(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の自動停止条件が成立すると内燃機関を自動停止させる一方、所定の再始動条件が成立すると内燃機関を再始動させる自動停止再始動制御を行う車両に搭載された内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
上記内燃機関は、液体燃料が吸気ポートに噴射されるものであり、
自動停止状態からの再始動後の所定期間内にスロットル開度およびアクセル開度の少なくとも一方が、所定値以上および所定速度以上の少なくとも一方で開方向に操作された場合には、自動停止状態からの再始動後の所定期間内にスロットル開度およびアクセル開度の少なくとも一方が、所定値以上および所定速度以上の少なくとも一方で開方向に操作されない場合における燃料噴射量に、再始動時の冷却水温と上記内燃機関の自動停止期間とに基づいて算出される燃料増量値を追加することで吸気ポートへの燃料噴射量を増加し、
上記内燃機関が再始動してから、自動停止状態からの再始動後の所定期間内にスロットル開度およびアクセル開度の少なくとも一方が、所定値以上および所定速度以上の少なくとも一方で開方向に操作さるまでの経過時間が長い場合には、当該経過時間が短い場合と比較して、上記燃料増量値を小さくすることを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
本実施形態では、本発明に係る燃料噴射制御装置を、アイドリングストップアンドスタート制御を行う車両(以下、S&S車両ともいう)に搭載されたガソリンエンジンに適用した場合について説明する。
【0033】
−エンジン−
図1は本実施形態に係るエンジン1の概略構成を示す図である。なお、この
図1では、エンジン1の1気筒の構成のみを示している。本実施形態におけるエンジン(内燃機関)1は、例えば4気筒ガソリンエンジンであって、燃焼室11の一部を形成するピストン12および出力軸であるクランクシャフト13を備えている。ピストン12はコネクティングロッド14を介してクランクシャフト13に連結されており、ピストン12の往復運動がコネクティングロッド14によってクランクシャフト13の回転へと変換されるようになっている。
【0034】
クランクシャフト13には、外周面に複数の突起(歯)16を有するシグナルロータ15が取り付けられている。シグナルロータ15の側方近傍には、クランク角度センサ71が配置されている。このクランク角度センサ71は、例えば電磁ピックアップであって、クランクシャフト13が回転する際にシグナルロータ15の突起16に対応するパルス信号を発生する。
【0035】
エンジン1のシリンダブロック17には、内部を冷却水が流れるウォータジャケット17aが形成されている。また、シリンダブロック17には、ウォータジャケット17a内を流れる冷却水の温度(冷却水温)Tw(以下、エンジン水温ともいう)を検出する水温センサ72と、当該シリンダブロック17に伝わるエンジン1の振動を検出するノックセンサ80と、が配置されている。
【0036】
エンジン1のシリンダヘッド18には、点火プラグ2が配置されている。点火プラグ2の点火タイミングはイグナイタ21によって調整され、このイグナイタ21はECU(Electronic Control Unit)6によって制御される。
【0037】
また、シリンダヘッド18には、燃焼室11と連通する吸気ポート7および排気ポート8が形成されている。吸気ポート7は、当該吸気ポート7と連通する吸気管9とともに吸気通路3を形成している。一方、排気ポート8は、当該排気ポート8と連通する排気管10とともに排気通路4を形成している。
【0038】
吸気ポート7と燃焼室11との間には、吸気バルブ31が設けられており、この吸気バルブ31を開閉駆動することにより、吸気ポート7と燃焼室11とが連通または遮断される。また、排気ポート8と燃焼室11との間には、排気バルブ41が設けられており、この排気バルブ41を開閉駆動することにより、排気ポート8と燃焼室11とが連通または遮断される。これら吸気バルブ31および排気バルブ41の開閉駆動は、シリンダヘッド18に設けられた吸気カムシャフト36および排気カムシャフト46の各回転によって行われる。吸気カムシャフト36の近傍には、シリンダ判別センサとしてのカム角センサ79が配設されている。ECU6は、クランク角度センサ71およびカム角センサ79の出力等に基づくオイルコントロールバルブ37の制御を通じて吸気バルブ31のバルブタイミングを調整する。
【0039】
吸気通路3には、エアクリーナ32、熱線式のエアフローメータ73、吸気温センサ74(エアフローメータ73に内蔵)、および、エンジン1の吸入空気量を調整する電子制御式のスロットルバルブ33が配置されている。スロットルバルブ33はスロットルモータ34によって駆動され、スロットルバルブ33の開度θth(以下、スロットル開度ともいう)はスロットル開度センサ75によって検出される。また、吸気通路3におけるスロットルバルブ33よりも下流側の圧力(吸気圧)はバキュームセンサ82によって検出される。
【0040】
エンジン1の排気通路4には、上流側触媒コンバータ42および下流側触媒コンバータ43が配置されている。上流側触媒コンバータ42および下流側触媒コンバータ43は、その内部に酸素吸蔵機能を有する三元触媒を備えている。三元触媒は、酸素を貯蔵(吸蔵)するO
2ストレージ機能(酸素貯蔵機能)を有しており、この酸素貯蔵機能により、空燃比が理論空燃比からある程度まで偏移したとしても、HC、COおよびNOxを浄化することが可能となっている。すなわち、エンジン1の空燃比がリーンになって、三元触媒に流入する排気ガス中の酸素およびNOxが増加すると、酸素の一部を三元触媒が吸蔵することでNOxの還元および浄化を促進する。一方、エンジン1の空燃比がリッチになって、三元触媒に流入する排気ガス中にHC、COが多量に含まれると、三元触媒は内部に吸蔵している酸素分子を放出し、これらのHC、COに酸素分子を与えて、酸化・浄化を促進する。
【0041】
排気通路4における上流側触媒コンバータ42の上流側には、空燃比センサ(A/Fセンサ)76が配置されている。空燃比センサ76は、例えば限界電流式の酸素濃度センサであり、広い空燃比領域に亘って空燃比に対応した出力電圧を発生するようになっている。また、排気通路4における上流側触媒コンバータ42の下流側(下流側触媒コンバータ43の上流側)には、酸素センサ(O
2センサ)77が配置されている。酸素センサ77は、例えば起電力式(濃淡電池式)の酸素濃度センサであり、理論空燃比において急変する電圧を出力するようになっている。これら空燃比センサ76および酸素センサ77の発生する信号は、それぞれA/D変換された後に、ECU6に入力される。
【0042】
また、エンジン1には、吸気通路3と排気通路4とを接続するEGR通路22が設けられている。このEGR通路22は、排気の一部を適宜吸気通路3に還流させて燃焼室11へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるものである。また、このEGR通路22には、電子制御によって無段階に開閉され、同通路を流れる排気流量を自在に調整することができるEGRバルブ23と、EGR通路22を通過(還流)する排気を冷却するためのEGRクーラ24とが設けられている。
【0043】
吸気ポート7には、燃料噴射用のインジェクタ35が配置されている。インジェクタ35には、燃料ポンプ(図示せず)で燃圧が高められた燃料がデリバリーパイプ(図示せず)を介して供給される。インジェクタ35は、所定圧力の燃料を吸気ポート7に噴射する。この噴射燃料は吸入空気と混合されて混合気となり、吸気バルブ31が開くと、エンジン1の燃焼室11に導入される。燃焼室11に導入された混合気(燃料+空気)は、エンジン1の圧縮行程を経た後、点火プラグ2にて点火されて燃焼および爆発する。この混合気の燃焼室11内での燃焼および爆発によりピストン12が往復運動してクランクシャフト13が回転する。
【0044】
−制御ブロックの説明−
以上のエンジン1の運転状態はECU6によって制御される。このECU6は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)61、ROM(Read Only Memory)62、RAM(Random Access Memory)63およびバックアップRAM64等を備えている。
【0045】
ROM62には、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU61は、ROM62に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。RAM63は、CPU61での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリである。バックアップRAM64は、エンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。これらROM62、CPU61、RAM63およびバックアップRAM64は、バス67を介して互いに接続されるとともに、外部入力回路65および外部出力回路66と接続されている。
【0046】
外部入力回路65には、上述した、クランク角度センサ71、水温センサ72、エアフローメータ73、吸気温センサ74、スロットル開度センサ75、空燃比センサ76、酸素センサ77、カム角センサ79、ノックセンサ80、バキュームセンサ82が接続されている。これらの他にも、外部入力回路65には、アクセル開度センサ78や、
図1に示す、イグニッションスイッチ68や、ブレーキ開度センサ69や、車輪速センサ70や、シフトポジションセンサ81等が接続されている。一方、外部出力回路66には、スロットルバルブ33を駆動するスロットルモータ34や、インジェクタ35や、イグナイタ21や、EGRバルブ23や、オイルコントロールバルブ37等が接続されている。
【0047】
イグニッションスイッチ68は、エンジン1の運転を開始および停止させるために、運転者によって操作されるものである。このイグニッションスイッチ68は、その切換位置がオン位置にあるときには、イグニッション信号を「ON」としてECU6に送信する一方、切換位置がオフ位置にあるときには、イグニッション信号を「OFF」としてECU6に送信する。ブレーキ開度センサ69は、運転者によって踏み込み操作されるブレーキペダル19の踏み込み量を検出し、かかる踏み込み量に応じた電気信号をECU6に送信する。車輪速センサ70は、駆動輪の回転角速度を検出し、その検出値を車輪速信号としてECU6に送信する。
【0048】
クランク角度センサ71は、クランクシャフト13の所定回転角度毎に、クランク位置を表すクランク角パルス信号を、また、クランクシャフト13が基準位置になる毎に、基準パルス信号を、それぞれECU6に送信する。ECU6は、クランク角パルス信号の周期と基準パルス信号とから、クランクシャフト13の回転角(クランク角CA)および回転速度(エンジン回転数Ne)とを一定時間毎に算出する。
【0049】
水温センサ72は、エンジン水温Twを検出し、その水温信号をECU6に送信する。エアフローメータ73は、吸入空気量を検出し、その吸入空気量信号をECU6に送信する。吸気温センサ74は、吸入空気温度を検出して、その吸気温信号をECU6に送信する。スロットル開度センサ75は、スロットル開度θthを検出し、そのスロットル開度信号をECU6に送信する。空燃比センサ76は、燃焼室11から排出された排気(上流側触媒コンバータ42の上流側における排気)の空燃比に対応した出力電圧を発生し、その出力電圧信号をECU6に送信する。酸素センサ77は、上流側触媒コンバータ42の下流側における排気の酸素濃度に対応した出力電圧を発生し、その出力電圧信号をECU6に送信する。アクセル開度センサ78は、運転者により操作されるアクセルペダル(図示せず)の開度ACCを検知し、その開度信号をECU6に送信する。
【0050】
カム角センサ79は、例えば第1番気筒の圧縮上死点(TDC)に対応してパルス信号を出力することにより気筒判別センサとして使用される。つまり、このカム角センサ79は、吸気カムシャフト36の1回転毎にパルス信号をECU6に送信する。ノックセンサ80は、シリンダブロック17に伝わるエンジン1の振動を圧電素子式(ピエゾ素子式)または電磁式(マグネット、コイル)等によって検出する振動式センサであり、その振動信号をECU6に送信する。シフトポジションセンサ81は、D(ドライブ)ポジション、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジションといった、運転者によって操作されるシフトレバー20のシフトポジションを検出し、各シフトポジションを表す信号をECU6に送信する。バキュームセンサ82は、吸気通路3におけるスロットルバルブ33よりも下流側の圧力(吸気圧)を検出し、その吸気圧信号をECU6に送信する。
【0051】
そして、ECU6は、上記各種センサの検出信号に基づいて、エンジン1の各種制御を実行する。例えば、ECU6は、排気通路4に配置した空燃比センサ76および酸素センサ77の各出力に基づいて排気ガス中の酸素濃度を算出し、その算出した酸素濃度から得られる実際の空燃比が目標空燃比(例えば理論空燃比)に一致するように、インジェクタ35から吸気ポート7に噴射する燃料噴射量を制御する。
【0052】
−アイドリングストップアンドスタート制御−
本実施形態に係る車両は、交差点での信号待ち等のように一時的に停車した際に、エンジン1を自動停止させる一方、エンジン1を自動停止状態(アイドリングストップ状態)から復帰させる所謂アイドリングストップアンドスタート制御(自動停止再始動制御)を行うようになっている。以下、このアイドリングストップアンドスタート制御(以下、S&S制御ともいう)について説明する。
【0053】
ECU6は、アイドリングストップ条件(所定の自動停止条件)が成立するとエンジン1を自動停止させる一方、アイドリングストップ解除条件(所定の再始動条件)が成立すると、エンジン1を再始動させるS&S制御を行うように構成されている。具体的には、ECU6は、アイドリングストップ条件が成立すると、吸気ポート7へのインジェクタ35からの燃料供給を停止(フューエルカット)する。一方、ECU6は、アイドリングストップ解除条件が成立すると、吸気ポート7へのインジェクタ35からの燃料供給を再開するとともに、始動制御信号をスタータモータ(図示せず)に送信するようになっている。
【0054】
本実施形態におけるアイドリングストップ条件には、イグニッション信号がONである状態で、例えば、ブレーキペダル19の踏み込み操作がなされていること(ブレーキON)、エンジン水温Twが所定水温(例えば40℃)以上であること、車輪速センサ70により検出される車輪速から演算される車速Vが「0km/h」であること等が含まれる。このように、エンジン水温Twが所定水温以上であることが条件に含まれるのは、エンジン水温Twが低い状態で自動停止してしまうと、その後の再始動時におけるエンジン1の始動が遅れるからである。なお、アイドリングストップ条件に、例えば、アクセル開度ACCが「0%」であることを含むようにしてもよい。
【0055】
一方、アイドリングストップ解除条件には、アイドリングストップ条件が成立してエンジン1が自動停止している状態で、例えば、ブレーキペダル19の踏み込み解除操作がなされたこと(ブレーキOFF)等が含まれる。なお、アイドリングストップ解除条件に、例えばシフトレバー20の操作によりDポジションが選択されたことを含むようにしてもよい。
【0056】
なお、S&S車両におけるアイドリングストップ状態からの再始動の際は、ブレーキペダル19の踏み込み解除操作がなされることでエンジン1が始動するため、踏み込み解除操作がなされてから駆動力が発生するまでの間に、制動力が発生しない期間が生じる。それ故、エンジン再始動の際には、不意の飛び出しや、上りの坂道での車両の後退等が懸念される。
【0057】
そこで、平坦な道路や坂道での発進性を向上させるべく、ECU6は、ブレーキペダル19の踏み込み解除操作がなされてから駆動力が発生するまでの間、ブレーキ油圧を保持する発進時補助制御を実行するように構成されている。より詳しくは、ECU6は、エンジン再始動の際、エンジン再始動後の所定時間tp1内は、ブレーキ装置のマスタシリンダ液圧を保持することでブレーキ力を保持し、所定時間tp1経過後に、保持していたマスタシリンダ液圧を自動的に解除するように構成されている。
【0058】
そうして、ECU6は、マスタシリンダ液圧を解除した際、急に大きなトルクが発生することによるショックを和らげるために、エンジン1が再始動する前からアクセルペダルが踏み込まれていても、所定時間tp1が経過するまでは、スロットルバルブ33の開度を制限するように構成されている。ECU6は、所定時間tp1が経過すると、アクセル開度ACCに応じたスロットル開度θthが得られるようにスロットルモータ34を制御するようになっている。
【0059】
−通常始動時における燃料増量制御−
本実施形態のように、ガソリン(液体燃料)を吸気ポート7に噴射するタイプのエンジン1では、インジェクタ35から噴射された燃料の一部はそのまま新気と混合して気筒内に吸入されるが、残りの燃料は吸気ポート7の内壁や吸気バルブ31の表面等(以下、吸気ポート等ともいう)に一旦付着する。このため、ECU6は、イグニッションスイッチ68の操作による通常始動時には、吸気ポート7等に付着する分を見込んで、燃料噴射量を基本燃料噴射量Q
0よりも増量する燃料増量制御を行う。なお、基本燃料噴射量Q
0とは、エアフローメータ73により検出される吸入空気量に対して所望の空燃比を実現するための燃料噴射量である。
【0060】
具体的には、ECU6は、下記の式(1)および式(2)に基づき始動後燃料噴射量Qを算出する。以下、これら式(1)および式(2)について説明する。
Q=Q
0×(1+I
A)・・・(1)
I
A=Id
A×(D
A)
l・・・(2)
Q:始動後燃料噴射量
Q
0:基本燃料噴射量
I
A:燃料増量係数
Id
A:燃料増量係数初期値
D
A:減衰係数
l:0または正の整数
エンジン1の温度が極めて低ければ、新たに噴射された燃料が吸気ポート7等に大量に付着し易くなることから、始動時におけるエンジン水温Twが低い場合には、始動後燃料噴射量Qを大きくする必要性が高い。また、スロットル開度θthが大きければ、吸気量が増えて多くの燃料が要求されることから、始動後燃料噴射量Qを大きくする必要性が高い。このため、ECU6は、エンジン水温Twおよびスロットル開度θthに基づいて、始動後燃料噴射量Qを決定するように構成されている。
【0061】
より詳しくは、ROM62には、
図3に一例を示すような、燃料増量係数初期値Id
Aをエンジン水温Twおよびスロットル開度θthに対応させたマップ(以下、第1マップともいう)が記憶されている。ECU6は、エンジン1を始動する際、水温センサ72からの信号に基づいてエンジン水温Twを取得するとともに、スロットル開度センサ75からの信号に基づいてスロットル開度θthを取得する。そうして、ECU6は、取得したエンジン水温Twおよびスロットル開度θthと、第1マップとに基づいて、最適な燃料増量係数初期値Id
Aを算出する。
【0062】
図3に示すように、燃料増量係数初期値Id
Aは、エンジン水温Twが低いほど、また、スロットル開度θthが大きいほど大きくなるように設定されている。これにより、エンジン水温Twが低いため、吸気ポート7等への燃料付着量が増大する場合にも、空燃比の極端なリーン化を抑えることができる。一方、エンジン水温Twが高いため、吸気ポート7等への燃料付着量が減少する場合には、空燃比の極端なリッチ化を抑えることができる。なお、スロットル開度θth=0(°)とスロットル開度θth=10(°)の間の燃料増量係数初期値Id
Aは、スロットル開度θthに応じてそれぞれ補間される。また、スロットル開度θth>10(°)の場合の燃料増量係数初期値Id
Aは、スロットル開度θth=10(°)の燃料増量係数初期値Id
Aと同じ値となる。
【0063】
もっとも、時間の経過とともに燃料が吸気ポート7等に蓄積し、新たに噴射される燃料の他、かかる蓄積した燃料も吸気流に乗って燃焼室11に吸入さることから、時間の経過とともに空燃比がリッチ化するのを抑えるべく、始動後燃料噴射量Qを減少させる必要がある。そうして、燃料増量係数初期値Id
Aはエンジン水温Twが低いほど大きく設定されることから、エンジン水温Twが低いほど始動後燃料噴射量Qを早く減少させる必要性が高い。このため、ECU6は、エンジン水温Twに基づいて決定される減衰係数D
Aで、始動後燃料噴射量Qを時間の経過とともに減少させるように構成されている。
【0064】
より詳しくは、ROM62には、
図4に一例を示すような、減衰係数D
Aをエンジン水温Twに対応させたマップ(以下、第2マップともいう)が記憶されている。ECU6は、取得したエンジン水温Twと第2マップとに基づいて、最適な減衰係数D
Aを算出する。そうして、ECU6は、上記式(2)に示すように、減衰係数D
Aを燃料増量係数初期値Id
Aに掛けて、燃料増量係数I
Aを取得する。
【0065】
なお、上記式(2)は、所定時間Δt(例えば0.065秒)毎に前回の燃料増量係数I
A(l-1)に減衰係数D
Aを掛けて今回の燃料増量係数I
A(l)を算出することを意味する。すなわち、減衰を開始してから(l×Δt)だけ時間が経過したときの燃料増量係数I
A(l)は、I
A(l)=I
A(l-1)×D
A=Id
A×(D
A)
lで表される。それ故、減衰を開始する前は、l=0であることから、減衰を開始する前の燃料増量係数I
Aは、燃料増量係数初期値Id
Aとなる。
【0066】
そうして、ECU6は、式(1)に示すように、燃料増量係数I
Aを基本燃料噴射量Q
0に掛けた値(Q
0×I
A)を、基本燃料噴射量Q
0に加えて、始動時における始動後燃料噴射量Qを決定する。
【0067】
図4に示すように、減衰係数D
Aは、エンジン水温Twが低い場合には相対的に小さな値をとるように、また、エンジン水温Twが高い場合には、相対的に大きな値をとるように設定されている。これにより、エンジン水温Twが低いとき(燃料増量係数初期値Id
Aが大きいとき)には、相対的に小さな減衰係数D
Aによって始動後燃料噴射量Qが急激に減衰されることから、時間の経過とともに空燃比がリッチ化するのを抑えることができる。
【0068】
図5は、燃料増量係数Iとエンジン回転数Neとの関係を模式的に示す図であり、同図(a)は、エンジン1の自立運転と同時に燃料噴射量を増加する場合である。
図5(a)に示すように、エンジン1が停止した状態から、インジェクタ35から燃料が噴射されるとともにスタータモータによりクランキングが行われると、エンジン回転数NeがNe2に達し、エンジン1が自立運転可能な状態になる。
【0069】
ここで、本燃料増量制御のように、エンジン1の自立運転と同時に燃料噴射量を増加する場合には、エンジン回転数Neを早急に目標アイドル回転数Ne1まで高めるべく、始動後燃料噴射量Qを直ぐに減衰係数D(D
A)で減少させるのではなく、燃料増量係数I(I
A)を暫く燃料増量係数初期値Id(Id
A)に維持する。この場合には、エンジン回転数Neが目標アイドル回転数Ne1を超えてから、減衰係数D(D
A)で減衰を開始する。
【0070】
−エンジン再始動時における燃料増量制御−
本実施形態では、イグニッションスイッチ68の操作による通常始動時のみならず、アイドリングストップ状態からのエンジン再始動時にも、燃料噴射量を基本燃料噴射量Q
0よりも増量する制御を行う。
【0071】
より詳しくは、エンジン再始動時には、例えば、エンジン水温Twが低ければ(例えば暖機温度以下)、新たに噴射された燃料が吸気ポート7等に付着し易くなるし、エンジン1の自動停止期間taが長ければ、吸気ポート7等に付着していた燃料が蒸発し易くなる。それ故、アイドリングストップ状態からのエンジン再始動時には、エンジン水温Twや自動停止期間taに応じて、吸気ポート7に噴射される燃料の増量を行うことが望ましい。
【0072】
そこで、ECU6は、下記の式(3)および式(4)に基づき始動後燃料噴射量Qを算出し、かかる始動後燃料噴射量Qを用いて、エンジン再始動時における再始動時燃料増量制御を行うように構成されている。以下、これら式(3)および式(4)並びに再始動時燃料増量制御について説明する。
Q=Q
0×(1+I
B)・・・(3)
I
B=Id
B×(D
B)
m・・・(4)
Q:始動後燃料噴射量
Q
0:基本燃料噴射量
I
B:燃料増量係数
Id
B:燃料増量係数初期値
D
B:減衰係数
m:0または正の整数
ROM62には、
図6に一例を示すような、燃料増量係数初期値Id
Bをエンジン水温Twおよび自動停止期間taに対応させたマップ(以下、第3マップともいう)が記憶されている。ECU6は、水温センサ72からの信号に基づいてエンジン再始動時におけるエンジン水温Twを取得するとともに、エンジン1が自動停止してからエンジン1が再始動するまでの時間をカウントすることによって、エンジン1の自動停止期間taを取得する。なお、「エンジン再始動時におけるエンジン水温Tw」とは、エンジン1が自立運転可能となったときのエンジン水温Twを意味する。
【0073】
ECU6は、取得したエンジン水温Twおよび自動停止期間taと、第3マップとに基づいて、最適な燃料増量係数初期値Id
Bを算出する。なお、自動停止期間taは、エンジン1が自動停止してからアイドリングストップ解除条件が成立するまでの時間をカウントするとともに、アイドリングストップ解除条件が成立してからエンジン再始動までの時間を推定することによって、エンジン再始動前に取得するようにしてもよい。
【0074】
図6に示すように、燃料増量係数初期値Id
Bは、自動停止期間taが30秒未満の場合よりも、自動停止期間taが30秒以上の場合の方が大きくなるように設定されている。また、燃料増量係数初期値Id
Bは、エンジン水温Twが低いほど大きくなる傾向にある。すなわち、燃料増量係数初期値Id
Bは、エンジン水温Twが低いほど、また、自動停止期間taが長いほど大きな値を採り易くなっている。これにより、エンジン水温Twが低く、自動停止期間taが長い場合、すなわち、新たに噴射された燃料が吸気ポート7等に付着する割合が大きい場合にも、空燃比の極端なリーン化を抑えることができる。一方、エンジン水温Twが高く、自動停止期間taが短い場合、すなわち、新たに噴射された燃料が吸気ポート7等に付着する割合が小さい場合には、空燃比の極端なリッチ化を抑えることができる。なお、自動停止期間taが10秒未満の場合には、燃料の増量を行わないようにしてもよい。
【0075】
また、アイドリングストップ状態からのエンジン再始動においても、時間の経過とともに始動後燃料噴射量Qを減少させる必要がある。そうして、燃料増量係数初期値Id
Bは、エンジン水温Twが低いほど、また、自動停止期間taが長いほど大きな値を採り易いことから、エンジン水温Twが低いほど、また、自動停止期間taが長いほど始動後燃料噴射量Qを早く減少させる必要性が高い。このため、ECU6は、エンジン水温Twと自動停止期間taとに基づいて決定される減衰係数D
Bで、始動後燃料噴射量Qを時間の経過とともに減少させる。
【0076】
より詳しくは、ROM62には、
図7に一例を示すような、減衰係数D
Bをエンジン水温Twおよび自動停止期間taに対応させたマップ(以下、第4マップともいう)が記憶されている。ECU6は、取得したエンジン水温Twおよび自動停止期間taと第4マップとに基づいて、最適な減衰係数D
Bを算出する。そうして、ECU6は、上記式(4)に示すように、減衰係数D
Bを燃料増量係数初期値Id
Bに掛けて燃料増量係数I
Bを取得する。
【0077】
なお、上記式(4)は、上記式(2)と同様に、所定時間毎に前回の燃料増量係数I
B(m-1)に減衰係数D
Bを掛けて今回の燃料増量係数I
B(m)を算出することを意味し、減衰を開始する前(m=0)の燃料増量係数I
Bは燃料増量係数初期値Id
Bとなる。
【0078】
そうして、ECU6は、式(3)に示すように、燃料増量係数I
Bを基本燃料噴射量Q
0に掛けた値(Q
0×I
B)を、基本燃料噴射量Q
0に加えて、始動時における始動後燃料噴射量Qを決定する。
【0079】
図7に示すように、減衰係数D
Bは、自動停止期間taが30秒未満の場合には、エンジン水温Twの高低に関わりなく、相対的に大きい一定値を採るように設定されている。これは、
図6に示すように、自動停止期間taが30秒未満の場合には、燃料増量係数初期値Id
Bは小さな値に設定されることから、相対的に大きい減衰係数D
Bによっても、空燃比がリッチ化するのを抑えられるからである。また、減衰係数D
Bは、自動停止期間taが30秒以上の場合、エンジン水温Twが低いときには、相対的に小さい値に設定される一方、エンジン水温Twが高いときには、相対的に大きい値に設定される。これは、
図6に示すように、自動停止期間taが30秒以上の場合には、燃料増量係数初期値Id
Bはエンジン水温Twが低いほど大きな値を採ることから、相対的に小さい減衰係数D
Bによって、始動後燃料噴射量Qを急激に減衰させるためである。
【0080】
また、再始動時燃料増量制御では、上記通常始動時における燃料増量制御と同様に、エンジン再始動と同時に燃料の増量を行うことから、
図5(a)に示すように、燃料増量係数I(I
B)を暫く燃料増量係数初期値Id(Id
B)に維持し、エンジン回転数Neが目標アイドル回転数Ne1を超えてから、減衰係数D(D
B)で減衰を開始する。
【0081】
図8は、再始動時燃料増量制御の一例を示すタイムチャートである。
図8に示すように、アイドリングストップ条件が成立してエンジン1が自動停止している状態(S&S停止中)で、時刻t
0においてアイドリングストップ解除条件が成立すると、ECU6からの指令により、インジェクタ35からの燃料噴射とスタータモータによるエンジン1のクランキングとが行われる。時刻t
1においてエンジン回転数NeがNe2に達し、エンジン1が自立運転可能な状態になると、燃料増量係数I
B=Id
Bとして式(3)により算出された始動後燃料噴射量Qにてインジェクタ35から燃料が噴射される。
【0082】
燃料が噴射されることによってエンジン回転数Neが急速に上昇して、エンジン回転数Neが目標アイドル回転数Ne1を超えると、時刻t
2において減衰係数D
Bを用いて始動後燃料噴射量Qを減少させる。これにより、
図8の最下段に示すように、一旦リッチ化した空燃比(A/F)を、直ぐに狙いとするストイキ(例えばA/F=14.6)に戻すことが可能となる。したがって、再始動時燃料増量制御によれば、空燃比を極端にリーン化またはリッチ化させることなく、エンジン再始動時におけるエンジン回転数Neを目標アイドル回転数Ne1付近に維持して、スムーズに車両が発進できる状態が形成される。
【0083】
−エンジン再始動後の急発進時における燃料増量制御−
上述の如く、本実施形態では、アイドリングストップ状態からの再始動時においても、再始動時燃料増量制御を実行することで、空燃比を極端にリーン化またはリッチ化させることなく、スムーズに車両が発進できる状態を形成することが可能となる。
【0084】
しかしながら、エンジン1の温度が低すぎず且つ高すぎない中途半端な暖機状態で、エンジン1の自動停止期間taが長くなると、吸気ポート7等に付着していた燃料が自動停止中に熱伝導により蒸発することがある。このような場合には、吸気ポート7等に付着していた燃料が吸気流に乗って燃焼室11に吸入されることが見込めないのみならず、吸気ポート7等が乾いてしまっているため、エンジン1の再始動時にインジェクタ35から新たに噴射された燃料が大量に吸気ポート7等に付着する。このため、再始動時燃料増量制御を行っているにも拘わらず、燃焼室11に吸入される燃料が減少するという現象が生じる。この場合には、
図15中の太破線で示すように、空燃比がリーンになるとともにエンジン回転数Neが急激に落ち込むため、このような状態で急発進が行われると、ヘジテーション(加速不良)が発生するおそれがある(
図15中の車速V参照)。
【0085】
そこで、ECU6は、自動停止状態からの再始動後の所定期間P内にスロットル開度θthおよびアクセル開度ACCの少なくとも一方が、所定開度(所定値)以上および所定変化速度(所定速度)以上の少なくとも一方で開方向に操作された場合(以下、開度条件ともいう)には、自動停止状態からの再始動後の所定期間P内にスロットル開度θthおよびアクセル開度ACCの少なくとも一方が、所定開度以上および所定変化速度以上の少なくとも一方で開方向に操作されない場合と比較して、吸気ポート7への始動後燃料噴射量Qを増加するように構成されている。
【0086】
このように、開度条件が成立した場合(急発進がある場合)には、これらの操作がなされない場合(急発進がない場合)に比して、吸気ポート7への始動後燃料噴射量Qを増加することから、空燃比がリーンになるのを抑えて、再始動後の急発進時におけるヘジテーションの発生を抑制することができる。
【0087】
なお、以下の説明では、スロットル開度θthが所定開度θp以上である場合を、開度条件が成立した場合とするが、これに限らず、例えば、スロットル開度θthの変化速度が所定変化速度以上の場合や、アクセル開度ACCが所定開度(例えば40%)以上の場合や、スロットル開度θthおよびアクセル開度ACCが所定開度以上で、且つ、スロットル開度θthおよびアクセル開度ACCの変化速度が所定変化速度以上の場合を、開度条件が成立した場合としてもよい。
【0088】
もっとも、S&S車両における急発進時のヘジテーションを抑制すべく、始動後燃料噴射量Qを闇雲に増加させると、空燃比をリッチ側にせざるを得ず、エミッションや燃費が悪化するという問題がある。
【0089】
そこで、ECU6は、上記開度条件に加えて、エンジン再始動時におけるエンジン水温Twが所定温度範囲内であること、および、エンジン1の自動停止期間taが所定時間ts以上であることを条件として、これらの条件が成立しない場合と比較して、同一のエンジン再始動時におけるエンジン水温Twとエンジン1の自動停止期間taとに基づいて算出される燃料噴射量を大きくする急発進時燃料増量制御を実行するように構成されている。以下、この構成について詳述する。
【0090】
先ず、スロットル開度θthが所定開度θp以上である場合を、急発進時燃料増量制御を実行する条件(以下、急発進時増量条件ともいう)とするのは、上述の如く、S&S車両におけるヘジテーションの発生は、エンジン再始動後に急発進を行う場合に顕著となるからである。ここで、ECU6は、スロットル開度センサ75からのスロットル開度信号に基づき、スロットル開度θthが所定開度θp(例えば20°)以上の場合に、急発進ありと判定する。
【0091】
また、エンジン再始動後の所定期間P(例えば2秒)内に開度条件が成立した場合にのみ急発進時燃料増量制御を実行するのは、時間の経過とともに新たに噴射された燃料が吸気ポート7等に蓄積し、かかる蓄積した燃料が吸気流に乗って燃焼室11に吸入さるので、所定期間P経過後は、開度条件が成立してもヘジテーションの発生する可能性が低いからである。
【0092】
次に、エンジン再始動時におけるエンジン水温Twが所定温度範囲(例えば35℃〜60℃)内であることを急発進時増量条件とするのは、再始動時におけるエンジン水温Twが低ければ(例えば35℃未満)、吸気ポート7等に付着していた燃料がエンジン1の自動停止中に蒸発し難くなるし、上記再始動時燃料増量制御によって適正な燃料増量が行われるからである。一方、再始動時におけるエンジン水温Twが高ければ(例えば60℃超え)、インジェクタ35から噴射された燃料の大部分がそのまま新気と混合して気筒内に吸入されるからである。つまり、急発進時燃料増量制御は、エンジン水温Twが低すぎず且つ高すぎない中途半端な状態、換言すると、従来あまり燃料増量が行われなかった温度範囲において、優れた効果を発揮することになる。
【0093】
なお、「エンジン再始動時におけるエンジン水温Tw」とは、エンジン1が自立運転可能となったときのエンジン水温Twを意味する。また、アイドリングストップ状態からのエンジン再始動時に、エンジン水温Twが極めて低くなることは稀なので、エンジン再始動時におけるエンジン水温Twが所定温度範囲内であることに代えて、エンジン再始動時におけるエンジン水温Twが所定温度以下(暖機温度以下)であることを、急発進時増量条件としてもよい。
【0094】
さらに、エンジン1の自動停止期間taが所定時間ts(例えば30秒)以上であることを急発進時増量条件とするのは、自動停止してから再始動までの時間が長ければ長いほど、吸気ポート7等に付着していた燃料が自動停止中に蒸発し、吸気ポート7等が乾くため、新たに噴射された燃料が吸気ポート7等に大量に付着するからである。
【0095】
そうして、急発進時増量条件が成立すると、ECU6は、同一のエンジン再始動時におけるエンジン水温Twで、且つ、同一の自動停止期間taであっても、上記再始動時燃料増量制御における始動後燃料噴射量Qと比較して、急発進時燃料増量制御における始動後燃料噴射量Qを大きくする。具体的には、ECU6は、急発進時増量条件が成立すると、下記の式(5)、式(6)および上記式(4)に基づき、再始動時燃料増量制御における始動後燃料噴射量Q=Q
0×(1+I
B)に対し、燃料増量値(Q
0×I
C)を追加する。以下、これら式(5)および式(6)について説明する。
【0096】
なお、以下に示す急発進時燃料増量制御はあくまでも一例であり、再始動時燃料増量制御における始動後燃料噴射量Qと比較して、急発進時燃料増量制御における始動後燃料噴射量Qを大きくするのであれば、基本燃料噴射量Q
0に燃料増量係数を乗算するという手法に必ずしも拘る必要はない。
Q=Q
0×(1+I
B+I
C)・・・(5)
I
C=Id
C×Wf×(D
C)
n・・・(6)
Q:始動後燃料噴射量
Q
0:基本燃料噴射量
I
B:燃料増量係数
I
C:燃料増量係数
Id
C:燃料増量係数初期値
Wf:増量補正係数
D
C:減衰係数
n:0または正の整数
ROM62には、
図9に一例を示すような、燃料増量係数初期値Id
Cをエンジン水温Twおよび自動停止期間taに対応させたマップ(以下、第5マップともいう)が記憶されている。ECU6は、再始動時燃料増量制御と同様に、エンジン水温Twと自動停止期間taを取得し、これらエンジン水温Twおよび自動停止期間taと、第5マップとに基づいて、最適な燃料増量係数初期値Id
Cを算出する。
【0097】
図9に示すように、燃料増量係数初期値Id
Cは、基本的に、自動停止期間taが長いほど大きくなるように設定されている。また、燃料増量係数初期値Id
Cは、基本的に、エンジン水温Twが低いほど大きくなるように設定されている。すなわち、燃料増量係数初期値Id
Cは、エンジン水温Twが低いほど、また、自動停止期間taが長いほど大きな値を採り易くなっている。これにより、エンジン水温Twが低く、自動停止期間taが長い場合、すなわち、吸気ポート7等に付着していた燃料が自動停止中に蒸発し、新たに噴射された燃料が乾いた吸気ポート7等に大量に付着する場合にも、空燃比の極端なリーン化を抑えることができる。一方、エンジン水温Twが高く、自動停止期間taが短い場合、すなわち、新たに噴射された燃料のうち吸気ポート7等に付着する燃料の割合が小さい場合には、空燃比の極端なリッチ化を抑えることができる。
【0098】
そうして、ECU6は、エンジン再始動後の所定期間P内において、開度条件が成立したときを、始動後燃料噴射量Qによる噴射開始タイミングとする。換言すると、ECU6は、エンジン再始動後の所定期間P内において、スロットル開度θthが所定開度θp以上になったときに、再始動時燃料増量制御における始動後燃料噴射量Qに対し、燃料増量値(Q
0×I
C)を追加する。
【0099】
図10は、スロットル開度θthと燃料増量係数Iとの関係の一例を示すタイミングチャートであり、同図(a)は、発進時補助制御の終了後にアクセルペダルが踏み込まれた場合を示すタイミングチャートであり、同図(b)は、エンジン1の自動停止中にアクセルペダルが踏み込まれた場合を示すタイミングチャートである。
【0100】
図10(a)に示すように、アイドリングストップ解除条件が成立する(ブレーキペダル19の踏み込み解除操作がなされる)と、時刻t
0’において燃料増量係数I
Bを用いた始動後燃料噴射量Qによる燃料噴射が開始される。このとき、発進時補助制御により、ブレーキOFFとなってもブレーキ力が保持される。次いで、時刻t
1’において発進時補助制御における所定時間tp1が経過し、時刻t
2’においてアクセルペダルが踏み込まれると、アクセル開度ACCに応じたスロットル開度θthが得られるようにスロットルモータ34が制御される。そうして、時刻t
3’においてスロットル開度θthが所定開度θp以上になったときに、燃料増量係数I
Cを用いた始動後燃料噴射量Qにて燃料噴射が行われる。
【0101】
一方、
図10(b)に示すように、自動停止中の時刻t
0”においてにアクセルペダルが踏み込まれても、発進時補助制御における所定時間tp1が経過する時刻t
2”までは、スロットル開度θthが制限される。このため、時刻t
1”においては、スロットル開度θthが制限されたまま、燃料増量係数I
Bを用いた始動後燃料噴射量Qによる燃料噴射が開始されるとともに、ブレーキ力が保持される。そうして、時刻t
2”において所定時間tp1が経過すると、アクセル開度ACCに応じたスロットル開度θthが得られるようにスロットルモータ34が制御される。次いで、時刻t
3”においてスロットル開度θthが所定開度θp以上になったときに、燃料増量係数I
Cを用いた始動後燃料噴射量Qにて燃料噴射が行われる。つまり、急発進時燃料増量制御では、自動停止から再始動後の所定期間Pまでの、どのタイミングでアクセルペダルが踏み込まれても、燃料増量係数I
Cを用いた始動後燃料噴射量Qによる燃料噴射は、所定時間tp1経過後に行われることになる。
【0102】
このように、ECU6は、所定時間tp1経過後にスロットル開度θthが所定開度θp以上になった場合に、燃料増量係数I
Cを用いた始動後燃料噴射量Qにて燃料噴射を行う。もっとも、時間の経過とともに吸気ポート7等に燃料が蓄積されるので、所定期間Pの後半に急発進が行われる場合には、始動後燃料噴射量Qを大きく設定する必要性は低い。そこで、ECU6は、エンジン1が再始動してから(エンジン1が自立運転可能な状態になってから)、急発進時増量条件が成立するまでの時間である急発進時増量条件成立時間tp(以下、条件成立時間tpともいう)を始動後燃料噴射量Qに反映させるように構成されている。
【0103】
より詳しくは、ROM62には、
図11に一例を示すような、増量補正係数Wfを条件成立時間tpに対応させたマップ(以下、第6マップともいう)が記憶されている。ECU6は、エンジン1が自立運転可能な状態になってから急発進時増量条件が成立するまでの時間をカウントすることによって、条件成立時間tpを取得する。そうして、ECU6は、取得した条件成立時間tpと、第6マップとに基づいて、最適な増量補正係数Wfを算出し、算出した増量補正係数Wfを燃料増量係数初期値Id
Cに掛けることで、燃料増量係数初期値Id
Cを補正する。
【0104】
図11に示すように、増量補正係数Wfは、条件成立時間tpが長いほど小さな値となるように設定されている。これにより、所定期間Pの後半に急発進が行われる場合ほど燃料増量係数初期値Id
Cが小さな値に補正されることから、ヘジテーションの発生を抑えつつ、空燃比の無駄なリッチ化を抑えて、エミッションや燃費の悪化を確実に抑制することができる。
【0105】
図12は、スロットル開度θthと燃料増量係数Iとの関係の一例を示す図である。エンジン再始動後、踏み込まれたアクセルペダルが踏み込まれた状態で維持されるとは限らず、運転者によっては、一旦踏み込まれたアクセルペダルを戻し、直ぐにアクセルペダルを踏み込むといった操作を行うことも想定される。そこで、ECU6は、エンジン再始動後の所定期間P内において急発進時増量条件が成立する度に、増量補正係数Wfによって燃料増量係数初期値Id
Cを補正するように構成されている。
【0106】
例えば、
図12に示すように、アクセルペダルが踏み込まれて再始動後経過時間tr=t
1においてスロットル開度θthが所定開度θpになると、ECU6は、条件成立時間tp=t
1と第6マップとに基づいて増量補正係数Wf
1を算出する。ECU6は、増量補正係数Wf
1を燃料増量係数初期値Id
Cに掛けることで、燃料増量係数初期値Id
Cを補正し、かかる補正された燃料増量係数初期値(Id
C×Wf
1)に基づいて、燃料の増量を行う。次いで、運転者が一旦踏み込まれたアクセルペダルを戻し、再始動後経過時間tr=t
2においてスロットル開度θthが所定開度θp未満になると、ECU6は、燃料増量値(Q
0×I
C)による燃料の増量を中止し、再始動時燃料増量制御における始動後燃料噴射量Q=Q
0×(1+I
B)による燃料噴射を行う。
【0107】
その後、再びアクセルペダルが踏み込まれて再始動後経過時間tr=t
3においてスロットル開度θthが所定開度θpになると、ECU6は、前回の増量補正係数Wf
1を用いるのではなく、条件成立時間tp=t
3と第6マップとに基づいて新たに増量補正係数Wf
3を算出する。ECU6は、増量補正係数Wf
3を燃料増量係数初期値Id
Cに掛けることで、燃料増量係数初期値Id
Cを補正し、かかる補正された燃料増量係数初期値(Id
C×Wf
3)に基づいて、燃料の増量を行う。つまり、ECU6は、一旦設定された増量補正係数Wfを用い続けるのではなく、スロットル開度θthが所定開度θpになった(急発進時増量条件が成立した)ときの条件成立時間tpに見合った増量補正係数Wfを用いる。これにより、急発進時増量条件が所定期間P内に複数回成立する場合でも、ヘジテーションの発生を抑えつつ、空燃比の無駄なリッチ化を抑えて、エミッションや燃費の悪化を確実に抑制することができる。
【0108】
急発進時燃料増量制御においても、上記再始動時燃料増量制御と同様に、時間の経過とともに始動後燃料噴射量Qを減少させる必要がある。そうして、燃料増量係数初期値Id
Cは、エンジン水温Twが低いほど、また、自動停止期間taが長いほど大きな値を採り易いことから、エンジン水温Twが低いほど、また、自動停止期間taが長いほど始動後燃料噴射量Qを早く減少させる必要性が高い。このため、ECU6は、エンジン水温Twと自動停止期間taとに基づいて決定される減衰係数D
Cで、始動後燃料噴射量Qを時間の経過とともに減少させる。
【0109】
より詳しくは、ROM62には、
図13に一例を示すような、減衰係数D
Cをエンジン水温Twおよび自動停止期間taに対応させたマップ(以下、第7マップともいう)が記憶されている。そうして、ECU6は、取得したエンジン水温Twおよび自動停止期間taと第7マップとに基づいて、最適な減衰係数D
Cを算出し、上記式(6)に示すように、かかる減衰係数D
Cを補正された燃料増量係数初期値(Id
C×Wf)に掛けて燃料増量係数I
Cを取得する。
【0110】
なお、上記式(6)は、上記式(2)および式(4)と同様に、所定時間毎に前回の燃料増量係数I
C(n-1)に減衰係数D
Cを乗算して今回の燃料増量係数I
C(n)を算出することを意味、減衰を開始する前(n=0)の燃料増量係数I
CはId
C×Wfとなる。
【0111】
そうして、ECU6は、このようにして取得される燃料増量係数I
Cを基本燃料噴射量Q
0に掛けた燃料増量値(Q
0×I
C)を、式(5)に示すように、再始動時燃料増量制御における始動後燃料噴射量Q=Q
0×(1+I
B)に加えて、再始動時における始動後燃料噴射量Qを決定する。なお、式(4)〜式(6)から明らかなように、燃料増量値(Q
0×I
B)は減衰係数D
Bで、また、燃料増量値(Q
0×I
C)は減衰係数D
Cで、それぞれ独立して減少される。
【0112】
図13に示すように、減衰係数D
Cは、自動停止期間taが40秒未満の場合で、エンジン水温Twが低いときには、相対的に小さい値に設定される一方、エンジン水温Twが高いときには、相対的に大きい値に設定される。これは、
図9に示すように、燃料増量係数初期値Id
Cはエンジン水温Twが低いほど大きな値を採ることから、エンジン水温Twに応じて始動後燃料噴射量Qを適正に減衰させるためである。
【0113】
一方、減衰係数D
Cは、自動停止期間taが40秒以上の場合には、エンジン水温Twの高低に関わりなく、相対的に小さい一定値を採るように設定されている。これは、自動停止期間taが40秒以上の場合には、燃料増量係数初期値Id
Cは大きな値に設定されることから、相対的に小さい減衰係数D
Cによって、始動後燃料噴射量Qを急激に減衰させるためである。
【0114】
また、上述の如く、燃料増量係数I
Cに基づく燃料の増量は、所定時間tp1経過後に行われるが、この場合には、エンジン回転数Neは当然目標アイドル回転数Ne1を超えている。それ故、急発進時燃料増量制御では、燃料増量係数I(I
C)を暫く燃料増量係数初期値Id(Id
C)に維持する必要性が乏しいので、
図5(b)に示すように、燃料増量後直ぐに、減衰係数D(D
C)で減衰を開始する。
【0115】
−急発進時燃料増量制御ルーチン−
次に、本実施形態に係る急発進時燃料増量制御の手順を
図14のフローチャートに沿って説明する。
【0116】
先ず、ステップS1においてエンジン1の始動要求(イグニッションスイッチ68の操作やアイドリングストップ解除条件の成立等)があると、次のステップS2では、ECU6が、今回のエンジン1の始動が、S&S制御による自動停止後のエンジン再始動か否かを判定する。このステップS2の判定がNOの場合、すなわち、イグニッションスイッチ68の操作等による通常始動の場合には、ステップS10に進む。
【0117】
これに対し、ステップS2の判定がYESの場合、すなわち、S&S制御による自動停止後のエンジン再始動の場合には、ステップS3に進み、ECU6が、フラグFをONにする。次のステップS4では、ECU6が、フラグFがONであるか否かを判定する。このステップS4の判定がNOの場合、すなわち、フラグFがOFFの場合には、ステップS10に進む。
【0118】
次のステップS10では、ECU6が、エンジン水温Twおよびスロットル開度θthと、第1マップとに基づいて燃料増量係数初期値Id
Aを算出するとともに、エンジン水温Twと第2マップとに基づいて減衰係数D
Aを算出する。そうして、ECU6は、燃料増量係数初期値Id
Aと減衰係数D
Aとに基づいて燃料増量係数I
A=Id
A×(D
A)
lを算出し、始動後燃料噴射量Q=Q
0×(1+I
A)にて燃料噴射を行い、その後ステップS11に進む。
【0119】
一方、ステップS4の判定がYESの場合には、ステップS5に進む。次のステップS5では、ECU6が、再始動時における(エンジン1が自立運転可能となったときの)エンジン水温Twが所定温度範囲内か否かを判定する。このステップS5の判定がNOの場合には、ステップS9に進む一方、このステップS5の判定がYESの場合には、ステップS6に進む。
【0120】
次のステップS6では、ECU6が、エンジン1が自動停止してからエンジン再始動までの時間をカウントすることによって取得した自動停止期間taが、所定時間ts以上であるか否かを判定する。このステップS6の判定がNOの場合には、ステップS9に進む一方、このステップS6の判定がYESの場合には、ステップS7に進む。
【0121】
次のステップS7では、ECU6が、エンジン1が再始動してからカウントを始めた再始動後経過時間trが所定期間P内で、且つ、スロットル開度センサ75からの信号に基づいて取得したスロットル開度θthが所定開度θp以上か否か、すなわち、エンジン再始動後の所定期間P内にスロットル開度θthが所定開度θp以上になったか否かを判定する。このステップS4の判定がNOの場合にはステップS9に進む一方、このステップS7の判定がYESの場合にはステップS8に進む。
【0122】
このように、ステップS9へは、ステップS5〜S7のいずれか1つでも否定判定の場合に、換言すると、急発進時増量条件が成立しない場合に進むことになる。なお、本実施形態においては、上述の如く、発進時補助制御における所定時間tp1が経過するまでは、スロットルバルブ33の開度を制限することから、再始動後経過時間trが所定時間tp1未満の間は、常に、ステップS9へ進むことになる。
【0123】
次のステップS9では、ECU6が、エンジン水温Twおよび自動停止期間taと第3マップとに基づいて燃料増量係数初期値Id
Bを算出するとともに、エンジン水温Twおよび自動停止期間taと第4マップとに基づいて減衰係数D
Bを算出する。そうして、ECU6は、燃料増量係数初期値Id
Bと減衰係数D
Bとに基づいて燃料増量係数I
B=Id
B×(D
B)
mを算出し、始動後燃料噴射量Q=Q
0×(1+I
B)にて燃料噴射を行い、その後ステップS11に進む。
【0124】
一方、ステップS8では、ECU6が、エンジン水温Twおよび自動停止期間taと第5マップとに基づいて燃料増量係数初期値Id
Cを算出するとともに、エンジン水温Twおよび自動停止期間taと第7マップとに基づいて減衰係数D
Cを算出する。また、ECU6は、エンジン1が再始動してから急発進時増量条件が成立するまでの時間をカウントすることによって条件成立時間tpを取得し、条件成立時間tpと第6マップとに基づいて増量補正係数Wfを算出する。そうして、ECU6は、燃料増量係数初期値Id
Cと増量補正係数Wfと減衰係数D
Cとに基づいて燃料増量係数I
C=Id
C×Wf×(D
C)
nを算出し、始動後燃料噴射量Q=Q
0×(1+I
B+I
C)にて燃料噴射を行い、その後ステップS11に進む。
【0125】
次のステップS11では、ECU6が、エンジン1が停止(自動停止を含む)したか否かを判定する。このステップS11の判定がNOの場合には、再びステップS4に進む。
【0126】
例えば、ステップS10→ステップS11→ステップS4と進んだ場合には、フラグF=OFFなので、ステップS4の判定がNOとなり、再びステップS10に進む。この場合には、ステップS11が肯定判定となるまで、上記通常始動時における燃料増量制御が繰り返し行わる。
【0127】
また、ステップS9→ステップS11→ステップS4と進んだ場合には、フラグF=ONなので、ステップS4の判定がYESとなる。この場合には、ステップS7が否定判定のままなら、再びステップS9に進み再始動時燃料増量制御が繰り返し行われる一方、ステップS7が肯定判定になれば、ステップS8に進み急発進時燃料増量制御が行われる。
【0128】
さらに、ステップS8→ステップS11→ステップS4と進んだ場合には、フラグF=ONなので、ステップS4の判定がYESとなる。この場合には、ステップS7が肯定判定のままなら、再びステップS8に進み急発進時燃料増量制御が繰り返し行われる一方、運転者が一旦踏み込まれたアクセルペダルを戻すことで、スロットル開度θthが所定開度θp未満になり、ステップS7が否定判定になれば、ステップS9に進み再始動時燃料増量制御が行われる。
【0129】
なお、ステップS8、ステップS9およびステップS10のいずれに進んだ場合にも、上記制御ルーチンが繰り返し実行されることで、減衰係数D
A,D
B,D
Cが繰り返し乗算されて、燃料増量係数I
A,I
B,I
Cが0に収束するので、始動後燃料噴射量Qはやがて基本燃料噴射量Q
0に収束することになる。
【0130】
これらに対し、ステップS11の判定がYESの場合には、ステップS12に進んでECU6がフラグFをOFFにし、その後ENDする。
【0131】
−急発進時のヘジテーションを抑制するための具体的な制御−
次に、本実施形態に係る急発進時燃料増量制御について、
図15に示すタイミングチャートを用いて説明する。なお、この例では、再始動時におけるエンジン水温Twが所定温度範囲内であるものとする。また、
図15中の太破線は、急発進時燃料増量制御を行わなかった場合、すなわち、再始動時燃料増量制御のみを行った場合を示す。
【0132】
図15に示すように、アイドリングストップ条件が成立すると、時刻t
0においてECU6が自動停止期間taのカウントを開始する。エンジン1が自動停止している状態(S&S停止中)で、時刻t
1において、ブレーキペダル19の踏み込み解除操作がなされてアイドリングストップ解除条件が成立すると、ECU6が、インジェクタ35からの燃料供給を再開するとともにスタータモータに指令を出してエンジン1のクランキングを行い、これにより、エンジン回転数Neが上昇する。なお、ブレーキペダル19の踏み込み解除操作後、アクセルペダルが踏み込まれても、発進時補助制御によってスロットル開度θthが制限される。
【0133】
時刻t
2においてエンジン回転数NeがNe2に達し、エンジン1が自立運転可能な状態になると、ECU6の指令によりインジェクタ35から燃料増量係数初期値Id
Bに基づいて増量された燃料が噴射される。これと同時に、ECU6は、自動停止期間taのカウントを終了するとともに、再始動後経過時間trのカウントを開始する。
【0134】
そうして、始動後燃料噴射量Q=Q
0×(1+I
B)で燃料が噴射されることによってエンジン回転数Neが上昇し、時刻t
3においてエンジン回転数Neが目標アイドル回転数Ne1を超えると、減衰係数D
Bを用いて始動後燃料噴射量Qを減少させる。これにより、一旦リッチ化した空燃比(A/F)が、狙いとする14.6付近に戻る。
【0135】
時刻t
4において発進時補助制御における所定時間tp1が経過すると、スロットルバルブ33の開度制限が解除される。時刻t
5においてスロットル開度θthが所定開度θpに達すると、再始動後経過時間trが所定期間Pを超えていないことから、ECU6が開度条件が成立したと判定する。上述の如く再始動時におけるエンジン水温Twが所定温度範囲内であり、且つ、自動停止期間taが所定時間tsを超えていることから、時刻t
5において急発進時増量条件が成立する。にもかかわらず、再始動時燃料増量制御のみを行う場合には、
図15中の太破線で示すように、空燃比(A/F)が大幅にリーン側となるとともにエンジン回転数Neが急激に落ち込み、時刻t
5における発進要求に対して、車両の発進が時刻t
6まで遅れることになる。
【0136】
これに対し、急発進時燃料増量制御を行った場合には、時刻t
5において、始動後燃料噴射量Q=Q
0×(1+I
B)に燃料増量値(Q
0×I
C)が加算されることから、
図15中の実線で示すように、空燃比のリーン化およびエンジン回転数Neの急激な落ち込みが抑えられ、時刻t
5において速やかに車両を発進させることができる。
【0137】
−急発進時燃料増量制御の効果−
次に、本実施形態の急発進時燃料増量制御による効果を、測定された実車波形に基づいて説明する。
図16は、急発進時燃料増量制御を行った場合の実車波形を模式的に示す図である。なお、図中の破線は、比較のために再始動時燃料増量制御のみを行った場合の実車波形を重ねたものである。また、この例は、再始動時におけるエンジン水温Twが所定の温度範囲内で、且つ、自動停止期間taが所定時間tsを超えた場合の実車波形を測定したものである。さらに、この例では、発進時補助制御を行わず、エンジン再始動の当初から始動後燃料噴射量Q=Q
0×(1+I
B+I
C)で燃料噴射を実行した。
【0138】
図16中の破線で示すように、再始動時燃料増量制御のみを行った場合には、エンジン1が自動停止しているときにアクセル開度ACCが急激に上昇すると、時刻T
0におけるエンジン再始動後、空燃比(A/F)が大幅にリーン側となるとともにエンジン回転数Neが急激に落ち込むことが分かる。このため、時刻T
1〜T
2においてスムーズな加速が行われていないことが分かる。
【0139】
これに対し、
図16中の実線で示すように、急発進時燃料増量制御を行った場合には、時刻T
0におけるエンジン1の再始動と同時に燃料の追加増量が行われることから、
図16中の実線で示すように、空燃比が大幅にリーン側となることなく安定するとともに、エンジン回転数Neが落ち込むことなく上昇していることが分かる。これにより、再始動時燃料増量制御のみを行った場合とは異なり、時刻T
1においてスムーズな加速が行われていることが確認された。
【0140】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神または主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0141】
上記実施形態では、開度条件に加えて、再始動時におけるエンジン水温Twが所定温度範囲内であること、および、エンジン1の自動停止期間taが所定時間ts以上であることを、急発進時増量条件としたが、これに限らず、例えば、開度条件のみを条件として、または、開度条件に加えて、再始動時におけるエンジン水温Twが所定温度範囲内であることを条件として、または、開度条件に加えて、エンジン1の自動停止期間taが所定時間ts以上であることを条件として、急発進時燃料増量制御を実行するようにしてもよい。
【0142】
また、上記実施形態では、再始動時におけるエンジン水温Twや、エンジン1の自動停止期間taや、再始動後経過時間trに基づいて始動後燃料噴射量Qを決定したが、これに限らず、例えば液体燃料の性状も考慮して始動後燃料噴射量Qを決定するようにしてもよい。この場合には、例えば液体燃料の性状が重質なほど始動後燃料噴射量Qを大きくするようにすれば、重質な液体燃料が吸気ポート7等に大量に付着して、燃料の霧化の度合いが低下した場合にも、急発進時のヘジテーションの発生を抑制することができる。
【0143】
さらに、上記実施形態では、液体燃料としてガソリンを用いたが、これに限らず、例えば、アルコール燃料や、ガソリンとアルコールの混合燃料を用いてもよい。
【0144】
また、上記実施形態では、エンジン再始動時に、発進時補助制御を行うようにしたが、これに限らず、発進時補助制御を行わないようにしてもよい。
【0145】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。