【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の樹脂及び特定の繊維を用いる場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の樹脂組成物に関する。
1. 以下の(1)〜(3):
(1) ポリオレフィン、
(2) エポキシ変性ポリオレフィン、及び
(3) セルロース繊維、
を含
み、
前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンの230℃雰囲気における溶融粘度が、200〜7000 mPa・sであることを特徴とする、樹脂組成物。
2. 前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンが、グリシジルメタクリレート変性エチレン−プロピレン共重合体及びグリシジルメタクリレート変性ポリプロピレンからなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記項1に記載の樹脂組成物
。
3. 前記(1)ポリオレフィンが、ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記項
1又は2に記載の樹脂組成物。
4. さらに
高沸点三級アミン又は三級アミン変性ポリオレフィンを含有する、上記項1〜
3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
5. 前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンの含有量が、樹脂組成物全体の1〜5質量%である、上記項1〜
4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0010】
以下、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。なお、本発明は、樹脂組成物の製造方法の発明、樹脂組成物の使用の発明、及び、樹脂組成物の使用方法の発明も含む。
【0011】
≪本発明の樹脂組成物≫
本発明の樹脂組成物は、以下の(1)〜(3):
(1) ポリオレフィン、
(2) エポキシ変性ポリオレフィン、及び
(3) セルロース繊維
を含有する。上記特徴を有する本発明の樹脂組成物は、特定の樹脂成分としてポリオレフィン及びエポキシ変性ポリオレフィンを用い、特定の繊維としてセルロース繊維を用いる。これにより、ポリオレフィン中に極性の高いセルロース繊維が均一に分散した樹脂組成物が得られる。そのため、当該樹脂組成物は、優れた曲げ強度、引張強度及び曲げ弾性率を有する。このような本発明の樹脂組成物は、自動車内装用成形品、家電製品の外装用成形品等の使用用途に適している。
【0012】
以下、本発明の樹脂組成物の各成分について説明する。なお、(1)ポリオレフィン、(2)エポキシ変性ポリオレフィン、及び(3)セルロース繊維からなる樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物として好ましい態様の1つである。また、(1)ポリオレフィン、(2)エポキシ変性ポリオレフィン、(3)セルロース繊維及び後述する(4)塩基性化合物からなる樹脂組成物もまた、本発明の樹脂組成物として好ましい態様の1つである。
【0013】
(1)ポリオレフィン
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィンを含有する。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のホモポリマーのほか、エチレン、プロピレン等のオレフィンと他の単量体との共重合体を使用することもできる。なかでも、ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
【0014】
前記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα−オレフィンを共重合したものである。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどを1種又は数種組み合わせて用いることができる。これらのα−オレフィンの中では、エチレン及び1−ブテンからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。プロピレン−α−オレフィン共重合体のプロピレン成分とα−オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0015】
ポリオレフィンは1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
ポリオレフィンの含有量は、特に限定されないが、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、耐衝撃性等の観点から、本発明の樹脂組成物全体の60〜89質量%が好ましく、本発明の樹脂組成物全体の62〜87質量%がより好ましく、本発明の樹脂組成物全体の63〜70質量%がさらに好ましい。
【0017】
(2)エポキシ変性ポリオレフィン
本発明の樹脂組成物は、エポキシ変性ポリオレフィンを含有する。当該エポキシ変性ポリオレフィンを含有することにより、極性の低いポリオレフィン中に極性の高いセルロース繊維が均一に分散した樹脂組成物が得られる。
【0018】
エポキシ変性ポリオレフィンとしては、α−オレフィンの単独重合体又は共重合体に、グリシジル基又はエポキシ基を有する単量体を、有機過酸化物と作用してグラフト結合されるものが挙げられる。
【0019】
前記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどを1種又は数種組み合わせて用いることができる。
【0020】
前記グリシジル基又はエポキシ基を有する単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、他の類似する部分についても同様である。
【0021】
有機過酸化物は、重合開始剤として使用することができる。前記有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルパーオキシフタレート、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾニトリル類等が挙げられる。
【0022】
具体的なエポキシ変性ポリオレフィンとしては、グリシジル(メタ)アクリレート変性ポリエチレン、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−アクリル酸メチルエステル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−アクリル酸ブチルエステル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−アクリル酸―アクリル酸エステル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−メタクリル酸―メタクリル酸エステル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−α−オレフィン共重合体等のエポキシ変性ポリエチレン;グリシジル(メタ)アクリレート変性ポリプロピレン、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−プロピレン共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のエポキシ変性ポリプロピレン;などが挙げられる。なかでも、グリシジルメタクリレート変性エチレン−プロピレン共重合体及びグリシジルメタクリレート変性ポリプロピレンからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、グリシジルメタクリレート変性ポリプロピレン(GMA変性ポリプロピレン)がより好ましい。
【0023】
エポキシ変性ポリオレフィンの製造方法としては、特に限定されず、例えばラジカルグラフト反応(即ち主鎖となるポリマーに対してラジカル種を生成し、そのラジカル種を重合開始点としてモノマーをグラフト重合させる反応)、などが挙げられる。
【0024】
エポキシ変性ポリオレフィンのエポキシ当量は、セルロース繊維の分散性を効率的に付与する観点から900〜8000g/eq.が好ましく、1500〜3000g/eq.がより好ましく、1800〜2200g/eq.がさらに好ましい。
【0025】
エポキシ変性ポリオレフィンの230℃雰囲気における溶融粘度は、200〜7000 mPa・sが好ましく、200〜1000 mPa・sがより好ましい。溶融粘度が上記範囲内である場合、優れたせん断強度を有するとともに、当該エポキシ変性ポリオレフィンがセルロース繊維界面へ拡散しやすく、結果として界面接着改善効果が大きい。前記溶融粘度は、例えば、東洋製作所株式会社製、MODEL ET-45P回転式粘度計で測定することができる。
【0026】
以下、エポキシ変性ポリオレフィンの製造方法の一例として、具体的にグリシジルメタクリレート変性ポリオレフィンの製造方法の詳細を述べる。
【0027】
第1工程では、反応缶にポリオレフィン、トルエン及びグリシジルメタクリレート(グリシジルメタアクリレート)を仕込み、その後120〜130℃程度に昇温する。第2工程では、上記反応缶にさらに重合開始剤としての有機過酸化物(好ましくは、ジ−t−ブチルパーオキサイド)を添加し、130〜140℃程度に昇温を行うことによりポリオレフィンとグリシジルメタクリレートとを反応させる。第3工程では、上記反応によって得られた生成物を冷却した後、ブロー(再沈)を行い、さらにポリグリシジルメタクリレートを溶解しうる溶剤(例えば、メチルエチルケトン、アセトン等)を加えて撹拌し、生成物をスラリー化する。この工程により、未反応物であるポリグリシジルメタクリレートを洗浄することができる。第4工程では、当該スラリー化した生成物を遠心分離して再びスラリー化した後、減圧乾燥をする。これにより、グリシジルメタクリレート変性ポリオレフィンが得られる。
【0028】
エポキシ変性ポリオレフィンは1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
ポリオレフィンとエポキシ変性ポリオレフィンの特に好ましい組み合わせとしては、ポリプロピレンとグリシジルメタクリレート変性ポリプロピレンとの組み合わせが挙げられる。
【0030】
エポキシ変性ポリオレフィンの含有量は、特に限定されないが、本発明の樹脂組成物全体の1〜5質量%が好ましく、本発明の樹脂組成物全体の1〜3質量%がより好ましい。エポキシ変性ポリオレフィンの含有量が上記範囲内である場合、ポリオレフィン中でのセルロース繊維の分散性が良く、その結果、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率が特に優れる。
【0031】
(3)セルロース繊維
本発明の樹脂組成物は、セルロース繊維を含有する。セルロース繊維は、樹脂組成物の曲げ強度、引張強度、曲げ弾性率等の各力学的物性を向上させる。
【0032】
セルロース繊維としては木綿、ちょ麻、亜麻等の天然セルロース繊維、ビスコース法レーヨン、銅アンモニア法レーヨン等の再生セルロース繊維等が挙げられる。
【0033】
セルロース繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、18〜2200μmが好ましい。
【0034】
セルロース繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、15〜35μmが好ましい。
【0035】
セルロース繊維の平均アスペクト比(繊維長さ/繊維径)は、特に限定されないが、1.2〜60が好ましい。
【0036】
セルロース繊維は、平均繊維長が120〜2200μmであって、平均アスペクト比が2〜45という組み合わせの場合、曲げ強度、引張強度、曲げ弾性率等の観点でより好ましい。
【0037】
セルロース繊維の繊維長及び繊維径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、光学顕微鏡等によって測定することができる。
【0038】
セルロース繊維は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
セルロース繊維の含有量は、特に限定されないが、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、耐衝撃性等の観点から、本発明の樹脂組成物全体の5〜50質量%が好ましく、本発明の樹脂組成物全体の10〜35質量%がより好ましく、本発明の樹脂組成物全体の27〜33質量%がさらに好ましい。
【0040】
(4)その他の成分
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン、エポキシ変性ポリオレフィン及びセルロース繊維の他、塩基性化合物を適宜含有することができる。
【0041】
塩基性化合物としては、高沸点三級アミン、四級アミン塩、ポリアリルアミンなどのポリアミン系樹脂;三級アミン変性ポリオレフィンなどが挙げられる。上記塩基性化合物は、低沸点アミン成分由来の臭気を抑制しながら、樹脂組成物中のセルロース繊維の分散性を保持しつつ、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率を高めることができる。
【0042】
高沸点三級アミンとしては、トリオクチルアミン、トリドデシルアミン、トリステアリルアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)等が挙げられる。
【0043】
四級アミン塩としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0044】
三級アミン変性ポリオレフィンとしては、α−オレフィンの単独重合体又は共重合体に、三級アミンと反応性官能基を有する化合物を付加されたものが挙げられ、例えば、ポリオレフィンをジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどで変性した樹脂が挙げられる。
【0045】
前記α−オレフィンの単独重合体又は共重合体としては、前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンで例示されたα−オレフィンを重合させた単独重合体又は共重合体と、同じものを使用することができる。ここで、前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンで例示されたα−オレフィンとは、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどの1種又は数種組み合わせたものである。
【0046】
塩基性化合物は、少量配合で上記効果が得られる場合があることから、あらかじめ上記(1)ポリオレフィンと溶融混練し、マスターバッチを作成しておいてもよい。
【0047】
塩基性化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
塩基性化合物を使用する場合、その含有量は特に限定されないが、本発明の樹脂組成物全体の0.05〜2質量%が好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果に影響を与えない範囲内で、添加剤、エラストマーなどを適宜含有することができる。前記添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、染料等の各種添加剤が挙げられる。
【0050】
≪本発明の樹脂組成物の製造方法≫
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、二軸押出機を用いた溶融混練によってポリオレフィン、エポキシ変性ポリオレフィン及びセルロース繊維を複合化する方法が挙げられる。この際、各原料はそれぞれ個別のコイルフィーダーにより供給され、混練温度は、ポリオレフィンの融点よりも高い200℃程度であることが好ましい。また、回収方法については、二軸押出機により吐出されたストランド状の溶融樹脂を冷却後、ペレタイザーにより裁断してペレットとすることが好ましく、得られたペレットを用いて、射出成形機によって試験片を作成するものとする。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、自動車内装用成形品、家電製品の外装用成形品等の使用用途に適している。