特許第6052244号(P6052244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6052244モータ並びにそれを搭載した電動パワーステアリング装置及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052244
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】モータ並びにそれを搭載した電動パワーステアリング装置及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20161219BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20161219BHJP
   H02K 29/12 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H02K5/22
   B62D5/04
   H02K29/12
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-133891(P2014-133891)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-13000(P2016-13000A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】中村 梢
(72)【発明者】
【氏名】浅田 稔晃
(72)【発明者】
【氏名】菊地 祐介
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−207270(JP,A)
【文献】 特開2014−007784(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/057978(WO,A1)
【文献】 特開2012−143089(JP,A)
【文献】 特開平06−038444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00− 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周をケースで包括され、反負荷側に配線を行うモータであり、
前記反負荷側のケース底面の円周方向に沿って全周、複数個の開口部が等間隔に設けられ、
一部の前記開口部は、モータ巻線のバスバーを突出させるために設けられ、前記一部以外の開口部は、ネジ穴として利用するために設けられ、
前記複数個の開口部は形状が相似であり、前記バスバーに接触せず、
インシュレータの外周部の内側にある軸方向端部には複数の凸部が周方向に設けられ、隣り合う前記凸部に挟まれた切欠きである複数のノッチ部と、
モータステータの一端側に配置され、インシュレータの外周部の内側にある軸方向端部に対向するバスバー構造体とを有し、
前記バスバー構造体の周方向側面に設けられた嵌合部が前記ノッチ部に嵌め合わされるような構造となっていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記開口部が矩形状若しくは長形状の形状である請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記モータ巻線が2系統であり、前記2系統のモータ巻線に前記バスバーが接続されている請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記2系統のモータ巻線のバスバーが対角位置に配置され、前記配置に対応して前記開口部が設けられている請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記2系統のモータ巻線のバスバーが系統順に順次配置され、前記配置に対応して前記開口部が設けられている請求項3に記載のモータ。
【請求項6】
前記ケース底面に回転位置検出手段を結合する円柱状に窪んだ凹部が形成され、前記開口部の数が前記バスバーの数よりも少なくとも2個多く形成され、前記少なくとも2個多く形成された開口部を、前記回転位置検出手段を締結するネジ穴として利用できるようになっている請求項3乃至5のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記ケースと前記バスバーとの絶縁を図るため、前記ケースを覆う絶縁カップ若しくは絶縁フィルムが設けられている請求項1乃至6のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記絶縁カップにタップをきり、回転位置センサ固定のためのネジ穴を設けている請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のモータで駆動制御され、少なくとも操舵トルクに基づいて演算された電流指令値により、車両の操舵系にアシスト力を付与することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電動パワーステアリング装置を搭載した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの反負荷側のケース底面に、開口部が全周に等間隔、相似形状で設けられ、開口部がバスバーの引き出し穴となっている構造のモータ並びにそれを搭載した電動パワーステアリング装置及び車両に関する。車両に搭載される電動パワーステアリング装置は、少なくとも操舵トルクに基づいて演算された電流指令値により、車両の操舵系にモータ(例えばブラシレスモータ)によるアシスト力を付与するものであり、ブリッジ回路で成るインバータによって駆動制御される。
【背景技術】
【0002】
駆動部にモータを搭載した装置として電動パワーステアリング装置(EPS)があり、電動パワーステアリング装置は、車両のステアリング機構にモータの回転力でアシストトルクを付与するものであり、インバータから供給される電力で制御されるモータの駆動力を、ギア等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸にアシストトルクを付与する。かかる従来の電動パワーステアリング装置は、アシストトルクを正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指令値)とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデューティの調整で行っており、モータとしては耐久性や保守性に優れ、騒音やノイズも少ないブラシレスモータが一般的に使用されている。
【0003】
電動パワーステアリング装置の一般的な構成を図1に示して説明すると、ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速部内の減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、コラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10及び操舵角θを検出する舵角センサ14が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)30には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Velとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによって、EPS用モータ20に供給する電流を制御する。
【0004】
なお、舵角センサ14は必須のものではなく、配設されていなくても良く、また、モータ20に連結されたレゾルバ等の回転位置センサから操舵角を取得することも可能である。
【0005】
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VelはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続されている。
【0006】
電動パワーステアリング装置のモータ20の動力伝達機構例、及びモータ20及びコントロールユニット(ECU)30の接続例は図2に示すようになっている。
【0007】
図2に示すように、モータ20の出力軸21はモータハウジング22の外側に延在しており、モータヨークを形成するモータハウジング22は、ロータ等を備えたモータ本体を収容する有底略円筒状のケース本体23と、ケース本体23の開口側に取付けられたモータ取付け部24とで構成されている。モータ取付け部24は全体として板状に形成され、その中央部の貫通孔を介して出力軸21をモータ取付け部24の外側に挿通させている。なお、モータ取付け部24をフランジ状に形成してもよい。
【0008】
モータ20に連結された動力伝達機構50は、ウォーム51及びウォームホイール52から成るウォーム減速機構を有し、ウォーム減速機構と出力軸21とを連結する連結部53を備えている。ウォーム51は、出力軸21と同軸のウォームシャフト51Aの中間部に形成され、ウォームホイール52に噛合している。ウォームホイール52の軸心には、ウォームホイール52と一体回転するコラム軸2のアッパー(ハンドル)側出力軸2Aが連結されている。ウォーム減速機構によって、モータ20の回転、即ち出力軸21の回転が減速されてアッパー側出力軸2Aに伝達される。
【0009】
減速機構側のモータ取付け部54の内部空間は、モータ20側(開口側)に向かって拡開するようにラッパ形状に形成されており、モータ取付け部54がモータ20側のモータ取付け部24にボルト止めされることで、モータ取付け部54の開口が閉塞される。モータ取付け部54にモータ20を取付けた図2に示す状態では、モータ取付け部54の内部空間の軸心に連結部53及び出力軸21が位置するようになっている。なお、モータ取付け部24をフランジ状に形成した場合には、これに対応して、モータ取付け部54もフランジ状に形成する。
【0010】
また、モータ20とコントロールユニット(ECU)30若しくはECU基板とは離間してリード線31で配線されており、モータ20はコントロールユニット(ECU)30によってリード線31を介して駆動制御される。
【0011】
このような電動パワーステアリング装置において、モータのコイルの近傍に、配線基板又はバスバーと称される導電性の部品を配置し、当該部品を介してモータコイルと外部電源とを電気的に接続する構造が知られている。
【0012】
先行技術の特許として、特開2013-90376号公報(特許文献1)に示されているものがある。その構成は、モータの反負荷側に制御基盤を配置しており、バスバーは必然的にモータケースに穴を開け、反負荷側に突き出す形状を取っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2013−90376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1のモータでは、バスバーの貫通穴に対して、特段記載がない。ケース底からターミナルを引き出す場合、穴一方向だけに偏らせると、プレス加工時に均等に力が加わらないため、ケース鋼板に歪みが生じる。この歪みが、ベアリングハウス同軸度、傾き等の精度に影響する。EPSモータにおいて、モータのベアリングハウス同軸度、ひいてはシャフト同軸度の悪化はガタつきを生み、応力や音などの性能に大きく寄与する。
【0015】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、ケース底面に円周方向に全周、等間隔、相似形状で配置された複数の開口部を設け、開口部からバスバー(バスバーターミナル)を突出させ、制御基板とバスバーとを簡易な手法で直接接続して配線可能な構造のモータ並びにそれを搭載した電動パワーステアリング装置及び車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、外周をケースで包括され、反負荷側に配線を行うモータであり、前記反負荷側のケース底面の円周方向に沿って全周、複数個の開口部が等間隔に設けられ、一部の前記開口部は、モータ巻線のバスバーを突出させるために設けられ、前記一部以外の開口部は、ネジ穴として利用するために設けられ、前記複数個の開口部は形状が相似であり、前記バスバーに接触せず、インシュレータの外周部の内側にある軸方向端部には複数の凸部が周方向に設けられ、隣り合う前記凸部に挟まれた切欠きである複数のノッチ部と、モータステータの一端側に配置され、インシュレータの外周部の内側にある軸方向端部に対向するバスバー構造体とを有し、前記バスバー構造体の周方向側面に設けられた嵌合部が前記ノッチ部に嵌め合わされるような構造となっていることにより達成される。
【0017】
本発明の上記目的は、前記開口部が矩形状若しくは長形状の形状であることにより、或いは前記モータ巻線が2系統であり、前記2系統のモータ巻線に前記バスバーが接続されていることにより、或いは前記2系統のモータ巻線のバスバーが対角位置に配置され、前記配置に対応して前記開口部が設けられていることにより、或いは前記2系統のモータ巻線のバスバーが系統順に順次配置され、前記配置に対応して前記開口部が設けられていることにより、或いは前記ケース底面に回転位置検出手段を結合する円柱状に窪んだ凹部が形成され、前記開口部の数が前記バスバーの数よりも少なくとも2個多く形成され、前記少なくとも2個多く形成された開口部を、前記回転位置検出手段を締結するネジ穴として利用できるようになっていることにより、或いは前記ケースと前記バスバーとの絶縁を図るため、前記ケースを覆う絶縁カップ若しくは絶縁フィルムが設けられていることにより、或いは前記絶縁カップにタップをきり、回転位置センサ固定のためのネジ穴を設けていることにより、より効果的に達成される。
【0018】
上記ブラシレスモータで駆動制御され、少なくとも操舵トルクに基づいて演算された電流指令値により、車両の操舵系にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置及びそれを搭載した車両が達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明のモータによれば、反負荷側のケース底面に円周方向に沿って複数の開口部が設けられ、開口部からバスバーターミナル(バスバー)が突出した構造となっているので、バスバーと制御基板等との接続が容易であり、無駄な配線を省くことができる。
【0020】
また、バスバーを突出させていない開口部は、レゾルバ等の回転位置センサの取付固定にも利用でき、モータと回転位置センサとの一体化を簡易な構造で実現できる。

上記構造のモータを電動パワーステアリング装置に適用することにより、位置決め精度が高く、安価で信頼性の高い電動パワーステアリング装置を達成でき、かかる電動パワーステアリング装置を車両に搭載することにより、車両の一層の安定化、コストダウンを図ることがきる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】電動パワーステアリング装置の概要を示す構成図である。
図2】電動パワーステアリング装置のモータと減速部の連結機構例及びコントロールユニット(ECU)との接続例を示す図である。
図3】反負荷側のケース底面の一例を示す平面図である。
図4】本発明に係るモータの構造例を示す斜視図である。
図5】本発明に係るモータの構造例(レゾルバステータ装着)を示す斜視図である。
図6】本発明に係るモータの組立展開図であり、レゾルバステータ装着の様子を示している。
図7】モータの2系統巻線の線図である。
図8】バスバー構造体とモータステータを模式的に示す分解斜視図である。
図9】バスバー構造体とモータステータの組立状態を説明する外観構造図である。
図10】絶縁フィルムでヨークを覆ったモータの構造例を示す斜視図である。
図11】絶縁カップでヨークを覆ったモータの構造例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るモータは、モータの外周を鋼板ケースで包括され、反負荷側(出力軸の反対側)にバスバーを引き出して配線を行う構造の配線工程と組立工程を考慮したモータである。
【0023】
本発明は反負荷側に制御基盤を置く場合、ケースに穴を開けてバスバーを貫通させる場合に、ケース底面に、全周方向に等間隔で、相似形状の穴を複数開けることで、加工時のベアリングハウス同軸度に影響する歪みを抑える効果を持つ。複数の穴は、2系統巻き線で増加するバスバー引出しのほか、レゾルバステータ固定のためのネジを通す穴に使用することができる。巻線端末とバスバー接続部やバスバーとケース間の絶縁を保つ必要があるため、バスバーを覆うようにカップ状の絶縁樹脂を、ヨークとの間に設置する。または、バスバーを覆うように、絶縁フィルムを巻き付けける。更に、絶縁カップを使用する場合は、絶縁カップにタップをきり、レゾルバステータ固定のためのネジ穴を設けることもできる。 或いは、ケースにタップをきり、レゾルバステータとケースとを直接締結する。ケースの鋼板が薄い等、ネジのかかり代が取れない場合、締結力に不安がある場合は、バーリングタップにする等の対策をとることで、同様の効果が得られる。
【0024】
本発明のモータでは、反負荷側のケース底面の円周方向に沿って全周、等間隔、相似形状の開口部を複数個設け、開口部からモータバスバーを突出させ、ECU側バスバーターミナルと接続して配線を行う構造になっている。開口部を鋼板ケースに対向して対称的に配置することで、プレス穴あけ加工時の歪みを最小限とし、モータ軸との同軸度を保つと同時に、配線レイアウトの自由度を持っている。モータの冗長性を高めるために2系統のモータ巻線にすると、バスバーが3相6線に増加するが、開口部を等間隔に相似形状で設けることにより、順次対応が可能となる。また、バスバーの突出に未使用の開口部は、レゾルバステータのネジ締結に使用することも可能である。
【0025】
更に、ケースとバスバーとの絶縁を図るために絶縁カップ又は絶縁フィルムを設け、絶縁カップの場合は、ケース底面にタップを設けることで、レゾルバ等の回転位置センサの固定機構とすることが可能である。
【0026】
本発明のモータ構造は、あくまでモータ単体で成立する構造であり、ケースがモータ底面を覆っており、且つ配線をバスバーを介して反負荷側に引き出すため、ケース底面の円周方向に沿って全周、等間隔に相似形状で、バスバーが突出する開口部が設けられており、反負荷側に制御基板を配置する場合は配線が短く済む。また、プレス穴あけ加工時のモータ軸との同軸度精度維持のため、90度等配(開口形状、等間隔、相似形状)で開口部の穴を開ける。複数個の開口部は、2系統巻線で増加するバスバー引出しのほか、レゾルバステータ固定のためのネジを通す穴、或いはネジ締結の穴にも使用する。本発明のモータ構造では、巻線端末とバスバー接続部他、バスバーとケース間の絶縁を保つ必要がある。そのため、バスバーを覆うように絶縁樹脂で成る絶縁カップをケースとの間に設置するか、或いはバスバーを覆うように絶縁フィルムを巻付け若しくは層設する。これにより、ケースとバスバー、更にはモータ巻線との絶縁が可能となり、モータの反負荷側に確実に配線を引出すことができる。また、絶縁カップを使用する場合は、絶縁カップの面上にタップを刻設し、レゾルバステータ固定のためのネジ穴を設け、絶縁カップに直接レゾルバステータをネジで締結して固定することができる。
【0027】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態では、3相2系統巻線のバスバーに適用する開口部の例を挙げて説明するが、他の形式のモータにも同様に適用可能である。開口部の個数、形状、配置等は適宜変更可能である。
【0028】
図3は本発明に係るモータ100のケース底面110の平面図であり、図4は本発明に係るモータ100の斜視図である。反負荷側のケース底面110には、円周方向に沿って等間隔に8個の長形状の開口部111〜118が、プレス穴あけ加工等によって設けられており、開口部111、112、113から1系統のモータ巻線のバスバーU1in、V1in、W1inを突出させて引き出し、開口部115、116、117から他の1系統のモータ巻線のバスバーU2in、V2in、W2inを突出させて引き出している。バスバーU1in、V1in、W1inは2系統巻線モータの第1コイルのバスバーであり、バスバーU2in、V2in、W2inは2系統巻線モータの第2コイルのバスバーである。バスバーU1in〜W1in及びU2in〜W2inは、いずれもヨーク110の開口部111〜113及び115〜117とは接触しないようになっている。
【0029】
中央部には、円柱状に窪んだ凹部120が設けられており、凹部120を形成するケースがケース底面110を形成している。開口部111〜113及び115〜117から突出している2系統のバスバーU1in〜W1in及びU2in〜W2inをECU側バスバーターミナルと接続して配線を行う。
【0030】
図3及び図4では、開口部111〜118は同一形状になっているが、相似形状であっても良い。また、図では、開口部111〜118の各両端部は丸みを持っているが、丸みはなくても良く、矩形状若しくは長形状の形状で、バスバーが接触しないで突出する形状であれば良い。
【0031】
モータ100がブラシレスモータである場合には回転位置を検出する必要があるため、レゾルバ等をモータ軸に結合する必要があり、図5及び図6に示すように凹部120にレゾルバステータ150を挿入すると共に、ネジ151でレゾルバステータ150をモータ100に締結して固定する。その際、取付用ネジ穴として、空いている開口部114及び118を使用する。なお、図6において、凹部120にはロータ軸101が突出していると共に、その軸受102が配設されている。
【0032】
次に、2系統の巻線を有するモータについて説明する。
【0033】
2系統の巻線を有するモータは、ステータのコイルが2系統(U1〜W1相とU2〜W2相)に分けられ、1系統が失陥しても残りの1系統でロータを回転させるためのモータであり、モータ巻線は図7に示すようになっている。即ち、6つの第1コイルは、第1U相の電流により励磁される2つの第1U相コイル137Ua、137Ubと、第1V相の電流により励磁される2つの第1V相コイル137Va、137Vbと、第1W相の電流により励磁される2つの第1W相コイル137Wa、137Wbとを含む。第1U相コイル137Ubは第1U相コイル137Uaに対して直列に接続され、第1V相コイル137Vbは第1V相コイル137Vaに対して直列に接続され、第1W相コイル137Wbは第1W相コイル137Waに対して直列に接続されている。第1コイルのティースに対する巻き方向は全て同じ方向であり、配線Lu1、Lv1、Lw1はバスバーU1in,V1in,W1inを介してY結線(スター結線)で接合されている。
【0034】
また、6つの第2コイルは、第2U相の電流により励磁される2つの第2U相コイル138Ua、138Ubと、第2V相の電流により励磁される2つの第2V相コイル138Va、138Vbと、第2W相の電流により励磁される2つの第2W相コイル138Wa、138Wbとを含む。第2U相コイル138Ubは、第2U相コイル138Uaに対して直列に接続され、第2V相コイル138Vbは第2V相コイル138Vaに対して直列に接続され、第2W相コイル138Wbは第2W相コイル138Waに対して直列に接続されている。第2コイルのティースに対する巻き方向は全て同じ方向であり、第1コイルの巻き方向と同じであり、配線Lu2、Lv2、Lw2はバスバーU2in,V2in,W2inを介してY結線(スター結線)で接合されている。
【0035】
図8は、バスバーU1in,V1in,W1in及びU2in,V2in,W2inが垂設されたバスバー構造体140と、モータステータ145とを模式的に示す分解斜視図である。図9は、バスバー構造体140とモータステータ145との組立状態を説明する説明図である。図8に示すように、バスバー構造体140は、板状の絶縁部材141の軸方向の一面から3相入力毎のバスバーU1in、V1in、W1in及びU2in、V2in、W2inが上方に突出している。 バスバー構造体140はモータステータ145の一端側に配置され、インシュレータ146の外周部147の内側にある軸方向端部148に対向する。軸方向端部148には複数の凸部148Aが周方向に設けられ、隣り合う凸部148Aに挟まれた切欠きであるノッチ部148Bを複数有している。バスバー構造体140は、凸部141Aがノッチ部148Bに嵌め合わされ、図9のように位置決めされ固定される。
【0036】
上述のような2系統の巻線のバスバーU1in、V1in、W1in及びU2in、V2in、W2inが、図4に示すようにケース底面110に設けられた開口部111〜113及び115〜117と接触しないようにして、上方に突出する。そのため、開口部111〜113及び115〜117のサイズは、バスバーU1in、V1in、W1in及びU2in、V2in、W2inのサイズよりも余裕を持っていることが必要である。
【0037】
本発明では、突出したバスバーU1in、V1in、W1in及びU2in、V2in、W2inとヨーク110とが接触しないように確実に絶縁するため、図10に示すように絶縁フィルム160を巻き付け若しくは層設するか、或いは図11に示すようにカップ状の絶縁樹脂で成る絶縁カップ170を設置する。絶縁フィルム160の場合はバスバー引出し部にも絶縁フィルムを巻き付け、また、絶縁カップ170の場合はバスバー突き出し部分も覆うような形状で、ケース開口部との絶縁を図る。
なお、絶縁カップ170の場合には、絶縁カップ170の面上にタップを刻設し、レゾルバステータ固定のためのネジ穴とすることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 ハンドル
2 コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)
10 トルクセンサ
12 車速センサ
14 舵角センサ
20 モータ
21 出力軸
30 コントロールユニット(ECU)
40 CAN
100 モータ(ブラシレスモータ)
110 ケース底面
111〜118 開口部
120 凹部
140 バスバー構造体
145 モータステータ
150 レゾルバステータ
160 絶縁フィルム
170 絶縁カップ
図1
図2
図3
図4
図5
図7
図8
図9
図6
図10
図11