特許第6052046号(P6052046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052046
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20161219BHJP
   G02B 7/08 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   G02B7/02 E
   G02B7/08 B
   G02B7/08 Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-96727(P2013-96727)
(22)【出願日】2013年5月2日
(65)【公開番号】特開2014-219465(P2014-219465A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】亘 孝平
(72)【発明者】
【氏名】三谷 芳史
【審査官】 登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−050510(JP,A)
【文献】 特開2005−091771(JP,A)
【文献】 特開平11−119076(JP,A)
【文献】 特開2010−175806(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0057822(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体と、前記筒状体の径方向外側に、光軸回りに回転自在に配設された筒状のレンズ操作部材と、前記レンズ操作部材の回転を検知するための検知部材とを備え、
前記レンズ操作部材は、その内周面から径方向内側に突設されたスリット形成保有部を備え、
前記スリット形成保有部は、周方向に沿って形成された複数のスリットを備え、
前記筒状体は、筒状体本体部と、前記筒状体本体部の外周側に配設された検知部材保持部を備え、
前記検知部材保持部は、前記検知部材の先端が前記スリットの通過を検出し得るように前記筒状体本体部の径方向外側に突出した突出位置から、前記スリット形成保有部の内周端よりも径方向内側に退避移動した退避位置までの範囲を可動できるように、前記筒状体本体部の径方向に移動可能に前記検知部材を保持しており、
前記検知部材保持部に保持された検知部材を前記突出位置に固定しておくための固定部材を、更に備え、
前記固定部材は、前記検知部材を前記径方向内側から支持した検知部材支持部と、前記検知部材支持部の先端側に、前記検知部材を前記検知部材支持部に案内操作する案内操作部とを備え、
前記案内操作部は、前記検知部材支持部より径方向内側に形成された先端から前記検知部材支持部にかけて傾斜した傾斜面を有していることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記検知部材支持部は、前記検知部材を径方向外側に付勢し得る弾性を有していることを特徴とする請求項記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記検知部材は、配線と接続され、
前記固定部材は、前記配線を保持した配線保持部を備えていることを特徴とする請求項又は記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記固定部材は、その先端側に、前記検知部材を前記退避位置に移動操作する退避移動操作部を備えていることを特徴とする請求項の何れか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記検知部材保持部は、前記筒状体本体部と別体のものから構成され、前記筒状体本体部の外周に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記筒状体本体部は、その外周面が前記検知部材と前記径方向内側から対向するように構成されていることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
筒状体と、前記筒状体の径方向外側に光軸回りに回転自在に配設された筒状のレンズ操作部材と、前記レンズ操作部材の回転を検知するための検知部材とを備え、前記レンズ操作部材は、その内周面から径方向内側に突設され周方向に沿って形成された複数のスリットを有するスリット形成保有部を備え、前記筒状体は、筒状体本体部と、前記筒状体本体部の外周に配設された検知部材保持部を備え、前記検知部材保持部は、前記検知部材の先端が前記スリットの通過を検出し得るように前記筒状体本体部の径方向外側に突出した突出位置から、前記スリット形成保有部の内周端よりも径方向内側に退避移動した退避位置までの範囲を可動できるように、前記筒状体本体部の径方向に移動可能に前記検知部材を保持しており、前記検知部材保持部に保持された検知部材を前記突出位置に固定しておくための固定部材を、更に備え、前記固定部材は、前記検知部材を前記径方向内側から支持した検知部材支持部と、前記検知部材支持部の先端側に、前記検知部材を前記検知部材支持部に案内操作する案内操作部とを備え、前記案内操作部は、前記検知部材支持部より径方向内側に形成された先端から前記検知部材支持部にかけて傾斜した傾斜面を有しているレンズ鏡筒の製造方法であって、
前記検知部材保持部に保持された前記検知部材を、前記退避位置に退避移動した状態で、前記レンズ操作部材を、前記筒状体の径方向外側に配設し、
その後、前記検知部材を前記突出位置に移動操作することを特徴とするレンズ鏡筒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばデジタルカメラ等の撮像装置に用いられるレンズ鏡筒として、オートフォーカス機構と共にマニュアルフォーカス機構を備えたレンズ鏡筒が知られている。例えば特許文献1には、光軸回りに回転自在な筒状のレンズ操作部材と、レンズ操作部材の軸方向の端部に形成され複数のスリットを有するスリット形成保有部と、スリット形成保有部から径方向に延ばされた垂直面に支持されたフォトインタラプタから構成した検知部材とを有するマニュアルフォーカス機構を備えたレンズ鏡筒が開示されている。そして、このように構成された特許文献1に開示のレンズ鏡筒では、検知部材がスリット形成保有部の軸方向の端部に軸方向に突出するように配設されており、その検知部材が、レンズ操作部材の回転に伴うスリットの通過を検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−11741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたレンズ鏡筒では、検知部材が、スリット形成保有部から径方向に延ばされた垂直面に支持されているとともに、スリット形成保有部の軸方向の端部に軸方向に突出するように配設されているため、検知部材やその検知部材を支持した垂直面が他の周辺部品に影響してしまう。このため、特許文献1のレンズ鏡筒では、周辺部品の形状が制限され、デザインの自由度が制限されるとともに、レンズ鏡筒全体の小型化を図り難いという問題点がある。
【0005】
本発明は、検知部材が他の周辺部品に影響するおそれが少なく、全体の小型化を図り得るレンズ鏡筒及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレンズ鏡筒は、筒状体と、前記筒状体の径方向外側に、光軸回りに回転自在に配設された筒状のレンズ操作部材と、前記レンズ操作部材の回転を検知するための検知部材とを備え、前記レンズ操作部材は、その内周面から径方向内側に突設されたスリット形成保有部を備え、前記スリット形成保有部は、周方向に沿って形成された複数のスリットを備え、前記筒状体は、筒状体本体部と、前記筒状体本体部の外周側に配設された検知部材保持部を備え、前記検知部材保持部は、前記検知部材の先端が前記スリットの通過を検出し得るように前記筒状体本体部の径方向外側に突出した突出位置から、前記スリット形成保有部の内周端よりも径方向内側に退避移動した退避位置までの範囲を可動できるように、前記筒状体本体部の径方向に移動可能に前記検知部材を保持していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、筒状体本体部の外周に検知部材保持部を備え、この検知部材保持部に検知部材が保持されているため、筒状体本体部の径方向における外周とレンズ操作部材との間に検知部材を配置することも可能になり、検知部材が他の周辺部品に影響するおそれが少なく、従来品に比べて他の周辺部品の径方向の配置制約が少なくなり、全体の小型化が図られる。
【0008】
また、その際、検知部材保持部は検知部材の先端が筒状体本体部の径方向外側に突出した突出位置からスリット形成保有部の内周端よりも径方向内側に退避移動した退避位置までの範囲を可動できるように筒状体本体部の径方向に移動可能に検知部材を保持しているため、レンズ操作部材を筒状体に配設する際、検知部材が影響することなく、容易に配設できる。
【0009】
他の一態様では、前記レンズ鏡筒において、前記検知部材保持部に保持された検知部材を前記突出位置に固定しておくための固定部材を、更に備え、前記固定部材は、前記検知部材を前記径方向内側から支持した検知部材支持部を備えていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、検知部材保持部に径方向に移動可能に保持された検知部材の先端が筒状体本体部の径方向外側に突出した突出位置に確実に固定した状態にしておくことができる。
【0011】
他の一態様では、前記レンズ鏡筒において、前記検知部材支持部は、前記検知部材を径方向外側に付勢し得る弾性を有していることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、振動等を受けた場合でも、検知部材を検知部材保持部に確実に固定した状態にしておくことができる。
【0013】
他の一態様では、前記レンズ鏡筒において、前記検知部材は、配線と接続され、前記固定部材は、前記配線を保持した配線保持部を備えていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、検知部材に接続した配線が動くことを規制できる。
【0015】
他の一態様では、前記レンズ鏡筒において、前記固定部材は、前記検知部材支持部の先端側に、前記検知部材を前記検知部材支持部に案内操作する案内操作部を備えていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、案内操作部によって径方向内側に退避移動した検知部材を容易に支持本体部に案内操作できる。
【0017】
他の一態様では、前記レンズ鏡筒において、前記固定部材は、その先端側に、前記検知部材を前記退避位置に移動操作する退避移動操作部を備えていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、退避移動操作部によって検知部材を退避位置に移動操作できる。したがって、この状態で、レンズ操作部材を筒状体に配設することにより、検知部材がレンズ操作部材に影響するようなことを防止でき、レンズ操作部材の筒状体への組付けが容易になる。
【0019】
他の一態様では、前記レンズ鏡筒において、前記検知部材保持部は、前記筒状体本体部と別体のものから構成され、前記筒状体本体部の外周に取り付けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、検知部材保持部の形成が容易なものになる。
【0021】
他の一態様では、前記レンズ鏡筒において、前記筒状体本体部は、その外周面が前記検知部材と前記径方向内側から対向するように構成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、筒状体本体部の内部に埃や塵が入り込むのを防止できる。
【0023】
また、本発明のレンズ鏡筒の製造方法は、筒状体と、前記筒状体の径方向外側に光軸回りに回転自在に配設された筒状のレンズ操作部材と、前記レンズ操作部材の回転を検知するための検知部材とを備え、前記レンズ操作部材は、その内周面から径方向内側に突設され周方向に沿って形成された複数のスリットを有するスリット形成保有部を備え、前記筒状体は、筒状体本体部と、前記筒状体本体部の外周に配設された検知部材保持部を備え、前記検知部材保持部は、前記検知部材の先端が前記スリットの通過を検出し得るように前記筒状体本体部の径方向外側に突出した突出位置から、前記スリット形成保有部の内周端よりも径方向内側に退避移動した退避位置までの範囲を可動できるように、前記筒状体本体部の径方向に移動可能に前記検知部材を保持しているレンズ鏡筒の製造方法であって、前記検知部材保持部に保持された前記検知部材を、前記退避位置に退避移動した状態で、前記レンズ操作部材を、前記筒状体の径方向外側に配設し、その後、前記検知部材を前記突出位置に移動操作することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、検知部材保持部に保持された検知部材を退避位置にしてレンズ操作部材を筒状体の径方向外側に配設するため、検知部材が影響することなく、レンズ操作部材を筒状体の径方向外側に配設でき、レンズ操作部材を筒状体に容易に組み付けできる。
【0025】
そして、レンズ操作部材を筒状体に組み付けた後に、検知部材をスリットの通過を検出できる突出位置にすることで、レンズ鏡筒が容易に製造される。
【発明の効果】
【0026】
本発明のレンズ鏡筒は、検知部材が他の周辺部品に影響するおそれが少なく、全体の小型化を図り得、レンズ鏡筒の製造方法は、そのレンズ鏡筒を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態のレンズ鏡筒の断面図である。
図2図1のレンズ鏡筒の一部を省略した斜視図である。
図3図1のレンズ鏡筒の要部拡大平面図である。
図4図1のレンズ鏡筒の要部拡大断面図である。
図5図1のレンズ鏡筒に用いられる固定部材の斜視図である。
図6図1のレンズ鏡筒に用いられる検知部材保持部に検知部材が保持された状態の斜視図である。
図7図1のレンズ鏡筒に用いられる検知部材保持部に検知部材が保持された状態の要部拡大断面図である。
図8図7の状態からレンズ操作部材を固定筒本体に組み付ける際の要部拡大断面図である。
図9図8の状態から、レンズ鏡筒に用いられる固定部材を組み付ける際の要部拡大断面図である。
図10】固定部材を組み付けた状態の要部拡大断面図である。
図11】本発明の第2実施形態のレンズ鏡筒の一部を省略した要部の斜視図である。
図12】本発明の第3実施形態のレンズ鏡筒の一部を省略した要部の斜視図である。
図13図12の要部拡大平面図である。
図14図13のレンズ鏡筒の要部拡大断面図である。
図15】本発明の第4実施形態のレンズ鏡筒に用いられる固定部材の斜視図である。
図16】第4実施形態の固定部材により検知部材を固定する際の要部拡大断面図である。
図17図16の状態からレンズ操作部材を固定筒本体に組み付ける際の要部拡大断面図である。
図18図17の状態から固定部材に設けられた案内操作部によって固定部材に設けられた検知部材支持部に検知部材を案内する際の要部拡大断面図である。
図19図18の状態から、検知部材が検知部材支持部に案内されて支持された状態の要部拡大断面図である。
図20】本発明の第5実施形態のレンズ鏡筒の一部を省略した要部の斜視図である。
図21図20の第5実施形態のレンズ鏡筒に用いられる固定部材の斜視図である。
図22】(a)は、図21の第5実施形態の固定部材を用いて検知部材を固定する際の要部拡大平面図、(b)は、図22(a)の要部拡大断面図である。
図23】(a)は、図22の状態から第5実施形態の固定部材を前方側に移動させた状態の要部拡大平面図、(b)は、図23(a)の要部拡大断面図である。
図24】(a)は、図23の状態から、更に固定部材を前方側に移動させた状態の要部拡大平面図、(b)は、図24(a)の要部拡大断面図である。
図25図24の状態から、レンズ操作部材を固定筒本体に組み付ける際の要部拡大断面図である。
図26】(a)は、図25の状態から、再度、固定部材を前方側に移動させて検知部材を固定した状態の要部拡大平面図、(b)は、図26(a)の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態のレンズ鏡筒の断面図、図2は、図1のレンズ鏡筒の一部を省略した斜視図である。尚、図のX方向を前方側(対物側)とし、図のY方向を後方側(像側)として説明する。
【0029】
第1実施形態のレンズ鏡筒1は、鏡筒本体10と、円筒状のレンズ操作部材3と、検知部材4と、固定部材5とを備えている。
【0030】
鏡筒本体10は、この実施形態では、固定筒(筒状体)2と、固定筒2に保持されたレンズ群11〜13と、光学絞り14と、円筒状のカバー15とを備えている。
【0031】
固定筒2は、円筒状の固定筒本体(筒状体本体部)21と、固定筒本体21の外周面に配設された検知部材保持部22とを備えている。
【0032】
固定筒本体21は、当て止め部21cを備えている。当て止め部21cは、レンズ操作部材3を装着する際にレンズ操作部材3を当て止めしてレンズ操作部材3の固定筒本体21に対する軸方向の位置を決めるもので、軸方向(光軸方向)に直交する面の一部によって形成されている。
【0033】
又、固定筒本体21は、図6に示すように外周における当て止め部21cの後方部に、固定部材5を取り付けるための2つのネジ孔21aを備えている。
【0034】
検知部材保持部22は、後述の検知部材4を保持するためのもので、この実施形態では、図2図6に示すように検知部材4を保持した板状の保持本体部22aと、保持本体部22aと固定筒本体21とを連結した連結部22bとを備えている。
【0035】
保持本体部22aは、図3に示すように、後述する一対の検知部材4のそれぞれが挿通された平面視で矩形状の2つの挿通孔22cと、各挿通孔22cに挿通された検知部材4を押圧保持する押圧保持部22f、22gとを備えている。
【0036】
押圧保持部22f、22gは、挿通孔22cを区画形成した内周壁22eから挿通孔22cの内側に突設された突部から構成されている。
【0037】
この実施形態では、押圧保持部は、内周壁22eから固定筒本体21の軸方向に突設された第1押圧保持部22fと、内周壁22eから固定筒本体21の周方向に突設された第2押圧保持部22gとから構成されている。これらの第1押圧保持部22fと第2押圧保持部22gとによって、挿通孔22cに挿通された検知部材4を固定筒本体21の周方向及び軸方向から挟持することにより保持している。
【0038】
又、この実施形態では、第1押圧保持部22fが形成された内周壁22eの前部側に、弾性壁形成用孔22hが形成されることにより、第1押圧保持部22fが形成された内周壁22eが弾性を有する弾性壁に形成されている。これにより、第1押圧保持部22fが弾性を有するものとされている。尚、第2押圧保持部22gも、第1押圧保持部22fと同様にして弾性を有するものとされてもよく、適宜変更できる。
【0039】
連結部22bは、図2図6に示すように、保持本体部22aの周方向の両端部及びその中間部のそれぞれと固定筒本体21の外周とを連結している。この実施形態では、連結部22bとは、固定筒本体21の外周から一体的に径方向外側に延設されている。
【0040】
そして、これらの連結部22bによって、保持本体部22aは固定筒本体21の外周から所定の間隔を隔てた固定筒本体21の径方向外側に配設されている。これにより、保持本体部22aと固定筒本体21の外周面との間に、検知部材4を退避移動させる退避空間部24が形成されている。
【0041】
又、退避空間部24によって、保持本体部22aは、検知部材4の先端が固定筒本体21の径方向外側に突出した図4に示す突出位置から、後述のスリット形成保有部31aの内周端31cよりも径方向内側に退避移動した退避位置(図8参照)までの範囲を可動できるように、固定筒本体21の径方向に移動可能に検知部材4を保持している。
【0042】
レンズ群11〜13は、図1に示すように、前方側(対物側)から後方側(像側)に順に配設された第1レンズ群11、第2レンズ群12及び第3レンズ群13から構成されている。第1レンズ群11と第3レンズ群13とは、レンズ保持枠11a、13aを介して固定筒本体21の内周側に固定的に保持されている。
【0043】
第2レンズ群12は、フォーカスレンズ群であり、レンズ保持枠12aを介して固定筒本体21の内周側に、光軸方向(前後方向)に移動可能に保持されている。尚、第1レンズ群11、第2レンズ群12及び第3レンズ群13は、1又は2以上のレンズから構成される。
【0044】
光学絞り14は、この実施形態では、第2レンズ群12と第3レンズ群13との間に配設されて固定筒本体21に取り付けられている。
【0045】
カバー15は、固定筒2の後部側の外周を覆うように配設されて、固定筒本体21に固定的に取り付けられている。
【0046】
レンズ操作部材3と検知部材4と固定部材5とは、マニュアルフォーカス操作機構を構成する。レンズ操作部材3は、図2に示すように内周側に、周方向に沿って延されるようにしてレンズ操作部材3の内周面から径方向内側に突設された円板状のスリット形成保有部31aを備えている。このスリット形成保有部31aは、複数のスリット31bを備えている。
【0047】
各スリット31bは、所定幅で、スリット形成保有部31aの内周端(内周面)31cから径方向外側に向かって切り込まれるようにして形成されている。そして、このように形成されたスリット31bが、スリット形成保有部31aの全周に亘って周方向に沿って等間隔に、放射状に複数、形成されている(図2では、説明の都合上、スリット31bは、スリット形成保有部31aの周方向の一部にだけ表れている)。
【0048】
このように構成されたレンズ操作部材3は、図1に示すように固定筒本体21とカバー15とに支持されるようにして、固定筒本体21の一部の径方向外側に光軸回りに回転自在に配設されている。又、レンズ操作部材3の回転に伴ってスリット形成保有部31aが光軸回りに回転する。
【0049】
検知部材4は、レンズ操作部材3の回転を検知するもので、同構成を採る一対のものから構成されている。各検知部材4は、フォトインタラプタから構成されており、発光素子41と、発光素子41から、スリット形成保有部31aのスリット31bが通過できる程度の間隔を前後方向に隔てて配設された受光素子42とを備えている。
【0050】
そして、このように構成された一対の検知部材4の発光素子41と発光素子41とは、図1図4に示すように、検知部材保持部22の挿通孔22cに挿通され、それらの先端それぞれが、発光素子41と発光素子41との間にスリット形成保有部31aが介在するように、保持本体部22aから固定筒本体21の径方向外側に突出されている。
【0051】
又、検知部材4は、フレキシブルケーブル(配線)43と接続されている。又、フレキシブルケーブル43は、図示しないが固定筒本体21の後端に延されており、このレンズ鏡筒1がカメラ本体等に装着される際に、カメラ本体等に設けられた制御部に接続されるようになっている。
【0052】
そして、一対の検知部材4は、レンズ操作部材3の回転に伴って通過するスリット形成保有部31aのスリット31bの数を検知する。即ち、各検知部材4の出力電圧の位相差に基づいてスリット形成保有部31aの回転位置が検知され、レンズ操作部材3の回転方向及び回転量が検出される。
【0053】
固定部材5は、検知部材保持部22に保持された検知部材4を上記突出位置で固定しておくもので、図5に示すように、検知部材4を径方向内側から支持した検知部材支持部52と、固定筒2に取り付けるための取付部51とを備えている。
【0054】
取付部51は、板状体から構成されており、幅方向(周方向)の両側にネジ挿通孔51aを備えている。
【0055】
検知部材支持部52は、取付部51から一体的に前方側に延設されている。又、検知部材支持部52の外面は、取付部51の外面よりも高くなるように形成されている。
【0056】
又、この実施形態では、検知部材支持部52は、並列された2つからなり、一対の検知部材4のそれぞれを別個に支持するようになっている。
【0057】
このように構成された固定部材5は、図3図4に示すように検知部材支持部52が検知部材4を径方向内側から支持した状態で、取付部51のネジ挿通孔51aに固定ボルト7が挿通されて、その挿通された固定ボルト7が固定筒本体21のネジ孔21aに螺合され、これにより、固定部材5が固定ボルト7を介して固定筒本体21に固定的に取り付けられ、検知部材4が突出位置で固定されている。
【0058】
又、この実施形態のレンズ鏡筒1は、図示しないが、ステッピングモータ等を有するオートフォーカス機構を備え、ステッピングモータ等の作動に伴って第2レンズ群12が光軸方向に移動可能になっている。
【0059】
次に、このようにように構成されたレンズ鏡筒1の製造方法について説明する。まず、図6図7に示すようにレンズ群11〜13及び光学絞り14が取り付けられた固定筒2の検知部材保持部22の挿通孔22cに、検知部材4が、退避空間部24側から入れられる。
【0060】
その際、検知部材4の先端が検知部材保持部22からほとんど突出しない状態にしておく。
【0061】
その後、図8に示すように、レンズ操作部材3を、固定筒本体21の後方側から固定筒本体21の径方向外側に、レンズ操作部材3が固定筒本体21の当て止め部21cに当たるまで入れる。
【0062】
その際、検知部材4の先端が検知部材保持部22から突出していないため、図8に示すようにスリット形成保有部31aが検知部材4に当たることなく、検知部材4における発光素子41と受光素子42との間の位置にスリット形成保有部31aを配設した状態にできる。
【0063】
次に、図9に示すようにフレキシブルケーブル43と固定筒本体21の外周との間に固定部材5の検知部材支持部52を配置し、その状態から検知部材支持部52を後方側から押圧して検知部材4の径方向内側に滑り込ませる。
【0064】
これにより、図10に示すように、検知部材4の発光素子41と受光素子42とが、それらの間にスリット形成保有部31aが介在するように、保持本体部22aから固定筒本体21の径方向外側に突出した状態になる。
【0065】
又、この状態で、固定部材5の検知部材支持部52によって、各検知部材4はその状態に固定される。しかも、検知部材支持部52が弾性を有するため、振動等を受けても確実にその固定された状態に維持される。
【0066】
そして、その状態で、取付部51のネジ挿通孔51aから固定ボルト7を固定筒本体21のネジ孔21aに螺合して締め付ける。これにより、固定部材5が固定ボルト7を介して固定筒本体21に固定的に取り付ける。
【0067】
その後、図1に示すようにカバー15を、固定筒2の後方側から固定筒本体21の径方向外側に配設する。これにより、レンズ操作部材3が固定筒本体21とカバー15とによって光軸方向に回転自在に支持される。
【0068】
以上のように構成されたレンズ鏡筒1は、例えばカメラ本体(図示せず)に装着されて使用される。そして、レンズ群11〜13によって結像される光学像が、カメラ本体に設けられた撮像素子9によって電気的な信号に変換される。
【0069】
又、オートフォーカス状態で、カメラ本体の制御部に基づくステッピングモータの作動に伴い第2レンズ群12が光軸方向に移動してピント調整される。
【0070】
一方、オートフォーカス状態からマニュアルフォーカス状態に切り換えられた状態で、レンズ操作部材3が回転操作されると、一対の検知部材4がそのレンズ操作部材3の回転に伴って通過するスリット形成保有部31aのスリット31bの数をカウントし、レンズ操作部材3の回転方向及び回転量が検出される。そして、その検出された検出データに基づいて第2レンズ群12が光軸方向に移動してピント調整される
以上のように構成されることにより、径方向における固定筒本体の外周とレンズ操作部材との間に検知部材が配置されており、検知部材が他の周辺部品に影響するおそれが少なく、従来品に比べて他の周辺部品の径方向の配置制約が少なくなり、レンズ鏡筒全体の小型化が図られる。
【0071】
また、その際、検知部材保持部は筒状体本体部の径方向に移動可能に検知部材を保持しているため、レンズ操作部材を筒状体に配設する際、検知部材が影響することなく、容易に配設できる。
【0072】
又、この実施形態では、固定筒本体の外周面の径外側に配設された検知部材保持部に検知部材が保持されている。即ち、固定筒本体は、その外周面の一部が検知部材と径方向内側から対向するように構成されているため、固定筒本体の内部に埃や塵が入り込むのを防止できる。
【0073】
次に、本発明の第2実施形態のレンズ鏡筒100について、図11に基づいて説明する。第2実施形態のレンズ鏡筒100における固定部材105は、検知部材4と接続されたフレキシブルケーブル43を保持した配線保持部153を備えている。
【0074】
配線保持部153は、この実施形態では、固定部材105の取付部151の径方向外側の外面から径方向内側の内面に貫通するようにしてフレキシブルケーブル43を挿通可能に開けられた配線挿通用孔153aを備えている。その他は、先の第1実施形態と同構成を採っている。
【0075】
このように構成された第2実施形態のレンズ鏡筒100においては、フレキシブルケーブル43が配線挿通用孔153aに挿通されることで、フレキシブルケーブル43が配線保持部153の配線挿通用孔153aの周縁部に押圧保持され、フレキシブルケーブル43の動きが配線保持部153によって規制され、常時フレキシブルケーブル43が固定筒本体21の外周と近接した位置に保持される。
【0076】
次に、本発明の第3実施形態のレンズ鏡筒200について説明する。第3実施形態のレンズ鏡筒200の固定筒202における検知部材保持部222は、図12図13に示すように、固定筒本体21とは別体のものから構成されている。そして、検知部材保持部222は、固定筒本体21の外周面に固定ボルト209を介して固定されている。
【0077】
又、この第3実施形態における検知部材保持部222は、図14に示すように、固定筒本体21の外周面から検知部材保持部222の外周面までの高さh1が検知部材4の高さh3と同程度で、固定筒本体21の外周面と検知部材保持部222との間に形成された退避空間部24の高さh2が検知部材4の高さh3よりも低く設定されている。その他は、先の第1実施形態と同構成を採っている。
【0078】
このように構成された第3実施形態のレンズ鏡筒200においては、検知部材保持部222を容易に形成でき、レンズ鏡筒200の製作コストを低くできる。又、検知部材保持部222の上記高さh1が検知部材4の高さh3と同程度で、退避空間部24の高さh2が検知部材4の高さh3よりも低く設定されているため、検知部材4が退避空間部24に退避移動した状態で、レンズ操作部材3の固定筒本体21への組み付けに影響することがなく、しかも、検知部材4が検知部材保持部222の挿通孔22cから抜け出るおそれのないものにできる。
【0079】
次に、本発明の第4実施形態のレンズ鏡筒300について説明する。第4実施形態のレンズ鏡筒300における固定部材305は、図15に示すように、検知部材支持部352の先端側に、検知部材4を検知部材支持部352に案内操作する案内操作部354を備えている。
【0080】
この案内操作部354は、その先端から検知部材支持部352にかけて傾斜した傾斜面を有している。その他は、先の第3実施形態と同構成を採っている。
【0081】
このように構成された第4実施形態のレンズ鏡筒300においては、例えば図16に示すように案内操作部354をフレキシブルケーブル43と固定筒本体21の外周面との間に配設した状態にする。
【0082】
そして、その状態から、図17に示すようにレンズ操作部材3を固定筒本体21へ組み付ける。その後、図18図19に示すように固定部材305を前方側に押圧する。これにより、検知部材4が案内操作部354によって径方向外側に押圧されながら検知部材支持部352に案内される。従って、検知部材4を突出位置に配設する操作及び検知部材支持部352を検知部材4の径方向内側に配設する操作を容易なものにできる。
【0083】
次に、本発明の第5実施形態のレンズ鏡筒400について説明する。第5実施形態のレンズ鏡筒400におけるフレキシブルケーブル443は、図22(a)に示すように先端部を二股状に形成した切り欠き443aと、切り欠き443aの奥部(後方部)に形成された幅広部443bとを備えている。
【0084】
幅広部443bは、切り欠き443aと連通するようにして、その幅L1が切り欠き443aの幅L2よりも幅広に形成されている。
【0085】
又、第5実施形態における固定部材405は、図21に示すように案内操作部454の先端側に、検知部材4を一時的に、退避空間部(退避位置)24に移動操作する退避移動操作部455を備えている。
【0086】
退避移動操作部455の幅L3は、切り欠き443aの幅L2よりも広く、幅広部443bの幅L1よりも狭く形成されている。その他は、先の第4実施形態と同構成を採っている。
【0087】
このように構成された第5実施形態のレンズ鏡筒400においては、図22に示すように固定部材405の退避移動操作部455をフレキシブルケーブル443と固定筒本体21の外周面との間に配置する。そして、その状態から、固定部材405を前方側に押圧操作する。
【0088】
これにより、図23に示すように退避移動操作部455がフレキシブルケーブル443の幅広部443bからフレキシブルケーブル443の径方向外側の外面側に出る。
【0089】
更に、固定部材405を後方側に押圧操作すると、図24に示すように退避移動操作部455の下面(径方向内側の面)がフレキシブルケーブル443における切り欠き443aを挟んだ両側部を径方向内側に押圧する。
【0090】
これにより、検知部材4を、退避空間部(退避位置)24に移動操作できる。従って、図25に示すように、その状態から、レンズ操作部材3を固定筒本体21に配設すれば、の検知部材4が影響することなく、レンズ操作部材3を固定筒本体21の径方向外側に配設できる。
【0091】
そして、そのレンズ操作部材3の固定筒本体21への配設した後、図25に示すように再度、固定部材405を前方側に押圧操作する。これにより、案内操作部454によって検知部材4を検知部材支持部452に案内できる。
【0092】
従って、第5実施形態の固定部材405を用いることで、検知部材4を、退避位置に退避移動操作できるとともに、退避移動操作した状態から突出位置に移動操作でき、より一層、製造工程を容易なものにできる。
【0093】
尚、上記実施形態では、レンズ操作部材3は固定筒2に保持されているが、この形態のものに限らず、レンズ操作部材3は筒状体に保持されればよく、適宜変更できる。
【符号の説明】
【0094】
1、100、200、300、400 レンズ鏡筒
2 固定筒(筒状体)
3 レンズ操作部材
4 検知部材
5、105、305、405 固定部材
24 退避空間部
31a スリット形成保有部
31b スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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