(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明が適用される車両のパワートレーンの概略構成を示している。この車両は、例えばFR(フロントエンジン・リアドライブ)型であり、
図1に示すように、走行用の駆動力源であるエンジン(内燃機関)1と、エンジン1の出力を変速する手動変速機MTと、エンジン1と手動変速機MTとの間に配置されたクラッチ装置6と、エンジンECU(Electronic Control Unit)9とを備えている。なお、エンジンECU9は、本発明の「車両の制御装置」の一例である。
【0021】
この車両では、エンジン1で発生した回転駆動力(トルク)が、クラッチ装置6を介して手動変速機MTに入力され、この手動変速機MTで適宜の変速比(ドライバのシフトレバー操作によって選択された変速段での変速比)により変速されて、プロペラシャフトPS及びデファレンシャルギヤDFを介して左右の後輪(駆動輪)Tに伝達されるようになっている。なお、本実施形態に係る車両に搭載されている手動変速機MTは、前進6速段、後進1速段の同期噛み合い式手動変速機である。
【0022】
以下、エンジン1の全体構成、クラッチ装置6及び制御系などについて説明する。
【0023】
−エンジン1の全体構成−
図2はエンジン1及びその吸排気系の概略構成を示している。なお、この
図2ではエンジン1の1気筒の構成のみを示している。
【0024】
本実施形態におけるエンジン1は、例えば4気筒ガソリンエンジンであって、燃焼室11を形成するピストン12及び出力軸であるクランクシャフト13を備えている。上記ピストン12はコネクティングロッド14を介してクランクシャフト13に連結されており、ピストン12の往復運動がコネクティングロッド14によってクランクシャフト13の回転へと変換されるようになっている。
【0025】
上記クランクシャフト13には、外周面に複数の突起(歯)16を有するシグナルロータ15が取り付けられている。このシグナルロータ15の側方近傍にはクランクポジションセンサ(エンジン回転数センサ)81が配置されている。このクランクポジションセンサ81は、例えば電磁ピックアップであって、クランクシャフト13が回転する際にシグナルロータ15の突起16に対応するパルス状の信号(出力パルス)を発生する。
【0026】
エンジン1のシリンダブロック17には、エンジン水温(冷却水温)を検出する水温センサ82が配置されている。
【0027】
エンジン1の燃焼室11には点火プラグ2が配置されている。この点火プラグ2の点火タイミングはイグナイタ21によって調整される。このイグナイタ21は上記エンジンECU9によって制御される。
【0028】
エンジン1の燃焼室11には吸気通路3と排気通路4とが接続されている。吸気通路3と燃焼室11との間には吸気バルブ31が設けられている。この吸気バルブ31を開閉駆動することにより、吸気通路3と燃焼室11とが連通または遮断される。また、排気通路4と燃焼室11との間には排気バルブ41が設けられている。この排気バルブ41を開閉駆動することにより、排気通路4と燃焼室11とが連通または遮断される。これら吸気バルブ31及び排気バルブ41の開閉駆動は、クランクシャフト13の回転が伝達される吸気カムシャフト(図示省略)及び排気カムシャフト41aの各回転によって行われる。
【0029】
上記吸気通路3には、エアクリーナ32、熱線式のエアフローメータ83、吸気温センサ84(エアフローメータ83に内蔵)、吸気圧センサ80、及び、エンジン1の吸入空気量を調整する電子制御式のスロットルバルブ33が配置されている。このスロットルバルブ33はスロットルモータ34によって駆動される。スロットルバルブ33の開度(スロットル開度)はスロットル開度センサ85によって検出される。
【0030】
また、上記吸気通路3には燃料噴射用のインジェクタ(燃料噴射弁)35が配置されている。このインジェクタ35には、燃料タンクから燃料ポンプによって所定圧力の燃料が供給され、インジェクタ35の開弁に伴って吸気通路3に燃料が噴射される。この噴射燃料は吸入空気と混合されて混合気となってエンジン1の燃焼室11に導入される。燃焼室11に導入された混合気(燃料+空気)は、エンジン1の圧縮行程を経た後、点火プラグ2にて点火されて燃焼する。この燃焼室11内での混合気の燃焼によりピストン12が往復運動してクランクシャフト13が回転する。
【0031】
エンジン1の排気通路4には2つの三元触媒42及び43が配設されている。これら三元触媒42及び43は、酸素を貯蔵(吸蔵)するO
2ストレージ機能(酸素貯蔵機能)を有しており、この酸素貯蔵機能により、空燃比が理論空燃比からある程度まで偏移したとしても、HC、CO及びNOxを浄化することが可能となっている。
【0032】
上記排気通路4における上流側の三元触媒42の上流側には空燃比センサ(A/Fセンサ)86が、下流側の三元触媒43の上流側には酸素センサ(O
2センサ)87がそれぞれ配置されている。
【0033】
さらに、このエンジン1には、ターボチャージャ(過給機)5が設けられている。このターボチャージャ5は、タービンシャフト51を介して連結されたタービンホイール52及びコンプレッサホイール53を備えている。コンプレッサホイール53は吸気通路3内部に臨んで配置され、タービンホイール52は排気通路4内部に臨んで配置されている。このため、ターボチャージャ5は、タービンホイール52が受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサホイール53を回転させ、吸気圧を高めるといったいわゆる過給動作を行うようになっている。
【0034】
また、上記吸気通路3におけるスロットルバルブ33の上流側には、ターボチャージャ5での過給によって昇温した吸入空気を強制冷却するためのインタークーラ36が設けられている。
【0035】
一方、排気通路4には、排気ガスの一部をターボチャージャ5のタービンホイール52をバイパスして流すための排気バイパス通路47が設けられており、この排気バイパス通路47にはウェイストゲートバルブ48が設けられている。このウェイストゲートバルブ48が開放されると、排気ガスの一部がターボチャージャ5のタービンホイール52をバイパスして排気バイパス通路47に流れることになる。これにより、ターボチャージャ5自体の回転数が制御され、安定した過給圧(ブースト圧)が得られるようになっている。
【0036】
また、上記吸気通路3と排気通路4とはEGR通路(排気還流通路)44によって接続されている。このEGR通路44は、排気の一部を適宜吸気通路3に還流させて燃焼室11へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるものである。また、このEGR通路44には、電子制御によって無段階に開閉されて、このEGR通路44を流れる排気流量を自在に調整することができるEGRバルブ45と、EGR通路44を通過(還流)する排気ガスを冷却するためのEGRクーラ46とが設けられている。これらEGR通路44、EGRバルブ45、EGRクーラ46等によってEGR装置(排気還流装置)が構成されている。
【0037】
−クラッチ装置6−
図3はクラッチ装置6の概略構成を示している。この
図3に示すように、クラッチ装置6は、クラッチ機構部60と、クラッチペダル70と、クラッチマスタシリンダ71と、クラッチレリーズシリンダ61とを備えている。
【0038】
クラッチ機構部60は、上記クランクシャフト13と、手動変速機MT(
図1参照)のインプットシャフト(入力軸)ISとの間に介在するように設けられ、クランクシャフト13からインプットシャフトISへの駆動力を伝達・遮断したり、その駆動力の伝達状態を変更する。ここでは、クラッチ機構部60は、乾式単板式の摩擦クラッチとして構成されている。なお、クラッチ機構部60の構成として、それ以外の構成を採用してもよい。
【0039】
具体的に、クラッチ機構部60の入力軸であるクランクシャフト13には、フライホイール62とクラッチカバー63とが一体回転可能に取り付けられている。一方、クラッチ機構部60の出力軸であるインプットシャフトISには、クラッチディスク64がスプライン結合されている。このため、クラッチディスク64は、インプットシャフトISと一体回転しつつ、軸方向(
図3の左右方向)に沿ってスライド可能となっている。クラッチディスク64とクラッチカバー63との間には、プレッシャプレート65が配設されている。このプレッシャプレート65は、ダイヤフラムスプリング66の外端部に当接され、このダイヤフラムスプリング66によってフライホイール62側へ付勢されている。
【0040】
また、インプットシャフトISには、レリーズベアリング67が軸方向に沿ってスライド可能に装着されている。このレリーズベアリング67の近傍には、レリーズフォーク68が軸68aにより回動可能に支持されており、その一端部(
図3の下端部)がレリーズベアリング67に当接している。そして、レリーズフォーク68の他端部(
図3の上端部)には、クラッチレリーズシリンダ61のロッド61aの一端部(
図3の右端部)が連結されている。そして、レリーズフォーク68が作動されることによって、クラッチ機構部60の継合・解放(継合・離脱)動作が行われるようになっている。
【0041】
クラッチペダル70は、ペダルレバー72の下端部に踏み込み部であるペダル部72aが一体形成されて構成されている。そして、車室内とエンジンルーム内とを区画するダッシュパネルに取り付けられた図示しないクラッチペダルブラケットによってペダルレバー72の上端近傍位置が水平軸回りに回動自在に支持されている。ペダルレバー72には、図示しないペダルリターンスプリングによって手前側(ドライバ側)に向かう回動方向への付勢力が付与されている。このペダルリターンスプリングの付勢力に抗してドライバがペダル部72aの踏み込み操作を行うことにより、クラッチ機構部60の解放動作が行われるようになっている。また、ドライバがペダル部72aの踏み込み操作を解除することにより、クラッチ機構部60の継合動作が行われるようになっている(これら解放・継合動作については後述する)。
【0042】
クラッチマスタシリンダ71は、シリンダボディ73の内部にピストン74などが組み込まれた構成となっている。そして、ピストン74には、ロッド75の一端部(
図3の左端部)が連結されており、このロッド75の他端部(
図3の右端部)がペダルレバー72の中間部に接続されている。シリンダボディ73の上部には、このシリンダボディ73内へ動作流体であるクラッチフルード(オイル)を供給するリザーブタンク76が設けられている。
【0043】
クラッチマスタシリンダ71は、ドライバによるクラッチペダル70の踏み込み操作による操作力を受けることで、シリンダボディ73内でピストン74が移動することにより油圧を発生するようになっている。このとき、ドライバの踏み込み操作力がペダルレバー72の中間部からロッド75に伝達されてシリンダボディ73内で油圧が発生する。クラッチマスタシリンダ71で発生する油圧は、シリンダボディ73内のピストン74のストローク位置に応じて変更されるようになっている。
【0044】
クラッチマスタシリンダ71によって発生する油圧は、油圧配管77内のオイルによってクラッチレリーズシリンダ61へ伝達される。
【0045】
クラッチレリーズシリンダ61は、クラッチマスタシリンダ71と同様に、シリンダボディ61bの内部にピストン61cなどが組み込まれた構成となっている。そして、ピストン61cには、ロッド61aの他端部(
図3の左端部)が連結されている。ピストン61cのストローク位置は、このピストン61cが受ける油圧に応じて変更されるようになっている。
【0046】
クラッチ装置6では、クラッチレリーズシリンダ61内の油圧に応じてレリーズフォーク68が作動されることによって、クラッチ機構部60の継合・解放動作が行われるようになっている。この場合、クラッチペダル70の踏み込み操作量に応じてクラッチ機構部60のクラッチ継合力(クラッチ伝達容量)が変更されるようになっている。
【0047】
具体的には、クラッチペダル70の踏み込み操作量が大きくなり、クラッチマスタシリンダ71からクラッチレリーズシリンダ61へオイルが供給されて、クラッチレリーズシリンダ61内の油圧が高まると、ピストン61c及びロッド61aが
図3中右方向へ移動され、ロッド61aと連結されたレリーズフォーク68が回動されて(
図3における矢印Iを参照)、レリーズベアリング67がフライホイール62側へ押される。さらに、同方向へのレリーズベアリング67の移動により、ダイヤフラムスプリング66の内端部が同方向へ弾性変形する。これにともない、ダイヤフラムスプリング66におけるプレッシャプレート65への付勢力が弱まる。このため、プレッシャプレート65、クラッチディスク64、及び、フライホイール62が滑りながら継合される半クラッチ状態となる。そして、さらに、付勢力が弱まると、プレッシャプレート65、クラッチディスク64、及び、フライホイール62が離間されて、クラッチ機構部60が解放状態になる。これにより、エンジン1から手動変速機MTへの動力伝達が遮断される。この場合、クラッチペダル70の踏み込み操作量が所定量を超えると、クラッチ機構部60が完全に切り離される完全解放状態(クラッチ伝達容量が0%の状態)になる。
【0048】
一方、クラッチペダル70の踏み込み操作量が小さくなり、クラッチレリーズシリンダ61からクラッチマスタシリンダ71へオイルが戻されて、クラッチレリーズシリンダ61内の油圧が低くなると、ピストン61c及びロッド61aは
図3中左方向へ移動される。これにより、レリーズフォーク68が回動させられ(
図3における矢印IIを参照)、レリーズベアリング67がフライホイール62から離間される側へ移動される。これにともない、ダイヤフラムスプリング66の外端部によるプレッシャプレート65への付勢力が増大していく。このとき、プレッシャプレート65とクラッチディスク64との間、及び、クラッチディスク64とフライホイール62との間でそれぞれ摩擦力、すなわちクラッチ継合力が発生する。このクラッチ継合力が大きくなると、クラッチ機構部60が継合され、プレッシャプレート65、クラッチディスク64、及び、フライホイール62が一体となって回転する。これにより、エンジン1と手動変速機MTとが直結される。この場合、クラッチペダル70の踏み込み操作量が所定量を下回ると、クラッチ機構部60が完全に継合される完全継合状態(クラッチ伝達容量が100%の状態)になる。
【0049】
また、このクラッチ装置6には、クラッチペダル70の操作量(踏み込み量)に応じた出力信号を発信するクラッチストロークセンサ8Bが設けられている。このクラッチストロークセンサ8Bは、例えば、上記クラッチレリーズシリンダ61のロッド61aの位置を検出することで、ドライバによるクラッチペダル70の操作量を検出するようになっている。そして、このクラッチストロークセンサ8Bの検知信号がエンジンECU9に出力されることにより、クラッチ機構部60の継合状態を認識することができ、これによって現在のクラッチトルク容量(クラッチ機構部60が伝達可能なトルクの最大値)を検知することが可能となっている。なお、このクラッチストロークセンサ8Bの配設位置としては、クラッチレリーズシリンダ61のロッド61aの近傍には限定されず、上記クラッチペダル70の近傍に配設することでクラッチペダル70の移動量を検出するようにしたり、上記レリーズベアリング67の近傍に配設してレリーズベアリング67の移動量を検出するようにしてもよい。
【0050】
また、上記手動変速機MTのアウトプットシャフト(プロペラシャフトPSに繋がるシャフト)に近接してアウトプット回転数センサ8C(
図1を参照)が配設されている。このアウトプット回転数センサ8Cは上記アウトプットシャフトの回転数(出力軸回転数、出力軸回転速度)を検出して回転速度信号をエンジンECU9に出力する。なお、このアウトプット回転数センサ8Cによって検出されたアウトプットシャフトの回転数を上記デファレンシャルギヤDFのギヤ比(最終減速比)で除算することで後輪Tの回転数を求め、これによって車速を算出することが可能となっている。
【0051】
−シフトパターン−
次に、車室内のフロアに配設され、シフトレバーの移動をガイドするシフトゲートのシフトパターン(シフトゲート形状)について説明する。
【0052】
図4は、本実施形態における手動変速機MTのシフトパターンの概略を示している。図中2点鎖線で示すシフトレバーLは、
図4に矢印Xで示す方向のセレクト操作と、このセレクト操作方向に直交する矢印Yで示す方向のシフト操作とが行い得る構成とされている。
【0053】
セレクト操作方向には、1速−2速セレクト位置P1、3速−4速セレクト位置P2、5速−6速セレクト位置P3及びリバースセレクト位置P4が一列に並んでいる。
【0054】
上記1速−2速セレクト位置P1でのシフト操作(矢印Y方向の操作)により、シフトレバーLを1速位置1stまたは2速位置2ndに動かすことができる。シフトレバーLが1速位置1stに操作された場合、上記手動変速機MTの変速機構に備えられた第1のシンクロメッシュ機構が1速成立側に作動して第1速段が成立される。また、シフトレバーLが2速位置2ndに操作された場合、上記第1のシンクロメッシュ機構が2速成立側に作動して第2速段が成立される。
【0055】
同様に、3速−4速セレクト位置P2でのシフト操作により、シフトレバーLを3速位置3rdまたは4速位置4thに動かすことができる。シフトレバーLが3速位置3rdに操作された場合、上記手動変速機MTの変速機構に備えられた第2のシンクロメッシュ機構が3速成立側に作動して第3速段が成立される。また、シフトレバーLが4速位置4thに操作された場合、上記第2のシンクロメッシュ機構が4速成立側に作動して第4速段が成立される。
【0056】
また、5速−6速セレクト位置P3でのシフト操作により、シフトレバーLを5速位置5thまたは6速位置6thに動かすことができる。シフトレバーLが5速位置5thに操作された場合、上記手動変速機MTの変速機構に備えられた第3のシンクロメッシュ機構が5速成立側に作動して第5速段が成立される。また、シフトレバーLが6速位置6thに操作された場合、上記第3のシンクロメッシュ機構が6速成立側に作動して第6速段が成立される。
【0057】
さらに、リバースセレクト位置P4でのシフト操作により、シフトレバーLをリバース位置REVに動かすことができる。このリバース位置REVに操作された場合、上記全てのシンクロメッシュ機構が中立状態となるとともに、上記手動変速機MTの変速機構に備えられたリバースアイドラギヤが作動することにより後進段が成立される。
【0058】
−制御系−
上述したエンジン1の運転状態等の各種制御は上記エンジンECU9によって制御される。このエンジンECU9は、
図5に示すように、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93及びバックアップRAM94などを備えている。
【0059】
ROM92は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU91は、ROM92に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。RAM93は、CPU91での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリである。バックアップRAM94は、エンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0060】
これらROM92、CPU91、RAM93及びバックアップRAM94は、バス97を介して互いに接続されるとともに、外部入力回路95及び外部出力回路96と接続されている。
【0061】
外部入力回路95には、上記吸気圧センサ80、クランクポジションセンサ81、水温センサ82、エアフローメータ83、吸気温センサ84、スロットル開度センサ85、空燃比センサ86、酸素センサ87の他に、ドライバによって踏み込まれるアクセルペダルの開度(アクセル操作量)を検出するアクセル開度センサ88、上記カムシャフトの回転位置を検出するカム角センサ89、クラッチストロークセンサ8B、アウトプット回転数センサ8C等が接続されている。
【0062】
一方、外部出力回路96には、上記スロットルバルブ33を駆動するスロットルモータ34、インジェクタ35、イグナイタ21、EGRバルブ45、ウェイストゲートバルブ48等が接続されている。
【0063】
上記エンジンECU9は、上記各種センサの検出信号に基づいて、エンジン1の各種制御を実行する。例えば、エンジンECU9は、アクセル操作量及び車速などに基づいて要求エンジントルクを設定するとともに、その要求エンジントルクを実現するようにエンジン1の運転状態を制御する(いわゆるトルクデマンド制御)。具体的には、エンジンECU9は、要求エンジントルクを実現するように、スロットルバルブ33を開閉するスロットルモータ34の駆動制御、ウェイストゲートバルブ48の開閉制御、及びイグナイタ21による点火時期制御などを実行する。なお、要求エンジントルクは、例えば、アクセル操作量及び車速などをパラメータとするマップから導出(算出)されて設定される。
【0064】
−変速時制御−
図6は、車両の変速時制御を説明するためのタイミングチャートである。以下では、従来の比較例による変速時制御を説明した後に、本実施形態に対応する実施例による変速時制御について説明する。なお、
図6のクラッチストローク及びアクセル操作量は車両の変速時におけるドライバ操作の一例であり、
図6では、同じドライバ操作がされた場合における比較例による変速時制御と実施例による変速時制御とを示している。
【0065】
[比較例による変速時制御]
まず、比較例による変速時制御について説明する。車両の変速時には、ドライバにより踏み込まれていたアクセルペダルが戻される。
図6の例では、時点t1からアクセルペダルが戻し始められ、時点t2でアクセルペダルが完全に戻される。このとき、アクセル操作量(アクセルペダルの開度)の低下に伴って要求エンジントルクが低下され、時点t2において要求エンジントルクがほぼゼロになる。なお、要求エンジントルクは、アクセル操作量及び車速などに基づいて、所定の時間間隔毎に繰り返し設定される。そして、要求エンジントルクに追従するように、実際のエンジントルク(以下、「実エンジントルク」という)も低下され、時点t2を経過した後にほぼゼロになる。
【0066】
そして、アクセルペダルが完全に戻された時点t2から、ドライバによりクラッチペダルが踏み込まれる。これにより、クラッチ装置が解放され、エンジンと手動変速機との間での動力伝達が遮断される。この状態でドライバによりシフトレバーが操作され、手動変速機の変速段が切り換えられる。その後、ドライバによりクラッチペダルが徐々に戻される。
【0067】
そして、クラッチ装置の継合が開始された時点t3から、ドライバによりアクセルペダルが徐々に踏み込まれる。その後、クラッチペダルが完全に戻された時点t4でクラッチ装置が完全に継合される。
【0068】
ここで、時点t3から時点t4までの半クラッチ中には、アクセルペダルが徐々に踏み込まれるため、要求エンジントルクが徐々に増加されるとともに、実エンジントルクが徐々に増加されるが、エンジンと手動変速機との回転同期を行うためにアクセル操作量が低くされる。このとき、低い要求エンジントルクを実現するようにエンジンの運転状態が制御されるため、ターボチャージャによる過給圧が低くされる。
【0069】
このため、クラッチ装置が完全に継合された時点t4からドライバによりアクセルペダルが踏み増されると、要求エンジントルクが急速に立ち上がるが、過給圧の応答遅れにより、実エンジントルクが段つきになり、要求エンジントルクに対する実エンジントルクの応答が遅れる。
【0070】
[実施例による変速時制御]
次に、実施例による変速時制御について説明する。車両の変速時には、ドライバにより踏み込まれていたアクセルペダルが戻される。
図6の例では、時点t1からアクセルペダルが戻し始められ、時点t2でアクセルペダルが完全に戻される。なお、アクセルペダルの操作は、アクセル開度センサ88(
図5参照)の検出結果に基づいて判断される。
【0071】
そして、エンジンECU9(
図5参照)では、アクセル操作量(アクセルペダルの開度)の低下に伴って要求エンジントルクが低下され、時点t2において要求エンジントルクがほぼゼロになる。なお、要求エンジントルクは、アクセル操作量及び車速などに基づいて、所定の時間間隔毎に繰り返し設定される。このとき、エンジンECU9が要求エンジントルクを実現するようにエンジン1(
図2参照)の運転状態を制御することにより、要求エンジントルクに追従するように実エンジントルクが低下され、時点t2を経過した後に実エンジントルクがほぼゼロになる。
【0072】
そして、アクセルペダルが完全に戻された時点t2から、ドライバによりクラッチペダル70(
図3参照)が踏み込まれる。これにより、クラッチ装置6(
図3参照)が解放され、エンジン1と手動変速機MT(
図1参照)との間での動力伝達が遮断される。なお、クラッチペダル70の操作は、例えばクラッチストロークセンサ8B(
図5参照)の検出結果に基づいて判断される。
【0073】
ここで、実施例による変速時制御では、変速(ギヤチェンジ)が開始された場合に、エンジンECU9が変速開始前の要求エンジントルクを記憶(保持)するようになっている。なお、変速開始前の要求エンジントルクは、例えばエンジンECU9のRAM93(
図5参照)に記憶される。また、エンジンECU9は、例えば、アクセルペダルの戻し操作がされた後に、クラッチペダル70が操作されてクラッチ装置6が解放された場合に変速が開始されたと判断する。そして、エンジンECU9は、変速が開始された場合に、その時点(変速が開始されたと判断した時点)から予め設定された期間をさかのぼり、その期間内における最大の要求エンジントルクを変速開始前の要求エンジントルクとして記憶する。
図6の例では、時点t1の要求エンジントルクが変速開始前の要求エンジントルクとしてエンジンECU9に記憶される。
【0074】
そして、クラッチ装置6が解放された状態でドライバによりシフトレバーL(
図4参照)が操作され、手動変速機MTの変速段が切り換えられる。その後、ドライバによりクラッチペダル70が徐々に戻される。
【0075】
そして、クラッチ装置6の継合が開始された時点t3から、ドライバによりアクセルペダルが徐々に踏み込まれる。その後、クラッチペダル70が完全に戻された時点t4でクラッチ装置6が完全に継合され、その時点t4からドライバによりアクセルペダルが踏み増される。
【0076】
ここで、実施例による変速時制御では、クラッチ装置6の継合が開始された場合(時点t3)に、予告エンジントルクが設定される。この予告エンジントルクとしては、変速開始前の要求エンジントルクと、現在の要求エンジントルクとのうち大きい方が設定される。すなわち、
図6の例では、変速開始前の要求エンジントルクが予告エンジントルクとして設定されているが、現在の要求エンジントルクが変速開始前の要求エンジントルクよりも大きい場合には、その現在の要求エンジントルクが予告エンジントルクとして設定される。これは、変速の前後においてアクセル操作量(ドライバが要求するエンジントルク)が同程度になる蓋然性が高いため、予告エンジントルクとして変速開始前の要求エンジントルクを設定し、現在の要求エンジントルクが大きい場合には、予告エンジントルクとして現在の要求エンジントルクを設定している。なお、予告エンジントルクの設定は、所定の時間間隔毎に繰り返し行われる。
【0077】
予告エンジントルクとは、変速時において最終的に要求されることが予想されるエンジントルクであって、そのエンジントルクを出力可能なように過給圧を予め調整するために設定される。つまり、エンジンECU9は、エンジン1が予告エンジントルクを出力可能なように過給圧を高めながら、現在の要求エンジントルクを実現するようにエンジン1の運転状態を制御する。例えば、エンジンECU9は、ウェイストゲートバルブ48(
図5参照)を閉じ側に制御してターボチャージャ5(
図2参照)による過給圧を高めながら、スロットルモータ34によりスロットルバルブ33(
図2参照)を閉じ側に制御して現在の要求エンジントルクを実現するようにしている。これにより、出力可能なエンジントルクが早期に立ち上がり、
図6の例では出力可能なエンジントルクが要求エンジントルクよりも高くなっている。したがって、時点t3から時点t4までの半クラッチ中に予め過給圧が高くされ、出力可能なエンジントルクが上昇されているため、クラッチ装置6が完全に継合された時点t4からアクセルペダルが踏み増されても、急速に立ち上がる要求エンジントルクに対して実エンジントルクを追従させることが可能である。すなわち、実施例による変速時制御では、比較例による変速時制御に比べて、変速段の切り換え後に実エンジントルクを要求エンジントルクに早期に収束させることが可能であり、
図6に示す時間Rだけ応答の改善を図ることができる。
【0078】
なお、本実施形態における変速時とは、例えば、変速段の切り換えのために減速が開始されてから(時点t1から)、変速段が切り換えられた後に加速されて実エンジントルクが要求エンジントルクに一致するまでの期間である。
【0079】
−効果−
本実施形態では、上記のように、変速時においてクラッチ装置6の継合が開始された場合に、予告エンジントルクを設定することによって、半クラッチ中に予め過給圧を高くすることができるので、クラッチ装置6が完全に継合された後にアクセルペダルが踏み増された場合に、急速に立ち上がる要求エンジントルクに対して実エンジントルクを追従させることができる。したがって、変速時の半クラッチ後(クラッチ装置6が完全に継合された後)における加速性の向上を図ることができる。
【0080】
また、本実施形態では、現在の要求エンジントルクが変速開始前の要求エンジントルクよりも大きい場合に、その現在の要求エンジントルクを予告エンジントルクとして設定することによって、過給圧が不必要に抑えられるのを防止することができる。
【0081】
また、本実施形態では、ウェイストゲートバルブ48を閉じ側に制御するとともに、スロットルモータ34によりスロットルバルブ33を閉じ側に制御することによって、予め過給圧を高くしながら、エンジン1が要求エンジントルクを出力するように制御することができる。
【0082】
−他の実施形態−
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0083】
例えば、本実施形態では、エンジン1がガソリンエンジンである例を示したが、これに限らず、エンジンがディーゼルエンジンであってもよい。この場合には、予め過給圧を高くしながら、エンジン1が要求エンジントルクを出力するように制御するときに、燃料噴射量を制御するようにすればよい。
【0084】
また、本実施形態では、ウェイストゲートバルブ48を閉じ側に制御することにより過給圧を高くする例を示したが、これに限らず、ターボチャージャが可変ノズル式であれば、ベーンを閉じ側(絞り側)に制御することにより過給圧を高くするようにしてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、過給圧を高めながら、現在の要求エンジントルクを実現するようにエンジン1の運転状態を制御する場合に、スロットルバルブ33を制御する例を示したが、これに限らず、過給圧を高めながら、現在の要求エンジントルクを実現するようにエンジンの運転状態を制御する場合に、点火時期を制御(例えば、点火遅角)するようにしてもよい。また、EGRバルブの開度を制御するようにしてもよいし、可変バルブ機構が設けられている場合にその可変バルブ機構を制御するようにしてもよい。さらに、これらを適宜組み合わせることにより、過給圧を高めながら、現在の要求エンジントルクを実現するようにしてもよい。