特許第6052167号(P6052167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052167
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/02 20060101AFI20161219BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20161219BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C08L23/02
   C08L1/02
   C08L23/26
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-512036(P2013-512036)
(86)(22)【出願日】2012年12月3日
(86)【国際出願番号】JP2012081291
(87)【国際公開番号】WO2013099530
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年9月15日
(31)【優先権主張番号】特願2011-289947(P2011-289947)
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 秀行
(72)【発明者】
【氏名】柏原 健二
(72)【発明者】
【氏名】横道 卓也
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−002241(JP,A)
【文献】 特開2006−077063(JP,A)
【文献】 特開2011−021087(JP,A)
【文献】 特開2011−231237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(3):
(1) ポリオレフィン、
(2) エポキシ変性ポリオレフィン、及び
(3) セルロース繊維、
を含み、
前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンの230℃雰囲気における溶融粘度が、200〜7000 mPa・sであることを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンが、グリシジルメタクリレート変性エチレン−プロピレン共重合体及びグリシジルメタクリレート変性ポリプロピレンからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(1)ポリオレフィンが、ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに高沸点三級アミン又は三級アミン変性ポリオレフィンを含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンの含有量が、樹脂組成物全体の1〜5質量%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂は、良好な耐衝撃性、耐熱変形性、成形加工性等を有する為、自動車外装用及び内装用、自動車部品、家電部品、家電製品の外装用成型品、工業部品、日用雑貨等の樹脂材料として各種の用途に使用されている。
【0003】
樹脂組成物としては、例えば、特許文献1において、ポリオレフィン樹脂、植物繊維に加えて、カルボキシル基又はカルボキシル誘導体基含有不飽和化合物で変性されたポリオレフィンを使用することが提案されている。しかしながら、近年の自動車内装用成形品、家電製品の外装用成形品等の使用用途においては、当該樹脂組成物は充分な曲げ強度、引張強度、曲げ弾性率等を有するとはいえず、改良の余地がある。
【0004】
また、特許文献2及び3において、樹脂組成物中に相溶化剤として、ポリオレフィン樹脂及び繊維に加えて、酸変性又はエポキシ変性オレフィン系化合物を使用することが提案されている。しかしながら、特許文献2及び3では酸変性オレフィン系化合物を使用した場合のみ開示しており、かかる樹脂組成物は曲げ強度、引張強度、曲げ弾性率の点で改良の余地がある。
【0005】
以上より、ポリオレフィン樹脂及び繊維を含有する樹脂組成物であって、自動車内装用成形品、家電製品の外装用成形品等の使用用途に適した充分な曲げ強度、引張強度及び曲げ弾性率を有する樹脂組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−283475号公報
【特許文献2】特開2011−231237号公報
【特許文献3】特開2007−56176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、自動車内装用成形品、家電製品の外装用成形品等の使用用途に適した、優れた曲げ強度、引張強度及び曲げ弾性率を有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の樹脂及び特定の繊維を用いる場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の樹脂組成物に関する。
1. 以下の(1)〜(3):
(1) ポリオレフィン、
(2) エポキシ変性ポリオレフィン、及び
(3) セルロース繊維、
を含み、
前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンの230℃雰囲気における溶融粘度が、200〜7000 mPa・sであることを特徴とする、樹脂組成物。
2. 前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンが、グリシジルメタクリレート変性エチレン−プロピレン共重合体及びグリシジルメタクリレート変性ポリプロピレンからなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記項1に記載の樹脂組成物
. 前記(1)ポリオレフィンが、ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記項1又は2に記載の樹脂組成物。
. さらに高沸点三級アミン又は三級アミン変性ポリオレフィンを含有する、上記項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
. 前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンの含有量が、樹脂組成物全体の1〜5質量%である、上記項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0010】
以下、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。なお、本発明は、樹脂組成物の製造方法の発明、樹脂組成物の使用の発明、及び、樹脂組成物の使用方法の発明も含む。
【0011】
≪本発明の樹脂組成物≫
本発明の樹脂組成物は、以下の(1)〜(3):
(1) ポリオレフィン、
(2) エポキシ変性ポリオレフィン、及び
(3) セルロース繊維
を含有する。上記特徴を有する本発明の樹脂組成物は、特定の樹脂成分としてポリオレフィン及びエポキシ変性ポリオレフィンを用い、特定の繊維としてセルロース繊維を用いる。これにより、ポリオレフィン中に極性の高いセルロース繊維が均一に分散した樹脂組成物が得られる。そのため、当該樹脂組成物は、優れた曲げ強度、引張強度及び曲げ弾性率を有する。このような本発明の樹脂組成物は、自動車内装用成形品、家電製品の外装用成形品等の使用用途に適している。
【0012】
以下、本発明の樹脂組成物の各成分について説明する。なお、(1)ポリオレフィン、(2)エポキシ変性ポリオレフィン、及び(3)セルロース繊維からなる樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物として好ましい態様の1つである。また、(1)ポリオレフィン、(2)エポキシ変性ポリオレフィン、(3)セルロース繊維及び後述する(4)塩基性化合物からなる樹脂組成物もまた、本発明の樹脂組成物として好ましい態様の1つである。
【0013】
(1)ポリオレフィン
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィンを含有する。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のホモポリマーのほか、エチレン、プロピレン等のオレフィンと他の単量体との共重合体を使用することもできる。なかでも、ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
【0014】
前記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα−オレフィンを共重合したものである。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどを1種又は数種組み合わせて用いることができる。これらのα−オレフィンの中では、エチレン及び1−ブテンからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。プロピレン−α−オレフィン共重合体のプロピレン成分とα−オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0015】
ポリオレフィンは1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
ポリオレフィンの含有量は、特に限定されないが、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、耐衝撃性等の観点から、本発明の樹脂組成物全体の60〜89質量%が好ましく、本発明の樹脂組成物全体の62〜87質量%がより好ましく、本発明の樹脂組成物全体の63〜70質量%がさらに好ましい。
【0017】
(2)エポキシ変性ポリオレフィン
本発明の樹脂組成物は、エポキシ変性ポリオレフィンを含有する。当該エポキシ変性ポリオレフィンを含有することにより、極性の低いポリオレフィン中に極性の高いセルロース繊維が均一に分散した樹脂組成物が得られる。
【0018】
エポキシ変性ポリオレフィンとしては、α−オレフィンの単独重合体又は共重合体に、グリシジル基又はエポキシ基を有する単量体を、有機過酸化物と作用してグラフト結合されるものが挙げられる。
【0019】
前記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどを1種又は数種組み合わせて用いることができる。
【0020】
前記グリシジル基又はエポキシ基を有する単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、他の類似する部分についても同様である。
【0021】
有機過酸化物は、重合開始剤として使用することができる。前記有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルパーオキシフタレート、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾニトリル類等が挙げられる。
【0022】
具体的なエポキシ変性ポリオレフィンとしては、グリシジル(メタ)アクリレート変性ポリエチレン、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−アクリル酸メチルエステル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−アクリル酸ブチルエステル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−アクリル酸―アクリル酸エステル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−メタクリル酸―メタクリル酸エステル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−α−オレフィン共重合体等のエポキシ変性ポリエチレン;グリシジル(メタ)アクリレート変性ポリプロピレン、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−プロピレン共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のエポキシ変性ポリプロピレン;などが挙げられる。なかでも、グリシジルメタクリレート変性エチレン−プロピレン共重合体及びグリシジルメタクリレート変性ポリプロピレンからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、グリシジルメタクリレート変性ポリプロピレン(GMA変性ポリプロピレン)がより好ましい。
【0023】
エポキシ変性ポリオレフィンの製造方法としては、特に限定されず、例えばラジカルグラフト反応(即ち主鎖となるポリマーに対してラジカル種を生成し、そのラジカル種を重合開始点としてモノマーをグラフト重合させる反応)、などが挙げられる。
【0024】
エポキシ変性ポリオレフィンのエポキシ当量は、セルロース繊維の分散性を効率的に付与する観点から900〜8000g/eq.が好ましく、1500〜3000g/eq.がより好ましく、1800〜2200g/eq.がさらに好ましい。
【0025】
エポキシ変性ポリオレフィンの230℃雰囲気における溶融粘度は、200〜7000 mPa・sが好ましく、200〜1000 mPa・sがより好ましい。溶融粘度が上記範囲内である場合、優れたせん断強度を有するとともに、当該エポキシ変性ポリオレフィンがセルロース繊維界面へ拡散しやすく、結果として界面接着改善効果が大きい。前記溶融粘度は、例えば、東洋製作所株式会社製、MODEL ET-45P回転式粘度計で測定することができる。
【0026】
以下、エポキシ変性ポリオレフィンの製造方法の一例として、具体的にグリシジルメタクリレート変性ポリオレフィンの製造方法の詳細を述べる。
【0027】
第1工程では、反応缶にポリオレフィン、トルエン及びグリシジルメタクリレート(グリシジルメタアクリレート)を仕込み、その後120〜130℃程度に昇温する。第2工程では、上記反応缶にさらに重合開始剤としての有機過酸化物(好ましくは、ジ−t−ブチルパーオキサイド)を添加し、130〜140℃程度に昇温を行うことによりポリオレフィンとグリシジルメタクリレートとを反応させる。第3工程では、上記反応によって得られた生成物を冷却した後、ブロー(再沈)を行い、さらにポリグリシジルメタクリレートを溶解しうる溶剤(例えば、メチルエチルケトン、アセトン等)を加えて撹拌し、生成物をスラリー化する。この工程により、未反応物であるポリグリシジルメタクリレートを洗浄することができる。第4工程では、当該スラリー化した生成物を遠心分離して再びスラリー化した後、減圧乾燥をする。これにより、グリシジルメタクリレート変性ポリオレフィンが得られる。
【0028】
エポキシ変性ポリオレフィンは1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
ポリオレフィンとエポキシ変性ポリオレフィンの特に好ましい組み合わせとしては、ポリプロピレンとグリシジルメタクリレート変性ポリプロピレンとの組み合わせが挙げられる。
【0030】
エポキシ変性ポリオレフィンの含有量は、特に限定されないが、本発明の樹脂組成物全体の1〜5質量%が好ましく、本発明の樹脂組成物全体の1〜3質量%がより好ましい。エポキシ変性ポリオレフィンの含有量が上記範囲内である場合、ポリオレフィン中でのセルロース繊維の分散性が良く、その結果、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率が特に優れる。
【0031】
(3)セルロース繊維
本発明の樹脂組成物は、セルロース繊維を含有する。セルロース繊維は、樹脂組成物の曲げ強度、引張強度、曲げ弾性率等の各力学的物性を向上させる。
【0032】
セルロース繊維としては木綿、ちょ麻、亜麻等の天然セルロース繊維、ビスコース法レーヨン、銅アンモニア法レーヨン等の再生セルロース繊維等が挙げられる。
【0033】
セルロース繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、18〜2200μmが好ましい。
【0034】
セルロース繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、15〜35μmが好ましい。
【0035】
セルロース繊維の平均アスペクト比(繊維長さ/繊維径)は、特に限定されないが、1.2〜60が好ましい。
【0036】
セルロース繊維は、平均繊維長が120〜2200μmであって、平均アスペクト比が2〜45という組み合わせの場合、曲げ強度、引張強度、曲げ弾性率等の観点でより好ましい。
【0037】
セルロース繊維の繊維長及び繊維径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、光学顕微鏡等によって測定することができる。
【0038】
セルロース繊維は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
セルロース繊維の含有量は、特に限定されないが、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、耐衝撃性等の観点から、本発明の樹脂組成物全体の5〜50質量%が好ましく、本発明の樹脂組成物全体の10〜35質量%がより好ましく、本発明の樹脂組成物全体の27〜33質量%がさらに好ましい。
【0040】
(4)その他の成分
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン、エポキシ変性ポリオレフィン及びセルロース繊維の他、塩基性化合物を適宜含有することができる。
【0041】
塩基性化合物としては、高沸点三級アミン、四級アミン塩、ポリアリルアミンなどのポリアミン系樹脂;三級アミン変性ポリオレフィンなどが挙げられる。上記塩基性化合物は、低沸点アミン成分由来の臭気を抑制しながら、樹脂組成物中のセルロース繊維の分散性を保持しつつ、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率を高めることができる。
【0042】
高沸点三級アミンとしては、トリオクチルアミン、トリドデシルアミン、トリステアリルアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)等が挙げられる。
【0043】
四級アミン塩としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0044】
三級アミン変性ポリオレフィンとしては、α−オレフィンの単独重合体又は共重合体に、三級アミンと反応性官能基を有する化合物を付加されたものが挙げられ、例えば、ポリオレフィンをジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどで変性した樹脂が挙げられる。
【0045】
前記α−オレフィンの単独重合体又は共重合体としては、前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンで例示されたα−オレフィンを重合させた単独重合体又は共重合体と、同じものを使用することができる。ここで、前記(2)エポキシ変性ポリオレフィンで例示されたα−オレフィンとは、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどの1種又は数種組み合わせたものである。
【0046】
塩基性化合物は、少量配合で上記効果が得られる場合があることから、あらかじめ上記(1)ポリオレフィンと溶融混練し、マスターバッチを作成しておいてもよい。
【0047】
塩基性化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
塩基性化合物を使用する場合、その含有量は特に限定されないが、本発明の樹脂組成物全体の0.05〜2質量%が好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果に影響を与えない範囲内で、添加剤、エラストマーなどを適宜含有することができる。前記添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、染料等の各種添加剤が挙げられる。
【0050】
≪本発明の樹脂組成物の製造方法≫
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、二軸押出機を用いた溶融混練によってポリオレフィン、エポキシ変性ポリオレフィン及びセルロース繊維を複合化する方法が挙げられる。この際、各原料はそれぞれ個別のコイルフィーダーにより供給され、混練温度は、ポリオレフィンの融点よりも高い200℃程度であることが好ましい。また、回収方法については、二軸押出機により吐出されたストランド状の溶融樹脂を冷却後、ペレタイザーにより裁断してペレットとすることが好ましく、得られたペレットを用いて、射出成形機によって試験片を作成するものとする。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、自動車内装用成形品、家電製品の外装用成形品等の使用用途に適している。
【発明の効果】
【0052】
本発明の樹脂組成物は、特定の樹脂成分としてポリオレフィン及びエポキシ変性ポリオレフィンを用い、特定の繊維としてセルロース繊維を用いる。これにより、ポリオレフィン中に極性の高いセルロース繊維が均一に分散した樹脂組成物が得られる。そのため、当該樹脂組成物は、優れた曲げ強度、引張強度及び曲げ弾性率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0054】
製造例1
1Lオートクレーブに、ポリプロピレン(230℃雰囲気における溶融粘度=400 mPa・s)100質量部、トルエン70質量部及びグリシジルメタクリレート(GMA)10質量部を加え、130℃まで昇温することによって、ポリプロピレンを均一溶解させた。当該130℃にまで昇温されたポリプロピレン溶液にジ−tert−ブチルパーオキサイドを4質量部加え、140℃で3時間撹拌した。その後、得られた反応液を冷却後、多量のメチルエチルケトンが入った容器に注ぎ、樹脂を析出させた。その後、当該樹脂を含有する液を遠心分離することにより、グリシジルメタクリレートがグラフト重合した変性ポリプロピレンとポリグリシジルメタクリレートとを固液分離し、精製した。その後、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、グリシジルメタクリレート変性ポリプロピレン(GMA変性ポリプロピレン(PP−1、エポキシ当量=1800g/eq.、230℃雰囲気における溶融粘度=280 mPa・s))を得た。
【0055】
製造例2
1Lオートクレーブに、ポリプロピレン(230℃雰囲気における溶融粘度=160000 mPa・s以上、230℃雰囲気におけるメルトフローレート=9g/10分)100質量部、トルエン190質量部及びグリシジルメタクリレート30質量部を加え、130℃まで昇温することによって、ポリプロピレンを均一溶解させた。当該ポリプロピレンを均一溶解させた後の製造工程は、製造例1におけるポリプロピレンを均一溶解させた後の製造工程と同様とした。これにより、グリシジルメタクリレート変性ポリプロピレン(GMA変性ポリプロピレン(PP−2、エポキシ当量=2200g/eq.、230℃雰囲気における溶融粘度=6900 mPa・s))を得た。
【0056】
製造例3
1Lオートクレーブに、ポリプロピレン(230℃雰囲気における溶融粘度=400 mPa・s)100質量部、トルエン70質量部及びジメチルアミノプロピルアクリルアミド20質量部を加え、130℃まで昇温することによって、ポリプロピレンを均一溶解させた。当該ポリプロピレンを均一溶解させた後の製造工程は、製造例1におけるポリプロピレンを均一溶解させた後の製造工程と同様とした。これにより、三級アミン変性ポリプロピレン(PP−3、アミン価=900g/eq.、230℃雰囲気における溶融粘度=840 mPa・s)を得た。
【0057】
製造例4
スクリュー径15mmの同方向回転完全噛合型二軸押出機(株式会社テクノベル製、KZW15TW-45/60MG-NH)に、ポリプロピレン(プライムポリマー社製、「J105SP」)を21.3g/分、トリドデシルアミンを4.6ml/分の割合で供給し、シリンダー温度を200℃にて溶融混練を行い、吐出口より吐出した。吐出されたストランド状の溶融樹脂を、冷却バスを通過させて冷却し、ペレタイザーにより巻取りながら裁断し、減圧乾燥することで、ペレット状の三級アミン−ポリプロピレンマスターバッチ(トリドデシルアミンとポリプロピレンの混合物、PP−4、三級アミン含量=15wt%、アミン価=3480g/eq.)を得た。
【0058】
製造例5
トリドデシルアミンに代えて、トリエタノールアミンを1.1ml/分の割合で供給した以外は、製造例4と同様の方法により、三級アミン−ポリプロピレンマスターバッチ(トリエタノールアミンとポリプロピレンの混合物、PP−5、三級アミン含量=6wt%、アミン価=2500g/eq.)を得た。
【0059】
製造例6
トリドデシルアミンに代えて、ジアザビシクロウンデセンを1.3ml/分の割合で供給した以外は、製造例4と同様の方法により、三級アミン−ポリプロピレンマスターバッチ(ジアザビシクロウンデセンとポリプロピレンの混合物、PP−6、三級アミン含量=6wt%、アミン価=2500g/eq.)を得た。
【0060】
実施例1〜12及び比較例1〜5
以下の表1に記載の各成分を、スクリュー径15mmの同方向回転完全噛合型二軸押出機(株式会社テクノベル製、KZW15TW-45/60MG-NH)に所定質量部供給し、シリンダー温度を200℃にて溶融混練を行い、吐出口より吐出した。吐出されたストランド状の溶融樹脂を、冷却バスを通過させて冷却し、ペレタイザーにより巻取りながら裁断することにより、各ペレット状のサンプルを得た。該サンプルを減圧乾燥後、射出成形機(東洋機械金属株式会社製、PLASTAR Si-900III D150)を用いて、シリンダー温度180℃、圧力100MPaにて、各評価用試験片を作成した。
【0061】
なお、ポリプロピレンはプライムポリマー社製「J105SP(230℃雰囲気におけるメルトフローレート=9g/10分)」を使用し、セルロース繊維はレッテンマイヤー社製「アルボセルBWW40(平均繊維長=200μm、平均繊維径=20μm)」を使用し、GMA変性ポリプロピレン(PP−1、エポキシ当量=1800g/eq.、230℃雰囲気での溶融粘度=280 mPa・s)(PP−2、エポキシ当量=2200g/eq.、230℃雰囲気での溶融粘度=6900 mPa・s)は上記製造例1又は2によって得られたものを使用し、MAH変性ポリプロピレン(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)は三洋化成社製「ユーメックス1010」を使用した。三級アミン変性ポリプロピレン(PP−3、アミン価=900g/eq.、230℃雰囲気下における溶融粘度=840mPa・s)は、上記製造例3によって得られたものを使用した。三級アミン−ポリプロピレンマスターバッチ(PP−4、PP−5、PP−6)は、上記製造例4〜6によって得られたものを使用した。
【0062】
試験例1(分散性試験)
実施例1〜12及び比較例1〜5で得られた各ペレット状のサンプルを、ホットプレス(テスター産業株式会社製、SA−302)を用いて圧力20MPa、200℃で2分間プレスし、薄膜フィルムにした後、目視で凝集物有無の確認をして、分散性の評価とした。凝集物が確認されず、分散性が良好である場合をA評価とし、凝集物が確認できる場合をB評価とした。
【0063】
試験例2(引張強度試験)
実施例1〜12及び比較例1〜5で得られた試験片に対して、JIS K 7162(ISO 527-2)に基づき、万能試験機(インストロン社製、1175型)を用いて引張強度試験を行った。
【0064】
試験例3(曲げ強度試験)
実施例1、4及び7〜12並びに比較例1及び3〜5で得られた試験片に対して、JIS K 7171(ISO 178)に基づき、万能試験機(インストロン社製、1175型)を用いて曲げ強度試験を行った。
【0065】
試験例4(曲げ弾性率試験)
実施例1、4及び7〜12並びに比較例1及び3〜5で得られた試験片に対して、JIS K 7171(ISO 178)に基づき、万能試験機(インストロン社製、1175型)を用いて曲げ弾性率を測定した。
【0066】
【表1】