(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052068
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】半導体装置の保護回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/08 20060101AFI20161219BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20161219BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20161219BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20161219BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20161219BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20161219BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20161219BHJP
【FI】
H03K17/08 C
H01L27/04 H
H01L29/80 H
H02M1/00 E
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-120711(P2013-120711)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-239327(P2014-239327A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2015年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 和博
【審査官】
及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−211096(JP,A)
【文献】
特開2009−246276(JP,A)
【文献】
特開2007−59882(JP,A)
【文献】
特開2002−50640(JP,A)
【文献】
特開平2−185069(JP,A)
【文献】
特開平6−69423(JP,A)
【文献】
特開平5−299990(JP,A)
【文献】
特開平9−163583(JP,A)
【文献】
特開平1−318430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/08
H01L 21/338
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 29/778
H01L 29/812
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に対して接続され、該負荷に対する電力供給のオンオフを制御する半導体スイッチング素子となる高電子移動度トランジスタ(1)と、
前記高電子移動度トランジスタのドレイン−ゲート間に、該ドレイン−ゲート間において順方向接続されたサイリスタ(2)および該サイリスタに直列接続された第1抵抗(3)を備えており、前記高電子移動度トランジスタのソース−ゲート間に、第2抵抗(4)および該第2抵抗に対して直列接続され前記サイリスタがオフされているときに前記ドレイン−ゲート間の電流の流れを遮断すると共に前記サイリスタがオンされているときに前記ドレイン−ゲート間の電流の流れを許容する遮断手段(5、10)が備えられた保護素子と、を備えていることを特徴とする半導体装置の保護回路。
【請求項2】
前記高電子移動度トランジスタのターンオフ時における該高電子移動度トランジスタのドレイン電圧が前記サイリスタの順方向耐圧をクランプ電圧としてクランプされることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の保護回路。
【請求項3】
前記クランプが解除される電圧であるクランプ解除電圧が前記第1抵抗の抵抗値R1および前記第2抵抗の抵抗値R2とを合わせた抵抗値(R1+R2)に対して前記サイリスタにおける保持電流Ihを掛けた値((R1+R2)×Ih)に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の保護回路。
【請求項4】
前記高電子移動度トランジスタのドレイン電圧が前記クランプ電圧にクランプされているときにおける該高電子移動度トランジスタのゲート電圧(Vg)が前記第1抵抗の抵抗値R1および前記第2抵抗の抵抗値R2より、R2/(R1+R2)×クランプ電圧とされていることを特徴とする請求項2または3に記載の半導体装置の保護回路。
【請求項5】
前記サイリスタが前記第1抵抗のハイサイド側に接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置の保護回路。
【請求項6】
前記サイリスタが前記第1抵抗のローサイド側に接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置の保護回路。
【請求項7】
前記ソース−ゲート間には前記第2抵抗と共に前記遮断手段としてダイオード(5)が接続されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の半導体装置の保護回路。
【請求項8】
前記ソース−ゲート間には前記第2抵抗と共に前記遮断手段としてサイリスタ(10)が接続されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の半導体装置の保護回路。
【請求項9】
前記ドレイン−ゲート間に接続されるサイリスタは、複数段とされていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の半導体装置の保護回路。
【請求項10】
前記サイリスタのベースがオープン状態もしくは該サイリスタのカソードにショートさせられていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の半導体装置の保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電子移動度トランジスタ(以下、HEMT(High Electron Mobility Transistor)という)にて構成される半導体スイッチング素子を有する半導体装置の保護回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体スイッチング素子を誘導性負荷に接続し、半導体スイッチング素子にて誘導性負荷への電力供給のオンオフを制御する場合、ターンオフ時に誘導性負荷に蓄積したエネルギーを回路内で消費する必要がある。このとき蓄積されるエネルギーEは、自己インダクタンスをL、電流をIとして、E=1/2×LI
2となっている。
【0003】
半導体スイッチング素子がシリコンにて構成されるMOSFETの場合、ドレイン―ソース間において、カソードがドレインに接続され、アノードがソースに接続されるような逆並列接続の寄生ダイオードを有したデバイス構造となっている。このため、MOSFETをオフしたときには、誘導性負荷からのエネルギーを寄生ダイオードのアバランシェ領域を利用して、そのエネルギーを消費することができるため、比較的大きなアバランシェエネルギー耐量を有している。
【0004】
なお、アバランシェエネルギー耐量とは、デバイスの破壊耐量の指標であり、誘導性負荷に蓄積されたエネルギーをデバイスで消費した場合、デバイスが破壊に至らずに消費できる最大エネルギーと定義される。
【0005】
一方、化合物半導体によるGaN−HEMTやGaAs−HEMTなどを半導体スイッチング素子として適用する場合、通常、誘導性負荷からのエネルギーを素子内部で消費できず、ゲート−ドレイン間耐量(BVgd)やソース−ドレインオフ間耐圧(Bvdsoff)を上回り素子破壊に至る。したがって、インバータなど、自己インダクタンスLを持つ誘導性負荷のシステムでは、保護素子と共に用いられるのが通例である。
【0006】
例えば、HEMTのソース−ドレイン間に保護素子として外付ダイオードを逆並列接続する方法がある。この方法では、外付ダイオードを備えることでシリコンのMOSFETと同様の構造を実現し、誘導性負荷からのエネルギーを消費する。しかしながら、HEMTに対して定格電流を流している状態からHEMTをオフしたときのエネルギーをダイオード側で消費することになるため、ダイオードにHEMTと同程度の大きな電流が流れることが要求され、ダイオードがサイズ的に大きくなるという問題がある。
【0007】
このため、特許文献1において、ゲート−ドレイン間およびソース−ゲート間に保護素子としてツェナーダイオードを逆並列接続する構造が提案されている。この方法では、誘導性負荷のエネルギーによってドレイン電圧が増大したときに、ゲート−ドレイン間のツェナーダイオードの降伏と同時にソース−ゲート間のツェナーダイオードも降伏し、降伏電流が流れる。ツェナーダイオードの段数に応じて分圧された電圧がゲート電圧としてHEMTに印加される。この降伏電流が通常にオンする場合と同じように、ゲートを充電することでチャネルが開きHEMTがオンする。すなわち、誘導性負荷のエネルギーは、HEMTをオンさせることでHEMTで消費する。このため、ツェナーダイオードは、HEMTを駆動する程度の小さな電流が流れる構成であればよいため、ダイオードのサイズを小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−164158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に示される構造であっても、ゲートを駆動するのに十分な電力を供給する程度の電流は必要である。半導体スイッチング素子のうち高耐圧な素子を保護する場合は、非常に多くの段数のダイオードが必要である。例えば、数百ボルト[V]の阻止電圧を得ようとするとダイオードの段数が数十〜数百段になり非常に多くなる。保護状態では、降伏電流が流れるが、その降伏電流であっても、段数の多いダイオードに逆方向に電流が流れるため非常に抵抗が大きくなる。したがって、期待されるほど電流値が大きくならず、半導体スイッチング素子の駆動に十分な電流を流すにはダイオードを大きくしなければならなくなる。
【0010】
なお、ゲート−ドレイン間およびソース−ゲート間に保護素子としてダイオードを順方向に並列接続させる構造もあり、この構造だとダイオードが順方向とされているため、比較的大きな電流を流すことが可能になる。ところが、高耐圧素子を保護するためには、さらにダイオードの段数を多くしなければならず、ダイオードが大きくなってしまう。また、この構造においてダイオードの代わりに、ゲート−ドレイン間およびソース−ゲート間にMISトランジスタを並列接続することでダイオード段数を減らすこともできる。しかし、サージ保護の際にMISトランジスタがブレークダウンするときに流せる電流は大きくなく、半導体スイッチング素子のゲートを駆動するのに十分な電流を流そうとすると大きなMISトランジスタが必要になる。つまり、このような構造は低耐圧を想定した構造であり、高耐圧に適した構造ではない。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、保護素子のサイズ増大を抑制しつつ、アバランシェエネルギー耐量を得ることができる半導体装置の保護回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、負荷に対して接続され、負荷に対する電力供給のオンオフを制御する半導体スイッチング素子となるHEMT(1)と、HEMTのドレイン−ゲート間に、該ドレイン−ゲート間において順方向接続されたサイリスタ(2)および該サイリスタに直列接続された第1抵抗(3)を備えており、HEMTのソース−ゲート間に、第2抵抗(4)および該第2抵抗に対して直列接続されサイリスタがオフされているときにドレイン−ゲート間の電流の流れを遮断すると共にサイリスタがオンされているときにドレイン−ゲート間の電流の流れを許容する遮断手段(5、10)が備えられた保護素子とを備えていることを特徴としている。
【0013】
このように、保護素子としてHEMTのドレイン−ゲート間にサイリスタおよび第1抵抗を備えると共に、HEMTのソース−ゲート間に第2抵抗および遮断手段を備えるようにしている。このため、HEMTのターンオフ時にサイリスタがオンして保護素子側に電流が流れるようにでき、そのときに第1抵抗および第2抵抗で分圧されて形成されるゲート電圧(Vg)によってHEMTをオンさせることができる。これにより、ターンオフ時に、HEMTをオンすることで誘導性負荷に蓄積されたエネルギーを消費することが可能となる。したがって、アバランシェエネルギー耐量を得ることが可能な半導体装置の保護回路とすることが可能になる。
【0014】
また、このような保護回路において、保護素子は、サイリスタと第1抵抗と第2抵抗および遮断手段によって構成可能であり、遮断手段についてもHEMTのゲート駆動が行える程度の低い耐圧だけで十分である。このため、保護素子のサイズ増大を抑制することも可能となる。
【0015】
よって、保護素子のサイズ増大を抑制しつつ、アバランシェエネルギー耐量を得ることができる半導体装置の保護回路とすることが可能となる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の保護回路の回路図である。
【
図2】サイリスタ2におけるアノード−カソード間における電圧V
AKと電流Iとの関係を示す特性線を表した図である。
【
図3】
図2に示した特性線と負荷線との関係を示した図である。
【
図4】他の実施形態にかかる半導体装置の保護回路の回路図である。
【
図5】他の実施形態にかかる半導体装置の保護回路の回路図である。
【
図6】他の実施形態にかかる半導体装置の保護回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の保護回路について説明する。
図1に示すように、保護回路は、保護対象となる半導体スイッチング素子としてHEMT1を備えていると共に、HEMT1のドレイン−ゲート間およびソース−ゲート間に保護素子が備えられた構成とされている。
【0020】
HEMT1は、外部からのゲート駆動信号に基づいてオンオフ駆動されるものであり、例えばドレイン−ソース間に接続される誘導性負荷(図示せず)に対する電力供給のオンオフを制御する。HEMT1は、例えばSi(111)やGaAsなどの基板の表面に、電子走行層となるGaN層および電子供給層となるn型のAlGaN層が積層された構造を化合物半導体基板として用いて形成されている。そして、AlGaN層の表面にリセス形状部が形成され、リセス形状部内にゲート電極が配置されると共に、ゲート電極を挟んだ両側にソース電極およびドレイン電極が形成されている。なお、ここではHEMT1の一例を示したが、GaN−HEMTやGaAs−HEMTなど、どのような材料で構成されるものであっても良い。
【0021】
HEMT1のドレイン−ゲート間には、保護素子として互いに直列接続されたサイリスタ2および第1抵抗3が備えられている。
【0022】
サイリスタ2は、本実施形態では第1抵抗3のハイサイド側に配置されており、HEMT1のドレイン−ゲート間において順方向接続されている。サイリスタ2は、pnpn構造とされ、アノード−カソード間にブレークオーバ電圧V
BF(順方向耐圧)以上の電圧が印加されるとオンし、オンした後はベース電流が無くてもオン状態を維持するという動作を行う。サイリスタ2のアノード−カソード間電圧は、サイリスタ2がオンすると、ブレークオーバ電圧V
BFと比較して無視できる程度の電圧Vhまで低下し、アノード−カソード間に流れる電流I
ACが大きくなると多少大きくなるが、ほぼ無視できる大きさである。そして、サイリスタ2は、アノード−カソード間に流れる電流I
ACが保持電流Ih以下に低下するとオフになる。このような動作を行うサイリスタ2を用いて、ターンオフ時にHEMT1のドレイン電圧が所定電圧になったときにサイリスタ2をオンさせることで、ドレイン電圧がクランプされるようにする。これにより、HEMT1に対してクランプ電圧を超える電圧が印加されないようにしている。
【0023】
なお、サイリスタ2のベースは、漏れ電流Is(
図2参照)と耐圧に応じてオープン状態にするか、もしくはサイリスタ2のカソードにショートさせるかを選択することができる。すなわち、サイリスタ2のベースをオープン状態にする場合、漏れ電流Isを増加させることになり、サイリスタ2を耐圧が大きいものにした場合には発熱量が多くなる。これに対して、サイリスタ2のベースをカソードにショートさせる場合には、オープン状態にする場合と比較して漏れ電流Isを小さくできる。このため、サイリスタ2の耐熱性を考慮して、サイリスタ2のベースをオープン状態にするかカソードにショートさせるかを選択すればよい。
【0024】
第1抵抗3は、サイリスタ2に対して直列接続されており、後述する第2抵抗4と共にクランプ時にサイリスタ2を通じて流れる電流を決めるために用いられる。また、第1抵抗3は、第2抵抗4と共にHEMT1のドレイン−ソース間電圧を分圧する分圧抵抗となることで、ターンオフ時におけるHEMT1のゲート電圧Vgを決める役割も果たす。
【0025】
一方、HEMT1のソース−ゲート間には、保護素子として互いに直列接続された第2抵抗4およびツェナーダイオード5が備えられている。
【0026】
第2抵抗4は、上記したように第1抵抗3と共にクランプ時にサイリスタ2を通じて流れる電流を決めるために用いられる。また、第2抵抗4は、第1抵抗3と共にHEMT1のドレイン−ソース間電圧を分圧する分圧抵抗となることで、ターンオフ時におけるHEMT1のゲート電圧を決める役割も果たす。
【0027】
ツェナーダイオード5は、遮断手段に相当するものであり、負荷に電力供給を行うためにHEMT1をオンさせる際には遮断されることでHEMT1にゲート電圧Vgが印加されるようにする。また、ツェナーダイオード5は、HEMT1のターンオフ時に、サイリスタ2がオンすると導通させられることで、保護素子側への電流の流れを許容する働きも果たす。本実施形態の場合、ツェナーダイオード5をHEMT1のオン時のゲート電圧以上の耐圧に設定している。このため、ターンオフ時にはサイリスタ2が導通したときにサイリスタ2や第1、第2抵抗3、4およびツェナーダイオード5を通じる経路で電流を流しつつ、ターンオン時にはHEMT1に対してゲート電圧を印加できるようにしている。また、本実施形態では、ツェナーダイオード5は、互いのカソードが接続されたバックツーバック接続とされており、HEMT1をゲートオフするときに負の電圧を掛けてオフする場合にも対処できるようにしている。
【0028】
続いて、上記のように構成された半導体装置の保護回路の動作について説明する。
【0029】
まず、外部からのゲート駆動信号(ゲート電圧Vg)に基づいてHEMT1をオンしているときには、図示しない電源からの電力供給に基づいて誘導性負荷が駆動され、誘導性負荷に対してエネルギーが蓄積された状態になっている。そして、ゲート駆動信号の変化、例えばゲート電圧Vgがハイレベルからローレベルに切り換わる等によってHEMT1がターンオフされる。このとき、誘導性付加に蓄積されていたエネルギーを回路内で消費する必要がある。
【0030】
これに対して、本実施形態では、保護回路が上記のような構成を備えているため、HEMT1のターンオフ時にサイリスタ2のアノード−カソード間にブレークオーバ電圧V
BF以上の電圧が印加されるとサイリスタ2がオンさせられる。そして、サイリスタ2がオンさせられると、第1抵抗3と第2抵抗4によって分圧された電圧がHEMT1のゲート電圧Vgとして印加され、HEMT1がオンされる。このため、HEMT1のドレイン電圧をサイリスタ2の順方向耐圧によってクランプすることができ、HEMT1に対してクランプ電圧を超える電圧が印加されないようにすることができる。
【0031】
また、
図2に示すように、サイリスタ2は、アノード−カソード間にブレークオーバ電圧V
BF以上の電圧が印加されてオンした後は、ベース電流が無くてもオン状態を維持するという動作を行う。そして、一度、サイリスタ2がオンしてドレイン電圧がクランプすると、サイリスタ2の降下電圧、つまりアノード−カソード間電圧は、ブレークオーバ電圧V
BFと比較して無視できる程度の電圧Vhまで低下する。この電圧は、アノード−カソード間に流れる電流I
ACが大きくなると多少大きくなるが、ほぼ無視できる大きさである。したがって、クランプ時に保護回路に流れる電流は、第1抵抗3の抵抗値R1と第2抵抗4の抵抗値R2によって決定されるようになり、これらの抵抗値R1、R2を適宜選択することで、保護素子に流れる電流を小電流から大電流まで自由に設計することが可能となる。
【0032】
例えば、サイリスタ2はオンしているときの抵抗値は小さいし、高耐圧の素子の場合はダイオード5の耐圧がサイリスタ2よりも十分に小さいため、ほとんで無視しても良い。このため、
図3に示すように、サイリスタ2がオンするブレークオーバ電圧V
BFをクランプ電圧に設定すると、負荷線は、第1抵抗3および第2抵抗4の抵抗値R1、R2によって決まる線で示すことができ、これらの抵抗値R1、R2によってその勾配を設定できる。このため、第1抵抗3および第2抵抗4の抵抗値R1、R2を小さくすれば保護素子に流れる電流を大電流にでき、抵抗値R1、R2を大きくすれば保護素子に流れる電流を小電流にできる。
【0033】
具体的には、サイリスタ2の特性線を記したグラフ中に第1抵抗3および第2抵抗4の抵抗値R1、R2に応じて決まる負荷線を記入した場合、それらの線の交点は、サイリスタ2がオンしたときに保護素子に流れる電流Iやサイリスタ2での降下電圧を表すことになる。つまり、サイリスタ2と負荷線とが交差する点における電流Iの値が、サイリスタ2がオンしたときに流れる電流になり、そのときの電圧V
AKの値がサイリスタ2での降下電圧となる。また、第1抵抗3および第2抵抗4には、サイリスタ2と同じ電流Iが流れることになり、クランプ電圧からサイリスタ2での電圧降下分を差し引いた電圧が第1抵抗3および第2抵抗4(およびダイオード5:クランプ電圧に比べると小さくほぼ無視出来る)での電圧降下分となる。したがって、サイリスタ2がオンするブレークオーバ電圧V
BFにクランプ電圧を設定すれば、第1抵抗3および第2抵抗4の抵抗値R1、R2を決めるだけで、それに応じた負荷線が決まり、サイリスタ2がオンしたときに保護素子に流れる電流を適宜設定できる。これにより、保護素子に流れる電流を調整することで、保護対象となるHEMT1を駆動するのに十分な電力を供給することもできる。
【0034】
一方、誘導性負荷のエネルギーが消費されてドレイン電圧が降下していき、アノード−カソード間に流れる主電流が保持電流Ih以下に低下すると、サイリスタ2がオフする。アノード−カソード間に流れる主電流が電流Ihとなるときの電圧は、第1抵抗3および第2抵抗4の抵抗値R1、R2に対して電流Ihを掛けた値(=(R1+R2)×Ih)(実際には、さらにダイオード5の耐圧を加算した電圧)となる。これが、クランプが解除されるクランプ解除電圧になる。このように、誘導性負荷のエネルギーが消費されてドレイン電圧が降下した後は、サイリスタ2がオフすることでHEMT1もオフさせられ、自動的に通常のオフモードに復帰するようにできる。
【0035】
なお、クランプ中のゲート電圧Vgは、第1抵抗3の抵抗値R1と第2抵抗4の抵抗値R2より、R2/(R1+R2)×クランプ電圧+ダイオード5の耐圧で与えられるため、抵抗値R2を調整することで、自由に設定可能である。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、保護素子としてHEMT1のドレイン−ゲート間にサイリスタ2および第1抵抗3を備えると共に、HEMT1のソース−ゲート間に第2抵抗4およびダイオード5を備えるようにしている。このため、HEMT1のターンオフ時にサイリスタ2がオンして保護素子側に電流が流れるようにでき、そのときに第1抵抗3および第2抵抗4で分圧されて形成されるゲート電圧VgによってHEMT1をオンさせることができる。これにより、ターンオフ時に、サイリスタ2の順方向耐圧をクランプ電圧として、HEMT1に対して阻止電圧を超える電圧が印加されないようにしつつ、HEMT1をオンすることで誘導性負荷に蓄積されたエネルギーを消費することが可能となる。したがって、アバランシェエネルギー耐量を得ることが可能な半導体装置の保護回路とすることが可能になる。
【0037】
また、このような保護回路において、保護素子は、サイリスタ2と第1抵抗3と第2抵抗4およびダイオード5によって構成可能であり、ダイオード5についてもHEMT1のゲート駆動が行える程度の低い耐圧だけで十分であるため、段数を少なくできる。このため、保護素子のサイズ増大を抑制することも可能となる。
【0038】
よって、保護素子のサイズ増大を抑制しつつ、アバランシェエネルギー耐量を得ることができる半導体装置の保護回路とすることが可能となる。
【0039】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態において、
図4に示すように、サイリスタ2を第1抵抗3のローサイド側かつHEMT1のゲートのハイサイド側に配置しても良い。
【0041】
また、
図5に示すように、遮断手段として、ダイオード5の代わりにサイリスタ10を配置しても構わない。この場合、HEMT1をターンオフしたときに、サイリスタ10がサイリスタ2と同様の動作を行うことで、第1抵抗3と第2抵抗4とにより分圧された電圧がHEMT1のゲートに印加されるようにし、HEMT1をオンさせることができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、この場合にも、サイリスタ2についてHEMT1のゲート駆動が行える程度の低い耐圧だけで十分であるため、保護素子のサイズ増大を抑制することも可能となる。なお、サイリスタ10のベースについても、漏れ電流Isと耐圧に応じてオープン状態にするか、もしくはサイリスタ10のカソードにショートさせるかを選択することができる。
【0042】
さらに、
図6に示すように、サイリスタ2を複数段で構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 HEMT
2、10 サイリスタ
3 第1抵抗
4 第2抵抗
5 ダイオード