(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、車両等に配索されるワイヤーハーネスに関しては、単一のメインハーネスに対して複数のオプションハーネスが追加される場合が多い。しかしながら、上記特許文献1に記載されたプロテクタは、メインハーネスを保護する保護部の側壁に対して単一の保持部が接続された構成であり、複数のオプションハーネスを保持することができない。仮に、このプロテクタにおいて複数のオプションハーネスを保持する場合、前記保護部の側壁のうち前記保持部が接続されている部位とは異なる部位に別途複数の保持部(前記固定部及び前記保持片)を設ける必要があり、プロテクタの構造が複雑化することが避けられない。
【0006】
また、特許文献1に記載されたプロテクタでは、振動等によりオプションハーネスが前記保持部の受溝から離脱する場合がある。この場合、オプションハーネスが前記固定部及び前記保持部への衝突を繰り返し、これによりオプションハーネスが損傷するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、簡素な構造で複数のオプションハーネスが保持部から離脱しないようにこれらをまとめて保持することが可能なプロテクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、メインハーネスと前記メインハーネスに対して追加的に設けられるオプションハーネスとを含むワイヤーハーネスを保護するプロテクタであって、前記メインハーネスを保護する筒状の保護部と、特定方向に開口しており、前記オプションハーネスを保持可能な形状を有する複数の保持部と、前記複数の保持部を一括して覆う形状のカバーと、を有し、前記複数の保持部は、それぞれが前記保護部の外周面につながっており、かつ、前記保護部の周方向に沿って並んでおり、前記カバーは、当該カバーが前記複数の保持部を一括して覆う閉塞姿勢のときに各保持部の開口を通じて前記オプションハーネスが当該保持部から離脱するのを阻止するように各開口に対応する位置に設けられた阻止部を有するプロテクタを提供する。
【0009】
本発明では、複数の保持部が前記保護部の周方向に沿って並んでおり、前記カバーはそれら保持部を一括して覆う形状を有するので、簡素な構造で複数のオプションハーネスをまとめて保持することが可能となる。しかも、このカバーは、前記保持部の各開口と対応する位置に設けられた阻止部を有するので、当該カバーが複数の保持部を一括して覆う閉塞姿勢のときに各保持部の開口を通じて前記オプションハーネスが前記保持部から離脱するのが阻止される。
【0010】
この場合において、各保持部の開口は、前記周方向について同じ向きであることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、複数のオプションハーネスを各保持部に対して前記周方向の同じ側から装着することができるので、これらオプションハーネスを保持部に取り付けるときの作業効率が向上する。また、各保持部の開口が水平方向よりも上側を向く姿勢でオプションハーネスを各保持部に取り付けることにより、取り付け作業中における前記オプションハーネスの保持部からの離脱(落下)が抑制される。
【0012】
さらにこの場合において、各保持部は、前記保護部の厚み方向と平行な方向の寸法よりも前記保護部の周方向の寸法の方が大きく、かつ、前記オプションハーネスに含まれる複数の電線が前記保護部の周方向に沿って並ぶ形態で当該オプションハーネスを保持可能な形状を有することが好ましい。
【0013】
このようにすれば、単一の保持部内において前記オプションハーネスに含まれる複数の電線が前記保護部の周方向に沿って並ぶ形態で当該オプションハーネスが保持されるので、当該プロテクタが前記保護部の厚み方向へ大型化するのを避けながらオプションハーネスを効率よく保持することが可能となる。
【0014】
また、本発明において、各保持部は、当該保持部のうち前記保護部とつながった側と反対側の端部であって当該端部と前記保護部の外周面との間に前記開口を形成する先端部を有し、前記先端部は、前記オプションハーネスの径よりも小さな隙間をおいて前記保護部の外周面と対向するように前記保持部の他の部位よりも前記保護部の外周面側に突出する形状を有し、前記保持部は、前記先端部と前記保護部の外周面との隙間が前記オプションハーネスの径よりも大きくなるまで前記先端部が前記保護部の外周面から離間する方向に撓み変位するのを許容するように弾性変形可能であることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、各保持部への前記オプションハーネスの取付作業時において、前記カバーを前記閉塞姿勢とする前の段階で前記オプションハーネスが前記保持部に仮保持される。具体的には、前記保持部の先端部が前記保護部の外周面から離間する方向に変位する外力を加えることによって当該先端部と前記保護部の外周面との隙間が前記オプションハーネスの径よりも大きくなるまで当該保持部を弾性変形させた状態で前記オプションハーネスを当該保持部内に装着し、その後、前記外力を解除すると、当該保持部が弾性復帰することによってその先端部が前記オプションハーネスの径よりも小さな隙間をおいて前記保護部の外周面と対向するので、前記カバーを前記閉塞姿勢とする前の段階、すなわち、前記阻止部によって前記オプションハーネスの保持部からの離脱が阻止されていない段階であっても、前記オプションハーネスの前記保持部からの離脱が抑制された状態で前記オプションハーネスが保持部に保持(仮保持)される。よって、前記オプションハーネスを前記保持部へ取り付ける際の作業効率が向上する。
【0016】
また、本発明において、各保持部は、当該保持部のうち前記保護部とつながった側と反対側の端部であって当該端部と前記保護部との間に前記開口を形成する先端部が前記保護部の外周面に近付く接近方向に撓み変位するのを許容するように弾性変形可能であり、各阻止部は、前記カバーが前記閉姿勢のときに前記先端部が前記保護部の外周面に近付いて当該先端部と前記保護部の外周面との隙間が前記オプションハーネスの径よりも小さな状態に維持されるように前記先端部を前記接近方向に押圧するようにしてもよい。
【0017】
このようにすれば、カバーが閉塞姿勢のときに前記オプションハーネスが前記保持部内に拘束されるので、前記オプションハーネスの前記保持部からの離脱が有効に阻止される。
【0018】
あるいは、本発明において、各阻止部は、前記保持部の開口と前記周方向に対向しつつ当該開口を塞ぐ形状を有してもよい。
【0019】
このようにすれば、簡単な構造で効果的に前記オプションハーネスの前記保持部からの離脱が阻止される。
【0020】
また、本発明において、前記保護部、前記複数の保持部及び前記カバーが前記保護部の厚み方向に重なっている部分を当該厚み方向に貫通する貫通孔を有することが好ましい。
【0021】
このようにすれば、例えば、分岐部分を有するメインハーネスの装着が可能となる。具体的には、メインハーネスの分岐部分を前記貫通孔から導出することにより、分岐部分を有するメインハーネスがプロテクタに装着される。
【0022】
また、本発明において、前記保護部、前記複数の保持部及び前記カバーは、前記保護部の軸方向と直交する方向の断面形状がそれぞれ前記軸方向に沿って均一となるように押し出し成形により成形されていることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、押し出し成形品をその押し出し方向の長さが所定寸法となるように当該押し出し方向と直交する方向に沿って切断するだけで容易にプロテクタが成形される。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、簡素な構造で複数のオプションハーネスが保持部から離脱しないようにこれらをまとめて保持することが可能なプロテクタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態のプロテクタ10について、
図1から
図8を参照しながら説明する。まず、
図1を参照しながら、本実施形態のプロテクタ10の装着箇所について説明し、その後、
図2〜
図8を参照しながら当該プロテクタ10の構成について説明する。
【0027】
図1に示されるように、一般に、車両等には、主要な電子回路を構成するワイヤーハーネスであるメインハーネスWH1と、メインハーネスWH1に対して追加的に設けられるワイヤーハーネスである複数のオプションハーネスWH2とが配索されている。メインハーネスWH1は、主たる配索経路である主経路に配索されている。各オプションハーネスWH2は、その一部が前記主経路に配索されているメインハーネスWH1に沿うように配索されている。本実施形態のプロテクタ10は、主経路のうち両ハーネスWH1,WH2が隣接して配索される部分に装着される。
【0028】
具体的に、本実施形態のプロテクタ10は、
図2〜
図8に示されるように、メインハーネスWH1を保護する筒状の保護部20と、オプションハーネスWH2を保持する複数の保持部30と、カバー40とを備えている。本実施形態では、プロテクタ10は、押し出し成形により成形される。
【0029】
保護部20は、メインハーネスWH1の周囲を覆う第一本体22及び第二本体24と、第一係止部23と、第二係止部25と、第一本体22と第二本体24とを接続する可撓性を有するヒンジ部26と、メインハーネスWH1を挟持する挟持部28とを有する。
【0030】
第一本体22及び第二本体24は、本実施形態では円筒状に形成されている。第一本体22は、メインハーネスWH1の周囲のうちの一方側の側部を覆い、第二本体24は、メインハーネスWH1の外周のうちの他方側の側部を覆う。具体的には、各本体22,24は、円筒をその中心軸を通り当該中心軸方向と平行な面に沿って判割りにした形状を有する。第一本体22の周方向の一端側の端部には第一係合部22aが形成されており、第二本体24の周方向の一端側の端部には第一係合部22aと係合可能な形状の第二係合部24aが形成されている。第一本体22の周方向の他端側の端部と第二本体24の周方向の他端側の端部とはヒンジ部26を介して接続されている。第一本体22は、ヒンジ部26を支点として第二本体24に対して回動可能となっている。具体的には、第一本体22は、ヒンジ部26を支点として当該第一本体22の一端側の端部に形成された第一係合部22aが第二本体24の第二係合部24aに近付く方向及び第二係合部24aから離間する方向に変位することが可能となっている。両係合部22a,24aが互いに係合することにより保護部20は閉姿勢(
図4の姿勢)となり、この閉姿勢から両係合部22a,24aの係合が解除されることにより保護部20は開姿勢(
図3の姿勢)となる。
【0031】
第一係止部23は、第一本体22の外周面のうちヒンジ部26の近傍に形成されている。第一係止部23は、第一本体22の外周面から保護部20の径方向の外側に向かって突出する形状を有する。
【0032】
第二係止部25は、第二本体24の外周面のうちヒンジ部26の近傍に形成されている。第二係止部25は、第二本体24の外周面から保護部20の径方向の外側に向かって突出する形状を有する。
【0033】
挟持部28は、第一本体22及び第二本体24の内側でメインハーネスWH1の各本体22,24に対する相対位置を決定するように当該メインハーネスWH1をその径方向の両側から挟持する。挟持部28は、各本体22,24の内周面から前記径方向の内側に向かって突出するとともに前記径方向の外側に向かって凸となるように湾曲する形状を有する。挟持部28は、各本体22,24の内周面のうちヒンジ部26の近傍につながっている。
図4等に示されるように、挟持部28は、その先端部が各本体22,24の内周面に近付くように変位するのを許容するように弾性変形可能となっている。
【0034】
複数の保持部30は、保護部20の外側で当該保護部20の周方向に沿って並んでいる。各保持部30は、前記周方向に開口する形状を有する。具体的には、各保持部30の開口30aは、前記周方向について同じ向きとなっている。本実施形態では、第一本体22の外側に3つの保持部30が設けられており、第二本体24の外側に3つの保持部30が設けられている。ただし、保持部30の数はこれに限られない。第一本体22の外側に設けられた3つの保持部30のうち最もヒンジ部26の近傍に位置する保持部30は、第一係止部23とつながっており、第二本体24の外側に設けられた3つの保持部30のうち最もヒンジ部26の近傍に位置する保持部30は、第二係止部25とつながっている。各保持部30は、第一壁部32と、第二壁部34と、突部36とを有している。
【0035】
第一壁部32は、保護部20の外周面から径方向の外側に向かって突出する形状を有する。
図2及び
図5等に示されるように、第一壁部32の前記径方向の寸法は、オプションハーネスWH2に含まれる電線1本分の径よりも大きく、2本分の径よりも小さくなるように設定されている。
【0036】
第二壁部34は、第一壁部32の先端から前記周方向に沿って延びる形状を有する。第二壁部34の前記周方向の寸法は、第一壁部32の前記径方向の寸法よりも大きく、かつ、オプションハーネスWH2に含まれる電線2本分の径以上に設定されている。本実施形態では、オプションハーネスWH2に含まれる4本の電線が前記周方向に沿って並ぶ形態で保持されるように第二壁部34の前記周方向の寸法が設定されている。
【0037】
突部36は、第二壁部34の先端から前記径方向の内向きに突出する形状を有する。突部36と保護部20の外周面との間に前記開口30aが形成される。突部36は、当該突部36と保護部20の外周面との隙間をオプションハーネスWH2に含まれる電線1本分の径よりも小さくする形状を有する。換言すれば、突部36は、オプションハーネスWH2に含まれる電線1本分の径よりも小さな隙間をおいて保護部20の外周面と対向するように第二壁部34の先端から保護部20の外周面に向かって突出している。
【0038】
第二壁部34は、その先端が前記径方向に撓み変位するのを許容するように弾性変形可能となっている。より具体的には、第二壁部34は、その先端に接続された突部36と保護部20の外周面との隙間がオプションハーネスWH2に含まれる電線1本分の径よりも大きくなるまで当該突部36が保護部20の外周面から離間する方向(前記径方向の外側)に撓み変位するのを許容するように弾性変形可能であり、かつ、突部36が保護部20の外周面に近付く接近方向に撓み変位するのを許容するように弾性変形可能である。
【0039】
カバー40は、複数の保持部30を一括して覆う形状を有する。本実施形態のプロテクタ10は、第一本体22の外側に設けられた3つの保持部30をまとめて覆う第一カバー40Rと、第二本体22の外側に設けられた3つの保持部30をまとめて覆う第二カバー40Lとを有している。
【0040】
各カバー40R,Lは、各保持部の開口30aを露出させる開放姿勢(
図5の姿勢)と各保持部30を一括して覆う閉塞姿勢(
図6の姿勢)との間で切り換え可能となっている。各カバー40R,Lは、複数の保持部30をその外側から覆う形状のカバー本体42と、カバー本体42と保護部20とを接続する可撓性を有するヒンジ部44と、阻止部46とを有する。本実施形態では、カバー本体42は、各第二壁部34の外周面に沿う円弧形状に形成されている。
【0041】
第一カバー40Rにおけるカバー本体42の一端部は、ヒンジ部44を介して第一本体22の外周面に接続されている。具体的には、第一カバー40Rは、第一本体22の外側に設けられた3つの保持部30のうち最も第一係合部22aに近い位置に設けられた保持部30と第一係合部22aとの間に接続されている。第一カバー40Rのカバー本体42の他端部には、第一係止部23と係合可能な形状の第一被係止部42Rが形成されている。
図6に示されるように、第一被係止部42Rと第一係止部23とが互いに係合することにより第一カバー40Rは閉塞姿勢となる。
【0042】
第二カバー40Lにおけるカバー本体42の一端部は、ヒンジ部44を介して第二本体24の外周面に接続されている。具体的には、第二カバー40Lは、第二本体24の外側に設けられた3つの保持部30のうち最も第二係合部24aに近い位置に設けられた保持部30と第二係合部24aとの間に接続されている。第二カバー40Lのカバー本体42の他端部には、第二係止部25と係合可能な形状の第二被係止部42Lが形成されている。
図6に示されるように、第二被係止部42Lと第二係止部25とが互いに係合することにより第二カバー40Lは閉塞姿勢となる。
【0043】
阻止部46は、カバー本体42の内周面から内向きに突出する形状を有する。本実施形態では、阻止部46は、カバー本体42の内周面のうち当該カバー本体42が閉塞姿勢となったときに各第二壁部34の先端部(本実施形態では突部36)の外側面と対向する位置に設けられている。
図6に示されるように、各阻止部46は、カバー本体42が閉塞姿勢となったときに当該阻止部46と対応する第二壁部34の先端部を径方向の内向きに(第二壁部34の先端部が保護部20の外周面に近付く接近方向に)押圧する。この状態では、第二壁部34の先端部が保護部20の外周面に近付いて当該先端部と保護部20の外周面との隙間がオプションハーネスに含まれる電線1本分の径よりも小さな状態に維持される。
【0044】
次に、本実施形態のプロテクタ10にメインハーネスWH1及び複数のオプションハーネスWH2を装着する工程について説明する。
【0045】
まず、
図3に示されるように、保護部20を、第一本体22の第一係合部22aと第二本体24の第二係合部24aとの係合が解除された開姿勢にする。そして、メインハーネスWH1を両本体22,24間に挿入する。そして、第一係合部22aと第二係合部24aとを互いに係合させることによって保護部20を閉姿勢とする。このとき、本実施形態では、
図4に示されるように、挟持部28は、その先端部が各本体22,24の内周面に接触するように弾性変形する。なお、
図7に示されるように、メインハーネスWH1の径が各本体22,24の内径よりも小さい場合、挟持部28は、その先端部が前記径方向の外側に広がるように弾性変形するとともにその弾性復帰力でメインハーネスWH1を挟持する。
【0046】
続いて、
図5に示されるように、車種やグレードに応じて、必要な数(本実施形態では6本)のオプションハーネスWH2を各保持部30に装着する。具体的には、まず、第二壁部34の先端部が径方向の外側(先端部が保護部20の外周面から離間する離間方向)に変位する外力を加えることによって突部36と保護部20の外周面との隙間がオプションハーネスWH2に含まれる電線1本分の径よりも大きくなるまで当該保持部30を弾性変形させる。その状態で前記隙間を通じてオプションハーネスWH2に含まれる複数の(本実施形態では4本の)電線が前記周方向に並ぶ形態で当該オプションハーネスWH2を保持部30内に装着する。その後、前記外力を解除する。そうすると、保持部30の第二壁部34が弾性復帰することによってその先端部、すなわち突部36がオプションハーネスWH2に含まれる電線1本分の径よりも小さな隙間をおいて保護部20の外周面と対向する。この工程は、オプションハーネスWH2を開口30aを通じて保持部30内に押し込むことにより達成可能である。具体的には、オプションハーネスWH2に含まれる各電線が前記周方向に並ぶ形態で当該オプションハーネスWH2を突部36と保護部20の外周面との間に当接させ、その状態からオプションハーネスWH2を第一壁部32へ向かって押し込む。そうすると、突部36と保護部20の外周面との隙間がオプションハーネスWH2に含まれる電線1本分の径よりも大きくなるように第二壁部34が弾性変形するので、当該隙間を通じて保持部30内にオプションハーネスWH2が進入することが許容される。そして、オプションハーネスWH2に含まれるすべての電線が突部36を通過すると、突部36がオプションハーネスWH2に含まれる電線1本分の径よりも小さな隙間をおいて保護部20の外周面と対向するように第二壁部34が弾性復帰する。
【0047】
よって、カバー40を前記閉塞姿勢とする前の段階(
図5の段階)、すなわち、阻止部46によってオプションハーネスWH2の保持部30からの離脱が阻止されていない段階であっても、オプションハーネスWH2の保持部30からの離脱が抑制された状態でオプションハーネスWH2が保持部30に保持(仮保持)される。したがって、オプションハーネスWH2を保持部30へ取り付ける際の作業効率が向上する。
【0048】
その後、第一カバー40Rのヒンジ部44を中心として当該第一カバー40Rのカバー本体42を回動させることにより第一被係止部42Rと第一係止部23とを係合させるとともに、第二カバー40Lのヒンジ部44を中心として当該第二カバー40Lのカバー本体42を回動させることにより第二被係止部42Lと第二係止部25とを係合させる。これにより、各カバー40R,40Lは、各保持部30を一括して覆う閉塞姿勢となる(
図6を参照)。このとき、各阻止部46は、突部36が保護部20の外周面に近付いて当該突部36と保護部20の外周面との隙間がオプションハーネスWH2に含まれる電線1本分の径よりも小さな状態に維持されるようにこの突部36を前記径方向の内向き(突部36が保護部20の外周面に近付く接近方向)に押圧する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のプロテクタ10では、複数の保持部30が保護部20の周方向に沿って並んでおり、カバー40はそれら保持部30を一括して覆う形状を有するので、簡素な構造で複数のオプションハーネスWH2をまとめて保持することが可能となる。しかも、カバー40が各保持部30を一括して覆う閉塞姿勢となったときに各阻止部46が突部36を前記径方向の内向きに押圧するので、オプションハーネスWH2が保持部30内に拘束される。したがって、各保持部の開口30aを通じてオプションハーネスWH2が保持部30から離脱するのが有効に阻止される。
【0050】
また、本実施形態では、各保持部の開口30aは、前記周方向について同じ向きになっているので、複数のオプションハーネスWH2を各保持部30に対して前記周方向の同じ側から装着することができる。よって、これらオプションハーネスWH2を保持部30に取り付けるときの作業効率が向上する。また、各保持部の開口30aが水平方向よりも上側を向く姿勢でオプションハーネスWH2を各保持部30に取り付けることにより、取り付け作業中におけるオプションハーネスWH2の保持部30からの離脱(落下)が抑制される。
【0051】
さらに、各保持部30は、オプションハーネスWH2に含まれる複数の電線が前記周方向に沿って並ぶ形態で当該オプションハーネスWH2を保持可能な形状を有するので、当該プロテクタ10が保護部20の厚み方向(径方向)へ大型化するのを避けながらオプションハーネスWH2を効率よく保持することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、保護部20、複数の保持部30及びカバー40は、前記軸方向と直交する方向の断面形状がそれぞれ前記軸方向に沿って均一となるように押し出し成形により成形されている。よって、押し出し成形品をその押し出し方向(軸方向)の長さが所定寸法となるように当該押し出し方向と直交する方向に沿って切断するだけで容易に本プロテクタ10が成形される。
【0053】
なお、本実施形態では、各保持部の開口30aが前記周方向について同じ向きである例が示されたが、
図8に示されるように、互いに隣接する一対の保持部30の開口30a同士が前記周方向に対向するようにしてもよい。この場合、カバー40が前記閉塞姿勢となったときに互いに周方向に隣接する第二壁部34の先端間にまたがる形状の阻止部で両先端の外側面を前記径方向の内向きに押圧してもよい。
【0054】
(第二実施形態)
図9及び
図10は、本発明の第二実施形態のプロテクタの構成を示している。なお、第二実施形態では、第一実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第一実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0055】
本実施形態の阻止部48は、保持部の開口30aと前記周方向に対向しつつ当該開口30aを塞ぐ形状を有する。具体的には、阻止部48は、カバー本体42の内周面のうち第二壁部34の先端と対向する部位よりも前記周方向について第二壁部34の先端から僅かに離間した位置から前記径方向の内向きに延びて各保持部の開口30aと前記周方向に対向する形状を有する。
【0056】
このように、本実施形態では、簡単な構造で効果的にオプションハーネスWH2の保持部30からの離脱が阻止される。
【0057】
なお、本実施形態では、カバー40が前記閉塞姿勢となった状態において当該カバー40が各保持部30から離間している。そのため、カバー40が前記閉塞姿勢となった状態において第二壁部34は弾性変形しておらず、また、カバー40には第二壁部34の反力が作用していない。
【0058】
また、本実施形態においても、
図10に示されるように、互いに隣接する一対の保持部30の開口30a同士が前記周方向に対向するようにしてもよい。この場合、カバー40が前記閉塞姿勢となったときに互いに周方向に隣接する開口30a間に介在する形状の阻止部で両開口30aを一括して塞いでもよい。
【0059】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0060】
例えば、上記実施形態では、単一の保持部30に一本(一束)のオプションハーネスWH2が保持された例が示されたが、単一の保持部30に複数のオプションハーネスWH2が保持されてもよい。
【0061】
また、
図11に示されるように、保護部20、複数の保持部30及びカバー40が前記径方向に重なっている部分(本実施形態ではプロテクタ10の軸方向の略中央)を前記径方向に貫通する貫通孔10aが形成されてもよい。なお、この貫通孔10aは、例えば、トムソン刃で打ち抜くことにより形成される。
【0062】
このようにすれば、例えば、分岐部分を有するメインハーネスWH1の装着が可能となる。具体的には、メインハーネスWH1の分岐部分を貫通孔10aから導出することにより、分岐部分を有するメインハーネスWH1がプロテクタ10に装着される。
【0063】
また、保持部30の突部36は省略されてもよい。つまり、第二壁部34に外力が作用しておらずこの第二壁部34が弾性変形していない状態における当該第二壁部34の先端と保護部20の外周面との隙間がオプションハーネスWH2に含まれる電線1本分の径よりも大きくてもよい。この場合、第二壁部34は、その先端の外側面が阻止部46によって前記径方向の内向きに押圧されたときに当該先端と保護部20の外周面との隙間をオプションハーネスWH2に含まれる電線1本分の径よりも小さくするように弾性変形するように構成される。
【0064】
また、上記実施形態では、保護部20が円筒状である例が示されたが、保護部20の形状は、メインハーネスWH1の周囲を覆うことが可能であれば円筒状に限られない。例えば、保護部20は、四角筒等の多角筒状であってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、各保持部30は、第一壁部32及び第二壁部34を有する例が示されたが、保持部30の形状はこれに限られない。例えば、各保持部30は、その一端が保護部20の外周面につながっており、当該一端から他端(先端)に向かって次第に保護部20の外周面から離間する形状であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、プロテクタ10が押し出し成形により成形された例が示されたが、プロテクタ10は、射出成形等によって成形されてもよい。