(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数枚の用紙に打ち抜き孔及びカット孔を形成するとともに、その打ち抜き孔から切り起こされた切起片の先端部分を前記カット孔に挿通させ、その切起片とカット孔との係わり合いによってそれら複数枚の用紙を相互に綴じることができるようにしたものであって、前記刃が、前記打ち抜き孔を形成するための抜き刃と、前記カット孔を形成するための切込刃である請求項1記載の用紙穿孔処理装置。
刃を用紙から抜き取る動作が終了した後に、前記刃を前記特定位置に自動的に復帰させるとともに、前記パンチ台を初期位置に自動的に復帰させる復帰機構を備えている請求項1、2または3記載の用紙穿孔処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
この実施形態は、
図1ないし
図15に示すように、用紙穿孔処理装置の一例であって、本発明を金属製の針を使用せずに重ね合わせた複数枚の用紙Pを一体的に綴じ合わせる綴じ機1に適用した場合のものである。なお、本発明の綴じ機は、以下に説明する本実施形態のものには限られない。
【0022】
すなわち、この綴じ機1は、複数枚の用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、その打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5を前記カット孔P2に挿通させることにより、それら複数枚の用紙Pを相互に綴じて冊子Bを作ることができるようにしたものである。
【0023】
<冊子>
この冊子Bは、
図1及び
図2に示すように、複数枚の用紙Pを束ねてなるもので、それらの用紙Pは綴じ元側に設定した一ヵ所の接合部分P3において相互に接合されている。この接合部分P3は、用紙Pの一面Pa側から貫入させた抜き刃72により各用紙Pに形成された打ち抜き孔P1と、この打ち抜き孔P1に隣接させて前記各用紙Pに形成された引き上げ用カット孔P2と、前記打ち抜き孔P1から用紙Pの他面Pb側に切り起こされた切起片P5とから構成されている。そして、前記切起片P5の先端P51側を、前記カット孔P2に貫通させて前記用紙Pの一面Pa側に導出させることによって、前記複数枚の用紙Pの綴じ元側が相互に接合されている。
【0024】
前記切起片P5は、
図1及び
図2に示すように、一端が半円弧状をなす舌片状のものである。なお、切起片P5は矢尻状のものにする等種々変更可能であり、本実施形態のものには限られない。
【0025】
前記打ち抜き孔P1は、
図1及び
図2に示すように、前記切起片P5に対応する大きさ及び形状をなしており、抜き刃72による穿孔直後は、抜き刃72の形状に対応したスリット状のものであり、切起片P5を切り起こした後は、切起片P5の形状に対応した一端が半円弧状をなす長孔状の空間である。なお、打ち抜き孔P1は種々変更可能であり、本実施形態のものには限られない。
【0026】
一方、前記カット孔P2は、
図1及び
図2に示すように、切起片P5を主として係わり合わせるための直線状をなすメインスリットP21と、このメインスリットP21の両端から所定の方向、すなわち打ち抜き孔P1と反対の方向に屈曲して伸びるサブスリットP22とを備えている。なお、カット孔P2は種々変更可能であり、本実施形態のものには限られない。
【0027】
<綴じ機>
このように用紙Pを綴じる際に使用される綴じ機1について、
図1ないし
図15を参照して説明する。
【0028】
この綴じ機1は、
図1及び
図3ないし
図15に示すように、用紙Pに貫通し得る特定位置aに保持した刃と、用紙Pを保持する用紙保持部449を有しこの用紙Pが前記刃に対向する初期位置(S)から該用紙Pに前記特定位置aに保持した刃が貫通する貫通終了位置(L)までの間で往復動作可能なパンチ台4と、操作開始状態(S)から操作終了状態(L)まで一方向に作動する作動体たるハンドル8と、このハンドル8の一方向への作動力を利用して、用紙Pを保持したパンチ台4を移動させてその用紙Pに前記特定位置aに保持した刃を貫通させる動作、前記刃の保持状態を解除させる動作、及び保持状態が解除された刃を用紙Pから抜き取る動作を順次行う駆動機構9とを備えている。駆動機構9は、刃を特定位置aに保持する保持機構91と、用紙Pを保持したパンチ台4を移動させてその用紙Pに前記特定位置aに保持した刃を貫通させる刃貫通機構92と、前記刃の保持状態を解除させる保持状態解除機構93と、保持状態が解除された刃を用紙Pから抜き取る刃抜き取り機構94とを備えている。詳述すれば、この綴じ機1は、次のような構成をなしている。すなわち、この綴じ機1は、箱状をなす本体2内にパンチ台4と刃ユニット7とを収容するとともに、本体2の外側にハンドル8を取り付けてなる。
【0029】
<本体>
本体2は、
図1及び
図4ないし
図10に示すように、下端を開放させた本体カバー21と、この本体カバー21の下端に装着されるロアカバー22とからなる。なお、
図9及び
図10においては、本体2を二点鎖線で示しており、
図7、
図8及び
図12ないし
図15においては、本体2の一部を省略している。
【0030】
本体カバー21は、
図1及び
図4ないし
図6に示すように、前壁23と、左右の側壁24と、後壁25と、上面の一部を閉塞する天壁26とを備えた筒状をなすもので、合成樹脂により一体に成形されている。本体カバー21の前壁23、側壁24、及び後壁25の内面には、パンチ台4を昇降可能に案内するための突条23a、25a(側壁の突条は図示しない)がそれぞれ設けられている。
【0031】
ロアカバー22は、
図4ないし
図8に示すように、本体カバー21の下側に蓋着されたもので、扁平箱状をなす合成樹脂製のものである。このロアカバー22の上側に、刃を特定位置aに保持するためのロックサポート3をロック位置(L)(
図4ないし
図10及び
図12ないし
図15における位置x)とロック解除位置(U)(
図6、
図8、
図10、
図14及び
図15における位置y)との間で進退し得るように配している。なお、本体2は種々変更可能であり、上述したものには限られない。
【0032】
<ロックサポート>
ロックサポート3は、
図3ないし
図10及び
図12ないし
図15に示すように、フレーム状をなすもので、その外側面に前後方向に延びる突条31を備えており、ロアカバー22のリブ28上に前後方向に進退可能に載置された状態で、ロアカバー22の爪27を前記突条31に係わり合わせることにより、前記ロアカバー22に取り付けられている。ロックサポート3は、常時は、該ロックサポート3と前記ロアカバー22との間に設けたコイルスプリングS1の付勢力によりロック位置(L)に保持されている。ロックサポート3の上面には、傾斜面32aを有した突部32が設けられており、後述する刃抜き取り部材5によって前記突部32の傾斜面32aが押圧されることにより、このロックサポート3がロック解除位置(U)に移動するようになっている。また、ロックサポート3の内側には、ロック位置(L)において刃を特定位置aに保持するための係止部33が設けられている。なお、
図9及び
図10においては、ロックサポート3にパターンを付して示している。なお、ロックサポート3は種々変更可能であり、上述したものには限られない。
【0033】
<パンチ台>
パンチ台4は、
図1、
図3ないし
図10及び
図12ないし
図15に示すように、本体2の内部に昇降可能に支持されたアンビルベース41と、このアンビルベース41に保持され前記刃である抜き刃72及び切込刃74が挿入可能なアンビル42と、前記ハンドル8に加えられた操作力をアンビルベース41及びアンビル42に伝えるアンビルカバー43とを有するものである。なお、
図7ないし
図10においては、パンチ台4のアンビルベース41を二点鎖線で示しているとともに、パンチ台4のアンビル42及びアンビルカバー43を省略している。
【0034】
アンビルベース41は、
図1、
図3ないし
図10及び
図12ないし
図15に示すように、アンビルベース本体44と、このアンビルベース本体44の後側に一体に設けられた案内筒部45とを備えている。
【0035】
アンビルベース本体44は、
図1、
図3ないし
図6、
図9、
図10及び
図12ないし
図15に示すように、天壁441と、この天壁441の前縁から垂下する前壁442と、前記天壁441の左右両側縁から垂下する左右の外側壁443と、天壁441の後縁から垂下する後壁444と、前記外側壁443の内側に設けられた左右の内側壁445とを備えてなり、これら左右の内側壁445間に前記刃ユニット7を昇降可能に配している。天壁441には、前記刃ユニット7の前記抜き刃72及び切込刃74が通過するための開口446を有している。この天壁441の下面側には、前記開口446縁の近傍に設けられるインナーカム付勢用の係止部447を設けている。天壁441の後縁近傍部には、アンビル取付用のスリット448が形成されている。この天壁441の上面である用紙保持部449と、前記アンビル42の下向面との間に用紙Pを挿入するための用紙挿入用隙間46を形成している。前壁442及び左右の外側壁443の外面には、本体カバー21の前壁23内面及び側壁24内面に設けられた突条23a(側壁の突条は図示しない)と係わり合うレール溝442a、443aが形成されている。左右の内側壁445の内面には、前記刃ユニット7を鉛直方向に案内するためのレール溝445aが設けられている。
【0036】
案内筒部45は、
図3ないし
図6、
図9、
図10及び
図12ないし
図15に示すように、アンビルベース本体44よりも幅狭なもので、アンビルベース本体44の背面から平行に伸びる左右の外側壁451と、これら左右の外側壁451の後縁間を接続する外後壁452と、前記外側壁451の内側に位置させて前記アンビルベース本体44の背面から平行に伸びる左右の内側壁453と、これら内側壁453の後縁間を接続する内後壁454とを備えたもので、この内後壁454及び前記左右の内側壁453間に形成される空間に、刃抜き取り部材5を昇降可能に配している。内側壁453の上縁には、内側に突出し、前記刃抜き取り部材5の上動を規制するための係止部453aが設けられている。外側壁451と内側壁453との間には、それぞれ前後方向に伸びるカム逃がし溝455が形成されている。
【0037】
アンビル42は、
図1、
図3ないし
図6及び
図12ないし
図15に示すように、前記抜き刃72と協働して用紙Pに打ち抜き孔P1を穿孔するための穿孔部421と、前記切込刃74が通過する通過孔422とを備えた金属製のもので、後縁に取付用の脚423が形成されている。アンビル42は、前記脚423を前記アンビルベース41に形成されたアンビル取付用のスリット448に挿入することによってアンビルベース41に取り付けられている。
【0038】
アンビルカバー43は、
図3ないし
図6及び
図12ないし
図15に示すように、アンビル42がアンビルベース41から外れるのを防止するとともに、ハンドル8に加えられる操作力をアンビル42及びアンビルベース41に伝達するためのもので、爪431を前記アンビルベース41に弾性係合させることによって、アンビルベース41に取り付けられている。アンビルカバー43の上面432には、左右両側縁付近に対をなす第一のカム受け面433と、これら第一のカム受け面433の内側に位置させた対をなす第二のカム受け面434とが設けられている。これら第一のカム受け面433は、前記アンビルベース41のカム逃がし溝455にそれぞれ連続している。これら第二のカム受け面434が形成されているアンビルカバー43の上面432は、初期状態(F)において、前記刃抜き取り部材5の上面と略面一に設定されている。
【0039】
<刃抜き取り部材>
刃抜き取り部材5は、
図3ないし
図10及び
図12ないし
図15に示すように、天壁51と、この天壁51の前縁から垂下する前壁52と、前記天壁51の左右両側縁から垂下する左右の側壁53とを備えてなる。天壁51の上面には、前記アンビルカバー43の第二のカム受け面434に連続するカム受け面511が設けられているとともに、前記アンビルベース41の案内筒部45の係止部453aに係わり合う係合部512が設けられている。左右の側壁53の下縁は、前記ロックサポート3の傾斜面32aを押圧してロックサポート3をロック位置(L)からロック解除位置(U)に移動させるための押圧部531としての役割を担っている。
【0040】
そして、この天壁51の下面と前記ロアカバー22との間には、復帰用のコイルスプリングS2が配されているとともに、刃抜き取り部材5の内部に刃ベースハンガー6が相対的に昇降し得るように収容されている。刃ベースハンガー6は、後壁61と、この後壁61の左右両縁から前方に伸びる左右の側壁62と、これら左右の側壁62の下端部間に架設させた前梁63とを備えたもので、前記コイルスプリングS2を囲うようにして前記刃抜き取り部材5内に上死点(U)と下死点(D)との間で昇降可能に保持されている。すなわち、前記刃ベースハンガー6の下死点(D)は、刃ベースハンガー6の側壁62に設けられた爪62aが前記刃抜き取り部材5の前壁52の内面に設けられた係止壁521に係わり合うことで決められる。
【0041】
すなわち、前記刃抜き取り部材5の前壁52の下縁は、前記刃ユニット7を下方に押圧して刃を用紙Pから引き抜くための押圧部522としての役割を担っており、前記刃ベースハンガー6の前梁63は、前記刃ユニット7を上方に押圧して刃を特定位置aに復帰させるための押圧部63aとしての役割を担っている。
【0042】
<刃ユニット>
刃ユニット7は、
図3ないし
図10及び
図12ないし
図15に示すように、前記アンビルベース41のレール溝445aに案内されて鉛直姿勢を維持しつつ昇降可能な刃ベース71と、この刃ベース71に取り付けられ前記打ち抜き孔P1を形成するための抜き刃72と、この抜き刃72に隣接させて配され前記カット孔P2を形成するための切込刃74と、前記抜き刃72の内側に配され前記抜き刃72内に収まる初期姿勢(S)から抜き刃72外に突出する回動姿勢(K)との間で軸731を介して回転可能に枢止されたインナーカム73とを具備してなる。なお、刃ユニット7は種々変更可能であり、以下に説明する本実施形態のものには限られない。
【0043】
<刃ベース>
刃ベース71は、
図3ないし
図10及び
図12ないし
図15に示すように、上方に開放された箱状のもので、前記抜き刃72及び切込刃74の下半部が収容され得るようになっている。刃ベース71は、アンビルベース41のレール溝445aに上下方向にスライド可能に係合する突条711を備えるとともに、ロック位置(L)にあるロックサポート3の係止部33に当接する突部712を備えている。この突部712は、ロックサポート3がロック解除位置(U)にスライド移動した場合には、前記係止部33との当接状態が解除される形状及び大きさに設定されている。また、この突部712は、前記係止部33と突部712との当接が解除された状態では、刃ベース71が、前記ロックサポート3の内部に没入し得るようになっている。また、刃ベース71には、前記刃抜き取り部材5の前壁52に設けられた押圧部522によって下方に押圧され、前記刃ベースハンガー6の押圧部63aによって上方に引き上げられる突起713が設けられている。
【0044】
<抜き刃>
抜き刃72は、
図3ないし
図15に示すように、先端P51に湾曲部分を備えた切起片P5を形成し得るものであり、基端部に設けられた取付部721を介して前記刃ベース71に取り付けられている。この抜き刃72は、1枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られたもので、用紙Pに前記打ち抜き孔P1を打ち抜くための刃本体722を備えている。また、前記抜き刃72により囲まれた空間には、前記切起片P5を前記切込刃74に設けられた窓744に挿入させるためのインナーカム73を設けている。
【0045】
<インナーカム>
インナーカム73は、
図4ないし
図6及び
図9ないし
図15に示すように、基端に軸731を有するとともに、先端に前記切起片P5を前記切込刃74に設けられた窓744に挿入させるための押し出し部732を備えたもので、その軸731が前記抜き刃72に支持されている。前記インナーカム73の基端には、該インナーカム73を回動させるためのアーム733が突出させてある。
【0046】
<切込刃>
切込刃74は、
図1に示すようなコ字状をなすカット孔P2を形成し得るものであり、
図3ないし
図15に示すように、基端部に設けられた取付部741を介して前記刃ベース71に取り付けられている。この切込刃74は、1枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られたもので、直線状をなすメインスリットP21を形成するためのメインブレード742と、前記サブスリットP22を形成するためのサブブレード743と、用紙Pから打ち抜かれた切起片P5を通過させ、該切起片P5を係わり合わせるための窓744とを備えている。
【0047】
なお、以上説明した刃ユニット7の刃ベース71、抜き刃72、インナーカム73、及び切込刃74は、それぞれ種々変更可能であり、上述したものには限られない。
【0048】
<ハンドル>
ハンドル8は、
図1及び
図4ないし
図6に示すように、この実施形態においては、手動により操作されて作動するものであり、合成樹脂により一体に成形されている。なお、
図12ないし
図15においては、ハンドル8を二点鎖線で示した上で、その一部を省略して示している。
【0049】
このハンドル8は、前縁両端部を前記本体2に軸81を介して取り付けられたもので、内面には対をなす第一の押圧板82と、これら第一の押圧板82の内側に位置させた対をなす第二の押圧板83とが設けられている。前記第一の押圧板82のカム状をなす外縁82aは、前記第一のカム受け面433に摺接し得るようになっており、前記第二の押圧板83のカム状をなす外縁83aは、前記第二のカム受け面434に摺接し得るようになっている。
【0050】
この綴じ機1は、ハンドル8を下方に操作した場合に、パンチ台4と抜き刃72及び切込刃74とが順次下方に移動して綴じ動作を完了させるものであり、ハンドル8の操作方向と、前記パンチ台4の移動する方向及び前記保持状態が解除された抜き刃72と切込刃74の移動する方向とが、略同一となっている。なお、ハンドル8は種々変更可能であり、上述したものには限られない。
【0051】
<駆動機構>
この綴じ機1は、以上説明したような構成であるため、前述した保持機構91、刃貫通機構92、保持状態解除機構93、及び刃抜き取り機構94はそれぞれ以下のようなものとなる。
【0052】
すなわち、保持機構91は、
図4ないし
図8及び
図12ないし
図15に示すように、前記刃を特定位置aに保持するためのもので、前記ロックサポート3と、このロックサポート3をロック位置(L)に付勢するコイルスプリングS1とを主体に構成されたものである。
【0053】
刃貫通機構92は、
図4ないし
図6及び
図12ないし
図14に示すように、用紙Pを保持したパンチ台4を移動させてその用紙Pに前記特定位置aに保持された刃を貫通させるためのもので、ハンドル8に加えられる一定の方向の操作力をアンビルカバー43に伝達する第一及び第二の押圧板82、83と、アンビルカバー43に加えられた下方への力によって降下し保持している用紙Pを前記特定位置aに固定された抜き刃72及び切込刃74に貫通させるパンチ台4とを主体に構成されたものである。なお、前記用紙Pに抜き刃72及び切込刃74を貫通させた後に、第一の押圧板82は、第一のカム受け面433から離れ、カム逃がし溝455に移動して押圧動作を終了するようになっており、第二の押圧板83は、第二のカム受け面434から離れ、前記刃抜き取り部材5のカム受け面511へと移行するようになっている。
【0054】
保持状態解除機構93は、
図7及び
図8に示すように、前記刃の保持状態を解除させるためのもので、前記第二の押圧板83と、これら第二の押圧板83に押圧されて降下する刃抜き取り部材5の側壁53に設けられた押圧部531と、前記ロックサポート3に設けられ前記押圧部531に押圧される傾斜面32aとを主体に構成されたものである。すなわち、刃抜き取り部材5が降下して押圧部531が傾斜面32aに摺接すると、前記刃抜き取り部材5の降下動作がロックサポート3の前方へのスライド動作に変換され、このロックサポート3がコイルスプリングS1の付勢力に抗してロック位置(L)からロック解除位置(U)へと移動するようになっている。ロックサポート3がロック解除位置(U)へ移動した状態では、前記刃抜き取り部材5がロックサポート3の内部に没入し、この刃抜き取り部材5の側壁53における前縁532がロックサポート3の突部32に係止されることによって、ロックサポート3のロック位置(L)への復帰が禁止される。すなわち、前記刃抜き取り部材5の側壁53の前縁532がロックサポート3内に没入している間は、前記ロックサポート3のロック解除状態が維持され、刃ユニット7の降下動作が許容される。
【0055】
刃抜き取り機構94は、
図4ないし
図8及び
図12ないし
図15に示すように、保持状態が解除された刃を用紙Pから抜き取るためのもので、前記第二の押圧板83と、これら第二の押圧板83に押圧されて降下する刃抜き取り部材5とを主体に構成されたものである。そして、抜き取り部材の前壁52の押圧部522によって刃ユニット7の突起713を下方に押圧し、刃ユニット7全体を降下させるようになっている。
【0056】
また、この綴じ機1は、刃を用紙Pから抜き取る動作が終了した後に、前記刃を前記特定位置aに自動的に復帰させるとともに、前記パンチ台4を初期位置(S)に自動的に復帰させる復帰機構95を備えている。
【0057】
復帰機構95は、
図4ないし
図6及び
図12ないし
図15に示すように、刃抜き取り部材5を初期位置(S)に復帰させるための復帰用コイルスプリングS2と、このコイルスプリングS2の付勢力で上昇する刃抜き取り部材5に付勢されて上昇するアンビルベース41と、上昇する刃抜き取り部材5に付勢されて上昇し刃ユニット7を特定位置aまで持ち上げる刃ベースハンガー6とを主体に構成されたものである。そして、刃ユニット7が特定位置aまで復帰した段階で、前記ロックサポート3がロック位置(L)に自己復帰して、綴じ機1が初期状態(F)に戻るようになっている。
【0058】
<作動説明>
次に、この綴じ機1の作動を説明する。
【0059】
この綴じ機1によれば、
図11に示すように、ハンドル8を操作開始状態(S)から操作終了状態(L)まで同一方向に操作する間に、初期位置(初期状態(F))から用紙Pが降下する動作と、特定位置aに静止している刃に用紙Pが押し付けられ、その刃が用紙Pに貫通する動作と(初期状態(F)から穿孔終了状態(C))、刃が降下して静止している用紙Pから抜き取られる動作(穿孔終了状態(C)から刃抜き取り終了状態(D))とが順次行われ、前述した綴じ動作が完了することになる。
【0060】
以下、詳述すれば、まず、ハンドル8を操作しない状態では、
図4、
図7、
図9及び
図12に示すように、刃が特定位置aに保持されており、前記インナーカム73が抜き刃72内に収容された初期姿勢(S)を保っている。この状態で、重ね合わせた複数枚の用紙Pを、アンビルベース41の上向面たる用紙保持部449とアンビル42の下向面との間に形成されている隙間46の奥まで挿入する。
【0061】
しかる後に、ハンドル8を操作開始状態(S)から下方に操作すると、このハンドル8に加えられた力が第一、第二の押圧板82、83を通じてパンチ台4に伝えられ、このパンチ台4が用紙Pを保持した状態で降下する。その結果、前記用紙Pが特定位置aに静止している抜き刃72及び切込刃74に押し付けられて、それら抜き刃72及び切込刃74が用紙Pに貫通し、
図5及び
図13に示すように、打ち抜き孔P1及びカット孔P2が形成されるとともに、切起片P5がインナーカム73に押圧されて前記切込刃74の窓744に挿入される。
【0062】
この状態からさらにハンドル8を同一方向(下方)に操作すると、このハンドル8に加えられた力が第二の押圧板83を通じて刃抜き取り部材5に伝えられ、この刃抜き取り部材5が降下する。刃抜き取り部材5が降下すると、前述した保持状態解除機構93の働きによりロックサポート3がロック解除位置(U)に移動し、抜き刃72及び切込刃74の保持状態が解除される。
【0063】
この状態からさらに刃抜き取り部材5が降下すると、刃抜き取り部材5の押圧部522に押圧される刃ユニット7が降下を始め、
図6、
図8、
図10及び
図14に示すように、抜き刃72及び切込刃74が特定位置aから退避位置bへと移動し、用紙Pから抜き取られる。その過程で、前記切起片P5がカット孔P2に挿通されて綴じ動作が完了する。この段階で、ハンドル8は、操作終了状態(L)にまで達しており、用紙Pを隙間46から抜き取ることが可能になる。
【0064】
用紙Pを抜き取った後、ハンドル8から手を離すと、前述した復帰機構95により綴じ機1の各部品が元の位置に復帰して、初期状態(F)状態に戻る。詳述すれば、ハンドル8への操作力がなくなると、復帰用コイルスプリングS2の付勢力により刃抜き取り部材5が上昇を始める。刃抜き取り部材5が一定位置まで上昇すると、刃ベースハンガー6の爪62aが刃抜き取り部材5の係止壁521に係合し、刃ベースハンガー6が刃抜き取り部材5と共に上昇を始める。そのため、
図15に示すように、刃ベースハンガー6の押圧部63aにより刃ユニット7の突起713が上方に引き上げられ、刃ユニット7が上昇し始める。刃ユニット7が特定位置aまたはその付近にまで上昇した段階で、ロックサポート3に対する刃抜き取り部材5の拘束状態が解除され、ロックサポート3がコイルスプリングS1の付勢力によりロック位置(L)に復帰する。また、刃抜き取り部材5が上昇する過程で、刃抜き取り部材5の係合部512が、前記パンチ台4のアンビルベース41の係止部453aに係合し、パンチ台4を元の初期位置(S)まで復帰させる。なお、綴じられた用紙Pを隙間46から抜き取る動作は、パンチ台4を元の初期位置(S)に復帰した後、または、初期位置(S)へと復帰する途中で行ってもよい。
【0065】
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の綴じ機1は、用紙Pに貫通し得る特定位置aに保持した抜き刃72及び切込刃74と、用紙Pを保持する用紙保持部449を有しこの用紙Pが前記抜き刃72及び切込刃74に対向する初期位置(S)から該用紙Pに前記特定位置aに保持した抜き刃72及び切込刃74が貫通する貫通終了位置(L)までの間で往復動作可能なパンチ台4と、操作開始状態(S)から操作終了状態(L)まで一方向に作動するハンドル8と、このハンドル8の上方から下方への一方向の作動力を利用して、用紙Pを保持したパンチ台4を移動させてその用紙Pに前記特定位置aに保持した抜き刃72及び切込刃74を貫通させる動作、前記抜き刃72及び切込刃74の保持状態を解除させる動作、及び保持状態が解除された抜き刃72及び切込刃74を用紙Pから抜き取る動作を順次行う駆動機構9とを備えており、ハンドル8の上方から下方への一方向への作動力を利用して綴じ動作を行っているので、従来のような刃を貫通させるためのエネルギーと、刃を抜き取るためのエネルギーとを同時に加える必要がなくなり、操作力を小さくすることが難しいという課題を緩和することができる。
【0066】
特に、この綴じ機1は、複数枚の用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、その打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5の先端P51部分を前記カット孔P2に挿通させ、その切起片P5とカット孔P2との係わり合いによってそれら複数枚の用紙Pを相互に綴じることができるようにしたものであり、特に用紙Pの枚数が多くなると、切起片P5をカット孔P2に挿通させる際に切込刃74と用紙Pとの間、より具体的には、切起片P5と切込刃74との間に比較的大きな摩擦力が発生する。そのため、用紙Pから切込刃74を抜き取るためのエネルギーとして、穿孔用のパンチの場合の用紙から刃を抜き取るためのエネルギーよりも大きなエネルギーが必要となる。しかしながら、このような多枚数対応の綴じ機1の場合、切込刃74を用紙Pに貫通させる際に、該切込刃74を抜き取るためのエネルギーを同時に加える必要がなくなるので、比較的小さな操作力で切込刃74を用紙Pから引き抜くことができる。
【0067】
前記パンチ台4の移動する方向と、前記保持状態が解除された抜き刃72及び切込刃74の移動する方向とが、略同一であるので、パンチ台4に加えられた作動力を方向転換させる必要がなく、抜き刃72及び切込刃74を直線的に駆動できる。本実施形態では、前記パンチ台4の移動する方向及び前記保持状態が解除された抜き刃72及び切込刃74の移動する方向と、ハンドル8の移動する方向も略同一としているので、さらに無駄なく、ハンドル8に加えられた操作力を抜き刃72及び切込刃74に伝えることができる。
【0068】
また、本実施形態においては、抜き刃72及びを用紙Pから抜き取る動作が終了した後に、前記抜き刃72及び切込刃74を前記特定位置aに自動的に復帰させるとともに、前記パンチ台4を初期位置(S)に自動的に復帰させる復帰機構95を備えているので、一回の綴じ動作が完了した後に、続けて綴じ動作を行うことができる。この際、従来のように、大きなバネ力を有するコイルスプリングを用いる必要がなくなり、操作力を小さくすることができるとともに、コイルスプリングS2の小型化及び綴じ機1の小型化に資することができる。なお、復帰機構95として、コイルスプリングS2の代わりに電力等を用いることができるが、この際にも、抜き刃72及び切込刃74を用紙Pから抜き取った後に駆動されるため、必要とするエネルギーは小さくて済む。
【0069】
特に、本実施形態のハンドル8は、手動により操作されて作動するものであるので、従来の綴じ機に比べて小さな作動力、換言すれば、軽い操作力で穿孔動作及び綴じ動作を完了させることができる。
【0070】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について
図16〜
図21を参照しながら説明する。なお、第一実施形態と同一または対応する部分には、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0071】
この綴じ機1は、
図16〜
図21に示すように、用紙に貫通し得る特定位置aに保持した刃と、用紙を保持する用紙保持部449を有しこの用紙が前記刃に対向する初期位置(S)から該用紙に前記特定位置aに保持した刃が貫通する貫通終了位置(L)までの間で往復動作可能なパンチ台4と、操作開始状態(S)から操作終了状態(L)まで一方向に作動する作動体たるハンドル8と、このハンドル8の一方向への作動力を利用して、用紙Pを保持したパンチ台4を移動させてその用紙に前記特定位置aに保持した刃を貫通させる動作、前記刃の保持状態を解除させる動作、及び保持状態が解除された刃を用紙Pから抜き取る動作を順次行う駆動機構9とを備えている。駆動機構9は、刃を特定位置aに保持する保持機構91と、用紙を保持したパンチ台4を移動させてその用紙Pに前記特定位置aに保持した刃を貫通させる刃貫通機構92と、前記刃の保持状態を解除させる保持状態解除機構93と、保持状態が解除された刃を用紙Pから抜き取る刃抜き取り機構94とを備えている。詳述すれば、この綴じ機1は、箱状をなす本体2内にパンチ台4と刃ユニット7とを収容するとともに、本体2の外側にハンドル8を取り付けてなる。
【0072】
<本体>
本体2は、
図16〜
図21に示すように、本体カバー21の左右の側壁24に案内カム溝241を設けており、それ以外の点では第一の実施形態に準じた構造をなしている。案内カム溝241は、初期状態(F)から穿孔終了状態(C)までの間で機能を果たす上半溝部242と、穿孔終了状態(C)から刃抜き取り終了状態(D)までの間で機能を果たす下半溝部243とを備えたものである。上半溝部242は、上端側が下端側よりも刃から遠ざかる方向に傾斜するように前記側壁24に貫設されたものである。下半溝部243は、刃の進退方向に沿うように前記側壁24に貫設されたものである。なお、
図16及び
図21では、本体2の案内カム溝241のみを示しており、
図17〜
図20では本体2を二点鎖線で示している。
【0073】
<ロックサポート>
ロックサポート3は、
図16〜
図20に示すように、第一実施形態と同様のものである。
【0074】
<パンチ台>
パンチ台4は、
図16〜
図21に示すように、アンビルベース41の案内筒部45の側壁456に駆動力伝達用の第一窓457を設けており、それ以外の点では第一実施形態に準じた構造をなしている。第一窓457は、刃貫通時に機能する刃貫通用受圧辺458a及び刃復帰時に機能する刃復帰用受圧辺458bを備えてなり前記側壁456に貫設された窓本体458と、この窓本体458に連続させて設けられ刃の進退方向に沿うようにして前記側壁456に貫設された逃げ部459とを備えたものである。窓本体458は、方形状をなすもので、その上辺が前記刃復帰用受圧辺458bとなり、下辺の片半部が前記刃貫通用受圧辺458aとなる。窓本体458の下辺の他の片半部には、前記逃げ部459が連続させてある。なお、
図17〜
図20では、パンチ台4を太い二点鎖線で示している。
【0075】
<刃抜き取り部材>
刃抜き取り部材5は、
図16〜
図21に示すように、左右の側壁53に駆動力伝達用の第二窓535を設けており、それ以外の点では第一実施形態に準じた構造をなしている。第二窓535は、主に刃抜き取り時に機能する刃抜き取り用受圧辺535aと、刃復帰時に機能する刃復帰用受圧辺535bとを備えたものである。第二窓535は、方形状をなすもので、その上辺が前記刃復帰用受圧辺535bとなり、下辺が前記刃抜き取り用受圧辺535aとなる。なお、
図17〜
図20では、刃抜き取り部材5にパターンを付して示している。
【0076】
また、この実施形態においては、復帰用のコイルスプリングS2を省略することができる。
【0077】
<刃ベースハンガー>
刃ベースハンガー6は、
図16〜
図20に示すように、第一実施形態と同様のものである。
【0078】
<刃ユニット>
刃ユニット7は、
図16〜
図20に示すように、第一実施形態と同様のものである。
【0079】
<ハンドル>
ハンドル8は、
図16〜
図21に示すように、軸81まわりに巻装したねじりコイルスプリング84により上方に回動付勢されているとともに、その中間部分に第一及び第二の押圧板82、83に替えて、中間軸85を介して対をなすリンクメンバ86の一端部87がそれぞれ枢着されており、それ以外の点では第一実施形態に準じた構造をなしている。
【0080】
各リンクメンバ86は、その他端部88に前記案内カム溝241に係わるカムフォロア89と、前記第一窓457及び第二窓535に挿入される駆動突部80とを備えている。カムフォロア89は、軸状のもので、このカムフォロア89は前記案内カム溝241に案内されることにより前記リンクメンバ86の他端部88の動きが前後方向に制御されるようになっている。駆動突部80は、刃復帰用受圧辺458b、535b、並びに、刃貫通用受圧辺458a及び刃抜き取り用受圧辺535aに対向する押圧端面80aが円弧状に成形された板状をなすものである。駆動突部80は、前記第一窓457及び第二窓535に挿入された状態で前記押圧端面80aが前記第一窓457及び第二窓535の刃復帰用受圧辺458b、535b、並びに、刃貫通用受圧辺458a及び刃抜き取り用受圧辺535aに当接または近接するように設定されている。この実施形態においては、駆動突部80は、前記カムフォロア89と軸心を一致させてリンクメンバ86の両面に分配配置されている。なお、
図17〜
図20及び
図21の上段では、駆動突部80にパターン(斜線)を付して示しており、
図21の下段では、カムフォロア89にパターン(斜線)を付して示している。
【0081】
<駆動機構>
この綴じ機1は、以上説明したような構成であるため、前述した保持機構91、刃貫通機構92、保持状態解除機構93、及び刃抜き取り機構94はそれぞれ以下のようなものとなる。
【0082】
すなわち、保持機構91は、
図17〜
図20に示すように、第一実施形態と同様のものである。
【0083】
刃貫通機構92は、
図17〜
図21に示すように、用紙を保持したパンチ台4を移動させてその用紙Pに前記特定位置aに保持された刃を貫通させるためのもので、ハンドル8に加えられる一定の方向の操作力をアンビルベース41に伝達するリンクメンバ86の駆動突部80と、刃貫通用受圧辺458aに加えられた下方への力によって降下し保持している用紙を前記特定位置aに固定された抜き刃72及び切込刃74に貫通させるパンチ台4とを主体に構成されたものである。
【0084】
保持状態解除機構93は、
図17〜
図20に示すように、前記刃の保持状態を解除させるためのもので、前記リンクメンバ86の駆動突部80と、これら駆動突部80に押圧されて降下する刃抜き取り部材5の側壁53に設けられた押圧部531と、前記ロックサポート3に設けられ前記押圧部531に押圧される傾斜面32aとを主体に構成されたものである。
【0085】
刃抜き取り機構94は、
図17〜
図21に示すように、保持状態が解除された刃を用紙から抜き取るためのもので、前記リンクメンバ86の駆動突部80と、これら駆動突部80に押圧されて降下する刃抜き取り部材5とを主体に構成されたものである。
【0086】
復帰機構95は、
図17〜
図21に示すように、ハンドル8と、ハンドル8を操作開始状態(S)に復帰させる方向に付勢するねじりコイルスプリング84と、このねじりコイルスプリング84の付勢力で上昇するリンクメンバ86と、このリンクメンバ86の駆動突部80に付勢されて上昇するパンチ台4及び刃抜き取り部材5と、上昇する刃抜き取り部材5に付勢されて上昇し刃ユニット7を特定位置aまで持ち上げる刃ベースハンガー6とを主体に構成されたものである。
【0087】
なお、本実施形態においては、刃貫通機構92による刃貫通動作が完了した段階で、刃貫通機構92の働きを停止させて刃抜き取り機構94による刃抜き取り動作を開始させるための切換機構96が設けられている。切換機構96は、本体の案内カム溝241と、リンクメンバ86のカムフォロア89とを主体に構成されたものである。すなわち、刃貫通動作時には、カムフォロア89が案内カム溝241の上半溝部242に沿って案内され、刃貫通動作が完了した段階でリンクメンバ86の駆動突部80が第一窓457の刃貫通用受圧辺458aから第二窓535の刃抜き取り用受圧辺535aのみを押圧し得る位置に移動し、刃抜き取り動作時には、カムフォロア89が案内カム溝241の下半溝部243に沿って案内され、駆動突部80が第二窓535の刃抜き取り用受圧辺535aのみを押圧しつつ降下し得るように構成されている。第一窓457の逃げ部459は、刃抜き取り動作時における駆動突部80の動作を許容し得る位置に設けられている。
【0088】
<作動説明>
次に、この綴じ機1の作動を説明する。なお、
図21の(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)は、左から順に
図17、
図18、
図19、
図20に対応する要部を抽出して概略的に示した図であり、上段には、主に、リンクメンバ86の駆動突部80と第一窓457及び第二窓535との関係を示すとともに、下段には、主に、リンクメンバ86のカムフォロア89と案内カム溝241との関係を示している。
【0089】
この綴じ機1によれば、まず、
図17及び
図21(イ)に示すように、ハンドル8を操作開始状態(S)から下方に操作すると、このハンドル8に加えられた力がリンクメンバ86を通じてパンチ台4に伝えられ、このパンチ台4が用紙を保持した状態で降下する。すなわち、ハンドル8の操作に伴ってリンクメンバ86が降下すると、このリンクメンバ86の他端部88に設けられた駆動突部80が第一窓457の刃貫通用受圧辺458aを押圧し、パンチ台4を下方に押し下げることになる。その際、リンクメンバ86の他端部88に設けられたカムフォロア89が、本体2の案内カム溝241の上半溝部242に案内されて漸次前方に移動する。その結果、駆動突部80が徐々に刃貫通用受圧辺458aを押圧した状態を維持しながら前方に移動することになる。また、この際、刃抜き取り部材5も駆動突部80の降下に伴って下方に移動する。
【0090】
この状態からさらにハンドル8を同一方向(下方)に操作すると、
図18及び
図21(ロ)に示すように、このハンドル8に加えられた力がリンクメンバ86の駆動突部80を通じて刃抜き取り部材5に伝えられ、この刃抜き取り部材5が降下する。刃抜き取り部材5が降下すると、前述した保持状態解除機構93の働きによりロックサポート3がロック解除位置(U)に移動し、抜き刃72及び切込刃74の保持状態が解除される。
【0091】
また、そのタイミングで、駆動突部80が第一窓457の刃貫通用受圧辺458aを押圧している状態から、第二窓535の刃抜き取り用受圧辺535aを押圧する状態に切り換わる。なお、この切換を円滑に行うために、刃抜き取り用受圧辺535aは、刃貫通用受圧辺458aよりも若干寸法だけ、例えば数ミクロンだけ低い位置に設定されている。
【0092】
この状態からさらにリンクメンバ86の駆動突部80が降下すると、
図19及び
図21(ハ)に示すように、この駆動突部80に押圧されて刃抜き取り部材5が降下し始める。そして、刃抜き取り部材5の押圧部522に押圧される刃ユニット7が降下を始め、抜き刃72及び切込刃74が特定位置aから退避位置bへと移動し、用紙から抜き取られる。その過程で、前記切起片がカット孔に挿通されて綴じ動作が完了する。この段階で、ハンドル8は、操作終了状態(L)にまで達しており、用紙を隙間46から抜き取ることが可能になる。なお、リンクメンバ86の駆動突部80は、第一窓457の逃げ部459に沿って降下するため、アンビルベース41の案内筒部45は停止した状態を維持する。
【0093】
用紙を抜き取った後、ハンドル8から手を離すと、前述した復帰機構95により綴じ機1の各部品が元の位置に復帰して、初期状態(F)状態に戻る。詳述すれば、ハンドル8への操作力がなくなると、ねじりコイルスプリング84の付勢力によりハンドル8が操作開始状態(S)方向に上昇する。その際に、前記付勢力がリンクメンバ86の駆動突部80を介して刃抜き取り部材5に伝達され、刃抜き取り部材5が上昇を始める。刃抜き取り部材5が一定位置まで上昇すると、刃ベースハンガー6の爪62aが刃抜き取り部材5の係止壁に係合し、刃ベースハンガー6が刃抜き取り部材5と共に上昇を始める。そのため、刃ベースハンガー6の押圧部63aにより刃ユニット7の突起713が上方に引き上げられ、刃ユニット7が上昇し始める。刃ユニット7が特定位置aまたはその付近にまで上昇した段階で、ロックサポート3に対する刃抜き取り部材5の拘束状態が解除され、ロックサポート3がコイルスプリングS1の付勢力によりロック位置(L)に復帰する。また、刃抜き取り部材5が上昇する過程で、
図20及び
図21(ニ)に示すように、リンクメンバ86の駆動突部80が第一窓457の刃復帰用押圧辺458bに当接することになり、パンチ台4を元の初期位置(S)まで復帰させる。
【0094】
<本実施形態の効果>
本実施形態の綴じ機1によれば、上述した第一実施形態の綴じ機1と同一またはこれに準じた効果が得られる。
【0095】
また、第一実施形態と異なり、以下のような効果が得られる。すなわち、本実施形態の綴じ機1は、第一実施形態の綴じ機1で用いていた第一及び第二の押圧板82、83の代わりにリンクメンバ86を用いているので、ハンドル8の下降時の操作力のみならず上昇時の操作力をもパンチ台4に伝えることができる。そのため、例えば、許容枚数以上の用紙が刃を貫通し、パンチ台4に復帰用のコイルスプリングS2の付勢力よって初期状態(F)に復帰させることができない程度の大きな負荷がかかった場合、第一実施形態の綴じ機1では初期状態(F)に自己復帰させることが難しいが、本実施形態の綴じ機1では、リンクメンバ86でパンチ台4を強制的に引き上げることができるため、前述したような紙詰まりが発生した場合であってもパンチ台4を初期状態(F)に自己復帰させることができる。
【0096】
さらに、本実施形態の綴じ機1によれば、復帰用のコイルスプリングS2を配する必要が必ずしもないため、本体2内のスペースを有効利用して綴じ機1の小型化を図るための設計の自由度を高めることができる。また、前記コイルスプリングS2を配さない場合には、組み立てが容易になる。
【0097】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0098】
本発明の用紙穿孔処理装置は、本実施形態で説明した綴じ機に限られず、用紙に綴じ孔を穿設するためのパンチ等であってもよい。
【0099】
また、前記実施形態では、作動体を手動で操作するものについて説明したが、電動で作動させるものであってもよい。この場合であっても、そのため、刃を貫通させるためのエネルギーと、刃を抜き取るためのエネルギーとを同時に加える必要がないため、大きな操作力を一時期に集中して加える必要がなくなり、容量の小さなアクチュエータで対応することができるという効果が得られる。すなわち、モータ等を用いて、機械的に操作力を加える場合、エネルギーを与える領域を、刃を貫通させる時期と刃を抜き取る時期とに分散させることができる。そのため、比較的小さいモータで駆動させることができ、綴じ機の小型化に資することができる。
【0100】
さらに、刃と用紙とを相対移動させるための駆動力は、上記実施形態で説明したように刃ユニット(または少なくとも刃)が用紙に対して垂直方向に下降するように設定する他にも、刃ユニット(または少なくとも刃)が所定の点を中心に下方に回転するように設定したり、所定の点を中心に水平方向に回転移動、または、用紙に対して水平方向にスライド移動するように設定したり、これらを組み合わせる等種々変更可能である。
【0101】
また、作動体は、本実施形態に示した往復回動させるレバーに限らず、例えば一方向に回動させるダイヤル式のものや、直線的に作動させるスライダ式のもの等であってもよい。
【0102】
さらに、前記実施形態では、各部品を初期状態に復帰させるための復帰機構を備えたものについて説明したが、復帰機構は必ずしも必要ではない。なお、復帰機構を設ける場合であっても、本発明によれば、復帰動作は無負荷状態で行われるため、大きな復帰用のコイルスプリング等を必要とするものではない。また、ハンドル等を用いて各部品を手動で復帰させるようにしてもよい。
【0104】
作動体を一方向に作動させる間に、刃と用紙とを相対動作させて綴じ動作を完了させるものの他の例としては、本実施形態では、作動体を一方向に作動させる際に、刃を特定位置に保持して用紙を移動させることによって穿孔し、その後、刃を用紙から退避させて綴じ動作を完了させていたが、逆に、作動体を一方向に作動させる際に、用紙を特定位置に保持して刃を移動させることによって穿孔し、その後、用紙を刃から退避させて綴じ動作を完了させるものであってもよい。具体的には、
図22に概略的に示すように、まず、紙押さえ10等を用いて用紙Pを特定位置cに保持した状態で、作動体を下方に操作して抜き刃72及び切込刃74を降下させ、前記切込刃74の窓744に切起片P5が挿入された段階で、前記紙押さえ10による用紙Pの特定位置cでの保持状態を解除する。その後、前記作動体の下方への操作を続けることで紙押さえ10及び用紙Pを降下させて、綴じ動作を完了させるようにする方法が考えられる。この上下方向は、逆にしてもよいのはもちろんである。また、前記紙押さえ10の代わりに、用紙挿入用の隙間に臨む他の部材を用いて用紙Pを特定位置cに保持するようにしてもよく、このようなものとして例えば、
図22に示した抜き刃72や切込刃74をアンビル42方向へと案内するための案内部材11、アンビル42や図示しないハウジングの上面または底面等にその役割を担わせてもよい。
【0105】
以上説明したように、
図22に示すような綴じ機によれば、図示しないハンドルを操作開始状態から操作終了状態まで同一方向に操作する間に、初期位置(初期状態(F))から刃が降下する動作と、特定位置cに静止している用紙Pに刃が押し付けられ、その刃が用紙Pに貫通する動作と(初期状態(F)から穿孔終了状態(C))、用紙P及びアンビル42が降下して静止している刃から用紙Pが抜き取られる動作(穿孔終了状態(C)から刃抜き取り終了状態(D))とが順次行われ、前述した綴じ動作が完了することになる。換言すれば、前記刃抜き取り終了状態(D)は、刃を積極的に動かした結果ではなく、静止した刃から用紙を動かして抜き取った結果である「用紙抜き取り終了状態」とも言える。
【0106】
さらに、本発明は、作動体の一方向への作動力を利用して、用紙に刃を貫通させる動作と、刃を用紙から抜き取るきっかけを作る抜き取り指令動作とを行う駆動機構を備えるとともに、この駆動機構の抜き取り指令動作が行われた場合に、前記作動体の一方向への作動力以外の動力を利用して前記刃を前記用紙から抜き取るためのクリンチポイント通過用の力付与手段を備えたものも含まれる。
【0107】
具体的には、前記力付与手段としてスプリングや電動機等が考えられる。力付与手段がスプリングの場合には、作動体を一方向に作動させて穿孔作業を行う前に何らかの別操作により前記スプリングに反発エネルギーを蓄積してロックしておく。その場合、前記駆動機構の抜き取り指令動作は、前記ロックを解除する動作を意味することになる。したがって、ロックを解除されると前記スプリングが反発力を発揮し得ることとなり、蓄積された反発エネルギーにより、前記刃が用紙から相対的に抜き取られることとなる。また、前記力付与手段が電動機等の場合には、前記駆動力の抜き取り指令動作は、前記電動機等を作動させるためのスイッチを切り換える動作を意味することになる。したがって、スイッチが切り換えられると前記電動機等が作動を開始し、この電動機の動力により、前記刃が用紙から相対的に抜き取られることとなる。
【0108】
綴じ機は、複数の切込刃を備えたものや、複数の抜き刃を備えたものであってもよい。例えば、複数の切起片を形成するための単一の抜き刃と、前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記複数の切起片を係止可能なカット孔を形成するための単一の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものであってもよい。
【0109】
また、これら切込刃及び抜き刃の突没方向は、上述した実施形態に示すように、切込刃及び抜き刃の突出側を上方とし没入側を下方とするものに限られず、例えば、上下を逆向きにして、切込刃及び抜き刃の突出側を下方とし、没入側を上方として使用することも可能である。さらに、抜き刃及び切込刃の移動方向は、一時的に下方に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものや、左右方向、または斜め方向に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものであってもよい。例えば、上述した実施形態のものと上下を逆にした仕様のものも考えられる。この仕様の綴じ機は、前述した実施形態における「上方」、「下方」、「上昇」、「降下」、「上面」、「下面」、「上側」、または「下側」を、それぞれ「下方」、「上方」、「降下」、「上昇」、「下面」、「上面」、「下側」、または「上側」と読み替えた構造をなしている。
【0110】
用紙は、シート状であれば、紙製またはプラスチック製等種々変更可能である。また、同質の材料により作られた複数枚のシート体を綴じるようにすれば、分別廃棄の際の手間をより少なくすることができる。
【0111】
刃ユニットは、切込刃、抜き刃、及びインナーカムの3ピース構造のみならず、切込刃及び抜き刃の2ピース構造であってもよい。この際、抜き刃は、穿孔姿勢から回動姿勢までの間で回動可能に設けられ穿孔姿勢において打ち抜き孔を形成し得るものとするのが好ましい。
【0112】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。