(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0036】
<フォトレジスト組成物>
本発明のフォトレジスト組成物は、[A]重合体及び化合物(I)を含有する。また、当該フォトレジスト組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、[A]重合体及び化合物(I)以外の任意成分を含有していてもよい。以下、各成分について説明する。
【0037】
<[A]重合体>
[A]重合体は、酸解離性基を含む構造単位(I)を有する重合体である。この[A]重合体は、後述のフォトレジスト組成物(I)における[A]重合体と同様である。なお、この[A]重合体については、<フォトレジスト組成物(I)>における[A]重合体の説明を適用できるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0038】
<化合物(I)>
化合物(I)は、上記式(1)で表される化合物である。当該化合物(I)が上記構造を有することで、形成されるレジスト膜中での拡散を抑えることができ、露光部と未露光部とのコントラストを高めてLWR性能等の特性に優れたレジストパターンを形成することができる。以下、この化合物(I)について詳述する。
【0039】
上記式(1)中、R
1、R
2、R
3及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。これらのR
1、R
2、R
3及びRのうちのいずれか2つが互いに結合して環構造を形成してもよい。Xは、単結合、酸素原子又は−NR
a−である。このR
aは、水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1〜20の1価の有機基であり、上記Rと互いに結合して環構造を形成してもよい。A
−は、−SO
3−又は−CO
2−である。M
+は、1価のオニウムカチオンである。但し、A
−が−CO
2−の場合、R
1、R
2、R
3及びRは、同時に水素原子である場合はない。
【0040】
上記R
1、R
2、R
3、R及びR
aで表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、この炭化水素基と−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−NR
X−、−SO
2−O−及び−S−からなる群より選択される少なくとも1種の基とを組み合わせた基、又は上記炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置き換えられた基等が挙げられる。但し、上記1価の炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、置換基により置換されていてもよい。上記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、ハロゲン原子、同一の炭素原子に結合する2個の水素原子を置換する=O等が挙げられる。
R
Xは、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。
【0041】
上記炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20の1価のアルキル基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0042】
炭素数1〜20の1価のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基;i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0043】
炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタンや、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類等に由来する脂環族環からなる基;これらの脂環族環からなる基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基等が挙げられる。
【0044】
炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0045】
上記R
1、R
2、R
3及びRのうちのいずれか2つが互いに結合して形成される環構造としては、例えば、後述の式(1−1−2)〜(1−1−5)、(1−2−2)及び(1−2−4)で表される化合物が有する環構造等が挙げられる。
【0046】
上記R
Xで表される1価の有機基としては、例えば、上記R
1、R
2、R
3及びRで例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0047】
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。これらの中で、フッ素原子が好ましい。
【0048】
上記M
+で表される1価のオニウムカチオンとしては、例えば、下記式(M’)で表されるスルホニウムカチオン、下記式(M”)で表されるヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0050】
上記式(M’)中、R
d1〜R
d3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。上記式(M”)中、R
d4及びR
d5は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。
【0051】
上記M
+で表される1価のスルホニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルスルホニウムカチオン、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウムカチオン、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカチオン、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカチオン、(4−t−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムカチオン、ビス(4−t−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウムカチオン、4−シクロヘキシルスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカチオン等が挙げられる。
【0052】
上記M
+で表される1価のヨードニウムカチオンとしては、例えば、ジフェニルヨードニウムカチオン、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン、4−t−ブトキシフェニルフェニルヨードニウムカチオン、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0053】
これらの中で、スルホニウムカチオンが好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0054】
上記式(1)としては、上記式(1−1−1)〜上記式(1−1−5)からなる群より選択される少なくとも1種で表されることが好ましい。
【0055】
上記式(1−1−1)〜(1−1−5)中、M
+、A
−、R
1、R
2、R
3及びRは、上記式(1)と同義である。R
p1、R
p2、R
p3及びR
p4は、それぞれ独立して、2価の有機基である。
【0056】
上記式(1)が上記式で表されることで、当該フォトレジスト組成物は、形成されるレジスト膜中での酸拡散制御剤等の拡散をより抑えることができ、露光部と未露光部とのコントラストを高めてLWR性能等の特性により優れたレジストパターンを形成することができる。
【0057】
上記式(1−1−1)〜(1−1−5)で表される化合物(I)の具体例としては、例えば、
上記式(1−1−1)で表される化合物として、下記式(a−1)〜(a−12)、(a−24)、(a−25)、(a−28)〜(a−33)で表される化合物等;
上記式(1−1−2)で表される化合物として、下記式(a−13)〜(a−16)、(a−26)、(a−27)で表される化合物等;
上記式(1−1−3)で表される化合物として、下記式(a−17)〜(a−20)で表される化合物等が挙げられる。
上記式(1−1−4)で表される化合物として、下記式(a−21)及び(a−22)で表される化合物等が挙げられる。
上記式(1−1−5)で表される化合物として、下記式(a−23)で表される化合物等が挙げられる。
【0060】
上記式中、A
−及びM
+は、上記式(1)と同義である。
【0061】
上記式(1−1−1)〜(1−1−5)で表される化合物の中では、式(1−1−1)で表される化合物が好ましい。
【0062】
また、上記式(1)としては、上記式(1−2−1)〜上記式(1−2−4)からなる群より選択される少なくとも1種で表されることも好ましい。
【0063】
上記式(1−2−1)〜(1−2−4)中、M
+、A
−、R
1、R
2、R
3、R及びR
aは、上記式(1)と同義である。R
p1及びR
p2は、それぞれ独立して、2価の有機基である。
【0064】
上記式(1)が上記特定の式で表されることで、当該フォトレジスト組成物は、形成されるレジスト膜中での酸拡散制御剤等の拡散をより抑えることができ、露光部と未露光部とのコントラストを高めてLWR性能等の特性により優れたレジストパターンを形成することができる。
【0065】
上記式(1−2−1)〜(1−2−4)で表される化合物(I)の具体例としては、例えば、
上記式(1−2−1)で表される化合物として、下記式(b−1)〜(b−4)で表される化合物等;
上記式(1−2−2)で表される化合物として、下記式(b−5)〜(b−8)で表される化合物等;
上記式(1−2−3)で表される化合物として、下記式(b−9)で表される化合物等 上記式(1−2−4)で表される化合物として、下記式(b−10)〜(b−17)で表される化合物等が挙げられる。
【0067】
上記式中、A
−及びM
+は、上記式(1)と同義である。
【0068】
上記式(1−2−1)〜(1−2−4)で表される化合物の中では、式(1−2−4)で表される化合物が好ましい。
【0069】
また、上記式(1)としては、上記式(2)で表されることも好ましい。
【0070】
上記式(2)中、A
−、M
+及びR
aは、上記式(1)と同義である。nは、0〜5の整数である。
【0071】
上記式(1)が上記式(2)で表されることで、当該フォトレジスト組成物は、形成されるレジスト膜中での酸拡散制御剤等の拡散をより抑えることができ、露光部と未露光部とのコントラストを高めてLWR性能等の特性により優れたレジストパターンを形成することができる。
【0072】
上記式(2)で表される化合物(I)の具体例としては、例えば、上記式(b−10)〜(b−12)及び(b−14)〜(b−16)で表される化合物等が挙げられる。
【0073】
<化合物(I)の製造方法>
化合物(I)の製造方法としては、特に限定されないが、後述の<化合物の製造方法>において詳述する方法と同様の方法が好ましい。なお、化合物(I)の製造に用いられる原料化合物としては、対応する化合物を適宜選択すればよい。
【0074】
<任意成分>
当該フォトレジスト組成物が含有してもよい任意成分としては、例えば、後述のフォトレジスト組成物(I)における[B]酸拡散制御剤及び[C]酸発生剤等や、後述のフォトレジスト組成物(II)における[D]酸発生剤及び[E]酸拡散制御剤等が挙げられる。
【0075】
以下、当該フォトレジスト組成物の好ましい態様であるフォトレジスト組成物(I)及び(II)について詳述する。なお、フォトレジスト組成物(I)は、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)等の放射線による露光に好適な組成物であり、フォトレジスト組成物(II)は、電子線やEUV光(波長13.5nm)等の放射線による露光に好適な組成物である。
【0076】
<フォトレジスト組成物(I)>
本発明のフォトレジスト組成物(I)は、[A]重合体、及び[B]酸拡散制御剤を含有し、[B]酸拡散制御剤が化合物(I)を含む組成物である。また、当該フォトレジスト組成物(I)は、好適成分として[C]酸発生剤を含有していてもよい。また、当該フォトレジスト組成物(I)は、本発明の効果を損なわない範囲で、フッ素原子含有重合体(以下、「[F]重合体」ともいう)、[G]溶媒、[H]偏在化促進剤等のその他の任意成分を含有していてもよい。以下、各成分について詳述する。
【0077】
<[A]重合体>
[A]重合体は、ベース重合体となる重合体である。なお、「ベース重合体」とは、フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜を構成する重合体の主成分となる重合体をいい、好ましくは、レジスト膜を構成する全重合体に対して50質量%以上を占める重合体をいう。この[A]重合体は、構造単位(I)を有する。また、当該フォトレジスト組成物(I)は、構造単位(I)における酸解離性基は極性を有するか、又は[A]重合体が構造単位(II)を有することが好ましい。これにより、均一なレジスト膜を形成することができる。さらに、[A]重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の構造単位を有していてもよい。なお、[A]重合体は、各構造単位を2種以上含んでいてもよい。以下、各構造単位について詳述する。
【0078】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、酸解離性基を含む構造単位である。この構造単位(I)が酸解離性基を含むことで、放射線の照射により露光部の酸解離性基が解離する。その結果、露光部の[A]重合体が親水性となり、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解速度に差を生じさせ、所望のレジストパターンを形成することができる。なお、「酸解離性基」とは、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の極性官能基中の水素原子を置換する基であって、酸の存在下で解離する基をいう。
【0079】
上記構造単位(I)としては、例えば、下記式(7−1)及び下記式(7−2)で表される構造単位等が挙げられる。
【0081】
上記式(7−1)及び(7−2)中、R
Yは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Y
1及びY
2は、酸解離性基である。
【0082】
上記Y
1で表される酸解離性基としては、下記式(Y−1)で表される基が好ましい。
【0084】
上記式(Y−1)中、R
e1、R
e2及びR
e3は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基である。R
e2及びR
e3は互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成してもよい。
【0085】
上記R
e1、R
e2及びR
e3で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0086】
上記R
e1、R
e2及びR
e3で表される炭素数3〜20の1価の脂肪族環状炭化水素基、並びに上記R
e2及びR
e3が互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に形成される炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、アダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格や、シクロペンタン、シクロヘキサン等の単環のシクロアルカン骨格を有する基;これらの基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種又は1個以上で置換した基等の脂環式炭化水素骨格を有する基が挙げられる。
【0087】
これらの中で、現像後のレジストパターンの形状を向上させることができる点で単環のシクロアルカン骨格を有する基が好ましい。
【0088】
上記Y
2で表される酸解離性基としては、下記式(Y−2)で表される基が好ましい。
【0090】
上記式(Y−2)中、R
e4、R
e5及びR
e6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のオキシ脂環式炭化水素基である。但し、R
e4、R
e5及びR
e6は、同時に水素原子である場合はない。
【0091】
上記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基;i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0092】
上記炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタンや、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類等に由来する脂環族環からなる基;これらの脂環族環からなる基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基等が挙げられる。
【0093】
上記炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基等が挙げられる。
【0094】
上記炭素数1〜20のオキシ脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、シクロヘキシルエチルオキシ基等が挙げられる。これらの中で、シクロヘキシルメチルオキシ基又はシクロヘキシルエチルオキシ基が好ましい。
【0095】
上記構造単位(I)としては、例えば、
上記式(7−1)で表される構造単位(I)として、式(7−1−1)〜(7−1−7)で表される構造単位等;
上記式(7−2)で表される構造単位(I)として、式(7−2−1)〜(7−2−3)で表される構造単位等;
上記式(7−1)及び(7−2)で表される構造単位以外の構造単位(I)として、式(7−3−1)で表される構造単位等が挙げられる。
【0097】
上記式(7−1−1)〜(7−3−1)中、R
Yは、式(7−1)及び(7−2)と同義である。R
e1、R
e2及びR
e3は、式(Y−1)と同義である。rは、それぞれ独立して、1〜3の整数である。
【0098】
構造単位(I)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜90モル%が好ましく、10モル%〜80モル%がより好ましく、20モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、現像後のレジストパターンの形状を効果的に向上させることができる。
【0099】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、上記式(3)で表される構造単位である。当該フォトレジスト組成物(I)は、この構造単位(II)をさらに有することで、均一なレジスト膜を形成することができる。
【0100】
上記式(3)中、R
4は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Lは、単結合、−CO−O−又は−CO−NH−である。R
5は、非酸解離性基であって極性を有する基である。なお、「非酸解離性基」とは、露光により酸発生剤から発生した酸の作用により解離しない基又は酸の作用により比較的解離し難い基をいう。
【0101】
上記R
5で表される非酸解離性基であって極性を有する基としては、例えば、
(1)極性基を有する炭素数1〜20の1価の炭化水素基、(2)構造中に−O−又は/及び−CO−O−を有する炭素数1〜20の1価の炭化水素基、(3)極性基、並びに構造中に−O−又は/及び−CO−O−を有する炭素数1〜20の1価の炭化水素基等が挙げられる。
【0102】
上記炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、上記R
1、R
2、R
3、R及びR
aで表される炭素数1〜20の1価の有機基における炭素数1〜20の1価の炭化水素基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0103】
上記極性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、オキソ基、シアノ基、スルホ基、メルカプト基、アミノ基等が挙げられる。これらの中で、ヒドロキシ基及びシアノ基が好ましい。
【0104】
上記構造単位(II)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0106】
上記式中、R
4は、上記式(3)と同義である。
【0107】
これらの中で、上記式(3−1)、(3−2)及び(3−3)で表される構造単位が好ましく、上記式(3−2)で表される構造単位がより好ましい。
【0108】
構造単位(II)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜95モル%が好ましく、10モル%〜90モル%がより好ましく、20モル%〜70モル%がさらに好ましい。
【0109】
[他の構造単位]
[A]重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記構造単位(I)及び(II)以外の他の構造単位を有していてもよい。他の構造単位としては、例えば、N,N−ジメチルメタクリルアミド、p−ヒドロキシスチレン等に由来する構造単位等が挙げられる。
【0110】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、ラジカル重合等の常法に従って合成することができる。例えば、(1)単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、(2)単量体を含有する溶液とラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、(3)各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、(4)単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を無溶媒中や反応溶媒中で重合反応させる方法、等で合成することが好ましい。
【0111】
なお、単量体溶液に対して、単量体溶液を滴下して反応させる場合、滴下される単量体溶液中の単量体量は、重合に用いられる単量体総量に対して30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましい。
【0112】
これらの方法における反応温度は開始剤種によって適宜決定すればよい。通常30℃〜150℃であり、40℃〜150℃が好ましく、50℃〜140℃がより好ましい。滴下時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって異なるが、通常30分〜8時間であり、45分〜6時間が好ましく、1時間〜5時間がより好ましい。また、滴下時間を含む全反応時間も、滴下時間と同様に条件により異なるが、通常30分〜12時間であり、45分〜12時間が好ましく、1〜10時間がより好ましい。
【0113】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等が挙げられ。これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が好ましい。なお、ラジカル開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
反応溶媒としては、重合を阻害する溶媒(重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等)以外の溶媒であって、その単量体を溶解可能な溶媒であれば使用することができる。例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、エステル・ラクトン類、ニトリル類及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の重合体を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。
【0116】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000〜50,000が好ましく、2,000〜40,000がより好ましく、3,000〜30,000がさらに好ましい。[A]重合体のMwが1,000未満であると、レジストとしての耐熱性が低下するおそれがある。一方、[A]重合体のMwが50,000を超えると、レジストとしての現像性が低下するおそれがある。
【0117】
<[B]酸拡散制御剤>
[B]酸拡散制御剤は、上記化合物(I)を含んでいる。また、[B]酸拡散制御剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(I)以外の酸拡散制御剤を含んでいてもよい。[B]酸拡散制御剤は、露光により発生した酸の拡散を制御する成分である。当該フォトレジスト組成物(I)が[B]酸拡散制御剤を含有することで、レジスト膜中での[B]酸拡散制御剤自身の拡散を抑えることができ、その結果、露光部と未露光部とのコントラストを高めることができる。
【0118】
上記化合物(I)以外の酸拡散制御剤としては、例えば、後述のフォトレジスト組成物(II)についての[E]酸拡散制御剤として例示したものと同様の酸拡散制御剤等が挙げられる。
【0119】
[B]酸拡散制御剤中における化合物(I)の含有率としては、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。化合物(I)の含有率を上記範囲とすることで、より適度に酸の拡散を抑制することができる。
【0120】
[B]酸拡散制御剤の含有量としては、当該フォトレジスト組成物(I)に含まれる重合体の総量100質量部に対して、1質量部〜100質量部が好ましく、5質量部〜80質量部がより好ましく、10質量部〜50質量部がさらに好ましい。1質量部未満であると、[B]酸拡散制御剤の効果が低下する場合がある。一方、100質量部を超えると、形成したレジスト膜の感度が著しく低下するおそれがある。
【0121】
<[C]酸発生剤>
[C]酸発生剤は、化合物(I)とは異なる化合物である。この[C]酸発生剤は、露光により酸を発生する感放射線性の成分である。当該フォトレジスト組成物(I)が[C]酸発生剤を含有することで感度を高めることができ、その結果、形成されるレジストパターンのコントラストを向上させることができる。なお、[C]酸発生剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0122】
[C]酸発生剤としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩等のオニウム塩化合物、スルホン酸化合物等が挙げられる。
【0123】
上記ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート等が挙げられる。
【0124】
上記スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、シクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシル・メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジシクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホネート等が挙げられる。
【0125】
上記テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば、4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート等が挙げられる。
【0126】
上記スルホン酸化合物としては、例えば、トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、パーフルオロ−n−オクタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシイミドトリフルオロメタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシイミドノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシイミドパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
【0127】
これらの中で、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩がより好ましく、トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホネートがさらに好ましい。
【0128】
[C]酸発生剤の含有量としては、レジストとしての感度及び現像性を確保する観点から、当該フォトレジスト組成物(I)に含まれる重合体の総量100質量部に対して、0.1質量部〜50質量部が好ましく、0.2質量部〜40質量部がより好ましく、0.5質量部〜30質量部がさらに好ましい。[C]酸発生剤の含有量が0.1質量部未満では、感度及び現像性が低下する傾向にある。一方、50質量部を超えると、放射線に対する透明性が低下して矩形のレジストパターンが得られ難くなる傾向がある。
【0129】
<[F]重合体>
[F]重合体は、フッ素原子含有重合体である。この[F]重合体は、[A]重合体よりもフッ素原子含有率が高いことが好ましい。これにより、効果的に[F]重合体をレジスト膜の表層に偏在化させることができる。その結果、レジスト膜表層の疎水性を向上させることができ、液浸露光を行う場合においても物質溶出抑制に優れると共に、レジスト膜と液浸液との後退接触角を十分に高くでき、高速でスキャン露光した場合に水滴が残らない等の効果を奏する為、当該フォトレジスト組成物の液浸露光用としての有用性が高まる。
【0130】
[F]重合体の構造は特に限定されず、(1)それ自体は現像液に不溶で、酸の作用によりアルカリ可溶性となるフッ素含有重合体、(2)それ自体が現像液に可溶であり、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大するフッ素含有重合体、(3)それ自体は現像液に不溶で、アルカリの作用によりアルカリ可溶性となるフッ素含有重合体、(4)それ自体が現像液に可溶であり、アルカリの作用によりアルカリ可溶性が増大するフッ素含有重合体等が挙げられる。
【0131】
[F]重合体の態様としては、例えば、
主鎖にフッ素化アルキル基が結合した構造;
側鎖にフッ素化アルキル基が結合した構造;
主鎖と側鎖とにフッ素化アルキル基が結合した構造等が挙げられる。
【0132】
主鎖にフッ素化アルキル基が結合した構造を与える単量体としては、例えば、α−トリフルオロメチルアクリレート化合物、β−トリフルオロメチルアクリレート化合物、α,β−トリフルオロメチルアクリレート化合物、1種類以上のビニル部位の水素がトリフルオロメチル基等のフッ素化アルキル基で置換された化合物等が挙げられる。
【0133】
側鎖にフッ素化アルキル基が結合した構造を与える単量体としては、例えば、ノルボルネン等の脂環式オレフィン化合物の側鎖がフッ素化アルキル基やその誘導体であるもの、アクリル酸又はメタクリル酸の側鎖がフッ素化アルキル基やその誘導体のエステル化合物、1種類以上のオレフィンの側鎖(二重結合を含まない部位)がフッ素化アルキル基やその誘導体であるもの等が挙げられる。
【0134】
主鎖と側鎖とにフッ素化アルキル基が結合した構造を与える単量体としては、例えば、α−トリフルオロメチルアクリル酸、β−トリフルオロメチルアクリル酸、α,β−トリフルオロメチルアクリル酸等の側鎖がフッ素化アルキル基やその誘導体のエステル化合物、1種類以上のビニル部位の水素がトリフルオロメチル基等のフッ素化アルキル基で置換された化合物の側鎖をフッ素化アルキル基やその誘導体で置換したもの、1種類以上の脂環式オレフィン化合物の二重結合に結合している水素をトリフルオロメチル基等のフッ素化アルキル基で置換し、かつ側鎖がフッ素化アルキル基やその誘導体であるもの等が挙げられる。なお、脂環式オレフィン化合物とは、環の一部が二重結合である化合物を示す。
【0135】
[F]重合体は、下記式(8)で表される構造単位(f1)及び/又は下記式(9)で表される構造単位(f2)を有することが好ましい。また、[F]重合体は、構造単位(f1)及び構造単位(f2)以外の「他の構造単位」を有してもよい。なお、[F]重合体は、各構造単位を2種以上含んでいてもよい。以下、各構造単位について詳述する。
【0136】
[構造単位(f1)]
構造単位(f1)は下記式(8)で表される構造単位である。
【0138】
上記式(8)中、R
f1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
f2は、フッ素原子を有する炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はフッ素原子を有する炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。但し、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
【0139】
上記炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0140】
上記炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクチルメチル基等が挙げられる。
【0141】
構造単位(f1)を与える単量体としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ)プロピル(メタ)アクリレート、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ)ペンチル(メタ)アクリレート、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ)ヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ)プロピル(メタ)アクリレート、1−(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ)ペンタ(メタ)アクリレート、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロ)デシル(メタ)アクリレート、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロ)ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0142】
構造単位(f1)としては、下記式(8−1)及び(8−2)で表される構造単位が好ましい。
【0144】
上記式(8−1)及び(8−2)中、R
f1は、上記式(8)と同義である。これらの中で、式(8−1)で表される構造単位がより好ましい。
【0145】
構造単位(f1)の含有割合としては、[F]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜70モル%が好ましく、20モル%〜50モル%がより好ましい。
【0146】
[構造単位(f2)]
構造単位(f2)は、下記式(9)で表される構造単位である。
【0148】
上記式(9)中、R
f3は、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。R
f4は、(k+1)価の連結基である。X
1は、フッ素原子を有する2価の連結基である。R
f5は、水素原子又は1価の有機基である。kは、1〜3の整数である。但し、kが2又は3の場合、複数のX
1及びR
f5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0149】
上記式(9)中、R
f4で表される(k+1)価の連結基としては、例えば、炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状の炭化水素基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又はこれらの基と酸素原子、硫黄原子、エーテル基、エステル基、カルボニル基、イミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる1種以上の基とを組み合わせた基が挙げられる。また、上記(k+1)価の連結基は、置換基を有していてもよい。
【0150】
上記炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状の炭化水素基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン、イコサン、トリアコンタン等の炭化水素基から(k+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0151】
上記炭素数3〜30の脂環式炭化水素基としては、例えば、
単環式飽和炭化水素として、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等;
単環式不飽和炭化水素として、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、シクロデカジエン等;
多環式飽和炭化水素として、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカン、アダマンタン等;
多環式不飽和炭化水素として、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン、ビシクロ[2.2.2]オクテン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デセン、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デセン、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデセン等から(k+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0152】
上記炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ピレン、ピセン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、クメン等の芳香族炭化水素基から(k+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0153】
上記式(9)中、X
1で表されるフッ素原子を有する2価の連結基としては、フッ素原子を有する炭素数1〜20の2価の直鎖状炭化水素基が挙げられる。X
1としては、例えば、下記式(X
1−1)〜(X
1−6)で表される構造等が挙げられる。
【0155】
X
1としては、上記式(X
1−1)及び(X
1−2)で表される構造が好ましく、式(X
1−2)で表される構造がより好ましい。
【0156】
上記式(9)中、R
f5で表される1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状の炭化水素基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又はこれらの基と酸素原子、硫黄原子、エーテル基、エステル基、カルボニル基、イミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる1種以上の基とを組み合わせた基等が挙げられる。
【0157】
上記構造単位(f2)としては、例えば、下記式(9−1)及び式(9−2)で表される構造単位等が挙げられる。
【0159】
上記式(9−1)中、R
f4は、炭素数1〜20の2価の直鎖状、分岐状又は環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基である。R
f3、X
1及びR
f5は、上記式(9)と同義である。
【0160】
上記式(9−2)中、R
f3、X
1、R
f5及びkは上記式(9)と同義である。但し、kが2又は3の場合、複数のX
1及びR
f5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0161】
上記式(9−1)及び式(9−2)で表される構造単位としては、例えば、下記式(9−1−1)〜(9−1−3)及び式(9−2−1)で表される構造単位等が挙げられる。
【0163】
上記式(9−1−1)〜(9−1−3)及び式(9−2−1)中、R
f3は上記式(9)と同義である。
【0164】
構造単位(f2)としては、上記式(9−1)で表される構造単位が好ましく、上記式(9−1−3)で表される構造単位がより好ましい。
【0165】
構造単位(f2)を与える単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸[2−(1−エチルオキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−n−ブチル)]エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−3−プロピル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ブチル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−5−ペンチル)エステル、(メタ)アクリル酸2−{[5−(1’,1’,1’−トリフルオロ−2’−トリフルオロメチル−2’−ヒドロキシ)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル}エステル等が挙げられる。これらの中で、(メタ)アクリル酸[2−(1−エチルオキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−n−ブチル)]エステルが好ましい。
【0166】
構造単位(f2)の含有割合としては、[F]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%〜90モル%が好ましく、50モル%〜80モル%がより好ましい。
【0167】
[他の構造単位]
[F]重合体は、構造単位(f1)、構造単位(f2)以外の「他の構造単位」を含んでいてもよい。他の構造単位としては、例えば、[A]重合体についての上記式(7−1)で表される構造単位(I)等が挙げられる。
【0168】
他の構造単位の含有割合としては、[F]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜90モル%が好ましく、10モル%〜80モル%がより好ましく、20モル%〜70モル%がさらに好ましい。
【0169】
[F]重合体の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましく、1質量部〜10質量部がより好ましく、1質量部〜5質量部がさらに好ましい。0.1質量部未満であると、[F]重合体を含有させる効果が十分でない場合がある。一方、20質量部を超えると、レジスト表面の撥水性が高くなりすぎて現像不良が起こる場合がある。
【0170】
[F]重合体におけるフッ素原子の含有率としては、[A]重合体よりも大きいことが好ましい。[F]重合体におけるフッ素原子含有率が[A]重合体よりも大きいと、[A]重合体及び[F]重合体を含有するフォトレジスト組成物により形成されたレジスト膜表面の撥水性を高めることができ、液浸露光時にレジスト上層膜を別途形成する必要がなくなる。上記の効果を十分に発揮するためには、[A]重合体におけるフッ素原子の含有率と、[F]重合体におけるフッ素原子の含有率との差が1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。なお、このフッ素原子含有率(質量%)は、
13C−NMRにより重合体の構造を求め、その結果から算出することができる。
【0171】
<[F]重合体の合成方法>
[F]重合体は、例えば、所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。
【0172】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、[A]重合体の合成方法で用いた開始剤と同様の開始剤等が挙げられる。上記溶媒としては、例えば、[A]重合体の合成方法で用いた溶媒と同様の溶媒等が挙げられる。
【0173】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃であり、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間であり、1時間〜24時間が好ましい。
【0174】
[F]重合体のMwとしては、1,000〜50,000が好ましく、2,000〜30,000がより好ましく、3,000〜10,000がさらに好ましい。[F]重合体のMwが1,000未満の場合、十分な後退接触角を得ることができない。一方、Mwが50,000を超えると、レジストとした際の現像性が低下する傾向にある。
【0175】
[F]重合体のMwとMnとの比(Mw/Mn)としては、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
【0176】
<[G]溶媒>
当該フォトレジスト組成物(I)は、通常、[G]溶媒を含有する。[G]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。[G]溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0177】
上記アルコール系溶媒としては、例えば、
モノアルコール系溶媒として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等;
多価アルコール系溶媒として、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等;
多価アルコール部分エーテル系溶媒として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0178】
上記ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等が挙げられる。
【0179】
上記アミド系溶媒としては、例えば、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0180】
上記エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0181】
上記エステル系溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0182】
これらの中で、ケトン系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、上記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンがより好ましく、上記エステル系溶媒としは酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
【0183】
<[H]偏在化促進剤>
[H]偏在化促進剤は、[F]重合体を、より効率的にレジスト膜表面に偏析させる成分である。当該フォトレジスト組成物(I)が[H]偏在化促進剤を含有することで、[F]重合体をレジスト膜表面に偏析させることができ、結果として[F]重合体の配合量を少なくすることができる。[H]偏在化促進剤としては、例えば、ラクトン化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物、多価アルコール等が挙げられる。なお、[H]偏在化促進剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0184】
上記ラクトン化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロニックラクトン、ノルボルナンラクトン等が挙げられる。
【0185】
上記カーボネート化合物としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0186】
上記ニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリル等が挙げられる。
【0187】
上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン等が挙げられる。
【0188】
これらの中で、ラクトン化合物が好ましく、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
【0189】
[H]偏在化促進剤の含有量としては、重合体の総量100質量部に対して、5質量部〜300質量部が好ましく、10質量〜100質量部がより好ましく、20質量部〜70質量部がさらに好ましい。
【0190】
<その他の任意成分>
当該フォトレジスト組成物(I)は、上記[A]成分〜[H]成分以外にも、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等のその他の任意成分を含有していてもよい。その他の任意成分は、各成分を単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、その他の任意成分の含有量は、その目的に応じて、適宜決定することができる。
【0191】
<フォトレジスト組成物(I)の調製>
当該フォトレジスト組成物(I)は、[A]重合体、[B]酸拡散制御剤、及び必要に応じて[C]酸発生剤等の各任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。
【0192】
当該フォトレジスト組成物(I)の固形分濃度としては、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%がさらに好ましい。
【0193】
<フォトレジスト組成物(II)>
本発明のフォトレジスト組成物(II)は、[A]重合体、及び[D]酸発生剤を含有し、[D]酸発生剤が化合物(I)を含む組成物である。また、当該フォトレジスト組成物(II)は、好適成分として[E]酸拡散制御剤を含有してもよい。また、当該フォトレジスト組成物(II)は、本発明の効果を損なわない範囲で、[G]溶媒等のその他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0194】
<[A]重合体>
[A]重合体は、構造単位(I)を有する重合体である。この[A]重合体は、上記フォトレジスト組成物(I)の項で詳述しているため、その詳細な説明は省略する。
【0195】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、酸解離性基を含む構造単位である。上記構造単位(I)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜90モル%が好ましく、5モル%〜70モル%がより好ましく、10モル%〜60モル%がさらに好ましい。
上記構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、現像後のレジストパターンの形状を効果的に向上させることができる。
【0196】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、ラジカル重合等の常法に従って合成することができる。[A]重合体の合成方法は、上記フォトレジスト組成物(I)の項で上述しているため、その詳細な説明は省略する。
【0197】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000〜50,000が好ましく、1,000〜40,000がより好ましく、1,000〜30,000が特に好ましい。[A]重合体のMwが1,000未満であると、レジストとしての耐熱性が低下するおそれがある。一方、[A]重合体のMwが50,000を超えると、レジストとしての現像性が低下するおそれがある。
【0198】
<[D]酸発生剤>
[D]酸発生剤は、露光により酸を発生する感放射線性の成分である。[D]酸発生剤は、上記化合物(I)を含んでいる。また、[D]酸発生剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(I)以外の酸発生剤を含んでいてもよい。当該フォトレジスト組成物(II)が[D]酸発生剤を含有することで、レジスト膜中での[D]酸発生剤自身の拡散を抑えることができ、その結果、露光部と未露光部とのコントラストを高めて良好な形状のレジストパターンを形成することができる。なお、化合物(I)については、<化合物(I)>の項で上述しているため、その詳細な説明は省略する。
【0199】
上記化合物(I)以外の酸発生剤としては、例えば、フォトレジスト組成物(I)についての[C]酸発生剤として例示したものと同様の酸発生剤等が挙げられる。
【0200】
[D]酸発生剤中における化合物(I)の含有率としては、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。化合物(I)の含有率を上記範囲とすることで、効率良く酸の拡散を抑制することができる。
【0201】
[D]酸発生剤の含有量としては、レジストとしての感度及び現像性を確保する観点から、当該フォトレジスト組成物(II)に含まれる重合体の総量100質量部に対して、1質量部〜100質量部が好ましく、5質量部〜80質量部がより好ましく、1質量部〜50質量部がさらに好ましい。[D]酸発生剤の含有量が1質量部未満では、感度、及び現像性が低下する傾向にある。一方、100質量部を超えると、放射線に対する透明性が低下して矩形のレジストパターンが得られ難くなる傾向がある。
【0202】
<[E]酸拡散制御剤>
[E]酸拡散制御剤は、化合物(I)とは異なる化合物である。この[E]酸拡散制御剤は、露光により発生した酸の拡散を制御する成分である。当該フォトレジスト組成物(II)が[E]酸拡散制御剤を含有することで、露光により発生した酸の拡散を抑制することができ、その結果、形成されるレジストパターンのコントラストを向上させることができる。なお、[E]酸拡散制御剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0203】
[E]酸拡散制御剤としては、例えば、アミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0204】
上記アミン化合物としては、例えば、モノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;置換アルキルアニリン又はその誘導体;エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0205】
上記アミド基含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物;N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン等のN−t−アミロキシカルボニル基含有アミノ化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0206】
上記ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0207】
上記含窒素複素環化合物としては、例えば、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類;ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0208】
これらの中で、アミド基含有化合物が好ましく、N−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物がより好ましく、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジンがさらに好ましい。
【0209】
[E]酸拡散制御剤の含有量としては、当該フォトレジスト組成物(II)に含まれる重合体の総量100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、5質量部以下が特に好ましい。[E]酸拡散制御剤が過剰に含有されると、形成したレジスト膜の感度が著しく低下するおそれがある。
【0210】
<[G]溶媒>
当該フォトレジスト組成物(II)は、通常、[G]溶媒を含有する。この[G]溶媒は、上記フォトレジスト組成物(I)の項で上述しているため、その詳細な説明は省略する。
【0211】
<その他の任意成分>
当該フォトレジスト組成物(II)は、上記[A]成分〜[G]成分以外にも、界面活性剤等のその他の任意成分を含有していてもよい。なお、その他の任意成分は、上記フォトレジスト組成物(I)で説明したものと同じものを適用できる。
【0212】
<フォトレジスト組成物(II)の調製>
当該フォトレジスト組成物(II)は、[A]重合体、[D]酸発生剤、及び必要に応じて[E]酸拡散制御剤等の各任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。
【0213】
当該フォトレジスト組成物(II)の固形分濃度としては、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%がさらに好ましい。
【0214】
<レジストパターンの形成方法>
当該フォトレジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法は、例えば、
(A1)当該フォトレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程、
(A2)マスクを介して、上記レジスト膜を露光する工程、及び
(A3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を有する。以下、各工程について説明する。
【0215】
[工程(A1)]
本工程では、当該フォトレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する。塗布方法としては特に限定されないが、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段を採用することができる。基板としては、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆されたウエハー等が挙げられる。具体的には、得られるレジスト膜が所定の厚さになるように当該組成物を塗布した後、必要に応じてプレベーク(PB)することで塗膜中の溶媒を揮発させる。塗膜の膜厚としては、10nm〜500nmが好ましい。PBの温度としては、通常60℃〜140℃であり、80℃〜120℃が好ましい。PBの時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0216】
[工程(A2)]
本工程では、工程(A1)で形成されたレジスト膜に、(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)放射線を照射し、露光させる。このとき、所定のパターンを有するマスクを介して放射線を照射する。上記放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、EUV、X線、電子線等から適宜選択される。これらの中で、フォトレジスト組成物(I)を用いた場合はArFエキシマレーザー光(波長193nm)等の遠紫外線が好ましく、フォトレジスト組成物(II)を用いた場合は電子線又はEUV光(波長13.5nm)が好ましい。
【0217】
また、露光後にポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことが好ましい。PEBを行うことで、レジスト膜の露光された部位における酸解離性基の解離反応を円滑に進行させることができる。PEBの温度としては、通常50℃〜180℃であり、80℃〜130℃が好ましい。PEBの時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0218】
本発明においては、フォトレジスト組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば、使用される基板上に有機系又は無機系の反射防止膜を形成しておくこともできる。また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば、塗膜上に保護膜を設けることもできる。また、液浸露光を行う場合は、液浸媒体とレジスト膜との直接的な接触を避けるため、例えば、レジスト膜上に液浸用保護膜を設けてもよい。
【0219】
[工程(A3)]
本工程では、工程(A2)で露光されたレジスト膜を、例えば、アルカリ現像液、有機溶媒現像液等の現像液で現像することにより所定のレジストパターンを形成する。
【0220】
上記アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液等が挙げられる。
【0221】
上記有機溶媒現像液としては、例えば、
アルコール系溶媒として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール等;
エーテル系溶媒として、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジフェニルエーテル、アニソール等;
ケトン系溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン等;
アミド系溶媒として、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等;
エステル系溶媒として、ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル等が挙げられる。
【0222】
これらの現像液は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、現像後は、水等で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0223】
<化合物>
本発明の化合物は、上記式(1)で表される化合物である。この化合物は上記化合物(I)と同様の化合物である(当該化合物を、以下、「化合物(I)」ともいう)。当該化合物(I)は、フォトレジスト組成物の酸拡散制御剤又は酸発生剤として好適に用いられる。当該化合物(I)が上記構造を有することで、この化合物(I)をフォトレジスト組成物における酸拡散制御剤等として用いた場合、形成されるレジスト膜中での拡散を抑えることができ、露光部と未露光部とのコントラストを高めてLWR性能等の特性に優れたレジストパターンを形成することができる。以下、当該化合物(I)について説明する。
【0224】
上記式(1)中、R
1、R
2、R
3及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。これらのR
1、R
2、R
3及びRのうちのいずれか2つが互いに結合して環構造を形成してもよい。Xは、単結合、酸素原子又は−NR
a−である。このR
aは、水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1〜20の1価の有機基であり、上記Rと互いに結合して環構造を形成してもよい。A
−は、−SO
3−又は−CO
2−である。M
+は、1価のオニウムカチオンである。但し、A
−が−CO
2−の場合、R
1、R
2、R
3及びRは、同時に水素原子である場合はない。
【0225】
なお、式(1)の詳細は、上述の<化合物(I)>の項で説明した内容を適用できるため、ここでの説明は省略する。
【0226】
上記化合物(I)の好適な一態様としては、上記式(1)におけるXが酸素原子であり、かつ上記Rが上記式(i)で表される非酸解離性基である化合物(以下、「化合物(I−1)」ともいう)である場合が挙げられる。当該化合物が上記構造を有することで、この化合物(I−1)を酸拡散制御剤等として含むフォトレジスト組成物は、LWR性能等の特性により優れたレジストパターンを形成することができる。これは、化合物(I−1)の構造とフォトレジスト組成物が通常含有する重合体の構造とが近似することにより相溶性が高められ、その結果、均一なレジスト膜が形成されるためであると推察される。
【0227】
上記式(i)中、R
b1、R
b2及びR
b3は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1〜19の1価の有機基である。この有機基の少なくとも1つは極性基及び連結基の少なくとも一方を含み、この連結基は−O−CO−O−、−S−、−O−、−SO
2−O−、−NH−又は−CO−O−である。但し、上記R
b1、R
b2及びR
b3のうちの2つ以上が互いに結合して環構造を形成してもよい。R
b1、R
b2及びR
b3は、同時に水素原子である場合はない。
【0228】
上記R
b1、R
b2及びR
b3で表される炭素数1〜19の1価の有機基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1、R
2、R
3及びRで表される炭素数1〜20の1価の有機基として例示した基のうちの炭素数1〜19のものと同じ基等が挙げられる。
【0229】
上記極性基としては、例えば、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。上記ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0230】
なお、上記R
b1、R
b2及びR
b3のうちの2つ以上が互いに結合して形成される環構造には、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造等の芳香環構造が含まれる。
【0231】
上記化合物(I−1)としては、例えば、化合物(I)として例示した上記式(a−5)〜(a−8)、(a−22)及び(a−29)で表される化合物等が挙げられる。
【0232】
上記化合物(I)の好適な他の態様としては、上記式(1)におけるXが酸素原子であり、かつ上記Rが上記式(ii)で表される酸解離性基である化合物(以下、「化合物(I−2)」ともいう)である場合が挙げられる。化合物(I−2)が上記構造を有することで、この化合物(I−2)を酸拡散制御剤等として含むフォトレジスト組成物によれば、露光による酸解離性基の解離により露光部と未露光部との溶解速度差を高めることができ、その結果、LWR性能等の特性により優れたレジストパターンを形成することができる。
【0233】
上記式(ii)中、R
c1、R
c2及びR
c3は、それぞれ独立して、炭素数1〜19のアルキル基又は炭素数3〜19の1価の脂環式炭化水素基である。但し、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。また、上記R
c1、R
c2及びR
c3のうちのいずれか2つが互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成してもよい。
【0234】
上記R
c1、R
c2及びR
c3で表される炭素数1〜19のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基;i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0235】
上記R
c1、R
c2及びR
c3で表される炭素数3〜19の1価の脂環式炭化水素基、並びに上記R
c1、R
c2及びR
c3のうちのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に形成される炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタンや、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類等に由来する脂環族環からなる基;これらの脂環族環からなる基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基等が挙げられる。
【0236】
上記アルキル基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部を置換してもよい置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0237】
上記化合物(I−2)としては、例えば、化合物(I)として例示した上記式(a−9)〜(a−12)、(a−30)及び(a−31)で表される化合物等が挙げられる。
【0238】
上記化合物(I)の好適な更に他の態様としては、上記式(1)が、上記式(2)で表される化合物(以下、「化合物(I−3)」ともいう)である場合が挙げられる。当該化合物が上記構造を有することで、この化合物(I−3)を酸拡散制御剤等として含むフォトレジスト組成物によれば、形成されるレジスト膜中での酸拡散制御剤等の拡散をより抑えることができ、露光部と未露光部とのコントラストを高めてLWR性能等の特性により優れたレジストパターンを形成することができる。
【0239】
上記式(2)中、A
−、M
+及びR
aは、上記式(1)と同義である。nは、0〜5の整数である。上記nとしては、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0240】
上記化合物(I−3)としては、例えば、化合物(I)として例示した上記式(b−10)〜(b−12)及び(b−14)〜(b−16)で表される化合物等が挙げられる。
【0241】
<化合物の製造方法>
当該化合物の製造方法としては、特に限定されないが、下記方法により製造することが好ましい。当該化合物の製造方法が下記工程を有することで、当該化合物を容易かつ確実に製造することができる。
【0242】
化合物(I)の製造方法は、
(1)上記式(4)で表される化合物とNaHSO
3とを反応させる工程、及び
(2)工程(1)で得られた化合物と上記式(5)で表される化合物とを反応させる工程を有する。
【0243】
上記式(4)中、R
1、R
2、R
3、R及びXは、式(1)と同義である。上記式(5)及び(6)中、M
+は、式(1)と同義である。上記式(5)中、E
−は、1価のアニオンである。
【0244】
上記E
−で表される1価のアニオンとしては、例えば、HSO
3−等が挙げられる。以下、各工程について説明する。
【0245】
[工程(1)]
本工程では、上記式(4)で表される化合物とNaHSO
3とを反応させる。上記式(4)で表される化合物として、N−シクロヘキシルマレイミド等の原料化合物を、例えば、メタノール等のアルコール類、水等の溶媒に加えた後、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO
3)をさらに加え、加熱攪拌しながら反応させる。加熱温度としては、30℃〜150℃が好ましく、40℃〜100℃がより好ましい。加熱時間としては、30分〜48時間が好ましく、1時間〜24時間がより好ましい。
【0246】
[工程(2)]
本工程では、工程(1)で得られた化合物と上記式(5)で表される化合物とを反応させる。上記工程(1)において得られた化合物とトリフェニルスルホニウムクロライド等のスルホニウム塩とを水等の溶媒に加え、攪拌しながら反応させる。次いで得られた反応生成物をジクロロメタン等の抽出溶媒で抽出し、抽出液を乾燥することにより上記式(6)で表される化合物を合成することができる。反応温度としては、0℃〜100℃が好ましく、0℃〜50℃がより好ましい。反応時間としては、30分〜24時間が好ましく、1時間〜12時間がより好ましい。
【実施例】
【0247】
以下、本発明の実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例及び比較例における各測定は、下記の方法により行った。
【0248】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
東ソー製GPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本、G4000HXL:1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:1.0質量%、試料注入量:100μL、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0249】
[
13C−NMR分析]
日本電子製JNM−ECX400を用い、測定溶媒として重クロロホルムを使用して、各重合体における各構造単位の含有割合(モル%)を求める分析を行った。
【0250】
<化合物(I)の合成>
[実施例1](化合物(S−1)の合成)
上記式(4)で表される化合物としてのN−シクロヘキシルマレイミド(化合物(S−1’))1.25g(7.0mmol)を、溶媒としてのメタノール15mL及び水15mLが入った100mLのナスフラスコに加えた後、亜硫酸水素ナトリウム0.95g(9.1mmol)をさらに加えた。次いで55℃で18時間加熱攪拌しながら反応させた後、上記溶媒を留去した。そして、得られた固形分に、トリフェニルスルホニウムクロライド1.46g(4.9mmol)並びに溶媒としてのジクロロメタン20mL及び水15mLを加え、室温で6時間攪拌して反応させた。その後、得られた反応生成物を抽出溶媒としてのジクロロメタンで抽出した後、水で5回洗浄した。そして、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、上記抽出溶媒を留去することにより下記式で表される化合物(S−1)2.18g(収率85%)を得た。
【0251】
【化26】
【0252】
[実施例2〜43](化合物(S−2)〜(S−43)の合成)
N−シクロヘキシルマレイミド(化合物(S−1’))の代わりに、下記式(S−2’)〜(S−43’)で表される化合物を用いた以外は、実施例1と同様に操作して、下記式(S−2)〜(S−43)で表される化合物を合成した。なお、下記式(S−26’)及び(S−30’)〜(S−33’)で表される化合物については、上記亜硫酸水素ナトリウムと共に、活性化剤として、この亜硫酸水素ナトリウムと等量のトリエチルアミンも加えて攪拌加熱しながら反応させた。
【0253】
【化27】
【0254】
【化28】
【0255】
【化29】
【0256】
【化30】
【0257】
【化31】
【0258】
【化32】
【0259】
<[A]重合体及び[F]重合体の合成>
各実施例及び比較例における各重合体の合成で用いた単量体を以下に示す。
【0260】
【化33】
【0261】
[合成例1](重合体(A−1)の合成)
化合物(M−1)9.01g(50モル%)及び化合物(M−2)10.99g(50モル%)を2−ブタノン40gに溶解し、開始剤としてAIBN0.81gを添加して単量体溶液を調製した。次いで20gの2−ブタノンを入れた100mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。400gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を80gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−1)を合成した(15.6g、収率78%)。重合体(A−1)のMwは7,200であり、Mw/Mnは1.52であった。
13C−NMR分析の結果、(M−1)、(M−2)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ50.2モル%及び49.8モル%であった。
【0262】
[合成例2](重合体(A−2)の合成)
化合物(M−1)9.53g(50モル%)、化合物(M−2)9.29g(40モル%)及び化合物(M−3)1.18g(10モル%)を2−ブタノン40gに溶解し、開始剤としてAIBN0.86gを添加して単量体溶液を調製した。次いで20gの2−ブタノンを入れた100mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。400gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を80gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−2)を合成した(14.1g、収率71%)。重合体(A−2)のMwは7,100であり、Mw/Mnは1.53であった。
13C−NMR分析の結果、(M−1)、(M−2)及び(M−3)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ50.1モル%、40.6モル%及び9.3モル%であった。
【0263】
[合成例3](重合体(A−3)の合成)
化合物(M−4)55.0g(65モル%)及び化合物(M−5)45.0g(35モル%)、開始剤としてAIBN4g、並びにt−ドデシルメルカプタン1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間共重合させた。重合反応終了後、重合溶液を1,000gのn−ヘキサン中に滴下して、重合体を凝固精製した。次いで上記重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、更に、メタノール150g、トリエチルアミン34g及び水6gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応終了後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトン150gに溶解した後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−3)を得た(65.7g、収率76.6%)。重合体(A−3)のMwは10,000であり、Mw/Mnは2.10であった。
13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレン及び(M−5)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ65.4モル%及び34.6モル%であった。
【0264】
[合成例4](重合体(A−4)の合成)
化合物(M−9)7.31g(40モル%)、化合物(M−7)8.59g(40モル%)及び化合物(M−8)4.10g(20モル%)を2−ブタノン40gに溶解し、開始剤としてAIBN0.71gを添加して単量体溶液を調製した。次いで20gの2−ブタノンを入れた100mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。400gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を80gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−4)を合成した(15.0g、収率75%)。重合体(A−4)のMwは7,500であり、Mw/Mnは1.53であった。
13C−NMR分析の結果、(M−9)、(M−7)及び(M−8)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ40.1モル%、40.0モル%及び19.9モル%であった。
【0265】
[合成例5](重合体(A−5)の合成)
化合物(M−9)7.55g(40モル%)、化合物(M−7)8.87g(40モル%)、化合物(M−8)2.12g(10モル%)、及び化合物(M−4)1.46g(10モル%)を2−ブタノン40gに溶解し、開始剤としてAIBN0.86gを添加して単量体溶液を調製した。次いで20gの2−ブタノンを入れた100mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。400gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。次いで上記重合体に、プロピレングリコールモノメチルエーテル30gを加えた後、更に、メタノール30g、トリエチルアミン10g及び水2gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応終了後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体を2−ブタノン60gに溶解した後、400gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を80gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−5)を合成した(14.4g、収率73%)。重合体(A−5)のMwは7,100であり、Mw/Mnは1.53であった。
13C−NMR分析の結果、(M−9)、(M−7)、(M−8)及びp−ヒドロキシスチレンに由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ40.1モル%、40.1モル%、9.9モル%及び9.9モル%であった。
【0266】
[合成例6](重合体(A−6)の合成)
化合物(M−4)56.7g(70モル%)及び化合物(M−10)43.3g(30モル%)、開始剤としてAIBN4、1g、並びにt−ドデシルメルカプタン1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間共重合させた。重合反応収量後、重合溶液を1,000gのn−ヘキサン中に滴下して、重合体を凝固精製した。次いで上記重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、更に、メタノール150g、トリエチルアミン34g及び水6gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応終了後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトン150gに溶解した後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末の重合体(A−6)を得た(62.1g、収率72.8%)。重合体(A−6)のMwは10,000であり、Mw/Mnは2.20であった。
13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレン及び(M−10)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ70.2モル%及び28.8モル%であった。
【0267】
[合成例7](重合体(F−1)の合成)
化合物(M−1)79.9g(70モル%)及び化合物(M−6)20.91g(30モル%)を、100gの2−ブタノンに溶解し、開始剤としてジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート4.77gを溶解させて単量体溶液を調製した。次いで100gの2−ブタノンを入れた1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。反応溶液を2L分液漏斗に移液した後、150gのn−ヘキサンで上記重合溶液を均一に希釈し、600gのメタノールを投入して混合した。
次いで30gの蒸留水を投入し、さらに攪拌して30分静置した。その後、下層を回収し、固形分である重合体(F−1)を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た(収率60%)。重合体(F−1)のMwは7,200であり、Mw/Mnは2.00であった。
13C−NMR分析の結果、(M−1)及び(M−6)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ71.1モル%及び28.9モル%であった。
【0268】
<フォトレジスト組成物(I)の調製>
下記実施例44〜97及び比較例1、2のフォトレジスト組成物(I)の調製に用いた[B]成分(化合物(S−1)〜(S−43)以外)、[C]酸発生剤、[G]溶媒及び[H]偏在化促進剤を以下に示す。
【0269】
[[B]成分]
b−1:トリフェニルスルホニウム10−カンファ−スルホネート
【0270】
[[C]酸発生剤]
【0271】
【化34】
【0272】
[[G]溶媒]
G−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
G−2:シクロヘキサノン
【0273】
[[H]偏在化促進剤]
H−1:γ−ブチロラクトン
【0274】
[実施例44]
[A]重合体としての(A−1)100質量部、[B]酸拡散制御剤としての(S−1)30質量部、[C]酸発生剤としての(C−1)8.5質量部、[F]重合体としての(F−1)3質量部、[G]溶媒としての(G−1)2,240質量部及び(G−2)960質量部、並びに[H]偏在化促進剤としての(H−1)30質量部を配合してフォトレジスト組成物(J−1)を調製した。
【0275】
[実施例45〜97及び比較例1、2]
下記表1に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例44と同様に操作して、各フォトレジスト組成物を調製した。
【0276】
【表1】
【0277】
<レジストパターンの形成(1)>
12インチのシリコンウエハー表面に、スピンコーター(CLEAN TRACK ACT12、東京エレクトロン製)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ARC66、ブルワーサイエンス製)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して上記調製した各フォトレジスト組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR−S610C、NIKON製)を用い、NA=1.3、ダイポール(シグマ0.977/0.782)の光学条件にて、40nmラインアンドスペース(1L1S)マスクパターンを介して露光した。露光後、90℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液として2.38質量%のTMAH水溶液を用いてアルカリ現像し、水で洗浄し、乾燥してポジ型のレジストパターンを形成した。このレジストパターン形成の際、ターゲット寸法が40nmの1対1ラインアンドスペースのマスクを介して形成した線幅が、線幅40nmの1対1ラインアンドスペースに形成される露光量を最適露光量とした。
【0278】
<レジストパターンの形成(2)>
上記TMAH水溶液の代わりに酢酸n−ブチルを用いて有機溶媒現像し、かつ水での洗浄を行わなかった以外は、上記レジストパターンの形成(1)と同様に操作して、ネガ型のレジストパターンを形成した。
【0279】
<評価>
上記各フォトレジスト組成物も用いて形成したレジストパターンについて、LWR性能、解像性、断面形状及び焦点深度を下記方法に従い評価した。その結果を表2に示す。上記レジストパターンの測長には、走査型電子顕微鏡(S−9380、日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。なお、表2中の「※」は、各評価における判定基準を示している。
【0280】
[LWR性能]
レジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。線幅を任意のポイントで計50点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをLWR性能とした。LWR性能は、その値が小さいほど良いことを示す。LWR性能の値を比較例1の値(判定基準)と比べたとき、10%以上の向上(LWR性能の値が90%以下)が見られた場合、LWR性能は良好「A」と、10%未満(LWR性能の値が90%超)の場合、不良「B」と評価した。
【0281】
[解像性]
上記最適露光量において解像される最小のレジストパターンの寸法を測定し、この測定結果は解像性とした。測定値が小さいほど解像性は良いことを示す。得られた測定値を比較例1の測定値(判定基準)と比べたとき、10%以上の向上(最小レジストパターン寸法が90%以下)が見られた場合、解像性は良好「A」と、10%未満(最小レジストパターン寸法が90%超)の場合、不良「B」と評価した。
【0282】
[断面形状]
上記最適露光量において解像されるレジストパターンの断面形状を観察し、レジストパターンの中間での線幅Lb及び膜の上部での線幅Laを測定した。このとき、0.9≦La/Lb≦1.1である場合、断面形状は良好「A」と、上記範囲外である場合、不良「B」と評価した。
【0283】
[焦点深度]
上記最適露光量において解像されるレジストパターンにおいて、深さ方向にフォーカスを変化させた際の寸法を観測し、ブリッジや残渣が無いままパターン寸法が基準の90%〜110%に入る深さ方向の余裕度を測定し、この測定結果を焦点深度とした。測定値が大きいほど焦点深度は良いことを示す。得られた測定値を比較例1の測定値(判定基準)と比べたとき、10%以上の向上(焦点深度が110%以上)が見られた場合、焦点深度は良好「A」と、10%未満(焦点深度が110%未満)の場合、不良「B」と評価した。
【0284】
【表2】
【0285】
表2の結果から明らかなように、実施例では、いずれもLWR性能、解像性、断面形状及び焦点深度が良好であったのに対し、比較例では、LWR性能、解像性及び焦点深度の各特性が実施例に比べて劣っており、断面形状も不良であった。
【0286】
<フォトレジスト組成物(II)の調製>
下記実施例98〜141及び比較例3のフォトレジスト組成物(II)の調製に用いた[D]成分(化合物(S−1)〜(S−43)以外)、[E]酸拡散制御剤及び[G]溶媒を以下に示す。
【0287】
[[D]成分]
d−1:トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホネート
【0288】
[[E]酸拡散制御剤]
E−1:N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン
【0289】
[[G]溶媒]
G−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
G−2:シクロヘキサノン
【0290】
[実施例98]
[A]重合体としての(A−3)100質量部、[D]酸発生剤としての(S−1)20質量部、[E]酸拡散制御剤としての(E−1)3.6質量部、並びに[G]溶媒としての(G−1)4,280質量部及び(G−2)1,830質量部を配合してフォトレジスト組成物(J−55)を調製した。
【0291】
[実施例99〜141及び比較例3]
下記表3に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例98と同様に操作して、各フォトレジスト組成物を調製した。
【0292】
【表3】
【0293】
<レジストパターンの形成(3)>
8インチのシリコンウエハー表面にスピンコーター(CLEAN TRACK ACT8、東京エレクトロン製)を使用して、表3に記載の各フォトレジスト組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却し、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、簡易型の電子線描画装置(日立製作所製、型式「HL800D」、出力:50KeV、電流密度:5.0A/cm
2)を用いて電子線を照射した。照射後、130℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液として2.38質量%のTMAH水溶液を用いて23℃で30秒間現像し、水で洗浄し、乾燥してポジ型のレジストパターンを形成した。
【0294】
<評価>
上記各フォトレジスト組成物を用いて形成したレジストパターンについて、LWR性能、解像性及び断面形状を下記方法に従い評価した。その結果を表4に示す。上記レジストパターンの測長には、走査型電子顕微鏡(S−9380、日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。なお、表4中の「※」は、各評価における判定基準を示している。
【0295】
[LWR性能]
LWR性能の判定基準を比較例3の値とした以外は、上述のLWR性能の評価と同様の方法で評価を行った。
【0296】
[解像性]
形成される最小のレジストパターンの寸法を測定し、この測定結果は解像性とした。測定値が小さいほど解像性は良いことを示す。得られた測定値を比較例3の測定値(判定基準)と比べたとき、10%以上の向上(最小レジストパターン寸法が90%以下)が見られた場合、解像性は良好「A」と、10%未満(最小レジストパターン寸法が90%超)の場合、不良「B」と評価した。
【0297】
[断面形状]
形成されるレジストパターンの断面形状を観察し、レジストパターンの中間での線幅Lb及び膜の上部での線幅Laを測定した。このとき、0.9≦La/Lb≦1.1である場合、断面形状は良好「A」と、上記範囲外である場合、不良「B」と評価した。
【0298】
【表4】
【0299】
表4の結果から明らかなように、実施例では、いずれもLWR性能、解像性及び断面形状が良好であったのに対し、比較例では、LWR性能及び解像性の各特性が実施例に比べて劣っており、断面形状も不良であった。