数のNCプログラムの中から一のNCプログラムを入力部24で選択可能である。CPU31は選択したNCプログラムを表示部25に表示する。CPU31は表示部25に表示したNCプログラムに基づき、工作機械1の動作を制御する。
【0030】
図4の流れ図、
図5〜
図11を参照し、CPU31が実行する工具交換処理を説明する。以下説明では、Z軸の機械原点をZ軸原点という。機械原点とは、X軸、Y軸の機械座標が零である位置、Z軸の機械座標はワークを加工可能な上限位置である。本実施形態では、説明の便宜上、Z180を加工位置、Z480をZ軸原点、Z615をATC原点とする。更に、Z490を主軸ヘッド7の工具交換上昇時に板カム体66がカムフォロア67に当接する位置、Z510を主軸ヘッド7の工具交換下降時に主軸9に工具ホルダ17が当接して装着する位置とする。
図5では太い矢印は最高速での主軸ヘッド7の移動、細い矢印は低速での主軸ヘッド7の移動を示し、最高速までの加速、低速までの減速過程は図示していない。尚、最高速の一例は50m/minである。低速の一例は20m/minである。尚、Z軸はテーブル10の上面を基準(0)としている。Z490は、テーブル10上面から490mm高い位置を示している。
【0031】
工具交換処理は工具交換動作を実行するものである。工具交換動作は上昇行程、工具マガジン旋回、下降行程の順に夫々実行する。
【0032】
CPU31は制御プログラムでNCプログラムを一ブロック毎実行中、工具交換を指示する制御指令を読み込んだ場合、ROM32から工具交換プログラムを読み込んで、本処理を実行する。
【0033】
[上昇行程]
CPU31はオリエント動作を開始する(S1)。オリエント動作は主軸9の回転角度位置を工具交換を行う位置に停止する動作である。CPU31はZ軸モータ51を回転する。CPU31は加工位置であるZ180から最高速で主軸ヘッド7の上昇を開始する(S2)。
図5,
図10に示す如く、主軸ヘッド7は区間101を最高速で上昇する。区間101はZ180からZ465までの区間である。
【0034】
CPU31は主軸ヘッド7がZ465に到達したか否か判断する(S3)。Z465に到達するまでは(S3:NO)、S3に戻って主軸ヘッド7を最高速で上昇し続ける。Z465に到達した場合(S3:YES)、CPU31は減速を開始する(S4)。主軸ヘッド7は最高速から減速し始める。主軸ヘッド7の上昇速度が低速まで減速したとき、CPU31は主軸ヘッド7の上昇速度を低速で維持する(S5)。本実施形態では、主軸ヘッド7がZ490に到達する時点で、主軸ヘッド7の上昇速度は低速になる。
図5,
図10に示す如く、主軸ヘッド7は区間102で最高速から低速になるまで減速しながら上昇する。区間102はZ465からZ490までの区間である。主軸ヘッド7はZ軸原点(Z480)を通過する。
【0035】
CPU31は主軸ヘッド7がZ490に到達したか否か判断する(S6)。Z490に到達するまでは(S6:NO)、S6に戻って主軸ヘッド7を低速で上昇し続ける。Z490に到達した場合(S6:YES)、
図6に示す如く、板カム体66はカムフォロア67に当接する。主軸ヘッド7は低速で上昇している。故に工作機械1は板カム体66がカムフォロア67に当接するときに生じる衝突音を軽減できる。なお、後述するが、板カム体66がカムフォロア67に当接するのと同時に、横方向レバー62はピン58に係合する。横方向レバー62がピン58に係合する際にも衝突音を生じる。上記の通り、主軸ヘッド7は低速で上昇しているので、その衝突音も軽減する。工作機械1は板カム体66がカムフォロア67に当接するときの勢い、横方向レバー62がピン58に係合する勢いを共に小さくできるので、板カム体66とカムフォロア67、横方向レバー62とピン58にかかる負荷を軽減できる。
【0036】
Z490に到達した場合(S6:YES)、板カム体66がカムフォロア67に既に当接しているので、CPU31は最高速で上昇する(S7)。
図5,
図10に示す如く、主軸ヘッド7は区間103で低速から加速して最高速で上昇する。区間103はZ490からZ573までの区間である。
【0037】
図6〜
図8の順に示す如く、主軸ヘッド7の上昇により、カムフォロア93は主軸ヘッド7前面に固定されたカム体11の傾斜面を上部から下方に向けて摺動する。グリップアーム90は枢支軸85を中心に揺動する。マガジンベース71の最下方位置に割り出したグリップアーム90の把持部91は、主軸9の近接位置に移動する。把持部91は主軸9に装着した工具ホルダ17を把持する。
【0038】
一方、
図6〜
図8の順に示す如く、板カム体66はカムフォロア67に接触して上方に摺動する。板カム体66のカム形状に沿ってクランクレバー60は揺動する。クランクレバー60は右側面から見た場合に、支軸61を中心に反時計回りに回転する。横方向レバー62はピン58に係合してドローバー81を下方に押圧する。ドローバー81はホルダ挟持部材19を下方に付勢する。ホルダ挟持部材19はプルスタッド17Bの挟持を解除する。工具ホルダ17は主軸9のテーパ穴18から取り外し可能となる。
図9に示す如く、主軸ヘッド7は更に上昇するので、グリップアーム90の把持部91は主軸9のテーパ穴18から工具ホルダ17を引き抜く。主軸ヘッド7は引き続き上昇する。
【0039】
CPU31は主軸ヘッド7がZ573に到達したか否か判断する(S8)。Z573に到達するまでは(S8:NO)、S8に戻って主軸ヘッド7を最高速で上昇し続ける。Z573に到達した場合(S8:YES)、CPU31はZ615で停止する為に減速を開始する(S9)。主軸ヘッド7は最高速から減速し始める。
【0040】
CPU31は主軸ヘッド7がZ615に到達したか否か判断する(S10)。Z615に到達するまでは(S10:NO)、CPU31はS10に戻って主軸ヘッド7を低速で上昇し続ける。Z615に到達した場合(S10:YES)、CPU31は主軸ヘッド7を停止する(S11)。
図5,
図10に示す如く、主軸ヘッド7は区間104で最高速から零になるまで減速しながら上昇する。区間102はZ465からZ490までの区間である。主軸ヘッド7の送り速度はZ615で零になる。主軸ヘッド7の上昇行程は完了する。
【0041】
[工具マガジン旋回]
CPU31は工具マガジン21を旋回する(S12)。CPU31は次工具を保持する工具ホルダ17を把持するグリップアーム90を割り出して工具交換位置に移動する。次工具は工具交換指令が指定する工具である。工具交換位置は工具マガジン21の最下方位置で且つ主軸9に近接して対向する位置である。
【0042】
[下降行程]
CPU31はATC原点であるZ615から最高速で主軸ヘッド7の下降を開始する(S13)。
図5,
図11に示す如く、主軸ヘッド7は区間105を最高速で下降する。区間105はZ615からZ535までの区間である。
図9に示す如く、板カム体66はカムフォロア67に対し下方に摺動するが、クランクレバー60は揺動しない。
図11に示す如く、主軸ヘッド7の送り速度はZ573で最高速に達する。
【0043】
CPU31は主軸ヘッド7がZ535に到達したか否か判断する(S14)。Z535に到達するまでは(S14:NO)、S14に戻って主軸ヘッド7を最高速で下降し続ける。Z535に到達した場合(S14:YES)、CPU31は減速を開始する(S15)。主軸ヘッド7は最高速から減速し始める。主軸ヘッド7の下降速度が低速まで減速したとき、CPU31は主軸ヘッド7の下降速度を低速で維持する(S16)。本実施形態では、少なくとも主軸ヘッド7がZ510に到達する前に、主軸ヘッド7の下降速度は低速まで減速するようになっている。
図5,
図11に示す如く、主軸ヘッド7は区間106で最高速から低速まで減速しながら
下降する。区間106はZ535からZ510までの区間である。
【0044】
CPU31は主軸ヘッド7がZ510に到達したか否か判断する(S17)。Z510に到達するまでは(S17:NO)、S17に戻って主軸ヘッド7を低速で下降し続ける。Z510に到達した場合(S17:YES)、
図8に示す如く、主軸9のテーパ穴18に、工具交換位置に割り出したグリップアーム90の把持部91が把持する工具ホルダ17が挿入して装着し、主軸9の先端部に工具ホルダ17の鍔が当接する。主軸ヘッド7は低速で下降している。故に工作機械1は主軸9の先端部に工具ホルダ17が装着するときに生じる衝突音を軽減できる。工作機械1は主軸9の先端部に工具ホルダ17が装着するときの勢いを小さくできるので、主軸9の先端部と工具ホルダ17とグリップアーム90にかかる負荷を軽減できる。
【0045】
Z510に到達した場合(S17:YES)、主軸9の先端部に工具ホルダ17が既に装着しているので、CPU31は最高速で下降する(S18)。
図5,
図11に示す如く、主軸ヘッド7は区間107で低速から加速して最高速で下降する。区間107はZ510からZ480(Z軸原点)までの区間である。主軸ヘッド7の送り速度はZ480に到達する前に最高速になる。
【0046】
図8〜
図6の順に示す如く、主軸ヘッド7の下降により、カムフォロア93は主軸ヘッド7前面に固定されたカム体11の傾斜面を下部から上方に向けて摺動する。グリップアーム90は枢支軸85を中心に揺動する。グリップアーム90の把持部91は近接位置から退避位置に移動する。
【0047】
一方、板カム体66はカムフォロア67に対し下方に摺動する。板カム体66のカム形状に沿ってクランクレバー60は揺動する。クランクレバー60は右側面から見た場合に、支軸61を中心に時計回りに回転する。横方向レバー62はピン58から上方に離間し、ドローバー81に対する下方への押圧を解除する。ドローバー81はホルダ挟持部材19に対する下方への付勢を解除する。ホルダ挟持部材19はプルスタッド17Bを挟持する。
【0048】
CPU31は主軸ヘッド7がZ480に到達したか否か判断する(S19)。Z480に到達するまでは(S19:NO)、S19に戻って主軸ヘッド7を高速で下降し続ける。Z480に到達した場合(S19:YES)、主軸ヘッド7はZ軸原点に到達したので、最高速を維持した状態で、加工位置であるZ180まで移動する(S20)。主軸ヘッド7の送り速度はZ180手前で減速してZ180で零になる。CPU31は本処理を終了し、NCプログラムの次ブロックの処理を実行する。
【0049】
上記説明にて、
図2に示す工具4と該工具4を保持する工具ホルダ17は本発明の工具に相当する。主軸ヘッド7の送り速度について、最高速は本発明の第一速度と第三速度に相当し、低速は本発明の第二速度に相当する。CPU31は本発明の制御手段に相当する。主軸ヘッド7の上昇行程ではS4,S5の処理、主軸ヘッド7の下降行程ではS15,S16の処理を実行するCPU31は本発明の第一制御手段に相当する。S7の処理を実行するCPU31は本発明の第二制御手段に相当する。ホルダ挟持部材19は本発明の工具保持機構に相当する。ドローバー81は本発明のアンクランプ部材に相当する。クランクレバー60は本発明のアンクランプ操作部材に相当する。板カム体66は本発明のアンクランプカムに相当する。カムフォロア67は本発明のローラに相当する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の数値制御装置30は工作機械1の動作を制御する。工作機械1は複数の工具を保持可能な工具マガジン21を備える。工作機械1は主軸ヘッド7をZ軸原点からATC原点まで上昇する際に、主軸9に装着した工具ホルダ17を取り外して工具マガジン21へ受け渡す。工作機械1は主軸ヘッド7がATC原点に位置するときに工具マガジン21を旋回して所望の工具ホルダを主軸9と対向するように位置決めする。工作機械1は主軸ヘッド7をATC原点から機械原点まで下降する際に、工具マガジン21から主軸9に所望の工具ホルダを装着する。工具交換動作の上昇行程と下降行程において、数値制御装置30は主軸ヘッド7を最高速で移動を開始した後で低速に切り替え、更に最高速に切り替える制御を行う。即ち、主軸ヘッド7の上昇行程と下降行程において、主軸ヘッド7の移動速度は主軸ヘッド7が移動する途中で一旦低速になる。故に工具交換動作において部材同士が接触するタイミングに合わせて、最高速から低速に切り替えることで、工具交換時に生じる音を低減し、且つ工作機械1にかかる負荷を低減できる。さらに数値制御装置30は部材同士が接触した後で最高速に切り替えるので、工具交換にかかる時間を短縮できる。また、本実施形態は、第一速度から第二速度に切り替えた後、更に第二速度よりも高速である第三速度に切り替えるので、工具交換にかかる時間を短縮できる。
【0051】
本実施形態は更に、工具交換動作の上昇行程において、最高速で主軸ヘッド7の上昇を開始した後は、板カム体66がカムフォロア67に当接する位置で低速になる。故に数値制御装置30は、主軸ヘッド7の上昇行程において、板カム体66のカム面にカムフォロア67が接触する時に生じる衝突音を低減できる。更に数値制御装置30は板カム体66のカム面とカムフォロア67にかかる負荷を低減できる。
【0052】
本実施形態では更に、工具交換動作の下降行程において、最高速で主軸ヘッド7の下降を開始した後は、工具ホルダ17が主軸9に装着する位置で低速になる。故に数値制御装置30は、主軸ヘッド7の下降行程において、主軸9に工具ホルダ17が装着する時に生じる衝突音を低減できる。更に数値制御装置30は主軸9と工具ホルダ17とグリップアーム90にかかる負荷を低減できる。
【0053】
尚、本発明は上記実施形態に限らず種々の変更が可能である。上記実施形態は、
図10,
図11に示す如く、上昇行程と下降行程で、主軸ヘッド7を最高速から低速に切り替えるタイミングを部材同士が接触するタイミングに合わせる為に、二つの速度パターンを設定する。例えば、
図12に示す如く、Z490〜Z510までの区間を低速にする一つの速度パターンであれば、数値制御装置30は上昇行程と下降行程の何れにも対応できる。速度パターンは一つであるので、制御を単純化できる。
【0054】
上記実施形態は、最高速で主軸ヘッド7の上昇又は下降を開始し、低速に切り替えた後、再度最高速に戻しているが、低速の後で切り替える速度は、低速よりも高速であれば最高速に戻さなくてもよい。
【0055】
上記実施形態は、上昇行程と下降行程において、低速で移動する区間は夫々一区間であるが、その他の部材同士が衝突するタイミングに合わせ、複数の区間を設定してもよい。
【0056】
上記実施形態は、上昇行程では、板カム体66のカム面にカムフォロア67が接触する時、下降行程では、主軸9に工具ホルダ17が装着する時に合わせ、主軸ヘッド7の送り速度が所定の低速になるように制御しているが、これらのタイミングよりも前に低速にしてもよい。
【0057】
上記実施形態にて、
図4の処理のS5、S16は省略してもよい。