特許第6052155号(P6052155)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052155
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   H01R13/631
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-257779(P2013-257779)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-115250(P2015-115250A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 詩朗
(72)【発明者】
【氏名】椋野 潤一
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−234744(JP,A)
【文献】 特開2011−034825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/631
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
係止面と支持面とを有する本体側部材と、
相手側部材と、
前記係止面に係止された状態で前記支持面にフローティング支持されるハウジングと、
前記ハウジング内に保持される本体側端子と、
前記相手側部材に固定され、前記本体側端子と雄雌嵌合される相手側端子と、を備え、
前記ハウジングの外周面に、前記係止面に係止される複数の可撓片が設けられており、
前記複数の可撓片の各々は前記ハウジングの外周面から延びる弾性アームであり、
前記弾性アームの各々は、前記ハウジングの外周面に沿って延びる第1アーム部と、該第1アーム部から外側に突出するとともに該第1アーム部に対して傾斜する傾斜面が設けられた第2アーム部と、を有し、
前記第2アーム部における前記傾斜面側が前記支持面によって支持されているとともに、前記第2アーム部における前記傾斜面よりも先端側に設けられた上部端面が前記係止面に係止可能とされていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
インバータとモータとの間を接続する請求項1に記載のコネクタであって、
前記本体側部材が前記インバータ側に設けられたインバータ側端子台であるとともに、前記本体側端子が前記インバータと電気的に接続されたインバータ側端子とされ、
前記相手側部材は、前記モータ側に設けられたモータ側端子台であるとともに、前記相手側端子が前記モータと電気的に接続されたモータ側端子とされることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータとモータとの間を接続するコネクタにおいて、フローティング支持される部材の内部に端子が収容されたコネクタが知られている(特許文献1参照)。上記特許文献1に記載のコネクタは、コネクタハウジングと、端子である電気接触部を収容する支持部材と、を備えている。この支持部材は、コネクタハウジングに設けられた一対の係合アームと係合することで、コネクタハウジング内にフローティング支持されて取り付けられている。
【0003】
このようにフローティング支持される部材の内部に端子が収容されたコネクタでは、フローティング支持される部材内の端子と相手側の端子との間を嵌合する際に両端子間の相対位置が位置ずれした場合、フローティング支持される部材が摺動することで、その位置ずれが吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−225488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のようなコネクタでは、通常、端子を収容するための各部材が合成樹脂製とされ、金型を用いた射出成形によって形成される。上記特許文献1に記載のコネクタでは、コネクタハウジング内に支持部材が取り付けられるため、コネクタハウジングが支持部材よりも大きな部材とされ、射出成形における冷却時のコネクタハウジングの熱収縮率が支持部材の熱収縮率よりも大きなものとなる。
【0006】
また、上記特許文献1に記載のコネクタでは、コネクタハウジングが支持部材よりも大きな部材とされることで、コネクタハウジングを射出成形するために使用する金型が支持部材を射出成形するために使用する金型よりも大きなものとなり、コネクタハウジングを射出成形するために必要となる樹脂量も大きなものとなる。
【0007】
このようにコネクタハウジングを射出成形する際の熱収縮率や必要となる樹脂量が大きくなることで、コネクタハウジングを射出成形する際にコネクタハウジングに設けられる係合アーム等の可撓片の寸法公差が大きなものとなる虞がある。係合アーム等の可撓片の寸法公差が大きくなると、端子間を嵌合する際に両端子間の相対位置が位置ずれした場合、その位置ずれを吸収できる量が減少し、コネクタハウジングに対する支持部材の取り付け精度が低下する虞がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みて創作されたものであって、フローティング支持されるハウジングの取り付け精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコネクタは、係止面と支持面とを有する本体側部材と、相手側部材と、前記係止面に係止された状態で前記支持面にフローティング支持されるハウジングと、前記ハウジング内に保持される本体側端子と、前記相手側部材に固定され、前記本体側端子と雄雌嵌合される相手側端子と、を備え、前記ハウジングの外周面に、前記係止面に係止される複数の可撓片が設けられており、前記複数の可撓片の各々は前記ハウジングの外周面から延びる弾性アームであり、前記弾性アームの各々は、前記ハウジングの外周面に沿って延びる第1アーム部と、該第1アーム部から外側に突出するとともに該第1アーム部に対して傾斜する傾斜面が設けられた第2アーム部と、を有し、前記第2アーム部における前記傾斜面側が前記支持面によって支持されているとともに、前記第2アーム部における前記傾斜面よりも先端側に設けられた上部端面が前記係止面に係止可能とされていることを特徴とする。
【0010】
上記のコネクタによると、ハウジングに設けられた複数の可撓片を本体側部材の係止面に係止させ、ハウジングを本体側部材の支持面にフローティング支持させることで、ハウジングを本体側部材に容易に取り付けることができる。ここで、本体側部材は、当該本体側部材に支持されるハウジングよりも大きな部材とされるため、射出成形する際の熱収縮率や必要となる樹脂量がハウジングよりも大きいものとされる。このため、本体側部材側に複数の可撓片を設けると、ハウジング側に複数の可撓片を設ける場合よりも可撓片の寸法公差が大きくなり、ハウジングの取り付け精度が低下する。これに対し上記のコネクタでは、ハウジング側にのみ複数の可撓片が設けられるので、本体側部材側に複数の可撓片等を設ける場合と比べてハウジングの取り付け精度を向上させることができる。このように上記のコネクタでは、本体側部材にフローティング支持されるハウジングの取り付け精度を向上させることができる。
【0012】
また、ハウジングを本体側部材に取り付ける際、第2アーム部の傾斜面によってハウジングが取り付け方向にガイドされながら第1アーム部が内側(ハウジングの外周面側)に撓み、ハウジングを本体側部材に取り付けることができる。このため、本体側部材にハウジングを取り付け易くするための具体的な構成を実現することができる。
【0013】
インバータとモータとの間を接続する上記のコネクタであって、前記本体側部材が前記インバータ側に設けられたインバータ側端子台であるとともに、前記本体側端子が前記インバータと電気的に接続されたインバータ側端子とされ、前記相手側部材は、前記モータ側に設けられたモータ側端子台であるとともに、前記相手側端子が前記モータと電気的に接続されたモータ側端子とされてもよい。
【0014】
これによると、インバータ側端子とモータ側端子とが嵌合されることでインバータとモータとの間とが直接接続される構成を実現しながら、インバータ側端子台にフローティング支持されるハウジングの取り付け精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フローティング支持されるハウジングの取り付け精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】インバータ側端子台とモータ側端子台との嵌合部分を上方から視た平面図
図2】インバータ側端子台とモータ側端子台との嵌合部分を正面から視た正面図
図3図1におけるIII−III断面の断面構成であって、インバータ側端子台とモータ側端子台との嵌合部分の断面を表す断面図
図4】インバータ側端子台とモータ側端子台とを嵌合させる前の状態を表す断面図
図5】インナハウジングの断面図
図6】インナハウジングをインバータ側端子台に取り付ける前の状態を表す断面図
図7】インナハウジングをインバータ側端子台に取り付ける途中の状態を表す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して実施形態を説明する。本実施形態では、例えばハイブリッド自動車や電気自動車において、図示しないインバータと図示しないモータとの間を電気的に接続するコネクタ1について例示する。なお、各図面の一部には、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で示した方向となるように描かれている。このうちZ軸方向は、図2乃至図7における紙面上側を上方として、上下方向と一致している。
【0018】
本実施形態では、上側をインバータ側とし、下側をモータ側として、インバータがインバータケース10内に収容され、モータがモータケース20内に収容される。なお、各図面では、インバータケース10についてはインバータの下側を覆う下側部分のみを図示しており、モータケース20についてはモータの上側を覆う上側部分のみを図示している。
【0019】
本実施形態のコネクタ1は、図1及び図2に示すように、インバータ側とモータ側との間にY軸方向に沿って6つ並列した形で配され、両者の間を接続する。具体的には、各コネクタ1は、図3に示すように、インバータと電気的に接続された後述するインバータ側端子52と、モータと電気的に接続された後述するモータ側端子62とを備え、インバータとモータとの間を電気的に接続する中継端子とされる。
【0020】
先に、インバータケース10とモータケース20の構成について説明する。インバータケース10の下側部分の一部には、図3及び図4に示すように、下方に向かってリブ状に突出するインバータ側リブ12と、このインバータ側リブ12によって囲まれるインバータ側開口部14とが設けられている。一方、モータケース20の上側部分の一部には、上方に向かってリブ状に突出するモータ側リブ22と、このモータ側リブ22によって囲まれるモータ側開口部24とが設けられている。
【0021】
次にコネクタ1の構成について説明する。コネクタ1は、図3及び図4に示すように、インバータ側端子台(本体側部材の一例)30と、モータ側端子台(相手側部材の一例)40と、インナハウジング(ハウジングの一例)50と、インナハウジング50内に保持されるインバータ側端子52と、モータ側端子台40に設けられたモータ側ハウジング60と、モータ側ハウジング60内に保持されるモータ側端子62と、編組線70と、を備える。このうちインバータ側端子台30はインバータ側(上側)に設けられ、モータ側端子台40はモータ側(下側)に設けられている。
【0022】
インバータ側端子台30は、図1に示すように、平面に視た大きさがインバータケース10の下側部分よりも小さな部材とされる。インバータ側端子台30には、図6等に示すように、ハウジング取付部32が設けられている。ハウジング取付部32は、インバータ側端子台30を上側として、モータ側ハウジング60と上下方向において重畳している。
【0023】
ハウジング取付部32は、図6等に示すように、略筒状をなしており、その内部に、当該ハウジング取付部32の内壁から内向きに略等しい長さで張り出した2つの張り出し部が設けられている。一方の張り出し部は、ハウジング取付部32の上部開口縁からX−Y平面方向に平行に張り出しており、その下面が係止面32Aとされる。他方の張り出し部は、ハウジング取付部32の内壁の上下方向における略中央位置からX−Y平面方向に平行に張り出しており、その上面が支持面32Bとされる。
【0024】
インナハウジング50は、上下方向を筒軸方向とする略筒状をなしており、上記係止面32A及び上記支持面32Bによってハウジング取付部32に取り付けられている。インナハウジング50内における下部開口側には、雌型端子であるインバータ側端子52が収容されている。インバータ側端子52は、その接続口を下方に向けた形で、インナハウジング50の内壁から延びるランス54によってインナハウジング50内に保持されている。
【0025】
なお、上記したインバータ側端子台30及びインナハウジング50は、いずれも合成樹脂製とされ、金型を用いた射出成形により形成される部材である。インナハウジング50の詳しい構成、及びハウジング取付部32に対するインナハウジング50の取り付け態様については、後で詳しく説明する。
【0026】
インバータ側端子52の上記接続口とは反対側の一部は、インナハウジング50の内壁に沿ってインナハウジング50の上部開口近傍まで延びており、編組線70の一端部と電気的に接続されている。編組線70は、可撓性を有する導電部材であり、インバータ側端子台30内において引き回されている。編組線70におけるインバータ側端子52と接続された端部とは反対側の端部は、インバータと電気的に接続されている。このため、インバータ側端子52には、インバータで変換された交流電源が供給されるようになっている。
【0027】
インバータ側端子台30は、図3及び図4に示すように、その下面がインバータケース10の下部内壁に宛がわれるとともに、インナハウジング50の下側部分がインバータケース10のインバータ側開口部14に挿通された状態で、インバータケース10に対して組付け固定される。なお、インバータ側端子台30では、ハウジング取付部32の下部開口縁がインバータ側端子台30の下面と上下方向において一致している。このため、インバータ側端子台30をインバータケース10に対して組付ける際、ハウジング取付部32がインバータケース10と干渉しないものとなっている。
【0028】
モータ側端子台40は、図1及び図2に示すように、モータケース20の上側部分に載置される形で配される。モータ側端子台40には、図3及び図4に示すように、略板状をなす本体部42と、本体部42の一部から上下方向に突出する突出部44と、が設けられている。
【0029】
モータ側ハウジング60は、図3及び図4に示すように、モータ側端子台40における突出部44の上側部分に設けられ、上方に開口している。モータ側端子62は、雄型端子であり、上側を接続側としてモータ側ハウジング60内に固定されている。モータ側端子62は、突出部44の下側部分まで延びてモータと電気的に接続されており、インバータで変換された交流電源をモータ側へ供給する。
【0030】
モータ側端子台40は、図2乃至図4に示すように、その本体部42が、第1シール部材S1を介してモータケース20のモータ側リブ22上に載置されるとともに、その突出部44の下側部分がモータケース20のモータ側開口部24に挿通された状態で、ボルトBによってモータケース20と締結されることで、モータケース20に対して組付け固定される。
【0031】
なお、上述したようにモータ側端子台40をモータケース20に対して組付ける際、モータ側端子台40の本体部42とモータ側リブ22との間に第1シール部材S1が配されることで、両者の間がシールされる。これにより、本体部42とモータ側リブ22との間(モータケース20内)に水等が浸入することを防止ないし抑制することができる。
【0032】
インバータケース10とモータケース20の間は、図3及び図4に示すように、モータ側ハウジング60内にインナハウジング50がその下方から嵌め入れられてインバータ側端子52とモータ側端子62とが上下方向(Z軸方向)、換言すればハウジング取付部32における支持面32Bと直交する方向において雄雌嵌合されることで、組付けられる。インバータ側端子52とモータ側端子62とが嵌合されることで、両端子52、62間が電気的に接続される。その結果、インバータとモータとの間が直接接続され、インバータで変換された交流電源がモータに供給される。
【0033】
なお、図3に示すように、インバータ側端子52とモータ側端子62とを接続する際、インバータ側リブ12とモータ側端子台40の本体部42との間に第2シール部材S2が配されることで、両者の間がシールされる。これにより、インバータケース10と本体部42との間(インバータ側端子52とモータ側端子62との接続部分)に水等が浸入することを防止ないし抑制することができる。
【0034】
続いて、インナハウジング50の詳しい構成について、図5を参照して説明する。図5に示すように、インナハウジング50の外周面におけるX軸方向両側には、当該外周面から延びる弾性アーム(可撓片の一例)56がそれぞれ設けられている。各弾性アーム56は、可撓性を有しており、インナハウジング50の外周面の上下方向における略中央位置からインナハウジング50の上部開口縁と上下方向において一致する位置まで延びている。
【0035】
各弾性アーム56は、図5に示すように、インナハウジング50との間にわずかな隙間を空けて当該インナハウジング50の外周面に沿って上下方向に延びる第1アーム部56Aと、第1アーム部56Aの先端近傍の部位から外側(インナハウジング50の外周面側とは反対側)にわずかに突出する第2アーム部56Bと、を有している。
【0036】
図5に示すように、各弾性アーム56の第2アーム部56Bにおける下部には、第1アーム部56Aに対して下方から上方に向かって外側に傾斜する傾斜面56B1がそれぞれ設けられている。さらに、傾斜面56B1と他の面との境界部には曲率が設けられている。また、各弾性アーム56の第2アーム部56Bにおける上部端面56B2は、X−Y平面と平行、即ちハウジング取付部32の係止面32A及び支持面32Bの両者に対して平行とされている。
【0037】
なお、各弾性アーム56の第1アーム部56Aのみを含めたインナハウジング50の幅寸法(X軸方向寸法)は、ハウジング取付部32の上部開口よりもわずかに小さいものとされており、各弾性アーム56における第2アーム部56Bまで含めたインナハウジング50の幅寸法(X軸方向寸法)は、ハウジング取付部32の上部開口よりもわずかに大きいものとされている(図5参照)。
【0038】
本実施形態のコネクタ1は以上のような構成であり、続いてハウジング取付部32に対するインナハウジング50の取り付け態様について、図6及び図7を参照して説明する。図6に示すように、インナハウジング50は、内部にインバータ側端子52等が保持されていない状態で、ハウジング取付部32に対してその上方から取り付けられる。インナハウジング50をハウジング取付部32に取り付ける場合、まず、インナハウジング50を、ハウジング取付部32の上方で当該ハウジング取付部32の開口とX−Y平面方向において一致するように位置決めする。
【0039】
次に、インナハウジング50を、ハウジング取付部32内にその上方から挿入する。インナハウジング50は、上下方向において第1アーム部56Aと第2アーム部56Bとの境界部に至るまでハウジング取付部32と干渉することなく、ハウジング取付部32内に挿入される。
【0040】
インナハウジング50をハウジング取付部32内にさらに挿入すると、第2アーム部56Bの下部に設けられた傾斜面56B1が係止面32Aの内側先端部32A1(図6参照)と干渉し、図7に示すように、各第1アーム部56Aが内側(インナハウジング50の外周面側)に撓んだ状態とされる。
【0041】
各第1アーム部56Aが内側に撓んだ状態からインナハウジング50をハウジング取付部32内にさらに挿入すると、インナハウジング50が傾斜面56B1によってガイドされながら下方へ進行する。ここで、各弾性アーム56において、傾斜面56B1と他の面との間に曲率が設けられていることから、ハウジング取付部32の係止面32Aにおける内側先端部32A1が第2アーム部56Bの傾斜面56B1と干渉する前後においても、インナハウジング50が円滑にガイドされる。
【0042】
インナハウジング50がさらに下方へ進行することで、各弾性アーム56の第2アーム部56Bにおける上部端面56B2が上下方向において係止面32よりも下方に至ると、第2アーム部56Bがハウジング取付部32に干渉されなくなり、各弾性アーム56はその弾性復帰力によって再び自然状態に復帰する(図5参照)。
【0043】
各弾性アーム56が再び自然状態に復帰することにより、図5に示すように、各弾性アーム56の第2アーム部56Bがハウジング取付部32の係止面32Aと支持面32Bとの間に入り込んだ状態とされる。この状態では、各弾性アーム56の第2アーム部56Bにおける上部端面56B2が係止面32Aによって係止され、インナハウジング50がハウジング取付部32から上方へ外れることが防止される。
【0044】
さらにこの状態では、各弾性アーム56の第2アーム部56Bが支持面32Bによって支持されることでインナハウジング50が当該支持面32Bにフローティング支持され、インナハウジング50がハウジング取付部32から下方へ脱落することが防止される。
【0045】
このようにインナハウジング50が支持面32Bにフローティング支持されることで、インバータ側端子52とモータ側端子62とを嵌合する際に両端子52、62間の相対位置が位置ずれした場合に、インナハウジング50が支持面32Bに沿って摺動し、当該支持面32Bに沿った方向(X−Y平面に沿った方向)における位置ずれを吸収することができる。
【0046】
以上のような取り付け態様によって、インナハウジング50がハウジング取付部32に取り付けられる。インナハウジング50をハウジング取付部32に取り付けた後、編組線70の一端部と接続されたインバータ側端子62が、インナハウジング50内に取り付けられる。
【0047】
以上説明したように本実施形態に係るコネクタ1では、インナハウジング50をインバータ側端子台30のハウジング取付部32に取り付ける際、第2アーム部56Bの傾斜面56B1によってインナハウジング50が下方(取り付け方向)にガイドされながら第1アーム部56Aが内側に撓むことで、インナハウジング50をハウジング取付部32に取り付けることができる。
【0048】
そして、インナハウジング50をハウジング取付部32に取り付けることで、インナハウジング50の各弾性アーム56における第2アーム部56Bを、インバータ側端子台30のハウジング取付部32における係止面32Aに係止させることができる。さらに、当該第2アーム部56Bを、ハウジング取付部32における支持面32Bに支持させることでインナハウジング50を当該支持面32Bにフローティング支持させることができる。このように、インナハウジング50をインバータ側端子台30のハウジング取付部32に容易に取り付けることができる。
【0049】
ここで、図4等に示すように、インバータ側端子台30は、当該インバータ側端子台30に支持されるインナハウジング50よりも大きな部材とされるため、射出成形する際の熱収縮率や必要となる樹脂量がインナハウジング50よりも大きいものとされる。このため、インバータ側端子台30側に2つの弾性アーム56を設けると、インナハウジング50側に2つの弾性アーム56を設ける場合と比べて弾性アーム56の寸法公差が大きくなり、インナハウジング50の取り付け精度が低下する。
【0050】
これに対し本実施形態のコネクタ1では、インナハウジング50側にのみ2つの弾性アーム56が設けられるので、インバータ側端子台30側に2つの弾性アーム56を設ける場合と比べて弾性アーム56の寸法公差が小さいものとなり、インバータ側端子52とモータ側端子62の間を嵌合する際に両端子52、62間の相対位置が位置ずれした場合であっても、その位置ずれを効果的に吸収させることができる。その結果、インナハウジング50の取り付け精度を向上させることができる。
【0051】
このように本実施形態のコネクタ1では、インバータ側端子台30とモータ側端子台40とが嵌合されることでインバータとモータとの間が直接接続される構成において、インバータ側端子台30のハウジング取付部32における支持面32Bにフローティング支持されるインナハウジング50の取り付け精度を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態のコネクタ1では、上述したように、インナハウジング50側にのみ2つの弾性アーム56が設けられるので、インナハウジング50側とインバータ側端子台30側との両者に弾性アーム56を設ける場合と比べて、射出成形する際に使用する金型を簡素化することができ、低コスト化を図ることができる。
【0053】
また、本実施形態のコネクタ1では、インナハウジング50をハウジング取付部32に取り付ける際に、リテーナ部材等の他の部材を必要としないため、他の部材を必要とする構成と比べてインナハウジング50の取り付け作業の簡略化、及び低コスト化を図ることができる。
【0054】
また、本実施形態のコネクタ1では、インバータ側端子52とモータ側端子62とが支持面32Bと直交する方向に雄雌嵌合されることで、インバータ側端子52とモータ側端子62とを嵌合する際に両端子52、62間の相対位置が位置ずれした場合に、雄雌嵌合の嵌合の程度が変動することによって、上下方向(Z軸方向)における位置ずれも吸収することができる。
【0055】
上記の実施形態の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の実施形態では、インナハウジングに2つの弾性アームが設けられた構成を例示したが、インナハウジングに3つ以上の弾性アームが設けられた構成であってもよい。
【0057】
(3)上記の実施形態では、インバータ側端子が雌型端子とされ、モータ側端子が雄型端子とされた構成を例示したが、インバータ側端子が雄型端子とされ、モータ側端子が雌型端子とされた構成であってもよい。
【0058】
(4)上記の実施形態では、インバータとモータとの間を接続するコネクタについて例示したが、他の用途に用いるコネクタであってもよい。
【0059】
以上、本発明の各実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…コネクタ
10…インバータケース
20…モータケース
30…インバータ側端子台
32…ハウジング取付部
32A…係止面
32B…支持面
40…モータ側端子台
50…インナハウジング
52…インバータ側端子
56…弾性アーム
56A…第1アーム部
56B…第2アーム部
56B1…傾斜面
60…モータ側ハウジング
62…モータ側端子
70…編組線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7