(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなフランジ部には、車両パネルと車両用内装材との間のシールをするためのシール材が配置される場合がある。このようなシール材は、フランジ部と車両パネルとの間で潰された状態で挟持される。これにより、フランジ部と車両パネルとの間から水などが侵入する事態を防止することができる。また、シール材が配置される構成では、クリップ座は、シール材に対して車両用内装材の内方に配される。
【0005】
シール材が配置された状態の車両用内装材を車両パネルに対して取り付ける際には、シール材が車両パネルによって押圧される。これにより、押圧されたシール材が倒れる事態が懸念される。
【0006】
ここで、上記特許文献1のように、フランジ部に近接してクリップ座が設けられている場合には、車両用内装材の取付時にシール材がクリップ座側に倒れることで、クリップと車両パネルの間に入り込んでしまう虞がある。シール材がクリップと車両パネルの間に入り込んでしまうと、その部分では、シール材のシール性能が低下してしまう。このため、車両パネルから車両用内装材を取り外し、シール材を正しい位置に配置した後、再度車両用内装材を取り付ける必要が生じる。
【0007】
このような事情から、クリップ座側に倒れたシール材がクリップと車両パネルの間に入り込んでしまう事態を防ぐためには、シール材とクリップ座との距離を大きくする必要があった。このため、クリップ座をシール材(ひいては車両用内装材の外周端部)に近付けて配置することが難しいという問題点があった。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、車両パネルに対して車両用内装材を取り付ける際にシール材がクリップ座側に倒れる事態を抑制して、クリップ座を車両用内装材の外周端部に対して、より近付けて配置することが可能な車両用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、車両パネルに対してクリップを介して取り付けられる車両用内装材であって、板状をなし、前記車両パネルと対向配置される内装材本体部と、前記内装材本体部の外周端部に設けられ、前記車両パネルと対向する対向面を有するフランジ部と、前記対向面上に配され、前記対向面と前記車両パネルとの間で挟持されるシール材と、前記対向面に設けられ、前記シール材に対して前記内装材本体部側に配されるとともに、前記クリップが取り付けられるクリップ座と、を備え、前記クリップ座は、前記対向面から前記車両パネル側に立ち上がる立壁部と、前記立壁部から前記車両パネルに対向するように延び、前記クリップが取り付けられる座面部と、を有しており、前記対向面には、前記シール材と前記クリップ座との間に配され、前記車両パネル側に突出される突出部が形成され、前記突出部の前記シール材側の端部における前記対向面からの突出高さは、前記突出部の前記クリップ座側の端部における前記対向面からの突出高さよりも高いものとされることに特徴を有する。
【0010】
本発明によれば、車両パネルに対して車両用内装材を取り付ける際に、シール材がクリップ座側に倒れようとした場合には、シール材とクリップ座との間に配された突出部によってシール材を受けることができ、シール材がクリップ座側に倒れる事態を抑制することができる。これにより、クリップ座をシール材に対して、より近付けて配置することができる。この結果、クリップ座を車両用内装材の外周端部に対して、より近付けて配置することが可能となる。
【0011】
また、突出部の突出高さは、シール材側の端部においては、クリップ座側の端部と比べて高く設定されており、より確実にシール材を受けることができる。これに対して、突出部の突出高さは、クリップ座側の端部においては、比較的低く設定されている。このため、突出部と車両パネルとの隙間をより多く確保することができる。このため、突出部と車両パネルとが干渉する事態を抑制することができる。言い換えると、本発明の突出部は、シール材を受ける箇所(シール材側の端部)の突出高さを確保しつつ、それ以外の箇所では、突出高さを極力低くすることで車両パネルとの干渉を抑制する構成となっている。
【0012】
上記構成において、前記フランジ部及び前記対向面は、前記内装材本体部の外周端部に沿って延びており、前記対向面には、前記クリップ座が前記内装材本体部の前記外周端部に沿って複数個配列され、前記突出部は、前記複数の前記クリップ座のうち、前記対向面から前記座面部までの距離が最も小さいクリップ座と前記シール材との間に配されているものとすることができる。
【0013】
一般的に、車両パネルは、全面に亘って平坦な形状でなく、ある程度の凹凸を有する形状をなしていることが多い。このため、複数のクリップ座を備えている構成においては、各クリップ座の座面の高さを車両パネルの形状に合わせて、それぞれ変える必要がある。具体的には、例えば、車両パネルが車両用内装材に接近している箇所に設けられるクリップ座では、座面部の高さ(対向面から座面部における車両パネル側の面までの距離)を小さくし、座面部と車両パネルとが干渉しないようにする必要がある。
【0014】
言い換えると、車両用内装材において、座面部の高さが小さいクリップ座が形成されている箇所では、車両パネルが他の部分よりも車両用内装材に接近しており、車両パネルと車両用内装材側の部品との干渉について留意する必要がある。本発明では、このような箇所に設けられたクリップ座に対応して突出部を設けてある。上述のように、本発明の突出部は、車両パネルと干渉し難い構成となっている。このため、車両パネルが車室内側に接近している箇所に突出部を設けた場合であっても車両パネルとの干渉を留意する必要性が低く、設計上の制約を受けにくいため好適である。
【0015】
また、前記突出部の突出方向における自然状態の前記シール材の長さをシール材高さと定義し、前記突出部の前記シール材側の端部における前記対向面からの突出高さをシール材側突出高さと定義した場合において、前記シール材高さは、前記シール材側突出高さよりも大きい値で設定され、前記シール材側突出高さは、前記シール材高さから当該シール材側突出高さを引いた値が、前記突出部及び前記クリップの配列方向における前記シール材から前記クリップまでの距離よりも小さい値となるように設定されているものとすることができる。
【0016】
シール材高さが、シール材側突出高さよりも大きい値で設定されている場合において、クリップ側に倒れ込もうとするシール材を突出部によって受けた場合には、シール材の一部が突出部の突出端を乗り越えてクリップ側に変形することが考えられる。このため、本発明では、シール材高さからシール材側突出高さを引いた値が、シール材からクリップまでの距離よりも小さい値となるように設定されている。
【0017】
シール材高さからシール材側突出高さを引いた値、つまり、シール材において突出部を乗り越える可能性がある部分の長さを、シール材からクリップまでの距離より小さくすることで、仮にシール材の一部が突出部を乗り越えてクリップ側に変形した場合であっても、シール材がクリップに達する事態を抑制することができる。これにより、シール材とクリップとが干渉する事態をより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両パネルに対して車両用内装材を取り付ける際に、シール材がクリップ座側に倒れる事態を抑制することが可能な車両用内装材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態を
図1ないし
図7によって説明する。
図1は、本実施形態のドアトリム10(車両用内装材)を示す正面図である。
【0021】
ドアトリム10は、トリムボード11を備えている。トリムボード11は、例えば、合成樹脂材料、あるいは合成樹脂材料と天然繊維(ケナフなど)を混合した材料等を板状に成形することで構成されている。
【0022】
トリムボード11(内装材本体部)は、
図5に示すようにドアパネル15(車両パネル)と対向配置されている。本実施形態では、トリムボード11は、
図1に示すように、例えば、アッパーボード12、ミドルボード13、ロアボード20から分割構成されている。
【0023】
アッパーボード12には、インサイドハンドル(図示せず)を取り付けるためのインサイドハンドル収容部12Aが設けられ、ロアボード20には、スピーカグリル21が設けられている。なお、
図1においては、トリムボード11の裏側に設けられている部材の一部(後述するシール材40やクリップ座50,60)を破線ではなく実線で示してある。
【0024】
図2は、トリムボード11を構成するロアボード20を裏面から視た図であり、
図5は、ロアボード20におけるクリップ座50付近を示す断面図である。ロアボード20は、
図2及び
図5に示すように、意匠面22A(車室内側の面)を主に構成する主面部22と、主面部22の外周端部から車室外側(ドアパネル15側)に立ち上がる立壁部23とを備えている。
【0025】
立壁部23の車室外側端縁には、ドアトリム10の外周側(主面部22とは反対側)に張り出すフランジ部30が設けられている。主面部22及びフランジ部30は、それぞれドアパネル15と対向配置され、ドアパネル15に対して略平行状に配置されている。また、フランジ部30は、主面部22に対して車室外側(ドアパネル15により近い側)に配されている。
【0026】
フランジ部30は、
図2に示すように、ロアボード20の外周端のほぼ全長に亘って延びている。フランジ部30における車室外側の面は、
図5に示すように、ドアパネル15と対向する対向面30Aとされる。
【0027】
また、フランジ部30の外周端部には、車室外側に向かって延びる延設壁部31がフランジ部30の延設方向に沿って延設されている。
【0028】
対向面30A上には、シール材40が配置されている。シール材40は、例えば、発泡ウレタン樹脂などの柔軟性及び弾性を有する材質によって構成されている。シール材40は、
図2に示すように、ロアボード20の外周端部(ひいてはフランジ部30)の全長に亘って延びる長手状をなしている。
【0029】
シール材40は、例えば、接着剤や粘着テープなどで、対向面30A(
図5参照)に貼り付けられている。シール材40は、
図5及び
図7に示すように、対向面30Aとドアパネル15との間に挟持されている。自然状態(シール材40が対向面30Aとドアパネル15との間に挟まれていない状態)におけるシール材40の厚さは、同方向における対向面30Aとドアパネル15との対向間隔よりも大きく設定されている。
【0030】
このため、ドアトリム10(ロアボード20)をドアパネル15に取り付けた状態では、シール材40は、その全長(一部を除く)に亘って、厚さ方向に圧縮された状態となり、対向面30Aとドアパネル15との双方に密着する構成となっている。
【0031】
このため、シール材40によって、対向面30Aとドアパネル15との間をシールすることができる。これにより、ドアトリム10とドアパネル15の間で異音が発生する事態や、車室外からドアトリム10の裏面を介して外気や水が車室内へ浸入する事態などを抑制することができる。
【0032】
なお、
図5及び
図7においては、自然状態のシール材40を2点鎖線で示してある。シール材40は、自然状態では、例えば、断面視略方形状をなしており、幅に対して厚さが大きいものとされる。
【0033】
フランジ部30の対向面30Aには、クリップ座50(第1クリップ座)が設けられている。クリップ座50は、シール材40に対して主面部22側(ドアトリム10の内方)に配されている。また、クリップ座50は、ロアボード20のスピーカグリル21とシール材40の間となる箇所に配されている。
【0034】
クリップ座50は、フランジ部30と一体的に成形されている。クリップ座50は、
図5に示すように、対向面30Aからドアパネル15側に立ち上がる立壁部51と、立壁部51の先端からシール材40と反対側に延びる座面部52とを有している。
【0035】
また、クリップ座50は、
図4に示すように、主面部22の裏面から立設する脚部53を備えている。座面部52の一部は、脚部53を介して主面部22の裏面と連結されている。
【0036】
座面部52は、
図5に示すように、ドアパネル15の延設方向に沿って立壁部51から延びている。つまり、座面部52は、ドアパネル15に対向するように延びている。座面部52には、
図3に示すように、クリップ70を保持可能な保持孔52Aが形成されている。また、座面部52には、保持孔52Aの周縁部の一部を切り欠くことによりクリップ70(後述する軸部71)を保持孔52A内に進入させるための進入孔52Bが形成されている。
【0037】
クリップ70は、弾性変形可能な材質で形成され、
図5に示すように、保持孔52Aに装着される略円筒状をなす軸部71と、ドアパネル15に貫通形成された取付孔15Aに対して挿入される挿入部72と、を有している。
【0038】
軸部71は、例えば、保持孔52Aに挿通可能な構成とされる。軸部71の両端には、座面部52を表裏両側(車室内外方向)から挟む一対の保持片71A,71Bが形成されている。
【0039】
保持片71A,71Bは、例えば略環状をなし、軸部71が保持孔52Aに挿通された状態では、各保持片71A,71Bが、座面部52における保持孔52Aの孔縁部の表裏各面にそれぞれ係止する構成となっている。これにより、クリップ70は座面部52の延設方向と交差する方向に保持される。
【0040】
挿入部72は、ドアパネル15に向かうにつれて先細りする形状をなしている。挿入部72は、ドアパネル15に貫通形成された取付孔15Aに対して縮径変形しつつ挿入可能とされ、取付孔15Aに貫通された状態で弾性復帰することで、取付孔15Aの孔縁に対して車室外側から係止する構成となっている。
【0041】
このように、クリップ70が、クリップ座50及びドアパネル15の双方に装着されることで、ドアパネル15に対してドアトリム10がクリップ70を介して取り付けられる。なお、クリップ70には、取付孔15Aと挿入部72との隙間を塞ぐ目的で塞ぎ片73が設けられている。
【0042】
なお、ドアパネル15においてクリップ70が取り付けられる箇所は、
図5に示すように、ドアトリム10側に膨出された膨出部15Bとされる。つまり、上述した取付孔15Aは、膨出部15Bを板厚方向に貫通することで形成されている。
【0043】
膨出部15Bの膨出端部は、座面部52と平行状に対向配置されている。これにより、取付孔15Aの貫通方向とクリップ70の挿入方向とを一致させることができ、クリップ70を取付孔15Aに対して容易に挿入させることができる。
【0044】
ロアボード20の対向面30Aにおいて、クリップ座50とシール材40との間には、突出リブ55が形成されている。突出リブ55(突出部)は、対向面30Aから、ドアパネル15側に突出されている。なお、本実施形態では、
図3及び
図4に示すように、2つの突出リブ55がシール材40の延設方向に沿って配列されている。
【0045】
突出リブ55は、
図4及び
図5に示すように、座面部52側の端部において、立壁部51及び座面部52と一体的に連結されている。突出リブ55のシール材40側の側面55Aは、シール材40におけるロアボード20内側の側面41と当接されている。なお、
図3に示すように、突出リブ55の配置箇所においては、シール材40は、突出リブ55を避けるように外側へ膨出されている。
【0046】
図5に示すように、突出リブ55のシール材40側の端部における対向面30Aからの突出高さH2は、突出リブ55のクリップ座50側の端部における対向面30Aからの突出高さH3よりも高いものとされる。
【0047】
より具体的には、突出リブ55は、対向面30Aからの突出高さが座面部52側からシール材40に近づくにつれて次第に大きくなる形状をなしており、突出リブ55の突出端面55B(ドアパネル15側の端面)は、湾曲形状をなしている。また、突出端面55Bの湾曲形状は、ドアパネル15の膨出部15Bの形状に倣った形状とされる。言い換えると、突出端面55Bと、ドアパネル15における突出端面55Bとの対向面15Dとは互いに平行状をなしている。
【0048】
なお、突出端面55Bは、クリップ座50側の端部において、座面部52の座面52D(座面部における車室外側の面)と面一をなしており、シール材40に近づくにつれてドアパネル15側に向かう形で湾曲されている。つまり、突出リブ55のシール材40側の端部における突出高さH2は、クリップ座50の座面52Dの高さH3よりも大きいものとされる。
【0049】
また、突出リブ55の突出方向における自然状態のシール材40の長さ(シール材40の厚さ)をシール材高さH1(
図5参照)と定義し、突出リブ55のシール材40側の端部における対向面30Aからの突出高さをシール材側突出高さH2(
図5参照)と定義した場合において、シール材高さH1は、シール材側突出高さH2よりも大きい値で設定されている。
【0050】
また、シール材側突出高さH2は、シール材高さH1から、シール材側突出高さH2を引いた値が、突出リブ55及びクリップ70の配列方向におけるシール材40からクリップ70までの距離W1よりも小さい値となるように設定されている。
【0051】
また、フランジ部30の対向面30Aには、
図2及び
図7に示すように、上述したクリップ座50以外のクリップ座60(第2クリップ座)が、ロアボード20の外周端部に沿って複数個設けられている。クリップ座60は、シール材40に対してドアトリム10の内方となる位置に配されている。具体的には、ロアボード20の外周端部に沿って配列された複数のクリップ座のうち、ロアボード20の角部付近(スピーカグリル21付近)に配されたクリップ座がクリップ座50であり、それ以外のクリップ座がクリップ座60とされる。
【0052】
クリップ座60は、
図7に示すように、対向面30Aからドアパネル15側に立ち上がる立壁部61と、立壁部61の先端からシール材40と反対側に延びる座面部62とを有している。つまり、クリップ座60は、フランジ部30と一体的に成形されている。
【0053】
座面部62は、ドアパネル15の延設方向に沿って立壁部61から延びている。座面部62には、
図7に示すように、クリップ70を保持可能な保持孔62Aが形成されている。また、座面部62には、保持孔62Aの周縁部の一部を切り欠くことによりクリップ70を保持孔62Aに進入させるための進入孔62Bが形成されている。
【0054】
ロアボード20の対向面30Aにおいて、クリップ座60とシール材40との間には、リブ65が形成されている。リブ65は、
図7に示すように、対向面30Aから、ドアパネル15側に突出されている。なお、本実施形態では、
図6に示すように、2つのリブ65がシール材40の延設方向に沿って配列されている。
【0055】
リブ65は、
図7に示すように、座面部62側の端部において、座面部62と一体的に連結されている。リブ65のシール材40側の端面65Aは、シール材40におけるロアボード20内側の側面41と当接されている。
【0056】
リブ65の突出端面65B(ドアパネル15側の面)は、座面部62の座面62Dと面一をなしている。また、リブ65は、対向面30Aからの突出高さが一定となるように設定されている。
【0057】
また、クリップ座50とクリップ座60の構成を比較すると、クリップ座50の座面部52の高さH3(
図5参照)は、クリップ座60の座面部62の高さH4(
図7参照)よりも小さいものとされる。なお、座面部の高さとは、車室内外方向(対向面30Aと直交する方向)における対向面30Aから座面までの長さのことを言う。
【0058】
つまり、突出リブ55は、ロアボード20の外周端部に沿って複数個配列された複数のクリップ座(クリップ座50及び各クリップ座60)のうち、対向面30Aから座面部(より具体的には、座面部の座面)までの距離(H3又はH4)が最も小さいクリップ座(クリップ座50)に連結されている。
【0059】
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、フランジ部30の対向面30Aにシール材40を貼り付けた状態で、ドアトリム10(トリムボード11)をドアパネル15に対して取り付ける。この取付過程では、自然状態のシール材40がドアパネル10によって車室外側から押圧される。これにより、押圧されたシール材40がクリップ座50側へ倒れようとする場合がある。なお、
図5においては、クリップ座50側へ倒れようとするシール材40の動きを矢線Fで示してある。
【0060】
本実施形態では、シール材40とクリップ座50との間に突出リブ55が形成されている。このような構成とすれば、ドアパネル10に対してトリムボード11を取り付ける際に、自然状態のシール材40がクリップ座50側に倒れようとした場合であっても、シール材40とクリップ座50との間に配された突出リブ55の側面55Aによってシール材40を受けることができ、シール材40が倒れる事態を防止することができる。これにより、クリップ座50をシール材40に対して、より近付けて配置することができる。この結果、クリップ座50をドアトリム10の外周端部に対して、より近付けて配置することが可能となる。
【0061】
また、突出リブ55(シール材40の倒れを規制するリブ)の突出高さは、シール材40側の端部においては、クリップ座50側の端部に比して高く設定されている。このため、突出リブ55によって、より確実にシール材40を受けることができる。これに対して、突出リブ55の突出高さは、クリップ座50側の端部においては、比較的低く設定されており、ドアパネル15との隙間をより多く確保することができる。このため、突出リブ55とドアパネル15とが干渉する事態を抑制することができる。
【0062】
言い換えると、本実施形態の突出リブ55は、シール材40を受ける箇所(シール材側の端部)の突出高さを確保しつつ、それ以外の箇所では、突出高さを極力低くすることでドアパネル15との干渉を抑制する構成となっている。
【0063】
本実施形態において、シール材40を確実に受けるためには、突出リブ55の突出高さが大きい方が好ましい。しかしながら、突出リブ55を高くし過ぎると、ドアパネル15と突出リブ55とが干渉する可能性がある。
【0064】
このため、本実施形態では、突出リブ55は、対向面30Aからの突出高さが座面部52側からシール材40に近づくにつれて次第に大きくなる形状をなしており、突出リブ55の突出端面55Bが、ドアパネル15の膨出部15Bの形状に倣った湾曲形状をなすようにしてある。これにより、突出リブ55とドアパネル15とが干渉する事態を抑制しつつ、突出リブ55におけるシール材40側の突出高さをより高くすることができる。
【0065】
また、本実施形態では、フランジ部30及び対向面30Aは、ロアボード20の外周端部に沿って延びており、ロアボード20におけるドアパネル15側の面には、複数のクリップ座(クリップ座50及び各クリップ座60)がロアボード20の外周端部に沿って配列され、突出リブ55は、複数のクリップ座のうち、対向面30Aから座面部の座面(座面52D又は座面62D)までの距離が最も小さいクリップ座(クリップ座50)に連結されている。
【0066】
一般的に、ドアパネル15は、全面に亘って平坦な形状でなく、ある程度の凹凸(例えば、
図5に示す膨出部15Bなど)を有する形状をなしている。このため、本実施形態のように複数のクリップ座(クリップ座50及び各クリップ座60)を備えている構成においては、各クリップ座の座面の高さをドアパネル15の形状に合わせて、それぞれ変える必要がある。
【0067】
具体的には、例えば、ドアパネル15が車室内側(ロアボード20側)に接近している箇所(対向面30Aとドアパネル15との隙間が小さい箇所)に設けられるクリップ座(クリップ座50)では、座面部52の高さ(対向面から座面部における車両パネル側の面までの距離)を小さくし、座面部52とドアパネル15(膨出部15B)とが干渉しないようにする必要がある。
【0068】
言い換えると、ロアボード20において、座面部の高さが最も小さいクリップ座50が形成されている箇所では、ドアパネル15が他の部分よりもロアボード20に接近しており、ドアパネル15とロアボード20側の部品との干渉について留意する必要がある。本実施形態では、このような箇所に設けられたクリップ座50に対応して突出リブ55を設けてある。上述のように、本実施形態の突出リブ55は、ドアパネル15と干渉し難い構成となっている。このため、ドアパネル15が車室内側に接近している箇所に突出リブ55を設けた場合であってもドアパネル15との干渉を留意する必要性が低く、設計上の制約を受けにくいため好適である。
【0069】
また、本実施形態では、クリップ座50以外のクリップ座(クリップ座60)には、シール材40の倒れを規制するためのリブ65が形成されている。ここで、
図7に示すように、対向面30Aを基準した場合において、リブ65の突出高さH4は、クリップ座60の座面部62の高さと同じ値で設定されている。
【0070】
ここで、
図5及び
図7に示すように、クリップ座50の形成箇所における対向面30Aとドアパネル15との対向間隔は、クリップ座60の形成箇所における対向面30Aとドアパネル15との対向間隔と比べて小さくなっている。言い換えると、クリップ座50の形成箇所においては、クリップ座60の形成箇所に比べて、ドアパネル15がロアボード20側に接近して配されている。このため、座面部とドアパネル15との干渉を避けるために、対向面30Aを基準した座面52Dの高さは、座面62Dの高さに比べて小さくなっている。
【0071】
このため、仮に、突出リブ55の突出高さを座面52Dと同じ高さ(
図5のH3)で設定した場合、突出リブ55の高さが小さくなってしまいシール材40を受ける(シール材40の倒れを規制する)ことが困難となる。そこで、本実施形態の突出リブ55は、シール材40側に向かうにつれて突出高さが高くなるようにし、シール材40側の端部(シール材40を受ける部分)の突出高さを確保することとしている。
【0072】
また、本実施形態では、シール材高さH1は、突出リブ55のシール材側突出高さH2よりも大きい値で設定され、シール材側突出高さH2は、シール材高さH1から当該シール材側突出高さH2を引いた値が、突出リブ55及びクリップ70の配列方向(ドアトリム10の内外方向)におけるシール材40からクリップ70までの距離W1よりも小さい値となるように設定されている。
【0073】
シール材高さH1が、シール材側突出高さH2よりも大きい値で設定されている場合において、クリップ70側に倒れようとするシール材40を突出リブ55によって受けた場合には、シール材40の一部(シール材40の突出端側の部分、
図5においてM1で示す部分)が突出リブ55の突出端P1を乗り越えてクリップ70側に屈曲変形することが考えられる。例えば、シール材40は、
図5に示す突出リブ55の突出端P1を基点としてクリップ70側に屈曲される。このため、本実施形態では、シール材高さH1からシール材側突出高さH2を引いた値が、シール材40からクリップ70までの距離W1よりも小さい値となるように設定されている。
【0074】
シール材高さH1からシール材側突出高さH2を引いた値、つまり、シール材40において突出リブ55を乗り越える可能性がある部分(
図5においてM1で示す部分)の長さを、シール材40からクリップ70までの距離W1より小さくすることで、仮にシール材40の一部が突出リブ55を乗り越えてクリップ70側に屈曲変形した場合であっても、シール材40がクリップ70に達する事態を抑制することができる。これにより、シール材40とクリップ70とが干渉する事態をより確実に抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、2つの突出リブ55及び複数のリブ65を備えている。これにより、作業者がシール材40を対向面30A上に貼り付ける際には、2つの突出リブ55及び複数のリブ65にシール材40の側面41を当接させるようにシール材40を配置することで、シール材40の位置決めを容易に行うことができる。
【0076】
また、本実施形態では、突出リブ55が形成されたクリップ座50は、ロアボード20において、他のクリップ座60よりもスピーカグリル21に比較的近い位置に設けられている。このため、スピーカグリル21付近においてシール材40がクリップ座50に向かって倒れる事態を確実に抑制できる。このため、スピーカが配されるスピーカグリル21付近でのシール材40のシール性を損なうことがなく好適である。
【0077】
また、突出リブ55は、対向面30A及び座面部52に対してそれぞれ一体的に連結されている。これにより、座面部52を、突出リブ55を介して対向面30A(フランジ部30)と連結することができ、座面部52の剛性をより高くすることができる。
【0078】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
(1)上記実施形態では、車両用内装材としてドアトリム10を例示したが、これに限定されない。車両用内装材としては、車両パネルとの間がシール材によってシールされる構成の車両用内装材であれば、適用可能である。車両用内装材として、例えば、ピラーガーニッシュなどを挙げることができる。
【0080】
(2)シール材40の材質及び形状は上記実施形態で例示したものに限定されず適宜変更可能である。
【0081】
(3)上記実施形態では、突出部として、突出リブ55を例示したが、これに限定されない。突出部の形状は、リブ形状に限定されず、例えば、柱状をなしていてもよい。
【0082】
(4)上記実施形態では、シール材40の側面41が突出リブ55の側面55Aに当接している構成を例示したが、これに限定されない。シール材40は、突出リブ55に当接されていなくてもよい。例えば、シール材40は、突出リブ55の側面55Aとの間に隙間を空けて配置されていてもよい。
【0083】
(5)上記実施形態では、トリムボード11が複数のボード材(アッパーボード12、ミドルボード13、ロアボード20)から分割構成されているものを例示したが、これに限定されない。例えば、トリムボード11が一枚のボード材によって構成されていてもよい。
【0084】
(6)クリップ座50及びクリップ座60は、その一部が少なくとも対向面30Aに設けられているものであればよい。例えば、クリップ座50及びクリップ座60は、対向面30Aのみに接続されていてもよく、主面部22と接続されていなくてもよい。