(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。尚、本発明は、以下の実
施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体の暗部表面電位の絶対値が450V以下となるように動作する。その画像形成装置に搭載される円筒状電子写真感光体は、搭載前に保護シートで梱包されている。
【0014】
<保護シート>
保護シート2は、ドラム1の感光膜を保護及び遮光するために用いられるものであり、ドラム1の外周表面を全て覆い得る大きさを有するものを用いるが、一部ドラムの上下端をはみ出すこともある。保護シート2は、ドラム表面傷の発生を防止するために平滑性を、太陽光や蛍光灯による劣化を抑制するために遮光性を付与することが望ましい。保護シート2に使用される材質としては、カーボンをドープした紙やポリエチレン、あるいはカーボン層をラミネートした紙等が挙げられ、コスト及び取り扱い易さの観点からは、カーボンをドープした紙が好ましいが、特に表面抵抗を小さくする目的からは、カーボンを多くドープした紙が好ましい。
【0015】
本発明に於いては、保護シートの表面抵抗を制御することによって効果を達成する。保護シートの表面抵抗は、導電性付与の観点から、10
11Ω/cm
2以下、好ましくは1
0
5Ω/cm
2以下であり、製紙の容易性及びコストの観点から、10
2Ω/cm
2以上、好ましくは10
3Ω/cm
2以上である。表面抵抗は、三菱化学アナリテック社製ハイレ
スタ又はロレスタを用いて測定できる。保護シートの表面抵抗の制御は、シートに混練される粒子によって決められることが多く、特に、混練されるカーボンブラックの量を変化させることによってコントロールすることができる。カーボンブラックは、パルプへの混練で投入されるが、製紙工程によってその大半が排出されてしまい、最終的が含有量をコントロールすることは難しい。逆に、一定の条件を決定した後に、その黒紙の導電率を管理することで、カーボンブラックの見えない混入率を一定とする手法が一般的である。
【0016】
保護シートの表面粗さとしては、最大高さRyであれば、表面傷防止の観点から、5.00μm以下、好ましくは4.00μm以下、更に好ましくは2.00μm以下である。滑り落ち防止の観点から、0.10μm以上、好ましくは0.50μm以上、更に好ましくは1.00μm以上である。最大高さが高いほど、表面傷や保護シート由来の付着物が増加する。算術表面粗さRaであれば、表面傷防止の観点から、0.5μm以下、好ましくは0.40μm以下、更に好ましくは0.30μm以下である。滑り落ち防止の観点から、0.01μm以上、好ましくは0.10μm以上、更に好ましくは0.20μm以上である。
【0017】
保護シートのサイズは、具体的には、
図2に示すように、ドラム1の円周方向に対応した保護シート2の幅Wが、ドラム1の円周長に、通常10mmを加えた長さ以上であり、ドラム1の円周長の1.5倍の長さから、通常4mmを減した長さ未満である。特に、保護シートが本願で規定する粗さの範囲であれば、留め合わせた部分に摩擦が生じるため、幅Wを十分に長く設定してずれを防止する必要が無く、1本あたりの使用保護シートの量を減らすことができる。保護シート2の幅Wが短すぎる場合、ドラム1の外周表面に保護シート2で覆われない部分が生じ、ドラム1の感光膜の露出及び/又は傷付き等の可能性がある。また、保護シート2の幅Wが長すぎる場合、ドラム1を後述する半円状のくぼみを有する型9(
図3参照)に入れた時に、保護シート2の巻き端21が型9に当たってドラム1が浮き上がる可能性がある。
【0018】
<円筒状電子写真感光体>
円筒状電子写真感光体は、暗部表面電位の絶対値が450V以下となる画像形成装置に搭載される。好ましくは、暗部表面電位絶対値が100V以上、更に好ましくは200V
以上である。
本発明の円筒状電子写真感光体については、特に制限はないが、円筒状の導電性支持体上に、感光層を公知の方法で塗布したものが用いられるのが一般的である。
【0019】
本発明において感光層は導電性支持体上に設けられる。導電性支持体としては、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料やアルミニウムを蒸着したポリエステルフィルム、紙、ガラスなどが主として使用される。
この様な導電性支持体と感光層との間には通常使用されるような公知のバリアー層が設けられていてもよい。バリアー層としては、例えばアルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層が使用される。また、これらのバリアー層には、アルミニウム、銅、錫、亜鉛、チタンなどの金属あるいはこれら金属の酸化物などの導電性または半導電性微粒子を含んでいてもよい。
【0020】
本発明の感光層は基本的に電荷発生層と電荷輸送層から構成される積層型が好ましいが、単一の感光層からなるいわゆる単層分散型でもよい。
以下、主に積層型について説明する。
【0021】
<電荷発生物質>
電荷発生物質は単独として用いてもよいし、またはいくつかの染顔料との混合状態で用いてもよい。電荷発生物質としては、例えばセレニウム及びその合金、アモルファスシリコンその他無機系光導電性材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料、スクワリウム顔料などの有機顔料など各種光導電性材料が使用できるが、特に有機顔料、中でもフタロシアニン顔料、アゾ顔料を使用することが望ましい。フタロシアニン顔料を使用する場合、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム等の金属、またはその酸化物、塩化物の配位したフタロシアニン類が使用される。特に、感度の高いx型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のオキシチタニウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン等が好適である。なお、ここで挙げたオキシチタニウムフタロシアニンの結晶型のうち、A型、B型については W.Hiller らによってそれぞれI相、II相として示されており(Z.Kristallogr.,
159(1982) 173)、A型は安定型として知られているものである。D型は、CuKα線を用いた粉末X
線回折において、回折角2θ±0.2゜が27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とする結晶型である。
【0022】
アゾ顔料として好ましいものの例としては、特開昭63−259572、特開平5−32905号公報記載のアゾ顔料等などが挙げられるが、特開平9−281733に示されるアゾ化合物が特に好ましい。
これらフタロシアニン化合物、アゾ顔料は単独で使用しても良く、また複数のフタロシアニン化合物の混合物、混晶、複数のアゾ顔料の混合物、またはフタロシアニン化合物とアゾ顔料の混合物として用いても良い。
【0023】
電荷発生層は上記顔料を、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリ塩化ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル共重合体等の各種バインダー樹脂で結着した形の分散層で使用してもよい。
【0024】
これらの化合物に対するバインダー樹脂の比率(重量比)は、これらの化合物1に対して0.2〜5の範囲で使用される。その膜厚は通常0.1〜2μm、好ましくは0.1〜0.8μmが好適である。また、電荷発生層には必要に応じて、塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0025】
<電荷輸送層>
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質、バインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には下引き層上に塗布、乾燥して得ることができる。電荷輸送層が最表面層であることが好ましい。
【0026】
電荷輸送物質としては、公知の他の電荷輸送物質を用いることができ、その種類は特に制限されないが、例えば、カルバゾール誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、エナミン誘導体、ブタジエン誘導体及びこれらの誘導体が複数結合されたものが好ましい。前記電荷輸送物質の好適な構造の具体例を以下に示す。これら具体例は例示のために示したものであり、本発明の趣旨に反しない限りはいかなる公知の電荷輸送物質を用いてもよい。
【0029】
<電荷輸送層>
電荷発生層と電荷輸送層を有する機能分離型感光体の電荷輸送層形成の際は、膜強度確保のためバインダー樹脂が使用される。
機能分離型感光体の電荷輸送層の場合、電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液、また、単層型感光体の場合、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂を溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることが出来る。
【0030】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等が挙げられ、またこれらの部分的架橋硬化物も使用できる。上記バインダー樹脂のうち、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が特に好ましい。これらの樹脂は単独でも、複数を混合して用いてもよい。
【0031】
まず、ポリエステル樹脂について説明する。一般に、ポリエステル樹脂は、原料モノマーとして、多価アルコール成分と、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル等の多価カルボン酸成分とを縮重合させて得られる。感光体の最表面層がポリエステル樹脂を含有する場合には、感光層の誘電率がポリカーボネートよりも高い等の理由から静電気が発生しやすく、保護シートの表面抵抗率を調節することでメモリ発生を防ぐことができる。
【0032】
多価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2 − ビス(4
−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2 − ビス(
4 −ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールA のアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA 、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2
〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物、芳香族ビスフェノール等が挙げられ、これらの1種以上を含有するものが好ましい。
【0033】
また、多価カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等のジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらの1種以上を含有するものが好ましい。
【0034】
これらのポリエステル樹脂のうち、好ましいのは下記式(A)で示される構造単位を有する、全芳香族系のポリアリレート樹脂である。
【0036】
(式(A)中、Ar
1〜Ar
4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す。uは0以上2以下
の整数を表す。Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基を表す)。
上記式(A)中、Ar
1〜Ar
4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリーレン基を表す。アリーレン基が有する炭素数としては、通常6以上、好ましくは7以上、また、その上限は、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。炭素数が多すぎる場合、製造コストが高くなり、電気特性も悪化する恐れがある。
【0037】
Ar
1〜Ar
4の具体例としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。中でも、アリーレン基としては、電気特性の観点から、1,4−フェニレン基が好ましい。アリーレン基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0038】
また、Ar
1〜Ar
4の置換基の具体例を挙げると、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、アルコキシ基等が挙げられる。中でも、感光層用のバインダー樹脂としての機械的特性と感光層形成用塗布液に対する溶解性とを勘案すれば、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、ハロゲン基としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましい。なお、置換基がアルキル基である場合、そのアルキル基の炭素数は通常1以上、また、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは2以下である。
【0039】
より詳しくは、Ar
3及びAr
4は、それぞれ独立に置換基の数は0以上2以下が好ましく、接着性の観点から置換基を有することがより好ましく、中でも、耐磨耗性の観点から置換基の数は1個であることが特に好ましい。また、置換基としてはアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
一方、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、置換基の数は0以上2以下が好ましく、耐磨耗性の観点から置換基を有さないことがより好ましい。
【0040】
また、上記式(A)において、Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又はアルキレン基である。アルキレン基としては、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、シクロヘキシレンが好ましく、より好ましくは、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、シクロヘキシレンであり、特に好ましくは−CH
2−、−CH(CH
3)−である。
【0041】
また、上記式(A)において、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、またはアルキレン基であって、中でも、Xは、酸素原子であることが好ましい。その際、vは0か1であるこ
とが好ましく、1であることが特に好ましい。
uが1の場合に好ましいジカルボン酸残基の具体的としては、ジフェニルエーテル−2
,2'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,3'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−2,4'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−3,3'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−3,4'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸残基等が挙げられる。これらの中でも、ジカルボン酸成分の製造の簡便性を考慮すれば、ジフェニルエーテル−2,2'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル
−2,4'−ジカルボン酸残基、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸残基がより好ましく、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸残基が特に好ましい。
【0042】
uが0の場合のジカルボン酸残基の具体例としては、フタル酸残基、イソフタル酸残基
、テレフタル酸残基、トルエン−2,5−ジカルボン酸残基、p−キシレン−2,5−ジカルボン酸残基、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸残基、ビフェニル−2,2'−ジカルボ
ン酸残基、ビフェニル−4,4'−ジカルボン酸残基が挙げられ、好ましくは、フタル酸
残基、イソフタル酸残基、テレフタル酸残基、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸残基、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸残基、ビフェニル−2,2'−ジカルボン酸残基、ビ
フェニル−4,4'−ジカルボン酸残基であり、特に好ましくは、イソフタル酸残基、テ
レフタル酸残基であり、これらのジカルボン酸残基を複数組み合わせて用いることも可能である。
【0043】
前記バインダー樹脂の好適な構造の具体例を以下に示す。これら具体例は例示のために示したものであり、本発明の趣旨に反しない限りはいかなる公知のバインダー樹脂を用いてもよい。
【0045】
次に、ポリカーボネート樹脂について説明する。一般に、ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノール類とホスゲンとを溶液中で反応させる、界面法(界面重縮合法)や溶液法のような溶剤法で製造されたものや、ビスフェノールと炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合反応させる溶融法が、安価な製法として広く用いられている。ビスフェノール類としては、下記の化合物が好適に用いられる。なお、ポリカーボネート樹脂としては、一種のビスフェノール類からなるホモポリマーだけでなく、二種以上のビスフェノール類を共重合させて製造されるコポリマーも用いられる。
【0047】
前記バインダー樹脂の好適な構造の具体例を以下に示す。これら具体例は例示のために示したものであり、本発明の趣旨に反しない限りはいかなる公知のバインダー樹脂を用いてもよい。
【0049】
本発明で用いられるバインダー樹脂の粘度平均分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上、また、その上限は、好ましくは150,000以下、より好ましくは120,000以下、更に好ましくは100,00以下であることが望ましい。粘度平均分子量の値が小さすぎる場合、感光体の機械的強度が不足する可能性があり、大き過ぎる場合、感光層形成のための塗布液の粘度が高すぎて生産性が低下する可能性がある。
【0050】
バインダー樹脂と電荷輸送材料との割合は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷輸送材料を30質量部以上の比率で使用することが好ましい。中でも、残留電位低減の観点から35質量部以上が好ましく、更には、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から40質量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、電荷輸送材料を通常は100質量部以下の比率で使用する。中でも、電荷輸送材料とバインダー樹脂との相溶性の観点から80質量部以下が好ましく、耐刷性の観点から80質量部以下がより好ましく、耐傷性の観点から60質量部以下が特に好ましい。
【0051】
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、一方、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更には30μm以下の範囲とする。
<画像形成装置>
次に、本発明に用いられる画像形成装置について、装置の要部構成を示す
図4を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0052】
図4に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3、現像装置4及び転写装置5を備えて構成され、更に、必要に応じてクリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明に係る電子写真感光体であれば特に制限はないが、
図4ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0053】
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。
図4では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。
なお、電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されており、本発明においてもそのような形態で用いることが望ましい。そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1,帯電装置2,トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。なお、後述するように、この画像形成装置ではトナーとして上述した本発明のトナーを使用している。
【0054】
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜600nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。
【0055】
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。
図2では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0056】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケルなどの金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコーン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0057】
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼,アルミニウム,銅,真鍮,リン青銅などの金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は0.05〜5N/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
【0058】
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を転写材(用紙,媒体)Pに転写するものである。
【0059】
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができるが、実効性の観点からブレードクリーナーが好ましい。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。
【0060】
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71または72の内部には加熱装置73がそなえられている。なお、
図4では、上部定着部材71の内部に加熱装置73がそなえられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0061】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
【0062】
以上のように構成された画像形成装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−400V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよいが、いずれにせよ本発明に於いては、絶対値として450V以下となるように帯電する。
【0063】
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
【0064】
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
【0065】
本実施形態の画像形成装置は、本発明の感光体を用いているため、小型化させることが可能であるとともに、クリーニング不良も発生せず、形成される画像の高画質を実現することが可能である。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
【0066】
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
【実施例】
【0067】
以下実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
<感光体の製造>
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシランをボールミルにて混合して得られたスラリーを乾燥後、更にメタノールで洗浄、乾燥して得られた疎水性処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でウルトラアスペックミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとなし、該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエン(重量比7/1/2)の混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン/ヘキサメチレンジアミン/デカメチレンジカルボン酸/オクタデカメチレンジカルボン酸(組成モル%75/9.5/3/9.5/3)からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行うことにより、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する固形分濃度18.0%の分散液とした。
【0069】
この分散液を、外径24mm、長さ255mm、厚さ0.75mmのアルミニウム製シリンダーに浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように下引き層を設けた。
次に、電荷発生物質として、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン10重量部を1,2−ジメトキシエタン150重量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行ない顔料分散液を作製した。こうして得られた160重量部の顔料分散液をポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名#6000C)の5%1,2−ジメトキシエタン溶液100重量部に加え、1,2−ジメトキシエタンで希釈し、最終的に固形分濃度4.0%の分散液を作製した。
【0070】
この分散液を、上述の下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように浸漬塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送物質として、特開2002−80432中に示された以下構造を主成分とする異性体からなる電荷輸送物質75重量部、
【0071】
【化7】
【0072】
バインダーとして下記構造を繰り返し単位として持つポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:50,000)40重量部、
【0073】
【化8】
【0074】
もう1種のバインダーとして下記構造を繰り返し単位として持つポリアリレート樹脂(粘度平均分子量:40,000)60重量部、
【0075】
【化9】
【0076】
酸化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン2部、およびレベリング剤としてシリコーンオイル0.05重量部を、テトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640重量部に溶解させた液を、上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるように浸漬塗布し、感光体ドラムを得た。
【0077】
<保護シートの巻き付け>
表1に示す保護シートをそれぞれ252mm×100mmのサイズに断裁し、感光体ドラムの長手方向(255mm)と保護シートの長手方向(252mm)が一致するように配置し、保護シートを巻き付け、粘着テープを用いて留めた。
【0078】
【表1】
【0079】
<印字試験>
保護シートを巻き付けられた感光体ドラムを内側から水平に保持し、筒状となった保護シートを外面から掴んで一周り回転させた後、粘着テープを持って保護シートを0.5秒/本の速度で周方向に剥ぎ取った。
感光体ドラムの表面に発生した静電気の様子を確認するために、米国にて市販のプリンターであるCLP−680ND(サムスン電子製)を改造し、黒色ドラムへの帯電ローラーへの印可電圧を変更できるようにしたうえで黒色ドラムカートリッジに装着し、感光体暗部表面電位を変化させて印字試験を行い、画像上に静電メモリーの影響が見られるかどうかを確認した。また、耐摩耗量を調査するために、6,000枚の印字試験を実施し、感光層の膜厚の減少量を測定した。結果を表−2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
以上の結果から、耐摩耗性を抑制するためには暗部表面電位を小さく抑えることが有効であることがわかる一方、参考例1〜参考例12のような暗部表面電位が大きい場合には、保護シートを引き剥がしたときに発生する感光体表面の静電メモリーが画像として表れないために、保護シートを選択する必要がなかった。発明者は、暗部表面電位が小さい場合に限り、保護シートの表面抵抗の選定が重要であることを見い出し、本発明を完成させるに至った。