(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記媒体の取込時に前記収容空間内の底面に沿って移動させるべき移動方向と直交する直交方向に関して前記収容空間の範囲を規定し、前記筐体に対する取付位置が移動可能である可動範囲規定部と、
前記取付空間の前記直交方向に隣接し、且つ前記可動範囲規定部の可動範囲における下方の空間であって、前記異物を案内する案内空間と、
前記案内空間の下方に設けられ前記取付空間側が低い傾斜部と
をさらに具え、
前記異物収容器は、前記案内空間に隣接する側面に、前記傾斜部よりも上側の空間と前記異物収容空間とを連通させる貫通孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体取込装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0018】
[1.紙幣処理装置の構成]
図1に示すように、本実施形態による紙幣処理装置1は、金融機関の窓口7に設置される窓口用現金処理装置(いわゆるテラーマシン)であり、当該窓口7において顧客CSと応対する窓口担当者等の操作者Mに操作されることにより、紙幣の入金処理や出金処理を行う。
【0019】
窓口7は、図の中央において長手方向を左右に向けるように設置されたカウンタ8により、金融機関の職員でなる操作者M等が職務を行う領域(図の下側)と、来訪した顧客CSが各種取引や手続きを行う領域(図の上側)とを区切っている。
【0020】
カウンタ8上における各操作者Mとそれぞれ対峙する位置には、2台の端末装置3が設置されている。各端末装置3は、一般的なコンピュータ装置と同様、各種演算処理を行う演算処理部、各種情報を記憶する記憶部、キーボードやタッチパネル等でなる操作部、表示画面を表示する表示部、及び情報を送受信する通信処理部等を有している。
【0021】
各端末装置3は、紙幣処理装置1とそれぞれ接続されており、操作者Mの操作に基づき、入金処理や出金処理の指示を生成して当該紙幣処理装置1へ送信する。これに応じて紙幣処理装置1は、この指示に基づいた入金処理や出金処理等の各種処理を実行する。紙幣処理装置1は、カウンタ8の下側にその後ろ側部分を潜り込ませると共に、椅子に座った2人の操作者Mの間に前側部分を位置させるように設置されている。
【0022】
紙幣処理装置1は、
図2に外観構成を示すように、全体として直方体状に形成された筐体10の内部に制御部11が設けられており、この制御部11により全体を統括制御している。
【0023】
制御部11は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等のような種々の処理を行う。また制御部11は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報やプログラム等を記憶させる。
【0024】
筐体10の上面における前寄りの箇所には、操作者Mとの間で紙幣の授受を行うための入出金部12が設けられている。入出金部12は、窓口7(
図1)において椅子に座って業務を行う操作者Mに操作されることが考慮され、周囲よりも上方へ突出すると共に、手前側が低くなるよう傾斜されている。
【0025】
この入出金部12には、手前側から後ろ側へ向かって、2個の出金口14、入金口13及び表示操作部15が順次配置されており、当該表示操作部15の左右に操作ボタン16がそれぞれ配置されている。
【0026】
なお以下では、紙幣処理装置1のうち表示操作部15の表示内容を正しく読み取り得る正面側を前側とし、その反対を後側とし、前側から見た場合の左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0027】
入金口13は、主に紙幣を入金する場合に使用され、操作者Mにより内部の入金空間に紙幣が投入されると、これを1枚ずつに分離して紙幣処理装置1内へ取り込む。出金口14は、主に紙幣を出金する場合や、各種処理において操作者Mに返却すべき紙幣がある場合に使用され、紙幣処理装置1内から搬送されてきた紙幣を内部の集積空間に集積し、操作者Mに取り出させる。
【0028】
表示操作部15は、例えばタッチセンサが組み込まれた液晶ディスプレイ、いわゆるタッチパネルでなり、制御部11の制御に基づき所定の操作メニュー、各種処理の進捗状況や結果等を表示して操作者Mに各種情報を通知すると共に、当該操作者Mの入力操作を受け付けて制御部11へ伝達する。操作ボタン16は、操作者Mによる押下操作を受け付け、これを制御部11へ伝達する。
【0029】
次に、
図3を用いて、紙幣処理装置1の内部構成について説明する。紙幣処理装置1の筐体10内には、上述した制御部11の他、鑑別部21、一時保留部22、4個の紙幣カセット23、リジェクトカセット24及び搬送部25が設けられている。
【0030】
鑑別部21は、入金口13の後方下側に配置されている。この鑑別部21は、搬送部25により搬送されてくる紙幣の金種、真偽、正損、走行状態などを基に、取り扱うことのできる取扱可能紙幣であるか否かを鑑別し、また損傷の程度を基に再利用することができる再利用可能紙幣であるか否かを鑑別して、その鑑別結果を制御部11へ送出する。
【0031】
一時保留部22は、出金口14の前方下側に配置されており、搬送部25により搬送されてきた紙幣を内部に一時的に保留し、また保留している紙幣を1枚ずつ搬送部25へ送出する。
【0032】
筐体10内における下部には、最も前側にリジェクトカセット24が配置されており、その後側に前方から後方へ向けて4個の紙幣カセット23が順次並ぶように配置されている。
【0033】
各紙幣カセット23は、内部に紙幣を集積した状態で収納するようになされており、またそれぞれ金種が割り当てられている。この紙幣カセット23は、搬送部25から搬送されてくる紙幣(正常紙幣)を上下方向に重ねて内部に収納し、また収納している紙幣を1枚ずつ繰り出して搬送部25へ受け渡す。リジェクトカセット24は、鑑別部21において再利用不可能と鑑別された紙幣(リジェクト紙幣)を内部に集積して収納する。
【0034】
搬送部25は、筐体10内の各部を結ぶ搬送路Yに沿って配置された各種ローラやベルト及びこれらを駆動するためのギアやモータ等により構成されている。また搬送部25は、搬送路の分岐点に図示しない搬送路切替機構を配置している。この搬送部25は、制御部11の制御に基づき、搬送路に沿って紙幣を搬送すると共に、搬送路切替機構により当該紙幣の搬送先を切り替える。因みに
図3では、搬送部25を構成する部品の一部のみを模式的に示している。
【0035】
かかる構成により紙幣処理装置1は、端末装置3(
図1)から入金指示を受け付けると、入金処理を行う。具体的に紙幣処理装置1の制御部11は、操作者Mに紙幣を入金口13へ投入させ、後述する分離処理によりこの紙幣を1枚ずつ分離して搬送部25へ順次送り出す。搬送部25は、この紙幣を搬送路Yに沿って鑑別部21へ順次搬送する。
【0036】
制御部11は、鑑別部21により各紙幣が取扱可能紙幣であるか否かを鑑別させ、その鑑別結果を基に進捗状況を表示操作部15に表示しながら、取扱可能紙幣を搬送部25により一時保留部22へ搬送する一方、取り扱うことができない紙幣(リジェクト紙幣)を出金口14へ搬送する。
【0037】
その後制御部11は、鑑別した紙幣の枚数等を操作者Mに確認させた上で、表示操作部15に進捗状況等の情報を表示しながら、一時保留部22に保留された取扱可能紙幣を搬送部25により再度鑑別部21へ搬送して金種及び損傷の程度を鑑別させる。このとき制御部11は、再利用可能紙幣をその金種に応じた紙幣カセット23に収納させ、再利用できない紙幣(リジェクト紙幣)をリジェクトカセット24に収納させる。
【0038】
また紙幣処理装置1は、端末装置3(
図1)から出金指示を受け付けると、出金処理を行う。具体的に紙幣処理装置1の制御部11は、まず2個の出金口14のいずれか一方を選択出金口14Sとして選択する。
【0039】
次に制御部11は、表示操作部15に進捗状況等の情報を表示しながら、紙幣カセット23から出金額に応じた金種及び枚数の紙幣を順次繰り出し、これを搬送部25により選択出金口14Sへ順次搬送させる。その後制御部11は、全ての紙幣を選択出金口14Sへ搬送すると、紙幣を操作者Mに取り出させる。
【0040】
このように紙幣処理装置1は、入金処理において入金口13に紙幣を投入させ、これを1枚ずつに分離して取り込むようになっている。
【0041】
[2.入金口の構成]
入金口13は、
図4及び
図5(A)に示すように、筐体30内に紙幣を投入させるための収容空間30Sが形成されている。因みに
図4は平面図を表しており、
図5(A)は
図4のA1−A2断面図において、後述する異物回収トレイ50を取り外した状態を表している。
【0042】
収容空間30Sは、左右方向に長い直方体状に形成されると共に、上方が開放されている。この収容空間30Sには、整然と重ねられた複数の紙幣が、紙面を前後に向けると共に長手方向を左右に向けた状態で投入される。また収容空間30Sは、
図5(A)に示したように、その底面30Bが水平ではなく、前側が低く後側が高くなるように傾斜されている。前後左右の各側面は、この底面30Bに対しほぼ垂直に形成されている。
【0043】
さらに収容空間30Sにおける後下方には、下方へ紙幣を取り込むための取込口30Eが形成されている。この取込口30Eは、収容空間30Sの底面30Bにおける後端近傍部分が下方へ向けて湾曲された部分と、当該収容空間30Sの後面30Cにおける下端部分が下方へ延長された部分とにより挟まれている。このため取込口30Eは、左右方向には十分に長い(広い)ものの、前後方向に関しては下方へ進むに連れて短く(狭く)なっている。
【0044】
収容空間30Sの左右には、可動側板31及び32が取り付けられている。可動側板31は、その右側面31Aにより収容空間30Sの左端を規定している。可動側板31の上面における前後それぞれには、係合部31Bが設けられている。係合部31Bは、前後の側辺が所定間隔ごとに切削されることにより、前方向又は後方向へ向けた複数の離散的な突起が形成されている。
【0045】
可動側板31は、筐体30側に形成された被係合部30Gに係合部31Bのいずれかの突起を係合させることにより、筐体30に対する取付位置を固定させる。また可動側板31は、被係合部30Gに対し係合部31Bの異なる突起を係合させることにより、筐体30に対する取付位置を左右方向に変化させることができる。
【0046】
可動側板32は、可動側板31と左右対称に形成されており、その左側面32Aにより収容空間30Sの右端を規定している。また可動側板32は、可動側板31と同様、係合部31Bと同様に形成された係合部32Bのいずれかの突起を筐体30側の被係合部30Gと係合させることにより、当該筐体30に対する取付位置を左右方向に変化させることができる。
【0047】
一般に、紙幣の大きさは国や地域によって異なっており、また1の国や地域においても、金種により紙幣の大きさが相違することが多い。そこで紙幣処理装置1は、入金口13を含む各部分において、各国や地域で使用される紙幣のうち最大の紙幣から最小の紙幣まで対応し得るよう設計されている。しかしながら紙幣処理装置1では、搬送部25等に設けられたローラやベルト等の配置の制約により、紙幣における長手方向の中央を、搬送路における幅方向の中央に極力合わせることが望ましい。
【0048】
そこで入金口13は、その製造時や設置時等に、筐体30に対する可動側板31及び32の左右方向に関する取付位置が調整される。具体的に可動側板31及び32は、収容空間30Sにおける左右方向の長さを、紙幣処理装置1が設置される国や地域において使用される紙幣のうち長手方向の長さが最も大きい紙幣(以下これを最長紙幣と呼ぶ)の当該長さよりも僅かに大きくするよう、筐体30に取り付けられる。これにより入金口13は、収容空間30Sに投入される紙幣を、可能な限り中央に寄せることができる。
【0049】
収容空間30Sの前方には、板面を前後に向けた板状のビルプレス33が設けられている。このビルプレス33は、後側に形成された後側面33Aにより収容空間30Sの前端を規定している。さらにビルプレス33は、図示しないビルプレス駆動部により、収容空間30Sの底面30Bに沿って前後に移動する。このときビルプレス33は、収容空間30Sにおける前後方向の長さを変化させることになる。
【0050】
一方、収容空間30Sの下方、すなわち底面30Bよりも下側には、細長い円柱状の回転軸34(
図5(A))がその中心軸を左右方向に向けるように配置されている。回転軸34は、図示しない軸受により回転可能に支持されると共に、図示しないモータから駆動力が伝達される。
【0051】
回転軸34には、4個のフィードローラ35が挿通されている。フィードローラ35は、中心軸を左右方向に向けた扁平な円柱状に形成されており、回転軸34を中心として当該回転軸34と一体に回転する。また、収容空間30Sの底面30B及び取込口30Eにおける後側の内側面には、フィードローラ35を露出させるための孔部がそれぞれ形成されている。
【0052】
収容空間30Sの後下方、すなわち回転軸34の後方であって取込口30Eよりも後側には、当該回転軸34と同様に細長い円柱状でなる回転軸36がその中心軸を左右方向に向けて配置されている。この回転軸36は、回転軸34と同様、図示しない軸受により回転可能に支持されると共に、図示しないモータから駆動力が伝達される。
【0053】
回転軸36には、2個のゲートローラ37及び2個のサブフィードローラ38が挿通されている。ゲートローラ37は、中心軸を左右方向に向けた円柱状に形成されており、回転軸36を中心として当該回転軸36と一体に回転する。また、取込口30Eにおける前側の内側面には、ゲートローラ37を露出させるための孔部が形成されている。
【0054】
またゲートローラ37は、その周側面に周方向に沿った2本の溝が形成されており、各溝をフィードローラ35と対向させるよう、左右方向の位置が調整されている。因みに回転軸36は、ゲートローラ37の各溝にフィードローラ35の一部を僅かに入り込ませるよう、その位置が調整されている。このゲートローラ37の周側面は、全体的に円滑に仕上げられて紙幣に対する摩擦力が抑えられているものの、その一部分に、紙幣に対する摩擦力が格段に高められた高摩擦部37Rが形成されている。
【0055】
サブフィードローラ38は、フィードローラ35と同様、中心軸を左右方向に向けた扁平な円柱状に形成されており、回転軸36を中心として当該回転軸36と一体に回転する。
【0056】
収容空間30Sの後方、すなわち後面30Cよりも後側であって回転軸36の上方には、回転軸34及び36と同様に細長い円柱状でなる回転軸39がその中心軸を左右方向に向けて配置されている。この回転軸39は、回転軸34及び36と同様、図示しない軸受により回転可能に支持されると共に、図示しないモータから駆動力が伝達される。因みに回転軸39は、回転軸36と同期して回転するようになされている。
【0057】
回転軸39には、4個のピッカローラ40が互いに間隔を空けるようにして挿通されている。ピッカローラ40は、中心軸を左右方向に向けた扁平な円柱状に形成されており、回転軸39を中心として当該回転軸39と一体に回転する。またピッカローラ40は、ゲートローラ37と同様、その周側面が円滑に仕上げられて紙幣に対する摩擦力が抑えられると共に、その周側面における一部分に、紙幣に対する摩擦力が格段に高められた高摩擦部40Rが形成されている。この高摩擦部40Rは、ピッカローラ40の周側面よりも外方へ突出している。
【0058】
一方、収容空間30Sの後面30Cには、ピッカローラ40を露出させるための孔部が形成されている。因みに回転軸39は、ピッカローラ40の後端部分をこの孔部から収容空間30S内に突出させるよう、その位置が調整されている。
【0059】
また、フィードローラ35、ゲートローラ37及びサブフィードローラ38の下方には、取込口30Eを通って送られてきた紙幣を引き続き案内する搬送ガイド41及び42が設けられている。搬送ガイド41及び42は、前後方向に隙間を空けて配置されており、この隙間を紙幣の搬送路としている。
【0060】
かかる構成により入金口13は、端末装置3(
図1)から所定の入金指示を受けた後、収容空間30Sに紙幣が投入された上で表示操作部15(
図2)に対し所定の取込操作がなされると、制御部11(
図3)の制御に基づき、紙幣を取り込む取込動作を開始する。
【0061】
具体的に入金口13は、まずビルプレス33を可能な限り後方へ移動させていく。このとき収容空間30S内の紙幣は、その下辺を当該収容空間30Sの底面30Bに沿って後方向へ摺動させながら、後方へ押し進められていく。やがて収容空間30S内の紙幣は、収容空間30S内における最も後ろ寄りに位置し、そのうち最も後側の紙幣の後面をピッカローラ40に押し付けた状態とする。
【0062】
また入金口13は、回転軸39、36及び34を
図5(A)における反時計方向に回転させることにより、ピッカローラ40、ゲートローラ37、サブフィードローラ38及びフィードローラ35をいずれも反時計方向に回転させる。
【0063】
ピッカローラ40及びゲートローラ37は、高摩擦部40R及び37Rが収容空間30S内における最後面の紙幣と当接するときだけ、当該紙幣に対し下方向へ向かう力を作用させ、取込口30E内を下方へ進行させる。
【0064】
このとき収容空間30S内における後から2枚目以降の紙幣は、最後面の紙幣との摩擦により取込口30E内を下方へ進行しようとするものの、フィードローラ35とゲートローラ37との隙間が極めて狭く、且つ前後方向に入り組んでいるため、堰き止められて収容空間30S内に残る。この結果、最後面の紙幣のみが分離されて取込口30E内を下方へ進行し、さらに搬送ガイド41及び42の間の搬送路を下方へ進行して、搬送部25(
図3)に受け渡される。
【0065】
またピッカローラ40及びゲートローラ37は、高摩擦部40R及び37R以外の摩擦力が低い周側面が最後面の紙幣と当接している間は、滑り続けることにより、当該紙幣を下方へは進行させない。このためピッカローラ40及びゲートローラ37は、紙幣同士の間隔を空けながら、順次分離していくことができる。
【0066】
このように入金口13は、収容空間30S内に紙幣が投入されると、ビルプレス33により紙幣を後方へ押し付け、1枚ずつに分離して取り込む。
【0067】
[3.異物回収トレイの構成]
ところで入金口13内における収容空間30Sの下方における前寄りには、当該収容空間30Sの底面30Bと隣接する位置に取付空間30T(
図5(A))が形成されている。取付空間30Tは、直方体状であり、収容空間30Sと比較して、前後方向、左右方向及び上下方向のいずれも小さくなっている。
【0068】
取付空間30Tには、
図4に示したように、また
図5(A)と対応する断面図を
図5(B)に示すように、異物回収トレイ50が装着される。この異物回収トレイ50は、
図5(A)に示したように、取付空間30Tから取り外すこともできる。
【0069】
取付空間30Tの下側には、異物回収トレイ50が装着された際に支持する支持部材30Jが設けられている。また支持部材30Jにおける左右のほぼ中央には、小さな直方体状でなるトレイ検知部43が設けられている。このトレイ検知部43は、例えば機械式のスイッチでなり、異物回収トレイ50が取付空間30Tに装着されたときのみ「オン」となり、それ以外のときは「オフ」となる。
【0070】
またトレイ検知部43は、制御部11(
図3)と電気的に接続されている。このため制御部11は、トレイ検知部43が「オン」又は「オフ」のいずれであるかを取得し、その取得結果を基に、取付空間30Tに異物回収トレイ50が装着されているか否かを検知することができる。
【0071】
異物回収トレイ50は、
図6に斜視図を示すように、全体的に中空の直方体状に形成されており、上面が開放されている。具体的に異物回収トレイ50は、底部分を形成する底面板51を中心に構成されている。底面板51は、上下に薄く左右に長い薄板状に形成されているものの、
図5(B)に示したように、その中央付近に上方へ突出した部分が形成されており、トレイ検知部43との干渉を回避するようになっている。
【0072】
また底面板51は、後辺における中央の約1/3の範囲において、前方へ抉られるように切り欠かれている。これにより底面板51は、異物回収トレイ50が取付空間30Tに装着された際に、フィードローラ35(
図4及び
図5)との干渉を回避することができる。
【0073】
底面板51の前端には、上方に向けて前面板52が垂設されている。前面板52は、前後方向に薄く左右方向に長い板状に形成されており、上端に複数の矩形状の切り欠きが離散的に形成されている。
【0074】
底面板51の後端には、上方に向けて後面板53が垂設されている。後面板53は、前後方向に薄く左右方向に長い板状に形成されているものの、底面板51の切り欠きに合わせるように、前後に屈曲されている。また後面板53の上端には、前面板52と同様に複数の矩形状の切り欠きが離散的に形成されている。
【0075】
底面板51の左端には、上方に向けて左面板54が垂設されている。左面板54は、左右方向に薄いほぼ正方形の板状に形成されているものの、周側部分及び後下側の約1/4の部分を残して大きく切り欠かれている。すなわち左面板54のうち後上側には、左右方向に貫通する大きな矩形状の貫通孔54Hが穿設されている。また左面板54のうち前側の約半分の範囲には、左右方向に貫通する大きな長方形状の孔が穿設された上で、この孔を遮るように固定部61(詳しくは後述する)が設けられている。
【0076】
底面板51の右端には、上方に向けて右面板55が垂設されている。右面板55は、左面板54と左右対称に形成されており、後上側に左右方向に貫通する大きな矩形状の貫通孔55Hが穿設されると共に、前側の約半分の範囲に固定部62(詳しくは後述する)が設けられている。
【0077】
さらに異物回収トレイ50内には、内部の空間(以下これを異物回収空間50Sと呼ぶ)を左右方向に区切るように、4枚の支持体56が設けられている。支持体56は、左面板54及び右面板55と同様、左右方向に薄いほぼ正方形の板状に形成されているものの、貫通孔54H及び55Hのような孔部は穿設されておらず、異物回収空間50Sをほぼ5等分に区切っている。すなわち支持体56の上面は、上方から見て、ビルプレス33(
図4)により紙幣が移動される方向である前後方向を長手方向とする長方形状となっている。
【0078】
これを換言すれば、異物回収トレイ50の上面は、前面板52、後面板53、左面板54、右面板55及び支持体56の上辺を残すようにして、上下に貫通する大きな矩形状の孔が左右方向に並ぶように5箇所に穿設された状態となっている。
【0079】
また、異物回収トレイ50における前面板52、後面板53、左面板54、右面板55及び支持体56の各上辺は、一部の切り欠かれた部分を除き、いずれも同等の高さとなっている。このため異物回収トレイ50は、取付空間30Tに装着された際に(
図5(B))、底面板51を支持部材30Jと当接させることにより、支持体56等の上辺を底面30Bのうち取付空間30Tよりも前側及び後側の部分(以下それぞれ前側底面30BF及び後側底面30BRと呼ぶ)と同等の高さに合わせる。
【0080】
このとき異物回収トレイ50は、その上面部分、すなわち前面板52、後面板53、左面板54、右面板55及び支持体56の各上辺を、収容空間30Sの底面30Bの一部とすることができる。すなわち異物回収トレイ50は、その上面部分により、収容空間30S内に投入された紙幣の下辺を支持することができる。
【0081】
かかる構成により異物回収トレイ50は、収容空間30S内に紙幣が投入された際、当該紙幣と共に効果やクリップのような異物が誤って投入されたとしても、紙幣を落下させずに収容空間30S内に止めながら、この異物のみを上面に形成された大きな矩形状の孔を介して、すなわち支持体56同士の間又は支持体56と左面板54若しくは右面板55との間から、異物回収空間50S内に落下させることができる。
【0082】
ここで
図7に示すように、紙幣処理装置1が設置される国や地域において使用される紙幣のうち長手方向の長さが最も小さい紙幣を最短紙幣BLSとし、この最短紙幣BLSにおける長手方向の長さの1/4を長さL2とする。異物回収トレイ50における支持体56同士の間隔、及び当該支持体56と左面板54又は右面板55との間隔を長さL1とすると、この長さL1は、長さL2よりも短くなっている。
【0083】
このため異物回収トレイ50は、仮に最短紙幣BLSが長辺方向4等分されるように折り畳まれて見かけ上の長さが長さL2程度となった状態で収容空間30S内に投入されたとしても、この最短紙幣BLSを異物回収空間50S内に落下させることなく、収容空間30S内に位置させることができる。
【0084】
また異物回収トレイ50は、取付空間30Tに取り付けられた状態において、操作者M(
図1)等により取り外される際、支持体56を指先で挟持させることにより、容易に持ち上げさせることもできる。
【0085】
ところで前面板52には、上端付近における左右に離隔した6箇所から、前方へ向けて6本の受渡突起57が立設されている。前面板52における左右方向に関する受渡突起57の立設位置は、左面板54、右面板55及び4枚の支持体56の位置とそれぞれ一致している。
【0086】
ここで
図4におけるA1−A2断面である
図5(B)に加えて、B1−B2断面及びC1−C2断面の一部をそれぞれ
図8及び
図9に示すように、受渡突起57は、その上面が前面板52、左面板54及び支持体56等の上面と同一平面内に位置している。このため受渡突起57は、前面板52、左面板54及び支持体56等と同様、異物回収トレイ50が取付空間30Tに装着された際に、その上面を底面30Bの一部とすることができる。
【0087】
さらに受渡突起57は、その上面における前端近傍に、上面に対し前側を下げるよう傾斜された傾斜面57Sが形成されている。この傾斜面57Sは、上面に対する傾斜角が例えば約30度となっている。一方、筐体30の前側底面30BFには、受渡突起57と対応する形状の窪みが形成されており、異物回収トレイ50が取付空間30T内に取り付けられた際に、この窪みの中に受渡突起57を位置させる。
【0088】
このため受渡突起57は、異物回収トレイ50が取付空間30T内に取り付けられた際に、筐体30の前側底面30BFと前面板52との境界部分に掛け渡され、且つその上面を収容空間30Sの底面30Bと同等の高さに合わせる。これにより受渡突起57は、前側底面30BFと前面板52との境界部分に紙幣が落下することを防止できる。
【0089】
また受渡突起57は、ビルプレス33により紙幣が後方へ移動される際に、当該紙幣の下辺を前側底面30BFから前面板52及び支持体56等の上面に受け渡す際に、その高さを殆ど変化させることなく、円滑に進行させることができるので、当該紙幣の下辺が前面板52の上辺等に引っかかることを未然に防止できる。
【0090】
一方、後面板53の上端付近における左右の2箇所からは、後方へ向けて受渡突起58が立設されている。後面板53における左右方向に関する受渡突起58の立設位置は、左右方向に並んだ4枚の支持体56のうち外方の2枚の位置とそれぞれ一致している。因みに受渡突起58は、受渡突起57と前後対称に形成されており、後端近傍に傾斜面58Sが形成されている。
【0091】
また筐体30の後側底面30BRには、前側底面30BFと同様、受渡突起58と対応する形状の窪みが形成されており、異物回収トレイ50が取付空間30T内に取り付けられた際に、この窪みの中に受渡突起58を位置させる。
【0092】
このため受渡突起58は、異物回収トレイ50が取付空間30T内に取り付けられた際に、筐体30の後側底面30BRと後面板53との境界部分に掛け渡され、且つその上面を収容空間30Sの底面30Bと同等の高さに合わせる。これにより受渡突起58は、受渡突起57の場合と同様、後面板53と後側底面30BRとの境界部分に紙幣が落下することを防止でき、且つ紙幣を円滑に移動させることができる。
【0093】
さらに後面板53には、上端付近における左右の中央近傍に、互いに離隔した4箇所から、後方へ向けて4本のローラ受渡突起59が立設されている。後面板53における左右方向に関するローラ受渡突起59の立設位置は、
図4に示したように、フィードローラ35の位置とそれぞれ対応している。
【0094】
ローラ受渡突起59は、
図5(B)に断面を示したように、受渡突起58と比較して、全体的に類似した形状となっているものの、前後方向の長さがより長くなっている。またローラ受渡突起59の先端近傍には、傾斜面58Sと同様の傾斜面59Sが形成されている。
【0095】
このためローラ受渡突起59は、異物回収トレイ50が取付空間30T内に取り付けられた際に、その上面を収容空間30Sの底面30Bと同等の高さに合わせ、且つフィードローラ35の前上方を覆うことができる。これによりローラ受渡突起59は、収容空間30S内の紙幣がフィードローラ35に巻き込まれてしまうことを防止できる。
【0096】
ところで筐体30は、
図4におけるD1−D2断面図を
図10に示すように、収容空間30Sの下方における取付空間30Tの左側に異物案内空間30Uを形成している。異物案内空間30Uは、上方の収容空間30Sとの間に何ら遮蔽物が設けられておらず、連通されている。また異物案内空間30U内には、左右の中央側、すなわち取付空間30T側が低くなるよう傾斜された傾斜部45が形成されている。
【0097】
一方、可動側板31は、筐体30に対する取付位置が変更される場合、右側面31Aの移動範囲が最内位置P1及び最外位置P2の間となる。これに対し異物案内空間30U及び傾斜部45は、その左端が最外位置P2よりも左側(すなわち外側)に位置しており、且つその右端が最内位置P1よりも右側(すなわち内側)に位置している。換言すれば、可動側板31の右側面31Aは、当該可動側板31の取付位置に拘わらず、常に異物案内空間30U及び傾斜部45の上方に位置している。
【0098】
取付空間30Tに異物回収トレイ50が装着されると、異物案内空間30Uは、当該異物回収トレイ50の左面板54に形成された貫通孔54Hを介して、異物回収空間50Sとも連通される。この状態で収容空間30S内から異物案内空間30U内へ異物が落下してくると、この異物は、傾斜部45の上面に沿って右下方へ案内されていき、貫通孔54Hを介して異物回収空間50S内に到達する。
【0099】
このように傾斜部45は、収容空間30Sから異物案内空間30Uへ異物が落下してくると、傾斜を利用してこの異物を貫通孔54Hから異物回収空間50S内へ案内することができる。
【0100】
また収容空間30Sの下方における取付空間30Tの右側には、異物案内空間30Uと左右対称な異物案内空間30Vが形成されている。この異物案内空間30Vには、傾斜部45と左右対称な傾斜部46が形成されている。このため傾斜部46は、傾斜部45と同様、収容空間30Sから異物案内空間30Vへ異物が落下してくると、傾斜を利用してこの異物を貫通孔55Hから異物回収空間50S内へ案内することができる。
【0101】
因みに可動側板31と左右対称な可動側板32は、左側面32Aの移動範囲が最内位置P3及び最外位置P4の間となる。これに対し異物案内空間30V及び傾斜部46は、その右端が最外位置P4よりも右側(すなわち外側)に位置しており、且つその左端が最内位置P3よりも左側(すなわち内側)に位置している。すなわち可動側板32の左側面32Aは、当該可動側板32の取付位置に拘わらず、常に異物案内空間30V及び傾斜部46の上方に位置している。
【0102】
ところで、異物回収トレイ50における左面板54の前側に設けられた固定部61は、
図9に破線で示したように、左面板54の上部における前寄りの部分に対し、下方に吊り下げられるように取り付けられている。
【0103】
この固定部61は、
図10の一部を拡大した
図11(A)に示すように、左面板54の上部から内側(すなわち右側)に向けて短く伸びた接続部61Aと、当該接続部61Aから下方へ底面板51から僅かに離れた高さまで伸びた腕部61Bと、当該腕部61Bの下端から左方へ左面板54の左面と同等の位置まで伸びた端部61Cとを有している。
【0104】
端部61Cの上面には、上方へ突出するように直方体状の中間支持部61Dが形成されている。中間支持部61Dは、左右方向の長さが端部61Cと同等の小さな直方体となっている。この中間支持部61Dの左側面には、左面板54の左面よりも左方へ突出した突出部61Eが接合されている。
【0105】
突出部61Eは、中心軸を前後方向に向けた三角柱状に形成されており、その一面を中間支持部61Dの左側面と接合させることにより、残りの2側面を左斜め上向きの上傾斜面61F及び左斜め下向きの下傾斜面61Gとしている。また上傾斜面61F及び下傾斜面61Gの接合部分には頂部61Hが形成されている。
【0106】
ここで固定部61は、例えば樹脂材料により構成されており、加えられた外力に応じて弾性変形する。具体的に固定部61は、突出部61Eに対し右方向へ向かう外力が作用すると、主に腕部61Bを湾曲させて当該腕部61Bの下側を右方向へ変位又は回動させる。また固定部61は、この外力が開放されると、弾性力の作用により腕部61Bの下側を左方向へ変位又は回動させて、元の形状(
図11(A))に戻す。
【0107】
一方、
図11(B)に示すように、筐体30における異物案内空間30Uと取付空間30Tとの境界付近、すなわち傾斜部45の右端には、当該傾斜部45の先端が下方へ折れ曲がったような形状の被係合部47が形成されている。
【0108】
被係合部47は、その上面に傾斜部45の上面から継続して右側(すなわち内側)が低くなるよう傾斜された上傾斜面47Aが形成され、その右面にほぼ垂直な垂直面47Bが形成され、その下面に右側(すなわち内側)が高くなるよう傾斜された下傾斜面47Cが形成されている。この垂直面47B及び下傾斜面47Cは、頂部47Dにおいて接合されている。
【0109】
因みに異物回収トレイ50における右面板55の前側に設けられた固定部62は、固定部61と左右対称に形成されており、突出部61Eと左右対称な突出部62Eを有している。また筐体30における取付空間30Tの右側部分における異物案内空間30Vとの境界付近、すなわち傾斜部46の左端には、被係合部47と左右対称な被係合部48が形成されている。
【0110】
かかる構成により、異物回収トレイ50が筐体30の取付空間30Tに取り付けられる場合、当該異物回収トレイ50は、操作者M(
図1)等により、取付空間30Tの上方において概ね位置を合わせられ、下方へ移動される。
【0111】
この過程において、異物回収トレイ50の固定部61は、まず
図12(A)に示すように、突出部61Eの下傾斜面61Gを被係合部47の上傾斜面47Aに当接させる。ここで異物回収トレイ50に対し下方へ向かう力が加えられると、突出部61Eは、左面板54よりも左方へ突出しているため、被係合部47の上傾斜面47Aに対し下傾斜面61Gないし頂部61Hを右斜め下方へ滑らせながら、当該被係合部47に対し左方向へ向かう力を加えようとする。
【0112】
このとき固定部61は、被係合部47が変位しないため、当該被係合部47から突出部61Eを介して右方向への力を受け、これにより腕部61Bを湾曲させながら、当該突出部61Eを含む固定部61の下側部分を右方向へ移動又は回動させていく。すなわち突出部61Eは、左面板54の左面よりも右側へ徐々に移動していく。
【0113】
異物回収トレイ50が引き続き下方へ押し下げられると、突出部61Eは、頂部61Hを被係合部47の上傾斜面47Aにおける右端まで滑らせた後、
図12(B)に示すように、当該頂部61Hを垂直面47Bに当接させながら下方へ摺動させていく。このとき固定部61は、腕部61Bを湾曲させたままとなり、突出部61Eの頂部61Hから被係合部47の垂直面47Bに弾性力を作用させ続ける。
【0114】
異物回収トレイ50がさらに下方へ押し下げられると、突出部61Eは、頂部61Hを垂直面47Bの下端まで到達させた後、腕部61Bの弾性力により、上傾斜面61Fを被係合部47の頂部47Dに摺動させながら、徐々に左方向へ移動又は回動していく。
【0115】
その後、底面板51が支持部材30Jに当接すると、異物回収トレイ50は、取付空間30Tに装着された状態となる。このとき突出部61Eは、
図12(C)に示すように、腕部61Bを元の形状に戻させ、左面板54よりも左方へ突出した状態に戻ると共に、上傾斜面61Fを被係合部47の下傾斜面47Cに当接させた状態となる。
【0116】
この状態において、異物回収トレイ50を上方に持ち上げるには、上方に向けてある程度の力を加えることにより突出部61Eの上傾斜面61Fを被係合部47の頂部47Dに摺動させながら、右方向へ移動又は回動させること、すなわち突出部61Eが被係合部47と干渉しないように腕部61Bを湾曲させることが必要となる。
【0117】
このように固定部61は、異物回収トレイ50が取付空間30Tに装着された状態(
図12(C))において、突出部61Eを被係合部47に係合させている。このため固定部61は、異物回収トレイ50に上方へ向かうある程度大きな力が加えられない限り、当該異物回収トレイ50を取付空間30Tに装着された状態に維持すること、すなわち装着された位置に固定することができる。
【0118】
因みに固定部62は、異物回収トレイ50が取付空間30T内を下方へ押し下げられる間、固定部61と左右対称に動作することにより、突出部62Eを被係合部48に摺動させた後、当該突出部62Eを被係合部48に係合させて、当該異物回収トレイ50を取付空間30Tに固定することができる。
【0119】
一方、異物回収トレイ50が取付空間30T内に装着された状態(
図12(C))において、当該異物回収トレイ50に上方へ向かう力が加えられた場合、固定部61は、突出部61Eの上傾斜面61Fを被係合部47の頂部47Dに摺動させながら右方向へ移動又は回動させると共に、腕部61Bを湾曲させていく。
【0120】
その後固定部61は、異物回収トレイ50が上方へ持ち上げられると、
図12(B)に示したように、突出部61Eの頂部61Hを垂直面47Bに当接させながら上方へ摺動させ、やがて
図12(A)に示したように、腕部61Bの湾曲を戻して突出部61Eを被係合部47の上方に位置させる。
【0121】
このように固定部61は、異物回収トレイ50が取付空間30Tに対し上下方向に移動される際に、腕部61Bを適宜湾曲させながら、突出部61Eを被係合部47と当接及び摺動させるようになされている。
【0122】
[4.入金処理手順]
ところで紙幣処理装置1の制御部11は、入金処理を行う際、異物回収トレイ50の装着状態を確認した上で、紙幣の分離処理を行うようになっている。具体的に制御部11は、端末装置3(
図1)から入金処理の指示を受け付けると、
図13に示す入金処理手順RT1を開始し、ステップSP1へ移る。
【0123】
ステップSP1において制御部11は、トレイ検知部43からの検知信号を基に、異物回収トレイ50が取付空間30Tに装着されているか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは収容空間30Sに紙幣が投入されたとしても、当該紙幣を取付空間30Tに落下させてしまい正常に分離できない恐れがあることを表している。このとき制御部11は、次のステップSP2へ移る。
【0124】
ステップSP2において制御部11は、表示操作部15(
図2)に「異物回収トレイが未装着です」のようなメッセージを表示してこのことを操作者M(
図1)に通知し、異物回収トレイ50の装着を促した上で、再度ステップSP2を繰り返すことにより当該異物回収トレイ50の装着を待ち受ける。
【0125】
一方、ステップSP1において肯定結果が得られると、このことは収容空間30Sに紙幣が投入されたとしても取付空間30Tに落下させる恐れがなく、正常に分離処理を行い得ることを表している。このとき制御部11は、次のステップSP3へ移る。
【0126】
ステップSP3において制御部11は、入金口13に対し、ビルプレス33を後方へ移動させると共に各ローラを回転させることにより分離処理を行わせた後、次のステップSP4へ移って入金処理手順RT1を終了する。
【0127】
[5.効果等]
以上の構成において、紙幣処理装置1の入金口13は、収容空間30Sの下方に取付空間30Tを設け、上面が開放された異物回収トレイ50をこの取付空間30Tに装着するようにした。
【0128】
このため入金口13は、収容空間30S内に誤って異物が投入された際、この異物を異物回収トレイ50の異物回収空間50S内に落下させることができる。この場合、入金口13は、操作者M(
図1)等によって取付空間30Tから異物回収トレイ50を取り外させることにより、この異物を容易に回収させることができる。
【0129】
これにより紙幣処理装置1は、従来の紙幣処理装置101(
図14)のように筐体の最も手前側に入金口を配置する必要がなくなるため、出金口を手前側に配置する等、使い勝手を高めた配置を実現することができる。
【0130】
特に異物回収トレイ50は、前面板52及び後面板53を結ぶ前後方向に沿って複数の支持体56を離散的に配置し、且つ当該支持体56の上面を前面板52及び後面板53等の上面と同等の高さとした(
図6)。
【0131】
このため異物回収トレイ50は、取付空間30Tに装着された際に、支持体56の上面を収容空間30Sの底面30Bと同等の高さに合わせて当該底面30Bの一部とすることができる(
図8)。これにより異物回収トレイ50は、収容空間30S内に投入された紙幣の下辺を支持体56の上面により支持でき、当該紙幣を異物回収空間50S内に落下させることなく、収容空間30S内に止めることができる。
【0132】
これを換言すれば、異物回収トレイ50は、取付空間30Tに装着された際に、その上面を収容空間30Sにおける底面30Bの一部として機能させることができるので、当該異物回収トレイ50の他に、取付空間30Tを覆うと共に底部30Bの一部をなすような他の部品を別途設ける必要が無い。
【0133】
このため入金口13では、取付空間30Tに異物回収トレイ50を装着させるだけで収容空間30Sに紙幣を投入可能な状態とすることができ、また収容空間30Sの下方にある異物回収トレイ50を直接持ち上げさせるだけで、異物回収空間50S内に収容された異物を回収させることができる。
【0134】
さらに異物回収トレイ50は、前面板52及び後面板53の上端近傍に、左面板54、右面板55及び支持体56等と上面の高さを揃えた受渡突起57及び58を複数立設させた(
図6)。このため異物回収トレイ50は、収容空間30S内に投入された紙幣をビルプレス33により後方へ移動させていく際、当該紙幣の下辺を筐体30の前側底面30BFから支持体56等へ円滑に受け渡し、また支持体56等から後側底面30BRへ円滑に受け渡すことができる。
【0135】
特に受渡突起57は、左右方向の位置を左面板54、右面板55及び支持体56の位置と一致させるよう配置した(
図4、
図6)。このため受渡突起57は、ビルプレス33により後方へ移動する紙幣を支持体56へ受け渡す際に、当該紙幣における支持される位置を維持することができるので、安定的に受け渡すことができる。
【0136】
ところで異物回収トレイ50は、取付空間30Tに対する取付が不完全である場合や設計誤差が生じた場合、取付空間30Tに装着された際に、受渡突起57の上面が筐体30側における底面30Bよりもやや浮き上がってしまう可能性がある。この場合、異物回収トレイ50は、収容空間30S内に投入された紙幣がビルプレス33により底面30B上を摺動するように後方へ移動する際に、当該紙幣を受渡突起57の前端に引っかけてしまう可能性が考えられる。
【0137】
この点について受渡突起57は、その上面における前端近傍に傾斜面57Sを形成した(
図8)。このため受渡突起57は、収容空間30S内に投入された紙幣が後方へ移動する際に、当該紙幣を最初に傾斜面57Sに沿って徐々に乗り上げさせてから、その上面に沿って摺動させることができるので、前端に引っ掛けさせることなく、円滑に進行させることができる。
【0138】
さらに異物回収トレイ50は、後面板53におけるフィードローラ35と対応する位置に、ローラ受渡突起59をそれぞれ立設させた(
図5(B))。このため異物回収トレイ50は、フィードローラ35が回転する際の紙幣の巻き込みを未然に防止できる。
【0139】
また入金口13は、収容空間30Sの底面30Bを手前側が低くなるように傾斜させると共に、比較的前寄りに異物回収トレイ50を配置した(
図5(A))。このため入金口13では、収容空間30Sの底面30Bにおける比較的後ろ寄りの位置、すなわち後側底面30BR上に異物が落下したとしても、傾斜している後側底面30BRに沿って異物を前方へ滑らせて異物回収トレイ50の異物回収空間50S内に落下させることができる。
【0140】
因みに入金口13では、仮に前側底面30BFに異物が落下した場合には、入金処理の開始後にビルプレス33を後方へ移動させる際に、当該異物を紙幣と共に後方へ摺動させていき、異物回収トレイ50の上方に到達した時点で異物回収空間50S内に落下させることができる。
【0141】
ところで入金口13では、上述したように、投入される紙幣の大きさに合わせて、筐体30に対する可動側板31及び32の取付位置が左右方向に調整される。この可動側板31及び32は、筐体30に対する取付位置が調整された後、図示しない取付ねじ等により当該筐体30に固定され、その位置を容易に変化させないようになっている。
【0142】
このため入金口13では、可動側板31及び32が最も内側に位置しており、右側面31Aが最内位置P1にあり左側面32Aが最内位置P3にあるときにも、当該可動側板31及び32と干渉することなく異物回収トレイ50を取付空間30Tから取り外す必要がある。
【0143】
そこで異物回収トレイ50は、左右方向の長さを比較的短くし、左面板54及び右面板55を最内位置P1及びP3よりも内側にそれぞれ位置させることにより、可動側板31及び32の取付位置に拘わらず当該可動側板31及び32との干渉を防止することができる。
【0144】
その一方で入金口13では、可動側板31及び32が最も外側に位置しており、右側面31Aが最外位置P2にあり左側面32Aが最外位置P4にあるときに、異物回収トレイ50よりも左右の外側に落下した異物についても異物回収空間50S内に回収することが望ましい。
【0145】
そこで筐体30では、取付空間30Tの左右に、収容空間30Sと連通する異物案内空間30U及び30Vを形成すると共に、その下方に傾斜部45及び46を形成した。これに応じて異物回収トレイ50は、左面板54及び右面板55に貫通孔54H及び55Hをそれぞれ貫通させ、取付空間30Tに装着された際に、異物案内空間30U及び30Vと異物回収空間50Sとを連通させるようにした。
【0146】
このため入金口13では、異物回収トレイ50の左右外方である異物案内空間30U及び30V内に異物が落下したとしても、これを傾斜部45及び46の傾斜面に沿って滑降させて異物回収トレイ50側へ案内できるので、最終的に異物回収空間50S内に収容させることができる。
【0147】
すなわち入金口13では、筐体30側に異物案内空間30U及び30V並びに傾斜部45及び46を設けると共に、異物回収トレイ50の左面板54及び右面板55に貫通孔54H及び55Hを設けたことにより、可動側板31及び32の取付位置を左右に変更可能としながら、当該異物回収トレイ50の着脱機能の確保と左右の広い範囲からの異物の回収とを両立させることができる。
【0148】
さらに異物回収トレイ50は、左端に設けた固定部61において、腕部61Bを湾曲させて突出部61Eを内側へ移動又は回動させ得るようにし、取付空間30Tに装着される際に、この突出部61Eを筐体30側の被係合部47と当接又は摺動させるようにした。また異物回収トレイ50は、右端に設けた固定部62についても、固定部61と左右対称に構成した。
【0149】
これにより異物回収トレイ50は、取付空間30Tの上方から下方へ向けて押し込まれるだけで、突出部61E及び62Eを被係合部47及び48の下方に位置させて係合させることができ、装着された状態から容易に外れてしまうことが無い。
【0150】
その一方で異物回収トレイ50は、取付空間30Tに装着された状態からある程度の力により上方へ持ち上げられるだけで、突出部61E及び62Eと被係合部47及び48との係合を容易に解除できるので、操作者M(
図1)に係合状態を解除するための煩わしい作業を行わせる必要が無い。
【0151】
また制御部11は、入金処理(
図13)において、トレイ検知部43からの検知信号を基に取付空間30Tに異物回収トレイ50が装着されていることを確認できた場合のみ分離処理を開始するようにした。すなわち紙幣処理装置1は、仮に操作者Mが過誤や不注意により異物回収トレイ50を装着し忘れたまま、端末装置3から入金処理を指示してしまったとしても、当該異物回収トレイ50が装着されるまでは分離処理を開始しない。
【0152】
これにより紙幣処理装置1は、分離処理の開始後に紙幣を取付空間30Tに落下させて後方のピッカローラ40等に正しく押し付けることができずに分離処理を中断してしまう、といった障害の発生を未然に防止することができる。
【0153】
以上の構成によれば、紙幣処理装置1の入金口13は、収容空間30Sの下方に取付空間30Tを設け、上面が開放された異物回収トレイ50をこの取付空間30Tに装着するようにした。また異物回収トレイ50は、前面板52及び後面板53を結ぶ前後方向に沿って複数の支持体56を離散的に配置し、且つ当該支持体56の上面を前面板52及び後面板53等の上面と同等の高さとした。これにより入金口13は、収容空間30S内に誤って異物が投入された際、この異物を異物回収トレイ50の異物回収空間50S内に落下させることができ、また取付空間30Tから異物回収トレイ50を上方へ持ち上げさせて取り外させることにより、この異物を容易に回収させることができる。
【0154】
[6.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、異物回収トレイ50の支持体56を左右方向に薄い板状とする場合について述べた(
図6)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば支持体56に代えて上面近傍以外を省略した棒状の部材を設ける等、種々の形状でなる支持板を設けても良い。この場合、その上面を前面板52等と同等の高さの平面状とすることにより、取付空間30Tに取り付けられた際に、収容空間30Sにおける底面30Bの一部として紙幣を摺動させることができる。或いは、異物回収トレイ50の上面に板状の上面板を取り付け、当該上面板に比較的大きな複数の落下孔を穿設し、その残った部分を支持体としても良い。
【0155】
また上述した実施の形態においては、薄板状でなる支持体56の板面を左右方向に向け、その上面を前後方向を長手方向とする細長い長方形状とする場合について述べた(
図4、
図6)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば支持体56の上面を前後方向に対し傾斜させ、或いは湾曲させるようにしても良い。この場合、上面に沿って紙幣を前後方向へ摺動させる際に、当該紙幣が引っ掛かり難い形状であることが望ましい。
【0156】
さらに上述した実施の形態においては、支持体56同士の間隔を、最短紙幣BLSにおける長手方向の1/4よりも短くした場合について述べた(
図7)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣が長手方向に3等分するように折り畳まれる習慣がある国や地域において、支持体56同士の間隔を、最短紙幣BLSにおける長手方向の1/3よりも短くする等、支持体56同士の間隔を、最短紙幣BLSにおける長手方向の1/n(ただしnは2以上の自然数)よりも短くしても良い。またこの場合、異物回収トレイ50に設ける支持体56の枚数としては、4枚に限らず、3枚以下や5枚以上としても良く、さらにはその間隔を不等間隔としても良い。
【0157】
さらに上述した実施の形態においては、異物回収トレイ50における受渡突起57の左右方向に関する立設位置を、左面板54、右面板55及び支持体56の位置と合わせる場合について述べた(
図4、
図6)。しかしながら本発明はこれに限らず、受渡突起57を任意の位置に立設しても良い。またその数については、6本に限らず、5本以下や7本以上であっても良い。さらには、受渡突起57を省略しても良い。受渡突起58についても同様である。
【0158】
さらに上述した実施の形態においては、受渡突起57の上面を支持体56等の上面と同じ高さの平面状とし、その前端近傍に傾斜面57Sを形成した場合について述べた(
図8)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば受渡突起57の上面全体を、前面板52に対する取付部分から前側へ進むに連れて徐々に水平から傾斜角度が大きくなるように湾曲させた形状としても良い。要は、紙幣の下辺を前端や上面に引っ掛けること無く摺動させることができれば良い。受渡突起58についても同様である。
【0159】
さらに上述した実施の形態においては、取付空間30Tに取り付けられた状態における異物回収トレイ50の左面板54及び右面板55を、最内位置P1及びP3(
図10)よりも内側に位置させ、これらに貫通孔54H及び55Hを穿設し、さらに取付空間30Tの左右の外方に異物案内空間30U及び30V並びに傾斜部45及び46を設けた場合について述べた。
【0160】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば取付空間30Tに取り付けられた状態における異物回収トレイ50の左面板54及び右面板55を、最外位置P2及びP4の外側まで到達させ、貫通孔54H及び55Hを省略し、異物案内空間30U及び30V並びに傾斜部45及び46を省略しても良い。この場合、異物回収トレイ50を着脱する際には、筐体30から可動側板31及び32(
図10)を予め取り外すようにすれば良い。
【0161】
さらに上述した実施の形態においては、異物回収トレイ50に固定部61及び62を設け、これらを傾斜部45及び46の内側端部に形成した被係合部47及び48とそれぞれ係合させることにより、取付空間30Tに装着された異物回収トレイ50の位置を維持する場合について述べた(
図10、
図11、
図12)。
【0162】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば固定部61及び62に代えて周知の種々の係合機構を用いても良く、或いは固定部61及び62を省略し、異物回収トレイ50の自重や支持部材30Jの形状等により、取付空間30T内における位置を維持するようにしても良い。
【0163】
さらに上述した実施の形態においては、取付空間30Tに装着された異物回収トレイ50を支持する支持部材30J(
図5(A)、
図10)の上面における左右のほぼ中央に、機械式のスイッチでなるトレイ検知部43を配置した場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、トレイ検知部43を取付空間30T内若しくはその近傍における他の任意の位置に配置するようにしても良い。またトレイ検知部43としては、機械式のスイッチ以外にも、例えば光学式のセンサや磁気を利用したセンサ等を利用しても良い。この場合、異物回収トレイ50は、これらのセンサにより検知される部分を有していれば良い。
【0164】
さらに上述した実施の形態においては、制御部11の制御に基づいた入金処理手順RT1(
図13)において、トレイ検知部43の検知結果を基に、取付空間30Tに異物回収トレイ50が装着されていなければ分離処理を開始しないようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばトレイ検知部43を省略し、取付空間30Tに異物回収トレイ50が装着されているか否かに拘わらず分離処理を開始するようにしても良い。
【0165】
さらに上述した実施の形態においては、媒体としての紙幣を取り扱う紙幣処理装置1の入金口13に本発明を適用する場合について述べた。しかしながらこれに限らず、例えば各種証券や金券、或いは入場券のような紙葉状の媒体、若しくは種々の形状の媒体を取り扱う種々の装置において、当該媒体を取り込む取込口に本発明を適用するようにしても良い。
【0166】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0167】
さらに上述した実施の形態においては、筐体としての筐体30と、取付空間としての取付空間30Tと、異物収容器としての異物回収トレイ50と、支持体としての支持体56とによって媒体取込装置としての入金口13を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体と、取付空間と、異物収容器と、支持体とによって媒体取込装置を構成するようにしても良い。
【0168】
さらに上述した実施の形態においては、筐体としての筐体30と、取付空間としての取付空間30Tと、異物収容器としての異物回収トレイ50と、支持体としての支持体56と、取込部としてのビルプレス33、フィードローラ35、ゲートローラ37及びピッカローラ40と、制御部としての制御部11とによって媒体処理装置としての紙幣処理装置1を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体と、取付空間と、異物収容器と、支持体と、取込部と、制御部とによって媒体処理装置を構成するようにしても良い。