特許第6052258号(P6052258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052258
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】直動回転アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20161219BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H02K41/03 A
   H02K21/14 M
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-190583(P2014-190583)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-63657(P2016-63657A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2016年5月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 省吾
(72)【発明者】
【氏名】大戸 基道
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−343903(JP,A)
【文献】 特開2003−189588(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/044748(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
H02K 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸を備え、前記出力軸の軸方向に直動可能かつ前記出力軸の周方向に回転可能に支持される可動子と、
前記可動子を直動させる磁界を発生する直動用巻線と、前記可動子を回転させる磁界を発生する回転用巻線を備える固定子と、
を備え、
前記可動子は、前記軸方向に交互に配列する複数の永久磁石と複数のヨークを備え、
前記各々のヨークには、前記出力軸の径方向の外周側に突出し、前記周方向に配列する複数の突出部が設けられ、
前記各々の突出部には、前記軸方向の各々の側に張り出し、前記永久磁石と前記径方向に重なり合う庇部が設けられる、
直動回転アクチュエータ。
【請求項2】
前記永久磁石に対して前記軸方向の一方の側に位置する前記ヨークに設けられた前記突出部の前記庇部と、他方の側に位置する前記ヨークに設けられた前記突出部の前記庇部が、前記周方向に重なり合わない、
請求項1に記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項3】
前記永久磁石の外周面が、前記庇部の内周面に嵌合する、
請求項1に記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項4】
前記固定子は、前記径方向の内周側に突出して前記可動子に対向する、前記軸方向と前記周方向に配列する複数の突出コアをさらに備える、
請求項1に記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項5】
前記突出部の前記軸方向の長さが、前記突出コアの前記軸方向の長さよりも大きい、
請求項4に記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項6】
前記永久磁石に対して前記軸方向の一方の側に位置する前記ヨークに設けられた前記突出部と、他方の側に位置する前記ヨークに設けられた前記突出部の、前記周方向に見たときの前記軸方向の間隔が、前記軸方向に見たときの前記周方向の間隔よりも大きい、
請求項1に記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項7】
前記可動子は、前記ヨークの前記径方向の内周側に配置される永久磁石をさらに備える、
請求項1に記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項8】
前記各々の永久磁石と前記各々のヨークは円盤状であり、相互に接着されて前記軸方向に列なる、
請求項1に記載の直動回転アクチュエータ。
【請求項9】
前記突出部は、前記ヨークの外周面に接着された永久磁石からなる、
請求項1に記載の直動回転アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動回転アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直動と回転の2つの動作が可能な直動回転アクチュエータが知られている。
【0003】
非特許文献1には、複数の永久磁石と複数のヨークが軸方向に交互に配列し、各々のヨークに径方向に突出する突出部が設けられた可動子が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Masaki Mori, Wataru Kitagawa and Takaharu Takeshita、"Design of Two-Degree-of-Freedom Electromagnetic Actuator using PMSM and LSM"、Journal of the Japan Society of Applied Electromagnetics and Mechanics、2013年9月、第21巻、第3号、p.476-481
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5261913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に開示された可動子の構成では、永久磁石の厚みの分だけ突出部の軸方向の間隔が開くため、十分な出力が得られにくい上、軸方向に肥大化しやすいという課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、出力の向上と軸方向の小型化を図ることが可能な直動回転アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の直動回転アクチュエータは、可動子と、固定子と、を備える。前記可動子は、出力軸を備え、前記出力軸の軸方向に直動可能かつ前記出力軸の周方向に回転可能に支持される。前記固定子は、前記可動子を直動させる磁界を発生する直動用巻線と、前記可動子を回転させる磁界を発生する回転用巻線を備える。前記可動子は、前記軸方向に交互に配列する複数の永久磁石と複数のヨークを備える。前記各々のヨークには、前記径方向の外周側に突出し、前記周方向に配列する複数の突出部が設けられる。前記各々の突出部には、前記軸方向の各々の側に張り出し、前記永久磁石と前記径方向に重なり合う庇部が設けられる。
【0009】
本発明の一態様では、前記永久磁石に対して前記軸方向の一方の側に位置する前記ヨークに設けられた前記突出部の前記庇部と、他方の側に位置する前記ヨークに設けられた前記突出部の前記庇部が、前記周方向に重なり合わなくてもよい。
【0010】
本発明の一態様では、前記永久磁石の外周面が、前記庇部の内周面に嵌合してもよい。
【0011】
本発明の一態様では、前記固定子は、前記径方向の内周側に突出して前記可動子に対向する、前記軸方向と前記周方向に配列する複数の突出コアをさらに備えてもよい。
【0012】
本発明の一態様では、前記突出部の前記軸方向の長さが、前記突出コアの前記軸方向の長さよりも大きくてもよい。
【0013】
本発明の一態様では、前記永久磁石に対して前記軸方向の一方の側に位置する前記ヨークに設けられた前記突出部と、他方の側に位置する前記ヨークに設けられた前記突出部の、前記周方向に見たときの前記軸方向の間隔が、前記軸方向に見たときの前記周方向の間隔よりも大きくてもよい。
【0014】
本発明の一態様では、前記可動子は、前記ヨークの前記径方向の内周側に配置される永久磁石をさらに備えてもよい。
【0015】
本発明の一態様では、前記各々の永久磁石と前記各々のヨークは円盤状であり、相互に接着されて前記軸方向に列なってもよい。
【0016】
本発明の一態様では、前記突出部は、前記ヨークの外周面に接着された永久磁石からなってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、ヨークの突出部に、軸方向の各々の側に張り出し、永久磁石と径方向に重なり合う庇部が設けられているため、庇部の軸方向の間隔を永久磁石の厚さよりも小さくすることができ、この結果、可動子の磁束密度が高まり、出力の向上を図ることが可能である。また、軸方向の小型化を図ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る直動回転アクチュエータの断面図である。
図2図1の要部を拡大した図である。
図3】可動子と固定子の断面図である。
図4】固定子のコアの斜視図である。
図5】可動子の斜視図である。
図6】可動子の側面図である。
図7A】可動子の断面図である。
図7B】可動子の断面図である。
図8図2の要部をさらに拡大した図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る直動回転アクチュエータの断面図である。
図10】可動子の断面図である。
図11A】可動子の斜視図である。
図11B】可動子の斜視図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る直動回転アクチュエータの断面図である。
図13】本発明の他の実施形態に係る直動回転アクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る直動回転アクチュエータ1を、出力軸21を通るように切断したときの断面図である。図2は、図1における可動子2と固定子3を含む要部を拡大した図である。図3は、図2のIII−III線で切断したときの可動子2と固定子3の断面図である。各図において、Z方向は、出力軸21の軸方向であって、可動子2が直動する方向である。θ方向は、出力軸21の周方向であって、可動子2が回転する方向である。R方向は、出力軸21の径方向である。
【0021】
図1に示されるように、直動回転アクチュエータ1は、円筒状のハウジング4に収容された可動子2と固定子3を備えている。可動子2は、出力軸21を備えており、軸受ユニット51,53によりハウジング4に対してZ方向に直動可能かつθ方向に回転可能に支持されている。軸受ユニット51,53は、ボールスプライン51a,53aと、ベアリング51b,53bを備えている。出力軸21の材料としては、例えば非磁性体が好適であるが、強磁性体であってもよい。固定子3は、ハウジング4の内周面上に固定されており、可動子2を取り囲んでいる。
【0022】
出力軸21の一方の端部は、ハウジング4の外部へ延出している。出力軸21の他方の端部には、ベアリング55を介してZ方向に延伸するアーム57が取り付けられている。アーム57には、リニアスケール61が取り付けられており、リニアセンサ63と共に、出力軸21のZ方向の位置を検出するために利用される。また、ボールスプライン53aには、円盤状永久磁石71が取り付けられており、磁気検出素子73と共に、出力軸21のθ方向の回転角を検出するための磁気式エンコーダを構成している。なお、光学式のロータリエンコーダが用いられてもよい。
【0023】
図2及び図3に示されるように、可動子2は、Z方向に交互に配列する複数の永久磁石23と複数のヨーク25を備えている。永久磁石23とヨーク25は、環状に形成されており、出力軸21に嵌められている。永久磁石23とヨーク25は、相互に接触した状態で出力軸21に固定されている。可動子2の具体的な構成については、後述する。
【0024】
固定子3は、コア31に巻かれた直動用巻線33と回転用巻線35を備えている。直動用巻線33と回転用巻線35は、出力軸21を中心に同心円状に配置されており、R方向に重なり合っている。直動用巻線33は、可動子2を取り囲むようにθ方向に巻かれており、電流が供給されると可動子2を直動させる磁界を発生する。回転用巻線35は、Z方向を往復するように巻かれており、電流が供給されると可動子2を回転させる磁界を発生する。
【0025】
固定子3は、θ方向に配列する複数のコア31を備えている。複数のコア31は、組み立てられることによって、可動子2を取り囲む円筒状の外形を成す。各々のコア31は、R方向の内周側に突出して可動子2に対向する複数の突出コア319を備えている。突出コア319は、ティースとも呼ばれる。突出コア319は、Z方向とθ方向に配列する。図示の例では、7つの突出コア319がZ方向に配列し、6つの突出コア319がθ方向に配列している。
【0026】
具体的には、固定子3は、図4に示されるように、ハウジング4の内周面に沿うように湾曲した壁部313と、壁部313のθ方向の中央からR方向の内周側へ突出した条部315と、条部315からR方向の内周側へ突出した複数の突出コア319を備えている。また、突出コア319は、θ方向に広がった先端部318を備えている。
【0027】
回転用巻線35は、条部315を取り囲むようにZ方向に往復して巻かれる。コア31は、条部315に回転用巻線35が巻かれた状態でハウジング4に収容され、円筒状に組み立てられる。直動用巻線33は、Z方向に隣り合う突出コア319の間の溝31dに収容されるように、円筒状に組み立てられた複数のコア31に亘ってθ方向に巻かれる。
【0028】
図5図6は、可動子2の斜視図と側面図である。図6における永久磁石23の内側に付された矢印は、S極からN極に向かう磁化の方向を示している。図7Aは、図6のA−A線で切断したときの可動子2の断面図である。図7Bは、図6のB−B線で切断したときの可動子2の断面図である。図7A図7Bにおけるヨーク25の突出部257の周囲に付された矢印は、N極からS極に向かう磁束の方向を示している。
【0029】
可動子2は、Z方向に交互に配列する複数の永久磁石23と複数のヨーク25を備えている。複数の永久磁石23は、Z方向の一方の側がN極の永久磁石23Aと、Z方向の他方の側がN極の永久磁石23Bを含んでおり、永久磁石23Aと永久磁石23BがZ方向に交互に配列している。このため、複数のヨーク25は、永久磁石23のS極に挟まれるヨーク25Aと、永久磁石23のN極に挟まれるヨーク25Bを含んでおり、ヨーク25Aとヨーク25BがZ方向に交互に配列している。
【0030】
各々のヨーク25は、環状部253からR方向の外周側に突出し、θ方向に配列する複数の突出部257を備えている。突出部257は、ティースとも呼ばれる。ここで、永久磁石23のS極に挟まれるヨーク25Aの突出部257はS極部となり、永久磁石23のN極に挟まれるヨーク25Bの突出部257はN極部となる。すなわち、ヨーク25Aの突出部257のR方向の外周側がS極となり、ヨーク25Bの突出部257のR方向の外周側がN極となる。
【0031】
ヨーク25Aの突出部257(S極部)とヨーク25Bの突出部257(N極部)は、Z方向に見たときにθ方向に交互に配列している。図示の例では、ヨーク25A,25Bのそれぞれに90度間隔で4つの突出部257が設けられており、このため、Z方向に見たとき45度間隔で8つの突出部257がθ方向に配列している。また、ヨーク25Aの突出部257(S極部)とヨーク25Bの突出部257(N極部)は、θ方向に見たときにZ方向に交互に配列している。
【0032】
ところで、永久磁石23とヨーク25がZ方向に交互に配列する構成を採用する場合、永久磁石23のZ方向の厚みの分だけ2つのヨーク25A,25Bが離れるため、非特許文献1のように突出部のZ方向の間隔が広がる傾向にある。非特許文献1のように突出部のZ方向の間隔が広がると、十分な出力が得られにくい上、軸方向に肥大化しやすいという課題がある。
【0033】
そこで、本実施形態では、各々のヨーク25の突出部257にZ方向に張り出す庇部259を設けることによって、こうした課題を解決している。
【0034】
具体的には、各々のヨーク25の突出部257は、環状部253とR方向に連続する中央部258と、中央部258からZ方向の両方の側にそれぞれ張り出す庇部259を備えている。庇部259のR方向の厚みとθ方向の幅は、中央部258と同一である。庇部259は、中央部258からZ方向に張り出すことで、永久磁石23とR方向に重なり合っている。また、永久磁石23は、ヨーク25の環状部253と同径であり、永久磁石23の外周面は、庇部259の内周面に嵌合している。
【0035】
このようにヨーク25の突出部257に庇部259を設けることによって、2つのヨーク25A,25Bの突出部257のZ方向の間隔を永久磁石23のZ方向の厚みよりも小さくすることができ、この結果、出力の向上とZ方向の小型化を図ることが可能である。
【0036】
すなわち、ヨーク25Aの突出部257(S極部)とヨーク25Bの突出部257(N極部)のZ方向の間隔が小さくなるので、可動子2の磁束密度が高まり、直動出力と回転出力の両方を向上させることが可能である。特に、Z方向において可動子2の磁束密度が高められるため、より直動出力を向上させやすい。さらに、必要な突出部257のZ方向の長さを確保したまま、環状部253のZ方向の長さを小さくすることができるので、装置全体のZ方向の小型化を図ることが可能である。
【0037】
図8は、図2における永久磁石23A,23B、ヨーク25A,25B、及び突出コア319を含む要部をさらに拡大した図である。同図では、断面に現れないヨーク25Bの突出部257(N極部)を二点鎖線で描いている。
【0038】
Lcは、庇部259を含む突出部257のZ方向の長さである。Lc’は、環状部253のZ方向の長さであり、言い換えると、突出部257のZ方向の長さLcから庇部259の張り出し分を差し引いた長さである。Lmは、永久磁石23のZ方向の厚みであり、言い換えると、Z方向に隣り合う2つの環状部253の間隔である。Lmzは、θ方向に見たときのヨーク25Aの突出部257(S極部)とヨーク25Bの突出部257(N極部)のZ方向の間隔である。Ltは、固定子3のコア31に設けられた突出コア319のZ方向の長さであり、詳しくは、突出コア319の可動子2に対向する面のZ方向の長さである。
【0039】
ヨーク25Aの突出部257(S極部)とヨーク25Bの突出部257(N極部)は、周方向に重なり合わないことが好ましく、言い換えると、両者の間隔Lmzは0よりも大きいことが好ましい。また、庇部259の張り出し分(すなわち、Lc−Lc’)は、永久磁石23の厚みLmの半分よりも小さいことが好ましい。これによると、S極部とN極部が周方向に重なり合わないようにすることで、漏れ磁束を抑制して、直動出力の向上を図ることが可能である。
【0040】
さらには、ヨーク25Aの突出部257(S極部)とヨーク25Bの突出部257(N極部)のθ方向に見たときのZ方向の間隔Lmzは、Z方向に見たときのθ方向の間隔Lmθ(図7Aを参照)よりも大きいことが好ましい。S極部とN極部の間隔Lmzを確保することで、漏れ磁束を抑制して、直動出力の向上を図ることが可能である。
【0041】
突出部257のZ方向の長さLcは、突出コア319のZ方向の長さLtよりも大きいことが好ましい。これによると、直動用巻線33に生じる誘起電圧を正弦波に近づけることができるため、直動出力の向上を図ることが可能である。
【0042】
すなわち、突出部257がZ方向に移動するとき、突出部257が突出コア319に近づくに従って突出コア319が受ける磁束密度が徐々に大きくなり、突出部257が突出コア319から離れるに従って突出コア319が受ける磁束密度が徐々に小さくなると、直動用巻線33に生じる誘起電圧を正弦波に近づけることが可能である。ここで、可動子2側の磁束密度は固定子3側よりも大きいことが一般的であることから、突出部257のZ方向の長さLcを突出コア319のZ方向の長さLtよりも大きくすることで、直動用巻線33に生じる誘起電圧を正弦波に近づけやすくなる。
【0043】
[第2の実施形態]
図9は、本発明の第2の実施形態に係る直動回転アクチュエータ1の可動子2と固定子3を含む要部を拡大した断面図である。図10は、図9のX−X線で切断したときの可動子2と固定子3の断面図である。図11A図11Bは、上記図7A図7Bに対応する断面図である。なお、上記実施形態と重複する構成については、図中に同一の番号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0044】
本実施形態では、ヨーク25のR方向の内周側に永久磁石24が配置されている。すなわち、ヨーク25と出力軸21の間に環状の永久磁石24が介在している。具体的には、永久磁石23のS極に挟まれるヨーク25AのR方向の内周側には、R方向の外周側がS極の永久磁石24Aが配置されており、永久磁石23のN極に挟まれるヨーク25BのR方向の外周側には、R方向の外周側がN極の永久磁石24Bが配置されている。
【0045】
これによると、ヨーク25の突出部257における磁束密度をさらに向上させることが可能であり、この結果、直動出力と回転出力のさらなる向上を図ることが可能である。具体的には、ヨーク25AのR方向の内周側に永久磁石24Aを配置することで、ヨーク25Aの突出部257(S極部)に流入する磁束密度をさらに向上させることが可能であり、ヨーク25BのR方向の内周側に永久磁石24Bを配置することで、ヨーク25Bの突出部257(N極部)から流出する磁束密度をさらに向上させることが可能である。
【0046】
[第3の実施形態]
図12は、本発明の第3の実施形態に係る直動回転アクチュエータ1の可動子2と固定子3を含む要部を拡大した断面図である。なお、上記実施形態と重複する構成については、図中に同一の番号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0047】
本実施形態では、各々の永久磁石23と各々のヨーク25が円盤状であり、相互に接着されて軸方向に列なることで可動子2を構成している。すなわち、本実施形態では、永久磁石23とヨーク25が設けられる範囲において出力軸21(図2等を参照)が省略されており、各々の永久磁石23と各々のヨーク25には、出力軸21のための貫通穴が形成されていない。
【0048】
これによると、ヨーク25の突出部257における磁束密度をさらに向上させることが可能であり、この結果、直動出力と回転出力のさらなる向上を図ることが可能である。
【0049】
[第4の実施形態]
図13は、本発明の第3の実施形態に係る直動回転アクチュエータ1の可動子2と固定子3を含む要部を拡大した断面図である。同図では、磁化の方向を示すため、可動子2の断面に付すハッチングを省略している。なお、上記実施形態と重複する構成については、図中に同一の番号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0050】
本実施形態では、上記第3の実施形態と同様に、各々の永久磁石23と各々のヨーク25が円盤状であり、相互に接着されて軸方向に列なることで可動子2を構成している。
【0051】
さらに、本実施形態では、上記第1〜第3の実施形態に係る突出部257に代えて、ヨーク25の外周面に接着された永久磁石からなる突出部29が設けられている。突出部29の位置、大きさ及び範囲は、上記第1〜第3の実施形態に係る突出部257と同様である(図5図8等を参照)。
【0052】
具体的には、永久磁石23のS極に挟まれるヨーク25Aの外周面に接着される突出部29Aは、R方向の外周側がS極であり(S極部)、永久磁石23のN極に挟まれるヨーク25Bの外周面に接着される突出部29Bは、R方向の外周側がN極である(N極部)。図13では、断面に現れない突出部29Bを二点鎖線で描いている。
【0053】
これによると、突出部29における磁束密度をさらに向上させることが可能であり、この結果、直動出力と回転出力のさらなる向上を図ることが可能である。具体的には、ヨーク25Aの外周面に突出部29Aを配置することで、突出部29A(S極部)に流入する磁束密度をさらに向上させることが可能であり、ヨーク25Bの外周面に突出部29Bを配置することで、突出部29B(N極部)から流出する磁束密度をさらに向上させることが可能である。
【0054】
[特許文献1との比較]
特許文献1の実施例3と図5には、クローポール鉄心263a,263bが開示されている。これは、「クローポール」という語から明らかなように、永久磁石253が位置する軸方向の一方の側にのみ爪部を延ばすことで、爪部に径方向の磁極を形成するものである。すなわち、特許文献1には、鉄心が2つの永久磁石によって軸方向に挟まれることや、爪部が軸方向の両方の側にそれぞれ延びることは開示されていない。
【0055】
これに対し、本実施形態では、各々のヨーク25は2つの永久磁石23A,23BによってZ方向に挟まれており、永久磁石23のS極に挟まれるヨーク25Aの突出部257がS極部となり、永久磁石23のN極に挟まれるヨーク25Bの突出部257がN極部となっている。また、各々のヨーク25の突出部257には、Z方向の両方の側にそれぞれ張り出す庇部259が設けられている。
【0056】
このように、本実施形態と特許文献1の相違は明らかであり、本実施形態における庇部259を含むヨーク25と、特許文献1におけるクローポール鉄心は、混同すべきでないものと思料する。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0058】
1 直動回転アクチュエータ、2 可動子、21 出力軸、23,24 永久磁石、25 ヨーク、253 環状部、257 突出部、258 中央部、259 庇部、3 固定子、29 突出部、31 コア、313 壁部、315 条部、318 先端部、319 突出コア、31d 溝、33 直動用巻線、35 回転用巻線、4 ハウジング、51,53 軸受ユニット、51a,53a ボールスプライン、51b,53b,55 ベアリング、57 アーム、61 リニアスケール、63 リニアセンサ、71 円盤状永久磁石、73 磁気検出素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13