(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の後方にエンジンや発電機を搭載する構造では、車両後方からの衝突(後突)の際にエンジンや発電機が燃料タンクの保護部材として機能するのが望ましい。特許文献1に開示される従来構造についても、上記のように、エンジン後方に発電機が配置されており、衝突荷重を発電機が受けることで燃料タンクが保護される。
【0005】
しかし、特許文献1の構造では、エンジンおよび燃料タンクに対して発電機が後方に突出して配置されているため、例えばややオフセット気味の後突の場合には、発電機が車両前方側に移動して却って燃料タンクを圧迫することが考えられる。また、後突時、発電機は燃料タンクの保護部材として機能するものの、エンジンについての当該保護部材としての機能性は低い。さらに、車両前後方向におけるエンジン及び発電機の占有スペースが比較的大きいため、例えばリヤフロアパネルの面積が比較的狭いハッチバックタイプの小型車両なでは適用が難しくなることも考えられる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、発電機やエンジン等をよりコンパクトに配置しながら、燃料タンクをより高度に保護することができる、車両の後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、発電機およびこれを駆動するエンジンを備えた車両の後部構造であって、車両後方において各々前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームと、これらリヤサイドフレームの間で車幅方向に延びて両リヤサイドフレームに繋がるクロスメンバと、上記発電機、上記エンジンおよび当該エンジンと前記発電機とが互いに横並びに並ぶように組み付けられるフレーム部材とを含む発電ユニットと、エンジン駆動用の燃料が収容される燃料タンクと、を備え、上記発電ユニットは、上記発電機および上記エンジンが車幅方向に並ぶ状態で上記フレーム部材を介して上記クロスメンバに組み付けられ、上記燃料タンクは、上記発電機およびエンジンと共に車幅方向に一列に並ぶように配置されているものである。
【0008】
この構造によれば、エンジン、発電機および燃料タンクが車幅方向に一列に配列されているため、車両の後突時にはエンジンおよび発電機の双方が燃料タンクの保護部材として有効に機能する。特に、エンジンおよび発電機がフレーム部材に組み付けられることによって一つの剛体化された発電ユニットが構築された上で当該発電ユニットがクロスメンバに組み付けられているので、大きな衝突(後突)荷重を受けることが可能であり、これによって燃料タンクをより高度に保護することが可能となる。しかも、エンジン、発電機および燃料タンクが車幅方向に一列に配列される構造なので、エンジン等を車両前後方向に集約してコンパクトに配置することもできる。
【0009】
なお、上記のような車両の後部構造において、上記燃料タンクは、上記クロスメンバに組み付けられているのが好適である。
【0010】
この構造によれば、後突時に、発電ユニット(エンジンおよび発電機)と燃料タンクとを同様に挙動させることができるため、燃料タンク単体への影響を緩和することができることに加え、エンジンと燃料タンクとが個別に変位して燃料ホースが脱落する(燃料漏れが生じる)等の不都合を未然に防止することが可能となる。
【0011】
また、上記車両の後部構造においては、車幅方向における上記燃料タンクの一方側に上記発電ユニットが配設され、他方側に上記発電機が発生する電力を充電用電力に変換するインバータが配設されているのが好適である。
【0012】
この構造によれば、燃料タンクを挟んでその両側に比較的重量物である発電ユニットとインバータとが分かれて配置されているので、燃料の増減に伴い車幅方向の重量バランスが大きく変動することが抑制される。そのため、走行安定性を良好に確保することが可能となる。
【0013】
また、上記車両の後部構造においては、上記燃料タンクの後方に、上記エンジンの排気音を抑制するためのサイレンサーが配置されているのが好適である。
【0014】
この構造によれば、サイレンサーが後突時の緩衝部材として機能するので、後突時には、燃料タンクをより高度に保護することが可能となる。
【0015】
この場合には、車幅方向に沿って上記エンジン、上記発電機および上記燃料タンクがこの順番で配列され、さらに上記エンジンの排気を車両後方に導く排気管が備えられており、上記排気管は、上記発電機の後方位置から上記燃料タンクの後方位置に亘って車幅方向に延びる上記サイレンサーと、上記エンジンの前方位置に配置される排気浄化装置とを含み、かつ上記エンジンから排出されて上記排気浄化装置で浄化された排気を、上記発電機の下方位置を経由して上記サイレンサーに案内するように構成されているのが好適である。
【0016】
この構造によれば、走行風により排気管(排気)の冷却が促進されることに加え、燃料タンクの前方位置に排気管が配索されていないことで、車両走行中の排気管から燃料タンクへの放射熱が低減される。よって、当該放射熱により燃料タンクが熱害を受けることを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の車両の後部構造によれば、発電機やエンジン等をよりコンパクトに配置しながら、燃料タンクをより高度に保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。なお、以下の説明の「前」、「後」、「左」、「右」は、車両の前後左右(図中に示される方向指標)に基づくものとする。
【0020】
<車両の概略構成>
図1は、本発明に係る車両の後部構造が適用される車両の概略構成を示している。この車両は、5人乗りのハッチバックタイプ(
図2参照)のハイブリッド車両、より詳しくはシリーズ式ハイブリッド車である。
【0021】
同図に示すように、この車両は、発電機3およびこれを駆動するためのエンジン2を含む発電ユニット1と、インバータ6と、このインバータ6を介して発電機3が発生した電力を充電する、例えばリチウムイオン電池等からなる大容量のバッテリ7と、上記インバータ6を介してバッテリ7から供給される電力により駆動輪(前輪9a)を回転駆動するモータ8と、上記エンジン2に供給される燃料を収容する燃料タンク5とを備えている。すなわち、この車両は、近距離走行時等には、予めバッテリ7に充電された電力を使用してモータ8を駆動することにより走行しながら、車両の減速時等には、モータ8が発生する回生電力をバッテリ7に充電する。そして、遠距離走行時等にバッテリ7の電気容量が一定値以下に低下すると、エンジン2により発電機3を駆動し、その発電電力をバッテリ7に供給して充電するように構成されている。なお、図示を省略しているが、上記車両は、家庭用電源である普通充電器や、パーキングエリア等に設置される急速充電器等により上記バッテリ7に電力を充電可能な充電用プラグを備えるものであってもよい。
【0022】
<車両の全体構造>
図2に示すように、上記車両は、車室10の前方部に設置されるダッシュパネル11と、その下端部から車両の後方側に延びるように設置されるフロントフロアパネル12と、該フロントフロアパネル12の後端部から立ち上がるように設けられるキックアップ部13と、当該キックアップ部13の上部から後方に延びるリヤフロアパネル14とを有している。そして、上記フロントフロアパネル12上に、運転席および助手席からなる前列シート15が設置され、その後方側のリヤフロアパネル14上に、後列シート16が設けられている。
【0023】
上記キックアップ部13の後方には、前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム18がリヤフロアパネル14の下面に沿って設置されている。両リヤサイドフレーム18は、詳しくは、キックアップ部13から車両後方に向かって水平に延びる前側水平部18aと、後列シート16の下方位置から後方斜め上方に向かって延びる傾斜部18bと、後列シート16の直ぐ後方位置から車両後方に向かって水平に延びる後側水平部18bとを有している。両リヤサイドフレーム18の間には、キックアップ部13の背面に接合されて車幅方向に延びる前側クロスメンバ20と、上記リヤフロアパネル14の下方側であってかつ上記後列シート16の後方側で車幅方向に延びる後側クロスメンバ21とが設置されている。
【0024】
上記後側クロスメンバ21の後方側には、両リヤサイドフレーム18の間で車幅方向に延びて当該リヤサイドフレーム18に固定される、ユニットフレーム24が設けられ、このユニットフレーム24に、上記発電ユニット1、燃料タンク5およびインバータ6が組み付けられている。
【0025】
図3は、車両の後部構造、詳しくはリヤフロアパネル14を取り外した状態の車両の後部構造を平面図で示している。また、
図6は、上記ユニットフレーム24を斜視図(上下逆さまにした状態の斜視図)で示している。
図3、
図6に示すように、上記ユニットフレーム24は、概略的には平面視H形であり、後輪9bの間の位置で車幅方向に延びる第1サブクロスメンバ25と、後輪9bの後側の位置で車幅方向に延びる第2サブクロスメンバ26と、車幅方向中央よりもやや右方寄りの位置で前後方向に延び、かつ両サブクロスメンバ25、26に接合(溶接)されることで両サブクロスメンバ25、26を連結する連結フレーム27とを含む。各サブクロスメンバ25、26および連結フレーム27は何れも閉断面構造を有している(
図7参照)。
【0026】
各サブクロスメンバ25、26の長手方向両端(車幅方向両端)には、固定用のフランジ部25a、26aが各々形成されており、これらフランジ部25a、26aがリヤサイドフレーム18に備えられるウエルトボルトと図外のナットとで当該リヤサイドフレーム18に締結されることで、上記ユニットフレーム24がリヤサイドフレーム18の下側に固定されている。そして、このユニットフレーム24の下側に、発電ユニット1、燃料タンク5およびインバータ6等が組み付けられている。なお、当例では、ユニットフレーム24の各サブクロスメンバ25、26が本発明のクロスメンバに相当する。
【0027】
図4は、上記ユニットフレーム24を省略した状態の車両の後部構造を平面図で示している。この図に示すように、上記発電ユニット1は、エンジン2と、発電機3と、これらが横並びに配列された状態で組み付けられるフレーム部材4とを含む。
【0028】
上記エンジン2は、1ロータの小型ロータリエンジンである。このエンジン2には、後述する吸気管42および排気管46が接続されている。
【0029】
詳細図を省略するが、エンジン2は、上下一対のサイドハウジングと、これら一対のサイドハウジングの間に介設されるロータハウジング(センターハウジング)と、これらハウジングにより形成される上下方向に偏平なロータ収容室内に収容されるロータと、上下方向に延びるエキセントリックシャフトとを含む。そして、ロータ収容室内のトロコイド内周面とロータとの間に形成される3つの作動室で吸気、圧縮、燃焼(膨張)及び排気の各行程が行われることにより発生するロータの回転力を、出力軸であるエキセントリックシャフトから取り出すように構成されている。
【0030】
なお、当例では、エキセントリックシャフトが上下方向に延びるようにエンジン2が配置されるが、これは次の理由による。すなわち、ロータリエンジンが走行用エンジンとして用いられる場合には、トランスミッション等を介して車輪に駆動力を伝達する必要があるため、エンジンは、エキセントリックシャフトが水平方向に延びる姿勢(便宜上、横置きと称す)で車両に搭載される。しかし、上記エンジン2は、発電機3の駆動用エンジンであるため、必ずしもエンジン2を横置きにする必要がない。また、エンジン2は、上記の通り1ロータの小型ロータリエンジンであり、エキセントリックシャフトの軸方向にエンジン2が偏平な構造を有する。そのため、リヤフロアパネル14下方のスペースを有効に活用しつつリヤフロアパネル14の低床化を図るべく、エキセントリックシャフトが垂直方向に延びる姿勢(便宜上、縦置きと称す)でエンジン2が車両に組み込まれている。
【0031】
上記エンジン2は、上側のを介して上記フレーム部材4に固定されている。フレーム部材4は、
図4及び
図6に示すように、車幅方向に細長い金属製のプレート状部材であり、エンジン2は、このフレーム部材4の長手方向一端側寄りの位置(
図4では上端寄りの位置)に固定されている。具体的には、エンジン2の上側のサイドハウジングがフレーム部材4の下面にボルトナットで固定されることで、エンジン2がフレーム部材4に固定されている。
【0032】
そして、フレーム部材4の長手方向に沿ってエンジン2に隣接するように、上記発電機3が当該フレーム部材4に固定されている。具体的には、発電機3のケーシングに形成されるフランジ部がフレーム部材4の下面にボルトナットで固定されることで、発電機3がフレーム部材4に固定されている。
【0033】
発電機3の出力軸とエンジン2のエキセントリックシャフトとは、当該発電機3及びエンジン2の下方位置で、図外のスプロケット及びチェーン等を介して連結されており、これにより発電機3がエンジン2により駆動されるようになっている。
【0034】
なお、図示を省略するが、発電機3のケーシングとエンジン2のロータハウジングおよび下側のサイドハウジングとは、適宜、連結用ステーを介して連結されている。これにより、上記エンジン2と発電機3とが強固に一体化された高剛性の発電ユニット1が構築されている。
【0035】
図3、
図4、
図6及び
図7に示すように、上記発電ユニット1は、発電機3が車両の幅方向中央部に位置し、エンジン2が車両右側に位置するように配置され、複数のマウント30を介して上記ユニットフレーム24に組み付けられている。具体的には、発電ユニット1の上記フレーム部材4の周囲、詳しくはエンジン2の組付位置の前後両側、および発電機3の組付位置の左側には、それぞれフランジ部4aが一体形成されており、これらフランジ部4aに上記マウント30がボルトB2で固定されている。そして、各マウント30が、ユニットフレーム24の各サブクロスメンバ25、26及び連結フレーム27に備えられるウエルトボルトB1とナットN1とで当該サブクロスメンバ25、26及び連結フレーム27に締結されることで、発電ユニット1(フレーム部材4)が上記ユニットフレーム24に組み付けられている。詳しくは、フレーム部材4のフランジ部4aのうち、エンジン本体前方のフランジ部4aが第1サブクロスメンバ25に、エンジン本体後方のフランジ部4aが第2サブクロスメンバ26に、発電機3の左方のフランジ部4aが連結フレーム27にそれぞれマウント30を介して組み付けられている。これにより、発電ユニット1がユニットフレーム24に対して下側から組み付けられ、当該ユニットフレーム24に支持されている。
【0036】
各マウント30は、同一構造であり、
図7に示すように、上記ユニットフレーム24に締結される軸状の被締結部30aと、この被締結部30aの外周面上に固定される筒状の弾性部材30bと、この弾性部材30bに外嵌されて、上記発電ユニット1(フレーム部材4)が固定されるユニット固定部30cとを備えている。これにより、被締結部30aに対してユニット固定部30cが適度に弾性変位可能となっている。つまり、当該マウント30を介して発電ユニット1がユニットフレーム24に組み付けられることで、エンジン2や発電機3の作動に伴う発電ユニット1の振動がユニットフレーム24等を介して車室内に伝達されることが抑制される。
【0037】
なお、上記エンジン2は、ロータハウジングに吸気ポートを備える一方、下側のサイドハウジングに排気ポートを備えている。すなわち、エンジン2は、吸気ポートがペリフェラルポート(ペリポート)とされ、排気ポートがサイドポートとされた、いわゆるペリ吸気、サイド排気のエンジン構造を有している。吸気ポートは、ロータハウジングの前側面に開口している。排気ポートは、吸気ポートよりも右側の位置で下側のサイドハウジングの前側面に開口している。このことにより、
図4、
図5及び
図8に示すように、吸気管42は、エンジン2のロータハウジングの前側面に接続され、排気管46は、下側のサイドハウジングの前側面に接続されている。
【0038】
上記吸気管42は、上記発電機3の前方位置で、ユニットフレーム24の第1サブクロスメンバ25に沿って車幅方向に延びている。吸気管42の末端には、エアクリーナー43aが備えられ、また吸気管42のうち、エアクリーナー43aとエンジン2との間の所定位置にはスロットルボディ43bが介設されている。なお、エアクリーナー43aは、ユニットフレーム24の上記第1サブクロスメンバ25の下面に接合されるブラケット54(
図5及び
図6参照)に固定されており、上記スロットルボディ43bは、上記第1サブクロスメンバ25の所定位置に固定されている。
【0039】
上記排気管46は、上記吸気管42の下方に配置されている。
図5に示すように、排気管46は、エンジン2の前方に配置され、発電機3のほぼ前方の位置まで上記吸気管42に沿って車幅方向に延びる、三元触媒等からなる排気浄化装置47aと、後述する燃料タンク5の後方に配置されてエンジン2の排気音を抑制するサイレンサー47bとを含み、かつ上記エンジン2から排出されて上記排気浄化装置47aで浄化された排気を、上記発電機3の下方位置を経由して上記サイレンサー47bに案内するように構成されている。排気浄化装置47aおよびサイレンサー47bは、図外のラバーハンガーおよびブラケット等を介して、各サブクロスメンバ25、26に支持されている。
【0040】
そして、上記発電ユニット1に対して横並びに並ぶように、すなわちエンジン2及び発電機3と共に車幅方向にほぼ一列に並ぶように、発電ユニット1側から順に上記燃料タンク5と上記インバータ6とが配列され、これら燃料タンク5およびインバータ6が上記ユニットフレーム24の下面に固定されている。
【0041】
図4及び
図5に示すように、上記燃料タンク5は、ほぼ立方体に近い形状を有している。燃料タンク5は、ユニットフレーム24の各サブクロスメンバ25、26の下面に各々接合される前後のブラケット50、51(
図6参照)を介して上記ユニットフレーム24に固定されている。すなわち、燃料タンク5の側面うち、その上下方向中間部には、ほぼ全周に亘ってフランジ部5aが形成されている。そして、両ブラケット50、51の間に燃料タンク5が挿入され、かつ両ブラケット50、51の先端(下端)に上記フランジ部5aが重ね合わされた状態で、当該フランジ部5aが上記両ブラケット50、51にボルトナットで締結されている。これにより、燃料タンク5がブラケット50、51を介してユニットフレーム24に固定されている。
【0042】
上記燃料タンク5の上面のうち、前方の左側コーナ部分には燃料補給管5bが接続されている。この燃料補給管5bの末端は、車両ボディに固定される給油口ユニット5cに接続されている。つまり、給油口ユニット5cの図外の給油キャップを取り外すことで、燃料タンク5への燃料補給が可能となっている。
【0043】
なお、燃料タンク5が固定される上記ブラケット50、51のうち、車両後側に位置するブラケット50は、
図5及び
図6に示すように、上記第2サブクロスメンバ26に沿って車幅方向に延びる広幅の板状であり、燃料タンク5と上記サイレンサー47bとの間に介在してこれらを遮ることで、当該燃料タンク5をサイレンサー47bから遮熱するようになっている。つまり、ブラケット50は、サイレンサー47bからの放射熱を遮る遮熱部材としての機能を兼ねている。
【0044】
上記インバータ6は、ほぼ直方体形状を有しており、燃料タンク5の左側に配置されている。このインバータ6は、
図6に示すように、上記第2サブクロスメンバ26および上記ブラケット50に跨るように、当該第2サブクロスメンバ26およびブラケット50に固定されたブラケット52によって下側から支持され、上記リヤサイドフレーム18に設けられる図外の取付部にボルトナットで固定される。なお、
図6中の符号6aは、インバータ6と発電機3とを繋ぐ送電ケーブルである。
【0045】
<車両の上記後部構造による作用効果>
上述した車体の後部構造によれば、エンジン2、発電機3および燃料タンク5が車幅方向に一列に配列されているため、車両の後突時には、エンジン2および発電機3の双方が燃料タンク5の保護部材として有効に機能する。特に、エンジン2および発電機3がフレーム部材4に組み付けられることによって一つの剛体化された発電ユニット1が構築された上で当該発電ユニット1がクロスメンバに組み付けられているので、大きな衝突(後突)荷重を受けることが可能であり、従って、燃料タンク5をより高度に保護することができる。
【0046】
また、エンジン2、発電機3および燃料タンク5が車幅方向に一列に配列される上記構造によれば、当該エンジン2等を車両前後方向に集約してコンパクトに配置することもできる。そのため、
図2に示すように、リヤフロアパネル14が前後方向比較的狭いハッチバックタイプの車両であっても、リヤフロアパネル下方の比較的小さいスペースに難なくエンジン2等を配置することができる。従って、この車両の後部構造によれば、エンジン2や発電機3等をコンパクトに配置しながら、燃料タンク5を高度に保護することができる。
【0047】
また、上記車両の後部構造によれば、燃料タンク5が発電ユニット1(エンジン2、発電機3)と同様に、ユニットフレーム24のサブクロスメンバ25、26に組み付けられているため、後突時には、発電ユニット1と燃料タンク5とを同様に挙動させることができ、これにより燃料タンク5単体への影響を緩和することができる。また、エンジン2と燃料タンク5とが個別に変位して燃料ホースが脱落する(燃料漏れが生じる)等の不都合を未然に防止することができるという利点もある。
【0048】
また、上記車両の後部構造によれば、燃料タンク5を挟んで車幅方向の一方側(右側)に発電ユニット1が配設され、他方側(左側)にインバータ6が配設されているので、燃料タンク5内の燃料の増減に伴い車幅方向の重量バランスが大きく変動することが抑制される。すなわち、仮に、発電ユニット1、インバータ6および燃料タンク5がこの順番で車幅方向に配列されている場合には、発電ユニット1やインバータ6が比較的高重量物であるため、燃料タンク5の容量が少なくなると、車幅方向の一方側に重量が偏ってしまうことが考えられるが、上記実施形態の構造によれば、発電ユニット1とインバータ6とが燃料タンク5の左右に分かれて配置されていることで、燃料の増減した場合でも、車幅方向における車両の重量バランスを均一に近い状態に保つことができる。よって、上述のような作用効果を享受しながらも、燃料の増減に伴い車両の重量バランスが変動することに起因する走行安定の低下を未然に防止することができるという利点もある。
【0049】
また、上記車両の後部構造によれば、上記の通り、燃料タンク5の後方に、エンジン2の排気音を抑制するためのサイレンサー47bが配置されているので、燃料タンク5をより高度に保護することができるという利点もある。つまり、サイレンサー47bは、比較的大きな容積を有する中空構造であるため、後突時には、このサイレンサー47bが変形することで衝突荷重が効果的に吸収される。つまり、緩衝部材として好適に機能する。そのため、燃料タンク5をより高度に保護することが可能となる。
【0050】
また、上記車両の後部構造によれば、エンジン2の前方位置に排気浄化装置47aが配置され、エンジン2から排出されて当該排気浄化装置47aで浄化された排気を、上記発電機3の下方位置を経由して、燃料タンク5の後方に配置された上記サイレンサー47bに案内するように排気管46が構成されている。このような構成によれば、走行風による排気管46(排気)の冷却が促進されることに加え、燃料タンク5の前方位置に排気管46が配索されていないことで、車両走行中の排気管46から燃料タンク5への放射熱が低減される。また、燃料タンク5とサイレンサー47bとの間にブラケット50が介設され、このブラケット50により燃料タンク5がサイレンサー47bから遮熱される構造となっているので、サイレンサー47bから燃料タンク5への放射熱も効果的に抑制される。従って、排気管46からの放射熱により燃料タンク5が熱害を受けることが効果的に抑制されるという利点もある。
【0051】
また、上記のような車両の後部構造によれば、例えば、発電ユニット1、燃料タンク5及びインバータ6を予め上記ユニットフレーム24に組み込んだユニット部材を構築しておき、このユニット部材を車両下側からその内側(リヤフロアパネル14の後方位置)に挿入して上記ユニットフレーム24を上記リヤサイドフレーム18に固定するという組立方法を採用することができる。そのため、上記車両の後部構造によれば、発電ユニット1、燃料タンク5及びインバータ6等を効率良く車両に組み込むことができるという利点もある。
【0052】
なお、上述した車両の全体構造の説明では言及していないが、
図8に示すように、発電ユニット1および燃料タンク5の下方にはインシュレータ56が配設されるようになっている。インシュレータ56は、例えば金属又は樹脂材料により形成されたカバー部材であり、同図に示すように、発電ユニット1および燃料タンク5と排気管46との間に介在するように配置され、上記ユニットフレーム24等に固定される。この車両で、このように発電ユニット1および燃料タンク5を下側から覆うインシュレータ56が設けられることで燃料タンク5等を跳ね石等から保護するとともに、燃料タンク5を排気管46から遮熱するようになっている。従って、この点でも、上記車両によれば、排気管46からの放射熱により燃料タンク5が熱害を受けることが抑制される。
【0053】
ところで、以上説明した車両の後部構造は、本発明に係る車両の後部構造の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構造は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、エンジン2としてロータリエンジンが適用されているが、エンジン2はレシプロエンジンであってよい。但し、ロータリエンジンによれば、上記の通り、車両に対して縦置き(エキセントリックシャフトが垂直方向に延びる姿勢)することで上下方向の占有スペースを抑えることができる。よって、上記のようなハッチバックタイプの車両等、リヤフロアパネル14の下方スペースが比較的狭い車両については、エンジン2としてロータリエンジンを適用するのが有利である。
【0055】
また、上記実施形態では、フレーム部材4として、金属製のプレート状部材が適用されているが、フレーム部材4の具体的な形状等は、エンジン2と発電機3とを一体的に組み込むことにより高剛性の発電ユニット1を構築できれば、必ずしもプレート状である必要はなく適宜選定可能である。但し、フレーム部材4としてプレート部材を適用すれば、発電ユニット1を上下方向にコンパクト化しつつ、簡素な構造で大きな衝突(後突)荷重を受けることができる。