【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例1について
図1〜
図14に基づいて説明する。
図1,
図2に示すように、本実施例に係る多気筒エンジン(以下、エンジンという)Eは、4つのシリンダがクランク軸方向に直列状に配設され、吸気系と排気系とが気筒配列方向に対して互いに向かい合うように配設された直列4気筒エンジンである。このエンジンE1は、車両前部のエンジンルーム(図示略)内に、気筒配列方向が車幅方向と平行になるように配置され、吸気系が車体前方に面し、各気筒のシリンダ軸が上下方向に向くように搭載されている。尚、以下の説明では、左側から順に第1〜第4気筒C1〜C4として説明する。
【0021】
エンジンEは、シリンダボア13の周囲を囲むウォータジャケット11が形成されたシリンダブロック1と、吸気ポート22や排気ポート23等の周囲を囲むウォータジャケット21(ヘッド側ウォータジャケット)が形成されたシリンダヘッド2と、シリンダブロック1とシリンダヘッド2との間に介装された金属製のガスケット3と、ウォータジャケット11内に配置されたスペーサ4等を備えている。
【0022】
まず、シリンダブロック1について説明する。
図1〜
図3に示すように、シリンダブロック1は、アルミニウム合金製オープンデッキ型シリンダブロックで構成され、ピストン(図示略)を摺動自在に夫々収容する4つのシリンダライナ12が左右方向(気筒配列方向)に直線状に隣接したサイアミーズ型シリンダライナと、各シリンダライナ12によって夫々形成された4つのシリンダボア13を備えている。サイアミーズ型シリンダライナは、鋳鉄により一体形成され、環状のウォータジャケット11によって囲繞されている。ウォータジャケット11は、平面視にて隣り合うシリンダボア13の間、所謂サイアミーズ部に対応した3ヶ所にくびれを備えた略長円形状を形成している。
【0023】
シリンダブロック1には、冷却水をウォータジャケット11内の第1気筒C1の中段部相当位置に導入するための冷却水導入口14が設けられている。冷却水は、ウォータポンプ81によってシリンダブロック1の外部からウォータジャケット11内に導入される。
冷却水導入口14は、スペーサ4の冷却水導入口14に対応した部分における接線方向と冷却水の導入方向とが交差する位置、具体的には、第1気筒C1の中段部相当位置に対応したスペーサ4の壁部に対して左斜め前側から冷却水を導入可能な位置に設けられている。
【0024】
それ故、冷却水導入口14からウォータジャケット11内に導入された冷却水は、第1気筒C1に対応したスペーサ4の壁部に衝突して跳ね返った後、所望の進行方向である右方へ流れる大半(例えば約70%)の冷却水と、その反対の左方へ流れる一部(例えば約30%)の冷却水との2方向へ分流される。
尚、スペーサ4の冷却水導入口14に対応した部分における接線方向と冷却水の導入方向との交差角度は、エンジンEの仕様に基づく冷却水の分流比率に応じて適宜設定可能である。
【0025】
次に、シリンダヘッド2について説明する。
図1〜
図3に示すように、シリンダヘッド2は、アルミニウム合金で形成され、各気筒C1〜C4毎に吸排気ポート22,23、プラグポート26、動弁機構及びインジェクタ(何れも図示略)等を備えている。
ウォータジャケット21は、各気筒C1〜C4の吸排気ポート22,23やプラグポート26等の周囲を覆うように左端部分から右端部分に亙って気筒配列方向全体に形成されている。シリンダヘッド2には、左端部にシリンダブロック1のウォータジャケット11からシリンダヘッド2のウォータジャケット21内へ冷却水を導入するための冷却水導入口24が設けられ、右端部にウォータジャケット21からシリンダヘッド2の外部へ冷却水を導出するための冷却水導出口25が設けられている。
【0026】
次に、ガスケット3について説明する。
図2に示すように、板金製のガスケット3は、シリンダブロック1のウォータジャケット11にスペーサ4が挿入された状態でシリンダブロック1の上端部分に重ね合わせられ、シリンダブロック1とシリンダヘッド2とを締結ボルト(図示略)により締結することで固定される。
【0027】
図4,
図5に示すように、ガスケット3は、4つのシリンダボア13に対応した4つのボア開口部31と、複数のボルト用穴32と、シリンダヘッド2の冷却水導入口24に対応して形成された前後1対の冷却水開口部33と、各シリンダボア13の間のサイアミーズ部に対応した3組の前後1対の第1連通部34と、各気筒C1〜C4のボア開口部31の後側に形成された円形の複数の第2連通部35と、ガスケット3の外縁部分を全周に亙ってシールするための第1ビード部36と、各ボルト用穴32回りをシールするための複数の第2ビード部37とを備えている。
【0028】
複数の第2連通部35は、第1〜第4気筒C1〜C4のボア開口部31の気筒配列直交方向後側部分に設けられている。第2,第3気筒C2,C3のボア開口部31の後側部分には、気筒配列直交方向後側部分の第2連通部35に加えてその左側近傍部にも第2連通部35が設けられている。第4気筒C4のボア開口部31の後側部分には、気筒配列直交方向後側部分の第2連通部35に加えてその左右方向両側近傍部にも第2連通部35が設けられている。冷却水開口部33は、第1連通部34や第2連通部35よりも開口面積が大きく、前後1対の冷却水開口部33が形成する総面積は、第1連通部34と第2連通部35が形成する総面積よりも大きくなるように設定されている。
これにより、前後1対の冷却水開口部33と3組の前後1対の第1連通部34と複数の第2連通部35とを介してウォータジャケット11の冷却水をウォータジャケット21へ流すため、シリンダヘッド2の冷却性能を維持することができる。また、前後1対の冷却水開口部33から第1連通部34や第2連通部35よりも大量の冷却水を流すため、ウォータジャケット11内の冷却水を所望の進行方向である右方へ誘導することができる。
【0029】
次に、スペーサ4について説明する。
図1に示すように、スペーサ4は、シリンダボア13の外周を囲繞してウォータジャケット11の外側壁との間に冷却水を流すための流路S(隙間)を形成している。
スペーサ4は、高温に耐え得る耐熱性と、冷却水の水圧によって変形や破損が生じない剛性を備えた合成樹脂、例えばポリアミド系熱可塑性樹脂(PA66,PPA等)、オレフィン系熱可塑性樹脂(PP)等の樹脂を1つ又は複数種類組み合わせて射出成形可能であり、必要に応じてガラス繊維を配合しても良い。
【0030】
図2,
図6〜
図13に示すように、スペーサ4は、サイアミーズ部に対応した3ヶ所にくびれを備えた略長円形状の本体壁部41と、本体壁部41からシリンダボア13に対して反対側へ張り出す上側フランジ部42と、この上側フランジ部42よりも下方において本体壁部41からシリンダボア13に対して反対側へ張り出す下側フランジ部43と、この下側フランジ部43よりも下方に形成された段付壁部44等を備えている。
【0031】
図6〜
図13に示すように、本体壁部41には、冷却水導入口14に対応した部分の上部から冷却水の導入方向上流側に向かって左斜め前方に延びる整流部51と、冷却水導入口14に対応した部分の下部から冷却水の導入方向上流側に向かって左斜め前方に延びるガイド部52と、各シリンダボア13の間のサイアミーズ部に対応した3ヶ所のくびれ部分に夫々形成された6つの導入部53等が設けられている。
【0032】
整流部51は、本体壁部41の上端近傍部に設けられ、冷却水導入口14から導入された冷却水が本体壁部41から跳ね返ることで生じる水平軸回りの上側旋回流の発生を防止している。整流部51は、冷却水の導入方向に対向する上下方向に延びる壁部51aを備え、所定の容積を占めるように直方体状に構成されている。整流部51は、上方に開放した桶状に形成され、整流部51の底壁には、上下方向に連通した連通孔51bが設けられている。これにより、上下方向の旋回流を所定の容積を用いて確実に堰き止めることができるため、右方へ流れる冷却水に乱れを発生させることなく、また、上下方向の旋回流の堰き止めに伴う圧力損失の発生を最小限に抑えることができる。
【0033】
図6,
図8,
図10,
図12に示すように、ガイド部52は、
スペーサ43の下端から上方へ離隔した位置で本体壁部41の下部に設けられ
て下側フランジ43に連なっており、冷却水導入口14から導入された冷却水が本体壁部41から跳ね返ることで生じる水平軸回りの下側旋回流の発生を防止している。
ガイド部52は、板状に形成されている。これにより、上下方向の旋回流を簡単な構造で堰き止めることができるため、右方へ流れる冷却水の乱れの発生を抑えることができる。
【0034】
各導入部53は、本体壁部41の上端近傍部に設けられ、燃焼室に近いピストン上死点側のサイアミーズ部に右方へ流れる冷却水を積極的に誘導することによって、シリンダブロック1の冷却能率を増加している。これらの導入部53は、本体壁部41からシリンダボア13側へ断面略楔状に凹入するように夫々形成されている。
図6〜
図11に示すように、導入部53のシリンダボア13側端部には、スペーサ4の外周を流れる冷却水を隣り合うシリンダボア13の間のくびれ部に向けて流通させるための流通部53aが設けられている。流通部53aは、ガスケット3に形成された第1連通部34の直下方位置において導入部53のシリンダボア13側端部の上端部分を一部切り欠いて形成している。これにより、スペーサ4の外周側から流通部53aを通過した冷却水はシリンダボア13間のサイアミーズ部
(くびれ部)へ水平状に流れ、その後、第1連通部34を介してサイアミーズ部を冷却した冷却水はシリンダヘッド2へ流れるように案内される。
【0035】
上側フランジ部42は、整流部51の上端部に連なると共に本体壁部41の上端部に沿って全周に亙って略水平状に延び、冷却水を流すための流路Sの上壁及び導入部53の上壁を形成している。上側フランジ部42の上端には、上方へ延びる縦フランジ部61が形成されている。この縦フランジ部61は、第1気筒C1の左側部分と前側部分、第2,第3気筒C2,C3の前側部分、第4気筒C4の前側部分の一部及びシリンダボア13間のサイアミーズ部に夫々設けられている。
【0036】
図6〜
図8,
図10〜
図12に示すように、第1気筒C1の左側部分の縦フランジ部61には、左方へ張り出した張出し部62が形成されている。張出し部62には、ガスケット3に形成された前後1対の冷却水開口部33に対応して前後1対の開口部62aが設けられている。前後1対の開口部62aは、上下方向に貫通された大小2つの連通用開口で夫々構成されている。これにより、各気筒C1〜C4のシリンダボア13の外周を右回りに流れて張出し部62の下方に到達した冷却水と第1気筒C1のシリンダボア13の外周を左回りに流れて張出し部62の下方に到達した冷却水は、1対の開口部62aと1対の冷却水開口部33とを夫々流通し、冷却水導入口24からシリンダヘッド2のウォータジャケット21内に導入される。
【0037】
図5に示すように、縦フランジ部61の一部は、ガスケット3に形成された第2連通部35に対応するように設けられ、縦フランジ部61の一部の上端部が、第2連通部35の中心に対してシリンダボア13側に位置するように配設されている。
これにより、スペーサ4の外周側の冷却水の流れをスペーサ4の内周側の冷却水の流れよりも促進できるため、スペーサ4の外周側を流れる冷却水の流速と流量を確保し、スペーサ4の外周側の下端からスペーサ4の内周側へ回り込む冷却水を抑制することができる。
【0038】
図6〜
図13に示すように、下側フランジ部43は、ガイド部52の上端部に連なると共に本体壁部41の下部に沿って全周に亙って延び、冷却水を流すための流路Sの下壁を形成している。下側フランジ部43は、第1気筒C1に対応した第1下側フランジ部43aと、第2〜第4気筒C2〜C4に対応した第2下側フランジ部43bと、第1下側フランジ部43aと第2下側フランジ部43bとを連結する前側傾斜部43c及び後側傾斜部43dとを備えている。
【0039】
第1下側フランジ部43aは、第1気筒C1と第2気筒C2との間の前側サイアミーズ部近傍から後側サイアミーズ部近傍まで第1気筒C1を囲繞するように略水平状に延び、第2下側フランジ部43bは、第1下側フランジ部43aよりも上方
にオフセットした位置において第1気筒C1と第2気筒C2との間の前側サイアミーズ部近傍から後側サイアミーズ部近傍まで第2〜第4気筒C2〜C4を囲繞するように略水平状に延びている。
【0040】
前側傾斜部43cは、第1下側フランジ部43aの前側端部と第2下側フランジ部43bの前側端部とを略傾斜状に連結している。後側傾斜部43dは、第1下側フランジ部43aの後側端部と第2下側フランジ部43bの後側端部とを略傾斜状に連結している。
これにより、ウォータジャケット11に導入された冷却水は、本体壁部41とウォータジャケット11の外壁部と上側フランジ部42と下側フランジ部43とによって形成された流路Sを流れる。また、右方に流れる大半の冷却水は、流路面積が前側傾斜部43cによって可及的に絞られるため、流路Sを流れる冷却水の流速と流量が増加され、これにより流通部53aに誘導される冷却水量が増加されている。
【0041】
段付壁部44は、本体壁部41とウォータジャケット11の外壁部との隙間を狭くすることで、スペーサ4の外周側の下端からスペーサ4の内周側へ回り込む冷却水を抑制し、流路Sを流れる冷却水の流速低下を防止している。
この段付壁部44は、本体壁部41の下端部からウォータジャケット11の外壁部に接近するようにシリンダボア13に対して反対方向へ延びて本体壁部41とウォータジャケット11の外壁部との隙間を狭くするように形成されている。
段付壁部44は、前側部分に、複数の縦リブ71と、貫通孔72とを備えている。
【0042】
図6〜
図10に示すように、複数の縦リブ71は、段付壁部44の上端部から下側フランジ部43の下端部まで両者を連結するように上下方向に延びている。これら複数の縦リブ71は、第2気筒C2に対応した縦リブ71数(例えば3本)が第3気筒C3に対応した縦リブ71数(例えば2本)よりも多く、第3気筒C3に対応した縦リブ71数が第4気筒C4に対応した縦リブ71数(例えば1本)よりも多くなるように設定している。
貫通孔72は、寒冷地用エンジンヒータ(図示略)を挿入するための開口である。この貫通孔72は、第4気筒C4の前側下部に対応した位置に形成されている。
【0043】
次に、エンジンEの冷却装置の冷却水経路について説明する。
この冷却水経路は、シリンダヘッド2の冷却水導出口25とシリンダブロック1の冷却水導入口14へ冷却水を供給するウォータポンプ81とを接続する経路L1と、経路L1の途中部に接続されたバルブユニット82と、バルブユニット82よりも下流側の経路L1に配設された温度センサ84aと、バルブユニット82とラジエータ83の導入部とを接続する経路L2と、ラジエータ83の導出部と温度センサ84aよりも下流側の経路L1とを接続する経路L3と、経路L3に配設された温度センサ84bと、バルブユニット82と温度センサ84bよりも下流側の経路L3とを接続する経路L4と、経路L4の途中部に配設されたATFウォーマ85と、経路L4の途中部にATFウォーマ85と並列状に配設された補助ウォータポンプ86及び空調用ヒータユニット87等を備えている。ATFウォーマ85は、冷却水と自動変速機用オイル(ATF)との熱交換機構である。
【0044】
バルブユニット82は、経路L1に夫々並列接続された第1流量制御弁88と、第2流量制御弁89と、サーモスタット弁90とを備えている。
第1,第2流量制御弁88,89は、制御装置(図示略)によって制御され、温度センサ84aの検出値に基づいて流通する冷却水量を制御している。
サーモスタット弁90は、冷却水温度が高温となったとき開作動するように設定され、バルブユニット82の第1,第2流量制御弁88,89が全閉状態で故障したときのフェルセーフ機構を構成している。第1流量制御弁88の導出部とサーモスタット弁90の導出部とは、経路L2に接続され、第2流量制御弁89の導出部は、経路L4に接続されている。
【0045】
暖機モードでは、第1,第2流量制御弁88,89及びサーモスタット弁90を閉作動してエンジンの早期暖機を促進している。このモードでは、経路L1を循環する冷却水量が抑えられている。
半暖機モードでは、第1流量制御弁88及びサーモスタット弁90を閉作動し、第2流量制御弁89を開作動して冷却水の早期昇温を促進している。
完全暖機モードでは、第1,第2流量制御弁88,89及びサーモスタット弁90を開作動して冷却水温度の安定維持を図っている。
【0046】
次に、実施例1に係るエンジンEの冷却装置の作用・効果について説明する。
このエンジンEの冷却装置によれば、冷却水がシリンダボア13の燃焼室側部分に直接接触することを防止できるため、シリンダボア13の昇温促進を図ることができ、暖機完了を早期化できる。上側フランジ部42と下側フランジ部43とでスペーサ4の外周を流れる冷却水の流路面積を制限して流通部53aを通過する冷却水の流速を上昇できるため、シリンダボア13間を流通する冷却水量を確保でき、冷却性能を向上することができる。しかも、冷却水の進行を、シリンダボア13と反対側へ張り出す上側フランジ部42及び下側フランジ部43と流通部53aとによって誘導するため、スペーサ4の構造の簡単化を図ることができる。
【0047】
上側フランジ部42の少なくとも一部の上端から上方へ延びる縦フランジ部61を設けたため、スペーサ4の外周側からスペーサ4の内周側へ上側から回り込む冷却水を抑制することができ、一層シリンダボア13の昇温促進を図ることができる。
ウォータジャケット11とウォータジャケット21との間にガスケット3が介装され、ガスケット3にウォータジャケット11からウォータジャケット21へ冷却水を流すための第1,第2連通部34,35を設け、縦フランジ部61の上端部を第1,第2連通部34,35の中心に対してシリンダボア13側に位置するように配設している。
これにより、スペーサ4の外周側の冷却水の流れをスペーサ4の内周側の冷却水の流れよりも促進してスペーサ4の外周側を流れる冷却水の流速と流量を確保するため、シリンダボア13間を流通する冷却水量確保とスペーサ4の外周側の下端からスペーサ4の内周側へ回り込む冷却水の抑制とを図ることができる。
【0048】
スペーサ4のうちの下側フランジ部43よりも下方へ離隔した下端側部分に、スペーサ4とウォータジャケット11の外側壁との隙間を狭くするための段部付壁部44を形成したため、スペーサ4の外周側からスペーサ4の内周側へ下側から回り込む冷却水を抑制することができ、一層シリンダボア13の昇温促進を図ることができる。
下側フランジ部43と段部付壁部44との間に上下方向に延びる複数の縦リブ71を設けている。これにより、スペーサ4の下端側部分において気筒配列方向に流れる冷却水の流通を抑制するため、上側フランジ部42及び下側フランジ部43で形成された流路Sを流れる冷却水の流通を促進し、スペーサ4の外周側からスペーサ4の内周側へ下側から回り込む冷却水を一層抑制できる。
【0049】
ウォータジャケット11内に冷却水を導入する冷却水導入口14よりも下流側位置で且つスペーサ4の下部にスペーサ4を内外方向に貫通する貫通孔72を形成したため、貫通孔72を設けても、スペーサ4の内周側へ流通する冷却水を最小限に抑制できる。
ウォータジャケット11に連通されたウォータジャケット21と、このウォータジャケット21から外部に冷却水を導出する冷却水導出口25と、この冷却水導出口25の下流側に設けられた温度センサ84aとを備え、温度センサ84aによって検出された冷却水温に応じてウォータジャケット11内に導入する冷却水量を切換えている。これにより、温度によって冷却水量を制御するため、暖機促進と冷却促進とを効率的に実行することができる。
【0050】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、水平状の上側フランジ部と下側フランジ部の前側傾斜部とによって流路面積を制限した例を説明したが、少なくとも上側フランジ部と下側フランジ部との離隔距離を減少させれば良く、上側フランジ部と下側フランジ部の両フランジ部に傾斜部を設けても良い。また、傾斜部に代えて上側フランジ部と下側フランジ部との離隔距離を減少させる湾曲部を設けることも可能である。
【0051】
2〕前記実施例においては、冷却水の約70%が右回りに流れ、残り約30%が左回りに流れる例を説明したが、少なくとも、スペーサの冷却水導入口に対応した部分における接線方向と冷却水の導入方向とが平行でなければ良く、左回りに流れる冷却水の分配比率を右回りに流れる冷却水の分配比率よりも大きくしても良い。冷却水の分配比率はエンジンの仕様によって適宜設定可能である。
【0052】
3〕前記実施例においては、直列4気筒エンジンの例を説明したが、少なくとも、気筒配列方向に冷却水を流すウォータジャケットを備えているエンジンであれば適用可能であり、3気筒エンジンやV型エンジン等にも適用することができる。
【0053】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。