特許第6051942号(P6051942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051942
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】施肥装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20161219BHJP
   A01C 15/04 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   A01C15/00 F
   A01C15/04
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-37381(P2013-37381)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-161309(P2014-161309A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 仁史
(72)【発明者】
【氏名】名本 学
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−084844(JP,A)
【文献】 特開2003−210014(JP,A)
【文献】 特開2004−121011(JP,A)
【文献】 特開2004−242635(JP,A)
【文献】 特開2004−248679(JP,A)
【文献】 特開2005−185149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00−23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料を貯留する複数の施肥ホッパ(1)を設け、該施肥ホッパ(1)から供給される肥料を繰り出す繰出装置(2)を設け、該繰出装置(2)から落下する肥料を圃場に案内する施肥ダクト(7)を設け、前記施肥ホッパ(1)に残る肥料を排出する複数の排出通路(9,10)を設け、該複数の排出通路(9,10)から排出される肥料を機外まで案内する排出ダクト(8)を設け、該排出ダクト(8)及び施肥ダクト(7)に搬送風を供給する起風装置(5)を設けると共に、前記複数の一方の排出通路(9)の肥料排出位置と他方の排出通路(10)の肥料排出位置が前後方向で重複しない構成としたことを特徴とする施肥装置。
【請求項2】
前記複数の排出通路(9,10)のうち、一方の第1排出通路(9)は排出ダクト(8)の搬送方向に対して垂直姿勢として機体前側寄りに肥料を排出する位置に設け、他方の第2排出通路(10)は排出ダクト(8)の前側から後側に向かう下り傾斜部(11)を構成し、機体後側寄りに肥料を排出する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の施肥装置。
【請求項3】
前記排出ダクト(8)の外周部に中空の通風ダクト(12)を設け、前記起風装置(5)が発生させる搬送風は、該排出ダクト(8)と通風ダクト(12)に送り込まれる構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の施肥装置。
【請求項4】
前記排出ダクト(8)を、前記第1排出通路(9)から排出された肥料が入り込む前側の第1排出ダクト(13)と、前記第2排出通路(10)から排出された肥料が入り込む後側の第2排出ダクト(14)で構成したことを特徴とする請求項2に記載の施肥装置。
【請求項5】
前記第1排出通路(9)と第1排出ダクト(13)を一体で構成すると共に、前記第2排出通路(10)と第2排出ダクト(14)を一体で構成したことを特徴とする請求項4に記載の施肥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場に水稲など苗を移植する苗移植機に搭載し、苗植付後の圃場に肥料を供給する施肥装置において、作業後に残っている肥料を機外に容易に排出することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術としては、ブロアが発生させる搬送風を、施肥ダクトと排出ダクトの一方に選択的に移動させ、肥料を苗を植え付けた圃場に供給したり、施肥装置に残った肥料を機外に排出したりする技術(例えば、特許文献1参照)が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−166820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブロアを施肥装置の左右一側に設け、左右他側に向かって搬送風を供給し、この搬送風で肥料を排出する作業形態において、肥料の残量が多い等、排出ダクトに一気に大量の肥料が移動し得る条件化では、肥料が搬送風の移動を妨げる壁となり、搬送風が左右一速から左右他側へと案内してきた肥料の移動を妨げ、排出ダクト内に詰まりを生じさせることがある。
【0005】
肥料の詰まりが生じると、詰まった箇所の肥料を作業者が崩して取り除く必要があるが、作業スペースが限られる上、その間肥料の排出作業は中断されるので作業能率が低下する問題がある。
【0006】
また、肥料の詰まり方によっては、排出ダクト等を一旦外す必要があり、作業能率のいっそうの低下や、作業者の労力が増大する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、肥料を貯留する複数の施肥ホッパ(1)を設け、該施肥ホッパ(1)から供給される肥料を繰り出す繰出装置(2)を設け、該繰出装置(2)から落下する肥料を圃場に案内する施肥ダクト(7)を設け、前記施肥ホッパ(1)に残る肥料を排出する複数の排出通路(9,10)を設け、該複数の排出通路(9,10)から排出される肥料を機外まで案内する排出ダクト(8)を設け、該排出ダクト(8)及び施肥ダクト(7)に搬送風を供給する起風装置(5)を設けると共に、前記複数の一方の排出通路(9)の肥料排出位置と他方の排出通路(10)の肥料排出位置が前後方向で重複しない構成としたことを特徴とする施肥装置とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記複数の排出通路(9,10)のうち、一方の第1排出通路(9)は排出ダクト(8)の搬送方向に対して垂直姿勢として機体前側寄りに肥料を排出する位置に設け、他方の第2排出通路(10)は排出ダクト(8)の前側から後側に向かう下り傾斜部(11)を構成し、機体後側寄りに肥料を排出する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の施肥装置とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記排出ダクト(8)の外周部に中空の通風ダクト(12)を設け、前記起風装置(5)が発生させる搬送風は、該排出ダクト(8)と通風ダクト(12)に送り込まれる構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の施肥装置。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記排出ダクト(8)を、前記第1排出通路(9)から排出された肥料が入り込む前側の第1排出ダクト(13)と、前記第2排出通路(10)から排出された肥料が入り込む後側の第2排出ダクト(14)で構成したことを特徴とする請求項2に記載の施肥装置。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記第1排出通路(9)と第1排出ダクト(13)を一体で
構成すると共に、前記第2排出通路(10)と第2排出ダクト(14)を一体で構成した
ことを特徴とする請求項4に記載の施肥装置とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は、複数の排出通路(9,10)の肥料排出位置を前後で異ならせたことにより、肥料が排出ダクト(8)で塊になって起風装置(5)で発生させる搬送風で搬送できなくなることを防止できるので、肥料の排出作業能率が向上する。
【0013】
また、作業者が肥料ダクト(8)に詰まった肥料を崩して排出可能にする作業が不要になるので、作業者の労力が軽減される。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、第1排出通路(9)を垂直姿勢とすると共に、第2排出通路(10)に下り傾斜部(11)を形成したことにより、第1排出通路(9)及び第2排出通路(10)からの肥料の排出位置を前後方向に離間させることができるので、第1排出通路(9)から排出される肥料と第2排出通路(10)から排出される肥料が合流することが防止され、排出ダクト(8)に肥料が溜まることが防止され、除去作業に要する労力が軽減されると共に、作業能率が向上する。
【0014】
また、第2排出通路(10)に機体後方に向かう下り傾斜部(11)を形成したことにより、施肥ホッパ(1)から第2排出通路(10)への肥料の排出速度を、施肥ホッパ(1)から第1排出通路(9)への肥料の排出速度よりも遅くすることができるので、肥料が搬送されるタイミングが第1排出通路(9)と第2排出通路(10)とで異なり、いっそう肥料が合流しにくくなる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、排出ダクト(8)の外周部に通風ダクト(12)を設け、この通風ダクト(12)にも起風装置(5)で発生させる搬送風を送り込むことにより、通風ダクト(12)の熱により排出ダクト(8)の温度を保持することができるので、施肥ホッパ(1)から排出される肥料が湿気で塊になることが防止され、排出作業の能率が向上する。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明の効果に加えて、第1排出通路(9)から排出された肥料を前側の第1排出ダクト(13)で受け、第2排出通路(10)から排出された肥料を後側の第2排出ダクト(14)で受ける構成としたことにより、第1排出ダクト(13)と第2排出ダクト(14)の間で肥料が移動することを防止できるので、肥料が合流して壁になり、肥料が搬送風で移動させられなくなり、肥料が詰まることが防止される。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明の効果に加えて、第1排出通路(9)と第1排出ダクト(13)、及び第2排出通路(10)と第2排出ダクト(14)を各々一体で構成したことにより、剛性を向上させることができるので、耐久性が向上する。
【0018】
また、複数の施肥ホッパ(1)に各々第1排出通路(9)及び第2排出通路(10)を取り付け、その上で第1排出ダクト(13)及び第2排出ダクト(14)を設ける必要がなくなるので、メンテナンス時等の分解・組立作業の能率が向上する
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】苗移植機の側面図
図2】苗移植機の平面図
図3】施肥装置の排出ダクト部を示す側面段面図
図4】施肥装置の平面図
図5】施肥装置の排出ダクト部を示す側面断面図
図6】施肥装置の平面図
図7】施肥装置の排出ダクト部の別実施例を示す側断面図
図8】施肥装置の別実施例を示す平面図
図9】(a)施肥装置の排出ダクト部の実施例を示す側断面図、(b)第1排出通路の要部側面断面図、(c)第2排出通路の要部側面断面図
図10】別実施例の苗移植機の側面図
図11】別実施例の苗移植機の要部正面図
図12】別実施例の苗移植機の要部平面図
図13】(a)前輪ホイルキャップを開いた状態の要部側面図、(b)前輪ホイルキャップを閉じた状態の要部側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図例に基づいて、操縦座席15、センタフロア16、ステアリングポスト17上のハンドル18、エンジン19下のエンジン20、前記ハンドル18によって操向する左右一対の前輪21,21、及び左右一対の後輪22,22等を配置する乗用運転走行形態の走行車体23の後部に、リフトシリンダ24の伸縮によって昇降される平行リンク形態のリフトリンク25を介して、多条植形態の植付装置26が装着される。前記走行車体23の前端部には、サイドフロア27の前部上に予備苗枠28を設けて、この予備苗載せ台29にマット苗を載置して走行することができる。
【0021】
前記操縦座席15の後側にリヤフロア30を形成し、リヤフレーム31によって支持している。このリヤフロア30の上部に、施肥ホッパ1、繰出装置2、前記繰出装置2から繰出された肥料を施肥ホース6へ搬送するための施肥ダクト7や、各施肥ホッパ1の残留肥料を機外へ取出排出する排出ダクト8、及びこれらのダクト7、8へ送風するブロア5等から構成の施肥装置2を装着して、前記繰出装置2の繰出ロール32や、ブロア5等を、車体23後部のPTO軸33から連動する形態としている。
【0022】
また、前記植付装置26は、伝動ケース等を主体とする苗植フレーム34の下側にセンタフロート35と、この左右外側部サイドフロート36を配置して、各フロート35、36の滑走均平によって多条の苗植条位置を均平するように構成している。苗植フレーム34の後端部には、ダブルクランク形態の回転しながら先端の苗植爪37を側面視略楕円形状の植付軌跡線Dに沿って作動し、苗タンク38から苗取口39に繰出される苗を分離保持して、土壌面に植付ける植付装置40を設ける。
【0023】
そして、前記苗タンク38は、苗植フレーム34、及びこの前部に形成の支持フレーム41に支持させて、苗タンク38面を後下り傾斜面にして、左右往復移動するように連動する。この苗タンク38は苗植条数に応じたマット苗を載せて、繰出ベルト43を回動させて、後下端部のガイドレール42に形成の苗取口39上部へ繰出す。この苗取口39の上部に繰出されたマット苗が、この苗取口39を作動Dする植付装置40によって分離保持されて、均平土壌面に植付けられる。
【0024】
このように、各植付装置40によって多条形態に植え付けられるもので、図例では、八条植形態としている。そして、複数のフロート36、36による均平条が八条に形成されることはもとより、苗タンク38も八条植形態に配置されて、全幅の苗タンク38共に、一体的に左右横移動される。これら植付装置37や、苗タンク38の左右往復移動、及び繰出ベルト43等は、前記PTO軸33と連動の入力軸44から伝動される。前記多条植形態の植付装置26の前側部には、各フロート35、36の前側に代掻ロータ45を配置して、連動軸46から伝動回転して、各フロート35、36による均平土壌面を予め掻き均して、均平し易くする。
【0025】
前記施肥ホッパ1は、八条植形態の植付装置26の横幅と略同幅に構成されて、下端部漏斗状の供給口50を形成して、各繰出装置2…の繰込口51毎にのぞませている。52はホッパ口を開閉するカバー、53は前記供給口50上側に設けた網棚である。
【0026】
各繰出装置2…は、横水平方向に亘って軸装される繰出軸54に繰出ロール55を配置して、各繰出ロール55を回転することによって、前記上側の繰込口51側から繰込まれる粉粒体状の肥料を、この繰出ロール55の周面に形成された繰出溝56に嵌合させて、下方の繰出口4側へ繰出すものである。この繰出ロール55の繰込口51側部の周面部には摺切りブラシ57を設けている。このような繰出装置2の繰出ロール55、及び繰出口4は、前記八条植形態の苗植付装置40、及びフロート35、36による均平条数等と同じ施肥条数となるように対応させて設定している。
【0027】
また、前記施肥ホッパ1底部の供給口50にのぞむ繰込口51の後側部には、取出口4が後方に開口形成されて、この取出口4部には弁軸58周りに回動して開閉される開閉弁59を設けている。このような繰出装置2の後側部の各肥料取出口3部に排出ダクト8を臨ませて配置する。
【0028】
前記肥料取出口3が多条植形態の苗植条に対応して八箇所として配置設定されるため、この肥料取出口3を左側四箇所と、右側四箇所とのブロック別に分けて、この分けられた各左側、又は右側ブロックの各四箇所肥料取出口3をのぞませる第1排出通路9及び第2排出通路10として形成する。
【0029】
該第1排出通路9及び第2排出通路10は、前記繰出口4の後側部に、左右横方向水平状態で、しかも平行状に構成され、一方の第1排出通路9を肥料取出口3に近い前側に位置し、他方の第2排出通路10を後側に位置するように配置している。
【0030】
前記各繰出口4の前側に沿って横方向の施肥ダクト7を設け、この施肥ダクト7の後側部に各施肥ホース6を連結する分岐パイプ60を螺合装着し、この分岐パイプ60に形成の開口部61に、前記繰出口4を臨ませる。そして、前記各分岐パイプ60に連結する施肥ホース6は、植付装置26のフロート35、36により均平される土壌面に臨むように設けられて、前記繰出口4から分岐パイプ60に供給される肥料を、施肥ダクト7からこの分岐パイプ60に吹込む送風力によって、この施肥ホース6内を通して送風搬送させて、フロート35、36の施肥溝切器62部後側部に施肥する。
【0031】
また、各フロート35、36の施肥溝切器62の後部上側には、施肥ガイド63が設けられて、各施肥ホース6の後端排出口部をのぞませて、この施肥ホース6から排出される肥料を受けて、溝切器62で形成される土壌面の施肥溝内へ施肥案内させる。
【0032】
前記施肥装置2列の左側横端部にブロア(起風装置)5を設けて、該ブロア5の吸気口64側に通風ダクト12を連結し、ブロア5の吹出口65側に、前記施肥ダクト7と、排出ダクト8とに連結する吹出ダクト66を連結する。該吹出ダクト66には、前記施肥ダクト7と排出ダクト8と間に切替回動する切替弁67を設けて、施肥作業時はブロア5が発生させる搬送風を施肥ダクト側へ案内し、残留肥料を機外へ取出すときは、ブロア5が発生させる搬送風を排出ダクト8側へ送風案内するように切替えることができる。
【0033】
また、前記繰出装置2の繰出軸54と平行方向に切替ロッド68を設けて、この切替ロッド68の先端部にベルクランク機構等のリンク機構68を介して連動して、車体の左側からは元より、右側からでも切替ロッド68の右端部のハンドル69を把持操作して、前記施肥ダクト2への排出状態から排出ダクト8の排出口70側への排出状態へ切替えることができる。
【0034】
ここにおいて、肥料を収容する施肥ホッパ1、該施肥ホッパ1の肥料を繰出す繰出装置2、前記各施肥ホッパ1…に残留する肥料を機外へ取出す残留肥料の肥料取出口3、前記各繰出装置2…の繰出口4から排出される肥料を受けてブロア5からの送風によって各苗植条に対応して配置の施肥ホース6へ分岐供給する施肥ダクト7、及び前記各肥料取出口3から排出される肥料を受けて前記ブロア5による送風によって搬送する排出ダクト8を有する多条植付施肥形態の苗植機において、前記排出ダクト8を機体前側の第1排出通路9と機体後側の第2排出通路10に分割し、前記肥料取出口3をこれら第1及び第2排出通路9、10に振分けてのぞませて施樋装置を構成する。
【0035】
そして、植付装置による苗植作業時に、繰出装置2の回転によって施肥ホッパ1内の肥料が繰出口4へ繰出されて、ブロア5からの搬送風が移動する施肥ダクト7へ送込まれ、この施肥ダクト7に連通の各施肥ホース6に分岐供給されて苗植付土壌面へ施肥される。
【0036】
また、施肥作業後に施肥ホッパ1内に残留した肥料を機外へ取り出すときは、繰出装置2は停止して肥料取出口3を開き、残留肥料をこの各肥料取出口3…から排出ダクト8へ流出させる。前記ブロア5から切替えられてこの排出ダクト8へ流される送風によって搬送排出される。
【0037】
前記各肥料取出口3…から排出ダクト8へ取出される肥料は、この排出ダクト8内の搬送位置に異にする第1排出通路9及び第2排出通路10に分配供給されるため、第1排出通路9及び第2排出通路10内への残留肥料の取出排出を局部的に集中させないで、第1排出通路9及び第2排出通路10における排出搬送量を適量に分散搬送するため、第1排出通路9及び第2排出通路10共に肥料のブリッジ現象や、詰りを生じ難く、円滑な搬送が行われ、機外へ排出される。
【0038】
また、前記肥料取出口3と排出ダクト8との間には、前記肥料取出口3の直下部に位置する第1排出通路9には、肥料取出口3から排出の肥料を直接落下させると共に、前記肥料取出口3から離隔された位置の第2排出通路10には、肥料取出口3から下り傾斜面を流下案内されるシュート(下り傾斜部)11を設ける。
【0039】
前記施肥ホッパ1の残留した肥料を肥料取出口3から排出させるとき、この肥料取出口3の直下部に位置する第1排出通路9には、直接落下させて、この排出通路9に案内されて送風搬送される。
【0040】
また、肥料取出口3から離隔された位置の第2排出通路10へ排出される肥料は、シュート11の傾斜面を案内されて流下されて、第2排出通路10内へ排出されて、この第2排出通路10に案内されて送風搬送される。
【0041】
このように、排出ダクト8にはブロア5が発生させた搬送風が送り込まれるが、この排出ダクト8内の第1排出通路9及び第2排出通路10における各肥料取出口3…からの残留肥料の落入タイミングは、第1排出通路9側では早く、第2排出通路10側で遅くなるように時間差を生じて、この排出ダクト8の送風搬送の抵抗作用が分散して働くため、肥料の搬送詰りを生じ難く、円滑に排出させる。
【0042】
また、前記排出ダクト8の外周部には温風が移動する温風ダクト12を設け、この通風ダクト12から吹き込んでくる温風により、排出ダクト8内が加温される配置構成とする。
【0043】
前記のように、各施肥ホッパ1の肥料取出口3から排出ダクト8に排出された肥料は、この排出ダクト8をブロア5からの送風によって搬送されるが、この排出ダクト8の外周部は、通風ダクト12を流れる温風によって加温されて、この排出ダクト8の送風や、肥料をも加温して、肥料の除湿により排出搬送性を良好に維持して、搬送排出肥料のブリッジ現象を少なくし、詰りの生じ難い排出を行わせる。
【0044】
又、前記排出ダクト8の第1排出通路9及び第2排出通路10は、各々チューブ状形態として左右横方向に亘って平行状に配置し、前記肥料取出口3から排出される肥料を受けて搬送させる搬送位置を、前後樋幅方向異なる位置に設定可能に構成すると共に、左右排出搬送方向を相反する方向に設定する。
【0045】
前記のように各肥料取出口3から排出される肥料は、第1排出通路9及び第2排出通路10に受けられて、この第1排出通路9及び第2排出通路10毎に案内されて排出ダクト8内を排出搬送される。そして、これら第1排出通路9及び第2排出通路10を、チューブ状形態として、左右横方向に亘って平行状に配置する形態では、第1排出通路9及び第2排出通路10内を搬送される肥料、及び搬送風が独立して、排出搬送を的確に行わせる。
【0046】
また、前記第1排出通路9及び第2排出通路10を、樋幅方向に広幅に形成して、肥料取出口3から排出される肥料を受け手搬送する搬送位置を、この樋幅方向に異なる位置にして各別に送風搬送させる形態にあっては、同一排出ダクト8内にあっても、その肥料取出口3から排出される肥料位置を樋幅方向に亘って異にして、各々排出搬送される送風搬送位置を異にするもので、搬送送風力の抵抗を分散していずれの第1排出通路9、第2排出通路10における排出搬送を円滑に行わせる。
【0047】
又、前記第1排出通路9及び第2排出通路10を、相互に反対方向に排出搬送するように設定する形態にあっては、幅広い施肥装置の略左側位置の配置の肥料取出口3から取出される肥料は、この下側に位置する排出通路9に受けられて、この第1排出通路9を右側方向へ、ブロア5からの送風によって排出搬送されるものとすれば、前記施肥装置の略右側位置に配置の肥料取出口3から取出される肥料は、この下側に位置する第2排出通路10に受けられて、この排出通路10を左側方向へ、ブロア5からの送風によって排出搬送される。
【0048】
更には、前記第1排出通路9及び第2排出通路10と、この第1排出通路9及び第2排出通路10に連通する第1排出ダクト13と第2排出ダクト14とを、一体的に構成する。
【0049】
前記のように、残留肥料を機外へ排出するときは、各肥料取出口3…から排出される肥料を第1排出通路9及び第2排出通路10へ取出排出させて、第1排出通路9及び第2排出通路10内を送風案内させて搬送し、各々機外へ排出させる。肥料取出口3は第1排出通路9にのぞませて連通する形態のものと、第2排出通路10にのぞませて連通する形態のものとがあるため、第1排出通路9及び第2排出通路10によって前記肥料取出口3に対向してのぞませる第1及び第2排出ダクト13、14の形成位置を異にしている。
【0050】
そして、第1排出通路9、第2排出通路10の第1排出ダクト13及び第2排出ダクト14の配置位置は、第1排出通路9に対向する肥料取出口3に連通するように設定されているため、第1排出通路9と第1排出ダクト13を一体化し、第2排出通路10と第2排出ダクト14を一体化して、各々取扱いを行い易くして、繰出装置2に対する排出ダクト8の着脱を容易にすることができる。
【0051】
前記排出ダクト8は、左端部を吹出ダクト66で連通させて、前側の第1排出通路9と後側の第2排出通路10を平行状態に設ける。第1排出通路9及び第2排出通路10の右端部は、走行車体23の外側位置において漏斗状の排出口70を形成して、この排出口70の下側に置かれる容器に取出すことができる。
【0052】
前記第1排出通路9は、車幅方向の中央部に位置するセンターラインP位置よりも左側位置Lに亘って、各肥料取出口3をのぞませる四箇所の第1排出ダクト13を形成し、肥料取出口3から流出される肥料を、この第1排出ダクト13内に案内させて、直下位置の排出通路9に排出することができる。
【0053】
また、前記第2排出通路10は、センターラインP位置よりも右側位置Rに亘って、各肥料取出口3をのぞませる四箇所の第2排出ダクト14を形成し、各肥料取出口3から流出される肥料を、この第2排出ダクト14内に案内させて、後側位置の排出通路10に排出する。この第2排出ダクト14は、下面を適宜傾斜面の傾斜シュート11の形態として、このシュート11面を流下して排出通路10内へ流下排出される。
【0054】
このような排出ダクト8による残留肥料の排出作用時には、例え、全繰出装置2の各開閉弁59を略同時に開いたとしても、前記第1及び第2排出ダクト13、14の形状相異点によって、左側位置Lの各肥料取出口3から第1排出ダクト13を経て第1排出通路9へ流下する流下タイミングは、第2排出ダクト14を経て第2排出通路10へ流下する流下タイミングよりも早く行われる。
【0055】
従って、排出ダクト8内搬送による排出においては、ブロア5が発生させる搬送風の断面位置において、全断面に亘って肥料詰り状態となるような肥料の搬送密度は大きくなり難く、ブロア5からの搬送風の抵抗が分散されることによって、第1排出通路9及び第2排出通路10共に円滑な送風搬送による排出作用を行わせる。
【0056】
また、前記ブロア5による送風力も、吹出ダクト66部で第1排出通路9及び第2排出通路10へ分岐されてから、第1排出通路9の各第1排出ダクト13位置に亘る送風行程の間隔は短く、第2排出通路10の各第2排出ダクト14位置に亘る送風行程の間隔は長く形成されて、この点においても肥料排出搬送の送風抵抗の作用タイミングの分散を行わせて、排出作用を円滑に行わせることができる。
【0057】
前記通風ダクト12は、エンジンカバー19内のエンジンルームから吸引するように連通構成して、吸気口64からの吸引力によって吸引し、この通風ダクト12の加熱によって、この通風ダクト12に接する排出ダクト10の左側位置Lを加温して、この内部の送風を加温または保温する。
【0058】
また、この通風ダクト12を吸引される温風は、ブロア5から第1排出通路9及び第2排出通路10へ吹風させる形態とすることができる。
前記排出ダクト8の第1排出通路9及び第2排出通路10は、各自丸チューブや角チューブ断面形態とすると、独立構成とすることができるが、図3及ぶ図4のように、幅広い角チューブ形態のダクト8幅の中央部の沿ってダクト隔壁71を形成する形態としたり、又、図5及び図6で示すとおり、幅広い角チューブ形態のダクト8内の前半部を第1排出通路9とし、後半部を第2排出通路10として、これら第1排出通路9及び第2排出通路10の上側に対向して第1排出ダクト13及び第2排出ダクト14をのぞませる形態である。
【0059】
この排出ダクト8の底面は、波形状断面にして搬送方向に沿って長く形成したり、底面幅中央部の沿って低いリブ条を突出形成して、第1排出通路9及び第2排出通路10の内部の肥料の流出を整揃として、円滑に行わせる。
【0060】
図7及び図8において示すのは、前記排出ダクト8の外周のうち、少なくとも前後と底部を前記ブロア5が発生させる搬送風が通過する通風ダクト90で左右方向に亘って被覆した構成例である。
【0061】
該通風ダクト90内を移動する搬送風は、肥料の搬送を行うものではなく、排出ダクト8内の温度が外気の影響によって低下し、肥料が乾燥せずに排出ダクト8内に付着することを防止するものである。
【0062】
このため、前記通風ダクト90の機体後部側は、温風が通過する前記温風ダクト12に接触させ、通風ダクト90内の温度も下がりにくい構成とすると、排出ダクト8内、ひいては第1排出通路9及び第2排出通路10内を移動する搬送風の温度が維持され、肥料が雨水等を吸って含有水分量が多くなっているときでも、肥料が付着して詰まることが防止され、肥料の排出作業の能率が向上する。
【0063】
図9(a)〜(c)において、前記第1排出通路9には、肥料取出口3にのぞませる四箇所の入口ダクト13を一体形成し、第2排出通路10には、肥料取出口3にのぞませる四箇所の入口14を一体成形したもので、これら各入口ダクト13、14は、自体の排出通路9、10と一体として、施肥装置の排出ダクト8として着脱する。
【0064】
これにより、排出ダクト8の強度が向上すると共に、搬送風が抜け出す隙間が生じにくくなるので、搬送風の勢いが低下しにくく、肥料を排出口70まで確実に搬送して排出することができ、肥料の排出作業能率が向上する。
【0065】
次に、図10図12で示す通り、前記植付装置26を装着する車体23の前端部で車幅方向の中央部に、前方視準用のセンタポール80、及びこの上端部センタマスコット81を設けて、運転部を覆うキャビン82内の操縦座席15に着座して運転する運転操作姿勢から視準しながら、苗植作業の運転することができる。前記植付装置26の苗タンク38には、この苗タンク38に供給されて繰出される苗タンクの減少量を検出する苗量センサ83を設ける。又、前記センタマスコット81はセンタポール80に対して、モータや、ソレノイド等によって昇降移動可能の構成としている。そして、植付装置26の苗植作業中に苗タンク38の苗量が減少すると、苗量センサ83の検出によって検出して、前記センタポール80上のセンタマスコット81を電動で昇降移動、乃至伸縮移動させて、運転者にこのセンタマスコット81の移動、形態変化を報知して、後方苗タンク38のマット苗残量状態を知らせることにより、苗タンク38への苗補給操作を的確に予知させる。
【0066】
次に、図13(a)(b)で示す通り、前記車体23の前輪21のリム内周部に、車軸84の周りに回動して、ブレーンシャッタ形態のホイルキャップ85を設け、このホイルキャップ85を前輪21リム部86、及び車軸84部に対して回動することにより、リム部86内周部を開(A)、閉(B)して、ホイルキャップ85の面積を変えて、泥土水や、土壌粘度等の状態等に応じて、ホイルキャップ85の面積を変えて、泥土等の付着、付回りの少い走行状態を維持することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 施肥ホッパ
2 繰出装置
3 取出口
4 繰出口
5 ブロア(起風装置)
6 施肥ホース
7 施肥ダクト
8 排出ダクト
9 排出通路
10 排出通路
11 シュート(下り傾斜部)
12 温風ダクト
13 入口ダクト
14 入口ダクト
15 運転席
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13