特許第6052073号(P6052073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

特許6052073ハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置
<>
  • 特許6052073-ハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置 図000002
  • 特許6052073-ハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置 図000003
  • 特許6052073-ハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置 図000004
  • 特許6052073-ハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置 図000005
  • 特許6052073-ハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置 図000006
  • 特許6052073-ハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置 図000007
  • 特許6052073-ハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置 図000008
  • 特許6052073-ハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置 図000009
  • 特許6052073-ハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置 図000010
  • 特許6052073-ハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052073
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/30 20160101AFI20161219BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20161219BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20161219BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20161219BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20161219BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20161219BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20161219BHJP
   F16H 59/18 20060101ALI20161219BHJP
   F16H 59/40 20060101ALI20161219BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20161219BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20161219BHJP
   F16H 63/46 20060101ALI20161219BHJP
   B60W 10/11 20120101ALI20161219BHJP
【FI】
   B60W20/30
   B60W10/02 900
   B60K6/48ZHV
   B60W10/06 900
   B60W10/08 900
   B60W10/10 900
   B60K6/547
   F16H59/18
   F16H59/40
   F16H61/02
   F16H63/50
   F16H63/46
   B60W10/06
   B60W10/08
   B60W10/11
   B60W10/02
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-127396(P2013-127396)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-699(P2015-699A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】原田 新也
(72)【発明者】
【氏名】新井 貴尚
(72)【発明者】
【氏名】安東 文哉
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−020541(JP,A)
【文献】 特開2010−149560(JP,A)
【文献】 特開2013−018452(JP,A)
【文献】 特開2010−143307(JP,A)
【文献】 特開2009−096400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 20/50
B60K 6/20 − 6/547
F16H 59/00 − 61/12
F16H 61/16 − 61/24
F16H 61/66 − 61/70
F16H 63/40 − 63/50
B60W 10/00 − 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されアウトプットシャフトから出力されるエンジントルクが出力制御機構により制御される内燃機関と、
前記アウトプットシャフトと回転連結される入力軸と駆動輪に回転連結された出力軸とを有し、前記入力軸と前記出力軸とを異なる変速比で回転連結可能とする複数の変速段のうちの一つをギヤ切替機構により選択的に噛合結合する自動変速機と、
前記アウトプットシャフトと前記入力軸とを回転連結する接続状態と連結解除する切断状態とに切り替え可能なクラッチと、
前記接続状態と前記切断状態とを切り替え操作し、前記クラッチが前記接続状態で伝達するクラッチトルクを調整するクラッチ駆動機構と、
ドライバが操作するアクセル装置の操作量によって定められ前記駆動輪に要求される駆動トルクをドライバ要求トルクとして指示するトルク指示部と、
前記自動変速機の出力軸および前記駆動輪に回転連結され、前記エンジントルクとの合算トルクが前記ドライバ要求トルクとなるようモータトルクを発生して前記駆動輪を駆動するモータと、
を備えたハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置であって、
前記アクセル装置の現在の操作量および前記出力軸の現在の回転数の変化量に基づいて、前記出力軸の回転数が前記複数の変速段のうち一の変速段の変速線を越えるまでの前記現在からの変速線到達予測時間を演算する変速時間演算部と、
前記演算された変速線到達予測時間が予め設定された基準時間となったことを判定するクラッチ断予備制御移行判定部と、
前記変速線到達予測時間が前記基準時間となったとき、前記出力制御機構を作動させ前記エンジントルクを前記ドライバ要求トルクに応じて予め設定されたエンジントルク閾値まで低下させるエンジントルク低減制御部と、
前記エンジントルク低減制御部の作動に伴って、前記クラッチ駆動機構を作動させ前記エンジントルク閾値よりも前記クラッチ駆動機構の最大駆動速度に応じて予め設定された所定量だけ高く設定されたクラッチトルク閾値まで前記クラッチトルクを低下させるクラッチトルク低減制御部と、
前記エンジントルク閾値との合算トルクが前記ドライバ要求トルクとなるよう前記モータにモータトルクを発生させる要求トルク制御部と、
前記出力軸の回転数が前記一の変速線を越えたとき、前記出力制御機構を作動させてフューエルカット制御を行ない前記内燃機関の前記エンジントルクを0以下まで減少させるとともに、前記出力制御機構の作動と同時に前記クラッチ駆動機構を前記最大駆動速度で作動させ前記クラッチを切断状態とするクラッチ断制御部と、
前記クラッチが前記切断状態とされたのち、前記ギヤ切替機構を作動させ前記一の変速段を成立させるとともに、前記クラッチ駆動機構を作動させ前記クラッチを前記接続状態とする変速段切替部と、
を備えたハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置。
【請求項2】
前記クラッチトルク低減制御部で前記エンジントルク閾値よりも所定量だけ高く設定される前記クラッチトルク閾値の前記所定量の大きさは、
前記クラッチ断制御部において、
前記出力制御機構が前記フューエルカット制御を開始後、前記エンジントルクが減少し0以下となるまでの間に、前記クラッチが前記クラッチ駆動機構によって前記最大駆動速度で作動されて前記切断状態となるまでの間の前記クラッチトルクが、前記エンジントルクに接近し、かつ下回らない大きさである、請求項1に記載のハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置。
【請求項3】
前記クラッチトルク低減制御部で前記エンジントルク閾値よりも所定量だけ高く設定される前記クラッチトルク閾値の前記所定量の大きさは、
前記クラッチ断制御部において、
前記出力制御機構が前記フューエルカット制御を開始後、前記内燃機関の前記エンジントルクが減少し0以下となるまでの時間と、
前記クラッチ駆動機構によって、前記クラッチが前記切断状態に向かって前記最大駆動速度で作動されて前記切断状態となるまでの時間と、
を一致させる大きさである、請求項1に記載のハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行駆動源として内燃機関およびモータを備えたハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関とモータとを備えるハイブリッド車両の駆動装置の方式の一例として、特許文献1に示すような構成がある。特許文献1に開示される構成では、内燃機関のアウトプットシャフトにクラッチを介して自動変速機の入力軸を連結し、自動変速機の出力軸および駆動輪にモータを連結している。このような構成の自動変速機には、例えば、複数の歯車対のうちの1対を選択的に噛合させる手動変速機にアクチュエータを付加して自動化したAMT(オートメイテッドマニュアルトランスミッション)を用いることができる。この自動変速機では、車速が予め設定された所定の変速線を超えると変速指令が制御装置から送信される。これにより、まずクラッチが切断制御されるとともに、スロットル開度が減少し、内燃機関の出力が抑制される。このとき、クラッチの切断速度は、内燃機関の駆動トルクの減少速度に合わせて制御される。そして、クラッチが完全に切断状態とされ、内燃機関からの自動変速機の入力軸への駆動トルクの入力がなくなると、AMTは、それまで噛合していた歯車対の噛合を解除し、次に変速すべき変速段の歯車対を噛合させるよう制御を行なう。なお、このような変速中において、ドライバに不快な減速感(ドライバビリティの悪化)を感じさせないように、ドライバのアクセルの踏込み量から求められるドライバ要求トルクを満足させるよう、不足分の駆動トルクが二次駆動力(例えばモータ)の駆動によって加算されるよう制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−69509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように、変速時にクラッチを切断する切断速度は、内燃機関の駆動トルクの減少速度に合わせて逐次制御されている。このため、変速指令が制御装置から送信されたのちに、次に変速すべき変速段の歯車対が噛合され一連の変速制御が終了するまでの時間が長くなり、クラッチ切断の制御負荷が高くなるという課題がある。また、内燃機関の駆動トルクを最速で減少させるためには、クラッチの切断制御とともに内燃機関へフューエルカットを実行することが考えられる。しかし、このとき、フューエルカットにより成り行きで減少する内燃機関の駆動トルクの減少速度がクラッチの作動速度を上回ってしまった場合には、クラッチ接続中に内燃機関の駆動トルクが0となり、やがて負トルクとなる虞がある。この場合、内燃機関の負トルクが、接続中のクラッチを介して駆動輪に伝達されドライバビリティの悪化を招いてしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ハイブリッド車両用駆動装置において、良好なドライバビリティを確保しながら、短時間で変速動作の完了が実現できる変速制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する請求項1に係るハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置は、車両に搭載されアウトプットシャフトから出力されるエンジントルクが出力制御機構により制御される内燃機関と、前記アウトプットシャフトと回転連結される入力軸と駆動輪に回転連結された出力軸とを有し、前記入力軸と前記出力軸とを異なる変速比で回転連結可能とする複数の変速段のうちの一つをギヤ切替機構により選択的に噛合結合する自動変速機と、前記アウトプットシャフトと前記入力軸とを回転連結する接続状態と連結解除する切断状態とに切り替え可能なクラッチと、前記接続状態と前記切断状態とを切り替え操作し、前記クラッチが前記接続状態で伝達するクラッチトルクを調整するクラッチ駆動機構と、ドライバが操作するアクセル装置の操作量によって定められ前記駆動輪に要求される駆動トルクをドライバ要求トルクとして指示するトルク指示部と、前記自動変速機の出力軸および前記駆動輪に回転連結され、前記エンジントルクとの合算トルクが前記ドライバ要求トルクとなるようモータトルクを発生して前記駆動輪を駆動するモータと、を備えたハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置であって、前記アクセル装置の現在の操作量および前記出力軸の現在の回転数の変化量に基づいて、前記出力軸の回転数が前記複数の変速段のうち一の変速段の変速線を越えるまでの前記現在からの変速線到達予測時間を演算する変速時間演算部と、前記演算された変速線到達予測時間が予め設定された基準時間となったことを判定するクラッチ断予備制御移行判定部と、前記変速線到達予測時間が前記基準時間となったとき、前記出力制御機構を作動させ前記エンジントルクを前記ドライバ要求トルクに応じて予め設定されたエンジントルク閾値まで低下させるエンジントルク低減制御部と、前記エンジントルク低減制御部の作動に伴って、前記クラッチ駆動機構を作動させ前記エンジントルク閾値よりも前記クラッチ駆動機構の最大駆動速度に応じて予め設定された所定量だけ高く設定されたクラッチトルク閾値まで前記クラッチトルクを低下させるクラッチトルク低減制御部と、前記エンジントルク閾値との合算トルクが前記ドライバ要求トルクとなるよう前記モータにモータトルクを発生させる要求トルク制御部と、前記出力軸の回転数が前記一の変速線を越えたとき、前記出力制御機構を作動させてフューエルカット制御を行ない前記内燃機関の前記エンジントルクを0以下まで減少させるとともに、前記出力制御機構の作動と同時に前記クラッチ駆動機構を前記最大駆動速度で作動させ前記クラッチを切断状態とするクラッチ断制御部と、前記クラッチが前記切断状態とされたのち、前記ギヤ切替機構を作動させ前記一の変速段を成立させるとともに、前記クラッチ駆動機構を作動させ前記クラッチを前記接続状態とする変速段切替部と、を備えた。
【0007】
このように、出力軸の回転数が一の変速線に到達後に実行されるクラッチ断制御では、エンジントルク(内燃機関の駆動トルク)が変速制御を行なわない定常走行時のエンジントルクに対して低く設定された状態、つまりエンジントルク閾値に設定された状態からフューエルカット制御が行なわれる。また、クラッチトルクもエンジントルク閾値よりも所定量だけ大きくなるよう設定された状態、つまり、クラッチが定常走行時に設定される完全接続状態時のクラッチトルクよりも低く設定されたクラッチトルク閾値の状態からクラッチ駆動機構の最大駆動速度でクラッチのクラッチ断制御が行なわれる。これにより、エンジントルクを0以下に減少させるまでの時間、およびクラッチトルクを切断状態とするまでの時間を従来技術に対して短縮させることができ、延いては変速段の切替時間の短縮が可能となる。また、このとき、クラッチトルクをエンジントルクの減少に合わせてフィードバック制御せずともクラッチの切断が可能となるので、クラッチの制御負荷を軽減させることもできる。
【0008】
請求項2に係る請求項1に記載の車両用自動変速機の自動変速装置において、前記クラッチトルク低減制御部で前記エンジントルク閾値よりも所定量だけ高く設定される前記クラッチトルク閾値の前記所定量の大きさは、前記クラッチ断制御部において、前記出力制御機構が前記フューエルカット制御を開始後、前記エンジントルクが減少し0以下となるまでの間に、前記クラッチが前記クラッチ駆動機構によって前記最大駆動速度で作動されて前記切断状態となるまでの間の前記クラッチトルクが、前記エンジントルクに接近し、かつ下回らない大きさである。
【0009】
このように、クラッチの断制御中においてクラッチトルクがエンジントルクを下回ることなく、エンジントルクに接近させることができる。クラッチトルクがエンジントルクを下回ることがないよう制御されるので、クラッチトルクがエンジントルクを下回ることによって内燃機関の回転がクラッチによって滑る(吹ける)ことを抑制することができ、ドライバビリティの悪化を抑制できる。また、エンジントルクとクラッチトルクとが接近するよう制御されるので、エンジントルクが0以下(負トルク)となってから後、クラッチトルクが短時間で0となり切断状態に至ることができる。これにより、エンジントルクの負トルクが、接続中のクラッチを介して駆動輪に伝達される時間が短縮できるので、ドライバビリティの悪化を抑制できる。
【0010】
請求項3に係る請求項1に記載の車両用自動変速機の自動変速装置において、前記クラッチトルク低減制御部で前記エンジントルク閾値よりも所定量だけ高く設定される前記クラッチトルク閾値の前記所定量の大きさは、前記クラッチ断制御部において、前記出力制御機構が前記フューエルカット制御を開始後、前記内燃機関の前記エンジントルクが減少し0以下となるまでの時間と、前記クラッチ駆動機構によって、前記クラッチが前記切断状態に向かって前記最大駆動速度で作動されて前記切断状態となるまでの時間と、を一致させる大きさである。
【0011】
これにより、クラッチトルクが切断状態となるのと同時に内燃機関のエンジントルクが0以下となるので、内燃機関の負トルクが接続中のクラッチを介して駆動輪に伝達されドライバビリティの悪化を招くことを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の変速制御装置の制御対象となるハイブリッド車両用駆動装置の装置構成を模式的に説明する図である。
図2図1中のエンジン、自動変速機、およびクラッチの概略構成を説明する図である。
図3】実施形態の自動変速機を説明するスケルトン図である。
図4】クラッチのトルク伝達特性を例示し説明する図である。
図5】変速線を説明するグラフである。
図6】実施形態の変速制御装置の変速制御動作を説明するタイムチャートである。
図7】従来技術の変速制御装置の変速制御動作を説明するタイムチャートである。
図8】変速制御装置の作動を説明するフローチャートである。
図9図6のタイムチャートの一部拡大図である。
図10】別の実施形態の自動変速機を説明するスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るハイブリッド車両用駆動装置の変速制御装置の実施形態について、図1図9を参照して説明する。図1は、本実施形態の変速制御装置の制御対象となるハイブリッド車両用駆動装置1の装置構成を模式的に説明する図である。ハイブリッド車両用駆動装置1は、走行駆動源としてエンジン2(本発明の内燃機関に相当)およびモータジェネレータ5(本発明のモータに相当)をシャーシ90の前方寄りに並列に搭載し、いずれか一方または両者により駆動前輪91,91を駆動できるように構成されている。ハイブリッド車両用駆動装置1は、他に自動変速機3やクラッチ4などを備えている。図2は、図1中のエンジン2,自動変速機3,およびクラッチ4の概略構成を説明する図である。図1および図2において、構成装置間を結ぶ破線の矢印は制御の流れを示している。また、図3は、自動変速機3を説明するスケルトン図である。
【0014】
エンジン2は、図1に示されるように、シャーシ90上の駆動前輪91,91の駆動軸92よりも前側で横置きに配設されている。エンジン2,クラッチ4,および自動変速機3の三者は、記載した順番で車幅方向に並べて配設されている。エンジン2のアウトプットシャフト21から自動変速機3の入力軸31までの間は回転軸線を共有している。エンジン2のアウトプットシャフト21の近傍には、アウトプットシャフト21の回転数を検出する非接触式のエンジン回転数センサ22が設けられている。また、図2に模式的に示されるように、エンジン2には、スロットルバルブ23および図略のインジェクタが設けられている。スロットルバルブ23は、エンジン2への空気吸入量を調整する。インジェクタは、空気吸入量に関連して燃料供給量を調整する。また、スロットルバルブ23のスロットル開度Sltを調整するスロットル用アクチュエータ24が設けられている。さらに、スロットル開度Sltを検出するスロットルセンサ25が設けられている。スロットルバルブ23およびインジェクタは、アウトプットシャフト21から出力するエンジン2のエンジントルクTeを制御する出力制御機構に相当する。
【0015】
クラッチ4は、乾式・単板式で油圧操作タイプの摩擦クラッチである。クラッチ4は、図2に示されるように、フライホイール41,クラッチディスク42,プレッシャプレート44,ダイヤフラムスプリング45,クラッチカバー46および油圧ダイレクトシリンダ(コンセントリックスレーブシリンダ)47などにより構成されている。フライホイール41は、鋳鉄などで形成されるとともに厚い円板状で慣性を維持する質量を有し、エンジン2のアウトプットシャフト21に同軸に固定されている。フライホイール41のエンジン2とは逆側の端面の外周寄り部分から軸線方向に向けて、略筒状のクラッチカバー46が立設されている。クラッチカバー46の内側でフライホイール41に隣接して略円板状のクラッチディスク42が配設されている。クラッチディスク42は、中心部で自動変速機3の入力軸31にスプライン結合されて一体的に回転する。クラッチディスク42の外周寄りの両面にはクラッチフェージング43,43が固着されている。
【0016】
クラッチディスク42に隣接して、略環状のプレッシャプレート44が軸線方向に移動可能に設けられている。プレッシャプレート44を駆動する部材として、ダイヤフラムスプリング45および油圧ダイレクトシリンダ47が設けられている。さらに、クラッチ駆動機構として、油圧ダイレクトシリンダ47を操作するクラッチアクチュエータ48が設けられている。クラッチアクチュエータ48は、直流モータ481,ウォームギヤからなる減速機構482,出力ホイール483,出力ロッド484,マスタシリンダ485,アシストスプリング486およびストロークセンサ487などにより構成されている。
【0017】
クラッチアクチュエータ48の直流モ−タ481が回動駆動されると、減速機構482を介して出力ホイール483が回動される。これにより、出力ロッド484が前方(図2において左方)または後方(図2において右方)に移動する。すると、マスタシリンダ485で油圧が発生し、発生した油圧が伝達されて油圧ダイレクトシリンダ47が駆動され、ダイヤフラムスプリング45を介してプレッシャプレート44が軸線方向に駆動されるようになっている。プレッシャプレート44は、フライホイール41との間にクラッチディスク42を挟み込んで押圧する。これによって、フライホイール41に対して摺動回転するクラッチディスク42のクラッチフェージング43の圧着荷重を変化させることができる。なお、アシストスプリング486は出力ロッド484の前方への動作をアシストし、ストロークセンサ487は出力ロッド484の操作量Maを検出する。
【0018】
これにより、クラッチ4は、エンジン2のアウトプットシャフト21と自動変速機3の入力軸31とを回転連結する接続状態と連結解除する切断状態とに切り替え可能としている。このようにクラッチアクチュエータ48は、クラッチ4の接続状態と切断状態とを切り替え操作し、クラッチ4が接続状態で伝達するクラッチトルクTcの大きさを調整することができる。図4は、クラッチ4のトルク伝達特性を例示し説明する図である。図4で、横軸はクラッチアクチュエータ48の出力ロッド484の操作量Ma、縦軸は伝達可能なクラッチトルクTcを示している。クラッチアクチュエータ48の出力ロッド484の操作量Maに応じて油圧ダイレクトシリンダ47が入力軸31の軸線方向に操作される。これによりダイヤフラムスプリング45がクラッチディスク42をプレッシャプレート44側へ押し付ける押圧力が調整される。クラッチトルクTcは、この押圧力に応じて発生するものである。このため、出力ロッド484の操作量Maから伝達可能なクラッチトルクTcを算出することができる。クラッチ4は、操作量Ma=0でクラッチトルクTcが最大の全接続状態となる常時接続タイプのクラッチである。よって、クラッチ4は、操作量Maが増加するにしたがって半接続状態で伝達可能なクラッチトルクTcが減少し、操作量Ma=Mmaxで切断状態となる特性を有している。
【0019】
自動変速機3は、ドライバのシフトレバー操作により複数の変速段を構成するギヤ対のうちの一つを選択的に噛合結合させる手動変速機に、アクチュエータ34a〜34c、35を付加して変速操作を自動化したAMT(オートメイテッドマニュアルトランスミッション)である。なお、自動変速機3の構成の詳細な説明については後述する。図1の破線および図3に示されるように、自動変速機3は、平行配置された入力軸31と出力軸32との間に前進5段・後進1段の変速段を有する平行軸歯車噛合式の構造を有している。入力軸31は、クラッチ4を介して、エンジン2から出力されるエンジントルクTeによって回転駆動される。入力軸31の近傍には、入力軸31への入力軸回転数Niを検出する回転数センサ37が設けられている。出力軸32は、車幅方向の中央に配設された差動装置93の入力側とギヤ結合され、差動装置93,駆動軸92を介して駆動前輪91,91に回転連結されている。
【0020】
また、図2に示されるように、自動変速機3は、複数の変速段のうちの一つを選択的に噛合解除および結合するギヤ切替機構を有している。ギヤ切替機構は、第一ギヤシフト装置34a〜第三ギヤシフト装置34cおよびセレクト装置35を有している。なお、図2中において、第一ギヤシフト装置34a〜第三ギヤシフト装置34cは、便宜的に一つの矩形によって表しているが、実際には、それぞれ別々の装置である。第一ギヤシフト装置34a〜第三ギヤシフト装置34cおよびセレクト装置35はそれぞれが有するアクチュエータによって駆動される。第一〜第三ギヤシフト装置34a〜34cおよびセレクト装置35の駆動方法については公知であるので詳細な説明は省略する(例えば、特開2004−176894を参照)。
【0021】
モータジェネレータ5は、電動機の機能のみを有するモータでもよいが、本実施形態では発電機の機能を兼ね備えるものとする。モータジェネレータ5は、図1に示されるように、シャーシ90上の駆動前輪91,91の駆動軸92よりも後側に配設されている。モータジェネレータ5は、ハイブリッド車両で一般的に使用される三相交流回転電機である。図3に示すモータジェネレータ5のアウトプットシャフト80は、図3に示す後述する減速機構を介して差動装置93の入力側に回転連結されている。したがって、モータジェネレータ5のアウトプットシャフト80は、自動変速機3の出力軸32と、駆動前輪91,91の両方に回転連結されている。
【0022】
モータジェネレータ5を駆動するために、インバータ55およびバッテリ56がシャーシ90の後側に搭載されている。インバータ55は入出力端子として交流端子55Aおよび直流端子55Dを有している。交流端子55Aはモータジェネレータ5の電源端子5Aに接続され、直流端子55Dはバッテリ56の端子56Dに接続されている。インバータ55は、バッテリ56から出力される直流電力を周波数可変の交流電力に変換してモータジェネレータ5に供給する直流/交流変換機能を有している。また、インバータ55は、モータジェネレータ5で発電した交流電力を直流電力に変換してバッテリ56を充電する交流/直流変換機能を有している。なお、バッテリ56は、走行駆動専用に設けてもよいし、他の用途と兼用するようにしてもよい。
【0023】
モータジェネレータ5は、交流電力を供給されると電動機として機能する。このとき、モータジェネレータ5は、エンジントルクTeに加算可能なモータトルクTmを発生して駆動前輪91,91を駆動することができる。このように、エンジントルクTeとモータトルクTmとを合算した値が、駆動前輪91,91に要求されるドライバ要求トルクTdとなる。ドライバ要求トルクTdは、ドライバが操作するアクセルペダルAp(本発明のアクセル装置に相当)の踏込み量(操作量)であるアクセル開度Wによって定められる。なお、ドライバ要求トルクTdはトルク指示部によって演算され指示される。また、モータジェネレータ5は、エンジントルクTeの一部の発電トルク分で駆動されると発電機として機能し、バッテリ56を充電することができる。
【0024】
次に、自動変速機3について詳細に説明する。図3に示すように自動変速機3は入力軸31,入力軸31と平行に配置された出力軸32,第一中間軸33および第二中間軸36を有している。
【0025】
入力軸31には、第一変速段を構成する第一駆動ギヤ61および第二変速段を構成する第二駆動ギヤ62が、クラッチ4側から順に入力軸31と相対回転不能に固定されている。第一駆動ギヤ61と第二駆動ギヤ62との間には、後進駆動ギヤ60が入力軸31と相対回転不能に固定されている。また、入力軸31の第二駆動ギヤ62のエンジン2と反対側には第三、第四および第五変速段を構成する第三駆動ギヤ63、第四駆動ギヤ64および第五駆動ギヤ65が入力軸31と図略のベアリングを介して遊転可能に軸承されている。
【0026】
第三、第四駆動ギヤ63,64の対向する各側面には、第二ギヤシフト装置34bを構成する第三、第四クラッチリング63a,64aが、それぞれ第三、第四駆動ギヤ63,64と同軸かつ一体的に固定されている。第三、第四クラッチリング63a,64aの外周面には入力軸31の軸線方向に延在して形成されたスプラインが設けられている。また、第五駆動ギヤ65のエンジン2と反対側の側面には、第三ギヤシフト装置34cを構成する第五クラッチリング65aが第五駆動ギヤ65と同軸かつ一体的に固定されている。第5クラッチリング65aの外周面にも入力軸31の軸線方向に延在して形成されたスプラインが設けられている。
【0027】
また、第三、第四駆動ギヤ63,64の間、および第五駆動ギヤ65の第5クラッチリング65a側には、クラッチハブ66,67がそれぞれ入力軸31に相対回転不能に固定されている。そして、クラッチハブ66,67の外周面にも第三〜第五クラッチリング63a,64a,65aの外周面に設けられたスプラインと同様のスプラインがそれぞれ設けられている。
【0028】
自動変速機3のハウジングに軸承された第一中間軸33には、後進段の第一後進従動ギヤ70aが相対回転不能に固定されている。第一後進従動ギヤ70aは、入力軸31に固定された後進駆動ギヤ60と常時噛合している。
【0029】
出力軸32には、第一変速段を構成する第一従動ギヤ71および第二変速段を構成する第二従動ギヤ72が、図略のベアリングを介して遊転可能に軸承されている。第一従動ギヤ71は、第一駆動ギヤ61と常時噛合し、第二従動ギヤ72は、第二駆動ギヤ62と常時噛合している。また、第三〜第五変速段を構成する第三従動ギヤ73,第四従動ギヤ74および第五従動ギヤ75が、出力軸32に相対回転不能に固定されている。第三〜第五従動ギヤ73〜75は、第三〜第五駆動ギヤ63〜65とそれぞれ常時噛合している。
【0030】
出力軸32の近傍には、出力軸回転数センサ52が配置され、出力軸32の出力軸回転数Noを検出する。出力軸回転数センサ52は、変速機ECU12に接続され、検出データを変速機ECU12に送信し、当該検出データから車速が演算される。なお、出力軸回転数センサ52はどのような構造のものでもよい。
【0031】
また、第一,第二従動ギヤ71,72の対向する各側面には、第一ギヤシフト装置34aを構成する第一クラッチリング71aおよび第二クラッチリング72aが、それぞれ第一、第二従動ギヤ71,72と同軸で一体的に固定されている。第一,第二クラッチリング71a,72aの外周面には、出力軸32の軸線方向に延在して形成されたスプラインが設けられている。また、第一,第二従動ギヤ71,72の間にはクラッチハブ68が出力軸32に相対回転不能に固定されている。クラッチハブ68の外周面にも第一,第二クラッチリング71a,72aの外周面に設けられたスプラインと同様のスプラインが設けられている。
【0032】
出力軸32のエンジン2側の端部には、第一最終駆動ギヤ76が、出力軸32と相対回転不能に固定されている。第一最終駆動ギヤ76は、駆動軸92に設けられた差動装置(ディファレンシャル)93のリングギヤ93aと噛合し回転連結されている。差動装置(ディファレンシャル)93は、リングギヤ93aおよびディファレンシャルギヤ93bの両方を含んで構成されており、自動変速機3と一体的に形成されている。
【0033】
さらに、後述する第一ギヤシフト装置34aのスリーブ101に、第二後進従動ギヤ70bが一体的に設けられている。そして、スリーブ101の内周面に設けられたスプラインとクラッチハブ68の外周スプラインとが係合した状態でスリーブ101がエンジン2の方向に移動すると、スリーブ101に一体的に設けられている第二後進従動ギヤ70bと第一後進従動ギヤ70aとが噛合し後進段を形成する。なお、このとき、第一変速段は成立しないよう構成されている。
【0034】
自動変速機3のハウジングに軸承された第二中間軸36には、モータ従動ギヤ77が相対回転不能に固定されている。また、第二中間軸36には、第二最終駆動ギヤ78が相対回転不能に固定されている。第二最終駆動ギヤ78は、駆動軸92に設けられた差動装置(ディファレンシャル)93のリングギヤ93aと常時噛合し回転連結している。また、モータジェネレータ5のアウトプットシャフト80(出力軸)にはモータ駆動ギヤ79が相対回転不能に固定されている。モータ駆動ギヤ79はモータ従動ギヤ77と常時噛合されている。第二中間軸36のエンジン2側の端部には、パーキング用の大径ギヤ81が相対回転不能に固定されている。これらより、モータジェネレータ5のアウトプットシャフト80は自動変速機3の出力軸32および駆動(前)輪91,91に回転連結されていることになる。そして、モータジェネレータ5のアウトプットシャフト80が回転駆動されると、モータ駆動ギヤ79,モータ従動ギヤ77および第二最終駆動ギヤ78を介して駆動軸92および駆動前輪91,91に回転駆動力が伝達される。
【0035】
次に、ドグクラッチ機構を有する第一ギヤシフト装置34a〜第3ギヤシフト装置34cについて説明する。ただし、第一ギヤシフト装置34a〜第3ギヤシフト装置34cは、基本的に同様の構成を有している。このため、第二ギヤシフト装置34bについてのみ説明する。第二ギヤシフト装置34bは、図3に示すように、上述したクラッチハブ66,第三クラッチリング63aおよび第四クラッチリング64a,スリーブ101,スリーブ101にフォーク102で連結されたフォークシャフト103,アクチュエータ104および変速機ECU12等を備えている。
【0036】
スリーブ101の内周面には、入力軸31の軸線方向に延在するスプラインが形成され、クラッチハブ66の外周面に形成されているスプライン、および第三クラッチリング63aおよび第四クラッチリング64aの外周面に形成されている各スプラインと軸線方向に摺動可能に係合する。スリーブ101は、クラッチハブ66と常時係合して一体回転する。このように、第二ギヤシフト装置34bは前述したようにドグクラッチ機構によって構成されている。
【0037】
アクチュエータ104は、フォークシャフト103およびフォーク102を介してスリーブ101を軸線方向に沿って所定の荷重で往復動させるものである。フォーク102の先端部は、スリーブ101の外周溝(図略)の外周形状にあわせて形成されている。フォーク102の基端部は、フォークシャフト103に固定されている。
【0038】
ストロークセンサ105は、フォークシャフト103の近傍に配置され、フォークシャフト103の移動量、即ちスリーブ101の軸線方向の移動量を検出する。ストロークセンサ105は、変速機ECU12に接続され、検出データを変速機ECU12に送信している(図3破線参照)。なお、ストロークセンサ105の構造は、どのようなものでもよい。
【0039】
上記の構成において、第二ギヤシフト装置34bは、ニュートラル状態を介して、第三変速段と第四変速段との間でシフト切替えを行なう。同様に、第一ギヤシフト装置34aは、ニュートラル状態を介して、第一変速段、第二変速段および後進段との間でシフト切替えを行なう。また、第三ギヤシフト装置34cは、ニュートラル状態と第五変速段との間でシフト切替えを行なう。
【0040】
ハイブリッド車両用駆動装置1を構成する各部をそれぞれ受け持って制御するために、それぞれ電子制御装置(以降ではECUと略称する)が設けられている。すなわち、図1に示されるように、エンジンECU11、変速機ECU12、モータECU13、およびバッテリECU14が設けられている。さらに、駆動装置1の全体を総括的に制御するHV−ECU15が設けられている。各部をそれぞれ受け持つECU11〜14は、HV−ECU15にCAN通信などで接続されて相互に必要な情報を交換するとともに、HV−ECU15によって管理および制御されている。また、各ECU11〜15はそれぞれ、演算処理を実行するCPU部と、プログラムや各種マップなどを保存するROMやRAMなどの記憶部と、情報を交換するための入出力部と、を備えて構成されている。
【0041】
エンジンECU11は、イグニッションスイッチ27(図1参照)の操作に応じてスタータ26(図1参照)を駆動し、エンジン2を始動させる。また、エンジンECU11は、エンジン回転数センサ22からアウトプットシャフト21のエンジン回転数Neの信号を取得し、スロットルセンサ25からスロットル開度Sltの信号を取得する。そして、エンジンECU11は、アウトプットシャフト21のエンジン回転数Neを監視しながら、スロットル用アクチュエータ24に指令を発してスロットルバルブ23を開閉し、インジェクタを制御することにより、エンジントルクTeおよびエンジン回転数Neを所望の値に制御する。なお、本実施形態においては、エンジン回転数Neは、ドライバが踏み込むアクセルペダルApの踏み込み操作量のみによって制御されるものではなく、ハイブリッドECU15(以後、HV−ECU15と記す場合がある)からの指令により優先制御される構成となっている。
【0042】
変速機ECU12は、クラッチ4および自動変速機3を関連付けて制御することにより変速制御を実行する。変速機ECU12は、クラッチアクチュエータ48の直流モ−タ481を駆動して伝達可能なクラッチトルクTcを制御する。さらに、変速機ECU12は、ストロークセンサ487から出力ロッド484の操作量Maの信号を取得して、その時点におけるクラッチトルクTcを把握する。また、変速機ECU12は、自動変速機3の回転数センサ37から入力軸回転数Niを取得する。さらに、変速機ECU12は、各ギヤシフト装置34a〜34cおよびセレクト装置35を駆動させて、変速段のうちの一つを選択的に解除および噛合結合させ変速段を切り替え制御する。変速機ECU12は、各変速段ごとに設定された変速条件を有しており、変速条件が成立すると変速制御を開始する。変速機ECU12の変速制御の内容は、後の変速制御装置の動作の説明で詳述する。
【0043】
バッテリECU14は、バッテリ56の充電状態SOCを管理する。充電状態SOCの情報は、HV−ECU15に送出され、各種の制御の際に参照される。また、充電状態SOCが低下した場合や過昇した場合は、速やかに良好な状態に戻る制御が行なわれる。
【0044】
HV−ECU15は、各部をそれぞれ受け持つECU11〜14との間で必要な情報を共有して、駆動装置1の全体を総括的に制御する。HV−ECU15は、アクセル開度センサ51からアクセル開度Wの情報を取得し、出力軸回転数センサ52から車速の情報を取得する(図1図2参照)。アクセル開度センサ51は、ドライバが操作するアクセルペダルAp(アクセル装置に相当)の踏み込み操作量すなわちアクセル開度Wを検出するセンサである。アクセル開度Wの大きさから、車両を推進させるために駆動前輪91,91に要求される駆動トルク(ドライバ要求トルクTd)が定められる。要求される駆動トルクに対して実際に発生するトルクが不足すると、自ら変速操作を行っていないドライバは空走感を感じることになる。前述したように本実施形態においてドライバ要求トルクTdは、エンジン2の駆動によって発生するエンジントルクTeおよびモータ5によって発生するモータトルクTmの合計によって達成するようになっている。
【0045】
また、HV−ECU15は、変速時間演算部111,クラッチ断予備制御移行判定部112,エンジントルク低減制御部113,クラッチトルク低減制御部114,要求トルク制御部115,クラッチ断制御部116および変速段切替部117を備えている。
【0046】
変速時間演算部111は、自動変速機3の出力軸32の出力軸回転数Noから演算される出力軸32の現在における変化量を演算する。そして、アクセル装置の現在のアクセル開度W(操作量)および演算された現在の変化量に基づいて、出力軸32の出力軸回転数Noが複数の変速段のうち一の変速段の変速線を越えるまでの変速線到達予測時間Tesを演算する。変速線は、各変速段毎に備えられており、図略の記憶部にマップデータとして記憶されているものである。
【0047】
ここで、変速線の一例を示す図5に基づいて説明する。図5中の横軸は自動変速機3の出力軸32の出力軸回転数Noであり、縦軸はアクセル開度Wである。アップシフト変速パターンのアップシフト変速線L12(1速から2速への変速、以下同様)、L23、L34が実線で示され、ダウンシフト変速パターンのダウンシフト変速線L43、L32、L21が破線で示されている。なお、5速の変速線図であるL45、L54は図示省略してある。
【0048】
走行中の車両では、例えば、出力軸32の出力軸回転数No1およびアクセル開度Wの値に対応して、図5上に現在の走行動作点P1(No1、W1)をプロットすることができる。そこで、例えば3速で走行中の車両において、アクセル開度Wが一定で、出力軸32の出力軸回転数No(=車速)が所定の変化量で上昇すると仮定する。これにより、図5中の右方向への矢印が示すように、走行動作点P1が図中の右方に移動し、アップシフト変速線L34のライン上に到達する(または越える)。これによって、3速→4速への変速条件が成立する。変速時間演算部111では、現在から変速条件が成立するまでの時間(変速線到達予測時間Tes)を演算された出力軸回転数Noの変化量から演算して予測するものである。
【0049】
このとき、変速線到達予測時間Tesを演算する具体的な方法としては、下記に挙げる計算式(数1)による方法を一例として例示することができる。
(数1)
変速線到達予測時間Tes=((マップデータにおいて現在のアクセル開度Wにおける一の変速線の出力軸回転数No)−(現在の出力軸回転数No))/(Xrpm/64msec)
ここで、
X:64msec毎に測定した出力軸回転数Noの変化量である。
【0050】
このように、例えば64msec毎に計測した出力軸回転数Noの変化量によって変速線到達予測時間Tesを求める。これにより、出力軸回転数Noの変化量を平均値として演算できるので、瞬間的には負となる可能性のある変化量を正の値として得ることができ安定して変速線到達予測時間Tesを求めることができる。なお、計測時間とした64msecは、一例であり、どのような値によって測定してもよい。また、変速線到達予測時間Tesの求め方は、上記方法に限定されるものではない。
【0051】
クラッチ断予備制御移行判定部112は、演算された上記変速線到達予測時間Tesが予め設定された基準時間TBとなったか否かを判定する処理部である。クラッチ断予備制御とは、やがて到来する予測された一の変速段への変速制御のために、エンジントルクTeおよびクラッチトルクTcを、予め設定されたエンジントルク閾値Xeおよびクラッチトルク閾値Xcまで減少させて待機する制御のことをいう。
【0052】
エンジントルク閾値Xeは、車両がモータジェネレータ5を使用せずに、エンジン2のみで走行しているときのエンジントルクTeより若干低く予め設定された値であるものとする。エンジントルク閾値Xeは、実験等により最適な値を求め任意に設定すればよい(図6参照)。
【0053】
図6に示すように、クラッチトルク閾値Xcは、エンジントルク閾値Xeよりも所定量Sだけ大きな値であるものとする。所定量Sは、クラッチ駆動機構の最大駆動速度Vmaxに応じて予め設定される。つまり、所定量Sは、出力制御機構がフューエルカット制御を開始後、エンジン2のエンジントルクTeが減少し0以下となるまでの間において、最大駆動速度Vmaxで切断状態まで作動されるクラッチ4のクラッチトルクTcが、図9のR部に示すように、エンジントルクTeに接近し、かつエンジントルクTeを下回らない大きさとする。このとき、クラッチトルクTcとエンジントルクTeとの間の接近距離は、0であることが好ましく、本実施形態では、クラッチトルクTcとエンジントルクTeとがR部で接している。
【0054】
エンジントルク低減制御部113は、変速線到達予測時間Tesが基準時間TBであると判定したとき、出力制御機構を作動させて、エンジントルクTeをドライバ要求トルクTdに応じて予め設定されたエンジントルク閾値Xeまで低下させる制御を行なう。
【0055】
クラッチトルク低減制御部114は、エンジントルク低減制御部113の制御に伴って、クラッチ駆動機構を作動させ、エンジントルク閾値Xeよりも所定量Sだけ高く設定されたクラッチトルク閾値Xcまでクラッチトルクを低下させる。
【0056】
クラッチ断制御部116は、出力軸32の出力軸回転数Noが一の変速線(例えば4速段の変速線)に到達したとき、または越えたときに、出力制御機構を作動させてフューエルカット制御を行なう。これにより、エンジン2のエンジントルクTeを0以下まで成り行きで減少させる。また、これと同時にクラッチ駆動機構を最大駆動速度Vmaxで作動させクラッチ4を切断状態とする。
【0057】
変速段切替部117は、クラッチ断制御部116によってクラッチ4が切断状態とされたのち、ギヤ切替機構を作動させ、一の変速段である例えば第四変速段を成立させる。そして、その後、クラッチ駆動機構を作動させクラッチ4を接続状態とする。
【0058】
ここで、変速制御の作動について説明する。まず従来技術の変速について図7に基づき説明する。図7において、横軸は経過時間Tを示している。また、縦軸は上から順に軸回転数rpm(モータ回転数Nmo,入力軸回転数Ni、エンジン回転数Ne、出力軸回転数No),トルクNm(クラッチトルクTc,エンジントルクTe,ドライバ要求トルクTd,モータトルクTm)およびギヤ段の状態(要求ギヤ段および実ギヤ段)を示している。また、図7において変速制御前の状態(T1以前)では、エンジントルクTeはドライバ要求トルクTdと等しく、クラッチトルクTcは、図4に示す完全接続状態であるものとする。
【0059】
従来技術において、車両の走行中に、例えば図5に示す第四変速段の変速線L34を越えたとする(図7の時間T1位置参照)。すると、変速線L34を越えるのと同時に、エンジンECU11が出力制御機構に燃料カットするよう指令を送信する。これにより、出力制御機構は、スロットルバルブ23を全閉させるよう制御するとともに、エンジン2に供給する燃料の送油を停止させる(フューエルカット制御)。これによって、エンジントルクTeは、ドライバ要求トルクTdと等しい大きさのトルクからトルク0に向かって減少する。
【0060】
このように、従来技術においては、エンジントルクTeをドライバ要求トルクTdと等しい大きなトルクから減少させるよう制御している。このため、出力制御機構を作動させフューエルカット制御を実行しても、残留トルク等の影響が大きくトルク0以下まで減少するまでの時間は大きなものとなっている。なお、図7において、T1以降のエンジントルクTeの特性は、折れ線となっているが、これは、フューエルカット制御の指令が送信された後、実際にフューエルカットが実行されるまでの遅れ分や、残留トルク等の影響によって発生しているものである。
【0061】
フューエルカット制御の開始と同時に、変速機ECU12は、クラッチ駆動機構を作動させ、完全接続状態にあるクラッチ4の切断制御を開始する。このとき、クラッチ4のクラッチトルクTcはエンジントルクTeよりも若干大きな値となるようフィードバック制御されている。これにより、大きな値のトルクを減少させなければならないエンジントルクTeおよびエンジントルクTeの減少に応じて制御されるクラッチトルクTcの減少に時間がかかりクラッチ切断完了が遅くなる、即ち変速時間が長くなるという課題がある。また、クラッチトルクTcの減少速度をフィードバック制御しているため、制御負荷が高く高コスト化してしまうという課題もある。
【0062】
また、クラッチトルクTcをエンジントルクTeに合わせてフィードバック制御する上記の方法においても、エンジントルクTeの減少にクラッチトルクTcの減少を完全に追従させることは難しい。このため、時間T2では、エンジントルクTeは若干の負トルク状態となっている。つまり、クラッチトルクTcが完全に0(切断状態)になる前においてもエンジントルクTeの負トルク状態が発生しており、これによって、斜線で示す負のエンジントルク(−Te)が、クラッチ4を介して駆動前輪91,91に伝達され、ドライバビリティの悪化を招いてしまう虞がある。
【0063】
また、エンジントルクTeの減少速度がクラッチトルクTcの減少速度を下回ると、エンジントルクTeがクラッチトルクTcを上回る場合が発生する。このような場合には、クラッチ4の接続(係合)がすべってしまい、エンジン2の回転が吹き上がる虞がある。
【0064】
モータECU13は、エンジントルクTeが減少するのに合わせて、モータジェネレータ5を作動させ、モータトルクTmを駆動前輪91,91に発生させるよう制御している。このとき、モータトルクTm=ドライバ要求トルクTd−エンジントルクTeとなるよう制御される。これにより、ドライバが不快な減速感を感じることを防止している。そして、図7中の時間T2において、クラッチトルクTcが完全に0(切断状態)となる。
【0065】
図7に示すタイムチャートのT2〜T7区間は周知のAMTの変速制御を示したものである。よって、詳細な説明は省略し、簡単な説明のみ行なう。図7のT2では、上記で説明したギヤシフト装置34bの作動によって、まずスリーブ101が軸線方向(エンジン2と反対方向)に移動される。これにより、スリーブ101の内周面に形成されたスプラインと、第三変速段を構成する第三クラッチリング63aの外周面のスプラインとの係合がはずれ第三変速段が解除される。T3〜T4区間では、ギヤシフト装置34bがニュートラル状態にあり、この間においてフリー状態となった入力軸31の入力軸回転数Niがほぼ一定で推移する。
【0066】
次にT5において、ギヤシフト装置34bの作動によってスリーブ101が軸線方向(エンジン2と反対方向)に移動される。これによって、スリーブ101の内周面に形成されたスプラインと、第四クラッチリング64aの外周面のスプラインとが回転同期後、係合され第四変速段が成立する。このため、入力軸回転数Niが第四変速段のギヤ比に応じて低下する。その後、T5〜T6区間で、エンジントルクTeが出力制御機構によって制御され、エンジン2のエンジン回転数Neが入力軸31の入力軸回転数Niと同期したT6において、クラッチ駆動機構によってクラッチ4の接続状態への制御が開始される。その後、クラッチ4が徐々に接続されT7で接続が完了し、クラッチ4は接続状態とされる。
【0067】
次に、本発明の変速制御装置の作動について、図8のフローチャートおよび図6のタイムチャートに基づいて説明する。図6のタイムチャートは、図7のタイムチャートに対して、縦軸に変速予告スイッチの項目が追加されている。
【0068】
フローチャート1のステップS10(変速時間演算部111の処理部)は、図6のタイムチャートのT0以前の区間の処理部であり常時演算されている。ステップS10では、上述したように、自動変速機3の出力軸32の出力軸回転数Noから演算される現在の出力軸回転数Noの変化量(例えば回転加速度a)を演算する。そして、現在のアクセル開度W(操作量)および演算された現在の出力軸回転数Noの変化量に基づいて、出力軸回転数Noが複数の変速段のうち一の変速段(例えば第四変速段)の変速線L34を越えるまでの変速線到達予測時間Tesを演算する。
【0069】
ステップS12(クラッチ断予備制御移行判定部112の処理部)では、演算された変速線到達予測時間Tesが予め設定された基準時間TBとなったか否かを判定する。基準時間TBに到達していれば、ステップS14に移動する。基準時間TBに到達していなければ、基準時間TBに到達するまでステップS12を繰り返し処理する。ステップS12では、変速線到達予測時間Tesが基準時間TBよりも大きい場合に、以降の制御を保留する。これによって、クラッチトルクTcをクラッチトルク閾値Xcに減少させ、クラッチアクチュエータ48の電力消費を抑制する。
【0070】
ステップS14では、演算された変速線到達予測時間Tesが予め設定された基準時間閾値TC以上であるか否かを判定する。基準時間閾値TCとは、エンジン2のエンジントルクTeを、エンジントルク閾値Xeまで減少させるのに要する時間Ti(図6参照)と、クラッチトルクTcを予め設定されたクラッチトルク閾値Xcまで減少させるのに要する時間Tii(図6参照)のうち大きい方の値とする。時間Tiおよび時間Tiiは事前に計測した実測データに基づく値である。変速線到達予測時間Tesが基準時間閾値TC以上であれば、以後の制御の実行が可能となるのでステップS16に移動する。また、変速線到達予測時間Tesが基準時間閾値TC未満であれば、ステップS10に戻る。つまり、基準時間閾値TC未満であると、クラッチトルクTcおよびエンジントルクTeをそれぞれ、クラッチトルク閾値Xcおよびエンジントルク閾値Xeまで減少させている途中で一の変速線に到達してしまう。このため、制御は行なわず、ステップS10に戻り、次に演算する変速線到達予測時間Tesが基準時間閾値TC以上となるまで、繰り返しステップS10,ステップS12,ステップS14の処理を行なう。
【0071】
ステップS16(クラッチ断予備制御移行判定部112の処理部)では、変速予告スイッチをONする。これによって本発明に係るクラッチを切断するための制御が開始される(図6では、T0位置に該当する)。
【0072】
ステップS18(エンジントルク低減制御部113の処理部)では、出力制御機構を作動させ、スロットルバルブ23を閉動作させるとともに、インジェクタを制御する。これにより、エンジントルクTeをドライバ要求トルクTdに応じて予め設定されたエンジントルク閾値Xeまで低下させ保持する。図6ではT0〜T1までの間の作動となる。
【0073】
ステップS20(クラッチトルク低減制御部114の処理部)では、エンジントルク低減制御部113の制御に伴って、クラッチ駆動機構を作動させる。これにより、エンジントルク閾値Xeよりも所定量Sだけ高く設定されたクラッチトルク閾値XcまでクラッチトルクTcを低下させ保持する。図6では、T0〜T1までの間の作動となる。
【0074】
ステップS22(要求トルク制御部115の処理部)では、演算されたドライバ要求トルクTdからエンジントルク閾値Xeを減算して求めたモータトルクTmをモータ5に発生させるよう制御する。図6では、T0〜T1までの間の作動となる。
【0075】
ステップS24(クラッチ断制御部116の処理部)では、出力軸32の出力軸回転数Noが一の変速線(例えば4速段の変速線)を越えたか否かを判定する。一の変速線を越えたと判定された場合には、ステップS26に移動する(図6のT1位置)。また、出力軸回転数Noが一の変速線を越えない場合(図6のT1位置以前)には、ステップS18に移動する。そして、ステップS24で出力軸回転数Noが一の変速線を越えたと判定されるまで、ステップS18〜ステップS24の処理を繰り返し行なう。
【0076】
ステップS26(クラッチ断制御部116の処理部)では、変速予告スイッチをOFFにする(図6のT1位置)。
【0077】
ステップS28(クラッチ断制御部116の処理部)では、出力制御機構を作動させてインジェクタを制御しフューエルカットを行なう。これによって、エンジン2のエンジントルクTeを0以下まで成り行きで減少させる。具体的には、図6のT1〜T2の範囲に示す作動となる。さらに詳細には、T1〜T2を拡大表示した図9におけるt1〜 t4 の範囲に示す作動となる。図9では、エンジンECU11よりフューエルカットの指示が送信されてから実際にエンジントルクTeが0以下となるまでを示している。図9において、t1はフューエルカット指示が送信された時点である。t1−t2はエンジントルクTeの応答遅れの時間(範囲)である。そして、t2において実際にフューエルカットが開始され、t4でエンジントルクTeの0以下への減少制御が完了している。
【0078】
ステップS30(クラッチ断制御部116の処理部)では、クラッチ4を切断状態とするため、ステップS28と同時にクラッチ駆動機構を最大駆動速度Vmaxで作動させる。具体的には、図6のT1〜T2の範囲に示す作動となる。さらに詳細には、T1〜T2を拡大表示した図9におけるt1〜 t5 の範囲に示す作動となる。
【0079】
図9において、エンジントルクTeの減少曲線とクラッチトルクTcの減少曲線とを見てみると、t4の位置でお互いが接近し、ほぼトルク値が等しくなっている。その後、エンジントルクTeは、短時間で0となった後、負トルク(−Te)となっている。また、クラッチトルクTcは、エンジントルクTeより若干遅れて0(切断状態)となっている(t5位置照得)。このとき、クラッチ4が接続状態のまま、エンジントルクTeが負トルク(−Te)となる領域は、図9の斜線部に示す通りとなっている。図9図6に対してだけでなく、図7に対しても拡大された図となっているので、図9の斜線部に示す負トルク(−Te)は、図7に示す従来技術の負トルク(−Te)よりも小さいことがわかる。これにより、接続中のクラッチ4を介して、エンジントルクTeの負トルクが駆動前輪91,91に伝達され、ドライバビリティの悪化を招いてしまうことが効果的に抑制される。
【0080】
その後、ステップS32(変速段切替部117の処理部)で、上述した従来技術における作動と同様に、図6のT2からT7において、周知のAMTの変速制御が実施される。これによって、第四変速段が形成され、入力軸31、第四駆動ギヤ64,第四従動ギヤ74,出力軸32,第一最終駆動ギヤ76、リングギヤ93a,差動装置93および駆動軸92を介して駆動前輪91,91が、エンジントルクTeによって回転駆動される。
【0081】
上述の説明から明らかなように、本実施形態では、クラッチ断制御部116によるクラッチ断制御では、エンジントルクTeが変速制御を行なわない定常走行時のエンジントルクTeに対して低く設定された状態、つまりエンジントルク閾値Xeに設定された状態からフューエルカット制御が行なわれる。また、クラッチトルクTcもエンジントルク閾値Xeよりも所定量Sだけ大きくなるよう設定された状態、つまり、定常走行時に設定される完全接続状態時のクラッチトルクTcよりも低く設定されたクラッチトルク閾値Xcの状態からクラッチ駆動機構の最大駆動速度Vmaxでクラッチ断制御が行なわれる。これにより、エンジントルクTeを0以下に減少させるまでの時間、およびクラッチトルクTcを切断状態とするまでの時間を従来技術に対して短縮させることができ、延いては変速段の切替時間の短縮が可能となる。また、このとき、クラッチトルクTcをエンジントルクTeの減少に合わせてフィードバック制御せずともクラッチ4の切断が可能となるので、クラッチの制御負荷を軽減させることもできる。
【0082】
また、本実施形態によれば、クラッチ断制御時において、クラッチトルクTcがエンジントルクTeを下回ることなく、かつエンジントルクTeに接近できるように、クラッチ断予備制御における状態(図6、T0〜T1の間)では、クラッチトルク閾値Xcがエンジントルク閾値Xeよりも所定量Sだけ大きくなるよう設定されている。これにより、クラッチ断制御時にクラッチトルクTcがエンジントルクTeを下回り、エンジン2に連結されるアウトプットシャフト21の回転がクラッチ4で滑ることを抑制することができる。また、クラッチ断制御時にエンジントルクTeとクラッチトルクTcとが接近するよう制御されるので、エンジントルクTeが0以下(負トルク)となってから後、クラッチトルクTcが短時間で0となり切断状態に至ることができる。これにより、エンジントルクTeの負トルクが、接続中のクラッチ4を介して駆動輪に伝達される時間が短縮できるので、ドライバビリティの悪化を良好に抑制できる。
【0083】
なお、上記実施形態の態様に限らず、別の実施形態として、図9の例えばt4位置において、エンジントルクTeの減少曲線とクラッチトルクTcの減少曲線とが同時に一致して0となるよう所定量Sの大きさを設定してもよい。これによって、エンジントルクTeおよびクラッチトルクTcが0となる以前の減少過程において、エンジントルクTeがクラッチトルクTcを上回ってしまう可能性もある。しかし、その量は微小である。このため、エンジントルクTeがクラッチトルクTcを上回り、エンジン2が吹き上がる大きさが、ドライバビリティ上許容される範囲内である可能性が高い。このような場合においては、上記のようにエンジントルクTeの減少曲線とクラッチトルクTcの減少曲線とが同時に一致して0となるよう所定量Sの大きさを設定してもよい。このように制御することによって、エンジントルクTeの負トルクが接続中のクラッチ4を介して駆動前輪91,91に伝達され発生するドライバビリティの悪化を確実に防止できる。
【0084】
また、上記実施形態においては、図3に示す自動変速機3を適用した。しかし、この態様には限らない。例えば、自動変速機を図10に示す自動変速機123に変更してもよい。自動変速機123は、モータジェネレータ5のアウトプットシャフト80が、出力軸32に回転連結されている以外、自動変速機3と同様の構成を有している。ただし、このとき、アウトプットシャフト80と出力軸32との間に所定の変速機構を設けるか否かは任意である。このような構成によっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0085】
また、他の態様として、モータジェネレータ5が出力軸32と回転可能に接続され、駆動前輪91,91がモータジェネレータ5によって直接回転駆動可能な構成の自動変速機(AMT)であれば、自動変速機はどのような構成であってもよい。なお、モータジェネレータ5が出力軸32と回転可能に接続されていることを要件としたのは、変速制御中において、入力軸31にトルクを発生させないことと、駆動前輪91,91にドライバ要求トルクTdの不足分をモータジェネレータ5によって発生させることとを同時に成立させるためである。
【0086】
また、上記実施形態においては、自動変速機3,123のギヤシフト装置34a〜34cはシンクロナイザリングを有さないドグクラッチ機構であるものとした。しかし、この態様に限らず、ギヤシフト装置は、シンクロ機構を有した変速構成であってもよい。
【0087】
さらに、上記実施形態においては、アップシフト変速(例えば三速段→四速段)の場合について説明した。しかし、この態様に限らず、本発明は、ダウンシフト時にも適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
1・・・ハイブリッド車両用駆動装置、 2・・・エンジン(内燃機関)、 3・・・自動変速機、 4・・・クラッチ、 5・・・モータジェネレータ(モータ)、 11・・・エンジンECU、 12・・・変速機ECU、 13・・・モータECU、 14・・・バッテリECU 15・・・HV−ECU、 21・・・アウトプットシャフト、 22・・・エンジン回転数センサ、 23・・・スロットルバルブ(出力制御機構)、 24・・・スロットル用アクチュエータ、 25・・・スロットルセンサ、 31・・・入力軸、 32・・・出力軸、 33・・・第一中間軸、 34a〜34c・・・:ギヤ切替装置(ギヤ切替機構)、 35・・・セレクトアクチュエータ(ギヤ切替機構)、 36・・・:第二中間軸、 37・・・回転数センサ、 48・・・クラッチアクチュエータ(クラッチ駆動機構)、 51・・・アクセル開度センサ、 111・・・変速時間演算部、 112・・・クラッチ断予備制御移行判定部、 113・・・エンジントルク低減制御部、 114・・・クラッチトルク低減制御部、 115・・・要求トルク制御部、 116・・・クラッチ断制御部、 117・・・変速段切替部、 Tc・・・クラッチトルク、 Td・・・ドライバ要求トルク、 Te・・・エンジントルク、Tm・・・モータトルク、 Ma・・・クラッチの操作量。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10