(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によれば、酸化型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩と、分散媒と、還元剤とを50℃以下で混合することにより、還元型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩を含んでなるゲルを製造することができる。
【0019】
「還元型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩を含んでなるゲル」は、還元型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩と分散媒とから実質的になるゲルである。本発明のゲルにおいて、還元型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩は、互いに会合して繊維状構造を形成し、該繊維状構造内に分散媒が含有される。
【0020】
本願明細書において「繊維状構造」とは、ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩が共有結合以外の相互作用により自己会合して形成された会合体が物理架橋して形成される三次元網目構造を意味する。すなわち、本発明のゲルは物理ゲルといえる。共有結合以外の相互作用としては、水素結合、イオン結合、配位結合、π-π相互作用(スタッキング)、疎水性相互作用等の非共有結合が挙げられるが、特には、水素結合、イオン結合である。
【0021】
本発明のゲルは、下記式(1)で表される構造の還元型PQQ誘導体又はその塩と分散媒とから実質的になる。本発明のゲルにおいて、還元型PQQ誘導体またはその塩が物理架橋により繊維状構造を形成したゲルである。
【化5】
(式中、R
1、R
2、およびR
3は、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基、を表す)。
【0022】
本発明のゲルは、式(2)で表わされる構造の酸化型PQQ誘導体又はその塩を含んでいてもよい。
【化6】
(式中、R
1、R
2、およびR
3は、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基、を表す)。
【0023】
式(1)および式(2)において、「アルキル基」は、直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味する。「炭素数1〜6のアルキル基」の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル等が挙げられる。
【0024】
式(1)および式(2)において、「アラルキル基」は、アルキル基の水素原子の1つがアリール基で置換されているアルキル基を意味する。好ましくは、炭素数7〜12のアラルキル基である。「アラルキル基」の例としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等が挙げられる。
【0025】
式(1)および式(2)において、「アルキルアリール基」は、アリール基の水素原子の1つがアルキル基で置換されているアリール基を意味する。好ましくは、炭素数7〜12のアルキルアリール基である。「アラルキル基」の例としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等が挙げられる。
【0026】
式(1)および式(2)において、「アルケニル基」は、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を意味する。好ましくは、炭素数2〜6のアルケニル基である。「アルケニル基」の例としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテン−1−イル基、1−ブテン−2−イル基、1−ブテン−3−イル基、2−ブテン−1−イル基、2−ブテン−2−イル基等が挙げられる。
【0027】
式(1)および式(2)において、「アルキニル基」は、直鎖または分岐鎖のアルキニル基を意味する。好ましくは、炭素数2〜6のアルキニル基である。「アルキニル基」の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。
【0028】
好ましくは、R
1は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子またはメチル基であり、さらに好ましくは、水素原子である。
【0029】
好ましくは、R
2は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子またはメチル基であり、さらに好ましくは、水素原子である。
【0030】
好ましくは、R
3は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子またはメチル基であり、さらに好ましくは、水素原子である。
【0031】
式(1)で表される還元型ピロロキノリンキノン誘導体は、好ましくは、R
1、R
2、およびR
3がいずれも水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である化合物であり、より好ましくは、R
1、R
2、およびR
3がいずれも水素原子またはメチル基である化合物であり、さらに好ましくは、R
1、R
2、およびR
3がいずれも水素原子である化合物(いわゆる、還元型ピロロキノリンキノン)である。
【0032】
式(2)で表される酸化型ピロロキノリンキノン誘導体は、好ましくは、R
1、R
2、およびR
3がいずれも水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である化合物であり、より好ましくは、R
1、R
2、およびR
3がいずれも水素原子またはメチル基である化合物であり、さらに好ましくは、R
1、R
2、およびR
3がいずれも水素原子である化合物(いわゆる、ピロロキノリンキノン)である。
【0033】
本発明において用いられる式(1)の還元型PQQ誘導体又は式(2)の酸化型PQQ誘導体(以下、「式(1)の還元型ピロロキノリンキノン誘導体」と「式(2)の酸化型ピロロキノリンキノン誘導体」とを区別しない場合は「ピロロキノリンキノン誘導体」または「PQQ誘導体」と表す)の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。特にアルカリ金属塩は水溶性である点で好ましい。
【0034】
アルカリ金属塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、セシウム、ルビジュウムなどの塩が挙げられる。好ましくは、ナトリウム塩である。
【0035】
PQQ誘導体のアルカリ金属塩は、1〜3個のアルカリ金属で置換されてよく、モノアルカリ金属塩、ジアルカリ金属塩、トリアルカリ金属塩のどれでも良いが、好ましくは、ジアルカリ金属塩である。PQQ誘導体のアルカリ金属塩として、特に好ましくは、ジナトリウム塩である。
【0036】
式(2)の酸化型PQQ誘導体またはその塩は、市販されているものを入手することができ、公知の方法によっても製造することができる。
【0037】
酸化型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩は、好ましくは、酸化型ピロロキノリンキノン誘導体の塩である。
【0038】
還元型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩は、好ましくは、還元型ピロロキノリンキノン誘導体の塩である。
【0039】
還元型PQQ誘導体またはその塩は、ゲルに含まれる全PQQ(還元型PQQと酸化型PQQ)誘導体またはその塩の内、0.1%から100%のモル%で含まれていることが好ましい。より好ましくは還元型PQQ誘導体またはその塩の含有量が50モル%以上、さらに好ましくは還元型PQQ誘導体またはその塩の含有量が60モル%以上、さらにより好ましくは還元型PQQ誘導体またはその塩の含有量が70モル%以上、特に好ましくは還元型PQQ誘導体またはその塩の含有量が80モル%以上、最も好ましくは還元型PQQ誘導体またはその塩の含有量が90モル%以上である。還元型PQQ誘導体またはその塩は、酸化型PQQ誘導体またはその塩より溶解しにくく、ゲル構造を形成しやすいため、出来るだけ多く、当該範囲量存在することが好ましい。
【0040】
本発明のゲルは、還元型PQQ誘導体またはその塩が、全ゲル重量中に0.001から70重量%含まれていることが好ましい。より好ましくは0.05から5重量%であり、さらに好ましくは、0.05重量%以上0.7重量%未満であり、さらにより好ましくは、0.05〜0.4重量%であり、特に好ましくは、0.05〜0.3重量%である。この濃度より薄い場合、純水等の溶媒の場合に、溶解してしまいゲル化しない。この範囲より高濃度である場合、粘土状になってしまい、ゲル状態を形成しているかどうかを判断できない。
【0041】
本発明のゲルにおいて、還元型PQQ誘導体またはその塩、又は酸化型PQQ誘導体またはその塩は、固体状態の形態であり、アモルファス、結晶どちらでもよい。アモルファスから結晶化が進行していくと考えられる。結晶化はX線回折で調べることができる。例えば、装置:株式会社RIGAKU製RINT2500、X線:Cu/管電圧40kV/管電流100mA、スキャンスピード:4.000°/min、サンプリング幅:0.020°で行った場合、本発明のゲルに含まれる還元型PQQ誘導体またはその塩は、8.14、10.41,19.74,29.94±0.08°の結晶化した物質である。
【0042】
酸化型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩と、分散媒と、還元剤とを50℃以下で混合することにより、還元型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩が互いに会合して形成された繊維状構造を有するゲルを製造することができる。
【0043】
酸化型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩と、分散媒と、還元剤との混合は、各成分を一時に混合しても、別々に混合してもよく、別々に混合する場合には、いずれを先に混合してもよい。好ましくは、酸化型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩と分散媒とを混合し、得られた混合液(溶液)と還元剤とを混合することができる。ここで、還元剤についても分散媒と混合してもよい。
【0044】
分散媒としては、水、有機溶媒、油脂等が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、プロピレングリコール、乳酸エチル、αーヒドロキシイソ酪酸メチル、油脂としては、例えば、米油、ヤシ油、トウモロコシ油、オリーブ油、菜種油、トリアセチン、大豆油、中鎖脂肪酸グリセリンエステル等が挙げられる。好ましくは、水である。分散媒が水の場合、含水ゲル(ヒドロゲル)とすることができる。分散媒を交換して分散媒を交換することも可能である。
【0045】
使用できる還元剤に特に制限がなく、代表的な還元剤であるナトリウムボロハイドライド、Na
2S
2O
4、フェニルヒドラジン、水素、フェニルチオール、NADPH,NADH,アスコルビン酸、グルタチオン、システイン等が使用できる。好ましくは安全性が高い水素、NADPH,NADH,アスコルビン酸、グルタチオン、システインである。より好ましくはアスコルビン酸である。
【0046】
アスコルビン酸としては、例えば、rhamno−アスコルビン酸、arabo−アスコルビン酸、gluco−アスコルビン酸、fuco−アスコルビン酸、glucohepto−アスコルビン酸、xylo−アスコルビン酸、galacto−アスコルビン酸、gulo−アスコルビン酸、allo−アスコルビン酸、erythro−アスコルビン酸、6−デスオキシアスコルビン酸等のアスコルビン酸に類するもの(アスコルビン酸類似体)であってもよく、これらのエステル体や塩(例えば、パルミテート、ステアレート、ナトリウム塩、カルシウム塩等)であってもよい。さらに、これらは、L体(例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム等)、D体(例えば、D−arabo−アスコルビン酸、D−arabo−アスコルビン酸ナトリウム等)、あるいは、ラセミ体であってもよい。
【0047】
本発明において用いられる還元剤は、還元剤として使用することもできるし、還元剤の溶液として使用することもできる。還元剤を溶液として使用する場合は、前記の分散媒に溶解して使用することができるが、還元剤の水溶液として使用することが好ましい。
還元剤の溶液は、例えば、0.1〜500g/lとなるように調製することができるが、好ましくは、0.5〜150g/lである。
【0048】
使用する還元剤の量は酸化型PQQ誘導体またはその塩に対して0.1から5000倍のモル数を使用すればよい。過剰に加えることで反応も進行しやすいことから1.1倍から1000倍が好ましい。より好ましくは、1.1倍から100倍である。すなわち、本発明による製造方法において、酸化型PQQ誘導体またはその塩と還元剤とのモル比は、1:0.1〜5000、好ましくは、1:1.1〜1000、より好ましくは、1:1.1〜100とすることができる。ゲルの内部に還元剤は残留してもよく、過剰の還元剤は還元型PQQ誘導体またはその塩の維持を強化することができ、安定な製品とすることができる。
【0049】
本発明のゲルの製法は、塩濃度、前駆体、温度等の状況によって変わりやすいが、次のように一般化できる。分散媒に酸化型PQQ又はその塩を加え、50℃以下、pH0〜14で還元剤を添加して反応させることでゲル化を可能とするものである。
【0050】
分散媒中で酸化型PQQは完全に溶解していてもよく、懸濁液として溶け残りがあってもよい。
【0051】
分散媒中で酸化型PQQ誘導体またはその塩が0.001〜70重量%となる様に加えればよい。好ましくは0.005から10重量%、より好ましくは0.05重量%以上0.7重量%未満であることが好ましい。高濃度にすればゲルは固くなり安定になるが、使用する酸化型PQQまたは還元型PQQの量が増え経済的でない。また、ゲルの構造形成に使われない部分が増え効率的ではない。一方で上記の範囲より低濃度では壊れやすい。
【0052】
酸化型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩の濃度は溶解度未満とすることができる。本願明細書において「溶解度」とは、溶質が溶媒に溶解する限度を意味し、飽和溶液中における溶質の濃度で表すことができる。酸化型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩の溶解度は、混合物の温度によって適宜決定することができる。例えば、酸化型ピロロキノリンキノンジナトリウムの溶解度は、25℃の場合、水100gに対して0.299gである。
【0053】
酸化型PQQ誘導体またはその塩の重量濃度は、分散媒中で、0.001〜70重量%、好ましくは0.005〜10重量%、より好ましくは0.05重量%以上0.7重量%未満、さらに好ましくは、0.05〜0.4重量%、さらにより好ましくは、0.05〜0.3重量%となるように調整することができる。
【0054】
還元剤を添加することにより、酸化型PQQ誘導体またはその塩が還元型PQQ誘導体またはその塩へ還元され、ゆっくりと繊維状固体が成長しゲル化が生じる。還元反応とゲル化が同時に進行していき、温度は低すぎると酸化型PQQの溶解度が下がりすぎて、還元反応が生じなくなる。高すぎると繊維状の固体に成長しない。好ましくは−10℃〜50℃である。
【0055】
得られた混合物の温度は、−10℃〜50℃とすることができるが、操作性の観点から、より好ましくは、0〜45℃、さらに好ましくは、0〜30℃である。
【0056】
得られた混合物は、1分以上反応させることが好ましく、10分であれば確実にゲル化することができより好ましい。好ましくは、1分〜72時間、より好ましくは、10分〜48時間である。
【0057】
本発明者は酸化型PQQ塩もゲル化することを見出しており(WO2012/020767号公報)、酸化型PQQのゲルを作製する際には高濃度に調製しないと溶解してしまってゲル化せず、均一な溶液からの形成が困難である。酸化型PQQのみでゲルを形成する際には、溶解してしまわない濃度であることが必要である。安定にゲルを作るには、好ましくは0.7重量%以上である。室温で0.3重量%ではゲルは形成することができない。
【0058】
分散媒としては、水、有機溶媒、油脂等が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、プロピレングリコール、乳酸エチル、αーヒドロキシイソ酪酸メチル、油脂としては、例えば、米油、ヤシ油、トウモロコシ油、オリーブ油、菜種油、トリアセチン、大豆油、中鎖脂肪酸グリセリンエステル等が挙げられる。好ましくは、水である。分散媒が水の場合、含水ゲル(ヒドロゲル)とすることができる。ゲル化物は含有する分散媒の交換により分散媒の交換も可能である。
【0059】
pHは0−14の範囲でよいが、好ましくは1−9であり、より好ましくは1−6である。アルカリ性では溶解しやすくなるために還元型PQQ誘導体またはその塩の濃度を高くすることが好ましい。また、アスコルビン酸での還元は酸性条件であることが好ましい。
【0060】
すなわち、酸化型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩と、分散媒と、還元剤との混合は、pH0〜14で行うことができるが、好ましくは、1〜9であり、より好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは3〜6であるる。
【0061】
ゲル中に還元型PQQ誘導体またはその塩と酸化型PQQ誘導体またはその塩が混合した状態は、酸化型PQQ誘導体またはその塩と還元剤の量の比を調整すること等で作製することができる。還元型PQQ誘導体またはその塩の存在が分子間の結合を強めゲル化を進めているが、還元型PQQ誘導体またはその塩が酸素により酸化型PQQ誘導体またはその塩へ酸化されても、ゲル形状を維持していれば特に問題がない。
【0062】
後述の実施例によれば、本発明は、PQQの塩と分散媒(水)とから、PQQ自体をゲル化可能としたことが特徴であり、通常のゲル化剤を使用しなくとも製造することができる。
【0063】
ゲルの形成は繊維状の高分子鎖が溶液全体に広がり、液体を保持することで行われる。還元型PQQ誘導体またはその塩は低分子であり、ゲル化するには高分子として繊維化することが必要になる。本発明では還元型PQQ誘導体またはその塩の形成により溶解しなくなり、非共有結合により高分子化して、線維化していると考えられる。
【0064】
本発明のゲルはこのように繊維化を分子間のつながりで作り、その形成が従来のような高温を必要とせず、容易に作製することができる。
【0065】
還元型PQQ誘導体またはその塩の分子間はアルカリ金属とのイオン結合や水素結合で形成されていると予想される。PQQ誘導体またはその塩の濃度が高い場合、ゲル化する線維構造以外に元の結晶構造も混ざった物質になるが、ゲル化が生じていれば特に問題がない。また、一旦ゲル化した物質にPQQの粉末を混合しても問題がない。
【0066】
還元型PQQが繊維に変化するためには分子鎖が伸びていると考えられるが、我々は以下のように考えている。非特許文献1に記載の結晶構造ではPQQのジナトリウム塩においては分子間の水素結合、イオン結合が存在することが示されており、また、芳香環のスタッキングも存在する。繊維化した還元型PQQは結晶とは異なる構造ではあるが、参考にすることができる。還元型ではヒドロキノンの水酸基も水素結合として関与することで分子間の結合力を強めていると考えられる。
【0067】
酸化型ピロロキノリンキノン誘導体またはその塩が含まれる場合であっても、同様の相互作用を介して会合すると考えられる。
【0068】
生成したゲルの還元型PQQ誘導体またはその塩の含有量は、仕込む酸化型PQQ誘導体またはその塩の量により決まっているが、これを希釈、または濃縮することで濃度を変えることができる。希釈は分散媒を添加すればよい。濃縮は遠心分離や濾過等で過剰の分散媒の除去をおこなうか、分散媒を蒸発させることでできる。繊維状構造を保持することができれば溶媒を含むゲルになる。
【0069】
本発明のゲルは、分散媒を交換することも可能である。例えば、分散媒として水を用いてゲル化させた場合、水を他の分散媒に置換することが可能である。分散媒の交換方法としてはゲルをフィルター上で交換用の分散媒で洗う、または交換用分散媒を加えて、上澄みを除く操作を繰り返す方法が簡便である。交換する分散媒としては、液体としてエタノール、プロパノール、ブタノール、油脂等に置換しても問題がない。本発明は含水ゲルだけでなく、有機溶媒を含有したゲルにすることも可能である。
【0070】
ゲルの性状を改善するのに一般的な高分子ゲル化剤を混合することも可能である。高分子ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、寒天、カラギーナン、コラーゲン、フコイダン、ヒアルロン酸、コンニャク、グルコマンナン、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ジェランガム、澱粉、卵白等が挙げられる。これらはゲル化した状態に混合してもよく、また、混合と同時にゲル化させてもどちらでも構わない。
【0071】
本発明のゲルは、食品、化粧品、医薬品、農薬、農芸用品、電子材料、フィルター材料等に用いることが出来る。
【0072】
食品、化粧品に用いる場合には、それに必要なその他の成分は必要に応じて添加することができる。添加剤としては、例えば、香料、酸味料、塩、甘味料、うまみ成分、果汁、発酵食品、脂質、保湿剤、美白剤、ハーブエキス、お茶、コーヒー、乳化剤、グリセリン、防腐剤、抗菌剤、ステロイド、サリチル酸メチル、ビタミン、インドメタシン等が挙げられ、必要に応じて加えればよい。
【0073】
甘味料としては、単糖、二糖、オリゴ糖、人工甘味料糖を混合することができる。より具体的にはフルクトース、グルコース、ガラクトース、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、トレハロース、パラチニット、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、カンゾウエキス、ラカンカ水あめ、蜂蜜等が挙げられる。
【0074】
これらの混合物を形成させる場合、PQQのゲルを壊さない範囲で加えることが望ましく、室温以下の条件で混合することが好ましい。
【0075】
食品、薬、化粧品の用途で使用する場合、衛生面で注意することは当然で無菌的な環境、例えば、クリーンルームで製造することが望ましい。
【0076】
本発明のゲルを乾燥させることで、還元型PQQ誘導体またはその塩からなる繊維状構造体(繊維状物質)を作ることができる。乾燥方法としては、例えば、凍結乾燥、スプレードライ乾燥、溶媒置換後の加熱乾燥等が挙げられる。このゲルを乾燥して出来る固体は表面積が大きく、繊維状である特徴があり、これにより食感、見た目が通常の粉末とは異なり、特に食品、化粧品や医薬の分野で有効である。また、これを板の上にキャストしてフィルム状にすることも可能である。
【0077】
本発明の繊維状構造体の繊維の太さは、0.02〜2000μm、好ましくは、0.05〜500μm、より好ましくは、0.05〜50μm、さらにより好ましくは、0.05〜5μmとすることができる。本発明において、繊維の太さは、顕微鏡(電子顕微鏡、光学顕微鏡、プローブ等)を用いて測定することができる。
【0078】
本発明の繊維状構造体(繊維状物質)は、その繊維構造から粉体とからませて結びつけることが可能である。例えば、錠剤にするときには酸化型PQQ又は還元型PQQの粉末に混合させて成形することも可能になる。これにより、酸化型PQQ又は還元型PQQの粉末から錠剤成形の際に必要であった結合剤等の使用を減らすことが可能になる。最終的な成型品中に還元型PQQは酸化型PQQと合わせたモル数のうち、1%以上含まれることが好ましい。
【0079】
本発明の好ましい態様によれば、酸化型ピロロキノリンキノンのナトリウム塩の溶液と還元剤とを50℃以下で混合することにより製造される、還元型ピロロキノリンキノンのナトリウム塩を含んでなるゲルおよびその製造方法である。ここで、混合物(溶液)中における酸化型ピロロキノリンキノンのナトリウム塩の重量濃度は、好ましくは、0.05重量%以上0.7重量%未満、より好ましくは、0.05〜0.4重量%、さらにより好ましくは、0.05〜0.3重量%である。
【0080】
本発明のより好ましい態様によれば、酸化型ピロロキノリンキノンのナトリウム塩の溶液とアスコルビン酸溶液とを50℃以下で混合することにより製造される、還元型ピロロキノリンキノンのナトリウム塩を含んでなるゲルおよびその製造方法である。ここで、混合物(溶液)中における酸化型ピロロキノリンキノンのナトリウム塩の重量濃度は、好ましくは、0.05重量%以上0.7重量%未満、より好ましくは、0.05〜0.4重量%、さらにより好ましくは、0.05〜0.3重量%である。
【0081】
本発明によれば、また、以下の発明も提供される。
(1)式(1)に示す還元型ピロロキノリンキノン又はその塩と分散媒を含むゲル。
【化7】
(式中R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基、を表す)。
(2)還元型ピロロキノリンキノン又はその塩が、互いに物理架橋して繊維状構造を形成していることを特徴とする、(1)に記載のゲル。
(3)還元型ピロロキノリンキノン又はその塩が全ゲル重量に対して0.001〜70重量%である、(1)又は(2)に記載のゲル。
(4)還元剤をさらに含むことを特徴とする(3)に記載のゲル。
(5)分散媒が水であることを特徴とする、(3)又は(4)に記載のゲル。
(6)式(2)に示す酸化型ピロロキノリンキノン又はその塩をさらに含む(3)〜(5)のいずれかに記載のゲル。
【化8】
(式中R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基、を表す)
(7)還元型ピロロキノリンキノンが全ピロロキノリンキノンのモル数中に0.1モル%以上含まれる(6)に記載のゲル。
(8)高分子ゲル化剤をさらに含んでなる、(3)〜(7)のいずれかに記載のゲル。
(9)(3)〜(8)のいずれかに記載のゲルを乾燥した乾燥体。
(10)(1)〜(8)のいずれかに記載のゲルから作ったフィルム。
(11)(3)〜(8)のいずれかに記載のゲル又は(9)に記載の乾燥体を含んでなる、食品。
(12)(3)〜(8)のいずれかに記載のゲル又は(9)に記載の乾燥体を含んでなる、医薬。
(13)(3)〜(8)のいずれかに記載のゲル又は(9)に記載の乾燥体を含んでなる、化粧品。
(14)式(2)に示す酸化型ピロロキノリンキノン又はその塩と
【化9】
(式中R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜6のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基、を表す)
還元剤を、分散媒中、50℃以下で混合することを特徴とするゲルの製造方法。
(15)分散媒中のピロロキノリンキノンの濃度が0.05重量%以上0.7重量%未満となる様に混合することを特徴とする(14)記載の製造方法。
【実施例】
【0082】
実施例及び比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例にのみ限定されるものではない。
【0083】
本実施例および比較例では、粉末X線回折(以下、XRDと記す。)による回折角2θの測定は、下記の測定条件で行った。
装置:株式会社RIGAKU製RINT2500
X線:Cu/管電圧40kV/管電流100mA
スキャンスピード:4.000°/min
サンプリング幅:0.020°
【0084】
本実施例および比較例では、光学顕微鏡写真は、NIKON製顕微鏡TE−2000Sを使用し、対物レンズ40倍で撮影した。
【0085】
本実施例および比較例では、UV測定は、HITACHI U−2000 Spectrophotometerを使用して測定した。
【0086】
原料としては、三菱ガス化学株式会社製、粉末の酸化型のPQQジナトリウムを使用した。
【0087】
実施例1:ゲルの作成(1)
酸化型のPQQジナトリウム粉末3gを水1Lに溶解して3g/L PQQジナトリウム溶液を作製した。アスコルビン酸10gを水90mlに溶かし、10%アスコルビン酸溶液を作製した。
3g/L酸化型PQQジナトリウム溶液4mlと10%アスコルビン酸溶液0.1mlをポリスチレン製試験管に入れ、室温で一晩放置し、黒色のゲル化物を得た。混合時のpHは3.7であった。
また、このゲルをαーヒドロキシイソ酪酸メチルで洗って、光学顕微鏡観察した結果を
図9に示す。結晶は見当たらず、繊維状になっていた。
【0088】
実施例2:ゲルの作成(2)
実施例1と同様にして調製した3g/L酸化型PQQジナトリウム溶液4mlと10%アスコルビン酸溶液0.2mlをポリスチレン製試験管に入れ、氷の上で30分冷却した。その後室温で一晩放置した。その結果、赤色のゲル化物を得た。このとき(混合時)のpHは3.7であった。
【0089】
実施例3:ゲルの作成(3)
実施例1と同様にして調製した3g/L酸化型PQQジナトリウム溶液4mlと10%アスコルビン酸溶液0.1mlをポリスチレン製試験管に入れ、氷の上で30分冷却した。その後冷蔵庫約10℃で一晩放置した。その結果、赤色のゲル化物を得た。このとき(混合時)のpHは3.7であった。
【0090】
実施例4:ゲルの作成(4)
実施例1と同様にして調製した3g/L酸化型PQQジナトリウム溶液4mlと10%アスコルビン酸溶液1mlをポリスチレン製試験管に入れ、氷の上で30分冷却した。その後冷蔵庫約10℃で一晩放置した。その結果、茶色のゲル化物を得た。このとき(混合時)のpHは3.1であった。
【0091】
実施例5:ゲルの作成(5)
酸化型PQQジナトリウム粉末5gを水1Lに加え、75℃で溶解した。これを室温にして過飽和な5g/LのPQQジナトリウム溶液を作った。
5g/L PQQジナトリウム溶液4mlと10%アスコルビン酸溶液1mlをポリプロピレン製容器に入れ、冷蔵庫約10℃で1時間冷却した。その後、2時間、30℃に置いておくと暗赤色ゲルになり、全体が固まった。このとき(混合時)のpHは3.3であった。
このゲルを15mlの遠心分離用チューブで作成した写真を
図1に示す。逆さまにしても流れ落ちず、完全にゲル化している。
また、このゲルをαーヒドロキシイソ酪酸メチルで洗って、光学顕微鏡観察した結果を
図2に示す。ゲルは赤い塊として観察できた。また、一部、繊維状のモノが見えた。ゲルのほとんどは微細な繊維になっているため、光学顕微では全体が均一なフィルムとして見えた。
【0092】
実施例6:UVスペクトルによる吸光度測定
各サンプルの調製を以下の様に行い、光路長1mmの石英セルを使用して吸光度測定を行った。
【0093】
サンプル1:ゲル
実施例5と同様にして調製した5g/L酸化型PQQジナトリウム溶液0.20mlと10%アスコルビン酸溶液0.05mlをポリプロピレン製容器に入れ、冷蔵庫約10℃で1時間冷却した。その後、2時間、30℃に置いておくと暗赤色ゲルになり、全体が固まった。これに水を4.75ml加えた。この溶液をさらに1/4に水で希釈した。吸光度測定結果を
図3に示す。
【0094】
サンプル2:アスコルビン酸混合時(PQQジナトリウム0.05g/L使用)
実施例5と同様にして調製した5g/L酸化型PQQジナトリウム溶液0.20mlと10%アスコルビン酸溶液0.05mlをポリプロピレン製容器に入れ、すぐに水を4.75ml加えた。この溶液をさらに1/4に水で希釈した。吸光度測定結果を
図4に示す。
【0095】
サンプル3:還元型PQQ(PQQジナトリウム0.05g/L使用)
実施例5と同様にして調製した5g/L酸化型PQQジナトリウム溶液0.20mlと10%アスコルビン酸溶液0.05mlをポリプロピレン製容器に入れ、3時間、70℃に置いておくと黒い固体が析出した。
この個体にジメチルスルホキシド1ml加えて溶かし、水を3.75ml加えた。この溶液をさらに1/4に水で希釈した。このときの吸光度測定結果を
図5に示す。なお、この実験で得た固体は水だけでは完全に溶けないため、ジメチルスルホキシドで溶解したのち水で希釈して測定した。
また、この固体に塩酸を加えてpHを1以下にした。これを遠心分離し、上澄みを捨てた。脱気した塩酸水溶液で洗い、窒素気流によって乾燥した。ここに重ジメチルスルホキシドを加え、窒素気流下でNMR管につめた。
JEOL製500MHz NMR, JNMーECA500 スペクトルメーターを使用し、13C−NMRを室温測定した。その結果、105.7, 111.0, 119.4, 122.9, 123.6, 128.1, 131.3, 134.2, 137.8, 140.9, 142.6, 162.2, 165.5, 170.1 ppm(DMSO−d6: 39.5ppm基準)であった。この値は非特許文献5に記載の還元型PQQと一致しており、還元体の生成を確認した。
【0096】
サンプル4:PQQジナトリウム(PQQジナトリウム0.2g/L使用)
実施例5と同様にして調製した5g/L酸化型PQQジナトリウム溶液0.20mlと水0.05mlをポリプロピレン製容器に入れ、すぐに水を4.75ml加えた。吸光度測定結果を
図6に示す。
【0097】
サンプル3の240nm以下の大きな吸収は使用したジメチルスルホキシドの吸収である。アスコルビン酸を混合してすぐにPQQジナトリウムの吸収は変化し、240nmの吸収は約4倍になった。ゲル、還元体へ形状が変化しても吸収は大きく変化していない。このことから、混合すると同時に還元反応は進行し、還元体を形成していることが分かる。時間とともに析出がおこり、繊維状の析出がおこることでゲル化している。
【0098】
還元体の量はサンプル3を100%、サンプル4を0%として計算した。
サンプル1(ゲル):100%
サンプル2(混合直後):99.8%
【0099】
実施例7:ゲルの濃縮操作と分散媒の交換
実施例5で作ったゲルを遠心分離器にかけ、2000rpmで30分処理した。ゲルの体積は1/4になっており、上澄みを捨てることで濃縮体を形成した。分散媒としては、それぞれ、2N塩酸、エタノール、イソプロパノール、αーヒドロキシイソ酪酸メチルを使用した。分散媒を濃縮ゲルと同じ体積加え、遠心分離して上澄みを捨てた。これを2回繰り返し、分散媒交換ゲルを得た。分散媒の交換は行うことができ、ゲル物質が溶解して崩壊することはなかった。4種類の分散媒の異なるゲルを作ることができた。
【0100】
実施例8:粉末X線回折
実施例5で得たゲルをαーヒドロキシイソ酪酸メチルで洗浄後、減圧乾燥した。これを粉末X線で測定するとピークは見つからず、アモルファスであった。
実施例5と同様の操作で得たゲルを室温でろ過処理を2時間かけて行ったのち、減圧乾燥した。これを粉末X線で測定すると8.14、10.41,19.74,29.94±0.08°の結晶化した物質として得ることができた。この粉末X線測定結果を
図7に示す。
【0101】
比較例1
実施例5と同様にして調製した5g/LPQQ酸化型ジナトリウム溶液4mlと10%アスコルビン酸溶液1mlをポリスチレン製試験管に入れ、冷蔵庫約10℃で1時間冷却した。その後、2時間、70℃に置いておくと黒い固体が沈殿した。還元型PQQ粉末を得た。この固体の粉末X線分析の結果、アモルファスであった。
【0102】
比較例2
実施例5と同様にして調製した5g/L酸化型PQQジナトリウム溶液4mlを氷で冷却して1時間、30℃で2時間放置した。結晶が析出していたがゲル化は生じていなかった。
【0103】
実施例9:ゲルと酸化型PQQの混合
実施例5で作製したゲル1mLとPQQジナトリウム粉末0.3gを混合した。均一な混合物を得た。この混合物の還元体含有量は1.6%であった。これを減圧乾燥して固まった赤色固体を得た。
【0104】
実施例10:寒天(アガロース)中での繊維状物質の作成
実施例1と同様にして調製した3g/L酸化型PQQジナトリウム溶液40mlに和光純薬製アガロース0.40g加えた。これを電子レンジで加熱してアガロースを完全に溶解した。この溶液4mlをシャーレに入れて室温に冷却して固めた。ここに10%アスコルビン酸溶液1mlを加え、氷の上で1時間放置した。さらに30℃にして1時間後顕微鏡観察すると繊維状物質が形成していた。その顕微鏡写真を
図8に示す。さらに一晩放置しても繊維状物質が残留していた。寒天中でも繊維状物質ができた。
【0105】
実施例11:糖存在下でのゲル化
実施例5と同様にして調製した5g/Lの酸化型PQQジナトリウム溶液4mlに0.3、0.6、0.9、1.2、1.5gのソルビトールを加えて溶かした。ここに10%アスコルビン酸溶液1mlを混合し、冷蔵庫約10℃で1時間冷却した。その後、2時間、30℃に置いておくと、どの混合液も暗赤色ゲルになり、全体が固まった。ただし、ソルビトール1.2、1.5g混合したものは柔らかいゲルであった。糖の添加はゲルの形成を難しくするが、20重量%以上の濃度でもゲル化ができ、実用上問題がなかった。
【0106】
実施例12:ゲルからフィルム作製
実施例5のゲル1mlをメタノール10mlと混合し、遠心分離した。上澄みを捨て、メタノールを1ml加え、シャーレに入れ、減圧乾燥すると、シャーレ上にフィルムとして得られた。
【0107】
実施例13:ゲルからフィルム作製
実施例5のゲル1mlを2-プロパノール10mlと混合し、遠心分離した。上澄みを捨て、2−プロパノールを1ml加え、シャーレに入れ、減圧乾燥すると、シャーレ上にフィルムとして得られた。
【0108】
実施例14:ゲルからフィルム作製
実施例5のゲル4mlを濾紙No5上に入れ、吸引濾過した。2ープロパノール20mlで洗い、濾紙とともに減圧乾燥すると、濾紙に均一にコートされた。
【0109】
比較例3
比較例1の75℃で反応させた混合液を遠心分離して上澄みを捨てたのち、2−プロパノール 10mlで洗い、2−プロパノールを1ml加え、シャーレに入れ、減圧乾燥したが、結晶がシャーレの上に分散しており、フィルムにならなかった。
【0110】
比較例4
実施例5と同様にして調製した5g/Lの酸化型PQQジナトリウム溶液と4mlと10%アスコルビン酸溶液1mlを混合し、すぐに減圧乾燥した。混合直後に乾燥を始めた為、ゲル化が生じる前に水が蒸発した。そのため、粉末がまばらにあり、フィルムでなかった。
【0111】
実施例15〜17および比較例5〜6
実施例1と同様の原料を使用し、10%アスコルビン酸溶液の量、温度を変えて実験を行った。その結果を以下に示す。
【表1】
【0112】
70℃で反応を行うとゲル化されなかった。また、アスコルビン酸の添加量はゲル化に影響を与えないことが確認された。