特許第6052036号(P6052036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052036
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】配管接続構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/02 20060101AFI20161219BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20161219BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20161219BHJP
   F16L 17/02 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F16L21/02 E
   F16J15/06 L
   F16J15/10 L
   F16L17/02
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-86036(P2013-86036)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-209015(P2014-209015A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2015年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100115543
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 康男
(72)【発明者】
【氏名】山口 康
(72)【発明者】
【氏名】清水 芳郎
(72)【発明者】
【氏名】大河原 正義
(72)【発明者】
【氏名】西田 憲司
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4185161(JP,B1)
【文献】 特開平06−235485(JP,A)
【文献】 実開昭62−107187(JP,U)
【文献】 実開昭61−128489(JP,U)
【文献】 実開昭60−169493(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/02
F16J 15/06
F16J 15/10
F16L 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄配管と、
前記雄配管の先端部が挿入可能な筒状部を有する雌配管と、
前記雄配管の先端部の外周面に設けられた第1の環状凸部と、
前記雄配管の先端部の外周面に設けられ、前記第1の環状凸部より先端側に位置する第2の環状凸部と、
前記第1の環状凸部と前記第2の環状凸部との間に形成される環状溝部に配置されるシール部材と、
前記第2の環状凸部の先端側と、前記第2の環状凸部の前記シール部材側との間を流体が通過可能な複数の流通部と、
を備え、
前記流通部として、太溝および細溝が前記第2の環状凸部に設けられ、
前記太溝および前記細溝は、前記雄配管の軸方向に沿って前記第2の環状凸部を横断するように形成され、
前記太溝により形成される流通部の流路断面積は、前記細溝により形成される流通部の流路断面積に比べて大きく、
前記太溝により形成される流通部の流路抵抗は、前記細溝により形成される流通部の流路抵抗に比べて小さい配管接続構造。
【請求項2】
雄配管と、
前記雄配管の先端部が挿入可能な筒状部を有する雌配管と、
前記雄配管の先端部の外周面に設けられた第1の環状凸部と、
前記雄配管の先端部の外周面に設けられ、前記第1の環状凸部より先端側に位置する第2の環状凸部と、
前記第1の環状凸部と前記第2の環状凸部との間に形成される環状溝部に配置されるシール部材と、
前記第2の環状凸部の先端側と、前記第2の環状凸部の前記シール部材側との間を流体が通過可能な複数の流通部と、
を備え、
前記流通部として、大径穴および小径穴が前記第2の環状凸部に設けられ、
前記大径穴および前記小径穴は、前記雄配管の軸方向に沿って前記第2の環状凸部を貫通するように形成され、
前記大径穴により形成される流通部の流路断面積は、前記小径穴により形成される流通部の流路断面積に比べて大きく、
前記大径穴により形成される流通部の流路抵抗は、前記小径穴により形成される流通部の流路抵抗に比べて小さい配管接続構造。
【請求項3】
前記太溝および前記細溝は、前記雄配管の中心軸を介して互いに反対側に位置する請求項記載の配管接続構造。
【請求項4】
前記大径穴および前記小径穴は、前記雄配管の中心軸を介して互いに反対側に位置する請求項記載の配管接続構造。
【請求項5】
前記雄配管および前記雌配管の一方または両方の構成材料がステンレス鋼である請求項1乃至4の何れか1項記載の配管接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体シールを伴う配管の接続構造に関し、特にステンレス鋼製の配管の接続に適した配管接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば給湯機などにおいて、流体シールを必要とする配管の接続構造として、以下のような構造がある。すなわち、端部を雄形状に加工してOリングを組み付けた雄配管を、雄配管を外嵌め可能となる寸法を持つ筒状の雌形状に加工した雌配管に嵌め込むことにより、雄配管と雌配管でOリングを適正量圧縮して流体シールを実現しつつ、2本の配管を接続する構造である。雄配管には先端付近に環状凸部を設け、その基端側に一定の間隔を空けて係止円盤を固着し、環状凸部と係止円盤の間にOリングを組み付けることで、雄配管からOリングが脱落することを防止するとともに、Oリングの可動範囲を限定している。また、一般に、給湯機などでは機器の動作に伴い、配管を流れる流体の圧力が変動する。その結果、配管接続部には2本の配管の接続軸方向に引き抜き力が作用するため、雄配管が雌配管から抜け落ちて流体シールが破れ、漏水に至る可能性がある。そのような事態を防止するため、圧力が変動した場合でも、雄配管と雌配管との軸方向の位置関係を一定の範囲に保ち、両配管の嵌合状態を保持する固定具を用いている。この固定具には、スリットが設けられており、配管接続状態では、雄配管の係止円盤に設けたフランジと雌配管の先端に設けたフランジとが、共に、固定具のスリットに挿入された状態にある。従って、圧力変動に伴い両配管に作用する引き抜き力に対し、雄配管と雌配管が共にフランジを介して固定具によって軸方向の位置を拘束されるため、雄配管が雌配管から抜けて流体シールが破れ、漏水に至ることを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−170765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような配管接続構造では、Oリングと雄配管と雌配管とで囲まれる隙間が形成される。また、雄配管の先端には、Oリングの脱落を防止するための環状凸部が形成されている。このため、上記の隙間は、Oリングと、雄配管の外周面と、雌配管の内周面と、環状凸部とで形成される閉空間に近い状態になる。その結果、上記の隙間は、配管内を流れる流体の主流部から隔離され、淀みが形成され易い。雄配管または雌配管の材質がステンレス鋼の場合、配管内を流れる水に含まれる塩化物イオンによるステンレス鋼の耐食性皮膜の破壊に加え、上記の隙間に生じた淀みと配管内を流れる流体の主流部との間における溶存酸素の濃度差を起因とした腐食電池が形成され、上記の隙間に隙間腐食が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、隙間腐食の発生を抑制することのできる配管接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る配管接続構造は、雄配管と、雄配管の先端部が挿入可能な筒状部を有する雌配管と、雄配管の先端部の外周面に設けられた第1の環状凸部と、雄配管の先端部の外周面に設けられ、第1の環状凸部より先端側に位置する第2の環状凸部と、第1の環状凸部と第2の環状凸部との間に形成される環状溝部に配置されるシール部材と、第2の環状凸部の先端側と、第2の環状凸部のシール部材側との間を流体が通過可能な複数の流通部と、を備え、流通部として、太溝および細溝が第2の環状凸部に設けられ、太溝および細溝は、雄配管の軸方向に沿って第2の環状凸部を横断するように形成され、太溝により形成される流通部の流路断面積は、細溝により形成される流通部の流路断面積に比べて大きく、太溝により形成される流通部の流路抵抗は、細溝により形成される流通部の流路抵抗に比べて小さいものである。
また、本発明に係る配管接続構造は、雄配管と、雄配管の先端部が挿入可能な筒状部を有する雌配管と、雄配管の先端部の外周面に設けられた第1の環状凸部と、雄配管の先端部の外周面に設けられ、第1の環状凸部より先端側に位置する第2の環状凸部と、第1の環状凸部と第2の環状凸部との間に形成される環状溝部に配置されるシール部材と、第2の環状凸部の先端側と、第2の環状凸部のシール部材側との間を流体が通過可能な複数の流通部と、を備え、流通部として、大径穴および小径穴が第2の環状凸部に設けられ、大径穴および小径穴は、雄配管の軸方向に沿って第2の環状凸部を貫通するように形成され、大径穴により形成される流通部の流路断面積は、小径穴により形成される流通部の流路断面積に比べて大きく、大径穴により形成される流通部の流路抵抗は、小径穴により形成される流通部の流路抵抗に比べて小さいものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、配管接続構造における隙間腐食の発生を確実に抑制することが可能になり、配管接続構造の流体シールの信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1の配管接続構造を示す縦断面図である。
図2図1に示す配管接続構造におけるOリング付近を拡大した断面図である。
図3図1に示す配管接続構造における雄配管の先端面を示す正面図である。
図4図3中のA−A線断面図である。
図5】本発明の実施の形態2の配管接続構造における雄配管の先端面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の配管接続構造を示す縦断面図である。図2は、図1に示す配管接続構造におけるOリング付近を拡大した断面図である。図3は、図1に示す配管接続構造における雄配管の先端面を示す正面図である。図4は、図3中のA−A線断面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態1の配管接続構造10は、例えば水などの流体(液体)が流れる雄配管1と雌配管2とを接続する構造である。本実施の形態1の配管接続構造10は、例えば給湯機などの各種の機器において用いることが可能である。雌配管2の端部には、円筒状の内周面を有する筒状部21が設けられている。筒状部21の内径は、雌配管2の本体23の内径に比べて、大きくなっている。筒状部21内に、雄配管1の先端部が挿入可能になっている。筒状部21は、雌配管2の本体23を構成する管体(素管)の端部を、雄配管1が挿入可能な寸法になるように、塑性加工することにより形成されている。筒状部21の開放端には、外周側に突出するフランジ22が形成されている。
【0012】
雄配管1の先端部の外周面には、外周側に向かって環状に突出する第1の環状凸部11および第2の環状凸部12が設けられている。第2の環状凸部12は、第1の環状凸部11に対し、先端側に、間隔をあけて位置している。本実施の形態1では、第2の環状凸部12は、雄配管1の最先端部に形成されている。第1の環状凸部11と、第2の環状凸部12との間に形成される環状の溝部には、シール部材としてのOリング3が配置されている。雄配管1と雌配管2とを接続した状態では、Oリング3が、雄配管1の外周面と雌配管2の筒状部21の内周面との間で適正量圧縮されることにより、雄配管1の外周面と雌配管2の筒状部21の内周面との間を密着して封止する。これにより、雄配管1と雌配管2との間の液密性、すなわち流体シールが実現され、流体の漏れが防止される。
【0013】
第1の環状凸部11が設けられていることにより、Oリング3が雄配管1の基端側に移動することを確実に防止することができる。また、第2の環状凸部12が設けられていることにより、Oリング3が雄配管1の先端部から脱落することを確実に防止することができる。すなわち、Oリング3は、第1の環状凸部11および第2の環状凸部12により、配管の軸方向の可動範囲を限定され、適切な位置に拘束される。第1の環状凸部11の外径、および、第2の環状凸部12の外径は、雌配管2の筒状部21の内径とほぼ等しくなっている。これにより、雄配管1の中心軸と、雌配管2の中心軸とのずれを確実に防止することができる。その結果、Oリング3の圧縮量が全周に渡り均一な適正量になり、Oリング3による液密性を確実に保持することができる。
【0014】
本実施の形態1では、第1の環状凸部11は、雄配管1の本体13の外側に環状の部材を固定することによって形成されている。第1の環状凸部11を構成する環状部材の内周面には、環状凹部が形成され、この環状凹部と、雄配管1の本体13を塑性加工することにより形成された突起14とが嵌合することにより、この環状部材が固定されている。流体は、Oリング3により封止されるので、第1の環状凸部11を構成する環状部材の内周面と、突起14との隙間に流体が入ることはなく、この隙間で隙間腐食が発生することはない。ただし、本発明では、このような構成に限らず、雄配管1の本体13を塑性加工することによって第1の環状凸部11自体を形成しても良い。一方、第2の環状凸部12は、それ自体が、雄配管1の本体13の最先端部を塑性加工することにより形成されている。
【0015】
雄配管1は、第1の環状凸部11の基端側で、軸方向に移動可能な可動円盤15を更に備えている。可動円盤15は、雄配管1の本体13の外径より僅かに大きい穴を有しており、この穴に本体13が挿入している。可動円盤15の外径は、フランジ22の外径にほぼ等しくなっている。
【0016】
一般的に、配管を流れる流体の圧力は変動するため、配管接続構造10には、雄配管1および雌配管2の軸方向に引き抜き力が作用する。この引き抜き力により、雄配管1が雌配管2から抜け、流体シールが破れ、漏水に至る可能性がある。そのような事態を防止するため、本実施の形態1の配管接続構造10は、雄配管1と雌配管2の軸方向の位置関係を一定の範囲に保つ固定具5を備えている。固定具5には、可動円盤15の厚さと、フランジ22の厚さとの合計値よりも僅かに大きな幅のスリット51が形成されている。雄配管1と雌配管2とを接続する際には、雄配管1の先端部を雌配管2の筒状部21内に嵌め込んだ後、可動円盤15およびフランジ22がスリット51に挿入するように、固定具5が装着される。このような固定具5により、圧力変動に伴い雄配管1と雌配管2とに作用する引き抜き力に対し、雄配管1および雌配管2が可動円盤15およびフランジ22を介して軸方向の位置を拘束される。このため、雄配管1が雌配管2から抜けて流体シールが破れて漏水に至ることを確実に防止することができる。
【0017】
図2に示すように、配管接続構造10には、雄配管1の第2の環状凸部12と、Oリング3と、雌配管2の筒状部21の内周面とに囲まれる隙間4が形成される。この隙間4には、雄配管1および雌配管2内を流れる流体が侵入する。この隙間4に侵入した流体が淀むと、隙間腐食の原因となる。この隙間腐食の発生を抑制するため、配管接続構造10では、第2の環状凸部12の先端側と、第2の環状凸部12のOリング3側(基端側)との間を流体が通過可能とする複数の流通部を設けるとともに、各々の流通部を流体が流れるときの流路抵抗が互いに異なるように構成している。
【0018】
図3に示すように、本実施の形態1では、上記流通部として、太溝12aおよび細溝12bが第2の環状凸部12に設けられている。太溝12aおよび細溝12bは、雄配管1の軸方向(長手方向)に沿って、第2の環状凸部12を横断するように形成されている。太溝12aの幅は、細溝12bの幅に比べて大きくなっている。すなわち、太溝12aにより形成される流通部の流路断面積は、細溝12bにより形成される流通部の流路断面積に比べて大きくなっている。このため、太溝12aにより形成される流通部の流路抵抗は、細溝12bにより形成される流通部の流路抵抗に比べて小さい。また、太溝12aと細溝12bとは、雄配管1の中心軸を介して、互いに反対側に位置している。なお、図3では、太溝12aおよび細溝12bの形状を分かり易くするため、第1の環状凸部11およびOリング3の図示を省略している。
【0019】
図4に示すように、雄配管1および雌配管2内を流れる流体は、太溝12aおよび細溝12bを通って、隙間4に容易に出入りすることが可能である。そして、太溝12aの流路抵抗と、細溝12bの流路抵抗とが異なることにより、流体が太溝12aを通るときに発生する圧力損失の大きさと、流体が細溝12bを通るときに発生する圧力損失の大きさとが異なる。この圧力損失の差により、流体は、太溝12aを通って隙間4に流入し、細溝12bを通って隙間4から流出する。このため、隙間4内の流体の淀みが確実に解消される。その結果、隙間腐食の発生を確実に抑制することが可能になり、配管接続構造10における流体シールの信頼性が向上する。また、本実施の形態1では、流通部を太溝12aおよび細溝12bにより構成したことにより、簡単な加工で流通部を形成することができ、製造が容易となる。
【0020】
また、本実施の形態1では、一対の流通部である太溝12aおよび細溝12bを、雄配管1の中心軸を介して互いに反対側に配置したことにより、次のような効果が得られる。太溝12aと、細溝12bとは、環状に形成される隙間4の中心に対し、180°異なる箇所に位置する。したがって、太溝12aから隙間4を通って細溝12bに至る経路は、隙間4を半周ずつ通る二つの経路に分かれる。このため、太溝12aから隙間4に流入した流体は、この二つの経路に均等に分かれ、隙間4を半周ずつ通って細溝12bに至り、隙間4から排出される。これにより、隙間4の全周に渡って均一に流体が流れるため、隙間4内の流体の淀みがより確実に解消され、隙間腐食の発生をより確実に抑制することが可能になる。
【0021】
また、本実施の形態1では、太溝12aおよび細溝12bが雄配管1の軸方向(長手方向)に沿って形成されているため、太溝12aおよび細溝12bにより形成される流通部は、雄配管1の軸方向(長手方向)に対向するように開口する。すなわち、太溝12aおよび細溝12bにより形成される流通部は、雄配管1および雌配管2内の流体の主流部の流れ方向に対向するように開口する。これにより、本実施の形態1では、雄配管1および雌配管2内を流れる流体が、太溝12aおよび細溝12bにより形成される流通部に出入りし易い。このため、隙間4内の流体の流通量を大きくすることができるので、隙間4内の流体の淀みがより確実に解消され、隙間腐食の発生をより確実に抑制することが可能になる。なお、本発明では、複数の流通部のうちの少なくとも一つが、雄配管1の軸方向(長手方向)に対向するように開口していることが好ましい。これにより、上記と同様の効果が得られる。
【0022】
本実施の形態1では、雄配管1および雌配管2は、共に、ステンレス鋼を主材料として構成されている。ステンレス鋼は、配管材料として優れた特性を有しているが、流路内に形成される隙間に流体(水)が淀むと、水に含まれる塩化物イオンによりステンレス鋼の耐食性皮膜が破壊され、隙間腐食の原因となる。これに対し、本実施の形態1の配管接続構造10によれば、雄配管1および雌配管2をステンレス鋼で構成しても、隙間4に流体が淀むことがないので、隙間腐食の発生を確実に抑制することができる。このため、隙間腐食を発生させることなく、ステンレス鋼の優れた特性を生かすことができる。
【0023】
なお、本発明では、雄配管1および雌配管2の構成材料はステンレス鋼に限定されるものではないが、雄配管1および雌配管2の少なくとも一方をステンレス鋼で構成することが望ましい。これにより、配管材料として優れたステンレス鋼の特性を生かすことができる。なお、ステンレス鋼以外の材料としては、例えば、銅、樹脂などを用いても良い。例えば、雄配管1を、太溝12aおよび細溝12bを形成した第2の環状凸部12を含めて、樹脂成形等で形成しても良い。また、本実施の形態1では、雄配管1の本体13を塑性加工することで第2の環状凸部12を形成しているが、太溝12aおよび細溝12bを形成した環状の別部品をカシメまたはろう付等により固定することで第2の環状凸部12を形成しても良い。
【0024】
なお、本実施の形態1では、雄配管1の中心軸を介して互いに反対側に位置する一対の流通部(太溝12aおよび細溝12b)を設けているが、本発明における流通部の配置はこれに限定されるものではなく、また、流通部を3個以上設けても良い。また、雄配管1の中心軸を介して互いに反対側に位置する2対以上の流通部を設け、対となる二つの流通部のうちの、一方の流通部を通って流体が隙間4に流入し、他方の流通部を通って隙間4から流出するように構成しても良い。
【0025】
実施の形態2.
次に、図5を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0026】
図5は、本発明の実施の形態2の配管接続構造10における雄配管1の先端面を示す正面図である。図5に示すように、本実施の形態2では、雄配管1の第2の環状凸部12に、実施の形態1の太溝12aおよび細溝12bに代えて、大径穴12cおよび小径穴12dが形成されている。本実施の形態2では、この大径穴12cおよび小径穴12dにより、流通部が構成される。大径穴12cおよび小径穴12dは、雄配管1の軸方向(長手方向)に沿って、第2の環状凸部12を貫通するように形成されている。大径穴12cの内径は、小径穴12dの内径に比べて大きくなっている。すなわち、大径穴12cにより形成される流通部の流路断面積は、小径穴12dにより形成される流通部の流路断面積に比べて大きくなっている。このため、大径穴12cにより形成される流通部の流路抵抗は、小径穴12dにより形成される流通部の流路抵抗に比べて小さい。また、大径穴12cと小径穴12dとは、雄配管1の中心軸を介して、互いに反対側に位置している。
【0027】
本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様にして、隙間4内の流体の淀みが確実に解消され、隙間腐食の発生を確実に抑制する効果が得られる。また、本実施の形態2では、流通部を大径穴12cおよび小径穴12dにより構成したことにより、簡単な加工で流通部を形成することができ、製造が容易となる。なお、本発明では、複数の流通部に、第2の環状凸部12を貫通する穴で構成される流通部と、第2の環状凸部12を横断する溝で構成される流通部との双方が含まれていても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 雄配管、2 雌配管、3 Oリング、4 隙間、5 固定具、10 配管接続構造、11 第1の環状凸部、12 第2の環状凸部、12a 太溝、12b 細溝、12c 大径穴、12d 小径穴、13 本体、14 突起、15 可動円盤、21 筒状部、22 フランジ、23 本体、51 スリット
図1
図2
図3
図4
図5