【実施例】
【0011】
〔実施例1〕
本発明のEGRバルブ装置1は、エンジン(本発明の内燃機関)より排出される排気ガスの一部(EGRガスと呼ぶ)を吸気側に還流させるEGRシステムに用いられて、エンジンの排気管と吸気管(共に図示せず)とを連通する排ガス還流管に接続される。
EGRバルブ装置1は、
図1に示すように、EGR通路2を形成するハウジング3と、EGR通路2を流れるEGRガス量を調整するEGRバルブ(後述する)と、このEGRバルブを駆動するバルブ駆動手段と、EGRバルブの開度を検出する回転角センサ等を備える。
【0012】
ハウジング3は、例えばアルミダイカストにより製造され、ハウジング3の内部をEGR通路2が図示左右方向に貫通して形成される。但し、EGR通路2は、EGRガスが流入するIN側(図示左側)とEGRガスが流出するOUT側(図示右側)との間にEGRガスの流れ方向が変化する屈曲部が設けられている。つまり、屈曲部よりIN側のEGR通路2の軸心方向とOUT側のEGR通路2の軸心方向とが所定の角度で交差している。また、屈曲部よりIN側のEGR通路2には、金属製(例えばステンレス製)の円筒ノズル4が挿入されている。なお、
図1に示すEGR通路2の前後に記載した矢印は、EGRガスの流れ方向を示している。
【0013】
EGR通路2のIN側が開口するハウジング3のIN側端面には、排気管に繋がるIN側の排ガス還流管5が接続され、EGR通路2のOUT側が開口するハウジング3のOUT側端面には、吸気管に繋がるOUT側の排ガス還流管(図示せず)が接続される。
EGRバルブは、ハウジング3内に二つの軸受6、7を介して回転自在に支持されるシャフト8と、このシャフト8の一方の端部に固定される円板状の弁体9とで構成される。弁体9の外周には、EGR通路2を全閉するバルブ全閉時(
図1に示す状態)のシール性を確保するためにシールリング10が装着される。
【0014】
二つの軸受6、7の具体例として、
図1では軸受6にボールベアリング、軸受7に滑り軸受を用いている。二つの軸受6、7の間には、EGRガスの漏れを防止するためのオイルシール11が配設される。このオイルシール11は、
図2に示すように、径方向の内周にゴム製のリップ11aを有し、このリップ11aがシャフト8の外周面に押圧されることでシャフト8の外周を気密にシールしている。
また、シャフト8の軸長方向において軸受7のEGR通路2側、すなわち反オイルシール側には、EGRガスに含まれるカーボンデポジット等の異物が軸受7内の摺動隙間へ侵入することを防止するシール部材12が配置される。
【0015】
バルブ駆動手段は、電力の供給を受けて回転トルクを発生するモータ(図示せず)と、このモータの回転トルクを増幅してシャフト8に伝達するギヤトレインとで構成される。
モータは、例えば直流モータであり、ECU(図示せず)によって通電制御される。
ギヤトレインは、複数の平歯車を噛み合せて構成される。具体的には、モータの出力軸に取り付けられるピニオンギヤ(図示せず)と、シャフト8の他方の端部に取り付けられるバルブギヤ13(
図1参照)と、ピニオンギヤの回転をバルブギヤ13に伝達する中間ギヤ(図示せず)とで構成される歯車減速手段である。
【0016】
回転角センサは、例えば、バルブギヤ13の内周に永久磁石14が取り付けられ、この永久磁石14の内側にホールIC15を配置して構成される。ホールIC15は、バルブギヤ13と共に永久磁石14が回転することで、ホール素子を貫く磁束密度に比例した電気信号をECUへ出力する。
ECUは、アクセル開度やエンジン回転数等から把握されるエンジンの運転状態に応じてEGRバルブの目標開度を演算し、ホールIC15によって検出されるEGRバルブの実開度が目標開度と一致するようにモータへの供給電力をフィードバック制御する。
【0017】
続いて、本発明の特徴を有するEGRバルブの構成を詳細に説明する。
EGRバルブのシャフト8は、
図1に示すように、OUT側のEGR通路2の軸心方向と直交して配置され、一方の端部がIN側のEGR通路2の内部へ突き出ている。この一方の端部の外周には、
図2に示すように、グリス溝8aが全周に形成され、シャフト8をハウジング3の内部へ挿入する前に、予めグリス溝8aにグリスが塗布される。
このシャフト8をハウジング3の内部へ挿入する際に、グリス溝8aに保持されたグリスがオイルシール11のリップ11aに掻き取られる様にしてリップ11a内に塗布される。なお、シール部材12、軸受7、オイルシール11、軸受6は、シャフト8をハウジング3の内部へ挿入する以前にハウジング3の内部に組み付けられる。
また、オイルシール11のリップ11aの内径をD1、グリス溝8aが形成されたシャフト8の外径をD2とすると、D2>D1の寸法関係が成立している(
図2参照)。
【0018】
弁体9は、EGR通路2の内部に配置されて、シャフト8の軸長方向に対し所定の角度だけ傾斜した状態でシャフト8の一方の端部に固定され、シャフト8と一体に回転することでIN側のEGR通路2の開口面積を可変する。この弁体9には、
図2に示すように、シャフト8の軸長方向に沿って弁体9を斜めに貫通する貫通孔9aが形成され、この貫通孔9aにシャフト8の一方の端部が圧入される。また、貫通孔9aより突き出るシャフト8の先端部を弁体9に溶接(例えばTIG溶接、レーザ溶接)して両者が結合される。
ここで、弁体9の貫通孔9aに圧入されるシャフト8の軸方向範囲、つまりシャフト8の全周が貫通孔9aに覆われる部分をシャフト圧入部と呼ぶ時に、上記のグリス溝8aはシャフト圧入部に形成されている。よって、シャフト8の一方の端部を弁体9の貫通孔9aに圧入した状態で、グリス溝8aが貫通孔9aより外側に露出することはない。
【0019】
〔実施例1の作用および効果〕
実施例1のEGRバルブ装置1は、弁体9が固定されるシャフト8の一方の端部にグリス溝8aを形成しているので、排気脈動圧が弁体9に印加されてシャフト8が撓んだ場合でも、グリス溝8aに発生する応力を低減できる。つまり、弁体9に排気脈動圧が印加されてシャフト8が撓んだ場合に、その支点となるシャフト軸受け部(軸受7に支持されている部分)にグリス溝8aが形成されていないので、特許文献1の従来技術と比較してグリス溝8aに発生する応力が小さくなる。
【0020】
また、シャフト軸受け部の形状は、段差や切り欠き等が形成されていない単純な円柱形状である。つまり、シャフト軸受け部にグリス溝8aが形成されていないので、シャフト軸受け部に発生する最大応力が低減される。これにより、特許文献1に開示されたシャフト形状と比較して許容排気脈動圧値を向上できるので、例えばシャフト8の折損を回避するためにシャフト径を大きくする等の大幅な設計変更は不要である。
さらに、グリス溝8aが形成されたシャフト8の一方の端部を弁体9の貫通孔9aに圧入し、貫通孔9aより突き出るシャフト先端部を弁体9に溶接するので、溶接部位にグリスが付着することはない。つまり、グリス溝8aが貫通孔9aの内部に隠れているので、グリス溝8aに存在するグリスが溶接強度に悪影響を与えることはなく、従来と同等の溶接強度を確保できる。