【実施例】
【0049】
以下では、
図4、5の表を参照しつつ、上述した緑化システムの実施例および比較例を示して、緑化システム1の各特性について説明する。
【0050】
図4、5の表には、第1保水層23におけるロックウールシートの「乾燥時密度(kg/m
3)」および「高さ(mm)」、第2保水層24におけるロックウールシート「1層の乾燥時密度(kg/m
3)」、「積層数」および「高さ(mm)」(各ロックウールシートの高さの合計)、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比、灌水管40の「灌水管間隔(m)」、植栽25における「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」、第2保水層24の「積層加工性」および灌水管40の「灌水管施工性」を評価した結果が示されている。
【0051】
ここで、「植物の育成」は、保水性および排水性に関係する特性であり、植物が良く育つことは、良好な保水性および排水性を有することを意味する。
図4、5の表において、植物の育成が「◎」とは、植物が3ヶ月間枯れずに生長し続けることを意味し、植物の育成が「○」とは、植物は3ヶ月間枯れないが大きさが変化しない(生長しない)ことを意味し、植物の育成が「×」とは、植物は3ヶ月以内に枯れてしまったことを意味する。
【0052】
「踏圧耐久性」は、緑化システムの積層方向(Z方向)における強度に関する特性であり、踏圧が負荷されたときに窪みが生じない緑化システムは踏圧耐久性が高いことを意味する。
図4、5の表において、踏圧耐久性が「○」とは、緑化システム上を平均的な成人男性が歩行しても窪みを生じないことを意味し、踏圧耐久性が「×」とは、緑化システム上を平均的な成人男性が歩行した場合には、窪みが生じるおそれがあることを意味する。
【0053】
「穴部加工性」とは、穴部24aを形成する際の加工のしやすさに関する特性であり、
図4、5の表において、穴部加工性が「○」とは素手で穴が空けられることを意味し、穴部加工性が「×」とは素手では穴が空けられないことを意味する。
【0054】
「積層加工性」とは、第2保水層24の形成する際の加工のしやすさに関する特性であり、
図4、5の表において、積層加工性が「○」とは、第2保水層24を構成するロックウールシートをロール状にすることができ、ロール状のロックウールシートを展開することで積層可能であることを意味し、積層加工性が「×」とは、第2保水層24を構成するロックウールシートをロール状にすることができず、硬いマット状のロックウールのシートを積層する必要があることを意味する。
【0055】
「灌水管施工性」とは、灌水管40を設置する際の施工のしやすさに関する特性であり、
図4、5の表において、灌水管施工性が「○」とは、施工の手間が少ないことを意味し、灌水管施工性が「△」とは、施工の手間が多いことを意味する。
(実施例1)
【0056】
実施例1では、乾燥時密度180kg/m
3、かつ、高さ40mmのロックウールシートで形成される第1保水層23と、乾燥時密度70kg/m
3、高さ25mmのロックウールシート2層で形成される、高さ50mmの第2保水層24を用いた。すなわち、実施例1では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は1.25である。第2保水層24に直径7cmで、第2保水層24を貫通し、第1保水層23には及ばない円柱状の穴部を設け、土壌に植え付けられたオタフクナンテンを収容した。
【0057】
また、灌水管40の灌水管間隔は2mとした。さらに、実施例1では、導水層22における不織布の目付を180g/m
2とし、排水層21における凸部高さHが4.5mm、凸部間隔Pが2mmとした。
【0058】
実施例1に係る緑化システムにおいては、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」、「積層加工性」および「灌水管施工性」の全てにおいて良好な結果が得られた。なお、実施例1では、植物の育成の特性が、特に優れていた。
【0059】
このように実施例1に係る緑化システムは、高い施工性および高い保水性を有する。
(実施例2)
【0060】
実施例2では、乾燥時密度100kg/m
3、かつ、高さ40mmのロックウールシートで形成される第1保水層23と、乾燥時密度45kg/m
3、高さ35mmのロックウールシート2層で形成される、高さ70mmの第2保水層24を用いた。すなわち、実施例2では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は1.75である。
【0061】
実施例2は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。
【0062】
実施例2に係る緑化システムにおいても、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」、「積層加工性」および「灌水管施工性」の全てにおいて良好な結果が得られた。なお、実施例2でも、植物の育成の特性が、特に優れていた。
【0063】
このように実施例2に係る緑化システムも、高い施工性および高い保水性を有する。
(実施例3)
【0064】
実施例3では、乾燥時密度70kg/m
3、高さ25mmのロックウールシート3層で形成される、高さ75mmの第2保水層24を用いた。
【0065】
実施例3は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、実施例3では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は1.875である。
【0066】
実施例3に係る緑化システムにおいても、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」、「積層加工性」および「灌水管施工性」の全てにおいて良好な結果が得られた。なお、実施例3でも、植物の育成の特性が、特に優れていた。
【0067】
このように実施例3に係る緑化システムも、高い施工性および高い保水性を有する。
(実施例4)
【0068】
実施例4では、乾燥時密度70kg/m
3、高さ25mmのロックウールシート3層で形成される、高さ100mmの第2保水層24を用いた。また、実施例4では、灌水管40の灌水管間隔を0.5mとした。
【0069】
実施例4は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、実施例4では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は2.25である。
【0070】
実施例4に係る緑化システムにおいては、灌水管間隔が狭くなって設置すべき灌水管の数が増えた分だけ、灌水管40の設置に要する手間が増えるものの、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」および「積層加工性」のいずれにおいても良好な結果が得られた。なお、実施例4でも、植物の育成の特性が、特に優れていた。
【0071】
このように実施例4に係る緑化システムも、高い施工性および高い保水性を有する。
(実施例5)
【0072】
実施例5では、灌水管40の灌水管間隔を2mとした点のみ実施例4と異なり、その他は実施例4と同じである。
【0073】
実施例5に係る緑化システムにおいては、灌水管間隔を実施例4より広くしたことで、灌水管施工性は改善され、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」および「積層加工性」のいずれにおいても良好な結果が得られた。
【0074】
このように実施例5に係る緑化システムも、高い施工性および高い保水性を有する。
【0075】
(実施例6)
実施例6では、乾燥時密度45kg/m
3、高さ35mmのロックウールシート1層で形成される、高さ35mmの第2保水層24を用いた。
【0076】
実施例6は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、実施例6では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は0.875である。
【0077】
実施例6に係る緑化システムにおいても、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」、「積層加工性」および「灌水管施工性」の全てにおいて良好な結果が得られた。
【0078】
このように実施例6に係る緑化システムも、高い施工性および高い保水性を有する。
(比較例1)
【0079】
比較例1では、乾燥時密度70kg/m
3、かつ、高さ25mmのロックウールシートで形成される第1保水層23を用いた。
【0080】
比較例1は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、比較例1では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は2である。
【0081】
比較例1に係る緑化システムにおいては、十分な「踏圧耐久性」得られなかった。これは、第1保水層23のロックウールシートの乾燥時密度が低く、ロックウールシートを構成する鉱物繊維が密でないために、第1保水層23において十分な硬度が得られなかったためである。
(比較例2)
【0082】
比較例2では、乾燥時密度100kg/m
3、高さ40mmのロックウールシート2層で形成される、高さ80mmの第2保水層24を用いた。
【0083】
比較例2は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、比較例2では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は2である。
【0084】
比較例2に係る緑化システムにおいては、十分な「穴部加工性」および「積層加工性」の特性が得られなかった。これは、第2保水層24のロックウールシートを構成する鉱物繊維が密になり過ぎて、素手で穴を空けることができなくなったため、および、第2保水層24が重くなったことで持ち運びやロール展開の作業が大変になったためである。
(比較例3)
【0085】
比較例3では、乾燥時密度20kg/m
3、高さ25mmのロックウールシート2層で形成される、高さ50mmの第2保水層24を用いた点のみ実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。
【0086】
比較例3に係る緑化システムにおいては、植栽25の植物が3カ月以内に枯れてしまった。これは、第2保水層24のロックウールシートの乾燥時密度が低く、植物の育成に十分な量の水を保水できなかったためである。
(比較例4)
【0087】
比較例4では、乾燥時密度180kg/m
3、高さ80mmのロックウールシートで形成される第1保水層23を用いた。
【0088】
比較例4は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、比較例4では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は0.625である。
【0089】
比較例5に係る緑化システムにおいては、植栽25の植物が3カ月以内に枯れてしまった。これは、第1保水層23の高さが高すぎて、十分な排水性を得ることができなくなったためである。
(比較例5)
【0090】
比較例5では、乾燥時密度45kg/m
3、高さ35mmのロックウールシート3層で形成される、高さ105mmの第2保水層24を用いた。
【0091】
比較例5は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、比較例5では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は2.625である。
【0092】
比較例5に係る緑化システムにおいては、植栽25の植物が3カ月以内に枯れてしまった。これは、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比が高すぎて、灌水管40から給水される水が、第2保水層24のロックウールの上面まで達しづらくなったためである。
(比較例6)
【0093】
比較例6では、第2保水層24の代わりに土壌層を用い、その土壌層に植栽が植えた。 比較例6は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。
【0094】
比較例6に係る緑化システムにおいては、第2保水層24の代わり用いた土壌層の土壌が飛散したため、緑化システムを設置する際の施工性が全般的に低下し、「積層加工性」も低下した。
【0095】
以上で説明したように、実施例1〜6のように、第1保水層23が100〜190kg/m
3の乾燥時密度を有するロックウールシートで構成されており、第2保水層24が、30〜90kg/m
3の乾燥時密度を有するロックウールシートで構成されており、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比が、0.75〜2.50の範囲内であるため、高い施工性および高い保水性を有する緑化システムが実現される。
【0096】
一方、上述の条件を一部満たさない比較例1〜6はいずれも、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」、「積層加工性」および「灌水管施工性」のうちの少なくとも1つを満足しないため、緑化システムとしての機能が不十分である。