(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の摩擦攪拌接合方法であると、ショルダ部で塑性流動化した金属を押さえないため、塑性流動化した金属が内隅の外部に溢れ出やすくなる。これにより、内隅が金属不足になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、金属部材同士の内隅から突合せ部を摩擦攪拌接合する場合に、内隅の金属不足を解消することができる摩擦攪拌接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて、突き合わされる面の形状が互いに異なる二つの金属部材を接合する摩擦攪拌接合方法であって、
一方の前記金属部材と他方の前記金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、前記突合せ部に対して他方の前記金属部材の周方向に亘って肉盛溶接を施し、前記金属部材同士の内隅を溶接金属で覆う肉盛溶接工程と、回転した前記攪拌ピンを前記内隅に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記溶接金属及び前記金属部材同士に接触させた状態で、他方の前記金属部材の周方向に亘って前記突合せ部の摩擦攪拌を行う接合工程と、を含
み、前記回転ツールの攪拌ピンの外周面には螺旋溝が刻設されており、前記接合工程において、前記回転ツールを右回転させる場合には、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて左回りに形成させ、前記回転ツールを左回転させる場合には、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて右回りに形成させることを特徴とする。
また、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて、突き合わされる面の形状が互いに異なる二つの金属部材を接合する摩擦攪拌接合方法であって、一方の前記金属部材と他方の前記金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、前記突合せ部に対して他方の前記金属部材の周方向に亘って補助部材を配置し、前記金属部材同士の内隅を前記補助部材で覆う補助部材配置工程と、回転した前記攪拌ピンを前記内隅に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記補助部材及び前記金属部材同士に接触させた状態で、他方の前記金属部材の周方向に亘って前記突合せ部の摩擦攪拌を行う接合工程と、を含
み、前記回転ツールの攪拌ピンの外周面には螺旋溝が刻設されており、前記接合工程において、前記回転ツールを右回転させる場合には、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて左回りに形成させ、前記回転ツールを左回転させる場合には、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて右回りに形成させることを特徴とする。
【0008】
かかる摩擦攪拌接合方法によれば、金属部材を突き合わせて形成された内隅に予め肉盛溶接を施すか、又は、補助部材を配置した後に摩擦攪拌を行うことで内隅の金属不足を解消することができる。
【0009】
また、前記金属部材は、いずれも板状を呈し、前記突合せ工程では、一方の前記金属部材の表面と他方の前記金属部材の裏面とを突き合わせることが好ましい。
また、一方の前記金属部材は、板状を呈し、他方の前記金属部材は、円柱状を呈し、前記突合せ工程では、一方の前記金属部材の表面と他方の金属部材の端面とを突き合わせることが好ましい。
また、一方の前記金属部材は、板状を呈し、他方の前記金属部材は、筒状を呈し、前記突合せ工程では、一方の前記金属部材の表面と他方の金属部材の端面とを突き合わせることが好ましい。
また、一方の前記金属部材は、板状を呈し、他方の前記金属部材は、円筒状を呈し、前記突合せ工程では、一方の前記金属部材の表面と他方の金属部材の端面とを突き合わせることが好ましい。
また、一方の前記金属部材に貫通孔が形成されており、前記突合せ工程では、前記貫通孔を他方の前記金属部材で覆うか、又は、前記貫通孔と他方の前記金属部材の中空部とを連通させることが好ましい。
【0010】
かかる摩擦攪拌接合方法によれば、様々な形状の金属部材同士を接合することができる。
また、前記接合工程では、前記突合せ部における塑性化領域の始端と終端とをオーバーラップさせることが好ましい。また、先端に回転駆動手段を備えたロボットアームに前記回転ツールを取り付けて摩擦攪拌を行うことが好ましい。
また、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて二つの金属部材を接合する摩擦攪拌接合方法であって、前記金属部材同士を角度をつけて突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、前記突合せ工程で形成された前記金属部材同士の内隅に肉盛溶接を施して溶接金属で前記内隅を覆う肉盛溶接工程と、回転した前記攪拌ピンのみを前記内隅に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記溶接金属及び前記金属部材同士に接触させた状態で、前記突合せ部の摩擦攪拌を行う接合工程と、を含み、前記回転ツールの攪拌ピンの外周面には螺旋溝が刻設されており、前記接合工程において、前記回転ツールを右回転させる場合には、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて左回りに形成させ、前記回転ツールを左回転させる場合には、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて右回りに形成させることを特徴とする。
また、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて二つの金属部材を接合する摩擦攪拌接合方法であって、前記金属部材同士を角度をつけて突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、前記突合せ工程で形成された前記金属部材同士の内隅に補助部材を配置する補助部材配置工程と、回転した前記攪拌ピンのみを前記内隅に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記補助部材及び前記金属部材同士に接触させた状態で、前記突合せ部の摩擦攪拌を行う接合工程と、を含み、前記回転ツールの攪拌ピンの外周面には螺旋溝が刻設されており、前記接合工程において、前記回転ツールを右回転させる場合には、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて左回りに形成させ、前記回転ツールを左回転させる場合には、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて右回りに形成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る摩擦攪拌接合方法によれば、金属部材同士の内隅から突合せ部を摩擦攪拌接合する場合に、内隅の金属不足を解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一実施形態]
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。まずは、本実施形態で用いる接合用回転ツールについて説明する。
【0014】
図1に示すように、接合用回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。接合用回転ツールFは、特許請求の範囲の「回転ツール」に相当する。接合用回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、摩擦攪拌装置の回転軸(図示省略)に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈し、ボルトが締結されるネジ孔B,Bが形成されている。
【0015】
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝F3が刻設されている。本実施形態では、接合用回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝F3は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。言い換えると、螺旋溝F3は、螺旋溝F3を基端から先端に向けてなぞると上から見て左回りに形成されている。
【0016】
なお、接合用回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝F3を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。言い換えると、この場合の螺旋溝F3は、螺旋溝F3を基端から先端に向けてなぞると上から見て右回りに形成されている。螺旋溝F3をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝F3によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(金属部材10,20)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。
【0017】
接合用回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合をする際には、被接合金属部材に回転した攪拌ピンF2のみを挿入し、被接合金属部材と連結部F1とは離間させつつ移動させる。言い換えると、攪拌ピンF2の基端部は露出させた状態で摩擦攪拌接合を行う。
【0018】
具体的な図示は省略するが、後記する接合工程を行う場合は、例えば、先端にスピンドルユニット等の回転駆動手段を備えたロボットアームに接合用回転ツールFを取り付けて摩擦攪拌を行うことができる。このような摩擦攪拌装置によれば、接合用回転ツールFの挿入位置及び挿入角度等を容易に変更することができる。
【0019】
次に、本発明の第一実施形態に係る摩擦攪拌接合方法について説明する。本実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、突合せ工程と、肉盛溶接工程と、接合工程と、を行う。
【0020】
図2に示すように、本実施形態では、金属部材10,20を突き合わせて形成された突合せ部J1を摩擦攪拌によって接合する。金属部材10,20は、金属製であって、直方体(板状)を呈する。金属部材10,20は同等の材料で形成されている。金属部材10,20の材料は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、 マグネシウム、マグネシウム合金等から適宜選択すればよい。
【0021】
金属部材20は、金属部材10よりも小さくなっている。つまり、上側に配置される金属部材20の裏面20bの面積は、下側に配置される金属部材10の表面10aの面積よりも小さくなっている。
【0022】
突合せ工程は、金属部材10,20を突き合わせて突合せ部J1を形成する工程である。
図2の(a)に示すように、突合せ工程では、金属部材10の表面10aの中央部に金属部材20の裏面20bを突き合せる。金属部材10,20は突き合わされる面(表面10a、裏面20b)の形状が互いに異なるため、突き合わされることによって内隅が形成されるとともに、金属部材10の表面10aの周囲は露出した状態となる。
図2の(b)に示すように、内隅は、金属部材10の表面10aと金属部材20の側面20cとで構成される隅部である。内隅は、金属部材10の周方向全体に亘って形成されている。なお、特許請求の範囲の「突き合わされる面の形状が互いに異なる二つの金属部材」とは、本実施形態の金属部材10,20ように突き合わされる面(表面10a、裏面20b)の形状が相似の場合も含む意味である。
【0023】
肉盛溶接工程は、突合せ部J1に対して金属部材10の周方向に亘って肉盛溶接を行う工程である。
図3の(a)に示すように、肉盛溶接工程では、突合せ部J1の全周に亘ってTIG溶接又はMIG溶接等の肉盛溶接を行う。肉盛溶接工程を行うことで、内隅の全周が溶接金属Uによって覆われる。溶接金属Uの肉盛量は、接合工程を行った後に、塑性化領域W(接合部)の表面に凹溝が形成されたり、当該表面から溶接金属Uが突出したりしない程度に設定することが好ましい。
【0024】
接合工程は、溶接金属Uを介して内隅に攪拌ピンF2を挿入し、金属部材20の周方向に亘って摩擦攪拌を行う工程である。
図3の(b)に示すように、接合工程では、接合用回転ツールFを用いて突合せ部J1に対して摩擦攪拌を行う。まず、金属部材10の表面10aに設定した開始位置S1に右回転させた接合用回転ツールFを挿入する。
【0025】
接合用回転ツールFを突合せ部J1に設定した始点S2側に相対移動させて、始点S2に達したら、突合せ部J1に沿って接合用回転ツールFを金属部材20の周りに一周させる。言い換えると、接合工程では、溶接金属Uをなぞるようにして摩擦攪拌を行う。
図4の(a)に示すように、接合工程では、攪拌ピンF2のみを金属部材10,20及び溶接金属Uに接触させた状態で摩擦攪拌を行う。つまり、攪拌ピンF2の基端側を露出させた状態で摩擦攪拌を行う。接合用回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域Wが形成される。攪拌ピンF2の挿入角度は適宜設定すればよいが、本実施形態では鉛直面に対して接合用回転ツールFの回転中心軸を45°傾けている。
【0026】
図4の(b)に示すように、接合用回転ツールFを金属部材20周りに一周させて始点S2を通過して突合せ部J1に設定した終点E2に達したら、接合用回転ツールFを表面10a側に相対移動させる。そして、表面10aに設定した終了位置E1で接合用回転ツールFを離脱させる。これにより、突合せ部J1における塑性化領域Wの始端(始点S2)と終端(終点E2)とがオーバーラップした状態となる。
【0027】
接合用回転ツールFを表面10aから離脱させると、表面10aに攪拌ピンF2の抜き穴が残存するが、例えば、当該抜き穴に肉盛溶接等を行って抜き穴を補修する補修工程を行ってもよい。
【0028】
以上説明した摩擦攪拌接合方法によれば、内隅に予め肉盛溶接を施して溶接金属Uの上から突合せ部J1に対して摩擦攪拌を行うことで内隅の金属不足を解消することができる。また、接合工程では、塑性化領域Wの始端と終端とをオーバーラップさせることで、水密性及び気密性を高めることができる。また、金属部材20の周方向に亘って連続して接合することで、接合強度を高めることができる。
【0029】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態に係る摩擦攪拌接合方法について説明する。本実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、突合せ部J1に第一補助部材30及び第二補助部材31を配置して摩擦攪拌を行う点で第一実施形態と相違する。第二実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0030】
本実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、突合せ工程と、補助部材配置工程と、接合工程とを行う。突合せ工程は、第一実施形態と同等の要領で行う。
【0031】
補助部材配置工程は、突合せ部J1に対して金属部材20の周方向に亘って4つの第一補助部材30及び4つの第二補助部材31を配置する工程である。第一補助部材(補助部材)30は、金属で形成されており、三角柱になっている。第一補助部材30は、摩擦攪拌可能な金属であればよいが、本実施形態のように金属部材10,20と同等の材料で形成されていることが好ましい。
【0032】
第一補助部材30は、断面直角三角形を呈する。第一補助部材30の長さは、金属部材20の各辺の長さと同等になっている。
図5の(b)に示すように、補助部材配置工程では、第一補助部材30の底面30aを金属部材10の表面10aに面接触させ、第一補助部材30の立上り面30bを金属部材20の側面20cに面接触させる。補助部材配置工程では、4つの第一補助部材30を金属部材20の4辺に沿ってそれぞれ配置する。
【0033】
第二補助部材(補助部材)31は、金属で形成されており、四面体になっている。第二補助部材31は、摩擦攪拌可能な金属であればよいが、本実施形態のように金属部材10,20と同等の材料であることが好ましい。
【0034】
図6に示すように、第二補助部材31の底面31aは、直角二等辺三角形になっている。第二補助部材31の立上り面31b,31bは、それぞれ直角二等辺三角形になっている。第二補助部材31の立上り面31b,31bは、第一補助部材30の端面30d(
図5の(b)参照)と同等の形状になっている。
図5の(a)に示すように、補助部材配置工程では、突合せ部J1の四隅に第二補助部材31をそれぞれ配置する。
【0035】
補助部材配置工程では、第二補助部材31の底面31aを、金属部材10の表面10aに面接触させる。また、第二補助部材31の立上り面31b,31bを、隣り合う第一補助部材30の端面30d,30dにそれぞれ面接触させる。これにより、内隅(突合せ部J1)の周囲が、4つの第一補助部材30と、4つの第二補助部材31とで覆われる。隣り合う第一補助部材30の傾斜面30c,30cと、第二補助部材31の傾斜面31cとは連続して配置される。第一補助部材30及び第二補助部材31の大きさは、接合工程を行った後に、塑性化領域W(接合部)の表面に凹溝が形成されたり、当該表面に各補助部材が残存したりしない程度に設定することが好ましい。
【0036】
接合工程は、第一補助部材30及び第二補助部材31を介して内隅に攪拌ピンF2を挿入し、金属部材20の周方向に亘って摩擦攪拌を行う工程である。
図7に示すように、接合工程では、接合用回転ツールFを用いて突合せ部J1に対して摩擦攪拌を行う。まず、金属部材10の表面10aに設定した開始位置S1に右回転させた接合用回転ツールFを挿入する。
【0037】
そして、接合用回転ツールFを突合せ部J1に設定した始点S2側に相対移動させて、始点S2に達したら、突合せ部J1に沿って接合用回転ツールFを金属部材20の周りに一周させる。言い換えると、接合工程では、傾斜面30c,31cをなぞるようにして摩擦攪拌を行う。
図7に示すように、接合工程では、攪拌ピンF2のみを金属部材10,20、第一補助部材30及び第二補助部材31に接触させた状態で摩擦攪拌を行う。つまり、攪拌ピンF2の基端側を露出させた状態で摩擦攪拌を行う。接合用回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域Wが形成される。攪拌ピンF2の挿入角度は適宜設定すればよいが、本実施形態では鉛直面に対して接合用回転ツールFの回転中心軸を45°傾けている。つまり、傾斜面30c,31cに対して接合用回転ツールFの回転中心軸を垂直に設定した状態で摩擦攪拌を行う。
【0038】
接合用回転ツールFを金属部材20周りに一周させて始点S2を通過して突合せ部J1に設定した終点E2に達したら、接合用回転ツールFを表面10a側に相対移動させる。そして、表面10aに設定した終了位置E1で接合用回転ツールFを離脱させる。これにより、突合せ部J1における塑性化領域Wの始端(始点S2)と終端(終点E2)とがオーバーラップした状態となる。
【0039】
接合用回転ツールFを表面10aから離脱させると、表面10aに攪拌ピンF2の抜き穴が残存するが、例えば、当該抜き穴に肉盛溶接等を行って抜き穴を補修する補修工程を行ってもよい。
【0040】
以上説明した摩擦攪拌接合方法によれば、内隅に予め第一補助部材30及び第二補助部材31を配置して、第一補助部材30及び第二補助部材31の上から突合せ部J1に摩擦攪拌を行うことで突合せ部J1の金属不足を解消することができる。
【0041】
また、接合工程では、塑性化領域Wの始端と終端とをオーバーラップさせることで、水密性及び気密性を高めることができる。また、金属部材20の周方向に亘って連続して接合することで、接合強度を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態では、金属部材20の四隅に4つの第二補助部材31を配置することにより、突合せ部J1の周囲全体に補助部材を配置することができる。これにより、突合せ部J1の全体をバランスよく摩擦攪拌することができる。なお、本実施形態では、第一補助部材30及び第二補助部材31は、分割して構成されているが、これらが一体形成された矩形枠状の補助部材を用いてもよい。
【0043】
また、第一実施形態及び第二実施形態に係る接合工程では、金属部材10の表面10aに摩擦攪拌の開始位置S1を設定したが、突合せ部J1に接合用回転ツールFを挿入する開始位置S1を設定してもよい。
【0044】
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態に係る摩擦攪拌接合方法について説明する。本実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、円筒状の金属部材を接合する点で第一実施形態と相違する。第三実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0045】
本実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、突合せ工程と、肉盛溶接工程と、接合工程とを行う。本実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、
図8の(a)に示すように、金属部材10と金属部材40とを接合する。
【0046】
金属部材10は、直方体(板状)を呈する。金属部材10の中央には、板厚方向に貫通する貫通孔11が形成されている。貫通孔11の形状は特に制限されないが、本実施形態では平面視円形を呈する。なお、貫通孔11は設けなくてもよい。
【0047】
金属部材40は、円筒状を呈する。金属部材40の内径は、貫通孔11の内径よりも大きくなっている。金属部材10,40はいずれも摩擦攪拌可能な金属で形成されている。本実施形態では、金属部材10,40は同等の材料で形成されている。
【0048】
突合せ工程は、金属部材10,40を突き合せる工程である。
図8の(b)に示すように、突合せ工程では、金属部材10の表面10aと金属部材40の端面40bとを突き合せる。突合せ工程では、貫通孔11と金属部材40の中空部とが連通するように突き合せる。金属部材10,40は突き合わされる面(表面10a、端面40b)の形状が互いに異なるため、突き合わされることによって内隅が形成されるとともに、金属部材10の表面10aの周囲は露出した状態となる。内隅は、金属部材10の表面10aと金属部材40の外周面40aとで構成される隅部である。内隅は、金属部材40の周方向全体に亘って形成されている。
【0049】
肉盛溶接工程は、突合せ部J2に対して金属部材40の周方向に亘って肉盛溶接を行う工程である。
図9の(a)に示すように、肉盛溶接工程では、突合せ部J2の全周に亘ってTIG溶接又はMIG溶接等の肉盛溶接を行う。肉盛溶接工程を行うことで、内隅の全周が溶接金属Uによって覆われる。溶接金属Uの肉盛量は、接合工程を行った後に、塑性化領域W(接合部)の表面に凹溝が形成されたり、当該表面から溶接金属Uが突出したりしない程度に設定することが好ましい。
【0050】
接合工程は、溶接金属Uを介して内隅に攪拌ピンF2を挿入し、金属部材40の周方向に亘って摩擦攪拌を行う工程である。
図9の(b)に示すように、接合工程では、接合用回転ツールFを用いて突合せ部J2に対して摩擦攪拌を行う。まず、突合せ部J2に設定した開始位置S1に右回転させた接合用回転ツールFを挿入する。
【0051】
そして、接合用回転ツールFを突合せ部J2に沿って金属部材40の周りに一周させる。言い換えると、接合工程では、溶接金属Uをなぞるようにして摩擦攪拌を行う。接合工程では、攪拌ピンF2のみを金属部材10,40及び溶接金属Uに接触させた状態で摩擦攪拌を行う。つまり、攪拌ピンF2の基端側を露出させた状態で摩擦攪拌を行う。攪拌ピンF2の挿入角度は適宜設定すればよいが、本実施形態では鉛直面に対して接合用回転ツールFの回転中心軸を45°傾けている。
【0052】
摩擦攪拌を行う際には、金属部材40の周りに接合用回転ツールFを移動させてもよいが、本実施形態では、接合用回転ツールFの位置は固定し、金属部材10,40を鉛直方向軸周りに回転させている。接合用回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域Wが形成される。
【0053】
図10に示すように、接合用回転ツールFを金属部材40周りに一周させて開始位置S1を通過して突合せ部J1に設定した終点E2に達したら、接合用回転ツールFを表面10a側に相対移動させる。そして、表面10aに設定した終了位置E1で接合用回転ツールFを離脱させる。
【0054】
接合用回転ツールFを表面10aから離脱させると、表面10aに攪拌ピンF2の抜き穴が残存するが、例えば、当該抜き穴に肉盛溶接等を行って抜き穴を補修する補修工程を行ってもよい。
【0055】
以上説明した第三実施形態に係る摩擦攪拌接合方法によっても第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。
【0056】
〔第四実施形態〕
次に、本発明の第四実施形態に係る摩擦攪拌接合方法について説明する。
図11に示すように、本実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、突合せ部J2に補助部材50を配置する点で第三実施形態と相違する。第四実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、第三実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0057】
本実施形態に係る摩擦攪拌接合方法では、突合わせ工程と、補助部材配置工程と、接合工程とを行う。突合せ工程は第三実施形態と同等の要領で行う。
【0058】
補助部材配置工程は、突合せ部J2に対して金属部材40の周方向に亘って補助部材50を配置する工程である。
図11の(a)に示すように、補助部材50は、円環状を呈し、断面直角三角形になっている。補助部材50の内径は、金属部材40の外径と略同等になっている。補助部材配置工程では、金属部材40の端部側から補助部材50を挿入する。そして、
図11の(b)に示すように、補助部材50の底面50aを金属部材10の表面10aに面接触させ、補助部材50の立上り面50bを金属部材40の外周面40aに面接触させる。これにより、内隅(突合せ部J2)の周囲が、補助部材50で覆われる。
【0059】
補助部材50は、摩擦攪拌可能な金属であればよいが、本実施形態のように金属部材10,40と同等の材料であることが好ましい。
【0060】
接合工程は、補助部材50を介して内隅に攪拌ピンを挿入し、金属部材40の周方向に亘って摩擦攪拌を行う工程である。具体的な図示は省略するが、接合工程では、接合用回転ツールFを用いて突合せ部J2に対して摩擦攪拌を行う。まず、補助部材50の傾斜面50cに設定した開始位置に右回転させた接合用回転ツールFを挿入する。そして、攪拌ピンF2のみを金属部材10,40及び補助部材50に接触させた状態で摩擦攪拌を行う。
【0061】
接合用回転ツールFを金属部材40周りに一周させて塑性化領域をオーバーラップさせたら、突合せ部J2に設定した終点で接合用回転ツールFを表面10a側に相対移動させる。そして、表面10aに設定した終了位置で接合用回転ツールFを離脱させる。
【0062】
以上説明した第四実施形態に係る摩擦攪拌接合方法によっても、第二実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、補助部材50は円環状になっているため、補助部材配置工程を容易に行うことができる。
【0063】
なお、第三実施形態及び第四実施形態では、円筒状の金属部材40を用いたが、これに替えて円柱状又は板状の金属部材を用いてもよい。円柱状及び板状の金属部材を
図8の(a)に示す金属部材10に突き合わせる場合、貫通孔11は当該金属部材で覆われることになる。また、円筒状の金属部材40に替えて他の平面形状を呈する筒状の金属部材を用いてもよい。