(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記類似判定部は、前記電気自動車及び前記非電気自動車それぞれの前記車両情報から得られる車両速度を、所定の変換情報に基づいて、当該車両速度の大小に応じた値をとる指標値に変換し、この指標値を前記EV走行情報及び前記非EV走行情報として用いて、前記対象道路区間に類似する前記実績道路区間を見つける請求項1又は2に記載の電気自動車用情報の推定装置。
前記類似判定部は、前記電気自動車の前記車両情報から得られた前記車両速度を前記指標値に変換する際の前記変換情報を、前記実績道路区間における前記電気自動車の走行抵抗に応じて変化させる請求項3に記載の電気自動車用情報の推定装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔本発明の実施形態の説明〕
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明は、電気自動車が道路区間を走行するために要する消費電力に対応するコスト値を推定する装置であって、下記に定義する実績道路区間を電気自動車が走行した際の走行状態を示すEV走行情報、及びその際の当該電気自動車の消費電力に対応するコスト値を、当該電気自動車の車両情報に基づいて取得し、かつ、下記に定義する対象道路区間を非電気自動車が走行した際の走行状態を示す非EV走行情報を、当該非電気自動車の車両情報に基づいて取得する取得部と、前記EV走行情報及び前記非EV走行情報を道路区間の類似判定のためのパラメータとして用いて、前記対象道路区間に類似する前記実績道路区間を見つける類似判定部と、見つけられた前記実績道路区間における前記コスト値を基にして、当該実績道路区間に類似している前記対象道路区間における前記コスト値を推定する処理部と、を備えている。
実績道路区間:電気自動車から車両情報を取得できた道路区間
対象道路区間:電気自動車からの車両情報は未取得であるが非電気自動車から車両情報を取得できた道路区間
【0014】
この推定装置によれば、電気自動車からの車両情報が未取得である対象道路区間と、類似している実績道路区間を見つけ、この対象道路区間を電気自動車が走行するために要する電気自動車の消費電力に対応するコスト値を、この対象道路区間と類似している前記実績道路区間におけるコスト値を基にして推定することから、そのコスト値を精度良く求めることが可能となる。
なお、実施形態では、前記コスト値は、消費電力量[Wh]であるが、その他として消費電力[W]であってもよい。
【0015】
(2)また、前記電気自動車及び前記非電気自動車から取得された前記車両情報それぞれが、当該車両情報に基づいて得られる走行速度の変化を基準として複数のグループに分類され、前記EV走行情報及び前記非EV走行情報それぞれは、分類された前記グループそれぞれに含まれる車両情報の数の割合を示す情報を含むのが好ましい。
この場合、実績道路区間を走行する電気自動車から取得された車両情報を複数のグループに分類した場合の、当該グループそれぞれに含まれる車両情報の数の割合(第1の割合)と、対象道路区間を走行する非電気自動車から取得された車両情報を複数のグループに分類した場合の、当該グループそれぞれに含まれる車両情報の数の割合(第2の割合)と、が道路区間の類似判定のためのパラメータとして用いられる。このため、ある実績道路区間で取得された電気自動車の車両情報に基づく前記第1の割合と、ある対象道路区間で取得された非電気自動車の車両情報に基づく前記第2の割合とが近い場合に、これら実績道路区間と対象道路区間とは類似している関係にあると言える。
なお、前記分類の例としては、前記車両情報が、加速状態に対応する加速情報のグループ、減速状態に対応する減速情報のグループ、及び等速状態に対応する等速情報のグループの内の少なくとも2つのグループに分類される。
【0016】
(3)また、前記類似判定部は、前記電気自動車及び前記非電気自動車それぞれの前記車両情報から得られる車両速度を、所定の変換情報に基づいて、当該車両速度の大小に応じた値をとる指標値に変換し、この指標値を前記EV走行情報及び前記非EV走行情報として用いて、前記対象道路区間に類似する前記実績道路区間を見つけるのが好ましい。
この場合、ある実績道路区間とある対象道路区間とで車両速度が多少異なる場合であっても、これら道路区間それぞれの前記コスト値に相関がある場合に有効となる。
【0017】
(4)また、前記(3)の推定装置において、前記類似判定部は、前記電気自動車の前記車両情報から得られた前記車両速度を前記指標値に変換する際の前記変換情報を、前記実績道路区間における前記電気自動車の走行抵抗に応じて変化させるのが好ましい。
電気自動車の場合、消費電力に対応するコスト値は、走行する道路区間(実績道路区間)における走行抵抗の影響を受けやすいことから、この走行抵抗に応じて変換情報を変化させることで、精度の高い類似判定が可能となる。
【0018】
(5)また、電気自動車のための経路を探索する経路探索システムであって、電気自動車が道路区間を走行するために要する消費電力に対応するコスト値を推定する推定部と、推定した前記コスト値を用いて前記電気自動車のための経路を探索する経路探索部と、を有し、前記推定部は、下記に定義する実績道路区間を電気自動車が走行した際の走行状態を示すEV走行情報、及びその際の当該電気自動車の消費電力に対応するコスト値を、当該電気自動車の車両情報に基づいて取得し、かつ、下記に定義する対象道路区間を非電気自動車が走行した際の走行状態を示す非EV走行情報を、当該非電気自動車の車両情報に基づいて取得する取得部と、前記EV走行情報及び前記非EV走行情報を道路区間の類似判定のためのパラメータとして用いて、前記対象道路区間に類似する前記実績道路区間を見つける類似判定部と、見つけられた前記実績道路区間における前記コスト値を基にして、当該実績道路区間に類似している前記対象道路区間における前記コスト値を推定する処理部と、を備えている。
実績道路区間:電気自動車から車両情報を取得できた道路区間
対象道路区間:電気自動車からの車両情報は未取得であるが非電気自動車から車両情報を取得できた道路区間
【0019】
この経路探索システムによれば、推定部は、電気自動車の車両情報が未取得である対象道路区間を電気自動車が走行するために要する電気自動車の消費電力に対応するコスト値を、精度良く推定することが可能となる。このため、その推定したコスト値を用いて、電気自動車のための経路の探索処理が行われることで、精度の良い探索結果を得ることが可能となる。
【0020】
(6)また、電気自動車が道路区間を走行するために要する消費電力に対応するコスト値を推定する推定装置として、コンピュータを機能させるコンピュータプログラムであって、前記推定装置は、下記に定義する実績道路区間を電気自動車が走行した際の走行状態を示すEV走行情報、及びその際の当該電気自動車の消費電力に対応するコスト値を、当該電気自動車の車両情報に基づいて取得し、かつ、下記に定義する対象道路区間を非電気自動車が走行した際の走行状態を示す非EV走行情報を、当該非電気自動車の車両情報に基づいて取得し、前記EV走行情報及び前記非EV走行情報を道路区間の類似判定のためのパラメータとして用いて、前記対象道路区間に類似する前記実績道路区間を見つけ、見つけられた前記実績道路区間における前記コスト値を基にして、当該実績道路区間に類似している前記対象道路区間における前記コスト値を推定する。
実績道路区間:電気自動車から車両情報を取得できた道路区間
対象道路区間:電気自動車からの車両情報は未取得であるが非電気自動車から車両情報を取得できた道路区間
このコンピュータプログラムによれば、前記(1)に記載の推定装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0021】
〔本発明の実施形態の詳細〕
本発明の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
〔1. 経路探索システムについて〕
図1は、経路探索システムの一部を示すブロック図である。このシステムには、電気自動車2、電気自動車2に搭載されている車載装置3、非電気自動車14、非電気自動車14に搭載されている車載装置13、車載装置3,13それぞれと無線通信する路側通信装置4、及び路側通信装置4と通信可能なサーバ装置5が含まれる。電気自動車2は、バッテリ7、及びこのバッテリ7の電力によって駆動するモータ10を搭載しており、バッテリ7の電力を消費して各地の道路を走行する。非電気自動車14は、電気自動車2以外の自動車であって、内燃機関(エンジン)を搭載しており、内燃機関により発生する動力により各地の道路を走行する。
【0022】
サーバ装置5は、車載装置3,13それぞれから送信された各種情報を、道路の各所に設置された路側通信装置4を通じて収集する。また、サーバ装置5は、これら収集した情報を基にして、電気自動車2(非電気自動車14)のために、目的地までの推奨経路や到達可能となる位置までの経路探索の処理を行い、探索した経路の情報を生成し、その情報を、路側通信装置4を通じて車載装置3(13)へ送信する。
【0023】
本実施形態の車載装置3,13それぞれは、電気自動車2及び非電気自動車14に固定された装置であるが、それ以外に、例えばドライバ(搭乗者)が携帯しているスマートフォン等の携帯端末であってもよい。車載装置3,13が携帯端末の場合、路側通信装置4は、この携帯端末と無線通信を行う基地局装置となる。
【0024】
路側通信装置4は、各地域の道路等に多数設置されている。各路側通信装置4は、通信機能を備えており、各地域の道路を走行する電気自動車2の車載装置3、及び非電気自動車14の車載装置13とそれぞれ無線通信可能であり、また、有線(又は無線)によりサーバ装置5と通信可能である。
【0025】
電気自動車2は、充電可能なバッテリ7と、このバッテリ7の電力によって駆動するモータ10と、車輪12の回転を制動するブレーキ装置11とを備えており、モータ10の出力軸の回転力が、ドライブシャフト等の動力伝達部を介して、車輪12に伝達される。
また、ブレーキ装置11は、モータ10を発電機として作動させることで運動エネルギー(走行エネルギー)を電気エネルギーに変換して、電気エネルギーをバッテリ7に回収する回生ブレーキからなる。このために、電気自動車2に搭載の電子制御ユニット(ECU)6は、ブレーキ装置11による回生制御を行う。
【0026】
また、電気自動車2には、モータ10以外の電気機器である補機が搭載されている。補機には、例えば、空調設備、ヘッドライト、ワイパー、デフォッガー等が含まれる。これら各補機は、モータ10と同じバッテリ7から電力の供給を受け稼働する電気機器である。本実施形態では、電気自動車2に、3つの補機41,42,43が搭載されている。これら補機41,42,43それぞれには、識別番号として補機IDが付されている。これら補機41,42,43の補機IDをそれぞれ、ID1,ID2,ID3とする。
【0027】
電気自動車2の車載装置3は、コンピュータからなり、この車載装置3を搭載している電気自動車2の車両情報としてプローブ情報を生成し、プローブ情報を、路側通信装置4を通じてサーバ装置5へ無線送信する。また、車載装置3は、サーバ装置5が生成し送信した情報を、路側通信装置4を通じて受信する。
車載装置3は、ドライバ(搭乗者)の操作により各種の情報を入力可能でかつドライバに対して情報を出力可能である入出力部3aと、現在位置の情報を取得可能な測位部3bとを有している。
【0028】
入出力部3aは、例えばドライバが操作するタッチパネル及びその制御部からなり、タッチパネルを通じて文字入力や選択操作を行う等により例えば目的地を制御部へ入力可能である。目的地が入力されると、その目的地を示す目的地情報が制御部によって生成され、目的地情報は、電気自動車2の識別情報(車両ID)と共に送信情報に含められてサーバ装置5へ送信される。また、タッチパネルは、ドライバに対して情報を表示(出力)するモニタとしても機能する。
【0029】
本実施形態では、電気自動車2のための経路探索を行う機能を、サーバ装置5が備えており、前記目的地情報を含む前記送信情報は、サーバ装置5に対する経路の探索要求信号となる。
測位部3bは、例えばGPS機能を有した測位装置からなり、現在位置の情報を取得する。取得した現在位置の情報は前記送信情報や前記プローブ情報に含められ、サーバ装置5へ送信される。
【0030】
非電気自動車14の車載装置13は、コンピュータからなり、この車載装置13を搭載している非電気自動車14の車両情報としてプローブ情報を生成し、プローブ情報を、路側通信装置4を通じてサーバ装置5へ無線送信する。また、車載装置13は、サーバ装置5が生成し送信した情報を、路側通信装置4を通じて受信する。この車載装置13も、電気自動車2の車載装置3と同様に、入出力部と測位部とを有している(図示せず)。
【0031】
プローブ情報(フローティングカー情報ともいう)について説明する。
電気自動車2の車載装置3は、プローブ情報を周期的に(1秒毎や数秒毎に)生成して送信する。プローブ情報には、
図2に示すように、車種コード、車両ID、年月日、時刻、リンクID、速度[km/h]、乗車人数[人]、総消費電力量[kWh]、バッテリ7の充電率[%]及び残量[kWh]、補機情報[オン又はオフ]等の各種情報が含められる。なお、
図2に示す表は、周期的に生成されたプローブ情報を複数まとめて記載したものであり、各列の情報が、一つのプローブ情報に相当する。
【0032】
車種コードは、電気自動車2の種類(車種)を識別するための識別情報であり、車体が異なっていても車種が同じであれば、同じ車種コードとなる。
車両IDは、車体毎に付与された識別情報である。
年月日及び時刻の情報は、周期的に生成される各プローブ情報が生成された年月日及び時刻を示す情報である。
【0033】
各道路は複数の道路区間に設定(区画)されており、本実施形態では、この道路区間を道路リンクとしている。そして、リンクIDは、プローブ情報の生成時点で走行していた道路リンクの識別情報であり、測位部3bが測位して得た位置情報に基づいて設定される。なお、プローブ情報にリンクIDが含まれていなくても、測位部3bが測位して得た位置情報を含むプローブ情報を取得したサーバ装置5が、例えば道路地図情報とマップマッチングを行って、その位置情報(プローブ情報)に対応するリンクIDを生成してもよい。
また、プローブ情報には、リンクIDと共に、又は、リンクIDの代わりに位置の情報が含まれていてもよい。位置は、周期的に生成される各プローブ情報が生成された際の位置を示す情報であり、測位部3b(
図1参照)が測位して得た情報である。
【0034】
速度は、プローブ情報の生成周期間における平均速度であり、測位部3bが測位して得た位置情報とその測位時の時刻の情報とに基づいて算出される。
乗車人数は、電気自動車2の乗車人数であり、例えば、シートベルトの装着状態の情報を電子制御ユニット(ECU)6が監視し、この情報を、電子制御ユニット6を通じて車載装置3は取得し、プローブ情報に含ませることができる。
【0035】
総消費電力量は、単位時間あたりのバッテリ7の総消費電力量[kWh]である。本実施形態の場合、単位時間はプローブ情報の生成周期(又は送信周期)であることから、前記総消費電力量は、プローブ情報の生成周期(又は送信周期)毎のバッテリ7の総消費電力量[kWh]である。なお、この総消費電力量の値は、生成周期間でモータ10及び全ての補機41,42,43が消費したバッテリ7の電力量である。この値は、バッテリ7に付属のバッテリ管理装置(計測器)によって計測される。
バッテリ7の充電率[%]及びバッテリ7の残量(残りの充電量)[kWh]は、バッテリ7に付属のバッテリ管理装置が計測して得た値であり、プローブ情報の生成時点における値である。
【0036】
補機情報は、プローブ情報の生成時点における補機41,42,43それぞれの稼働(オン)又は非稼働(オフ)の稼働状態を示す情報であり、この情報を、電子制御ユニット6を通じて車載装置3は取得し、プローブ情報に含ませることができる。なお、本実施形態では、補機41,42,43は全て非稼働の状態としており、総消費電力量は、モータ10による消費電力量となる。
【0037】
非電気自動車14の車載装置13も、プローブ情報を周期的に(1秒毎や数秒毎に)生成して送信する。車載装置13が生成するプローブ情報には、総消費電力量[kWh]、バッテリ7の充電率[%]及び残量[kWh]、補機情報[オン又はオフ]は含まれない。車載装置13が生成するプローブ情報は、速度及び加速度の情報を含んでいればよい。なお、車載装置13が生成するプローブ情報には、車種コード、車両ID、年月日、時刻、位置、リンクID、及び乗車人数[人]等の各種情報が含められていてもよい。これら情報は、電気自動車2の車両情報と同じ内容の情報である。
【0038】
〔2. サーバ装置5(経路探索システム)〕
〔2.1 全体構成〕
図1において、サーバ装置5は、コンピュータからなり、ハードディスク等からなる記憶装置15と、路側通信装置4と通信を行うための通信インタフェースからなる通信装置16と、演算等の処理を行う機能を有する演算処理装置17とを備えている。通信装置16は、車載装置3,13それぞれから送信されたプローブ情報を受信し、演算処理装置17へ与える。記憶装置15には、後に説明する経路探索のために用いられるデータベース51が設けられている。なお、記憶装置15は、コンピュータ(サーバ装置5)の内部バスまたは外部インタフェースを介して演算処理装置17が情報を読み取り可能(演算処理装置17が情報を取得可能)なものであればよく、コンピュータに内蔵されている必要はない。
【0039】
演算処理装置17は、様々な機能を奏する機能部を有しており、これら機能部として、経路探索部20、及び消費電力量推定部21を有している。具体的に説明すると、演算処理装置17は、CPU及び内部メモリ等を有し、この演算処理装置17を経路探索部20、及び消費電力量推定部21として機能させるためのコンピュータプログラムを、記憶装置15又は前記内部メモリが記憶している。そして、演算処理装置17が有している各機能部(経路探索部20、及び消費電力量推定部21)は、前記コンピュータプログラムが実行されることで動作する。なお、消費電力量推定部21は、取得部22と、類似判定部23と、処理部24とを備えている。これら各機能部については後で説明する。また、このコンピュータプログラムは、磁気ディスク、光学ディスク又は半導体メモリ等からなる記憶媒体に記憶させることができる。
【0040】
演算処理装置17が有する各機能部について説明する。
〔2.2 経路探索部20について〕
経路探索部20は、電気自動車2の車載装置3から送信された前記探索要求信号に基づいて、その車載装置3を搭載している電気自動車2のための経路(推奨経路や到達可能な経路範囲等)を探索する。
電気自動車2(車載装置3)それぞれは、現時点におけるバッテリ7の情報を、経路の探索要求信号に含めて、サーバ装置5へ送信する。本実施形態における前記バッテリ7の情報は、探索要求信号を送信する時点での、バッテリ7の充電率[%]及び残量[kWh]である。このバッテリ7の情報をサーバ装置5の通信装置16が受信すると、経路探索部20は、このバッテリ7の情報、及び記憶装置15が有しているデータベース51中の様々な情報等を用いて、この電気自動車2のために、バッテリ7の残量[kWh](又は前記充電率[%])によって到達可能となる経路を探索する処理を行う。
【0041】
経路探索部20は、第1の地点(例えば出発地又は現在地)から第2の地点(例えば目的地)まで電気自動車2が走行すべき経路を、道路リンクのリンクコストを用いて所定の探索アルゴリズムに従って探索する機能を有している。探索アルゴリズムは、様々なアルゴリズムを採用可能であるが、本実施形態はダイクストラ法である。経路探索部20は、道路リンクのリンクコストの総和が小さくなる(最小となる)経路を探すシミュレーションを行う。リンクコストを旅行時間とすることにより、第1の地点から第2の地点まで、できるだけ旅行時間が短くなる経路が探索される。なお、各道路リンクのリンクコストは、記憶装置15が有するリンク情報用のデータベース51に蓄積されており、経路探索部20は、このデータベース51を参照して、経路探索を行う。
【0042】
また、道路の特性は、道路リンク毎に異なることから、電気自動車2が消費するバッテリ7の電力量は、道路リンクに応じて異なる。例えば、同じ直線道路であっても、路面の勾配(道路の特性)は道路リンク毎で異なることがあるため、電気自動車2が消費するバッテリ7の電力量は、道路リンクに応じて異なると考えられる。このため、経路探索部20は、道路リンクを、経路探索処理のための一単位として用い経路探索を行う。
つまり、経路探索部20は、経路探索を行う際、道路リンクの起点(ノード)におけるバッテリ7の電力残量(残り電力量)から、その道路リンクを走行することにより消費される電力量を差し引いた、残り電力量を算出する。そして、算出した残り電力量が所定の値(例えば充電率に換算して20%)以上であることを条件として、次の道路リンクを探索し続け、第2の地点までの経路探索を行う。算出した残り電力量が所定の値未満になると、航続不可能と判定される。
【0043】
そして、経路探索部20は、経路探索の処理により推奨する経路を決定すると、その経路の情報を、通信装置16(
図1参照)から路側通信装置4を通じて、車載装置3へ送信する。車載装置3は、この経路の情報を、入出力部3a(タッチパネル)に出力し、ドライバに推奨経路の情報を表示する。
【0044】
このように、経路探索部20は、道路リンク毎にバッテリ7の電力残量を求めつつ、その電力残量に基づいて電気自動車2のための経路の探索を行う。そして、道路リンク毎のバッテリ7の電力残量を求めるためには、各道路リンクを走行することによるバッテリ7の消費電力量の情報が必要であり、この情報は、消費電力量推定部21によって求められる。この求められた消費電力量の情報は、各道路リンクに対応させてデータベース51に蓄積される。
【0045】
〔2.3 消費電力量推定部21による処理について〕
消費電力量推定部21の取得部22は、電気自動車2(車載装置3)から送信されたプローブ情報(以下、EVプローブ情報という)を収集し、また、非電気自動車14(車載装置13)から送信されたプローブ情報(以下、非EVプローブ情報という)を、収集する。
【0046】
前記のとおり、プローブ情報(EVプローブ情報)には、各種情報が含まれている(
図2参照)ことから、取得部22はEVプローブ情報を取得すると、そのEVプローブ情報に含まれている前記各種情報を分類して収集する。
具体的に説明すると、EVプローブ情報には、リンクIDが含まれていることから、取得部22は、
図3に示すように、EVプローブ情報を、道路リンク(リンクID)毎に区分(分類)して収集し、複数のEVプローブ情報を含む情報群D1を、道路リンク(リンクID)毎に区分して生成する。
図4は、リンクIDが「X」である情報群D1の一例を示している。
【0047】
このような情報群D1は、全ての道路リンク(
図3の場合、ID1〜100)について生成され、記憶装置15に記憶させる。なお、前記のとおり、EVプローブ情報に、リンクIDが含まれていない場合、取得部22は、各EVプローブ情報に含まれている位置情報に基づいて、当該位置情報が示す位置を含む道路リンク(リンクID)を判別することにより、各EVプローブ情報を道路リンク(リンクID)毎に区分することができる。
さらに、取得部22は、道路リンク毎に区分して収集したEVプローブ情報を、更に、車種コード毎に収集する(
図4参照)。なお、車種コード毎ではなく、車両ID毎に収集してもよい。
【0048】
また、非電気自動車14が送信する非EVプローブ情報にも、リンクIDが含まれていることから、取得部22は、非EVプローブ情報を、道路リンク(リンクID)毎に区分(分類)して収集し、複数の非EVプローブ情報を含む情報群を、道路リンク(リンクID)毎に区分して生成する。
このように、取得部22は、電気自動車2のEVプローブ情報、及び非電気自動車14の非EVプローブ情報を、道路リンク毎に収集することができる。
【0049】
〔2.4 実績道路リンクに関して取得される情報について〕
「実績道路リンク」とは、電気自動車2による走行実績のある道路リンクであり、その道路リンクを走行する電気自動車2からEVプローブ情報を取得できた道路リンクである。なお、この実績道路リンクについては、非電気自動車14からも非EVプローブ情報が取得されていてもよく、取得されていなくてもよい。
【0050】
取得部22は、EVプローブ情報に含まれている、車両ID、位置情報、及び時刻情報に基づいて、実績道路リンク(リンクID)毎に、各車載装置3の道路地図上における所定時間毎の位置(軌跡点)を示す軌跡点を取得することができ、また、この車載装置3についての連続する複数の位置(複数の軌跡点)から、その車載装置3(その車載装置3を搭載している電気自動車2)の各実績道路リンクにおける走行軌跡を取得することができる。このため、取得部22は、実績道路リンク毎に収集した複数のEVプローブ情報を用いて、その実績道路リンクにおいて、各車載装置3(その車載装置3を搭載している電気自動車2)が停止した位置、停止した時刻、及び停止した回数(以下、停止回数という)を取得することができる。このため、取得部22は、実績道路リンク毎に収集したEVプローブ情報を、停止回数毎に区分することができる。
【0051】
前記のとおり、EVプローブ情報には、リンクID(位置の情報)、及び単位時間あたりのバッテリ7の総消費電力量[kWh]の情報が含まれている。
そこで、取得部22は、各実績道路リンクのEVプローブ情報を、実績道路リンク毎であって停止回数毎に収集すると、これら収集したEVプローブ情報を解析して、各実績道路リンクを走行するために要するバッテリ7の消費電力に対応するコスト値を、停止回数毎に算出することができる。なお、本実施形態では、このコスト値は、消費電力量[Wh]であるが、その他として消費電力[W]であってもよい。この消費電力量は、例えば、速度帯毎に求めた平均値であってもよく、又は、消費電力量を推定するために規定されたモデル式を用いて算出した値であってもよい。
【0052】
この求めた、各実績道路リンクについての停止回数毎の消費電力量(コスト値)は、実績道路リンク(リンクID)と対応付けられて、演算処理装置17の内部メモリ等からなる記憶部19に記憶される。
図5は、この記憶部19に記憶される情報の説明図である。
図5において、リンクIDが「1〜3」である道路リンクが、実績道路リンクであり、各実績道路リンクに対応させて、算出した停止回数毎の消費電力量の値が記憶される。
更に、各実績道路リンクについての消費電力量の値の情報は、記憶装置15が有するリンク情報用のデータベース51にも蓄積される。この情報は、後に説明するが、経路探索部20による経路探索処理に用いられる。
【0053】
更に、取得部22は、実績道路リンク毎に収集し、停止回数毎にまとめたEVプローブ情報を用いて、各実績道路リンクにおけるEV走行情報を、停止回数毎に求める。本実施形態では、停止回数毎に、電気自動車2から取得された複数のEVプローブ情報それぞれが、加速状態に対応する加速情報、減速状態に対応する減速情報、及び等速状態に対応する等速情報に分類され、そして、EV走行情報として、停止回数毎に、前記加速情報、前記減速情報、及び前記等速情報それぞれが占める割合を示す情報を求める。
【0054】
例えば、ある実績道路リンク(リンクIDが「1」である実績道路リンク;以下、実績道路リンクX1という。)を停止回数1回で通過した電気自動車2のEVプローブ情報を用いて、停止回数1回の場合のEV走行情報を求める場合について説明する。
各EVプローブ情報には、EVプローブ情報の生成周期間における平均速度を示す速度情報が含まれていることから、この平均速度の変化から、加速度を求めることができ、当該EVプローブ情報の生成時点での電気自動車2の走行態様が、加速状態であるのか、減速状態であるのか、等速状態であるのかを、取得部22は判定することができる。
そこで、EVプローブ情報の生成時点での電気自動車2の走行態様が、加速状態(つまり、加速度>0)である場合、そのEVプローブ情報は加速情報に分類され、その走行態様が、減速状態(つまり、加速度<0)である場合、そのEVプローブ情報は減速情報に分類され、その走行態様が、等速状態(つまり、加速度=0)である場合、そのEVプローブ情報は等速情報に分類される。
【0055】
そして、取得部22は、分類した等速プローブ情報、加速プローブ情報、及び減速プローブ情報それぞれの数を求め、これら数の割合を求める。ここで、等速情報、加速情報、及び減速情報の割合(比)が、0.55:0.22:0.28であったとする。なお、この割合は、総和が「1」となるように規格化された割合である。この割合(以下、プローブの割合という)は、実績道路リンクX1に関して、停止回数が1回の場合の、EV走行情報である。
そして、他の停止回数(0回、2回、3回、4回・・・)についても、同様にEV走行情報(プローブの割合)を求め、更に、この処理を、他の実績道路リンク(リンクIDが「2」「3」・・・)についても実行する。
【0056】
本実施形態のEV走行情報には、このようなプローブの割合の情報以外にも、平均速度の情報も含まれる。例えば、実績道理リンクX1を通過する電気自動車2の平均速度が、EV走行情報に含まれる。そして、このEV走行情報は、実績道路リンクX1と対応付けられて、記憶部19に記憶される(
図5参照)。
さらに、この記憶部19には、各実績道路リンクの静的な情報も記憶される。
図5に示すように、静的な情報として、実績道路リンクの勾配、リンク長(距離)、道幅、及び車線数が含まれる。
【0057】
〔2.5 対象道路リンクに関して取得される情報について〕
「対象道路リンク」とは、電気自動車2からのEVプローブ情報は未取得であるが、電気自動車2以外である非電気自動車14から非EVプローブ情報を取得できた道路リンクである。つまり、対象道路リンクは、電気自動車2による走行実績は無いが、非電気自動車14による走行実績が有る道路リンクである。
なお、対象道路リンクは、電気自動車2による走行実績が無いことから、対象道路リンクに関するEVプローブ情報を取得することができない。このため、対象道路リンクを走行するために要するバッテリ7の消費電力に対応するコスト値(本実施形態では、消費電力量[Wh])を、実績道路リンクの場合のように、直接的に算出することができない。そこで、消費電力量推定部21は、この対象道路リンクにおけるコスト値(消費電力量[Wh])を推定する処理を行う。
【0058】
そのため、取得部22は、対象道路リンクを走行した非電気自動車14からの非EVプローブ情報を用いて、実績道路リンクに関してEV走行情報を求める場合と同様の処理により、各対象道路リンクにおける非EV走行情報を、停止回数毎に求める。以下、この処理について説明する。
【0059】
取得部22は、対象道路リンク毎に収集した複数の非EVプローブ情報を用いて、その対象道路リンクにおいて、各車載装置13(その車載装置13を搭載している非電気自動車14)が停止した回数(以下、停止回数ともいう)を取得することができる。このため、取得部22は、対象道路リンク毎に収集した非EVプローブ情報を、停止回数毎に区分することができる。
【0060】
そして、取得部22は、対象道路リンク毎に収集し、停止回数毎にまとめた非EVプローブ情報を用いて、各対象道路リンクにおける非EV走行情報を、停止回数毎に求める。本実施形態では、停止回数毎に、非電気自動車14から取得された複数の非EVプローブ情報それぞれが、加速状態に対応する加速情報、減速状態に対応する減速情報、及び等速状態に対応する等速情報に分類され、そして、非EV走行情報として、停止回数毎に、前記加速情報、前記減速情報、及び前記等速情報それぞれが占める割合を示す情報を求める。
【0061】
例えば、ある対象道路リンク(リンクIDが「4」である対象道路リンク;以下、対象道路リンクX4という。)を停止回数1回で通過した非電気自動車14の非EVプローブ情報を用いて、停止回数1回の場合の非EV走行情報を求める場合について説明する。
各非EVプローブ情報には、非EVプローブ情報の生成周期間における平均速度を示す速度情報が含まれていることから、この平均速度の変化から、加速度を求めることができ、当該非EVプローブ情報の生成時点での非電気自動車14の走行態様が、加速状態であるのか、減速状態であるのか、等速状態であるのかを、取得部22は判定することができる。
そこで、非EVプローブ情報の生成時点での非電気自動車14の走行態様が、加速状態(つまり、加速度>0)である場合、その非EVプローブ情報は加速情報に分類され、その走行態様が、減速状態(つまり、加速度<0)である場合、その非EVプローブ情報は減速情報に分類され、その走行態様が、等速状態(つまり、加速度=0)である場合、その非EVプローブ情報は等速情報に分類される。
【0062】
そして、取得部22は、分類した等速プローブ情報、加速プローブ情報、及び減速プローブ情報それぞれの数を求め、これら数の割合を求める。ここで、等速情報、加速情報、及び減速情報の割合(比)が、0.46:0.19:0.35であったとする。なお、この割合は、総和が「1」となるように規格化された割合である。この割合(プローブの割合)は、対象道路リンクX4に関して、停止回数が1回の場合の、非EV走行情報である。
そして、他の停止回数(0回、2回、3回、4回・・・)についても、同様に非EV走行情報(プローブの割合)を求め、更に、この処理を、他の対象道路リンク(リンクIDが「5」「6」・・・)についても実行する。
【0063】
本実施形態の非EV走行情報には、このようなプローブの割合の情報以外にも、平均速度の情報も含まれる。例えば、対象道理リンクX4を通過する非電気自動車14の平均速度が、非EV走行情報に含まれる。そして、この非EV走行情報は、対象道路リンクX4と対応付けられて、記憶部19に記憶される(
図5参照)。
さらに、この記憶部19には、各対象道路リンクの静的な情報も記憶される。
図5に示すように、静的な情報として、実績道路リンクの勾配、リンク長(距離)、道幅、及び車線数が含まれる。
【0064】
以上、
図5に示すように、実績道路リンク(リンクIDが「1,2,3」の道路リンク)毎に、実績道路リンクの静的な情報として道路特性、実績道路リンクにおけるEVプローブ情報から得られるEV走行情報、及び実績道路リンクでの消費電力量を、関連つけて記憶させることができることができる。
さらに、対象道路リンク(リンクIDが「4,5,6」の道路リンク)毎に、対象道路リンクの静的な情報として道路特性、及び対象道路リンクにおける非プローブ情報から得られる非EV走行情報を、関連つけて記憶させることができる。
【0065】
そして、本実施形態では、取得部22は、EV走行情報のデータ、及び非EV走行情報のデータを規格化している(
図6参照)。つまり、EVプローブ情報から得られる前記平均速度を示す車両速度を、所定の変換情報に基づいて、その車両速度の大小に応じた値をとる指標値に変換し、この指標値をEV走行情報の一部として用いている。また、これと同様に、非EVプローブ情報から得られる前記平均速度を示す車両速度を、所定の変換情報に基づいて、その車両速度の大小に応じた値をとる指標値に変換し、この指標値を非EV走行情報の一部として用いる。
本実施形態では、
図9(A)に示すように、最高速度を時速100kmとしており、車両速度(平均速度)が時速0kmである場合に規格化速度(指標値)が「0」となり、車両速度(平均速度)が時速100kmである場合に規格化速度が「1」となるような、一次式の関数Faにより規格化速度への変換を行っている。つまり、前記所定の変換情報は、前記一次式の関数Faの情報である。
この関数Faによれば、例えば、
図6に示すリンクIDが「1」である道路リンクに関して、車両速度(平均速度)が時速30kmである場合、規格化速度は0.3となる。なお、
図6は、
図5に示す表から道路特性を除外して、EV走行情報及び非EV走行情報をそれぞれ整理して示したものである。
【0066】
〔2.6 類似判定部23の機能〕
類似判定部23(
図1参照)は、
図6に示す情報を参照して、
図6中に含まれるEV走行情報及び非EV走行情報を基にして、道路リンク間の類似度を算出する。
図6に示す各情報を対象として類似度を相関係数により表現すると、
図7に示す関係となる。
【0067】
すなわち、類似判定部23は、EV走行情報(規格化した車両速度と、プローブの割合)と非EV走行情報(規格化した車両速度と、プローブの割合)とを、類似度を判定するためのパラメータとして用いて、道路リンク間の類似度、つまり、対象道路リンクと実績道路リンクとの間の類似度を求めている。本実施形態では、その類似度を相関係数により表現している。
具体的に説明すると、例えば、リンクIDが「4」である対象道路リンクX4と、複数の実績道路リンク(リンクIDが「1」〜「3」)それぞれとの類似度を求める。そして、この対象道路リンクX4に最も類似する実績道路リンクを見つける(最も類似度の高い実績道路リンクを見つける)。
図7によれば、対象道路リンクX4に類似する実績道路リンクは、リンクIDが「3」である実績道路リンクである。このようにして、他の対象道路リンクについても、同様に類似する実績道路リンクを見つける。
図7によれば、リンクIDが「5」である対象道路リンクX5に類似する実績道路リンクは、リンクIDが「2」である実績道路リンクであり、リンクIDが「6」である対象道路リンクX6に類似する実績道路リンクは、リンクIDが「1」である実績道路リンクである。
【0068】
また、本実施形態では、前記のような類似の判定を行うために、類似度についての閾値が設定されており、類似判定部23は、類似度(本実施形態では相関係数)が閾値以上である場合に「類似している」と決定する。例えば、相関係数の閾値として「0.95」が設定されており、最も相関係数が高く、かつ、その相関係数が0.95以上である場合に、道路リンクが類似していると、決定することができる。
【0069】
〔2.7 処理部24の機能〕
類似判定部23が、一つの対象道路リンクX4に最も類似する実績道路リンクX3を見つけると、処理部24(
図1参照)は、この実績道路リンクX3の消費電力量を基にして、対象道路リンクX4の消費電力量を推定する。
実績道路リンクX3の消費電力量を、そのまま、対象道路リンクX4の消費電力量として適用してもよいが、本実施形態では、
図8に示すように、これら実績道路リンクX3と対象道路リンクX4とのリンク長の比(122/83)を求め、実績道路リンクX3の停止回数毎の消費電力量(2.45,3.87,3.52)に、このリンク長の比(122/83)をそれぞれ乗算した値(2.86,6.16,9.94)を、対象道路リンクX4での消費電力量として推定する。
【0070】
そして、この推定の処理を他の対象道路リンクX5,X6についても行う。これにより、対象道路リンクX4,X5,X6それぞれの消費電力量の推定値を停止回数毎に求めることができ、これら消費電力量の推定値の情報を、記憶装置15が有するリンク情報用のデータベース51に蓄積する。
なお、前記のとおり、実績道路リンクについての消費電力量の値(EVプローブ情報に基づく算出値)の情報も、このデータベース51に蓄積されていることから、このデータベース51には、実績道路リンクの消費電力量の値の情報の他に、対象道路リンクの消費電力量の値(推定値)の情報が蓄積された状態となる。
そして、これら実績道路リンクの消費電力量の値と、対象道路リンクの消費電力量の値とが、経路探索部20による経路探索処理に用いられる。
【0071】
〔2.8 本実施形態の消費電力量推定部21について〕
以上のように、本実施形態の消費電力量推定部21は、対象道路リンクを電気自動車2が走行するために要するバッテリ7の消費電力に対応するコスト値として、消費電力量を推定する装置であり、取得部22と、類似判定部23と、処理部24とを備えている。
取得部22は、電気自動車2が送信するEVプローブ情報に基づいて、実績道路リンクを電気自動車2が走行した際の走行状態を示すEV走行情報、及びその際のバッテリ7の消費電力量を取得する。さらに、取得部22は、非電気自動車14が送信する非EVプローブ情報に基づいて、対象道路リンクを非電気自動車14が走行した際の走行状態を示す非EV走行情報を取得する。
類似判定部23は、これらEV走行情報、及び非EV走行情報を、道路リンクの類似判定のためのパラメータとして用いて、対象道路リンク(X4,X5,X6)それぞれに類似する実績道路リンク(X3,X2,X1)を見つける。
【0072】
そして、処理部24は、類似判定部23によって見つけられた実績道路リンク(X3,X2,X1)におけるコスト値を基にして、実績道路リンク(X3,X2,X1)に類似している対象道路リンク(X4,X5,X6)における消費電力量を推定する。
【0073】
この消費電力量推定部21によれば、電気自動車2からのEVプローブ情報が未取得である対象道路リンク(X4,X5,X6)と、類似している実績道路リンク(X3,X2,X1)を見つけ、この対象道路リンク(X4,X5,X6)を電気自動車2が走行するために要するバッテリ7の消費電力量を、この対象道路リンク(X4,X5,X6)と類似している実績道路リンク(X3,X2,X1)における消費電力量を基にして推定することから、その消費電力量を精度良く求めることが可能となる。
【0074】
また、本実施形態では、電気自動車2から取得されたEVプローブ情報を分類した等速情報、加速情報及び減速情報それぞれが占めるプローブの割合(第1の割合)と、非電気自動車14から取得された非EVプローブ情報を分類した等速情報、加速情報、及び減速情報それぞれが占めるプローブの割合(第2の割合)とが、類似判定部23による道路リンクの類似判定のためのパラメータとして用いられる。このため、例えば、ある実績道路リンクで取得されたEVプローブ情報に基づく第1の割合と、ある対象道路リンクで取得された非EVプローブ情報に基づく第2の割合とが近い場合に、これら実績道路リンクと対象道路リンクとは類似している関係にあると言える。このように、プローブの割合を用いていることで、道路リンクの類似度の判定精度を高めることができる。
【0075】
また、本実施形態では、前記類似判定部23は、電気自動車2及び非電気自動車14それぞれのプローブ情報から得られる車両速度(平均速度)を、所定の変換情報に基づいて、その車両速度の大小に応じた値をとる指標値に変換し、この指標値をEV走行情報及び非EV走行情報として用いて、対象道路リンクに類似する実績道路リンクを見つけるように構成されている。前記変換情報は、例えば一次式の関数等であり、この変換情報(関数)は、記憶部19に記憶させておくことができる。
この構成によれば、ある実績道路リンクとある対象道路リンクとで車両速度(平均速度)が多少異なる場合であっても、これら道路リンクそれぞれにおける消費電力量に相関がある場合に有効となる。
【0076】
また、前記変換情報は、他の関数であってもよく、更に、複数種類が予め設定されていて、指標値を算出する際に、相応しい変換情報を用いることができるように推定部21は構成されていてもよい。
例えば、電気自動車2のEVプローブ情報から得られた車両速度(平均速度)を指標値に変換する際の関数(変換情報)については、複数パターンが設定され、記憶されている。そこで、類似判定部23は、電気自動車2のEVプローブ情報から得られた車両速度(平均速度)を指標値に変換する際の関数を、実績道路リンクにおける電気自動車2の走行抵抗に応じて変化させるようにするのが好ましい。例えば、走行抵抗(路面状態、風の強さ)に応じて、規格化するための関数を変更するのが好ましい。
【0077】
これは、電気自動車2の場合、バッテリ7の消費電力量は、走行する道路リンク(実績道路リンク)における走行抵抗の影響を受けやすいためであり、前記のように走行抵抗に応じて関数を変更することにより、精度の高い類似判定が可能となる。
例えば、電気自動車2にとって、路面抵抗のより大きい道路リンクを低速で通過するために要する消費電力量と、路面抵抗がより小さい道路リンクを高速で通過するために要する消費電力量とが、同程度となる場合、これら二つの速度が同じ規格化速度となるような関数を用いるのが好ましい。また、電気自動車2の場合と非電気自動車14の場合とで規格化する関数を変えてもよい。例えば、
図9(A)は、通常時における規格化するための関数Faを示しており、
図9(B)は、走行抵抗に応じて変化させる関数Fbを示している。電気自動車用の場合、ある道路リンクの車両速度は、関数Fbを用いてその車両速度を規格化するようにすればよい。
【0078】
〔2.9 経路探索部20による経路探索〕
以上のように、消費電力量推定部21は、EVプローブ情報が未取得である対象道路リンクを電気自動車2が走行するために要するバッテリ7の消費電力量を、精度良く推定することが可能となるため、経路探索部20は、その推定した消費電力量の情報を用いて、電気自動車2のための経路の探索処理が行われることで、精度の良い探索結果を得ることが可能となる。
【0079】
すなわち、経路探索部20は、道路リンク毎にバッテリ7の電力残量を求めつつ、その電力残量に基づいて電気自動車2のための経路の探索を行う。そして、道路リンク毎のバッテリ7の電力残量を求めるためには、各道路リンクを走行することによるバッテリ7の消費電力量の情報が必要である。この必要となる情報は、実績道路リンク及び対象道路リンクの双方について、前記データベース51に蓄積されており、このデータベース51を参照することにより、道路リンク毎にバッテリ7の電力残量を求めつつ、その電力残量に基づいて電気自動車2のための経路の探索を行うことが可能となる。
【0080】
〔3 付記〕
なお、本実施形態では、類似判定部23が、道路リンクの類似を判定する際に用いた項目を、実績道路リンク及び対象道路リンクそれぞれを通過する平均速度(車両速度)、及び停止回数毎のプローブの割合としたが、類似判定のために、その他の項目を更に用いてもよい。例えば、道路リンクを特徴付ける項目として、各道路リンクの勾配、各道路リンクの道幅、及び各道路リンクの車線数等があり、これら項目を類似判定に用いても良い。
また、類似判定部23が、道路リンクの類似性を判定する際に用いる各項目に対して重み付けを行って、類似性を評価してもよい。
【0081】
また、前記実施形態では、類似度(相関係数)に関して閾値を用いたが、閾値を設定せずに、最も類似度が高い実績道路リンクを選択するようにしてもよい。
さらに、処理部24が、対象道路リンクの消費電力量を算出するために、リンク長の比を考慮したが、コスト値の種類に応じてこのような比を考慮しなくてもよい。
【0082】
また、前記実施形態では、停止回数毎に、電気自動車2(非電気自動車14)から取得された複数のEVプローブ情報(非EVプローブ情報)それぞれが、加速状態に対応する加速情報のグループ、減速状態に対応する減速情報のグループ、及び等速状態に対応する等速情報のグループに分類され、そして、EV走行情報(非EVプローブ情報)として、停止回数毎に、前記加速情報、前記減速情報、及び前記等速情報それぞれが占める割合を示す情報が求められる場合について説明したが、これ以外であってもよい。分類の例として、EVプローブ情報(非EVプローブ情報)が、加速状態に対応する加速情報のグループ、減速状態に対応する減速情報のグループ、及び等速状態に対応する等速情報のグループの内の2つのグループに分類され、分類されたグループそれぞれに含まれるプローブ情報の数の割合を示す情報が、EVプローブ情報(非EVプローブ情報)に含まれていればよい。つまり、EVプローブ情報(非EVプローブ情報)それぞれが、当該EVプローブ情報(非EVプローブ情報)に基づいて得られる走行速度の変化(加速度)を基準として複数のグループに分類され、EV走行情報及び非EV走行情報それぞれには、分類された前記グループそれぞれに含まれるプローブ情報の数の割合を示す情報が含まれていればよい。
【0083】
そして、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
前記実施形態では、サーバ装置5が、経路探索の処理を行う経路探索装置として機能し、また、サーバ装置5が、バッテリ7の消費電力量を推定する消費電力量推定装置として機能する場合について説明したが、経路探索装置又は消費電力量推定装置は、サーバ装置5以外であってもよく、例えば、車載装置3が消費電力量推定装置として機能してもよい。
また、本発明は、前記消費電力量推定装置(消費電力量推定部)、又は前記経路探索システムが行う処理をステップとする消費電力量推定方法、又は経路探索方法とすることもできる。また、前記のとおり説明した各構成の一部を組み合わせた装置やシステムとすることもできる。