(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
上記直動回動装置は、例えば、工場等で物品を搬送する天井搬送車に設けられる。天井搬送車は、レール支持体から吊り下げられた走行レール上を走行自在な走行部が設けられ、走行部に支持された物品支持部が、物品を把持する把持部と、把持部を昇降駆動する昇降駆動部とを備え、把持部を下降させた状態で、物品を授受する授受箇所との間で搬送対象の物品を授受するように構成されている。そして、把持部にて把持する物品の平面視での位置及び姿勢が授受箇所に適したものとなるように、直動回動装置により物品支持部の平面視での位置及び姿勢を調整することで、授受箇所に対して物品を適正に授受できるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1の直動回動装置は、物品支持部が上下方向に沿う移動軸心周りに回動自在なピニオンギヤと一体回動自在に設けられ、そのピニオンギヤは、対向する一対のラックギヤに挟まれる状態となっている。一対のラックギヤの夫々は、ネジ軸の回転によってネジ軸に沿って移動操作されるブロックに取り付けられ、ネジ軸の回転に伴ってネジ軸の回転軸心に沿う方向(第1方向)に移動自在となっている。そして、一対のラックギヤの夫々が連結された各ブロックは、ネジ軸の夫々と螺合しており、これらのネジ軸を回転駆動するモータが一対のネジ軸に対応して一対設けられている。
ちなみに、このような直動回動装置を用いて、物品支持部を第1方向に沿って移動させるときには、一対のラックギヤを、物品支持部の移動量に応じた移動量だけ同じ向きに移動させるべく、2つのモータを回転駆動させる。また、物品支持部を上下方向に沿う移動軸心周りで回動させる場合には、一対のラックギヤの夫々の移動量を異ならせるように2つのモータの回転を制御する。これにより、一対のラックギヤの移動量の差に応じて物品支持部を回動させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1の直動回動装置は、物品支持部の第1方向に沿う移動と、物品支持部の上下方向に沿う移動軸心周りの回動と、を実現するに当たり、2つの駆動部が必要となる。しかしながら、直動回動装置に対して駆動部を2つ設けると、装置が大型化したり、直動回動装置の重量が重くなったりする問題がある。このような直動回動装置の大型化や重量の増加の問題は、天井搬送車においては特に顕著となるものであった。
【0006】
このため、物品支持部の第1方向に沿う移動と、その移動軸心周りの回動との双方を実現できながらも、大型化や重量の増加を抑制できる直動回動装置の実現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明にかかる直動回動装置は、物品を支持する物品支持部を直線状の第1方向に沿って移動させかつ前記物品支持部を前記第1方向に直交する移動軸心周りで回動させるものであって、
前記物品支持部が一体的に設けられた被操作部材と、前記被操作部材を前記移動軸心周りに回動自在に支持しかつ前記被操作部材を前記第1方向に沿って移動自在に支持する支持部と、駆動部によって前記第1方向に沿って移動操作される直線移動体と、が設けられ、前記被操作部材は、前記移動軸心に沿う方向視で前記移動軸心から離れた部分において前記直線移動体と連結され、前記被操作部材の前記移動軸心周りの回動を規制しかつ前記被操作部材の前記第1方向に沿う移動を許容する直動状態と、前記被操作部材の前記移動軸心周りの回動を許容しかつ前記被操作部材の前記第1方向に沿う移動を規制する回動状態とに切換え自在な動作状態切換部とが設けられている点に特徴を有する。
【0008】
すなわち、被操作部材の移動軸心周りの回動を規制しかつ被操作部材の第1方向に沿う移動を許容する直動状態として直線移動体を第1方向に沿って移動操作することで、被操作部材を第1方向に沿って移動操作することができる。このため、被操作部材と一体的に設けられた物品支持部を第1方向に沿って移動操作することができる。
また、被操作部材の移動軸心周りの回動を許容しかつ被操作部材の第1方向に沿う移動を規制する回動状態として直線移動体を第1方向に沿って移動操作することで、被操作部材を移動軸心周りで回動させることができる。このため、被操作部材と一体的に設けられた物品支持部を移動軸心周りで回動させることができる。
【0009】
このように、直線移動体の第1方向に沿う移動操作のための単一の駆動部を備えることで、物品支持部の第1方向に沿う移動と、物品支持部の移動軸心周りでの回動との双方を実行することができる。そのため、直動回動装置の大型化や重量の増加を抑制できる。
このように、物品支持部の第1方向に沿う移動と、物品支持部の上下方向に沿う移動軸心周りの回転との双方を実現できながらも、その大型化や重量の増加を抑制できる直動回動装置を実現できる。
【0010】
本発明に係る直動回動装置の実施形態においては、前記駆動部は、回転軸心が前記第1方向に沿う姿勢となるように配設されたネジ軸と、当該ネジ軸を軸心周りに回転駆動する回転モータと、を備え、前記直線移動体は、前記ネジ軸の回転に伴って前記第1方向に沿って移動操作されるように前記ネジ軸に取付けられていることが好ましい。
【0011】
すなわち、直線移動体が回転モータによって回転駆動されるネジ軸によって第1方向に沿って移動操作されるから、直線移動体の第1方向に沿う移動量を精度よく調整することができる。
このため、直線移動体の移動操作によって物品支持部の第1方向に沿う移動と物品支持部の上下方向に沿う移動軸心周りの回転とを実現するに当たり、物品支持部の第1方向に沿う移動量と、物品支持部の上下方向に沿う移動軸心周りの回転量とを、精度よく調整することができるものとなる。
【0012】
本発明に係る直動回動装置の実施形態においては、前記駆動部及び前記動作状態切換部の作動を制御する制御部が設けられ、前記制御部が、前記動作状態切換部を前記直動状態として前記駆動部を作動させることで前記物品支持部を前記第1方向に沿って移動させる直動駆動制御と、前記動作状態切換部を前記回動状態として前記駆動部を作動させることで前記物品支持部を移動軸心周りで回動させる回動制御と、を実行自在に構成されていることが好ましい。
【0013】
すなわち、制御部により、動作状態切換部の切換え状態と駆動部の作動とを制御して、物品支持部の直動と回動とを自動的に切換えることができ、使い勝手の良い直動回動装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の直動回動装置を天井搬送車に適用した場合について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、天井搬送車1は、天井に設けられたレール支持体2Sから吊り下げられた走行レール2上を走行自在な走行部11と、走行部11から吊り下げ支持される本体部12とを備えている。走行部11は、走行レール2上を転動する走行車輪Wと、その走行車輪Wを回転駆動する走行駆動部M4とを備えている。
天井搬送車1は、半導体基板を収納した容器Bを搬送対象の物品として、複数の処理装置の授受箇所(以降、ステーションと称する)の間で容器Bを搬送するように構成されている。処理装置では、半導体基板の製造途中での半製品等に対して所定の処理を行うように構成されている。
【0016】
本体部12は、走行部11の走行方向の前後にカバー部12Cを備えており、
図1に示す如く、側面視で下方に開口したC字状に形成されている。本体部12は水平姿勢の支持板12Sにて上下に区切られており、支持板12Sの下方側に容器Bを支持する物品支持部Sを備え、支持板12Sの上方側に、後述する直動回動装置が設けられている。なお、直動回動装置は、物品支持部Sを直線状の第1方向に沿って移動させかつ物品支持部Sを第1方向に直交しかつ上下方向に沿う移動軸心周りで回動させるために用いられるものである。
【0017】
物品支持部Sは、容器Bを把持する把持部30と、把持部30を昇降駆動する昇降駆動部35とを備えている。
把持部30は、把持部駆動部M3によって互いに接近離間方向に移動自在な把持用揺動体31を備えている。把持用揺動体31は、把持部駆動部M3の駆動によって接近状態とされることによって、容器Bにおける容器本体Bhの上端に取り付けられているフランジBfと係合する形態で容器Bを把持するようになっている。また、把持用揺動体31は、把持部駆動部M3の駆動によって離間状態とされることによって、フランジBfとの係合を解除して容器Bを把持状態から解放するようになっている。
なお、把持部駆動部M3から把持用揺動体31への駆動力の伝達は、例えば送りネジ機構やクランク機構等の既知の機構を用いて実現されており、説明は省略する。また、把持部30が容器Bを安定して把持できるように、把持用揺動体31とフランジBfとは、平面視で規定された設定係合位置関係となる形態で係合するように構成されている。
【0018】
また、昇降駆動部35には、昇降駆動部M2が支持されている。昇降駆動部M2は、昇降用モータとその昇降用モータにて回転駆動される昇降用ドラムが備えられ、当該昇降用ドラムにて巻き取り又は繰り出しされるワイヤ19aの他端が把持部30に接続されている。把持部30は昇降駆動部35からワイヤ19aによって吊り下げ支持される状態となっており、昇降用モータの正転駆動又は逆転駆動によって、把持部30を上昇又は下降させることができるようになっている。
【0019】
次に、本実施形態の直動回動装置を、
図1〜3に基づいて説明する。
支持板12Sには、平面視で走行部11の走行方向に直交するスリットが設けられ、そのスリットの開口端部に沿って、直動用支持体23の移動を案内するガイドレール12Gが設けられている。直動用支持体23は、
図2又は
図3に示すように、矩形状に形成されている。平面視で直動用支持体23における走行部11の走行方向前後に対向する辺が、ガイドレール12Gの起立部12Gaと当接する状態となっており、これにより、直動用支持体23は平面視においてガイドレール12Gに対する姿勢を維持して移動自在となっている。また、直動用支持体23の底面部は、ガイドレール12Gの水平部上面との摩擦が小さい状態となるように構成されている。具体的には、直動用支持体23の底面部にベアリングボールを支持する構造としているが、例えば直動用支持体23の底面部を摩擦係数の小さい材質にて構成してもよい。
本実施形態において、ガイドレール12Gによる直動用支持体23の案内方向が第1方向に相当する。
【0020】
また、直動用支持体23には、本体部L1aとロックピンL1bとを備えて構成された第1ロック機構L1が取り付けられている。第1ロック機構L1は、ロックピンL1bを突出状態としてガイドレール12Gの起立部12Gaと当接させることによって、直動用支持体23のガイドレール12Gに対する相対移動を規制するロック状態とすることができる。また、第1ロック機構L1は、ロックピンL1bを引退状態としてガイドレール12Gから離間させることによって、直動用支持体23のガイドレール12Gに対する相対移動を許容する解放状態とすることができる。
【0021】
また、直動用支持体23は、平面視でほぼ中央に回動軸部22を回動自在に支持している。回動軸部22の下端には、昇降駆動部35が固定されている。したがって、昇降駆動部35は、直動用支持体23に対して回動軸部22を回動軸心として相対回動自在に支持されている。
【0022】
支持板12Sにおいて走行部11の走行方向の一方側の端部には、ネジ軸12Bが、その回転軸心がガイドレール12Gに沿う姿勢(すなわち、第1方向に沿う方向)となるようにネジ軸支持体12Dにて回転自在に支持されている。また、支持板12S上には、ネジ軸12Bを回転駆動する回転モータMKが設けられている。さらに、ネジ軸12Bには、当該ネジ軸12Bと螺合する雌ねじを有し、ネジ軸12Bの回転に伴ってネジ軸12Bに沿って移動自在なブロック体21aが備えられている。したがって、ブロック体21aは、ネジ軸12Bの回転に伴って第1方向に沿って移動操作されるようにネジ軸12Bに取付けられている。ブロック体21aは、上方に、後述する連結部材24の長孔部24hと係合する係合ピン21bを備えている。
【0023】
連結部材24は、回動軸部22と一体に回動するように連結されており、平面視において、回動軸部22を回動中心として回動自在となっている。また、連結部材24と回動軸部22との間には、それらの相対回動を許容する解放状態と相対回動を規制するロック状態とに切換え自在な電磁ブレーキ式の第2ロック機構L2が設けられている。
本実施形態において、回動軸部22の軸心が移動軸心に相当し、連結部材24が被操作部材に相当し、ブロック体21aが直線移動体に相当し、ガイドレール12G及び直動用支持体23が支持部に相当し、回転モータMK及びネジ軸12Bから構成される位置調整用駆動部M1が駆動部に相当する。
すなわち、物品支持部Sが一体的に設けられた連結部材24と、連結部材24を回動軸部22の軸心周りに回動自在に支持しかつ連結部材24を第1方向に沿って移動自在に支持するガイドレール12G及び直動用支持体23と、回転モータMK及びネジ軸12Bによって第1方向に沿って移動操作されるブロック体21aと、が設けられ、連結部材24は、回動軸部22の軸心に沿う方向視で回動軸部22の軸心から離れた部分においてブロック体21aと連結されている。
【0024】
続いて、本実施形態における制御構成を説明する。
天井搬送車1には、その各部の作動を制御する制御部Hが設けられている。制御部Hは例えばマイクロコンピュータにて構成され、制御プログラムを記憶するとともに必要に応じてそのプログラムを演算装置にロードして実行自在に構成されている。また、制御部Hには、位置調整用駆動部M1、昇降駆動部M2、把持部駆動部M3、走行駆動部M4、並びに、第1ロック機構L1、及び、第2ロック機構L2が通信自在に接続され、それら夫々の作動を制御するように構成されている。
なお、図示はしないが、天井搬送車に搬送指令を指令する上位管理装置が制御部Hと相互に通信自在に設けられており、制御部Hは、上位管理装置からの搬送指令を受け取って、目的のステーションに対応する走行位置まで走行部11を移動させるべく走行駆動部M4を作動させる走行制御、その走行位置において、把持部30を昇降させるべく昇降駆動部M2を作動させる昇降制御、把持部30における把持用揺動体31を離間状態又は接近状態とすべく把持部駆動部M3を作動させて容器BのフランジBfの把持状態を切換える把持状態切換え制御を実行自在に構成されている。
【0025】
図4のフローチャートに示すように、制御部Hは、上位管理装置から、物品支持部Sを第1方向に沿ってスライド移動させることを指令するスライド指令を受けると(ステップ#1)、第2ロック機構L2をロック状態として連結部材24の回動軸部22の軸心周りの回動を規制しかつ第1ロック機構L1を開放状態として連結部材24の第1方向に沿う移動を許容する状態となるように第1ロック機構L1及び第2ロック機構L2の作動を制御する(ステップ#2)。そして、その状態において、スライドの終了が指令されるまで(ステップ#4:Yes)位置調整用駆動部M1を駆動してネジ軸12Bを回転させる(ステップ#3)。これにより、
図5に示すように、連結部材24がブロック体21aの移動に伴って、平面視で回動軸部22の軸心周りでの回動姿勢を維持したまま移動することになり、直動用支持体23が第1方向に沿って移動する。したがって、物品支持部Sの回動軸部22の軸心周りでの回動姿勢を維持したまま、直動用支持体23に支持される回動軸部22及びその回動軸部22の下端に支持される物品支持部Sを第1方向に沿って移動させることができる。
本実施形態において、ステップ#2及びステップ#3に係る制御が、直動駆動制御に相当する。
【0026】
また、制御部Hは、上位管理装置から、物品支持部Sを回動軸部22の軸心周りに回動させるべく回動指令を受けると(ステップ#5)、第2ロック機構L2を開放状態として連結部材24の回動軸部22の軸心周りの回動を許容しかつ第1ロック機構L1をロック状態として連結部材24の第1方向に沿う移動を規制する状態となるように第1ロック機構L1及び第2ロック機構L2の作動を制御する(ステップ#6)。そして、その状態において、回動の終了が指令されるまで(ステップ#4:Yes)位置調整用駆動部M1を駆動してネジ軸12Bを回転させる(ステップ#7)。これにより、
図6に示すように、ブロック体21aの移動に伴って、直動用支持体23が第1方向に沿う方向における位置を維持したまま、連結部材24が平面視で回動軸部22の軸心周りで回動することになり、回動軸部22がその軸心周りで回動する。したがって、直動用支持体23の第1方向に沿う位置を維持したまま、物品支持部Sを回動軸部22の軸心周りで回動させることができる。
本実施形態において、ステップ#2及びステップ#3に係る制御が、回動制御に相当する。
【0027】
すなわち、本実施形態においては、第1ロック機構L1及び第2ロック機構L2が動作状態切換部Lに相当し、第2ロック機構L2をロック状態としかつ第1ロック機構L1を開放状態とした状態が直動状態に相当し、第2ロック機構L2を開放状態としかつ第1ロック機構L1をロック状態とした状態が回動状態に相当する。そして、制御部Hは、第1ロック機構L1及び第2ロック機構L2の作動を制御することで、直動状態と回動状態とを切換えることができる。
【0028】
また、制御部Hは、第1ロック機構L1及び第2ロック機構L2を直動状態として位置調整用駆動部M1を駆動しネジ軸12Bを回転させることで、物品支持部Sを前記第1方向に沿って移動させる直動駆動制御と、第1ロック機構L1及び第2ロック機構L2を回動状態として位置調整用駆動部M1を駆動しネジ軸12Bを回転させることで、物品支持部Sを回動軸部22の軸心周りで回動させる回動制御と、を実行するように構成されている。
【0029】
つづいて、本実施形態の天井搬送車を用いて容器Bの搬送を行う場合の制御を説明する。本実施形態においては、図示は省略するが、物品支持部S(具体的には把持部30)にて支持する容器Bを授受するステーションが、平面視で走行レール2に沿い、かつ、物品支持部Sの下方となる位置に設けられている。
制御部Hは、上位管理装置からの搬送指令に基づき、容器Bを搬送元のステーションにて掬い移載し、搬送先のステーションにて卸し移載するべく、搬送元のステーション又は搬送先のステーションに対応する走行位置に走行部11を走行移動させ、その走行位置に走行部11を停止させた状態で掬い移載又は卸し移載を行う。以下の説明では、搬送元のステーションに対応する位置への走行部11の走行移動、及び、搬送元のステーションに対応する位置から搬送先のステーションに対応する位置への走行部11の走行移動についての説明は省略し、搬送元のステーションや搬送先のステーションを容器Bの移載対象のステーションとして、当該移載対象のステーションにおける移載動作を中心に説明する。
【0030】
ステーションにおいては、容器Bを支持するときの平面視での姿勢が規定されている(移載用規定姿勢と称する)が、ステーションに支持された容器Bを掬うべく把持部30を下降させた場合において、ステーションに支持された容器BのフランジBfの位置と把持部30の把持用揺動体31との位置関係が上述した設定係合位置関係とならない場合がある。また、逆に、容器Bをステーションに卸すべく把持部30を下降させた場合において、容器Bの平面視での姿勢がステーションにおける移載用規定姿勢とならない場合がある。
【0031】
このような場合において、掬い時にステーションに支持された容器BのフランジBfの位置と把持部30の把持用揺動体31との位置関係を設定係合位置関係とすべく、又は、卸し時に容器Bの平面視での姿勢をステーションにおける移載用規定姿勢とすべく、制御部が、直動駆動制御及び回動制御を実行する。このため、制御部Hは、掬い時にステーションに支持された容器BのフランジBfの位置と把持部30の把持用揺動体31との位置関係を設定係合位置関係とするために必要な移動量(物品支持部Sを第1方向に沿って移動させる直動移動量と、物品支持部Sを回動軸部22の軸心周りで回動させる回転移動量)と、卸し時に容器Bの平面視での姿勢をステーションにおける移載用規定姿勢とするために必要な移動量(物品支持部Sを第1方向に沿って移動させる直動移動量と、物品支持部Sを回動軸部22の軸心周りで回動させる回転移動量)とを、ステーションごとに記憶している。なお、上記掬い時における移動量と卸し時における移動量とは等しいため、制御部Hは、各ステーションに対して単一の移動量(物品支持部Sを第1方向に沿って移動させる直動移動量と、物品支持部Sを回動軸部22の軸心周りで回動させる回転移動量)を記憶することになる。
【0032】
図7のフローチャートに示すように、制御部Hは、上位管理装置から搬送指令を受けると(ステップ#11)、制御部Hに記憶しているそのステーションに対応する直動移動量と回転移動量とについての情報を取得する(ステップ#12)。
そして、取得した直動移動量に基づいて、上述した直動移動制御を実行し(ステップ#13)、取得した回動移動量に基づいて、上述した回動制御を実行する(ステップ#14)。
その後、昇降駆動部M2を作動させて把持部30を下降させ(ステップ#15)、把持状態切換制御を実行する(ステップ#16)ことになる。このとき、直動移動制御及び回動制御によって、ステーションに支持された容器BのフランジBfの位置と把持部30の把持用揺動体31との位置関係が設定係合位置関係となっている、又は、容器Bの平面視での姿勢がステーションにおける移載用規定姿勢となっているため、ステーションにおける容器Bの授受が適正に行える。
【0033】
引き続き、制御部Hは、昇降駆動部M2を作動させて把持部30を上昇させ(ステップ#17)、ステップ#12にて取得した回動移動量に基づいて、ステップ#14において物品支持部Sを回動軸部22の軸心周りで回動させた回動量と同じ回動量だけ逆方向に物品支持部Sを回動させるべく回動制御を実行し(ステップ#18)、ステップ#12にて取得した直動移動量に基づいて、ステップ#13において物品支持部Sを第1方向に沿って移動させた移動量と同じ移動量だけ逆方向に物品支持部Sを移動させるべく直動移動制御を実行する(ステップ#19)。
これにより、物品支持部Sを、容器Bを搬送する際に平面視で当該容器Bが位置するべき位置に対応する搬送用設定位置に戻すことができる。
【0034】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、駆動部をネジ軸12Bとそれを回転させる回転モータMKとから構成し、直線移動体を、ネジ軸12Bと螺合してネジ軸12Bの回転によって移動操作されるブロック体21aとする構成を示したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、直線ガイドに沿って移動自在な直線移動体をクランク機構によって第1方向に沿って移動操作する構成としてもよい。この場合、クランク機構が駆動部となる。また、第1方向に沿って循環駆動自在なチェーンによって直線移動体を第1方向に沿って移動操作する構成としてもよい。この場合、チェーンが駆動部になる。また、支持板12Sに第1方向に沿ってラックギヤやチェーン等を敷設し、直線移動体を、そのラックギヤやチェーンと噛合うピニオンギヤと、当該ピニオンギヤを回転駆動するモータとを備える形態で構成してもよい。この場合、駆動部が直線移動体に備えられることになる。
【0035】
(2)上記実施形態では、動作状態切換部Lを、第1ロック機構L1及び第2ロック機構L2の2つのロック機構から構成する例を示したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、
図8〜
図10に示すように、動作状態切換部Lを単一のロック機構L3によって構成することもできる。ロック機構L3は本体部L3aとロックピンL3bとを備え、本体部L3aが直動用支持体23に取付固定されている。本体部L3aは直動用支持体23における回動軸部22とガイドレール12Gの起立部12Gaとの間に設置され、ロックピンL3bは、回動軸部22側に突出する状態と、ガイドレール12Gの起立部12Ga側に突出する状態とに切換えることができる。
ロックピンL3bを、回動軸部22側に突出した状態としたときには、
図9に示すように、ロックピンL3bが回動軸部22と当接して回動軸部22が直動用支持体23に対して回動しないように固定する。したがって、回動軸部22と一体回動するように取り付けられている連結部材24の回動軸部22の軸心周りの回動を規制することになる。また、このとき、ロックピンL3bはガイドレール12Gの起立部12Gaとは離間しているので、連結部材24の第1方向に沿う移動を許容することとなる。このようにして、直動状態が実現できる。
【0036】
さらに、ロックピンL3bを、ガイドレール12Gの起立部12Ga側に突出した状態としたときには、
図10に示すように、ロックピンL3bがガイドレール12Gの起立部12Gaと当接して直動用支持体23の第1方向に沿う移動を規制する。また、このとき、ロックピンL3bは回動軸部22とは離間しているので、回動軸部22は直動用支持体23に対して回動することができる。したがって、回動軸部22と一体回動するように取り付けられている連結部材24の回動軸部22の軸心周りの回動を許容することになる。このようにして、回動状態が実現できる。
【0037】
(3)上記実施形態では、直動回動装置を天井搬送車1の把持部の平面視での姿勢を調整するために用いる構成を説明したが、本発明の直動回動装置は、天井搬送車1に限らず、直動状態と回動状態とを現出させることが必要な様々な装置に対して適用することが可能である。また、上記実施形態では、物品支持体が、半導体基板を収納した容器Bを物品として、当該容器Bを搬送のために支持するものである場合を説明したが、物品支持体は、例えば、工具や治具等を支持するために用いられるものであってもよい。また、容器B、工具又は治具等は、上記実施形態で説明したように把持部にて把持されるものではなく、物品支持体に固着されるものであってもよい。
【0038】
(4)上記実施形態では、上位管理装置から搬送指令を受けた場合に、把持部30を下降させたのちに直動移動制御及び回動制御を実行し、かつ、直動移動制御及び回動制御を実行したのちに把持部30を上昇させる構成を例示したが、把持部30の下降又は上昇と、直動移動制御及び回動制御との順序は逆であってもよい。また、直動移動制御と回動制御とのいずれを先に行ってもよい。
【0039】
(5)上記実施形態では、移動軸心を第1方向と平面視で直交する(すなわち上下方向に沿う)形態で備える直動回動装置を例示したが、移動軸心の沿う方向はこれに限定されるものではない。すなわち、移動軸心を第1方向と水平方向視で直交する(すなわち水平方向に沿う)形態としたり、水平方向又は上下方向から傾斜した方向に沿わせる形態としてもよい。