(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記端モールドピンは、前記セクターモールドに設けられる複数の前記モールドピンのうち、タイヤ周方向に関して前記セクターモールドの端部に最も近いモールドピンである、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のタイヤ成形用金型。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加硫後、打込み孔から突起部を抜くことに起因して、打込み孔の周囲にクラックが発生する可能性がある。クラックが発生すると、打込み孔によるスタッドピンの保持力が低下したり、タイヤの外観が損なわれたりして、スタッドタイヤの性能が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、打込み孔の形成においてクラックの発生を抑制できるタイヤ成形用金型及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、スタッドピンが打ち込まれる打込み孔を有するタイヤを成形するタイヤ成形用金型であって、タイヤ周方向に配置され、前記タイヤのトレッド部を成形するための複数のセクターモールドと、前記トレッド部と対向する前記セクターモールドの内面からタイヤ径方向の内側に突出するように設けられ、前記トレッド部に前記打込み孔を形成するための複数のモールドピンと、を備え、前記打込み孔は、第1内径を有し前記スタッドピンのボディ部が配置される第1孔部と、前記第1内径よりも大きい第2内径を有し前記スタッドピンのボトムフランジ部が配置される第2孔部とを有するように形成され、前記モールドピンは、第1外径を有し前記第1孔部を形成するための胴体部と、前記第1外径よりも大きい第2外径を有し前記第2孔部を形成するための先端部とを有し、複数の前記モールドピンのうち、タイヤ周方向に関して前記セクターモールドの端領域に設けられる端モールドピンの前記胴体部の第1外径は、一方の前記端領域と他方の前記端領域との間の前記セクターモールドの中間領域に設けられる中間モールドピンの前記胴体部の第1外径よりも大きい、タイヤ成形用金型が提供される。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、端モールドピンの第1外径が中間モールドピンの第1外径よりも大きいので、タイヤからセクターモールドを外すためにそのセクターモールドをタイヤ径方向の外側に移動して、タイヤに形成された打込み孔から端モールドピンを抜いても、端モールドピンを抜くことに起因するクラックの発生が抑制される。
【0008】
セクターモールドをタイヤ径方向の外側に移動するとき、セクターモールドの移動軸と中間モールドピンの中心軸とがなす角度は小さい。一方、セクターモールドの移動軸と端モールドピンの中心軸とがなす角度は大きい。
【0009】
モールドピンの胴体部の第1外径が小さいことは、モールドピンの胴体部の第1外径とモールドピンの先端部の第2外径との差が大きいことを含み、モールドピンの胴体部の第1外径が大きいことは、モールドピンの胴体部の第1外径とモールドピンの先端部の第2外径との差が小さいことを含む。
【0010】
セクターモールドの移動軸とのなす角度が大きい中心軸を有する端モールドピンの第1外径と第2外径との差が大きいと、打込み孔から端モールドピンを抜いたとき、打込み孔の周囲のゴムに作用する応力が大きくなる。その結果、打込み孔の周囲にクラックが発生する可能性が高くなる。
【0011】
端モールドピンの胴体部の第1外径を大きくして、端モールドピンの胴体部の第1外径と端モールドピンの先端部の第2外径との差を小さくすることによって、セクターモールドの移動軸とのなす角度が大きい中心軸を有する端モールドピンを打込み孔から抜いても、打込み孔の周囲のゴムに作用する応力は抑制される。そのため、端モールドピンによって形成される打込み孔の周囲におけるクラックの発生が抑制される。
【0012】
中間モールドピンの第1外径は小さく、中間モールドピンの第1外径と第2外径との差は大きいものの、中間モールドピンの中心軸とセクターモールドの移動軸とがなす角度は小さい。そのため、打込み孔から中間モールドピンを抜いたとき、打込み孔の周囲のゴムに作用する応力は抑制される。したがって、中間モールドピンによって形成される打込み孔の周囲におけるクラックの発生が抑制される。
【0013】
クラックの発生が抑制されるので、クラックに起因して、打込み孔によるスタッドピンの保持力が低下すること、及びタイヤの外観が損なわれることが抑止される。したがって、スタッドタイヤの性能の低下が抑制される。
【0014】
また、本発明の第1の態様によれば、第1外径の胴体部と第2外径の先端部とを有するモールドピンは、そのモールドピンの中心軸と直交する面内において円形である。そのため、セクターモールドにモールドピンを取り付ける作業において、中心軸を中心とする回転方向に関するモールドピンの向きに過剰な注意を払わなくても済むため、作業が煩雑になることが抑制される。また、モールドピンの向きによってクラックの発生具合が変化することも抑制される。
【0015】
本発明の第1の態様において、前記端モールドピンの前記第1外径と前記中間モールドピンの第1外径との差は、0.1mm以上1.0mm以下でもよい。
【0016】
これにより、クラックの発生が抑制され、スタッドタイヤの性能が維持される。差が0.1mmよりも小さいと、端モールドピンによって形成される打込み孔の周囲にクラックが発生することを十分に抑制できない可能性がある。差が1.0mmよりも大きいと、端モールドピンによって形成される打込み孔によるスタッドピンの保持力が低下する可能性がある。
【0017】
本発明の第1の態様において、前記端モールドピンの前記先端部の第2外径は、前記中間モールドピンの前記先端部の第2外径よりも小さくてもよい。
【0018】
これにより、クラックの発生が効果的に抑制され、スタッドタイヤの性能が維持される。モールドピンの先端部の第2外径が大きいことは、モールドピンの胴体部の第1外径とモールドピンの先端部の第2外径との差が小さいことを含み、モールドピンの先端部の第2外径が小さいことは、モールドピンの胴体部の第1外径とモールドピンの先端部の第2外径との差が大きいことを含む。端モールドピンの先端部の第2外径を小さくして、端モールドピンの胴体部の第1外径と端モールドピンの先端部の第2外径との差を小さくすることによって、セクターモールドの移動軸とのなす角度が大きい中心軸を有する端モールドピンを打込み孔から抜いても、打込み孔の周囲のゴムに作用する応力は抑制される。そのため、端モールドピンによって形成される打込み孔の周囲におけるクラックの発生が抑制される。
【0019】
本発明の第1の態様において、前記端モールドピンの前記第2外径と前記中間モールドピンの第2外径との差は、0.2mm以上1.5mm以下でもよい。
【0020】
これにより、クラックの発生が抑制され、スタッドタイヤの性能が維持される。差が0.2mmよりも小さいと、端モールドピンによって形成される打込み孔の周囲にクラックが発生することを十分に抑制できない可能性がある。差が1.5mmよりも大きいと、端モールドピンによって形成される打込み孔によるスタッドピンの保持力が低下する可能性がある。
【0021】
本発明の第1の態様において、前記端モールドピンの長さは、前記中間モールドピンの長さよりも短くてもよい。
【0022】
これにより、クラックの発生が効果的に抑制される。端モールドピンの長さを短くすることによって、セクターモールドの移動軸とのなす角度が大きい中心軸を有する端モールドピンを打込み孔から抜いても、打込み孔の周囲のゴムに作用する応力は抑制される。そのため、端モールドピンによって形成される打込み孔の周囲におけるクラックの発生が抑制される。
【0023】
本発明の第1の態様において、前記端モールドピンの長さと前記中間モールドピンの長さとの差は、0.1mm以上1.0mm以下でもよい。
【0024】
これにより、クラックの発生が抑制され、スタッドタイヤの性能が維持される。差が0.1mmよりも小さいと、端モールドピンによって形成される打込み孔の周囲にクラックが発生することを十分に抑制できない可能性がある。差が1.0mmよりも大きいと、端モールドピンによって形成される打込み孔によるスタッドピンの保持力が低下する可能性がある。
【0025】
本発明の第1の態様において、前記端モールドピンは、前記セクターモールドに設けられる複数の前記モールドピンのうち、タイヤ周方向に関して前記セクターモールドの端部に最も近いモールドピンでもよい。
【0026】
これにより、セクターモールドの移動軸とのなす角度が最も大きい中心軸を有する端モールドピンによって形成される打込み孔の周囲にクラックが発生することが抑制される。
【0027】
本発明の第1の態様において、前記トレッド部は、タイヤ幅方向に関して前記タイヤの赤道線の一方側の第1領域と、他方側の第2領域とを有し、前記モールドピンは、前記第1領域に前記打込み孔を形成するための複数のモールドピンと、前記第2領域に前記打込み孔を形成するための複数のモールドピンと、を含み、前記端モールドピンは、前記第1領域に前記打込み孔を形成するための複数のモールドピン、及び前記第2領域に前記打込み孔を形成するための複数のモールドピンのうち、タイヤ周方向に関して前記セクターモールドの端部に最も近いモールドピンでもよい。
【0028】
これにより、第1領域に形成される打込み孔の周囲にクラックが発生すること、及び第2領域に形成される打込み孔の周囲にクラックが発生することが抑制される。そのため、第1領域及び第2領域のそれぞれにおいてスタッドピンが抜け落ちることが抑制され、スタッドタイヤの走行性能の低下が抑制される。
【0029】
本発明の第1の態様において、前記中間モールドピンは、前記セクターモールドに設けられる複数の前記モールドピンのうち、前記端モールドピン以外のモールドピンであり、複数の前記中間モールドピンの前記第1外径、前記第2外径、及び長さは、同一でもよい。
【0030】
これにより、モールドピンとして、端モールドピン及び中間モールドピンの2種類のモールドピンを用意すればよく、タイヤ成形用金型のコストが抑制される。
【0031】
本発明の第2の態様に従えば、タイヤ周方向に配置された複数のセクターモールドによって成形されるトレッド部と、前記トレッド部と対向する前記セクターモールドの内面からタイヤ径方向の内側に突出するように設けられたモールドピンによって前記トレッド部に形成され、スタッドピンが打ち込まれる複数の打込み孔と、を備え、前記打込み孔は、第1内径を有し前記スタッドピンのボディ部が配置される第1孔部と、前記第1内径よりも大きい第2内径を有し前記スタッドピンのボトムフランジ部が配置される第2孔部と、を有し、複数の前記打込み孔のうち、タイヤ周方向に関して1つの前記セクターモールドによって成形される前記トレッド部の所定領域の端領域に形成される端打込み孔の前記第1孔部の第1内径は、一方の前記端領域と他方の前記端領域との間の前記トレッド部の中間領域に形成される中間打込み孔の前記第1孔部の第1内径よりも大きい、空気入りタイヤが提供される。
【0032】
本発明の第2の態様によれば、端打込み孔の第1内径が中間打込み孔の第1内径よりも大きいので、タイヤからセクターモールドを外すためにそのセクターモールドをタイヤ径方向の外側に移動してタイヤに形成された打込み孔からモールドピンを抜くとき、モールドピンを抜くことに起因するクラックの発生が抑制される。したがって、空気入りタイヤの性能の低下が抑制される。
【0033】
また、本発明の第2の態様によれば、第1内径の第1孔部と第2内径の第2孔部とを有する打込み孔は、その打込み孔の中心軸と直交する面内において円形である。そのため、打込み孔を形成する作業において、中心軸を中心とする回転方向に関する打込み孔の向きに過剰な注意を払わなくても済むため、作業が煩雑になることが抑制される。また、打込み孔の向きによってクラックの発生具合が変化することも抑制される。
【0034】
本発明の第2の態様において、前記端打込み孔の前記第1内径と前記中間打込み孔の第1内径との差は、0.1mm以上1.0mm以下でもよい。
【0035】
これにより、クラックの発生が抑制され、スタッドタイヤの性能が維持される。差が0.1mmよりも小さいと、端打込み孔の周囲にクラックが発生することを十分に抑制できない可能性がある。差が1.0mmよりも大きいと、端打込み孔によるスタッドピンの保持力が低下する可能性がある。
【0036】
本発明の第2の態様において、前記端打込み孔の前記第2孔部の第2内径は、前記中間打込み孔の前記第2孔部の第2内径よりも小さくてもよい。
【0037】
これにより、クラックの発生がより効果的に抑制される。
【0038】
本発明の第2の態様において、前記端打込み孔の前記第2内径と前記中間打込み孔の第2内径との差は、0.2mm以上1.5mm以下でもよい。
【0039】
これにより、クラックの発生が抑制され、スタッドタイヤの性能が維持される。差が0.2mmよりも小さいと、端打込み孔の周囲にクラックが発生することを十分に抑制できない可能性がある。差が1.5mmよりも大きいと、端打込み孔によるスタッドピンの保持力が低下する可能性がある。
【0040】
本発明の第2の態様において、前記端打込み孔の長さは、前記中間打込み孔の長さよりも短くてもよい。
【0041】
これにより、クラックの発生が効果的に抑制される。
【0042】
本発明の第2の態様において、前記端打込み孔の長さと前記中間端打込み孔の長さとの差は、0.1mm以上1.0mm以下でもよい。
【0043】
これにより、クラックの発生が抑制され、スタッドタイヤの性能が維持される。差が0.1mmよりも小さいと、端打込み孔の周囲にクラックが発生することを十分に抑制できない可能性がある。差が1.0mmよりも大きいと、端打込み孔によるスタッドピンの保持力が低下する可能性がある。
【0044】
本発明の第2の態様において、前記端打込み孔は、前記所定領域に形成される複数の前記打込み孔のうち、タイヤ周方向に関して前記所定領域の端部に最も近い打込み孔でもよい。
【0045】
これにより、セクターモールドの移動軸とのなす角度が最も大きい中心軸を有する端打込み孔の周囲にクラックが発生することが抑制される。
【0046】
本発明の第2の態様において、前記トレッド部は、タイヤ幅方向に関してタイヤ赤道線の一方側の第1領域と、他方側の第2領域とを有し、前記打込み孔は、前記第1領域及び前記第2領域のそれぞれに形成され、前記端打込み孔は、前記第1領域に形成された複数の前記打込み孔のうち、タイヤ周方向に関して前記所定領域の端部に最も近い打込み孔、及び前記第2領域に形成された複数の前記打込み孔のうち、タイヤ周方向に関して前記所定領域の端部に最も近い打込み孔でもよい。
【0047】
これにより、第1領域に形成される打込み孔の周囲にクラックが発生すること、及び第2領域に形成される打込み孔の周囲にクラックが発生することが抑制される。そのため、第1領域及び第2領域のそれぞれにおいてスタッドピンが抜け落ちることが抑制され、スタッドタイヤの走行性能の低下が抑制される。
【0048】
本発明の第2の態様において、前記中間打込み孔は、前記トレッド部に設けられる複数の前記打込み孔のうち、前記端打込み孔以外の打込み孔であり、複数の前記中間打込み孔の前記第1内径、前記第2内径、及び長さは、同一でもよい。
【0049】
これにより、打込み孔として、端打込み孔及び中間打込み孔の2種類の打込み孔を用意すればよく、空気入りタイヤのコストが抑制される。
【発明の効果】
【0050】
本発明の態様によれば、打込み孔の周囲におけるクラックの発生を抑制できるタイヤ成形用金型及び空気入りタイヤが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0053】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るタイヤ成形用の金型50の一部を模式的に示す断面図である。
図2は、本実施形態に係る金型50の動作の一例を模式的に示す図である。
【0054】
金型50は、スタッドピンが打ち込まれる打込み孔40を有するタイヤ1Bを成形する。金型50は、加硫用の金型である。生タイヤ(グリーンタイヤ)が金型50の内側に配置される。生タイヤは、金型50に支持された状態で加硫される。
【0055】
金型50は、タイヤ周方向に配置され、タイヤ1Bのトレッド部3を成形するための複数のセクターモールド51と、タイヤ1Bのサイドウォール部5を成形するためのサイドモールド52とを備えている。
【0056】
また、金型50は、タイヤ1Bのトレッド部3と対向するセクターモールド51の内面53からタイヤ径方向の内側に突出するように設けられ、トレッド部3に打込み孔40を形成するための複数のモールドピン60を備えている。
【0057】
トレッド部3は、タイヤ周方向に配置された複数のセクターモールド51によって成形される。スタッドピンが打ち込まれる複数の打込み孔40は、トレッド部3と対向するセクターモールド51の内面53からタイヤ径方向の内側に突出するように設けられたモールドピン60によってトレッド部3に形成される。
【0058】
なお、図示は省略するが、セクターモールド51は、トレッド部3に溝を形成するための複数の突起部を備えている。セクターモールド51の内面53に設けられた突起部により、タイヤ1Bにトレッドパターンが形成される。
【0059】
サイドモールド52は、上側サイドモールド52Aと、下側サイドモールド52Bとを含む。タイヤ1Bは、上側サイドモールド52Aと下側サイドモールド52Bとの間に配置される。
【0060】
図2に示すように、セクターモールド51は、タイヤ周方向に複数設けられる。
図2に示す例では、金型50は、9つのセクターモールド51を有する。
【0061】
セクターモールド51は、円環状モールドをタイヤ周方向に分割した部材である。
図2の矢印で示すように、複数のセクターモールド51のそれぞれは、タイヤ径方向に移動可能である。セクターモールド51は、タイヤ径方向の内側に移動することによって、タイヤ1Bのトレッド部3と接触する。セクターモールド51は、タイヤ径方向の外側に移動することによって、タイヤ1Bのトレッド部3から離れる。複数のセクターモールド51は、タイヤ径方向の内側に移動することによって一体化され、円環状モールドを形成する。複数のセクターモールド51は、タイヤ径方向の外側に移動することによって分割される。
【0062】
なお、
図2は、円環状モールドが9分割されて9つのセクターモールド51が設けられている例を示す。円環状モールドは、例えば8分割されてもよい。
【0063】
上側サイドモールド52Aは、上方向に移動することによって、タイヤ1Bのサイドウォール部5から離れる。上側サイドモールド52Aは、下方向に移動することによって、タイヤ1Bのサイドウォール部5と接触する。下側サイドモールド52Bは、下方向に移動することによって、タイヤ1Bのサイドウォール部5から離れる。下側サイドモールド52Bは、上方向に移動することによって、タイヤ1Bのサイドウォール部5と接触する。
【0064】
図3は、本実施形態に係るセクターモールド51の一例を模式的に示す図である。セクターモールド51は、タイヤ周方向に複数のモールドピン60を有する。モールドピン60は、タイヤ周方向に関してセクターモールド51の内面53の端領域51Aに設けられる端モールドピン60Aと、一方の端領域51Aと他方の端領域51Aとの間のセクターモールド51の内面53の中間領域51Bに設けられる中間モールドピン60Bとを含む。
【0065】
端領域51Aは、タイヤ周方向に関して、セクターモールド51の内面53の端部と、その端部から所定距離だけ内面53の中央側の部位との間の領域である。端領域51Aは、タイヤ周方向に関して、内面53の一方の端部を含む一方の端領域51Aと、内面53の他方の端部を含む他方の端領域51Aとを含む。中間領域51Bは、一方の端領域51Aと他方の端領域51Aとの間に配置される内面53の一部の領域である。
【0066】
本実施形態において、端モールドピン60Aは、セクターモールド51に設けられる複数のモールドピン60のうち、タイヤ周方向に関してセクターモールド51の端部に最も近いモールドピン60である。すなわち、タイヤ周方向に配置される複数のモールドピン60のうち、内面53の一方の端部に最も近いモールドピン60と、内面53の他方の端部に最も近いモールドピン60とが、端モールドピン60Aである。1つのセクターモールド51は、端モールドピン60Aを2本有する。
【0067】
中間モールドピン60Bは、セクターモールド51に設けられる複数のモールドピン60のうち、端モールドピン60A以外のモールドピン60である。例えば、1つのセクターモールド51に32本のモールドピン60が設けられる場合、32本のモールドピン60のうち、2本のモールドピン60が端モールドピン60Aであり、30本のモールドピン60が中間モールドピン60Bである。
【0068】
図4は、本実施形態に係る端モールドピン60A及び中間モールドピン60Bの一例を模式的に示す図である。
図4に示すように、端モールドピン60A及び中間モールドピン60Bはそれぞれ、セクターモールド51の内面53に接続される基部63と、基部63に接続される胴体部61と、胴体部61に接続される先端部62とを有する。
【0069】
端モールドピン60Aは、中心軸J60aの周囲に配置される。中心軸J60aと直交する面内において、端モールドピン60Aの基部63、胴体部61、及び先端部62はそれぞれ、円形である。中心軸J60aと、複数のセクターモールド51によって形成される円環モールドの中心に対する放射軸とは一致する。
【0070】
中間モールドピン60Bは、中心軸J60bの周囲に配置される。中心軸J60bと直交する面内において、中間モールドピン60Bの基部63、胴体部61、及び先端部62はそれぞれ、円形である。中心軸J60bと、複数のセクターモールド51によって形成される円環モールドの中心に対する放射軸とは一致する。
【0071】
基部63は、内面53から離れるにしたがって縮径する。胴体部61は、円柱状である。先端部62は、内面53から離れるにしたがって拡径する。
【0072】
中心軸J60aと直交する面内における端モールドピン60Aの胴体部61の寸法を示す第1外径D61aは、端モールドピン60Aの先端部62の寸法を示す第2外径D62aよりも小さい。すなわち、第2外径D62aは、第1外径D61aよりも大きい。中心軸J60bと直交する面内における中間モールドピン60Bの胴体部61の寸法を示す第1外径D61bは、中間モールドピン60Bの先端部62の寸法を示す第2外径D62bよりも小さい。すなわち、第2外径D62bは、第1外径D61bよりも大きい。
【0073】
中心軸J60aと平行な方向における端モールドピン60Aの胴体部61の寸法を示す第1長さH61aは、端モールドピン60Aの先端部62の寸法を示す第2長さH62aよりも大きい。中心軸J60bと平行な方向における中間モールドピン60Bの胴体部61の寸法を示す第1長さH61bは、中間モールドピン60Bの先端部62の寸法を示す第2長さH62bよりも大きい。
【0074】
本実施形態において、端モールドピン60Aの胴体部61の第1外径D61aは、中間モールドピン60Bの胴体部61の第1外径D61bよりも大きい。すなわち、端モールドピン60Aの胴体部61は、中間モールドピン60Bの胴体部61よりも太い。
【0075】
端モールドピン60Aの第1外径D61aと中間モールドピン60Bの第1外径D61bとの差は、0.1mm以上1.0mm以下である。
【0076】
端モールドピン60Aの第1外径D61aは、例えば、2.0mm以上2.4mm以下である。中間モールドピン60Bの第1外径D61bは、第1外径D61aよりも、0.1mm以上1.0mm以下の範囲で小さい。
【0077】
なお、第1外径D61aと第1外径D61bとの差は、0.2mm以上0.5mm以下が好ましい。
【0078】
本実施形態において、端モールドピン60Aの先端部62の第2外径D62aは、中間モールドピン60Bの先端部62の第2外径D62bよりも小さい。すなわち、端モールドピン60Aの先端部62は、中間モールドピン60Bの先端部62よりも細い。
【0079】
端モールドピン60Aの第2外径D62aと中間モールドピン60Bの第2外径D62bとの差は、0.2mm以上1.5mm以下である。
【0080】
端モールドピン60Aの第2外径D62aは、例えば、3.5mm以上4.5mm以下である。中間モールドピン60Bの第2外径D62bは、第2外径D62aよりも、0.2mm以上1.5mm以下の範囲で大きい。
【0081】
なお、第2外径D62aと第2外径D62bとの差は、0.5mm以上1.0mm以下が好ましい。
【0082】
端モールドピン60Aの第1外径D61aと第2外径D62aとの差Δaは、中間モールドピン60Bの第1外径D61bと第2外径D62bとの差Δbよりも小さい。
【0083】
本実施形態において、端モールドピン60Aの長さH60aは、中間モールドピン60Bの長さH60bよりも短い。長さH60aとは、中心軸J60aと平行なタイヤ径方向に関して、セクターモールド51の内面53と端モールドピン60Aとの境界部と、端モールドピン60Aの先端部62との距離である。長さH60bとは、中心軸J60bと平行なタイヤ径方向に関して、セクターモールド51の内面53と中間モールドピン60Bとの境界部と、中間モールドピン60Bの先端部62との距離である。
【0084】
端モールドピン60Aの長さH60aと中間モールドピン60Bの長さH60bとの差は、0.1mm以上1.0mm以下である。
【0085】
端モールドピン60Aの長さH60aは、例えば、9.0mm以上10.0mm以下である。中間モールドピン60Bの長さH60bは、長さH60aよりも、0.1mm以上1.0mm以下の範囲で長い。
【0086】
なお、長さH60aと長さH60bとの差は、0.1mm以上0.5mm以下が好ましい。
【0087】
本実施形態において、端モールドピン60Aの第1長さH61aは、中間モールドピン60Bの第1長さH61bよりも短い。端モールドピン60Aの第2長さH62aは、中間モールドピン60Bの第2長さH62bと等しくてもよいし、長さH62bよりも短くてもよい。
【0088】
本実施形態において、複数(例えば30本)の中間モールドピン60Bの第1外径D61b、第2外径D62b、及び長さH60bは、同一である。
【0089】
次に、本実施形態に係る金型50を用いてスタッドタイヤ1を製造する方法の一例について説明する。
【0090】
セクターモールド51及びサイドモールド52を含む金型50が準備される。セクターモールド51を準備する工程は、端モールドピン60A及び中間モールドピン60Bを含むモールドピン60をセクターモールド51に取り付ける作業を含む。本実施形態において、端モールドピン60Aは、中心軸J60aと直交する面内において円形であり、中間モールドピン60Bは、中心軸J60bと直交する面内において円形である。そのため、セクターモールド51にモールドピン60を取り付ける作業において、中心軸J60を中心とする回転方向に関するモールドピン60の向きに過剰な注意を払わなくても済む。
【0091】
複数のセクターモールド51及びサイドモールド52が組み合わせられ、金型50が形成される。隣接するセクターモールド51は互いに接触する。
【0092】
金型50の内側に生タイヤが配置される。セクターモールド51は、生タイヤのトレッド部3と接触する。サイドモールド52は、生タイヤのサイドウォール部5と接触する。モールドピン60を有するセクターモールド51により、トレッド部3に打込み孔40が形成される。
【0093】
生タイヤが金型50の内側に配置された状態で、その生タイヤが加熱及び加圧され、加硫成形が行われる。加硫により、打込み孔40が形成されたトレッド部3を有するタイヤ1Bが生成される。
【0094】
加硫成形後、加硫されたタイヤ1Bから金型50が外される。タイヤ1Bから金型50を外す工程は、タイヤ1Bに接触しているセクターモールド51をタイヤ径方向の外側に移動して、タイヤ1Bから離す作業を含む。
【0095】
図5は、打込み孔40からモールドピン60が抜かれる状態を模式的に示す図である。
図5に示すように、セクターモールド51がタイヤ径方向の外側に移動してタイヤ1Bから離れることによって、タイヤ1Bのトレッド部3に形成された打込み孔40からモールドピン60が抜かれる。
【0096】
セクターモールド51は、タイヤ1Bの中心軸(円環状モールドの中心軸)に対する放射方向と平行な移動軸MXに沿って移動する。セクターモールド51の移動軸MXと中間モールドピン60Bの中心軸J60bとがなす角度θbは、セクターモールド51の移動軸MXと端モールドピン60Aの中心軸J60aとがなす角度θaよりも小さい。
【0097】
本実施形態においては、端モールドピン60Aの胴体部61の第1外径D61aが、中間モールドピン60Bの胴体部61の第1外径D61bよりも大きい。端モールドピン60Aの胴体部61の第1外径D61aと端モールドピン60Aの先端部62の第2外径D62aとの差Δaは、中間モールドピン60Bの胴体部61の第1外径D61bと中間モールドピン60Bの先端部62の第2外径D62bとの差Δbよりも小さい。
【0098】
そのため、移動軸MXとのなす角度θaが大きい中心軸J60aを有する端モールドピン60Aを打込み孔40から抜いても、その打込み孔40の周囲のトレッドゴム15に作用する応力は抑制される。そのため、端モールドピン60Aによって形成される打込み孔40の周囲におけるクラックの発生が抑制される。
【0099】
中間モールドピン60Bの第1外径D61bは端モールドピン60Aの第1外径D61aよりも小さく、中間モールドピン60Bの第1外径D61bと第2外径D62bとの差Δbは、端モールドピン60Aの第1外径D61aと第2外径D62aとの差Δaよりも大きい。一方、中間モールドピン60Bの中心軸J60bとセクターモールド51の移動軸MXとがなす角度θbは、端モールドピン60Aの中心軸J60aとセクターモールド51の移動軸MXとがなす角度θaよりも小さい。そのため、打込み孔40から中間モールドピン60Bを抜いたとき、その打込み孔40の周囲のトレッドゴム15に作用する応力は抑制される。したがって、中間モールドピン60Bによって形成される打込み孔40の周囲におけるクラックの発生が抑制される。
【0100】
図6は、本実施形態に係る打込み孔40の一例を模式的に示す断面図である。打込み孔40は、モールドピン60によって形成される。打込み孔40は、端モールドピン60Aによって形成された端打込み孔40Aと、中間モールドピン60Bよって形成された中間打込み孔40Bとを含む。
【0101】
図6に示すように、端打込み孔40A及び中間打込み孔40Bはそれぞれ、モールドピン60の胴体部61によって形成される第1孔部41と、先端部62によって形成される第2孔部42と、基部63によって形成される第3孔部43とを有する。胴体部61は、第1孔部41を形成する。先端部42は、第2孔部42を形成する。
【0102】
端打込み孔40Aは、中心軸J40aの周囲に配置される。中心軸J40aと直交する面内において、端打込み孔40Aの第1孔部41、第2孔部42、及び第3孔部43はそれぞれ、円形である。中心軸J40aと、タイヤ1Bの中心に対する放射軸とは一致する。
【0103】
中間打込み孔40Bは、中心軸J40bの周囲に配置される。中心軸J40bと直交する面内において、中間打込み孔40Bの第1孔部41、第2孔部42、及び第3孔部43はそれぞれ、円形である。中心軸J40bと、タイヤ1Bの中心に対する放射軸とは一致する。
【0104】
第3孔部43は、トレッド部3の接地面2から離れるにしたがって縮径する。第1孔部41は、円柱状である。第2孔部42は、接地面2から離れるにしたがって拡径する。
【0105】
中心軸J40aと直交する面内における端打込み孔40Aの第1孔部41の寸法を示す第1内径D41aは、端打込み孔40Aの第2孔部42の寸法を示す第2内径D42aよりも小さい。すなわち、第2内径D42aは、第1内径D41aよりも大きい。中心軸J40bと直交する面内における中間打込み孔40Bの第1孔部41の寸法を示す第1内径D41bは、中間打込み孔40Bの第2孔部42の寸法を示す第2内径D42bよりも小さい。すなわち、第2内径D42bは、第1内径D41bよりも大きい。
【0106】
中心軸J40aと平行な方向における端打込み孔40Aの第1孔部41の寸法を示す第1長さH41aは、端打込み孔40Aの第2孔部42の寸法を示す第2長さH42aよりも大きい。中心軸J40bと平行な方向における中間打込み孔40Bの第1孔部41の寸法を示す第1長さH41bは、中間打込み孔40Bの第2孔部42の寸法を示す第2長さH42bよりも大きい。
【0107】
本実施形態において、端打込み孔40Aの第1孔部41の第1内径D41aは、中間打込み孔40Bの第1孔部41の第1内径D41bよりも大きい。すなわち、端打込み孔40Aの第1孔部41は、中間打込み孔40Bの第1孔部41よりも大きい。
【0108】
端打込み孔40Aの第1内径D41aと中間打込み孔40Bの第1内径D41bとの差は、0.1mm以上1.0mm以下である。
【0109】
なお、第1内径D41aと第1内径D41bとの差は、0.2mm以上0.5mm以下が好ましい。
【0110】
本実施形態において、端打込み孔40Aの第2孔部42の第2内径D42aは、中間打込み孔40Bの第2孔部42の第2内径D42bよりも小さい。すなわち、端打込み孔40Aの第2孔部42は、中間打込み孔40Bの第2孔部42よりも細い。
【0111】
端打込み孔40Aの第2内径D42aと中間打込み孔40Bの第2内径D42bとの差は、0.2mm以上1.5mm以下である。
【0112】
なお、第2内径D42aと第2内径D42bとの差は、0.5mm以上1.0mm以下が好ましい。
【0113】
端打込み孔40Aの第1内径D41aと第2内径D42aとの差Δcは、中間打込み孔40Bの第1内径D41bと第2内径D42bとの差Δdよりも小さい。
【0114】
本実施形態において、端打込み孔40Aの長さH40aは、中間打込み孔40Bの長さH40bよりも短い。長さH40aとは、中心軸J40aと平行なタイヤ径方向に関して、接地面2と、端打込み孔40Aの第2孔部42の底面との距離である。長さH40bとは、中心軸J40bと平行なタイヤ径方向に関して、接地面2と、中間打込み孔40Bの第2孔部42の底面との距離である。
【0115】
端打込み孔40Aの長さH40aと中間打込み孔40Bの長さH40bとの差は、0.1mm以上1.0mm以下である。
【0116】
なお、長さH40aと長さH40bとの差は、0.1mm以上0.5mm以下が好ましい。
【0117】
本実施形態において、端打込み孔40Aの第1長さH41aは、中間打込み孔40Bの第1長さH41bよりも短い。端打込み孔40Aの第2長さH42aは、中間打込み孔40Bの第2長さH42bと等しくてもよいし、第2長さH42bよりも短くてもよい。
【0118】
図7は、本実施形態に係るスタッドピン30の一例を示す側面図である。
図8は、打込み孔40に打ち込まれたスタッドピン30の一例を示す断面図である。
【0119】
図7及び
図8に示すように、スタッドピン30は、ボディ部31と、ボトムフランジ部32と、チップ部35とを備えている。ボディ部31は、ボトムフランジ部32に支持される。チップ部35は、ボディ部31に支持される。ボトムフランジ部32及びボディ部31は、トレッド部3に設けられた打込み孔40に配置される。チップ部35は、トレッド部3の接地面2から突出するように配置される。
【0120】
本実施形態において、ボディ部31は、アッパーフランジ部33及び中間部34を含む。ボディ部31とボトムフランジ部32とは一体(単一部材)である。
【0121】
スタッドピン30は、チップ部35を通る中心軸J30の周囲に配置される。中心軸J30と直交する面内において、ボディ部31、ボトムフランジ部32、及びチップ部35はそれぞれ、円形である。すなわち、本実施形態において、スタッドピン30は、所謂、円形ピンである。ボトムフランジ部32及びアッパーフランジ部33はそれぞれ、円形フランジである。中間部34は、円柱状である。
【0122】
中心軸J30と直交する面内における中間部34の寸法を示す外径D34は、アッパーフランジ部33の外径D33よりも小さい。中間部34の外径D34は、ボトムフランジ部32の外径D32よりも小さい。アッパーフランジ部33の外径D33は、ボトムフランジ部32の外径D32よりも小さい。
【0123】
中心軸J30と平行な方向における中間部34の寸法を示す高さH34は、アッパーフランジ部33の高さH33よりも小さい。中間部34の高さH34は、ボトムフランジ部32の高さH32よりも大きい。アッパーフランジ部33の高さH33は、ボトムフランジ部32の高さH32よりも大きい。
【0124】
図8に示すように、打込み孔40の第1孔部41にスタッドピン30のボディ部31が配置される。打込み孔40の第2孔部42にスタッドピン30のボトムフランジ部32が配置される。
【0125】
図9は、本実施形態に係るスタッドタイヤ1の一部を示す断面図である。
図9は、スタッドタイヤ1の回転軸AXを通る子午断面を示す。
図10は、本実施形態に係るスタッドタイヤ1のトレッド部3の一例を示す平面図である。
【0126】
スタッドタイヤ1は、回転軸AXを中心に回転する。タイヤ周方向は、回転軸AXを中心とするタイヤ回転方向を含む。タイヤ幅方向は、回転軸AXと平行な方向を含む。タイヤ径方向は、回転軸AXに対する放射方向を含む。スタッドタイヤ1の赤道線CLは、タイヤ幅方向に関してスタッドタイヤ1の中心を通る中心線である。
【0127】
スタッドタイヤ1は、スタッドピン30を有する冬用タイヤ(雪氷路用タイヤ)である。スタッドタイヤ1は、スパイクタイヤ1、と呼ばれてもよい。
【0128】
スタッドタイヤ1は、タイヤ1Bと、タイヤ1Bのトレッド部3に設けられたスタッドピン30とを有する。タイヤ1Bは、空気入りタイヤである。スタッドピン30は、トレッド部3に形成された打込み孔40に打ち込まれる。
【0129】
図9に示すように、タイヤ1Bは、接地面2を有し、タイヤ周方向に配置された複数のセクターモールド51によって形成されるトレッド部3と、トレッド部3と対向するセクターモールド51の内面53からタイヤ径方向の内側に突出するように設けられたモールドピン60によってトレッド部3に形成され、スタッドピン30が打ち込まれる複数の打込み孔40とを備えている。
【0130】
また、タイヤ1Bは、リムと接続されるビード部4と、トレッド部3とビード部4とを結ぶサイドウォール部5とを備えている。接地面2は、タイヤ1の走行において、路面(地面)と接触する。
【0131】
タイヤ1Bは、カーカス6及びインナーライナー7を有する。カーカス6は、タイヤ1Bの骨格であり、タイヤ1Bの形状を保持する。インナーライナー7は、タイヤ1Bの内部空間に面するように配置される。カーカス6及びインナーライナー7は、トレッド部3、ビード部4、及びサイドウォール部5に配置される。
【0132】
ビード部4は、ビードコア11と、ビードフィラー12とを含む。ビードコア11は、タイヤ1をリムに固定する。ビードコア11は、タイヤ幅方向に関してタイヤ1Bの赤道線CLの両側に配置される。ビードコア11は、束ねられた複数の高炭素鋼の環状部材を含む。ビードコア11は、回転軸AXを囲むように配置される。ビードフィラー12は、ビード部4の剛性を高める。
【0133】
トレッド部3は、ベルト14と、トレッドゴム15とを含む。ベルト14は、積層された複数のベルト材を含む。ベルト14は、タイヤ径方向に関してカーカス6の外側に配置される。ベルト14は、カーカス6を締め付けて、トレッド部3の剛性を高める。トレッドゴム15に、トレッドパターンが形成される。トレッドゴム15は、径方向に関してカーカス6及びベルト14の外側に配置される。接地面2は、トレッドゴム15に配置される。
【0134】
サイドウォール部5は、サイドウォールゴム16を含む。サイドウォール部5は、タイヤ幅方向に関して赤道線CLの両側に配置される。
【0135】
カーカス6は、タイヤ幅方向に関して赤道線CLの一方側のビードコア11と他方側のビードコア11との間にトロイダル状に配置される。カーカス6の両端部は、ビードフィラー12を囲むように折り返される。
【0136】
トレッドゴム15に溝20が形成される。トレッドパターンは、溝20によって形成される。溝20は、タイヤ周方向に形成される主溝21と、タイヤ幅方向に形成されるラグ溝22とを含む。主溝21及びラグ溝22によりトレッドゴム15が区画されることによって、ブロック23が形成される。接地面2は、ブロック23の表面を含む。
【0137】
スタッドタイヤ1は、スタッドピン30を備える。タイヤ1Bは、スタッドピン30が打ち込まれる複数の打込み孔40を有する。打込み孔40は、タイヤ1Bのトレッド部3に形成される。打込み孔40は、トレッドゴム15のブロック23に形成される。スタッドピン30の少なくとも一部は、打込み孔40に配置される。スタッドピン30は、スタッドピン30の少なくとも一部がトレッド部3の接地面2から突出するように、打込み孔40の内面に支持される。
【0138】
図10に示すように、トレッド部3は、タイヤ周方向に複数の打込み孔40を有する。打込み孔40は、タイヤ周方向に関して1つのセクターモールド51によって成形されるトレッド部3の所定領域73の端領域73Aに設けられる端打込み孔40Aと、一方の端領域73Aと他方の端領域73Aとの間のトレッド部3の中間領域73Bに形成される中間打込み孔40Bとを含む。
【0139】
所定領域73は、1つのセクターモールド51が接触することによって成形される領域である。隣接する2つの所定領域73の境界部70は、隣接する2つのセクターモールド51の境界部と対向する。タイヤ周方向に関する所定領域73の端部は、境界部70を含む。
【0140】
隣接する2つのセクターモールド51の間隙に起因してトレッド部3に筋(凸部)が形成される場合がある。加硫において、隣接する2つのセクターモールド51の間隙にゴムの一部が入り込み、その入り込んだゴムによって筋が形成される場合がある。境界部70は、ゴムの筋を含む。
【0141】
端領域73Aは、タイヤ周方向に関して、所定領域73の端部と、その端部から所定距離だけ所定領域73の中央側の部位との間の領域である。端領域73Aは、タイヤ周方向に関して、所定領域73の一方の端部を含む一方の端領域73Aと、所定領域73の他方の端部を含む他方の端領域73Aとを含む。中間領域73Bは、一方の端領域73Aと他方の端領域73Aとの間に配置される所定領域73の一部の領域である。
【0142】
本実施形態において、端打込み孔40Aは、トレッド部3の所定領域73に形成される複数の打込み孔40のうち、タイヤ周方向に関して所定領域73の端部に最も近い打込み孔40である。すなわち、タイヤ周方向に形成される複数の打込み孔40のうち、所定領域73の一方の端部に最も近い打込み孔40と、所定領域73の他方の端部に最も近い打込み孔40とが、端打込み孔40Aである。1つの所定領域73に、端打込み孔40Aは2つ形成される。
【0143】
中間打込み孔40Bは、トレッド部3の所定領域73に形成される複数の打込み孔40のうち、端打込み孔40A以外の打込み孔40である。例えば、1つの所定領域73に32個の打込み孔40が形成される場合、32個の打込み孔40のうち、2個の打込み孔40が端打込み孔40Aであり、30個の打込み孔40が中間打込み孔40Bである。
【0144】
本実施形態において、複数(例えば30個)の中間打込み孔40Bの第1内径D41b、第2内径D42b、及び長さH40bは、同一である。
【0145】
以上説明したように、本実施形態によれば、トレッドゴム15に形成された打込み孔40の周囲においてクラックの発生が抑制されるので、クラックに起因して、打込み孔40によるスタッドピン30の保持力が低下すること、及びスタッドタイヤ1の外観が損なわれることが抑止される。したがって、スタッドタイヤ1の性能の低下が抑制される。
【0146】
本実施形態において、スタッドピン30は、ボディ部31及びボトムフランジ部32を有する。したがって、スタッドピン30が打込み孔40から脱落することが十分に抑制される。
【0147】
なお、上述の実施形態において、端モールドピン60Aは、セクターモールド51に設けられる複数のモールドピン60のうち、タイヤ周方向に関してセクターモールド51の端部に最も近いモールドピン60であることとした。内面53の端部から所定寸法(例えば5cm)の範囲の内面53に設けられているモールド―ピン60が、端モールドピン60Aでもよい。その場合、端モールドピ60Aは、1つのセクターモールド51について3つ以上設けられる可能性がある。
【0148】
なお、上述の実施形態において、端打込み孔40Aは、トレッド部3に設けられる複数の打込み孔40のうち、タイヤ周方向に関して境界部70に最も近い打込み孔40であることとした。境界部70から所定寸法(例えば5cm)の範囲に形成される打込み孔40が、端打込み孔40Aでもよい。その場合、端打込み孔40Aは、1つの所定領域73について3個以上形成される可能性がある。
【0149】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0150】
図11は、本実施形態に係るトレッド部3の一例を模式的に示す図である。
図11に示すように、トレッド部3は、タイヤ幅方向に関して赤道線CLの一方側の第1領域AR1と、他方側の第2領域AR2とを有する。打込み孔40は、第1領域AR1及び第2領域AR2のそれぞれに形成される。
【0151】
セクターモールド51は、第1領域AR1に打込み孔40を形成するための複数のモールドピン60と、第2領域AR2に打込み孔40を形成するための複数のモールドピン60とを有する。そのセクターモールド51によって、
図11に示す打込み孔40が形成される。
【0152】
第1領域AR1に形成された複数の打込み孔40のうち、タイヤ周方向に関して所定領域73の端部である境界部70に最も近い打込み孔40を端打込み孔40Aとし、第2領域AR2に形成された複数の打込み孔40のうち、タイヤ周方向に関して所定領域73の端部である境界部70に最も近い打込み孔40を端打込み孔40Aとしてもよい。
【0153】
図11に示す例では、所定領域73に打込み孔401、打込み孔402、及び打込み孔403が形成される。打込み孔401及び打込み孔402は、所定領域73の第1領域AR1に形成される。打込み孔403は、所定領域73の第2領域AR2に形成される。打込み孔401、打込み孔402、及び打込み孔403のうち、打込み孔401が境界部70に最も近く、打込み孔401に次いで打込み孔402が境界部70に近く、打込み孔403が境界部70から最も遠い。
【0154】
第1領域AR1においては、打込み孔401が境界部70に最も近いので、打込み孔401が端打込み孔40Aとなる。打込み孔403は、打込み孔402よりも境界部70から離れている。しかし、打込み孔403は、第2領域AR2に形成されている複数の打込み孔40のうち、境界部70に最も近い。したがって、打込み孔403も端打込み孔40Aとなる。打込み孔402は、中間打込み孔40Bとなる。
【0155】
打込み孔401(端打込み孔40A)は、第1領域AR1に打込み孔40を形成するための複数のモールドピン60のうち、タイヤ周方向に関してセクターモールド51の内面53の端部に最も近いモールドピン60(端モールドピン60A)によって形成される。打込み孔403(端打込み孔40A)は、第2領域AR2に打込み孔40を形成するための複数のモールドピン60のうち、タイヤ周方向に関してセクターモールド51の内面53の端部に最も近いモールドピン60(端モールドピン60A)によって形成される。
【0156】
以上説明したように、本実施形態においては、第1領域AR1及び第2領域AR2のそれぞれにおいてスタッドピン30が抜け落ちることが抑制される。そのため、スタッドタイヤ1の走行性能の低下が抑制される。
【0157】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態においては、モールドピン60が、端モールドピン60A及び中間モールドピン60Bの2種類のモールドピン60であることとした。これにより、モールドピン60の種類が抑制され、金型50を容易に製造することができ、金型50のコストの上昇を抑制することができる。なお、胴体部61の第1外径D61が異なる3種類以上のモールドピン60がセクターモールド51に設けられてもよい。タイヤ周方向に関して胴体部61の第1外径D61が異なる3種類以上のモールドピン60が配置される場合、内面53の中央部から端部に向かって第1外径D61が徐々に大きくなるように複数のモールドピン60が配置されてもよい。
【0158】
(実施例)
図12は、本実施形態に係るスタッドタイヤ1の評価試験の結果を示す図である。
図12は、スタッドタイヤ1に形成された複数の打込み孔40のうち、クラックが発生した打込み孔40の数(クラック数)を調査した評価試験の結果を示す。
【0159】
金型50を用いて、タイヤサイズが205/55R16のタイヤ1Bを加硫成形した後、金型50のセクターモールド51をタイヤ1Bから離すように移動して打込み孔40からモールドピン60を抜いたときに、クラックが発生した打込み孔40の数をカウントした。なお、加硫成形したタイヤ1Bの数は20本である。1つのタイヤ1Bについて120個の打込み孔40が形成される。1つのタイヤ1Bについて境界部70に近い打込み孔40の数は32個である。したがって、境界部70に近い打込み孔40の数は全部で640個(32個×20本)である。
【0160】
図12に示す例において、従来例とは、セクターモールド51に設けられる複数のモールドピン60の寸法が全て同一である例である。実施例1、実施例2、及び実施例3は、セクターモールド51に設けられるモールドピン60が、端モールドピン60Aと中間モールドピン60Bとを含む例である。実施例1は、端モールドピン60Aの第1外径D61aが中間モールドピン60Bの第1外径D61bよりも0.3mm大きい例である。実施例2は、実施例1の条件に加えて、端モールドピン60Aの第2外径D62aが中間モールドピン60Bの第2外径D62bよりも0.5mm小さい例である。実施例3は、実施例2の条件に加えて、端モールドピン60Aの長さH60aが中間モールドピン60Bの長さH60bよりも0.2mm小さい例である。
【0161】
図12に示すように、従来例においては、640個の打込み孔40のうち30個の打込み孔40の周囲にクラックが発生することが確認できた。実施例1においては、640個の打込み孔40のうち10個の打込み孔40の周囲にクラックが発生することが確認できた。実施例2においては、640個の打込み孔40のうち7個の打込み孔40の周囲にクラックが発生することが確認できた。実施例3においては、640個の打込み孔40のうち3個の打込み孔40の周囲にクラックが発生することが確認できた。
【0162】
このように、セクターモールド51が端モールドピン60Aと中間モールドピン60Bとを有することにより、クラックの発生を抑制できることが確認できた。