(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸水性樹脂が、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、変性アクリル系架橋重合体、およびポリエーテル化合物から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載のゴム組成物金属積層体。
前記ジエン系重合体が、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)から選択される少なくとも1種を含む請求項1から4のいずれか一に記載のゴム組成物金属積層体。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態および実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態および実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態および実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせても良いし、適宜選択して用いてもよい。
【0023】
[ゴム組成物]
以下、本実施形態に係るゴム組成物について説明する。本実施形態に係るゴム組成物は、ブラスめっきワイヤ補強層と接着するゴム組成物であって、硫黄加硫可能なジエン系重合体100質量部に対し、1.0質量部以上15質量部以下の水と、0.5質量部以上10質量部以下の吸水性樹脂とを配合してなる。以下、ゴム組成物を構成する各成分について説明する。
【0024】
<ジエン系重合体>
硫黄加硫可能なジエン系重合体は、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)から選択される1種または2種以上の重合体である。
【0025】
ここで硫黄加硫可能とは、硫黄を媒介として架橋構造が形成される性質を意味する。硫黄は加硫剤により提供されるが、加硫剤については後述する。
【0026】
本実施形態に係るゴム組成物は、上記硫黄加硫可能なジエン系重合体をゴム組成物全体に対して20質量%以上、70質量%以下含有することが好ましい。この範囲において、良好なゴム混合加工性やゴム外観を得ることができる。
【0027】
<水>
水は、水道水であっても、蒸留水、イオン交換水、濾過水などの精製水であってもよい。また、フィラー(例えば、カーボンブラック)に吸着した水分であってもよい。水の配合量はジエン系重合体100質量部に対し、1.0質量部以上15質量部以下、より好ましくは3.0質量部以上11質量部以下である。この範囲において、後述する吸水性樹脂と共に組成物中に配合されることによって、長期保管時においても加硫時まで適度の水分を組成物中に安定に保持することができ、水分蒸発が大きなオーブン加硫方式による連続生産によるホース生産においてもゴム層と補強層との接着性を良好に保つことができる。
【0028】
<吸水性樹脂>
吸水性樹脂は、ゴム組成物(コンパウンド)中に水を安定に保持する機能を有する。一般的に、吸水性樹脂とは、樹脂1gあたり10g以上の吸水量を呈するものをいう。例えば、吸水性樹脂は親水性が高く、ポア(孔)の中に水を取り込める三次元網目構造を持つ多孔質材料であることが好ましい。具体的には、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、変性アクリル系架橋重合体、ポリエーテル化合物等を挙げることができる。吸水性樹脂は上記化合物群から少なくとも1種を選択することが好ましい。また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物としては、例えば、商品名「アクアリックCA」、アクリアック、日本触媒社製等を挙げることができる。
【0030】
変性アクリル系架橋重合体としては、例えば、商品名「アクアリックCS」、日本触媒社製等を挙げることができる。
【0031】
ポリエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0032】
吸水性樹脂の配合量はジエン系重合体100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下、より好ましくは3.0質量部以上6質量部以下である。この範囲において、前述した水と共に組成物中に配合されることによって、長期保管時においても加硫時まで適度の水分を組成物中に安定に保持することができ、水分蒸発が大きなオーブン加硫方式による連続生産によるホース生産においてもゴム層と補強層との接着性を良好に保つことができる。なお、吸水性樹脂の配合量が多すぎると、その吸水性の高さに起因してゴム外観が悪くなるので、上記範囲において使用することが好ましい。
【0033】
<加硫剤>
ゴム組成物は、硫黄の存在下で加硫されることが好ましく、含硫黄加硫剤を更に配合してなることが好ましい。含硫黄加硫剤としては、例えば、硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイドなどの有機含硫黄化合物を挙げることができる。硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等を挙げることができる。
【0034】
加硫剤として、更に以下の非硫黄系加硫剤を配合していてもよい。非硫黄系加硫剤としては、例えば、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤を挙げることができる。
【0035】
有機過酸化物系の加硫剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等を挙げることができる。
【0036】
その他の加硫剤としては、例えば、亜鉛華、酸化マグネシウム、フェノール樹脂などの樹脂、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリン等を挙げることができる。
【0037】
本発明のゴム組成物は、更に、加硫促進剤を含有するのが好ましい。加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド-アンモニア系加硫促進剤、アルデヒド-アミン系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、キサントゲン酸塩系加硫促進剤が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
[その他添加剤]
また、ゴム組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、充填材、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、有機系活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、架橋促進助剤、加硫遅延剤、接着助剤を挙げることができる。
【0039】
充填材は、例えば、カーボンブラック、シリカ(ホワイトカーボン)、クレー、タルク、酸化鉄、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、硫酸バリウム、マイカ(雲母)、ケイソウ土などを挙げることができる。これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。カーボンブラックとしては、用途に応じて適宜選択して使用することができ、好適な一形態においては、例えば、ISAFやFEF等を使用することができる。シリカは、特に限定されないが、例えば、結晶性シリカ、沈殿シリカ、非晶質シリカ(例えば、高温処理シリカ)、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカが挙げられる。特に、シリカは、カーボンブラックと同様に、カーボンゲル(バウンドラバー)を生成することが知られており、必要に応じて好適に用いることができる。クレーは、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー等が挙げられる。
【0040】
可塑剤は、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、コハク酸イソデシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、トリメリット酸エステル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、ナフテンオイルなどを挙げることができる。これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0041】
軟化剤としては、具体的には、例えば、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、石油樹脂、植物油、液状ゴム等が挙げられ、これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0042】
老化防止剤としては、例えば、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N,N′−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、スチレン化フェノール(SP)、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物(RD)等が挙げられ、これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0043】
有機系活性剤としては、具体的には、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸亜鉛等が挙げられ、これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0044】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)を挙げることができる。
【0045】
帯電防止剤は、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物を挙げることができる。
【0046】
難燃剤は、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルを挙げることができる。また、非ハロゲン系難燃剤として、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、トリクレジル・ホスフェート、ジフェニルクレジル・ホスフェートを挙げることができる。
【0047】
架橋促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができる。例えば、亜鉛華;ステアリン酸、オレイン酸、これらのZn塩を用いることができる。
【0048】
加硫遅延剤としては、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸などの有機酸;N−ニトロソ−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−フェニルーβ−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチルージヒドロキノリンの重合体などのニトロソ化合物;トリクロルメラニンなどのハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(PVI)等を挙げることができる。これらを一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0049】
接着助剤は、トリアジンチオール系化合物(例えば、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、6−ブチルアミノ−2,4−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン)、レゾルシン、クレゾール、レゾルシン−ホルマリンラテックス、モノメチロールメラミン、モノメチロール尿素、エチレンマレイミ、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、ドデカン酸コバルトなどが例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0050】
上述した各種添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0051】
<ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、ジエン系重合体と、水と、吸水性樹脂とを、必要に応じて加硫剤やその他の添加剤とともに配合させることにより製造することができる。例えば、上記ジエン系重合体と、水と吸水性樹脂と、必要に応じて加硫剤およびその他添加剤とを、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練することにより製造できる。
【0052】
[ゴム組成物金属積層体]
本実施形態における、ゴム組成物金属積層体は、上記ゴム組成物と表面を金属めっきしたワイヤ補強層との積層体として構成される。
図1にゴム組成物金属積層体をホースとして具現した場合の基本構造を示す。
図1に示すように、ホース1は、その内部を流体が通過する内側ゴム層2と、内側ゴム層2の外側周囲に設けられる補強層3と、補強層3の外側周囲に設けられる外側ゴム層4とを有している。内側ゴム層2および外側ゴム層4のいずれか一方または両方は上記本実施形態に係る組成物で構成されたゴム層であり、補強層3は鋼線材が編みこまれたワイヤブレードであり、ワイヤの表面がブラスめっきされている。補強層3は内側ゴム層2と外側ゴム層4との間に挟みこまれるように配設されており、ゴム層2および4の加硫により内側ゴム層2、補強層3、および外側ゴム層4が接着固定される。
【0053】
<ゴム層>
内側ゴム層2および外側ゴム層4のうちいずれか一方、あるいは両方が本実施形態に係るゴム組成物で構成される。ホースの耐候性の観点から、少なくとも外側ゴム層4を本発明のゴム組成物を用いて形成するのが好ましい。
【0054】
本発明においては、上記内側ゴム層2の厚みは、例えば0.2mm以上4.0mm以下であるのが好ましく、0.5mm以上2.0mm以下であるのがより好ましい。同様に、上記外側ゴム層4の厚みは、例えば0.2mm以上4.0mm以下であるのが好ましく、0.5mm以上2.0mm以下であるのがより好ましい。
【0055】
<補強層>
補強層3は、内側ゴム層2と外側ゴム層4との間に、強度保持の観点から設けられる層である。本実施形態においては、補強層3は、鋼線材ワイヤを編み上げたワイヤブレードにより形成される。
【0056】
補強層3は、ワイヤブレードのほか、内側ゴム層2周囲に鋼線材ワイヤをらせん状に巻きつけたスパイラルワイヤとして形成されたものであってもよい。補強層を形成する材料および編み方や織り方あるいは巻き付け方は用途に応じて、例えば耐圧力に応じて、適宜選択することができる。油圧ホース等においては、ワイヤブレードにより補強層を形成することが好ましい。
【0057】
補強層3は、ゴム層との接着性を高めるために、表面が金属めっきされる。金属めっきはピアノ線や硬鋼線に、ブラスコーティングが施される。銅が鋼ワイヤ上にめっきされ、亜鉛が銅の上にめっきされる。熱拡散処理を加えてブラス(真鍮)コーティングを形成させる。
【0058】
[加硫ゴム製品]
上記ゴム組成物と補強層3とのゴム組成物金属積層体は、硫黄含有加硫剤の存在下で架橋すなわち加硫されることによって、ゴム層2、4を形成する分子間が硫黄によって架橋されゴム層2、4に弾性と引っ張り強さが付与されるとともに、補強層3との界面でブラスめっきを構成する金属(銅、亜鉛)と硫黄とが結合しゴム層2、4と補強層3とが接着される。
【0059】
硫黄含有加硫剤はゴム組成物としてのコンパウンドを形成する際に、他の材料とともに配合しておくことが好ましいが、硫黄によりジエン系重合体を形成する分子鎖同士が硫黄により架橋され、ゴム層2、4と補強層3との界面における金属(銅、亜鉛)と硫黄との結合等によりゴム層2、4と補強層3とが接着される限りにおいては、コンパウンド調製時の配合に限定されない。
【0060】
加硫方法としては、硫黄含有加硫剤の存在下でゴム組成物を所定温度で所定時間加熱する方法を採用できる。このとき加硫温度としては130℃以上180℃以下とすることが好ましい。加硫時間としては30分以上240分以下とすることが好ましい。この範囲の温度と時間との組み合わせによって、加硫ゴム製品として所望の物性、例えば弾性、引張強度、外観、ゴム−金属界面の接着性やゴム−金属界面のゴム付きを得ることができる。
【0061】
本実施形態における加硫ゴム製品は、油圧ホース等として好適である。油圧ホース等を製造する方法としては、高圧容器内にゴム組成物金属積層体を封入して蒸気缶内で架橋するスチーム加硫方式と、ゴム組成物金属積層体をナイロン布等で包囲したものを熱風乾燥炉内で加硫するオーブン加硫方式とを例示することができる。典型的にスチーム加硫方式はバッチ式処理であり、オーブン加硫方式は連続式処理である。ホース製造においては連続式処理であるオーブン加硫方式を採用することが好ましい。
【0062】
[加硫ゴム製品の製造方法]
以下に、本実施形態に係る加硫ゴム製品を製造する方法について説明する。ここでは加硫ゴム製品として油圧ホースを製造する場合を例にとって説明する。
図1は、本実施形態に係る油圧ホースの一例を示す一部破断斜視図である。
図2は、油圧ホースの製造装置の一例を示す工程図である。
【0063】
<油圧ホースの製造>
この油圧ホース1は、
図1に示すように、内側ゴム層2の外周面に補強層3と外側ゴム層4とを順に積層した構造を有している。なお、図示の例では補強層3を一層としているが、層間に中間ゴム層が配置された複数の補強層3を設けるようにしてもよい。また内側ゴム層2および外側ゴム層4の少なくとも一方、好ましくは外側ゴム層4は、本発明のゴム組成物で形成される。また内側ゴム層2には、耐油性に優れたアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を主成分とするゴム組成物を用いることが好ましい。
【0064】
本実施形態に係る油圧ホースの製造方法を、
図2および
図3を参照して以下に説明する。
【0065】
<ホース製造工程>
ゴムホースは一般に、
図2に示すマンドレル6の外周面に内側ゴム層2を形成するゴム材の押出し工程(ステップS101)、補強層3の編上げ工程(ステップS102)、外面ゴム層4の押出し・加硫工程(ステップS103)、及び、マンドレル6の抜出し工程(ステップS104)により得られ、その後、水圧検査、さらに検査巻取り工程を経て、梱包、出荷されることになる。
【0066】
まず、
図2に示すように、ステップS101において、巻出機5から繰り出したマンドレル6の外周面に、第1押出機7により未加硫の内側ゴム層2を被覆したホース6Aを巻取捲出機8に巻き取る。
【0067】
次に、ステップS102において、巻取捲出機8から繰り出したホース6Aを構成する内側ゴム層2を覆うように、編組機9により編組して補強層3を形成したホース6Bを巻取捲出機10に巻き取る。この補強層3のコードには、金属ワイヤが用いられる。金属ワイヤはゴムとの接着性を良好にするため、真鍮をめっきした鋼線が用いられる。なお、補強層3は、金属ワイヤをマンドレル6の周囲に形成した内側ゴム層2の周囲にスパイラルに巻き回すことにより形成するようにしてもよい。
【0068】
次に、ステップS103において、巻取捲出機10から繰り出したホース6Bの補強層3の上に、第2押出機11により未加硫の外側ゴム層4を被覆してホース本体6Cを形成し、そのホース本体6Cを巻取機16に巻き取る。本実施形態においては、ホース本体6Cが第2押出機11を出てから巻取機16に巻き取られる間に、加硫装置14を設置し、加硫したホース6Eを巻取機16で巻き取っているが、加硫工程は、ホース本体6Cを巻取機16で巻き取ったあとに設けてもよい。また、加硫装置14の前後には、ナイロン布等の保護布をホース本体6Cへ脱着するためのラッピング装置13及びアンラッピング装置15が設けられている。なお、
図2において、ラッピング装置13によりナイロン布が巻かれた加硫前のホースは符号6Dで表示され、加硫後、ナイロン布を取り外す前のホースは符号6Eで表示されている。加硫工程については後述する。
【0069】
次に、ステップS104において、加硫後、アンラッピングしたホース6Fから、マンドレル抜出装置17により、マンドレル6を抜き取ってホース6Gが完成する。
【0070】
<加硫工程>
図3は、
図2のステップS103において、加硫装置14を用いた加硫工程をより詳細に説明する模式図である。
【0071】
図3に示すように、第2押出機11を出たホース本体6Cはラッピング装置13によって周囲にナイロン布18が巻き回される。ナイロン布18で包囲されたホース本体6Cは加硫装置14内に搬入される。加硫装置14は熱風19により加硫を進行させる熱風循環型の連続加硫装置である。この加硫方式はオーブン加硫方式とも称される。
【0072】
図4は、加硫装置に投入されるマンドレル6周囲の層構造の一例を説明する部分断面図である。
図4に示すように、マンドレル6周囲には、内側ゴム層2が形成されて、更にその周囲には補強層3が形成され、更にその周囲には外側ゴム層4が形成されている。外側ゴム層4の周囲には、ナイロン布18が巻き付けられており、この状態で加熱されて加硫工程が進行する。
【0073】
上記の如く、加硫温度は130℃以上180℃以下、加硫時間すなわち加硫装置14内における加硫時間は30分以上240分以下であることが好ましい。この温度範囲および加硫時間において、ゴム層と補強層との接着性が良好な油圧ホースが得られる。
<ゴム組成物>
内側ゴム層2および外側ゴム層4のいずれか一方または両方は、本発明に係るゴム組成物で構成することが好ましい。本発明に係るゴム組成物を用いることにより金属製の補強層との接着性が良好な油圧ホースを製造することができる。
【0074】
なお、本発明に係るゴム組成物によれば、加硫直前まで適度な水分を組成物中に安定に保持できるため、水分蒸発の大きなオーブン加硫方式においても、水分不足による接着不良や接着性の低下を抑制できる。しかしながら、本発明に係るゴム組成物は、従来公知の他の加硫方式によるゴム製品の製造にも好適に使用できることはいうまでもない。他の加硫方式としては、例えば、プレス加硫、蒸気加硫、および温水加硫等を挙げることができる。
【0075】
また上記実施形態においては、連続処理方式による製造工程を例示したが、ゴム層と補強層とを別工程で製造した後貼り合わせる方法によっても本発明にかかる加硫ゴム製品を製造できる。
【0076】
本実施形態にかかる製造方法によって製造される油圧ホースの利用分野は特に限定されるものではなく様々な用途に適用することができるが、例えば、自動車用エアコンホース、パワーステアリングホース、建設車両の油圧系等に用いられる油圧ホース等として好適に用いることができる。
【0077】
また、本実施形態においては、ゴム組成物金属積層体および加硫ゴム製品として油圧ホースを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばコンベヤベルトなど他のゴム積層体においても同様に用いることができる。
【0078】
以上のように、本発明のゴム組成物金属積層体、加硫ゴム製品、および加硫ゴム製品の製造方法によれば、オーブン加硫方式による連続生産方式においても、ゴム層と補強層との接着性が良好な加硫ゴム製品を提供することができる。とりわけ乾燥状態で長期保管された後に使用される場合であっても、補強層との接着性が良好なゴム製品を形成する組成物を提供することができる。この加硫ゴム製品は油圧ホース、高圧ホース等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
<1.ゴム組成物の調製>
(実施例1〜
9)
表1に示される配合比の原料をバンバリーキミサーで混練し、実施例1〜
9に係るゴム組成物を得た。なお、表中の数値の単位は特に断りのある場合を除きジエン系重合体の合計質量を100とした場合の質量部で表す。
【0081】
【表1】
【0082】
(比較例1〜
9)
表1、表2に示される配合比の原料をバンバリーキミサーで混練し、比較例1〜
9に係るゴム組成物を得た。なお、表中の数値の単位は特に断りのある場合を除きジエン系重合体の合計質量を100とした場合の質量部で表す。
【0083】
【表2】
【0084】
表1および表2に記載した各成分の詳細は以下のとおりである。
・NBR:商品名「Nancar 3345」、南帝化学工業社製、アクリロニトリル含有量34質量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)45
・EPDM:商品名「EPT 4070」、三井化学社製、エチレン含有量56質量%、エチリデンノルボルネン含有量8質量%、ムーニー粘度(ML1+4,125℃)47
・SBR:商品名「Nipol 1502」、日本ゼオン社製、乳化重合SBR、結合スチレン含有量23.5質量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)52
・CR:商品名「デンカクロロプレンS−41」、電気化学工業社製、非硫黄変性クロロプレンゴム、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)48
・吸水性樹脂1:アクリル酸重合物ナトリウム中和塩架橋物、商品名「アクアリックCA−K4」、日本触媒社製
・吸水性樹脂2:変性アクリル系架橋重合体、商品名「アクアリックCS−6S」、日本触媒社製
・吸水性樹脂3:ポリアルキレンオキサイド、商品名「アクアコークTW」、住友精化社製
・吸水性樹脂4:ポリエチレングリコール、商品名「マクロゴール6000P」、三洋化成社製
・水:水道水
・硫黄:細井化学工業社製
・加硫促進剤1:N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、商品名「ノクセラーNS−P」、大内新興化学工業社製
・加硫促進剤2:テトラメチルチウラムモノスルフィド、商品名「サンセラーTS−G」、三新化学工業社製
・加硫促進剤3:ジフェニルグアニジン、商品名「ソクシノールD−G」、住友化学社製
・スコーチ防止剤:N−シクロヘキシルチオフタルイミド、FLEXSYS社製
・ISAF級カーボンブラック:商品名「ショウブラックN220」、昭和キャボット社製
・FEF級カーボンブラック:商品名「HTC#100」、新日化カーボン社製
・ハードクレー:商品名「Suprex Clay」、ケンタッキーテネシークレイカンパニー社製
・酸化亜鉛3種:正同化学工業社製
・酸化マグネシウム:商品名「キョーワマグ150」、協和化学工業社製
・ステアリン酸:日本油脂社製
・オゾン劣化防止剤:商品名「オゾンノン6C」、精工化学社製
・可塑剤:ジオクチルアジペート、商品名「DIACIZER DOA」、三菱化成ビニル社製
・プロセスオイル:アロマ系オイル、商品名「A−OMIX」、三共油化工業社製
【0085】
<2.ゴム組成物の評価>
実施例1〜
9および比較例1〜
9で得られた各ゴム組成物を外側ゴム層として用いて、ブラスめっきワイヤブレードで作製した補強層と接着させて、ホース状試験片を以下のように作製した。
【0086】
まず、外径34mmのマンドレル上に、表面がブラスめっきされたワイヤをブレード状に巻き付け、補強層を形成した。次いで、補強層の上に、得られた各ゴム組成物から調製した厚さ2.5mmの未加硫シートを貼り合わせて未加硫ホース状試験片を得た。次いで、未加硫ホース状試験片の外側を覆うようにナイロン66製のキュアリングテープ(保護布)を巻きつけて加硫を行った。
【0087】
加硫は以下の4種の条件下で行い、得られたホース状加硫試験片の接着強度とゴム付きとを評価した。なお、接着強度およびゴム付きは、それぞれ10回測定した値の平均値である。
【0088】
(加硫条件)
・加硫条件1:混練直後のゴム組成物を使用して作製した未加硫ホース状試験片を142℃のスチーム缶内で90分間加硫を行った(スチーム加硫)。
・加硫条件2:混練直後のゴム組成物を使用して作製した未加硫ホース状試験片を142℃の常圧オーブン内で135分間加硫を行った(オーブン加硫)。
・加硫条件3:25℃、55%相対湿度(%RH)の乾燥環境下で未加硫ホース状試験片を2週間保管した後、142℃の常圧オーブン内で135分間加硫を行った(オーブン加硫)。
・加硫条件4:25℃、30%相対湿度(%RH)の乾燥環境下で未加硫ホース状試験片を4週間保管した後、142℃の常圧オーブン内で135分間加硫を行った(オーブン加硫)。
【0089】
[接着強度およびゴム付き]
上記のごとき加硫条件で得られた各ホース状加硫試験片について、接着強度(kN/m)とゴム付き(%)とを評価した。ここで、接着強度(kN/m)とは、外側ゴム層と補強層との界面から剥離速度50mm/分で外側ゴム層を剥離するときに要する単位幅(m)あたりの力の大きさ(kN)である。ここで、ゴム付きとは、ホース状加硫試験片の外側ゴム層が補強層表面に残留している割合であって、補強層表面積全体に対する残留ゴム層の面積比率を百分率で表したものである。
【0090】
接着強度およびゴム付きの測定の結果を表3および表4に示す。表3および表4における接着試験1〜4は、上記加硫条件1〜4で作製した試験片の試験結果に対応している。接着強度が2.5kN/m以上で、かつ、ゴム付きが60%以上である場合、外側ゴム層と補強層との接着性が良好であると言える。
【0091】
更に、各組成物について混練時のゴム混合加工性を以下の基準で評価した。実施例1〜
9についての評価結果を表3に、比較例1〜
9についての評価結果を表4に示す。
○:まとまりが良い。
△:まとまりは良くも悪くもない。
×:まとまりが悪い。
【0092】
更に、ホース状加硫試験片それぞれについて、外側ゴム層の外観を目視により以下の基準で評価した。実施例1〜
9、比較例8〜9についての評価結果を表3
、表4に、比較例1〜7についての評価結果を表4に示す。
○:窪み状の欠陥(ポーラス)なし。
×:窪み状の欠陥(ポーラス)あり。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
表3から明らかなように、実施例1〜
9の組成物はゴム混合加工性が良好、すなわちバンバリーキミサーによる混練後のゴム組成物のまとまりがよかった。また加硫後のゴム外観もポーラスがなく良好であった。更に、実施例1〜
9の組成物を使用して作製したホース状加硫試験片は、補強層との接着強度がいずれも2.5kN/m以上であり、ゴム付きは60%以上であった。更に、実施例1〜
9の組成物を使用して作成したホース状加硫試験片は、4週間保管後においても、接着強度がいずれも2.5kN/m以上であり、ゴム付きは60%以上であった。
【0096】
表4から明らかなように、比較例1〜7の組成物を使用して作成したホース状加硫試験片については、4週間保管後の接着強度はいずれも2.5kN/m未満であり、ゴム付きはいずれも60%未満であった。また比較例4、5、7については、ゴム混合加工性もゴム外観も不良であった。