(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンのクランク軸(14)の回転にともなって、所定の回転角度間隔で発生するパルス列のクランク角信号を入力し、前記クランク角信号に基づいて、前記クランク角信号の周期の1/逓倍数の周期を有する逓倍信号を生成する逓倍信号生成手段(54)と、
前記逓倍信号に基づいてカウントアップする複数のカウンタ(56)と、
前記逓倍信号において各カウンタをカウントアップさせる要因であるカウントアップ要因を補正するための補正値を設定する補正値設定手段(58)と、
前記補正値に基づいて、前記カウントアップ要因を補正する補正手段(60)と、
前記クランク角信号のパルス間隔のうち、前記所定の回転角度間隔毎のパルスが所定数抜かれた欠け歯部を特定する欠け歯部特定手段(62)と、
を備え、
複数の前記カウンタは、第1カウンタ(72)と、前記第1カウンタよりも周期の短い第2カウンタ(74)と、を有し、
前記補正値設定手段は、前記欠け歯部に基づく所定タイミングにおいて、前記第1カウンタのカウント値を取得し、該カウント値と予め設定された基準値との差分を第1補正値として設定するとともに、前記第2カウンタの一周期分のカウント数未満であり、且つ、前記第1補正値が設定された場合と前記第2カウンタのリセットタイミングが変わらない値を第2補正値として設定し、
前記補正手段は、前記第1補正値に基づいて、前記逓倍信号のカウントアップ要因を補正する第1補正手段(76)と、前記第2補正値に基づいて、前記逓倍信号のカウントアップ要因を補正する第2補正手段(78)と、を有し、
前記第1カウンタは、前記第1補正手段によって補正された前記逓倍信号に基づいてカウントアップし、前記第2カウンタは、前記第2補正手段によって補正された前記逓倍信号に基づいてカウントアップすることを特徴とするエンジン制御装置。
前記第1カウンタ(72)のカウント値が前記基準値よりも大きく、且つ、前記第1補正値を前記第2カウンタ(74)の一周期分のカウント数で除算した余りが1以上の場合、
前記補正値設定手段(58)は、前記余りを前記第2補正値として設定し、
前記第2補正手段(78)は、前記逓倍信号のカウントアップ要因から前記第2補正値分を削除し、
前記カウント値が前記基準値よりも大きく、且つ、前記余りがない場合、
前記補正値設定手段は、前記第2補正手段が追加又は削除の補正をしないように前記第2補正値を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン制御装置。
前記第1カウンタ(72)のカウント値が前記基準値よりも大きく、且つ、前記第1補正値を前記第2カウンタ(74)の一周期分のカウント数で除算した余りが1以上の場合、
前記補正値設定手段(58)は、前記第2カウンタの一周期分のカウント数から前記余りを減算した値を前記第2補正値として設定し、
前記第2補正手段(78)は、前記逓倍信号のカウントアップ要因に前記第2補正値分を追加し、
前記カウント値が前記基準値よりも大きく、且つ、前記余りがない場合、
前記補正値設定手段は、前記第2補正手段が追加又は削除の補正をしないように前記第2補正値を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン制御装置。
前記逓倍信号生成手段(54)は、前記クランク角信号の1パルスに対して前記カウントアップ要因を逓倍数分有するように、生成された前記逓倍信号を調整する調整手段(70)を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載のエンジン制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。なお、各実施形態において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示すエンジン制御装置30(以下、エンジンECU30と示す)の制御対象は、例えばディーゼルエンジンである。ディーゼルエンジンにおいては、クランク角に応じて燃料噴射制御を行う際、クランク角の精度が、特に、燃費や排ガス特性に大きな影響を及ぼすためである。ただし、適用対象は、ディーゼルエンジンに限定されるものではなく、ガソリンエンジンであっても良い。ガソリンエンジンの場合、燃料噴射や点火を適切な時期に実行することができ、ディーゼルエンジンの場合と同様に、燃費や排ガス特性の向上を図ることができる。
【0016】
本実施形態では、エンジンECU30が制御するディーゼルエンジンとして、4気筒のエンジンを採用した例について説明する。この4気筒エンジンは、#1気筒と#4気筒、#2気筒と#3気筒の、各々のピストンが同じ位相で運動する。ただし、圧縮行程の順番は、例えば♯1気筒→♯3気筒→♯4気筒→♯2気筒となっており、♯1気筒と♯4気筒との燃焼サイクル、及び♯2気筒と♯3気筒との燃焼サイクルは、それぞれ360°CA分だけずれている。なお、「CA」とはクランク角(クランクアングル)を意味している。
【0017】
エンジンECU30は、エンジン回転数、アクセル開度、水温、排気ガス成分、燃料圧力などを検出する各種のセンサからの検出信号や、スイッチなどからの入力信号に基づいて、ディーゼルエンジンへの燃料噴射量を制御する。より具体的には、ディーゼルエンジンの各気筒にそれぞれ設けられたインジェクタ10に対して、エンジンECU30は、燃料噴射開始時期となるタイミングに同期して、各々のインジェクタ10を開弁するための駆動信号を出力する。そして、噴射すべき燃料量に応じた時間が経過すると、インジェクタ10を閉弁する。
【0018】
燃料噴射開始時期が到来したか否かは、エンジンのクランク軸の回転位置(クランク角度)に基づいて判定される。このクランク角度やエンジン回転数を検出するために、本実施形態では、クランク軸センサ12及びカム軸センサ20が設けられている。
【0019】
クランク軸センサ12は、クランク軸14に嵌着されたシグナルロータ16と、シグナルロータ16の外周に対向し、その外周に所定ピッチで等間隔に形成された歯を検出する電磁ピックアップ18とを有する電磁ピックアップ式のセンサである。ただし、電磁ピックアップ18に代えて、磁気抵抗素子などの他の検出手段を用いても良い。本実施形態では、10°CAピッチで歯が形成されている。
【0020】
シグナルロータ16の外周の1箇所には、歯が2個欠損した欠け歯部が形成されている。この欠け歯部は、例えば、クランク軸14が#1気筒及び#4気筒の圧縮上死点(TDC)に対応するクランク角まで回転したときに、電磁ピックアップ18が対向するシグナルロータ16の歯よりも、クランク軸14の回転方向に所定数歯分離れたところに位置する。クランク軸センサ12は、クランク角信号として、クランク軸14の回転に応じて、欠け歯部に対応するクランク角を除き、所定のクランク角度(10°CA)毎にパルス信号を出力する。そして、クランク軸14の回転位置が、シグナルロータ16の欠け歯部が電磁ピックアップ18に対向する位置に到達したとき、クランク軸センサ12は、他のパルス信号よりも幅広のパルス幅を持った基準パルス信号を出力する。
【0021】
カム軸センサ20は、クランク軸14の回転に対して1/2の比率で減速回転するエンジンのカム軸22に固定されたシグナルロータ24と、そのシグナルロータ24の外周に対向して設けられ、シグナルロータ24の外周に形成された歯に応じたパルス信号を出力する電磁ピックアップ26とを有している。ただし、クランク軸センサ12と同様に、電磁ピックアップ以外の検出手段を用いることもできる。
【0022】
カム軸センサ20のシグナルロータ24には、
図1に示すように、複数の歯が形成されている。この複数の歯は、クランク軸14が2回転して、クランク軸センサ12が、基準パルス信号を2度出力する場合に、一方の基準パルス信号の出力に同期してカム軸センサ20のパルス信号がハイレベルとなり、他方の基準パルス信号の出力時にはカム軸センサ20のパルス信号がローレベルとなるように形成されている。これにより、クランク軸センサ12が基準パルス信号を出力したとき、その基準パルス信号が、♯1気筒が圧縮行程となっているときに出されたものか、♯4気筒が圧縮行程となっているときに出されたものかを判別することができる。
【0023】
次に、
図1に基づき、エンジンECU30について説明する。
【0024】
エンジンECU30は、入力回路32、マイコン34、出力回路36、及び電源回路38を有している。そして、エンジンECU30は、クランク軸センサ12が出力するクランク角信号、及びカム軸センサ20が出力するカム角信号を、入力回路32を介してマイコン34に取り込む。他のセンサからの検出信号や、スイッチからの入力信号も、入力回路32を介して、マイコン34に取り込まれる。また、マイコン34において生成されたインジェクタ10を駆動するための駆動信号や、他のECUへの出力信号は、出力回路36を介して出力される。電源回路38は、車両のバッテリ28から電源供給を受けて、入力回路32、マイコン34、及び出力回路36の動作電圧を生成して提供する。
【0025】
マイコン34は、入出力回路(I/O回路)40、A/D変換器42、タイマ44、CPU46、ROM48、及びRAM50を備え、それぞれが内部バスを介して相互に接続されている。そして、マイコン34において、ROM48に記憶されたプログラムに従い、CPU46が、各種の演算処理を実行することにより、上記した各種の検出信号や入力信号に基づいて、インジェクタ10の駆動信号や、他ECUへの出力信号が生成される。
【0026】
本実施形態では、燃料噴射開始時期の精度を高めるべく、マイコン34において、クランク角信号が発生する角度間隔(10°CA)よりも詳細な角度間隔で発生する逓倍信号が生成される。本実施形態では、1°CAの間隔で逓倍信号が生成される。燃料噴射開始時期が到来したか否かは、その逓倍信号に基づいて判断される。逓倍信号は、タイマ44の内部に設けられた、角度検出部52において生成される。
【0027】
次に、
図2に基づき、角度検出部52について説明する。この角度検出部52が、特許請求の範囲に記載のエンジン制御装置に相当する。
【0028】
図2に示すように、角度検出部52は、逓倍信号生成部54と、複数のカウンタ56と、補正値設定部58と、補正部60と、欠け歯特定部62と、を有する。なお、逓倍信号生成部54が、特許請求の範囲に記載の逓倍信号生成手段に相当し、補正値設定部58が、補正値設定手段に相当する。また、補正部60が、補正手段に相当し、欠け歯特定部62が、欠け歯特定手段に相当する。
【0029】
逓倍信号生成部54は、クランク軸センサ12から入力されるクランク角信号に基づいて、クランク角信号の周期の1/逓倍数の周期を有する逓倍信号を生成する。この逓倍信号生成部54としては、周知の構成、例えば上記した特許文献1に記載の、複数のカウンタからなるハードクランク(特開2001−271700号公報の
図2参照)を採用することができる。特許文献1の追従カウンタから出力されるアングルクロックが、逓倍信号生成部54から出力される逓倍信号に相当する。
【0030】
本実施形態において、逓倍信号生成部54は、周期計測部64と、逓倍部66と、ガード値設定部68と、調整部70と、を有する。なお、ガード値設定部68及び調整部70が、特許請求の範囲に記載の調整手段に相当する。
【0031】
周期計測部64は、クランク角信号の周期(パルス間隔)を計測する。つまり、クランク角信号のパルスが入力されるタイミング毎に、今回のパルスと前回入力されたパルスとの、クランク角信号の連続する2つのパルスの立ち上がりエッジ間の時間間隔を、周期として計測する。計測した周期は、逓倍部66に出力される。
【0032】
逓倍部66は、周期計測部64から入力される周期の1/逓倍数の周期を有する信号、すなわち逓倍信号を生成する。この逓倍信号は、周期が計測された今回のパルスの次のパルスまでに生成される。本実施形態では、クランク角信号の周期の1/10の周期を有する逓倍信号を生成する。このため、1°CAの間隔で逓倍信号が生成されることとなる。
【0033】
ガード値設定部68は、エンジンの急加速及び急減速にともなうカウント値のずれを抑制するためのガード値を設定する。例えば、急加速時には、周期計測部64にて計測される周期(パルス間隔)が短くなるため、例えば何も処置をしないとカウンタ56のカウント値が小さめにずれてしまう。また、急減速時には、周期が長くなるため、何も処置をしないとカウンタ56のカウント値が大きめにずれてしまう。そこで、本実施形態では、逓倍信号が、クランク角信号の1パルスに対して後述するカウントアップ要因を逓倍数分有するように、ガード値を設定する。
【0034】
調整部70は、逓倍部66から入力される逓倍信号を、クランク角信号の1パルスに対してカウントアップ要因を逓倍数分有するように、ガード値設定部68により設定されたガード値によって調整する。クランク角信号のパルスの立ち上がりタイミングでガード値が設定され、急加速時には、クランク角信号の次のパルスの立ち上がりタイミングで逓倍信号に不足数分のカウントアップ要因が生じるように、逓倍信号を調整する。一方、急減速時には、クランク角信号の次のパルスの立ち上がりタイミングで、逓倍信号から過剰分のカウントアップ要因が削除されるように、逓倍信号を調整する。
【0035】
ここで、
図3に基づき、カウントアップ要因について説明する。
【0036】
カウントアップ要因とは、逓倍信号が有する、カウンタ56をカウントアップさせる要因である。本実施形態では、
図3に示すように、内部クロックのパルス立ち上がりタイミングにおいて、逓倍信号がHiレベルであると、カウンタ56がカウントアップする。すなわち、内部クロックの立ち上がりとタイミングが交差する逓倍信号のHiレベル箇所がカウントアップ要因となっている。なお、それ以外にも、逓倍信号の有効エッジ(例えば立ち上がりエッジ)、換言すれば逓倍信号のパルス数、をカウントアップ要因としても良い。
図3では、カウントアップ要因1つにつき、逓倍信号のHiレベルの幅を、内部クロックの単位時間と同じとしている。
図3に示す紙面右端のパルスは、例えば急加速による不足分を調整するため、カウントアップ要因6つ分のHiレベルが連続し、1つのパルスとなっている。しかしながら、6つのパルスに分けても良い。
【0037】
図2に戻り、カウンタ56は、720°CA毎にカウント値がリセットされる720°CAカウンタ72と、4°CA毎にカウント値がリセットされる4°CAカウンタ74と、を有する。なお、720°CAカウンタが、特許請求の範囲に記載の第1カウンタに相当し、4°CAカウンタが、第1カウンタよりも周期の短い第2カウンタに相当する。
【0038】
補正値設定部58は、逓倍信号のカウントアップ要因を補正するための補正値を設定する。本実施形態では、逓倍信号生成部54が調整部70を有するため、補正値設定部58は、例えば、クランク角信号にノイズが重畳した場合や検出できなかった場合(パルス抜け)のカウントアップ要因のずれを補正するための補正値を設定する。
【0039】
この補正値設定部58は、後述する欠け歯特定部62により欠け歯部が検出されると、この欠け歯に基づく所定タイミングにおいて、720°CAカウンタ72のカウント値をキャプチャする図示しないキャプチャレジスタを有する。そして、キャプチャレジスタが取得したカウント値と、ROMから取得した基準値との差分を算出し、この差分を第1補正値として設定する。さらに、4°CAカウンタ74の一周期分のカウント数未満であり、且つ、第1補正値が設定された場合と4°CAカウンタ74のリセットタイミングが変わらない値を第2補正値として設定する。本実施形態では、ソフト処理により、各補正値を設定(算出)する。補正値設定部58が実行する処理及び設定される補正値その詳細については後述する。
【0040】
補正部60は、補正値設定部58により設定される補正値を取得して、この補正値に基づき、逓倍信号のカウントアップ要因を補正する。この補正部60は、第1補正値に基づいて、逓倍信号のカウントアップ要因を補正する第1補正部76と、第2補正値に基づいて、逓倍信号のカウントアップ要因を補正する第2補正部78と、を有する。例えば、各補正部76,78はレジスタを有しており、各レジスタに補正値が書き込まれると、クランク角信号の次のパルス立ち上がりタイミングで、レジスタに書き込まれた補正値分、逓倍信号のカウントアップ要因が補正される。補正がなされると、レジスタの補正値はゼロリセットされる。
【0041】
欠け歯特定部62は、クランク角信号のパルス間隔のうち、所定の回転角度間隔毎のパルスが所定数抜かれた欠け歯部を特定する。具体的には、クランク角信号のパルス間隔を計測するとともに、今回計測中のパルス間隔が、前回計測したパルス間隔を所定の欠け歯判定比倍した長さ以上になると、今回計測中のパルス間隔が欠け歯であると判定(特定)する。
【0042】
次に、
図4に基づき、補正値設定部58が実行する処理について説明する。
【0043】
欠け歯特定部62により、欠け歯が特定されると、割り込み処理として、補正値を設定する処理がスタートする。すなわち、本実施形態では、補正値設定部58が所定処理を実行する所定タイミングを、欠け歯検出直後としている。それ以外にも、欠け歯検出から所定のクランク角経過後を所定タイミングとしても良い。
【0044】
図4に示すように、先ず、補正値設定部58は、割り込みが生じたタイミングで、720°CAカウンタ72のカウント値を取得する(S10)。次に、補正値設定部58は、カム軸センサ20からカク角信号を取得し、カムの表裏を判定して、表裏それぞれの場合に理論的に取りうる値である基準値を、ROMから取得する(S12)。なお、S10,S12の順番を逆としても良い。
【0045】
次に、補正値設定部58は、S10で取得したカウント値が、S12で取得した基準値と一致するか否かを判定する(S14)。S14において、一致すると判定されると、補正値設定部58は、カウントアップ要因の数にずれがないものとして、処理を終了する。
【0046】
一方、S14において、一致しないと判定されると、補正値設定部58は、第1補正値及び第2補正値を算出する(S16)。第1補正値については、上記したように、S10で取得した720°CAのカウント値と、S12で取得した基準値との差分をとって算出する。第2補正値については、上記した差分とするのではなく、4°CAカウンタ74の一周期分のカウント数未満であり、且つ、第1補正値が設定された場合と4°CAカウンタ74のリセットタイミングが変わらない値を算出する。その具体例については、後述する。
【0047】
そして、補正値設定部58は、算出した補正値を補正部60に出力する。具体的には、第1補正値を第1補正部76に出力し、第1補正部76のレジスタに書き込む。また、第2補正値を第2補正部78に出力し、第2補正部78のレジスタに書き込む。以上により、一連の処理を終了する。
【0048】
次に、第2補正値の設定の仕方と、その効果について説明する。
【0049】
先ず、720°カウンタのカウント値が基準値よりも小さめにずれている場合について説明する。
【0050】
図5は、比較例として、第1補正値(カウンタ値と基準値との差分)を補正した場合のカウントアップ要因と、4°CAカウンタのカウント値を示している。比較例に示す構成は、本実施形態同様、720°CAカウンタと4°CAカウンタを有するものの、逓倍信号生成部54からの出力系統が1つしかない。したがって、720°CAカウンタのカウント値と基準値との差分によって補正された逓倍信号に基づき、すなわち共通の逓倍信号に基づき、720°CAカウンタ及び4°CAカウンタがカウントアップするようになっている。
【0051】
また、
図6は、本実施形態におけるカウントアップ要因と、4°CAカウンタ74のカウント値を示している。なお、
図5及び
図6では、4°CAカウンタのカウント値が1になるとイベントが発生するようになっており、そのイベント発生タイミングについても図示している。
【0052】
図5及び
図6では、1パルス分、クランク角信号を検出できず(パルス抜け)、720°CAカウンタのカウント値が基準値に対して10不足している場合の補正について例示している。
【0053】
比較例の場合、補正部は、720°CAカウンタと4°CAカウンタとで共通である。したがって、
図5に示すように、クランク信号のパルスの立ち上がりタイミングで、内部クロックによって、カウントアップ要因が10追加される。そして、4°CAカウンタは3回リセットされ、これにともなってイベントが3回短期間に発生する。このようにイベントが連発してしまう。なお、
図5において、補正タイミング直後には、カウントアップ要因として、所定間隔で生成される通常の逓倍信号によるカウントアップ要因(1つ)と、補正にともない追加されたカウントアップ要因(+10)が示されている。
【0054】
一方、本実施形態では、補正値設定部58が、720°CAカウンタ72のカウント値が基準値未満、且つ、上記した第1補正値を4°CAカウンタ74の一周期分のカウント数で除算した余りが1以上の場合、その余りを第2補正値として設定する。
図6に示す例では、第1補正値が10であるため、余りが2となる。そして、この余りを、カウントアップ要因を追加するための第2補正値とし、クランク信号のパルスの立ち上がりタイミングで、内部クロックによって、カウントアップ要因が2つ追加される。
【0055】
図6に示すように、「余り」を第2補正値とすると、4°CAカウンタ74のリセットタイミング、換言すればイベントの発生タイミング、を
図5に示す比較例の場合と変えることなく、補正によるイベント連発を抑制することができる。
【0056】
次に、720°カウンタのカウント値が基準値よりも大きめにずれている場合について説明する。
【0057】
図7は、上記した
図5に対応し、
図8は、
図6に対応している。すなわち、
図7は、比較例を示しており、
図8は、本実施形態の補正例を示している。
【0058】
図7及び
図8では、クランク角信号にノイズが重畳し、クランク角信号が1パルス分増えた状態として検出され、720°CAカウンタのカウント値が基準値に対して10過剰となっている場合の補正について例示している。
【0059】
比較例の場合、
図7に示すように、クランク信号のパルスの立ち上がりタイミングから、カウントアップ要因が10削除される。この間、4°CAカウンタはカウント停止となるため、長期間イベントが発生しない。
【0060】
一方、本実施形態では、補正値設定部58が、カウントアップ要因を追加する場合同様に、第2補正値を設定する。
図8に示す例では、第1補正値が10であるため、余りが2となる。そして、この余りを、カウントアップ要因を削除するための第2補正値としている。
図8に示すように、「余り」を第2補正値とすると、4°CAカウンタ74のリセットタイミング、換言すればイベントの発生タイミング、を
図7に示す比較例の場合と変えることなく、補正によって長期間イベントが発生しないのを抑制することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、カウントアップ要因の追加、削除にかかわらず、720°CAカウンタ72のカウント値が基準値未満であっても、余りがない場合、補正値設定部58は、第2補正部78がカウントアップ要因追加又は削除の補正をしないように、第2補正値を設定する。
【0062】
次に、本実施形態に係る角度検出部52の効果について説明する。
【0063】
本実施形態では、逓倍信号生成部54から逓倍信号が出力される系統として、第1補正部76により補正される第1系統と、第2補正部78により補正される第2系統の2系統を有する。そして、周期の長い720°CAカウンタ72は、第1補正部76によって補正された逓倍信号に基づいてカウントアップし、周期の短い4°CAカウンタ74は、第2補正部78によって補正された逓倍信号に基づいてカウントアップする。すなわち、720°CAカウンタ72は、第1補正値分、カウントアップ要因が補正された逓倍信号に基づいてカウントアップし、4°CAカウンタ74は、第2補正値分、カウントアップ要因が補正された逓倍信号に基づいてカウントアップする。
【0064】
また、第1補正値が設定された場合と4°CAカウンタ74のリセットタイミングを変えずに、補正にともなって4°CAカウンタ74が複数回リセットされるのを抑制することができる。すなわち、4°CAカウンタ74に基づいて発生するイベントが、補正にともなって連発するのを抑制することができる。
【0065】
また、補正によって4°CAカウンタ74がカウントアップしない期間、を短くすることができる。すなわち、4°CAカウンタ74に基づいて発生するイベントが、補正にともなって長期間発生しないのを抑制することができる。
【0066】
さらには、欠け歯部に基づく所定タイミングにおいて、720°CAカウンタ72のカウント値と予め設定された基準値との差分を第1補正値として設定する。したがって、クランク角信号にノイズが重畳した場合や、クランク角信号を検出できなかった場合(パルス抜け時)に生じるカウント値のずれについても補正することができる。
【0067】
また、逓倍信号生成部54が、出力する前に、エンジンの加減速によるカウントアップ要因のずれを調整するためのガード値設定部68及び調整部70を有する。したがって、加減速によるずれが生じても、即座にそのずれを調整することができる。
【0068】
(第2実施形態)
本実施形態において、第1実施形態に示したエンジンECU30(角度検出部52)と共通する部分についての説明は割愛する。
【0069】
本実施形態では、720°CAカウンタ72のカウント値が基準値よりも大きめにずれている場合の第2補正値の設定が、第1実施形態と異なる。
図9は、上記した
図8に対応している。
【0070】
図9でも、
図8の場合同様、クランク角信号にノイズが重畳し、クランク角信号が1パルス分増えた状態として検出され、720°CAカウンタのカウント値が基準値に対して10過剰となっている場合の補正について例示している。
【0071】
本実施形態では、720°CAカウンタ72のカウント値が基準値未満、且つ、上記した第1補正値を4°CAカウンタ74の一周期分のカウント数で除算した余りが1以上の場合、補正値設定部58は、4°CAカウンタ74の一周期分のカウント数から上記余りを減算した値を第2補正値として設定する。
図9に示す例では、第1補正値が10であるため、余りが2となる。そして、4°CAカウンタ74の一周期分のカウント数「4」から、余り「2」を減算した値「2」を、カウントアップ要因を追加するための第2補正値としている。これによれば、4°CAカウンタ74のリセットタイミング、換言すればイベントの発生タイミングを、
図7に示した比較例の場合と変えることなく、補正によって長期間イベントが発生しないのを抑制することができる。
【0072】
特に本実施形態によれば、カウントアップ要因を追加することで、カウント値を一周させて所望の値に合わせるため、4°CAカウンタ74の復帰を早めることができる。
【0073】
なお、本実施形態においても、余りがない場合に、補正値設定部58は、第2補正部78がカウントアップ要因追加の補正をしないように第2補正値を設定する。
【0074】
(第3実施形態)
本実施形態において、第1実施形態に示したエンジンECU30(角度検出部52)と共通する部分についての説明は割愛する。
【0075】
本実施形態では、
図10に示すように、角度検出部52が、各カウンタ56に対応して設けられた選択部80を有する。すなわち、1つのカウンタ56に、1つの選択部80が割り当てられている。この選択部80は、特許請求の範囲に記載の選択手段に相当する。
【0076】
そして、各選択部80は、対応するカウンタ56へ出力する逓倍信号として、第1補正部76によって補正された逓倍信号と、第2補正部78によって補正された逓倍信号のいずれかを選択可能に設けられている。
【0077】
図10では、複数のカウンタ56として、720°CAカウンタ72を2つと、4°CAカウンタ74を2つ有する。そして、4つのカウンタ56(72,74)に対し、それぞれ選択部80が設けられ、720°CAカウンタ72には、第1補正部76によって補正された逓倍信号が入力され、4°CAカウンタ74には、第2補正部78によって補正された逓倍信号が入力されるようになっている。
【0078】
これによれば、カウンタ56毎に逓倍信号が選択可能となるため、制御の自由度、設計自由度を向上することができる。例えば、4つのカウンタ56のうち、3つを720°CAカウンタ72とし、残り1つを4°CAカウンタ74とする場合や、1つを720°CAカウンタ72とし、残りの3つを4°CAカウンタ74とする場合にも、容易に変更が可能である。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0080】
角度検出部52の構成は、上記例に限定されるものではない。ハードウェアにより構成されても良いし、マイコン34において、ソフトウェアを用いて、機能の少なくとも一部を構成することもできる。
【0081】
逓倍信号生成部54が、ガード値設定部68及び調整部70を有する例を示したが、ガード値設定部68及び調整部70を有さない構成としても良い。この場合、加減速にともなうカウントアップ要因のずれについても、補正部60により補正することとなる。しかしながら、ガード値設定部68及び調整部70を有するほうが、加減速にともなうカウントアップ要因のずれに追従して、ずれを補正することができる。
【0082】
第1カウンタとしては、720°CAカウンタ72に限定されない。欠け歯に基づく所定タイミングで基準値との比較ができるもの、例えば360°CAカウンタを採用することも可能である。
【0083】
第2カウンタとしては、4°CAカウンタ74に限定されない。第1カウンタよりも周期の短いカウンタを採用することができる。また、第2カウンタとしては、周期が1種類に限定されず、例えば3°CAカウンタと、5°CAカウンタの2種類を有しても良い。この場合、補正値設定部58は、上記した方法により、それぞれの第2補正値を設定する。また、第2補正部78は、3°CAカウンタ用の補正部と、5°CAカウンタ用の補正部をそれぞれ有することとなる。
【0084】
さらには、第2カウンタとして、その一周期分のカウント数の整数倍が、逓倍数と一致するものを採用しても良い。例えば、低倍数が10の場合、第2カウンタとして5°CAカウンタを採用しても良い。この場合、補正値設定部58は、第2補正部78が逓倍信号に対してカウントアップ要因の追加又は削除の補正をしないように、第2補正値を設定する。これによれば、補正値設定部58、ひいてはマイコン34の処理負荷を軽減することができる。