(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
圧延ラインでは鋼板をランナウトテーブルで搬送し、その下方の狭小空間に配置される冷却装置から冷却水を噴射して鋼板を冷却する。一般的に、ランナウトテーブルは、鋼板の搬送方向に沿って複数並列して配置される搬送ロールからなる。搬送ロールの下方には、冷却装置が配置されており、該冷却装置は、搬送方向に沿って複数並列して配置される管状の冷却水ヘッダからなる。該冷却水ヘッダの各々は、各搬送ロール間下に配置されており、搬送される鋼板に噴射口が向いている直線状のノズルを複数有している。
【0003】
ランナウトテーブルで、搬送される鋼板の幅が異なる複数種の鋼板を搬送するに際し、鋼板の幅に応じて、幅方向に沿って冷却水の噴射範囲を適宜変更することが望ましい。なぜならば、鋼板の端部を適当な範囲で冷却水を噴射することができるので、端部の過冷却を抑えることができるからである。鋼板の端部は温度が下がり易く、中央部と端部とで温度差が大きくなる傾向があるが、過冷却を抑えることで、その温度差を抑えることができる。温度差を抑えると、鋼板の中央部と端部とでの材料特性がより均一になる。
【0004】
そこで、冷却水の噴射範囲を変更するべく、特許文献1には、内管と外管との二重管構造をしている冷却水ヘッダが提案されている。この冷却水ヘッダでは、内管は外管に回転可能に支えられ、該外管には、所定のピッチでノズルが配置されており、内管には、ノズルに連通可能な貫通穴が複数設けられている。貫通穴は、内管の少なくとも端部においては、前記端部から中央部に向かって周方向の長さが順次段階的に大きくなっている。
【0005】
特許文献1の冷却水ヘッダでは、冷却水を内管に供給するとともに、外管を固定して内管の回転量を適宜調整することで、冷却水の噴射範囲を拡げるまたは狭めることができる。この冷却水ヘッダでは、端部側で、貫通穴がノズルに連通せず、その貫通穴に対応するノズルからの冷却水の噴射を防ぐことを可能とする一方で、中央部側で、貫通穴をノズルに連通させて冷却水の噴射を可能とし、幅方向における噴射範囲を変更している。この冷却水ヘッダでは、内管に設けられる貫通穴の周方向の長さが取り得る個数(種類)で、噴射範囲の幅が取り得る個数(種類)が決まる。例えば、それぞれ異なる周方向の長さが4つ(d1〜d4)となる貫通穴が内管に設けられている場合には(
図5参照)、冷却水の噴射範囲の幅は4種類となる。この冷却水ヘッダでは、内管の管周を大きくして、貫通穴の取り得る周方向の長さを大きくすることが可能であり、貫通穴の周方向の長さが取り得る種類を増やして、取り得る噴射範囲の幅の種類を増やすことが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ランナウトテーブルを構成する搬送ロールは、圧延された鋼板が詰まることを防ぐために、極力隙間なく並列されるので、ランナウトテーブルの下方空間は狭小となる。特許文献1に提案されている上記冷却水ヘッダと、その内管を回転駆動する駆動装置と、冷却水供給機構と、を有する冷却装置では、冷却水ヘッダは複数並列させて、搬送ロールの隙間に設置される。よって、内管を、狭小の下方空間に適したサイズとする必要がある。このため、内管の周長さは制限され、貫通穴の周方向の長さが取り得る最大値が制限される。ひいては、1つの冷却水ヘッダでの、取り得る噴射範囲の幅の種類を無制限に増やすことはできない(制約1)。
【0008】
更には、上述の通り、ランナウトテーブルの下方空間は狭小であるので、全ての冷却水ヘッダのうち、鋼板の搬送方向に沿って1つおきに同時に冷却水ヘッダを駆動させる必要がある(制約2)。また、狭小な下方空間に適するように、駆動装置を極力小さくする必要があり、駆動装置を構成する部品数を抑える必要がある。この部品数を抑えることに起因して、鋼板の搬送方向に沿って1つおきに同時に冷却水ヘッダを駆動させている。
【0009】
この制約2を説明するために、ランナウトテーブル及び冷却装置を図面に示す。
図1及び
図2は、ランナウトテーブル1及び冷却装置4を示す側面図であり、
図2は平面図である。
図1では省略しているが、搬送ロール3には駆動機構が設けられており、冷却装置4にも、冷却水ヘッダ5に水を供給する機構や冷却水ヘッダ5を駆動する機構(駆動機構I8a及び駆動機構II8b)が設けられている。
【0010】
図2に示すように、ランナウトテーブル1の幅方向B(鋼板2の幅方向)において冷却水ヘッダ5a〜5dの左右に、2つの駆動機構I8a及び駆動機構II8bが配置されている。駆動機構I8aは、搬送方向Aに沿って1つおきに並ぶ冷却水ヘッダ5a,5cを含む第1の冷却水ヘッダ群を駆動し、駆動機構II8bは、駆動機構I8aと同様にして、1つおきに並ぶ冷却水ヘッダ5b,5dを含む第2の冷却水ヘッダ群を駆動している。搬送方向Aに沿って1つおきに同時に冷却水ヘッダ5を駆動させるという機構は、ランナウトテーブル1の下方及び側方の狭小空間に適するように構成されているものであり、実際の運用上、上記制約2に記載した冷却水ヘッダの駆動方式を変更することは困難である。
【0011】
上記特許文献1で提案されている冷却水ヘッダを、冷却装置4の全ての冷却水ヘッダ5に採用して、各冷却水ヘッダ5の内管を個別に回転駆動させることによって、幅方向Bにおける冷却水の噴射範囲を適宜変更することが可能になる。例えば、それぞれ異なる周方向の長さが4種類(d1〜d4)の貫通穴が内管に設けられる冷却ヘッダ5を、幅方向Bにおいて貫通穴1個分ずらして、搬送方向Aに沿って4つ並列する場合で、各冷却水ヘッダ5の内管を個別に回転駆動させれば、4つの冷却ヘッダ5が配置された範囲では、冷却水の噴射範囲の幅は16(=4×4)種類とすることが可能である。
【0012】
ところが、上記制約2の通り、冷却装置4では、搬送方向に1つおきに同時に冷却水ヘッダ5を駆動させる必要があるので、特許文献1で提案されている冷却水ヘッダを単に並列させても、搬送方向Aに沿って冷却水ヘッダ5の1つおきに、幅方向Bに沿って鋼板2の端部からそれぞれ異なる距離離れた位置に、冷却水が噴射されることになってしまう。上記例のように、周方向の長さが4種類(d1〜d4)の貫通穴が内管に設けられる冷却ヘッダ5を、幅方向Bにおいて貫通穴1個分ずらして、搬送方向Aに沿って4つ並列する場合では、4つの冷却ヘッダ5が配置された範囲において、同じ周方向の長さを有する、端部側に配置された貫通穴と中央部側に配置された貫通穴とから、冷却水が同時に噴射されてしまい、冷却水の噴射範囲の幅は16種類ではなく、実質的に4種類となってしまう。このように、上記制約2の通りに冷却ヘッダが駆動する場合、上記制約1のように、狭小の下方空間のサイズに応じた、貫通穴54の周方向の長さが取り得る種類(個数)に制限されてしまい、噴射範囲の幅の種類(個数)が定まってしまうことになる。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、製鉄所の圧延ラインで搬送される鋼板の幅方向において、冷却水の噴射範囲を、より多段階に調整し得る冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下の通りである。
内管と、該内管を回転可能な状態で囲む外管と、を有する冷却水ヘッダであって、前記外管には、その軸方向に沿ってノズルが複数設けられ、前記内管には、その軸方向に沿って、前記ノズルに連通する貫通穴が複数形成され、前記内管の端部において、前記貫通穴は、内管の軸方向に沿って端部から中央部に向かうにつれて、前記内管の周方向に沿って段階的に大きくなる周方向長さを有している、冷却水ヘッダが複数並列して構成される鋼板の冷却装置において、並列している冷却水ヘッダの1つおきに同時に、前記内管を回転駆動するように構成されている複数の冷却水ヘッダからなる冷却水ヘッダ群が2つ存在し、第1の冷却水ヘッダ群を構成する複数の冷却水ヘッダには、冷却水ヘッダの軸方向において同じ位置とはならない位置に、同じ周方向長さを有する貫通穴に連通するノズルが配置され、前記貫通穴は、前記同じ周方向長さより一段階大きい周方向長さを有する貫通穴より、冷却水ヘッダの軸方向において端部側に配置されており、第2の冷却水ヘッダ群を構成する複数の冷却水ヘッダには、冷却水ヘッダの軸方向において同じ位置とはならない位置に、第1の冷却水ヘッダ群を構成する複数の冷却水ヘッダに配置されている前記ノズルより中央部側に、前記同じ周方向長さを有する貫通穴に連通するノズルが配置され、前記同じ周方向長さを有する貫通穴は、前記一段階大きい周方向長さを有する貫通穴より、冷却水ヘッダの軸方向において端部側に配置されている、鋼板の冷却装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷却水ヘッダが複数並列して構成される鋼板の冷却装置で、搬送方向に1つおきに同時に冷却水ヘッダを駆動させる必要がある場合であっても、搬送される鋼板の幅方向における冷却水の噴射範囲を、より多段階で変更することができる。これにより、鋼板の中央部と端部とで温度差を抑えて、鋼板の中央部と端部とで生じる材料特性の違いを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。
図3は、本発明で用いる冷却水ヘッダの概略斜視図である。冷却水ヘッダ5は、内管52と該内管52を囲む外管53との二重管構造からなる。外管53には、その軸方向に沿って所定のピッチでノズル51(51d1〜51d4)が複数設けられている。但し、
図3においては、外管53を切り欠いているので、貫通穴54d2に連通可能なノズル51d2は図示されていない。内管52は、外管53の両端に設けられた軸受け(図示せず)に回転可能に支えられている。内管52には、その軸方向に沿って、ノズル51に連通可能な位置に貫通穴54(54d1〜54d4)が複数設けられている。内管52の端部には、ポンプPなどの冷却水供給手段及び駆動機構8が接続しており、冷却水供給手段によって内管52に冷却水7が供給されるとともに、駆動機構8によって、外管53が固定されている状態で内管52が回転する。
【0018】
内管52の回転に応じて、
図3に示すように、複数のノズル51の一部であるノズル51d4に貫通穴54d4が連通し、ノズル51d4から冷却水7が貫通穴54d4を介して噴射される。一方で、内管52の回転量によっては、一部の貫通穴54d1〜54d3は、ノズル51d1〜51d3に連通せず、冷却水7は噴射されることはない。
【0019】
まずは、ノズル51の構成を説明する。
図4は、
図3に示す冷却水ヘッダの一部の鉛直断面図であり、特に、ノズル51が形成されている部分を示している。外管53には、ノズル51に連通しているノズル連通開口56が形成されており、内管52に供給される冷却水7が、ノズル51の噴射口65から噴射される。ノズル連通開口56の内部に、シールリング60及びスプリング61を配置するとともに、該スプリング61を押える調整金具62が、ノズル連通開口56に取り付けられている。噴射口65を形成しているノズル開口管64は、ソケット63を介して調整金具62に固定されている。内管52に供給されて、内部に充満した冷却水7は、ノズル連通開口56、調整金具62及びノズル開口管64を通過して、噴射口65から噴射される。なお、スプリング61の押圧によってシールリング60が内管52の表面に接触し、冷却水7が貫通穴54から噴射口65に向かう。
【0020】
次に、内管52の構成を説明する。
図5は、
図3に示す冷却水ヘッダの内管の側面図であり、貫通穴54d1〜54d4は、冷却水ヘッダ5の軸方向に沿って内管52の端部から中央部に向かって、内管52の周方向に順次段階的に長さ(周方向長さ)が大きくなっている。すなわち、各貫通穴54d1〜54d4の周方向長さd1〜d4には、
図5に示すように、d1<d2<d3<d4の関係が成立する。周方向長さd1〜d4のうち、最も小さい周方向長さd1を有する貫通穴54d1が、冷却水ヘッダ5の軸方向において端部側に配置されており、最も大きい周方向長さd4を有する貫通穴54は中央部側に配置されている。例えば、
図5においては、内管52の端部に、周方向長さが異なる4つの貫通穴が形成されているが、これらより中央部においては、周方向長さd4を有する貫通穴54d4が内管52に形成されている。
【0021】
外管53が固定された状態で内管52が回転すると、
図3に示すように、最初に、周方向長さd4を有する貫通穴54d4がノズル51d4に連通して、該ノズル51d4から冷却水7が噴射される。一方で、周方向長さd1〜d3を有する貫通穴54d1〜54d3はノズル51d1〜51d3に連通していない状態であり、ノズル51d1〜51d3から冷却水7は噴射されていない。
【0022】
内管52が更に回転し、貫通穴54d4がノズル51d4に連通し始めた位置から、内管2の外周で長さ(d4−d3)分回転すると、貫通穴54d4に連通するノズル51d4から冷却水7が噴射されている状態が維持されるとともに、貫通穴54d3がノズル51d3に連通し始めて、ノズル51d3から冷却水7が噴射される。一方で、貫通穴54d1及び貫通穴54d2は、ノズル51d2及びノズル51d2(図示しない)に連通していない状態であり、それらから冷却水7は噴射されていない。その状態から内管52が、更に、内管2の外周で長さ(d3−d2)分回転すると、貫通穴54d2がノズル51d2に連通し始めて、該ノズル51d2から冷却水7が噴射されるとともに、ノズル51d1から冷却水7は噴射されない状態となる。最終的に、内管52の外周で長さ(d2−d1)分更に回転すると、貫通穴54d1がノズル51d1に連通し始めて、全てのノズル51d1〜51d4から冷却水7が噴射されることになる。
【0023】
冷却水ヘッダ5では、内管52の回転に応じて、軸方向に沿って中央部側から端部側に向けて、ノズル51が貫通穴54に順番に連通して、連通したノズル51から冷却水7が噴射される。これにより、搬送される鋼板2の幅が異なる場合であっても、内管52を適宜回転させることによって、冷却水ヘッダ5の軸方向と同じ幅方向B(
図2参照)において、冷却水の噴射範囲を適宜変更して、鋼板2の端部を適切に冷却することが可能である。
【0024】
このような冷却水ヘッダ5を搬送方向Aに沿って複数並列し、個別に駆動させることによって、幅方向Bにおける冷却水7の噴射範囲を適宜調整することができるが、冷却装置4では、この冷却水ヘッダ5を並列させるだけでは、搬送方向Aに沿って冷却水ヘッダ1つおきに、幅方向Bに沿って端部から同じ距離離れた位置に、冷却水7が噴射されることになってしまう。なぜならば、
図2に示すように、冷却装置4では、搬送方向に1つおきに同時に冷却水ヘッダ5の内管を回転駆動させる必要があるからである(制約2)。
【0025】
そこで、このような制約2を考慮して、本発明者らは、並列している冷却水ヘッダ5の各々に設けられるノズル51の位置を調整することで、幅方向Bに沿って、冷却水7の噴射範囲を変更可能にするノズルパターンを検討した。なお、このパターンは、冷却水ヘッダ5の各々の内管52に形成される貫通穴54の位置パターンでもある。
【0026】
ノズルパターンについて説明する。
図6は、並列している冷却水ヘッダに設けられているノズルの位置関係を示す概略説明図であり、冷却水ヘッダ5として、
図2で示した、隣接している4つの冷却水ヘッダ5a〜5dを例にして説明する。
図6では、搬送ロール3は、説明の簡略化のため図示を省略してある。冷却水ヘッダ5a〜5dは、
図3〜5で示した冷却水ヘッダ5の構成を有しており、前述したように、冷却水ヘッダ5a〜5dの各々の内管52の回転に応じて、周方向長さd1〜d4を有する貫通穴54に連通可能なノズル51から冷却水7を噴射することができる。
【0027】
図6のノズル51d1〜51d4において、記号「●」は、冷却水7が噴射されている状態を示し、記号「○」は、貫通穴54が対応するノズル51に連通しておらず、冷却水7が噴射されていない状態を示している。すなわち、
図6(a)は、冷却水ヘッダ5a〜5dの全てにおいて、周方向長さd4を有する貫通穴がノズル51d4に連通して、これらのノズル51d4から冷却水が噴射され、周方向長さd1〜d3を有する貫通穴はノズル51d1〜51d3に連通していない状態となり、これらから冷却水は噴射されていない状態を示している(1段階目の冷却水噴射の状態)。
【0028】
ノズルパターンを説明するために、まずは、周方向長さd1を有する貫通穴に連通し得るノズル51の配置パターン、すなわち、ノズル51d1(51ad1〜51dd1)が形成されている区間(
図6(a)のd1で示される区間)におけるノズルの配置パターンについて、説明する。説明のため便宜的に、冷却水ヘッダ5a〜5dにおける、周方向長さd1を有する貫通穴に連通するノズル51d1を、第1のノズル51ad1〜第4のノズル51dd1と称する。また、駆動機構I8aによって同時に駆動される複数の冷却水ヘッダのうち、冷却水ヘッダ5a,5cを含む冷却水ヘッダ群を、第1の冷却水ヘッダ群と称し、駆動機構II8bによって同時に駆動される冷却水ヘッダ5b,5dを含む複数の冷却水ヘッダ群を、第2の冷却水ヘッダ群と称する。
【0029】
図6に示すように、第1の冷却水ヘッダ群に含まれる冷却水ヘッダ(第1の冷却水ヘッダ)5a及び冷却水ヘッダ(第2の冷却水ヘッダ)5cには、周方向長さd1を有する貫通穴に連通し得る第1のノズル51ad1及び第2のノズル51cd1が、冷却水ヘッダ5の軸方向(幅方向B)において同じ位置とはならない位置に配置されている。第1のノズル51ad1及び第2のノズル51cd1の貫通穴54d1(
図5参照)は、その周方向長さd1より一段階大きい周方向長さd2を有する貫通穴54d2(ノズル51d2の位置)より、幅方向Bにおいて端部側に配置されている。
【0030】
更には、第2の冷却水ヘッダ群に含まれる冷却水ヘッダ(第3の冷却水ヘッダ)5b及び冷却水ヘッダ(第4の冷却水ヘッダ)5dには、第3のノズル51bd1及び第4のノズル51dd1は、幅方向Bにおいて同じ位置とはならない位置で、第1のノズル51ad1及び第2のノズル51cd1より中央側に配置されている。第3のノズル51bd1及び第4のノズル51dd1の貫通穴54d1は、貫通穴54d2(ノズル51d2の位置)より、幅方向Bにおいて端部側に配置されている。
【0031】
このようにして、周方向長さd1を有する貫通穴に連通し得るノズル51d1のうち、冷却水ヘッダ5の軸方向に沿って、第1のノズル51ad1、第2のノズル51cd1、第3のノズル51bd1、第4のノズル51dd1が、端部側から中央部側に向かってこの順で配置されている。周方向長さd2〜d4のうち、同じ周方向長さを有する貫通穴に連通し得るノズル51d2〜51d4の各群においても、冷却水ヘッダ5の軸方向に沿って、第1の冷却水ヘッダ5aのノズル、第2の冷却水ヘッダ5cのノズル、第3の冷却水ヘッダ5bのノズル、第4の冷却水ヘッダ5dのノズルが、端部側から中央部側に向かってこの順で配置されている。
【0032】
図6の例では、第1のノズル51ad1は第1の冷却水ヘッダ5aに設けられているが、第1のノズルは、第2の冷却水ヘッダ5cに設けてもよい。その場合には、第2のノズル51cd1は、第1の冷却水ヘッダ5aに設ける。すなわち、第1の冷却水ヘッダ5a及び第2の冷却水ヘッダ5cのいずれかにおいて、第1のノズルが配置されたら、第1のノズルが配置されていない冷却水ヘッダ5a,5cのいずれかに、第2のノズルを配置する。
【0033】
また、
図6の例では、第3のノズル51bd1は第3の冷却水ヘッダ5bに設けられているが、第3のノズルは第4の冷却水ヘッダ5dに設けてもよい。その場合には、第4のノズルは、第3の冷却水ヘッダ5bに設ける。すなわち、第3の冷却水ヘッダ5b及び第4の冷却水ヘッダ5cのいずれかにおいて、第3のノズルが配置されたら、第3のノズルが配置されていない第3の冷却水ヘッダ5b及び第4の冷却水ヘッダ5dのいずれかに、第4のノズルを配置する。
【0034】
以上のパターンで配置されているノズルが形成されている複数の冷却水ヘッダにおいて、冷却水が噴射されることになるノズルの順番、及び、幅方向Bにおける、冷却水が噴射される範囲(幅)Wを説明する。
図6(a)に示す1段階目の冷却水噴射の状態においては、幅Wは、周方向長さd4の貫通穴が内管に形成され、該貫通穴が連通するノズル51d4が形成されている領域の幅W1となる。
【0035】
駆動機構II8bによって同時に駆動される冷却水ヘッダは、第3,第4の冷却水ヘッダ5b,5dであるので、それらの内管52が、周方向長さd4を有する貫通穴がノズル51d4に連通し始めた位置から、内管52の外周で長さ(d4−d3)分回転すると、ノズル51d4から冷却水が噴射されている状態が維持されるとともに、第3,第4の冷却水ヘッダ5b,5dのノズル51d3から冷却水7が噴射され、一方で、ノズル51d1及びノズル51d2から冷却水7は噴射されない状態となる(2段階目の冷却水噴射)。この2段階目の冷却水噴射においては、第3,第4の冷却水ヘッダ5b,5dにおいて、ノズル51d3が形成されている領域の幅W2は、幅方向Bにおいて、左右に2つあるため、幅Wは、幅W1と幅W2の2倍とを加算して得られる値(W1+2×W2)となる(
図6(b)参照)。
【0036】
次いで、駆動機構I8aによって同時に駆動される冷却水ヘッダは、第1,第2の冷却水ヘッダ5a,5cであるので、まず、それらの内管52が、周方向長さd4を有する貫通穴がノズル51d4に連通し始めた位置から、内管52の外周で長さ(d4−d3)分回転すると、ノズル51d4から冷却水が噴射されている状態が維持されるとともに、冷却水ヘッダ5a,5cのノズル51d3から冷却水7が噴射され、一方で、ノズル51d1及びノズル51d2から冷却水7は噴射されない状態となる(3段階目の冷却水噴射)。この3段階目の冷却水噴射においては、第1,第2の冷却水ヘッダ5a,5cにおいて、ノズル51d3が形成されている領域の幅W3が、幅方向Bにおいて、左右に2つあるため、範囲(幅)Wは、幅W1と幅(W2+W3)の2倍とを加算して得られる値(W1+2×(W2+W3))となる(
図6(c)参照)。
【0037】
第1〜4の冷却水ヘッダ5a〜5dにおいて、周方向長さd1〜d4を有するノズル51d1〜51d4のうち、同じ周方向長さを有するノズル51が形成されている領域の幅を、
図6に示すように次の通りに規定する。
W4:第3,第4の冷却水ヘッダ5b,5dにおいてノズル51d2が形成されている領域の幅
W5:第1,第2の冷却水ヘッダ5a,5cにおいてノズル51d2が形成されている領域の幅
W6:第3,第4の冷却水ヘッダ5b,5dにおいてノズル51d1が形成されている領域の幅
W7:第1,第2の冷却水ヘッダ5a,5cにおいてノズル51d1が形成されている領域の幅
上記のW4〜W7を用いると、第4〜7段目の冷却水噴射の各々における幅Wは、次の通りとなる。
第4段目の冷却水噴射:幅W=(W1+2×(W2+W3+W4))
第5段目の冷却水噴射:幅W=(W1+2×(W2+W3+W4+W5))
第6段目の冷却水噴射:幅W=(W1+2×(W2+W3+W4+W5+W6))
第7段目の冷却水噴射:幅W=(W1+2×(W2+W3+W4+W5+W6+W7))
【0038】
このようにして、駆動機構I8aによる第1,第2の冷却水ヘッダ5a,5cの駆動と、駆動機構II8bによって第3,第4の冷却水ヘッダ5b,5dの駆動と、が交互に行なわれる場合であっても、同じ周方向長さを有する貫通穴に連通し得るノズル51d1〜51d4の各群において、冷却水ヘッダ5の軸方向に沿って、第1の冷却水ヘッダ5aのノズル、第2の冷却水ヘッダ5cのノズル、第3の冷却水ヘッダ5bのノズル、第4の冷却水ヘッダ5dのノズルが、端部側から中央部側に向かってこの順で配置されているので、幅方向Bにおいて、冷却水の噴射幅を変更することができる。
【0039】
以上のようにして、冷却水ヘッダが複数並列して構成される鋼板の冷却装置で、搬送方向に1つおきに同時に冷却水ヘッダを駆動させる必要がある場合であっても、搬送される鋼板の幅方向において、冷却水の噴射幅を変更することができる。