特許第6051944号(P6051944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051944
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】差厚鋼板の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/24 20060101AFI20161219BHJP
   B21B 37/76 20060101ALI20161219BHJP
   B21B 45/00 20060101ALI20161219BHJP
   B21B 45/02 20060101ALI20161219BHJP
   B21B 27/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   B21B37/24
   B21B37/76 A
   B21B45/00 L
   B21B45/02 320R
   B21B27/00 C
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-37610(P2013-37610)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-161900(P2014-161900A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100140121
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 朝幸
(72)【発明者】
【氏名】白石 利幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 規之
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−240077(JP,A)
【文献】 特開昭62−166014(JP,A)
【文献】 特開2003−320404(JP,A)
【文献】 特開平03−281010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00−37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧下装置を有する圧延機と、該圧延機の入側に設けられて該圧延機に進入する被圧延材を加熱する加熱装置と、該加熱装置における加熱量を制御する加熱量制御装置と、前記圧延機によって圧延されている被圧延材のうち該圧延機によって既に圧延された部分の圧延方向の長さである圧延長を検出又は算出する圧延長推定装置と、前記圧延機から送出された被圧延材の冷却を行う圧延材冷却装置を具備し、
前記加熱量制御装置は、前記被圧延材の圧延中において、当該製造装置によって製造すべき差厚鋼板の圧延方向における厚さの分布である目標厚さパターンに応じて、前記圧延長推定装置によって検出又は算出された圧延長に基づいて前記加熱装置の加熱量を変化させ、前記圧延材冷却装置は当該圧延材冷却装置によって冷却される被圧延材の板厚が薄くなるほど強く冷却を行う、差厚鋼板の製造装置。
【請求項2】
前記加熱量制御装置は、前記圧延機によってこれから圧延される被圧延材の部分の板厚を直前に圧延された被圧延材の部分の板厚よりも薄くするときには加熱量を大きくし、前記圧延機によってこれから圧延される被圧延材の部分の板厚を直前に圧延された被圧延材の部分の板厚よりも厚くするときには加熱量を小さくする、請求項1に記載の差厚鋼板の製造装置。
【請求項3】
前記圧延機における圧下位置は、一つの被圧延材の圧延期間全体に亘って一定に維持される、請求項1又は2に記載の差厚鋼板の製造装置。
【請求項4】
前記加熱量制御装置は、前記圧延機に進入する被圧延材の入側鋼板温度と圧下率との関係をマップとして又は計算式として保持し、前記圧延機によって被圧延材が前記目標厚さパターンとなるように、当該加熱量制御装置に保持された前記入側鋼板温度と圧下率との関係に基づいて前記圧延長推定装置によって検出又は算出された圧延長を用いて加熱量を変化させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の差厚鋼板の製造装置。
【請求項5】
前記目標厚さパターンを入力するためのパターン入力装置を更に具備する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の差厚鋼板の製造装置。
【請求項6】
前記圧延機は被圧延材の圧延を行う一対のワークロールを具備し、
当該差厚鋼板の製造装置は、前記一対のワークロールの冷却を行うワークロール冷却装置を更に具備し、該ワークロール冷却装置は、前記ワークロールの回転に伴って冷却条件を変更する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の差厚鋼板の製造装置。
【請求項7】
前記圧延機は被圧延材の圧延を行う一対のワークロールを具備し、これらワークロールはその表面に焼結層を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の差厚鋼板の製造装置。
【請求項8】
圧下装置を有する圧延機と、該圧延機の入側に設けられて該圧延機に侵入する被圧延材を加熱する加熱装置と、該加熱装置における加熱量を制御する加熱量制御装置と、前記圧延機によって圧延されている被圧延材のうち該圧延機によって既に圧延された部分の圧延方向の長さである圧延長を検出又は算出する圧延長推定装置と、前記圧延機から送出された被圧延材の冷却を行う圧延材冷却装置を具備する差厚鋼板の製造装置による差厚鋼板の製造方法において、
当該製造方法によって製造すべき差厚鋼板の圧延方向における厚さの分布である目標厚さパターンに応じて、前記加熱装置によって被圧延材を加熱する加熱量を前記被圧延材の圧延中に変化させ、前記圧延材冷却装置は当該圧延材冷却装置によって冷却される被圧延材の板厚が薄くなるほど強く冷却を行う、差厚鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記加熱装置による被圧延材の加熱量は、前記圧延機によってこれから圧延される被圧延材の部分の板厚を直前に圧延された被圧延材の部分の板厚よりも薄くするときに大きくされ、前記圧延機によってこれから圧延される被圧延材の部分の板厚を直前に圧延された被圧延材の部分の板厚よりも厚くするときに小さくされる、請求項に記載の差厚鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記圧延機における圧下位置は、一つの被圧延材の圧延期間全体に亘って一定に維持される、請求項又はに記載の差厚鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記圧延機に進入する被圧延材の入側鋼板温度と入側板厚と出側板厚との関係を温度および圧下率の関係として予め求め、
前記加熱装置によって被圧延材を加熱する加熱量は、前記圧延機によって被圧延材が前記目標厚さパターンとなるように、前記温度および圧下率の関係に基づいて変化せしめられる、請求項10のいずれか1項に記載の差厚鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークロールを有する圧延機を用いて長手方向に板厚差を有する差厚鋼板を製造する製造装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費を向上させるために、その軽量化が推進されている。このような軽量化の方法の一つとして、自動車のボディを構成する金属材料を改良することが挙げられる。具体的には、自動車のボディの構成部材の鋼材を薄手且つ高強度な鋼材に変更する方法や、構成部材の材料を鋼よりも比重の軽いアルミニウム合金やマグネシウム合金に変更する方法に加え、許容される性能が確保できる限界まで構成部材の板厚を薄くすべく構成部材に板厚分布を付ける方法などが挙げられる。
【0003】
このうち構成部材に板厚分布を付ける方法に関して、板厚分布が付けられた鋼板は一般に差厚鋼板と呼ばれている。差厚鋼板には用途に応じて様々な種類がある。例えば、長さ2000mm程度、幅500mm程度の材料に長手方向両端から300mmまでは板厚2mm、中央部は板厚1.6mmの凹型のもの(板厚2水準対称型)や、逆に長手方向両端から300mmまでは板厚1.8mm、中央部は板厚2.0mmの凸型のもの(板厚2水準対称型)等が挙げられる。その他にも、板厚が長手方向にテーパ状に変化したものや、板厚多水準の対称型又は非対称型のもの等が挙げられる。
【0004】
このような差厚鋼板の製造方法としては、例えば、圧延機を用いて、圧延中にワークロールの圧下位置(ロールギャップ)を操作する方法が考えられる(例えば、特許文献1)。特に、特許文献1に記載の圧延方法では、圧延荷重を検出するロードセルが設けられると共に、ロードセルによって検出される圧延荷重が、要求される板厚に基づいて算出された要求荷重となるように圧下装置が制御される。なお、差厚鋼板の製造方法としては、圧延機を用いた方法の他にプレスによる方法等も考えられることから、本明細書では圧延機を用いて差厚鋼板を製造する方法を、特に、圧延法による差厚鋼板の製造方法と称する。
【0005】
ところで、圧延法による差厚鋼板の製造方法としては、圧延機出側に設けられた板厚検出装置により圧延機出側における被圧延材の板厚を検出し、その検出値に基づいて圧下位置を制御することが考えられる。しかしながら、差厚鋼板では板厚が一定な部分の圧延方向の長さは一般に短い。このため、ロールバイト出口から板厚検出装置までに或る程度の距離があることから、無駄時間が生じるので、この方法では適切な板厚制御を行うことができない。
【0006】
また、圧延法による差厚鋼板の別の製造方法としては、圧延機入側における被圧延材の板厚および速度と圧延機出側における被圧延材の速度とを検出し、マスフロー一定則を用いて圧延機出側における被圧延材の板厚を推定し、その推定値に基づいて圧下位置を制御することも考えられる。しかしながら、マスフロー一定則を用いた方法でも圧延機出側において被圧延材の速度を検出する装置をロールバイト出口の直近に設置することは困難であるため無駄時間が生じることと、被圧延材に幅広がりが生じること等によって被圧延材の板厚に推定誤差が生じることから、この方法によっても適切な板厚制御を行うことができない。その上、この方法では、複数の速度検出装置および板厚検出装置が必要になることから、設備コストも上昇してしまう。
【0007】
このような状況を考慮して、圧延法による差厚鋼板の製造方法としては、プリセット圧延法および絶対値圧延法が提案されている。プリセット圧延方法では、圧延機の圧下位置とこの圧延機によって圧延された被圧延材の板厚との関係が予め実験や数値計算等により求められる。圧延中には、圧延機によって圧延されている被圧延材のうち圧延機によって既に圧延された部分の圧延方向の長さである圧延長がワークロールの回転速度に基づいて算出されると共に、予め求められた圧下位置と圧延後の板厚との関係と、算出された圧延長とに基づいて被圧延材の板厚の分布が目標板厚パターンとなるように圧下位置が制御される。
【0008】
また、絶対値圧延法では、圧延荷重と圧延機の変形との関係(圧延機の変形特性)が予め実験や数値計算等により求められる。圧延中には、圧延長がワークロールの回転速度に基づいて算出されると共に、圧延荷重が検出されて、予め求められた圧延機の変形特性と検出された圧延荷重とに基づいてロールバイト出口における被圧延材の板厚が推定される。そして、算出された圧延長に基づいて、このようにして推定された板厚が目標板厚となるように圧下位置が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−281010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述したように、圧延法による差厚鋼板の製造方法では、基本的に、圧延機の圧下位置を変化させることで被圧延材の板厚を変化させるようにしている。このような方法を用いた場合、差厚鋼板の製造速度(生産性)を速めるためには、圧下位置の制御速度を高めることが必要になる。一般に、油圧圧下装置は応答性が高いことから、圧下位置の制御速度を高めるためには油圧圧下装置の設置が必須となる。ところが、油圧圧下装置は高価であるため、設備コストが高くなり、結果として差厚鋼板の製造コストの上昇を招く。
【0011】
一方、圧下装置としては、油圧圧下装置の他に電動圧下装置も存在する。電動圧下装置は油圧圧下装置に比べて安価であるため、圧下装置として電動圧下装置を用いれば設備コストを低く抑えることができる。ところが、電動圧下装置の圧下位置に関する応答性は低いため、電動圧下装置を用いた場合には圧延速度(被圧延材が圧延機から送出される速度)を遅くしなければならず、その結果、製造速度が遅くなってしまう。
【0012】
そこで、上記課題に鑑みて、本発明の目的は、設備コストを低く抑えつつ製造速度を高めることができる、差厚鋼板の製造装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明者らは、鋭意研究を行い、圧下位置をほとんど操作しなくても、圧延機入側で被圧延材を加熱して被圧延材の長手方向に温度分布を生じさせた状態で圧延機により圧延を行うことで、差厚鋼板を比較的速い製造速度で製造することができること、およびこの場合には圧下位置をほとんど操作しなくて良いことから、このとき使用する圧下装置は応答性の高い油圧圧下装置でなくてもよいことを見出した。
【0014】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)圧下装置を有する圧延機と、該圧延機の入側に設けられて該圧延機に進入する被圧延材を加熱する加熱装置と、該加熱装置における加熱量を制御する加熱量制御装置と、前記圧延機によって圧延されている被圧延材のうち該圧延機によって既に圧延された部分の圧延方向の長さである圧延長を検出又は算出する圧延長推定装置と、前記圧延機から送出された被圧延材の冷却を行う圧延材冷却装置を具備し、
前記加熱量制御装置は、前記被圧延材の圧延中において、当該製造装置によって製造すべき差厚鋼板の圧延方向における厚さの分布である目標厚さパターンに応じて、前記圧延長推定装置によって検出又は算出された圧延長に基づいて前記加熱装置の加熱量を変化させ、前記圧延材冷却装置は当該圧延材冷却装置によって冷却される被圧延材の板厚が薄くなるほど強く冷却を行う、差厚鋼板の製造装置。
(2)前記加熱量制御装置は、前記圧延機によってこれから圧延される被圧延材の部分の板厚を直前に圧延された被圧延材の部分の板厚よりも薄くするときには加熱量を大きくし、前記圧延機によってこれから圧延される被圧延材の部分の板厚を直前に圧延された被圧延材の部分の板厚よりも厚くするときには加熱量を小さくする、上記(1)に記載の差厚鋼板の製造装置。
(3)前記圧延機における圧下位置は、一つの被圧延材の圧延期間全体に亘って一定に維持される、上記(1)又は(2)に記載の差厚鋼板の製造装置。
(4)前記加熱量制御装置は、前記圧延機に進入する被圧延材の入側鋼板温度と圧下率との関係をマップとして又は計算式として保持し、前記圧延機によって被圧延材が前記目標厚さパターンとなるように、当該加熱量制御装置に保持された前記入側鋼板温度と圧下率との関係に基づいて前記圧延長推定装置によって検出又は算出された圧延長を用いて加熱量を変化させる、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の差厚鋼板の製造装置。
(5)前記目標厚さパターンを入力するためのパターン入力装置を更に具備する、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の差厚鋼板の製造装置。
)前記圧延機は被圧延材の圧延を行う一対のワークロールを具備し、
当該差厚鋼板の製造装置は、前記一対のワークロールの冷却を行うワークロール冷却装置を更に具備し、該ワークロール冷却装置は、前記ワークロールの回転に伴って冷却条件を変更する、上記(1)〜()のいずれか1つに記載の差厚鋼板の製造装置。
)前記圧延機は被圧延材の圧延を行う一対のワークロールを具備し、これらワークロールはその表面に焼結層を有する、上記(1)〜()のいずれかに記載の差厚鋼板の製造装置。
)圧下装置を有する圧延機と、該圧延機の入側に設けられて該圧延機に侵入する被圧延材を加熱する加熱装置と、該加熱装置における加熱量を制御する加熱量制御装置と、前記圧延機によって圧延されている被圧延材のうち該圧延機によって既に圧延された部分の圧延方向の長さである圧延長を検出又は算出する圧延長推定装置と、前記圧延機から送出された被圧延材の冷却を行う圧延材冷却装置を具備する差厚鋼板の製造装置による差厚鋼板の製造方法において、
当該製造方法によって製造すべき差厚鋼板の圧延方向における厚さの分布である目標厚さパターンに応じて、前記加熱装置によって被圧延材を加熱する加熱量を前記被圧延材の圧延中に変化させ、前記圧延材冷却装置は当該圧延材冷却装置によって冷却される被圧延材の板厚が薄くなるほど強く冷却を行う、差厚鋼板の製造方法。
)前記加熱装置による被圧延材の加熱量は、前記圧延機によってこれから圧延される被圧延材の部分の板厚を直前に圧延された被圧延材の部分の板厚よりも薄くするときに大きくされ、前記圧延機によってこれから圧延される被圧延材の部分の板厚を直前に圧延された被圧延材の部分の板厚よりも厚くするときに小さくされる、上記()に記載の差厚鋼板の製造方法。
10)前記圧延機における圧下位置は、一つの被圧延材の圧延期間全体に亘って一定に維持される、上記()又は()に記載の差厚鋼板の製造方法。
11)前記圧延機に進入する被圧延材の入側鋼板温度と入側板厚と出側板厚との関係を温度および圧下率の関係として予め求め、前記加熱装置によって被圧延材を加熱する加熱量は、前記圧延機によって被圧延材が前記目標厚さパターンとなるように、前記温度および圧下率の関係に基づいて変化せしめられる、上記()〜(10)のいずれか1つに記載の差厚鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の差厚鋼板の製造装置および製造方法によれば、設備コストを低く抑えつつ製造速度を高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の差厚鋼板の製造装置を概略的に示す図である。
図2図2は、板厚3.06mm、板幅400mmの60キロハイテンにおける入側板温度と圧下率と圧延荷重との関係を示す図である。
図3図3は、圧延長に対する目標厚さと加熱量との関係を示す図である。
図4図4は、本実施例で製造した差厚鋼板の寸法を示す断面図である。
図5図5は、第二実施形態で用いられる加熱装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0018】
図1は本発明の第一実施形態に係る差厚鋼板の製造装置1を概略的に示す図である。図1に示すように、製造装置1は、圧延機10の入側において、被圧延材である金属ストリップSが巻出されるペイオフリール11と、ペイオフリール11に巻回されている金属ストリップSを巻出すピンチロール12と、金属ストリップSの進行方向(図1に矢印で示した方向)を変更する入側デフレクターロール13と、圧延機10に進入する金属ストリップSを加熱する加熱装置14と、加熱装置14と圧延機10との間に配置されて加熱装置14から送出された金属ストリップSの温度を検出する温度センサ15とを具備する。
【0019】
加えて、製造装置1は、圧延機10の出側において、圧延機10で圧延された金属ストリップSを冷却する圧延材冷却装置21と、金属ストリップSの進行方向において圧延材冷却装置21の下流側に設けられて圧延材冷却装置21から送出された金属ストリップSの温度を検出する温度センサ22と、金属ストリップSの進行方向を変更する出側デフレクターロール23と、金属ストリップSを巻き取るテンションリール24とを具備する。
【0020】
このように構成された製造装置1では、被圧延材である金属ストリップSがペイオフリール11に巻回された状態で製造装置1にセットされる。金属ストリップSの進行方向においてペイオフリール11の下流側にはピンチロール12が設けられる。ピンチロール12はモータ等の駆動装置(図示せず)によって駆動され、ペイオフリール11に巻回されている金属ストリップSを巻出す。金属ストリップSの進行方向においてピンチロール12の下流側には入側デフレクターロール13が設けられる。入側デフレクターロール13は駆動装置等によって駆動されていない回転自在なロールである。
【0021】
本実施形態では、ピンチロール12の回転速度は、図1に示したように、ピンチロール12と入側デフレクターロール13との間において金属ストリップSに所定のたるみが形成されるように制御される。このように金属ストリップSに所定のたるみを形成することによって、金属ストリップSの自重により圧延機10入側において金属ストリップSに加わる張力(以下、「圧延機入側張力」という)を所定の張力に保つことができる。圧延機入側張力を一定に保つ方法としては、一般に、張力制御を行うための高価な設備を別途設けることが必要になるが、本実施形態ではピンチロール12と入側デフレクターロール13との間における金属ストリップSのたるみを制御するだけで圧延機入側張力を制御している。このため、本実施形態によれば、安価な設備で圧延機入側張力を制御することができる。
【0022】
図1に示したように、金属ストリップSの進行方向において入側デフレクターロール13の下流側であって圧延機10の直ぐ上流には加熱装置14が設けられる。本実施形態では、加熱装置14は、金属ストリップSの上方及び下方に配置された誘導加熱コイルを具備し、これら誘導加熱コイルに電流を流すことで金属ストリップSを誘導加熱する誘導加熱装置である。なお、加熱装置14は、必ずしも誘導加熱コイルを用いたものである必要はなく、金属ストリップSを局所的に加熱することができれば如何なる加熱装置を用いてもよい。したがって、例えば、金属ストリップSの上下に接触して通電加熱ロール間で金属ストリップSに電流を流すことで金属ストリップSの加熱を行う通電加熱装置や、赤外線加熱を利用した装置等、様々な方法を用いた加熱装置を使用可能である。
【0023】
金属ストリップSの進行方向において加熱装置14の直ぐ下流には金属ストリップSの温度を検出する温度センサ15が配置される。加熱装置14および温度センサ15は共に制御装置16に接続される。加熱装置14は、圧延機10に進入する金属ストリップSの温度が目標温度になるように、温度センサ15によって検出された温度に基づいてフィードバック制御される。なお、加熱装置14は必ずしも温度センサ15によって検出される温度に基づいてフィードバック制御されなくてもよく、目標温度に基づいたフィードフォーワード制御等、様々な方法で制御可能である。
【0024】
本実施形態において、圧延機10は4段圧延機であり、一対のワークロール17と一対のバックアップロール18とを具備する。各ワークロール17はその表面に焼結層を有するように形成されている。上バックアップロール18のロールチョック(図示せず)上部には、ワークロール17の圧下位置(すなわち、ワークロール17間のロールギャップ)を制御する電動圧下装置19が設けられる。また、上バックアップロール18のロールチョック上部には圧延荷重を検出するためのロードセル(図示せず)が設けられる。これら電動圧下装置19およびロードセルは制御装置16に接続される。したがって、ロードセルによって検出された圧延荷重は制御装置16に入力されると共に、電動圧下装置19は制御装置16によって制御される。
【0025】
また、本実施形態では、ワークロール17にはワークロール17の回転速度を検出するための速度検出装置(図示せず)が設けられる。速度検出装置は制御装置16に接続されると共に、制御装置16では速度検出装置によって検出されたワークロール17の回転速度に基づいて、圧延機10によって圧延されている金属ストリップSのうち圧延機10によって既に圧延された部分の圧延方向の長さ(以下、「圧延長」という)が算出される。なお、圧延長の検出又は算出(推定)は他の方法によって行われてもよい。例えば、圧延長の推定は、圧延機10から送出された金属ストリップSの速度を検出する装置の出力に基づいて行われてもよい。
【0026】
加えて、ワークロール17近傍には、ワークロール17の冷却を行うワークロール冷却装置25が設けられる。なお、図1に示した例では、ワークロール冷却装置25は、上ワークロール17の近傍のみに配置されて上ワークロール17を冷却するように構成されているが、下ワークロール17の近傍に配置して下ワークロール17を冷却するように、或いは上下ワークロール17の近傍に配置して上下ワークロールを冷却するように構成されてもよい。
【0027】
本実施形態では、圧延材冷却装置21ではワークロール17に対して常温の冷却媒体(例えば、エマルション潤滑油)を吹き付けることにより冷却が行われる。このため、ワークロール17に吹き付けられる冷却媒体の量が多くなるほど、冷却媒体が吹き付けられたワークロール17の部分が強く冷却される。なお、ワークロール17を冷却するワークロール冷却装置25としては、ワークロール17を局所的に冷却することができれば如何なる冷却装置を用いてもよい。
【0028】
金属ストリップSの進行方向において圧延機10の直ぐ下流側には圧延材冷却装置21が設けられる。本実施形態では、圧延材冷却装置21では金属ストリップSに対して常温の冷却媒体を吹き付けることにより冷却が行われる。このため、金属ストリップSに吹き付けられる冷却媒体の量が多くなるほど、冷却媒体が吹き付けられた金属ストリップSの部分が強く冷却される。なお、圧延機10から送出された金属ストリップSを冷却する圧延材冷却装置21としては、金属ストリップSを局所的に冷却することができれば如何なる冷却装置を用いてもよい。
【0029】
金属ストリップSの進行方向において圧延材冷却装置21の直ぐ下流には金属ストリップSの温度を検出する温度センサ22が配置される。圧延材冷却装置21および温度センサ22は共に制御装置16に接続される。圧延材冷却装置21は、圧延材冷却装置21によって冷却された金属ストリップSの温度が目標温度となるように、温度センサ22によって検出された温度に基づいてフォードバック制御される。なお、圧延材冷却装置21は必ずしも温度センサ22によって検出される温度に基づいてフィードバック制御されなくてもよく、後述するように圧延機10から送出された金属ストリップSの板厚に基づいて制御されてもよい。
【0030】
金属ストリップSの進行方向において温度センサ22の下流側には出側デフレクターロール23が設けられる。出側デフレクターロール23は駆動装置等によって駆動されていない回転自在なロールである。出側デフレクターロール23の下流側にはテンションリール24が設けられ、このテンションリール24によって金属ストリップSが巻き取られる。
【0031】
なお、本実施形態では、金属ストリップSの進行方向において圧延機10の上流側には、金属ストリップSの進行方向とは垂直な水平方向の位置を固定するために、複数のローラガイド(図示せず)が設けられる。また、本実施形態では、圧延機10のロールバイト入口に圧延潤滑のための圧延潤滑油(例えば、エマルション潤滑油)を供給するための潤滑油供給装置(図示せず)が設けられる。特に、潤滑油供給装置で用いられる潤滑油とワークロール冷却装置25で用いられる冷却媒体とを同じ潤滑油とされる。このため、潤滑油供給装置およびワークロール冷却装置25へは共通の潤滑油タンクから潤滑油が供給されると共に、圧延機10の下部に設けられた潤滑油回収槽(図示せず)を介して潤滑油タンクに回収される。また、制御装置16は、製造装置1によって製造すべき差厚鋼板の圧延方向における厚さの分布(以下、「目標厚さパターン」という)を入力する入力装置(図示せず)を有していてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、差厚鋼板の圧延は連続的な金属ストリップSを用いて連続的に行われている。しかしながら、例えば、圧延機10に所定長さの金属ストリップSを供給するようにしてもよい。この場合、ペイオフリール11およびテンションリール24の替わりに所定長さの金属ストリップSを積層式に貯留する貯留装置等が用いられる。
【0033】
ところで、本願の発明者は、図1に示したような装置を用いて、圧延機10に進入する金属ストリップSの温度(以下、「入側板温度」という)を変化させたときの、圧下率と圧延荷重との関係を調査した。具体的な実験条件は以下のとおりである。
【0034】
まず、金属ストリップSとしては、60キロハイテンと呼ばれる引っ張り強さが600MPaの材料を用いた。金属ストリップSは、板厚が3.06mm、板幅が400mmの熱延スリット材(黒皮材とよばれる表面に酸化スケールがついたコイル)とした。圧延機10のワークロール17は直径300mm、胴長500mmであり、バックアップロール18は直径1200mm、胴長500mmである。
【0035】
このような金属ストリップSおよび圧延機10を用いて実験を行った結果、図2に示したような結果を得た。図2から、入側板温度が高くなるにつれて圧延荷重が低下し、また、圧下率が増大するにつれて圧延荷重が増大することが分かる。図2において例えば、圧延時の圧延荷重を1MNにした場合、入側材料の温度が常温では圧下率2%程度、500℃では圧下率8%程度、700℃では圧下率18%程度、900℃では圧下率40%の圧延となる。すばわち、圧延荷重を1MNで圧延した場合、圧下位置を操作しなくても、入側板温度を調整することにより、出側板厚を変えることができることが分かる。
【0036】
そこで、本発明では、製造装置1によって製造すべき差厚鋼板の圧延方向における厚さの分布(目標厚さパターン)に応じて、圧延中に入側板温度を変化させるようにしている。また、入側板温度は、加熱装置14の加熱量によって変化することから、本発明では、目標厚さパターンに応じて圧延中に加熱装置14による金属ストリップSの加熱量を変化させているといえる。
【0037】
より具体的には、圧延機10によってこれから圧延される金属ストリップSの部分の板厚を直前に圧延された金属ストリップSの部分の板厚よりも薄くするときには加熱量を大きくし、圧延機10によってこれから圧延される金属ストリップSの部分の板厚を直前に圧延された金属ストリップSの部分の板厚よりも厚くするときには加熱量を小さくする。
【0038】
また、本実施形態では、一つの金属ストリップSの圧延期間全体に亘って、圧延機における圧下位置又は圧延荷重を変化させることなく一定に維持した状態で圧延が行われる。
【0039】
図3は、例えば図4のような差厚鋼板を製造する場合における圧延長に対する目標厚さと加熱量との関係を示している。図から分かるように、目標厚さは、圧延長が長さa〜bとなっている箇所において薄くなるように変化し、圧延長が長さc〜dとなっている箇所において更に薄くなるように変化する。そして、目標厚さは、圧延長が長さe〜fとなっている箇所において厚くなるように変化し、圧延長がg〜hとなっている箇所において更に厚くなるように変化して、圧延長が0〜aまでの目標厚さと同じ目標厚さに戻る。
【0040】
このような目標厚さのパターンに対して、加熱装置14における加熱量は、圧延長が長さa〜bとなっているときに徐々に増大し、これに伴って、圧延機10によって圧延された金属ストリップSの板厚が徐々に薄くなる。その後、圧延長が長さcとなるまで一定の加熱量に維持され、その間、圧延機10によって圧延された金属ストリップSの板厚も一定に維持される。その後、圧延長が長さc〜dとなっているときに、加熱装置14における加熱量が再び増大し、これに伴って、圧延機10によって圧延された金属ストリップSの板厚が徐々に薄くなる。その後、圧延長が長さe〜fとなっているときおよびg〜hとなっているときには加熱装置14における加熱量が減少し、これに伴って、圧延機10によって圧延された金属ストリップSの板厚が徐々に厚くなる。
【0041】
また、具体的な加熱量は、下記式(1)に基づいて算出される。
r=(aT+bT+c)P+d …(1)
式(1)において、rは圧下率、Pは圧延荷重、Tは温度である。また、係数a、b、c、dは、例えば、図2に示したような実験結果に基づいて算出される値である。なお、式(1)では2次近似を行っているが、3次近似等、他の近似式を用いてもよい。
【0042】
上記式(1)を用いることにより、目標厚さのパターンから算出された目標圧下率と、圧延荷重の設定値に基づいて、目標入側板温度を算出することができ、この目標入側板温度に基づいて加熱装置14による加熱量が算出される。したがって、本実施形態では、上記式(1)又は同様なマップが制御装置16に保持されると共に、実際に圧延を行う際には、圧延機10の圧延によって金属ストリップSが目標厚さパターンとなるように、制御装置16に保持された圧下率とおよび圧延荷重と入側鋼板温度との関係に基づいて制御装置16において算出された圧延長を用いて加熱装置14による加熱量が変化せしめられる。
【0043】
本発明によれば、このようにして、入側板温度を変化させることによって、圧延機10の圧下位置を全く又はほとんど変化させることなく差厚鋼板を圧延・製造することができる。このため、圧下位置の変更に関する応答速度の低い電動圧下装置を用いたとしても、比較的高い製造速度で差厚鋼板の製造を行うことができる。
【0044】
ところで、一般に圧延時の圧下率や温度が異なると、圧延後の差厚鋼板の品質(例えば強度)に差が生じる。差厚鋼板は、圧延後、プレスまたはホットプレス成形され、最終的な構造材が作製されるが、圧延後の差厚鋼板の品質にバラツキがあるとスプリングバックなどのバラツキを生じさせる。このため、一般的に差厚鋼板は圧延後に熱処理される場合が多い。
【0045】
ここで、上述したように入側板温度を変化させることによって差厚鋼板のサンプルを圧延により製造した(素材や圧延機の条件等は上記実験に用いた条件と同じである)。このサンプルは、1MNの圧延荷重をかけて温度20℃と900℃で圧延して得られたものであり、板厚が3mmの部分と板厚が1.87mmの部分とを有する差厚鋼板である。この差厚鋼板のサンプルの製造時には、差厚鋼板の全ての領域において同一の条件で冷却を行った。
【0046】
その結果、冷却なしの場合、この差厚鋼板のサンプルでは、板厚が3mmの部分における耐力が400MPaであり、板厚が1.87mmの部分における耐力が350MPaであった。この材料でR10mmのV曲げ試験を行ったところ、板厚が3mmの部分と板厚が1.87mmの部分との間でスプリングバックの差により曲げ角度に3度の差が生じた。
【0047】
そこで、本実施形態では、圧延材冷却装置21は、圧延材冷却装置21によって冷却される金属ストリップSの板厚に応じて冷却条件を変更するように構成される。特に、本実施形態では、圧延材冷却装置21によって冷却される金属ストリップSの板厚が薄くなるほど強く冷却を行うようにしている。上述したように、本実施形態では、冷却媒体を吹き付けることにより冷却が行われることから、金属ストリップSの板厚が薄くなるほど金属ストリップSに吹き付けられる冷却媒体の量が多くされる。
【0048】
ここで、金属ストリップSの板厚は、入側板温度および圧延機10における圧下率に応じて変化する。入側板温度が高いほど圧延機10における圧下率が大きくなり、結果的に金属ストリップSの板厚が薄くなり、しかも薄い板厚部分の耐力は大きくなる。したがって、本実施形態では、入側板温度が高くなるほど、および圧下率が高くなるほど金属ストリップSは強く冷却される。
【0049】
これにより、金属ストリップSの耐力を板厚の異なる領域において同様な値とすることもできる。その結果、材質のバラツキがほとんどない差厚鋼板を製造することができ、これにより、従来、差厚鋼板は圧延後に熱処理されていたがこの工程を省略でき、よって製造コストを低減することができる。
【0050】
また、具体的な冷却媒体の供給量は、下記式(2)に基づいて算出される。
σ=eQh+fQh+g …(2)
式(2)において、σは耐力、Qは冷却媒体の供給流量、hは圧延後の金属ストリップS(すなわち、圧延材冷却装置21に進入する金属ストリップS)の板厚である。また、係数e、f、gは、予め実験や数値計算等を行って算出される値である。なお、式(2)では2次近似を行っているが、3次近似等、他の近似式を用いてもよい。
【0051】
上記式(2)を用いることにより、圧延材冷却装置21に進入する金属ストリップSの板厚hと目標とする耐力(例えば一つの金属ストリップSの圧延期間全体に亘って一定)σとに基づいて、冷却条件である冷却媒体の流量Qを算出することができる。
【0052】
この知見を用いて、上記差厚鋼板のサンプル製造時の冷却条件を板厚に応じて変化させた結果、板厚が3mmの部分における耐力を400MPa、板厚が1.87mmの部分における耐力を405MPaとすることができた。この材料でR10mmのV曲げ試験を行ったところ、板厚が3mmの部分と板厚が1.87mmの部分との間で曲げ角度に0.1度の差しか生じなかった。
【0053】
ところで、ワークロール17は圧延中に温度の変化する金属ストリップSに接触する。このため、金属ストリップSに接触したワークロール17は、その周方向において温度分布が形成されてしまう。このように、ワークロール17に周方向の温度分布が生じると、ワークロール17の周方向において熱膨張の程度が変化し、結果的に、圧延機10によって圧延される金属ストリップSの板厚を薄くし、またその表面の平坦度を低下させてしまう可能性がある。
【0054】
そこで、本実施形態では、ワークロール冷却装置25によってワークロール17の冷却を行った際に、高温の金属ストリップSと接触したワークロール17の部分については冷却媒体の吹付け量を多くして強く冷却し、低温の金属ストリップSと接触したワークロール17の部分については冷却媒体の吹付け量を少なくして弱く冷却するようにしている。これにより、ワークロール17の表面温度をその周方向に亘ってほぼ一定に維持することができ、その結果、ワークロール17が熱膨張により周方向において変形してしまうことが抑制される。
【0055】
また、本実施形態では、ワークロール17の表面に焼結層が設けられる。このようにして設けられた焼結層は熱膨張しにくいことから、このようにワークロール17の表面に焼結層を設けるとワークロール17が熱膨張により周方向に変形することが抑制される。
【0056】
次に、図5を参照して、本発明の第二実施形態に係る差厚鋼板の製造装置ついて説明する。第二実施形態の差厚鋼板の構成は、基本的に第一実施形態の差厚鋼板と同様である。しかしながら、第二実施形態では、第一実施形態とは異なる加熱装置が用いられている。
【0057】
図5は、本実施形態における加熱装置14’を概略的に示す図であり、図中の矢印は金属ストリップSの進行方向を示している。図5に示したように、加熱装置14’は、加熱制御装置31、加熱トランス32、通電ロール33、ターンダウンロール34、シンクロール35、溶融金属浴36が貯留されたポット37、および導電線38を具備する。
【0058】
加熱制御装置31は、金属ストリップSの目標温度に基づいて加熱トランス32(1次巻線)に交流電力を供給する。金属ストリップSの目標温度が高いとき、すなわち金属ストリップSの必要な加熱量が多い時には加熱トランス32に供給する交流電力を大きくし、金属ストリップSの目標温度が低いとき、すなわち金属ストリップSの必要な加熱量が少ないときには加熱トランス32に供給する交流電力を小さくする。
【0059】
加熱トランス32はいわゆるリングトランスであり、鉄心と、この鉄心に巻回された1次巻線とを具備する。本実施形態では、1次巻線に複数のタップが設けられており、加熱制御装置31から供給される交流電力の出力先を複数のタップ間で切り替えることにより加熱トランス32の1次巻線の数を変更することができる。
【0060】
通電ロール33は、金属ストリップSの進行方向において上流側から搬送された金属ストリップSに通電するためのロールであり、少なくともその表面が導電性の材料で形成されている。通電ロール33は、加熱トランス32の2次側の電極の一つになる。通電ロール33を通過した金属ストリップSは、加熱トランス32内を、より詳細には加熱トランス32の鉄心の中空部内を通る。
【0061】
ターンダウンロール34は、通電ロール33から水平方向に搬送された金属ストリップSの進行方向をポット37内のシンクロール35に向かう方向(斜め下方)に変更するロールである。ターンダウンロール34を通った金属ストリップSはポット37内の溶融金属浴36に進入し、その表面にメッキが施される。溶融金属浴36は、例えば、溶融亜鉛浴や溶融亜鉛系合金浴であり、加熱トランス32の2次側の電極の一つになる。導電線38は、その一端が通電ロール33に接続され、その他端が溶融金属浴36に浸されている。
【0062】
図5に示したように、本実施形態では、通電ロール33と、通電ロール33および溶融金属浴36の間にある金属ストリップSと、溶融金属浴36と、導電線38とにより、加熱トランス32の2次回路(2次巻線)が形成される。この加熱トランス32の2次巻線は1巻であるのに対して、加熱トランス32が有する1次巻線の巻数は例えば50〜100巻(タップを切り替えることにより変更可能)である。このように1次巻線の巻数を2次巻線の巻数よりも格段に多くすることにより、加熱トランス32の1次巻線に供給される交流電力が小さくても、2次巻線に大きな電流を流すことができる。
【実施例】
【0063】
図1に示した装置を用いて長手方向に板厚差を有する差厚鋼板を製造した。素材等は上述した差厚鋼板のサンプルと同一である。図4に本実施例で製造した差厚鋼板の寸法を示す。図4は、製造した差厚鋼板を長手方向に切断した断面図である。また、テーパ部(板厚の異なる部分間の傾斜部)の長さは10〜40mmとした。
【0064】
本実施例では、電動圧下圧延機を用い、圧延荷重が1MNになるように常温圧延時の圧下位置を設定した。圧延時には、ワークロールの回転速度から圧延長を推定し、その推定値に基づいて差厚鋼板の板厚の目標値を与え、その板厚の目標値になるよう入側板温度の目標値を算出し、その板温度の目標値になるよう加熱装置の加熱量を制御した。また、圧延後の板厚に基づいて材質のバラツキが無いように圧延材冷却装置における冷却条件(流量)を制御した。具体的には、圧延荷重を約1KN、入側板温度を常温、約708℃、約911℃の3段階に変化させた。冷却条件の目標値は入側板温度が常温の領域(板厚が最も厚い領域)では4000cc/min、約708℃の領域では6680cc/min、約911℃の領域では8150cc/minとした。この値は上記式(2)と同様な式を作成し、その式を用いて求めた。
【0065】
比較例として、電動圧下圧延機を用い、予め実験によって求めた圧下位置(圧延荷重)と板厚の関係を用いて圧延機の圧下位置の制御を行った。圧延時には、ワークロールの回転速度から圧延長を推定し、その推定値に基づいて差厚鋼板の板厚の目標値を算出し、その板厚の目標値になるように圧延機の圧下位置を制御した。このとき、加熱装置による金属ストリップの加熱および圧延材冷却装置による冷却は行わなかった。
【0066】
本実施例では図4に示した差厚鋼板を、圧延速度50m/minで板厚精度±10%内で製造することができた。比較例においても、図4に示した差厚鋼板を、板厚精度±10%内で製造することができた。ただし、電動圧下の圧下速度が300μm/secであることから、上述したテーパ部の長さを10〜40mmの間に収めるためには、圧延速度が約0.3〜1.5m/minに制限された。本比較例では圧延速度は1m/minとした。
【0067】
また、圧延後の長手方向の材質バラツキ(耐力)は本実施例の場合5%内(最大板厚基準)であったが、比較例の場合+40%(最大板厚基準)内であった。なお、比較例におけるバラツキは別工程で熱処理することにより、本実施例とほぼ同じ程度にまで改善された。
【符号の説明】
【0068】
1 製造装置
10 圧延機
11 ペイオフリール
12 ピンチロール
13 デフレクターロール
14 加熱装置
15 温度センサ
16 制御装置
17 ワークロール
18 バックアップロール
19 電動圧下装置
21 圧延材冷却装置
22 温度センサ
23 デフレクターロール
24 テンションリール
25 ワークロール冷却装置
S 金属ストリップ
図1
図2
図3
図4
図5