特許第6052050号(P6052050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052050
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20161219BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20161219BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20161219BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   G02B27/01
   G09F9/00
   G09F9/30
   B60K35/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-102008(P2013-102008)
(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公開番号】特開2014-222308(P2014-222308A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】山岡 亮
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−9081(JP,A)
【文献】 特開2006−38986(JP,A)
【文献】 特開2009−204899(JP,A)
【文献】 特開2003−345330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G09F 9/00
G09F 9/30
G09G 3/20
B60K 35/00
G02F 1/13
G02F 1/137−1/141
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブ画素に分割された複数の画素によって形成されてカラー画像を表示する画像表示面を備え、該画像表示面に表示されたカラー画像を、運転席の前方に設けられた透明な板状部材に投影することによって、該板状部材の前方の景色に重ねて前記カラー画像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記画像表示面は、該画像表示面の中心位置を含んで設定された第1領域と、該第1領域以外の第2領域とを備えており、
前記第1領域内の前記画素は、赤色を表示する前記サブ画素と、緑色を表示する前記サブ画素と、青色を表示する前記サブ画素とを含んで形成されており、
前記第2領域内の前記画素は、前記第1領域内の前記画素よりも、赤色方向、緑色方向、または青色方向の少なくとも何れかの方向に色相を偏らせた色を表示する前記サブ画素を含んだ複数の前記サブ画素によって形成されている
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記第2領域内の前記画素は、赤色を表示する前記サブ画素と、緑色を表示する前記サブ画素とによって形成されているヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記第2領域内の前記画素は、前記第1領域内の前記画素では青色を表示する前記サブ画素の位置に、赤色を表示する前記サブ画素が設けられているヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記第2領域内の前記サブ画素は、前記第1領域内の前記サブ画素よりも彩度の高い色を表示するサブ画素であるヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記画像表示面は、前記第2領域が、該画像表示面の少なくとも左端および右端の位置に設けられているヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席の前方に設けられた透明な板状部材に画像を投影することによって、運転者に画像を表示するヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転席の前方に設けられた透明な板状部材(例えばウィンドシールドやコンバイナー)に画像を投影して、運転者に各種の情報を提示するヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置と表記する)が知られている。このHUD装置では、透明な板状部材を通して見える前方の景色に重ねた状態で画像を表示することができるので、運転者が前方を見たままでも各種の情報を運転者に認識させることができる。
【0003】
また、HUD装置では、運転中の運転者に対して障害物の接近を警告する画像(警告画像)や、注意を喚起する画像(注意喚起画像)を表示することも提案されている(特許文献1)。HUD装置を用いれば、運転中の運転者の視界の中に画像を表示することができるので、警告画像や注意喚起画像が表示されると、運転者は直ちに認識することができるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−251881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、提案されている技術では、警告画像や注意喚起画像が表示されても、警告されていることや注意喚起されていることに、実際には運転者が気付きにくいという問題があった。これは、HUD装置は前方の景色に重ねて画像を表示することが前提となっているため、警告画像や注意喚起画像を表示しても、他の一般的な画像を表示した場合と同様に前方の景色が透けて見えてしまい、その結果、その画像が警告や注意喚起のために表示された画像であることに気付きにくいためである。
【0006】
この発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、運転者に警告あるいは注意喚起のために表示されたことを運転者が直ちに気付くことができるような態様で、画像を表示可能なHUD装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題を解決するために本発明のヘッドアップディスプレイ装置は、透明な板状部材に投影するためのカラー画像を表示する画像表示面に、画像表示面の中心位置を含んだ第1領域と、第1領域以外の第2領域とを設定しておく。そして、第1領域内の画素は、赤色を表示するサブ画素と、緑色を表示するサブ画素と、青色を表示するサブ画素とを含んで形成する。更に、第2領域内の画素は、第1領域内の前記画素よりも、赤色方向、緑色方向、または青色方向の少なくとも何れかの方向に色相を偏らせた色を表示する複数のサブ画素によって形成しておく。
【0008】
第1領域の画素には、光の三原色に対応する赤色、緑色、青色を表示するサブ画素が含まれているので、これらの三原色を混色させることによって多くの色を表示することができる。しかしその一方で、使われないサブ画素が発生し易くなるので、高い輝度の画像は得にくい傾向にある。例えば黄色を表示する場合には、赤色を表示するサブ画素と緑色を表示するサブ画素とを光らせることで黄色を表示することができるが、青色を表示するサブ画素は使用されないので、輝度の高い画像は得にくいと言うことができる。これに対して、第2領域の画素には、第1領域の画素のサブ画素よりも、赤色方向、緑色方向、または青色方向の少なくとも何れかの方向に色相を偏らせた色を表示するサブ画素が設けられている。このため、第1領域に比べて表示可能な色の種類は少なくなるが、色相を偏らせた方向の色を表示する場合には、使用されないサブ画素が生じにくくなるので、第2領域では輝度の高い画像を表示することができる。そこで、運転者に警告あるいは注意喚起するための画像を表示する際には、第2領域で高い輝度の画像を表示して、運転席の前方の透明な板状部材に投影してやる。こうすれば、第1領域で表示した画像を投影した場合とは明らかに異なる態様で画像を表示することができるので、運転者は、その画像が何らかの警告あるいは注意喚起のために表示されたことを直ちに気付くことが可能となる。
【0009】
また、上述した本発明のヘッドアップディスプレイ装置においては、第2領域の画素を、赤色を表示するサブ画素と、緑色を表示するサブ画素とによって形成することとしてもよい。
【0010】
こうすれば、第2領域の画素内の色を、第1領域の画素内の色に対して、赤色あるいは緑色の方向に色相を偏らせたことになる。このため、赤色、緑色、あるいはこれらの混色による黄色の画像を、第1領域を用いて表示した場合とは異なる態様で表示することができる。従って、運転者に対して警告あるいは注意喚起する画像を、赤色、緑色、あるいは黄色の画像としておけば、そのような画像を第2領域で表示することで、警告あるいは注意喚起のための画像であることを運転者が直ちに気付けるような態様で表示することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明のヘッドアップディスプレイ装置においては、第2領域の画素内でのサブ画素の配置を、第1領域の画素内では青色を表示するサブ画素が、赤色を表示するサブ画素に置き換えられた配置としてもよい。
【0012】
こうすれば、第2領域の画素内には、赤色を表示する2つのサブ画素と、緑色を表示する1つのサブ画素が含まれることになる。このため、画素あたり2つのサブ画素を用いて赤い画像を表示することができるので、赤い画像を高い輝度で表示することができる。また、赤色を表示する2つのサブ画素と、緑色を表示する1つのサブ画素とを用いれば、黄色い画像を表示することができるので、黄色い画像についても高い輝度で表示することができる。このため、運転者に対して警告あるいは注意喚起する画像を、赤色、あるいは黄色の画像としておけば、そのような画像を第2領域で表示することで、警告あるいは注意喚起のための画像であることを運転者が直ちに気付けるような態様で表示することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明のヘッドアップディスプレイ装置においては、第2領域のサブ画素は、第1領域のサブ画素よりも、彩度の高い色を表示することとしてもよい。
【0014】
サブ画素は、カラーフィルターを用いて透過する光の波長を制限することによって色を表示する。透過する光の波長範囲を狭めれば、彩度の高い色を表示することができるが、透過する光が少なくなる分だけ、表示される画像の輝度が低下する。そして、画像の輝度が低下すると、運転席の前方の透明な板状部材に投影した時に、投影した画像が見にくくなる傾向にある。しかし、第2領域では高い輝度の画像を表示することができるから、カラーフィルターで透過する光の波長範囲を狭めても画像が見えにくくなることはなく、逆に、高い彩度の色で画像を表示することによって、その画像が何らかの警告あるいは注意喚起のために表示されたことを、運転者に気付き易くすることができる。
【0015】
また、上述した本発明のヘッドアップディスプレイ装置においては、第2領域を、画像表示面の少なくとも左端および右端の位置に設けることとしてもよい。
【0016】
こうすれば、何らかの警告あるいは注意喚起するための画像を、運転者に対して左側あるいは右側に表示することができる。その結果、単に警告あるいは注意喚起するだけでなく、左側あるいは右側の何れを注意すればよいかを運転者に伝えることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ヘッドアップディスプレイ装置10を搭載した車両1およびヘッドアップディスプレイ装置10の構造を示す説明図である。
図2】本実施例の画像表示面100の第1領域102および第2領域104でのサブ画素の配置を例示した説明図である。
図3】本実施例のヘッドアップディスプレイ装置10で表示される注意喚起画像4yおよび警告画像4rを例示した説明図である。
図4】画像表示面100の第1領域102および第2領域104でのカラーフィルターRの特性を比較して示した説明図である。
図5】第2領域104内でのサブ画素が他の態様で配列された第1変形例についての説明図である。
図6】第2領域104の画素114内での色の配置が、第1領域102の画素112内での色の配置よりも緑色に近付くように設定された第2変形例についての説明図である。
図7】第2変形例の第1領域102および第2領域104でのカラーフィルターGの特性を比較して示した説明図である。
図8】第2領域104の画素114内での色の配置が、第1領域102の画素112内での色の配置よりも青色に近付くように設定された第3変形例についての説明図である。
図9】第3変形例の第1領域102および第2領域104でのカラーフィルターBの特性を比較して示した説明図である。
図10】画像表示面100の左右の両端にも第2領域104が設定された第4変形例を例示した説明図である。
図11】第4変形例のヘッドアップディスプレイ装置10で注意喚起画像4yあるいは警告画像4rが表示された様子を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために実施例について説明する。
A.装置構成 :
図1(a)には、本実施例のヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置)10が車両1に搭載された様子が示されている。図示されるように、本実施例のヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置)10は、運転席から見て車両1の前方のダッシュボード3内に搭載されており、ウィンドシールド2に向けて画像を投影する。すると、HUD装置10から投影された光がウィンドシールド2で反射して運転者の目に到達し、その結果、運転者は、投影された画像の虚像を、ウィンドシールド2の向こう側に見える表示画像4として認識する。尚、本実施例のウィンドシールド2は、本発明における「板状部材」に対応する。
【0019】
また、図1(b)に示されるように、本実施例のHUD装置10は、画像表示面100に画像を表示するとともに表示した画像を投影する画像投影部12と、画像投影部12から投影された画像を反射する平面鏡14と、平面鏡14によって反射された画像を更に反射してウィンドシールド2に投影する凹面鏡16とを備えている。
画像投影部12の画像表示面100は、カラーフィルターを備えた周知の液晶表示画面であり、画面上に種々のカラー画像を表示させることができる。そして、液晶表示画面上にカラー画像を表示した状態で背面側からバックライトで光を照射すると、表示されたカラー画像が平面鏡14に向けて投影される。
【0020】
図2には、本実施例の画像表示面100を正面から見た状態が示されている。図示されるように、本実施例の画像表示面100は、画面の中央部分を含み、尚且つ画面の大部分の範囲を占める第1領域102と、画面の上端に設けられた第2領域104とに区分されている。これら第1領域102および第2領域104は何れも、複数の画素が二次元的に配列されて形成されており、何れの画素も3つのサブ画素によって形成されている。
また、サブ画素には、光の三原色に対応する赤色、緑色、青色の何れかの光を透過させるカラーフィルターが設けられている。このため、それぞれのサブ画素は、赤色、緑色、青色の何れかの一つの色を表示することができる。もっとも、第1領域102の画素と第2領域104の画素とでは、各サブ画素に設けられるカラーフィルターの配列が異なっており、従って、第1領域102と第2領域104とでは、画素内でのサブ画素の色の配列が異なっている。
【0021】
図2では、第1領域102および第2領域104のそれぞれから4画素分の範囲を拡大して表示することによって、各画素内でサブ画素が表示する色の配列が示されている。
先ず、第1領域102について説明すると、第1領域102の画素112には、赤色を透過するカラーフィルター(以下、カラーフィルターR)が設けられたサブ画素113rと、緑色を透過するカラーフィルター(以下、カラーフィルターG)が設けられたサブ画素113gと、青色を透過するカラーフィルター(以下、カラーフィルターB)が設けられたサブ画素113bとが、この順序で配列されている。尚、設けられたカラーフィルターの違いを区別する必要がない場合には、第1領域102のサブ画素113r,113g,113bを、単にサブ画素113と表記することがある。
【0022】
これに対して第2領域104の画素114は、カラーフィルターRが設けられた2つのサブ画素115rと、カラーフィルターGが設けられた1つのサブ画素115gとを有している。また、画素114内での、これらカラーフィルターRのサブ画素115rおよびカラーフィルターGのサブ画素115gによる色の配置は、第1領域102であればカラーフィルターBのサブ画素113bとなる位置のサブ画素が、カラーフィルターRのサブ画素115rに置き換えられた色の配置となっている。尚、第2領域104においても、設けられたカラーフィルターの違いを区別する必要がない場合には、第2領域104のサブ画素115r,115gを、単にサブ画素115と表記することがある。
【0023】
B.画像の表示例 :
図3には、このような本実施例の画像表示面100を備えるHUD装置10によって表示された表示画像4が例示されている。
通常の走行状態では、画像表示面100の主に第1領域102に表示した画像をウィンドシールド2に投影することで、図3(a)に例示したような表示画像4を表示する。図2を用いて前述したように第1領域102内の画素112には、カラーフィルターRが設けられて赤色を表示するサブ画素113rと、カラーフィルターGが設けられて緑色を表示するサブ画素113gと、カラーフィルターBが設けられて青色を表示するサブ画素113bとが設けられている。このため、画像表示面100の第1領域102では、赤色、緑色、青色を混色させることによって様々な色のカラー画像を表示することができる。そして、第1領域102の画像をウィンドシールド2に投影することによって、様々な色の表示画像4を表示することができる。
【0024】
図3(b)には、通常の走行中に表示される画像に加えて、運転者に注意を促すための黄色い注意喚起画像4yが表示された様子が例示されている。画像表示面100の第2領域104内の画素114には、カラーフィルターRが設けられて赤色を表示するサブ画素115rと、カラーフィルターGが設けられて緑色を表示するサブ画素115gとが設けられている。従って、第2領域104では、赤色の画像や、緑色の画像だけでなく、赤色と緑色とを混色させて得られる黄色の画像も表示することができる。そこで、第2領域104に表示した黄色の画像をウィンドシールド2に投影することによって、注意喚起画像4yが表示されている。
【0025】
図3(c)には、運転者に注意を促すための注意喚起画像4yに替えて、運転者に警告する赤色の警告画像4rが表示された様子が例示されている。図2を用いて前述したように、画像表示面100の第2領域104内の画素114には、カラーフィルターRが設けられて赤色を表示するサブ画素115rが2つずつ設けられている。このため、2つのサブ画素115rで赤色を表示することによって、第1領域102では表示できないような高い輝度を有する赤色の画像を表示することができる。そして、この高い輝度を有する赤い色の画像をウィンドシールド2に投影することによって、図3(c)に示した警告画像4rを表示する。このため、ウィンドシールド2を通して見える前方の景色が明るい場合でも、その明るい景色に負けない十分な明るさで警告画像4rが表示される。その結果、第1領域102に表示される通常の画像とは異なり、警告画像4rは前方の景色がほとんど透けずに、はっきりと見える態様で表示されるので、運転者は警告画像4rが表示されたことを直ちに認識することが可能となる。
【0026】
また、図3(b)に示した黄色い注意喚起画像4yについても、2つのサブ画素115rによる赤色と、サブ画素115gによる緑色とを混色させて表示することとすれば、第1領域102では表示できないような高い輝度を有する黄色い画像を表示することができる。従って、このようにして黄色い画像を表示すれば、注意喚起画像4yについても、明るい景色に負けない十分な明るさで表示することが可能となる。その結果、第1領域102に表示される通常の画像とは異なって、前方の景色がほとんど透けずにはっきりと見える態様で注意喚起画像4yを表示することができるので、注意喚起画像4yが表示されたことを、運転者に直ちに認識させることが可能となる。
【0027】
尚、第2領域104の画素114には、青色を表示するサブ画素115は設けられていないが、赤色を表示するサブ画素115rや、緑色を表示するサブ画素115gは設けられている。従って、第2領域104では、青色、あるいは青色を混色させて得られる色の画像は表示することができないが、赤色や、緑色、更には黄色のように赤色と緑色とを混色させて得られる色の画像は表示することができる。このことから、注意喚起画像4yや警告画像4rを表示する必要がない場合は、第1領域102で表示するような通常の画像を、第2領域104で表示してもよい。
【0028】
C.フィルター特性 :
また、上述したように第2領域104には、1つの画素114に対して、赤色を表示するサブ画素115rが2つずつ設けられているので、赤色については十分に高い輝度で表示することができる。そこで、本実施例のHUD装置10では、第2領域104のサブ画素115rに設けたカラーフィルターRの特性が、第1領域102のサブ画素113rに設けたカラーフィルターRの特性とは異なる特性に設定されている。
【0029】
図4には、第1領域102のサブ画素113rに設けられたカラーフィルターRと、第2領域104のサブ画素115rに設けられたカラーフィルターRとについて、光の波長に対する透過率が示されている。
図中に実線で示した第2領域104用のカラーフィルターRの透過率は、600nm付近より長い波長では高い値を有しているが、600nm付近よりも短い波長になると値が急激に低下する。一般に人間は、600nmより長い波長の光が目に入ると、赤色を知覚するので、第2領域104用のカラーフィルターRを透過した光は赤色の光となる。
これに対して、図中に破線で示した第1領域102用のカラーフィルターRの透過率は、600nm付近の波長では値が低下せず、人間が黄色と感じる波長付近で急激に低下する。第1領域102用のカラーフィルターRがこのような特性に設定されているのは、純粋な赤色の光だけでなく、少し黄色がかった赤色の光もフィルターを透過させることで、少しでも輝度の高い画像を表示可能とするためである。その結果、第1領域102で表示される赤色の画像は、純粋な赤色の光と少し黄色がかった赤色の光とが混じりあった朱色のような画像となる。
【0030】
もっとも、第1領域102で朱色に近い赤色を表示しているのは、画像の輝度を上げるためであって、本来的には純粋な赤色(彩度の高い赤色)を表示することが望ましい。特に、図3(c)に例示したような警告画像4rについては、朱色のような赤色で表示するよりも、純粋な(はっきりした感じに見える)赤色で表示した方が、警告されていることに気付き易くなるので望ましい。
そして、このような観点からすると、上述したように本実施例のHUD装置10の第2領域104では、赤色については十分に高い輝度で表示することができるので、黄色がかった赤色の光を透過させて輝度を上げる必要はない。
【0031】
そこで、第2領域104用のカラーフィルターRについては、図4中に実線で示した特性のフィルターを使用する。このため、第2領域104では純粋な赤色の画像を表示することが可能となり、その画像をウィンドシールド2に投影することで、純粋な赤色の(従って、はっきりした感じに見える)警告画像4rを表示することができる。その結果、前方の景色が透けて見え難い程度の十分な輝度で画像を表示するだけでなく、警告されていることに気付き易い純粋な赤色で表示することができるので、警告画像4rが表示されたことを運転者が直ちに気付くことが可能となる。
【0032】
D.変形例 :
上述した本実施例のHUD装置10には、種々の変形例が存在している。以下では、これら変形例について、上述した本実施例との相違点を中心として簡単に説明する。尚、以下の変形例では、本実施例と同様な構成については同じ符番を付すこととして、詳細な説明は省略する。
【0033】
D−1.第1変形例 :
上述した実施例では、第1領域102の画素112内での色の配置と、第2領域104の画素114内での色の配置とを比較すると、第1領域102では青色のサブ画素113bが、第2領域104では赤色のサブ画素115rに置き換わった配置になっているものとして説明した。しかし、赤色と緑色と青色の3色が配置された第1領域102での色の配置よりも、第2領域104での色の配置の方が、全体として赤色に近付くのであれば、必ずしも、第1領域102の青色のサブ画素113bを、第2領域104では赤色のサブ画素115rに置き換えたような色の配置としなくても構わない。
【0034】
図5には、このような第1変形例における第2領域104の画素114内での色の配置が例示されている。
例えば、図5(a)に例示した第2領域104の画素114では、第1領域102の画素112内の青色のサブ画素113bが、黄色い光を透過するカラーフィルターYが設けられた黄色いサブ画素115yに置き換えられた色の配置となっている。
こうすれば、画素114内の全てのサブ画素115を用いて黄色い画像を表示することができるので、図3(b)に例示した注意喚起画像4yを、前方の景色がほとんど透けない程度の十分に高い輝度で表示することができる。また、図3(c)に例示した警告画像4rについても、画素114中の赤色のサブ画素115と黄色のサブ画素115とを用いることで、(朱色に近い赤色にはなるものの)十分に高い輝度で表示することができる。
更に、赤色の画像や黄色の画像については十分な輝度で表示することができるので、カラーフィルターRあるいはカラーフィルターYの特性を、より純粋な赤色、あるいはより純粋な黄色を表示可能な特性とすることができる。その結果、警告画像4rや注意喚起画像4yを、警告されていることや、注意喚起されていることに気付き易い態様で表示することができる。
【0035】
また、図5(b)に示した例では、第2領域104の画素114の全てのサブ画素115が、赤色のサブ画素115rとなっている。
こうすれば、第2領域104では赤色の画像をたいへんに高い輝度で表示することができるので、前方の景色がほとんど透けない態様で警告画像4rを表示することができる。また、カラーフィルターRの特性を、より純粋な赤色を表示可能な特性とすることで、警告されていることに気付き易い態様で警告画像4rを表示することが可能となる。
【0036】
あるいは、図5(c)に例示するように、赤色のサブ画素115rと緑色のサブ画素115gとを交互に並べた色の配置としてもよい。こうすれば、第2領域104を、赤色のサブ画素115rと緑色のサブ画素115gとが半分ずつの比率で占めることになるので、何れのサブ画素115r,115gについても第1領域102での比率よりも高くなる。このため、赤色の画像や、緑色の画像を高い輝度で表示することができ、更には黄色の画像も高い輝度で表示することができる。
また、赤色の画像や緑色の画像を高い輝度で表示することができるので、カラーフィルターRやカラーフィルターGの特性を、より純粋な赤色や緑色を表示可能な特性とすることができる。その結果、警告されていることや、注意喚起されていることに運転者が気付き易い態様で、警告画像4rや注意喚起画像4yを表示することができる。更には緑色の画像についても、前方の景色が透けて見え難い態様で、しかも純粋な緑色の画像を表示することができるので、注意喚起画像4yや警告画像4rを緑色の画像で表示することもできる。すなわち、前方の景色が透けて見え難く、しかも純粋な緑色での表示態様は、第1領域102で表示される通常の画像とは明らかに表示態様が異なっている。このため、このような態様であれば緑色の画像を表示した場合でも、運転者が直ちに認識することができるので、注意喚起画像4yや警告画像4rを緑色の画像で表示することも可能となる。
【0037】
また、図5(d)に例示したように、赤色のサブ画素115rと黄色のサブ画素115yとを交互に並べた色の配置とすれば、赤色の画像や黄色の画像を、前方の景色が透けて見え難い程度の高い輝度で表示することができる。また、カラーフィルターRやカラーフィルターYの特性を、より純粋な赤色や黄色を表示可能な特性とすることで、警告されていることや注意喚起されていることに気付き易い態様で、警告画像4rや注意喚起画像4yを表示することが可能となる。
【0038】
D−2.第2変形例 :
上述した実施例あるいは第1変形例では、赤色と緑色と青色の3色が配置された第1領域102での色の配置が、第2領域104では、全体として赤色に近付くような色の配置に変更されているものとして説明した。しかし、第2領域104の色配置は、第1領域102での色配置に対して緑色に近付くような色の配置とすることもできる。
【0039】
図6には、このような第2変形例における第2領域104の画素114内での色の配置が例示されている。
例えば、図6(a)に例示した第2領域104の画素114では、第1領域102の画素112内の青色のサブ画素113bが、緑色のサブ画素115gに置き換えられた色の配置となっている。また、図6(b)では、第1領域102の画素112内の赤色のサブ画素113rが、緑色のサブ画素115gに置き換えられた色の配置となっている。更に、図6(c)では、画素114の全てのサブ画素115が緑色のサブ画素115gとなっている。
【0040】
こうすれば、第2領域104では、緑色の画像を十分に高い輝度で表示することができるので、この画像をウィンドシールド2に投影することで、前方の景色が透けて見え難い態様で緑色の画像を表示することができる。そして、このように前方の景色が透けて見え難い態様で表示された画像は、第1領域102を用いて表示される通常の画像とは明らかに表示態様が異なっているので、運転者は、画像が表示されたことに直ちに気付くことができる。このため、注意喚起画像4yや警告画像4rを緑色で表示した場合にも、これらの画像が表示されたことを運転者に直ちに気付かせることが可能となる。
また、表示画像4として文字の画像を表示する場合には、緑色で表示すると読み易いことが経験的に知られている。このことから、上述した第2変形例によれば、運転者が読み易い態様で文字の画像を表示することも可能となる。
【0041】
更に、上述した第2変形例の第2領域104では、第1領域102よりも高い輝度で、緑色の画像を表示することができるので、第2領域104と第1領域102とでカラーフィルターGの特性を異ならせてもよい。
図7には、このような第2領域104でのカラーフィルターGの特性が、第1領域102でのカラーフィルターGの特性と比較して示されている。図中に破線で示した第1領域102用のカラーフィルターGは、緑色の光だけでなく、より波長の長い黄色の光や、緑色よりも波長の短いシアン色の光も透過する。これは、緑色の画像をできるだけ高い輝度で表示するためであるが、その反面で、表示される緑色は純粋な緑色というよりも、少し薄い緑色となる。
【0042】
これに対して、図中に実線で示した第2領域104用のカラーフィルターGでは、緑色の光は透過するが、黄色の光やシアン色の光はほとんど透過させない。このため、第2領域104では、純粋な緑色(彩度の高い緑色)で画像を表示することができるので、この画像をウィンドシールド2に投影することで、前方の景色が透けて見え難い態様で、しかも純粋な緑色の画像を表示することができる。そして、このような態様で画像を表示することで、画像が表示されたことを、運転者がより一層気付かせ易くすることができる。また、文字の画像を表示した場合でも、運転者がより一層読み易い態様で表示することが可能となる。
【0043】
D−3.第3変形例 :
上述した第2変形例では、第2領域104の色配置が、第1領域102での色配置に対して緑色に近付くような色の配置に設定されているものとしていた。しかし、第2領域104の色配置が、第1領域102での色配置に対して青色に近付くような色の配置とすることもできる。
【0044】
図8には、このような第3変形例における第2領域104の画素114内での色の配置が例示されている。
例えば、図8(a)に例示した第2領域104の画素114では、第1領域102の画素112内の赤色のサブ画素113rが、青色のサブ画素115bに置き換えられた色の配置となっている。また、図8(b)では、画素114の全てのサブ画素115が青色のサブ画素115bとなっている。
こうすれば、第2領域104では、青色の画像を十分に高い輝度で表示することができるので、この画像をウィンドシールド2に投影することで、前方の景色が透けて見え難い態様で青色の画像を表示することができる。そして、このように前方の景色が透けて見え難い態様で表示された画像は、第1領域102を用いて表示される通常の画像とは明らかに表示態様が異なっているので、運転者は、画像が表示されたことに直ちに気付くことができる。このため、注意喚起画像4yや警告画像4rを青色で表示した場合にも、これらの画像が表示されたことを運転者に直ちに気付かせることが可能となる。
また、青色は、赤色や、黄色、緑色に比べて落ち着いた色調なので、運転者の神経を過度に刺激しない態様で、注意喚起や警告することが可能となる。
【0045】
また、上述した第3変形例の第2領域104では、第1領域102よりも高い輝度で、青色の画像を表示することができるので、第2領域104と第1領域102とでカラーフィルターBの特性を異ならせてもよい。
図9には、このような第2領域104でのカラーフィルターBの特性が、第1領域102でのカラーフィルターBの特性と比較して示されている。図中に破線で示した第1領域102用のカラーフィルターBは、青色の光だけでなく、より波長の長いシアン色の光も透過する。これは、青色の画像をできるだけ高い輝度で表示するためであるが、その反面で、表示される青色は少しシアン色がかった青色となる。
【0046】
これに対して、図中に実線で示した第2領域104用のカラーフィルターBでは、青色の光は透過するが、シアン色の光はほとんど透過させない。このため、第2領域104では、純粋な青色(彩度の高い青色)で画像を表示することができるので、この画像をウィンドシールド2に投影することで、前方の景色が透けて見え難い態様で、しかも純粋な青色の画像を表示することができる。
そして、このような態様で画像を表示することで、画像が表示されたことを、運転者がより一層気付かせ易くすることができる。また、純粋な青色で画像を表示することで、より運転者の神経を刺激しない態様で画像を表示することが可能となる。
【0047】
D−4.第4変形例 :
また、上述した実施例および各種の変形例では、画像表示面100の上端に第2領域104が設けられているものとして説明した。従って、画像表示面100の画像がウィンドシールド2に投影された表示画像4では、図3に示したように、表示画像4の下部に第2領域104の画像が表示されることになる。
しかし、第2領域104は画像表示面100の端部に設ければ良く、必ずしも画像表示面100の上部に設ける必要はない。
【0048】
図10には、画像表示面100の上端と、左右の両端とに第2領域104が設けられた第4変形例の画像表示面100が例示されている。
図示した第4変形例では、第1領域102の画素112には、赤色のサブ画素113rと、緑色のサブ画素113gと、青色のサブ画素113bとが設けられているが、第2領域104の画素114には、2つの赤色のサブ画素115rと、1つの緑色のサブ画素115gとが設けられている。このため第4変形例の第2領域104では、赤色の画像および黄色の画像を高い輝度で表示することができ、その画像をウィンドシールド2に投影することで、前方の景色が透けて見え難い態様で、赤色の画像や黄色の画像を表示することができる。
【0049】
図11には、第4変形例での表示画像4が例示されている。通常の状態では、主に第1領域102を用いて画像を表示することにより、図11(a)に示すような画像を表示する。これに対して、車両の左側に障害物や車両、歩行者などが存在する旨を、運転者に注意喚起あるいは警告しようとする場合には、画像表示面100の左端の第2領域104を用いて、黄色の注意喚起画像4yあるいは赤色の警告画像4rを表示する。
図11(b)には、このようにして注意喚起画像4y、あるいは警告画像4rが表示された様子が例示されている。このようにして表示された画像は、前方の景色が透けて見え難い態様で表示されるので、通常の画像ではなく、注意喚起あるいは警告するために表示された画像であることを直ちに認識することができる。そして、そのような画像が左側に表示されているので、運転者は、車両の左側の障害物などを注意喚起あるいは警告されていることを直ちに認識することが可能となる。
【0050】
また、車両の右側の障害物や車両、歩行者などを、運転者に注意喚起あるいは警告しようとする場合には、画像表示面100の右端の第2領域104を用いて、黄色の注意喚起画像4yあるいは赤色の警告画像4rを表示する。
図11(c)には、このようにして注意喚起画像4y、あるいは警告画像4rが表示された様子が例示されている。このようにして表示された画像は、前方の景色が透けて見え難い態様で表示される。そして、そのような画像が右側に表示されているので、運転者は、車両の右側に存在する障害物などを注意喚起あるいは警告されていることを直ちに認識することが可能となる。
【0051】
以上、本実施例および各種の変形例について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…車両、 2…ウィンドシールド、 3…ダッシュボード、
4…表示画像、 4r…警告画像、 4y…注意喚起画像、
10…HUD装置、 12…画像投影部、 14…平面鏡、
16…凹面鏡、 100…画像表示面、 102…第1領域、
104…第2領域、 112…画素、 113…サブ画素、
114…画素、 115…サブ画素。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11