特許第6052382号(P6052382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6052382
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】緑化システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 1/00 20060101AFI20161219BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20161219BHJP
   A01G 25/06 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   A01G1/00 301C
   A01G1/00 303A
   A01G7/00 602B
   A01G7/00 602C
   A01G25/06 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-253565(P2015-253565)
(22)【出願日】2015年12月25日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】荒木 睦
(72)【発明者】
【氏名】上村 翔
【審査官】 本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−207132(JP,A)
【文献】 特開2015−122983(JP,A)
【文献】 特開2015−057047(JP,A)
【文献】 特開2001−275480(JP,A)
【文献】 特開2005−137368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 1/00;7/00;25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の上面に設置される緑化システムであって、
前記構造物の上面に、排水層、導水層、第1保水層、第2保水層がこの順で積層された積層体と、
前記積層体の前記第2保水層に設けられ前記第2保水層の上面に向けて開口する穴部に収容された植栽と、
前記積層体の少なくとも前記第2保水層に給水可能な態様で、前記第1保水層と前記第2保水層との間又は第2保水層に設けられ、前記積層体の積層方向に直交する方向に延びる1本または複数本の灌水管とを備え、
前記排水層が、防根・遮水性シートで構成されており、
前記導水層が、不織布で構成されており、
前記第1保水層が100〜190kg/mの乾燥時密度を有するロックウールシートで構成されており、
前記第2保水層が、30〜90kg/mの乾燥時密度を有する少なくとも1層のロックウールシートで構成されており、
前記第1保水層の高さに対する前記第2保水層の高さの比が、0.75〜2.50の範囲内である、緑化システム。
【請求項2】
前記第2保水層が、積層された複数枚のロックウールシートで構成されている、請求項1に記載の緑化システム。
【請求項3】
前記第1保水層の高さが20〜80mmであり、前記第2保水層の高さが40〜120mmである、請求項1又は2に記載の緑化システム。
【請求項4】
前記灌水管が1本の場合は前記第1保水層及び第2保水層の一側端部との距離が1.5〜6mであり、前記灌水管が複数本の場合は隣り合う前記灌水管の間隔が1.5〜6mである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の緑化システム。
【請求項5】
前記排水層を構成する防根・遮水性シートが、前記積層体の積層方向に沿って上方に突出し、かつ、1〜5mmの間隔で規則的に並ぶ高さ3〜13mmの複数の中空錐台状の凸部を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の緑化システム。
【請求項6】
前記不織布が100〜300g/mの目付を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の緑化システム。
【請求項7】
前記植栽が培地に植え付けられた低木である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の緑化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、意匠性の高い緑化を実現するために、低木や草木を含む多種の植物を用いた緑化システムが求められている。特に、低木を育成する緑化システムの場合には、通常、多量の土壌が必要となる。このような土壌として、人工軽量土壌が用いられることも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5594424号公報
【特許文献2】特開2001−45861号公報
【特許文献3】特開2005−137368号公報
【特許文献4】特開2005−270020号公報
【特許文献5】特開平6−125664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の土壌は、乾燥時重量が軽いロックウール等の材料に比べて重く、また、飛散しやすいため、土壌を用いた緑化システムは、土壌を用いない緑化システムに比べて、施工性が悪くなってしまう。
【0005】
加えて、土壌を用いて重くなった緑化システムを、たとえば構造物の屋根や屋上に設置する場合には、構造物自体の強度(耐荷重等)を増す必要がある。この場合、柱を太くする等の対策が考えられるが、建築物等の利用可能スペースが減少したり、建築物等の建設コストが増大したりする不具合が起こり得る。
【0006】
土壌を用いる緑化システムは、土壌の層を薄層化することで、上記の不具合が解消または改善されるものの、緑化システムとして十分な保水性を確保できなくなり、灌水が停止したときの植物育成に問題が生じるおそれがある。
【0007】
発明者らは、鋭意研究の末、施工性および保水性に優れた緑化システムを新たに見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、高い施工性および高い保水性を有する緑化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る緑化システムは、構造物の上面に設置される緑化システムであって、構造物の上面に、排水層、導水層、第1保水層、第2保水層がこの順で積層された積層体と、積層体の第2保水層に設けられ第2保水層の上面に向けて開口する穴部に収容された植栽と、積層体の少なくとも第2保水層に給水可能な態様で、第1保水層と第2保水層との間又は第2保水層に設けられ、積層体の積層方向に直交する方向に延びる1本または複数本の灌水管とを備え、排水層が、防根・遮水性シートで構成されており、導水層が、不織布で構成されており、第1保水層が100〜190kg/mの乾燥時密度を有するロックウールシートで構成されており、第2保水層が、30〜90kg/mの乾燥時密度を有する少なくとも1層のロックウールシートで構成されており、第1保水層の高さに対する第2保水層の高さの比が、0.75〜2.50の範囲内である。
【0010】
上記緑化システムにおいては、土壌の層を用いず、その代わりにロックウールシートを用いて構成されている。すなわち、第1保水層として、乾燥時密度が100〜190kg/mのロックウールシートが用いられ、第2保水層として、乾燥時密度が30〜90kg/mのロックウールシートが用いられている。このような緑化システムにおいては、第1保水層および第2保水層の各ロックウールシートが保水することで、十分な保水性を確保することができる。その上、ロックウールシートの採用により、上記緑化システムにおいては、軽量化が図られており、かつ、土壌飛散の問題も生じないため、高い施工性が得られる。
【0011】
また、第2保水層が、積層された複数枚のロックウールシートで構成されている態様であってもよい。この場合、ロックウールシートの枚数を調整することで、第2保水層の高さを、植物の種類等に応じて容易に調整することができる。
【0012】
また、第1保水層の高さが20〜80mmであり、第2保水層の高さが40〜120mmである態様であってもよい。
【0013】
また、灌水管が1本の場合は第1保水層及び第2保水層の一側端部との距離が1.5〜6mであり、灌水管が複数本の場合は隣り合う灌水管の間隔が1.5〜6mである態様であってもよい。
【0014】
また、排水層を構成する防根・遮水性シートが、積層体の積層方向に沿って上方に突出し、かつ、1〜5mmの間隔で規則的に並ぶ高さ3〜13mmの複数の中空錐台状の凸部を有する態様であってもよい。
【0015】
また、不織布が100〜300g/mの目付を有する態様であってもよい。
【0016】
また、植栽が培地に植え付けられた低木である態様であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い施工性および高い保水性を有する緑化システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る緑化システムの構成を示す図である。
図2図2は、図1のII−II線断面図である。
図3図3は、排水層および導水層を示した部分破断図である。
図4図4は、実施例に係る各緑化システムの特性を示した表である。
図5図5は、比較例に係る各緑化システムの特性を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0020】
図1および図2に示すように、実施形態に係る緑化システム1は、構造物の上面10上に設置されている。本明細書における「構造物」には、人の居住を目的とした建築物や建造物と、人の居住を目的としない塔や橋梁等の構築物も含まれる。構造物の上面10は、たとえば屋上である。ただし、構造物の上面10は、屋上に限らず、建築物のベランダやテラス、道路や駐車場などであってもよい。
【0021】
本実施形態では、構造物の上面10は、水が流れるように付けた勾配(水勾配)を有しており、その水勾配は、7%以下、たとえば1〜2%の範囲である。
【0022】
以下の説明では、構造物の上面10の法線方向をZ方向、構造物の上面10に対して平行な方向であって水勾配の方向(水勾配方向)をX方向、構造物の上面10に対して平行な方向であってX方向に直交する方向をY方向と称する。
【0023】
緑化システム1は、積層体20と、積層体20の周囲を囲む枠部材30と、積層体20の内部に配設された灌水管40とを備えている。
【0024】
積層体20は、排水層21、導水層22、第1保水層23および第2保水層24が積層された積層構造を有している。詳しくは、構造物の上面10に、排水層21、導水層22、第1保水層23、第2保水層24が、この順で構造物の上面10の法線方向(Z方向)に沿って積層されて、積層体20が構成されている。すなわち、排水層21は構造物の上面10に積層され、導水層22は排水層21の上面に積層され、第1保水層23は導水層22の上面に積層され、第2保水層24は第1保水層23の上面に積層されている。
【0025】
排水層21は、防根・遮水性シートで構成されており、図3に示すような凹凸形状を有している。すなわち、排水層21は、薄膜状のシート部26と、その上面に突設された複数の凸部27とを有するシートで構成されている。シート材料としては、合成樹脂(たとえばポリプロピレン)がコストや入手容易性の面から好適である。上記凹凸形状は、たとえば薄膜シートをプレス加工することによって得られる。
【0026】
排水層21は、積層体20の余剰水分を水勾配方向に排出する排水機能を備え、導水層22から落ちてきた水分は凸部27の間を通って水勾配方向に沿って流れる。また、排水層21は、構造物の上面10への根および水の浸入を防ぐ防根・遮水機能をも備える。
【0027】
各凸部27は、Z方向(積層体20の積層方向)に沿って上側に延びる中空錐台形状を有しており、同一形状および同一寸法となるように設計されている。より詳しくは、各凸部27は、Z方向に直交する断面形状が環状である中空円錐台形状を有している。ただし、凸部27は、中空円錐台形状に限らず、中空の角錐台形状(たとえば、中空四角錐台形状)等であってもよい。凸部27の寸法に関し、図3中の符号Hは凸部の高さ、符号D1は凸部の下底直径、符号D2は凸部の上底直径を示している。高さHに関しては、3〜13mmの範囲に設計される。また、下底直径D1は3〜16mmの範囲に設計され、上底直径D2は2〜4mmの範囲に設計される。
【0028】
複数の凸部27は、図3に示すように規則的に並んでいる。たとえば、等間隔Pで並ぶ凸部27の列と、その隣の等間隔Pで並ぶ凸部27の列とを、1/2Pだけずらしたような規則配置とすることができる。隣り合う凸部27の間隔P(シート部26の上面における間隔)は、1〜5mmの範囲に設計される。
【0029】
なお、排水層21は、シート部26において、図示しない釘などの留め付け具により構造物の上面10に固定され得る。シート部26の厚さは、たとえば0.1〜1.0mmの範囲に設計される。排水層21は、敷設面積が大きい等の必要に応じて、複数のシートを継ぎ足して形成することができる。
【0030】
導水層22は、不織布によって構成されており、排水層21の上側において上述した複数の凸部27によって支持される。導水層22の不織布としては、水分や植物の根は通すが土壌の土粒子は通さず、厚さ0.5〜5.0mm、目付100〜300g/mの範囲の不織布が採用される。不織布の材料としては、合成樹脂(たとえばポリエチレン)がコストや入手容易性の面から好適である。導水層22の不織布についても、敷設面積が大きい等の必要に応じて、複数の不織布を継ぎ足して形成することができる。
【0031】
第1保水層23は、培地として機能するロックウールシートで構成されている。ロックウールシートは、鉱物繊維が不規則に絡み合うことによって構成され、繊維間の空隙に多量の水分を保持することができ、そのため、第1保水層23は、後述の植栽25に対して水分を補給することができる。
【0032】
第1保水層23のロックウールシートは、硬い矩形マット状を有し、複数のロックウールシートを隙間なく敷設することにより第1保水層23が形成されている。
【0033】
第1保水層23は、たとえば、10〜90mmの範囲の高さを有し、重量、および、保水機能および排水機能の両立の観点から、好ましくは、20〜80mmの範囲の高さを有し、より好ましくは25〜45mmの範囲の高さを有する。なお、第1保水層23の高さ、すなわち第1保水層23を形成するロックウールシートの高さは、ロックウールシートを、100℃の温度条件下で24時間乾燥させた後の高さを意味する。また、第1保水層23のロックウールシートは、比較的高い100〜190kg/mの範囲の乾燥時密度(高乾燥時密度)を有する。なお、乾燥時密度とは、ロックウールシートを、100℃の温度条件下で24時間乾燥させた後の密度である。ロックウールシートの乾燥時密度や寸法が変わると、それに応じて第1保水層23の保水力、重量、強度が変わり、ロックウールは乾燥時密度が高いほど硬くなる。第1保水層23は、複数枚のロックウールシートを積層して構成することもできるが、施工性の観点から、1枚のロックウールシートで構成することが好ましい。
【0034】
第2保水層24は、複数のロックウールシートを隙間なく敷設することにより形成されている。第2保水層24のロックウールシートは、矩形シート状を有し、第1保水層23のロックウールシートよりも柔らかい。第2保水層24は、複数枚のロックウールシートを積層して構成することができ、本実施形態では3枚のロックウールシートにより構成されている。第2保水層24は、たとえば、第1保水層23の上面に、ロール状に巻かれたロックウールシートを展開し、展開されたロックウールシートの上面にロール状に巻かれたロックウールシートを展開していくことで敷設される。このように複数枚のロックウールシートを積層して第2保水層24を構成することで、ロックウールシートの枚数を調整して第2保水層24の高さを容易に調整することができ、植物の種類等に応じて容易に第2保水層24の高さ調整することができる。なお、第2保水層24も、第1保水層23同様、施工性の観点から、1枚のロックウールシートで構成することもできる。ただし、第2保水層24を構成するロックウールシートの運搬容易性とロックウールシートを展開して敷設する際の作業性(作業回数)との両立の観点からは、第2保水層24は、2〜3枚のロックウールシートで形成されることが好ましい。
【0035】
第2保水層24は、たとえば、25〜150mmの範囲の高さを有し、重量、および、保水機能および排水機能の両立の観点から、好ましくは40〜120mmの範囲の高さを有し、より好ましくは50〜100mmの範囲の高さを有する。なお、第2保水層24の高さ、すなわち第2保水層24を構成するそれぞれのロックウールシートの高さの和は、各ロックウールシートを、100℃の温度条件下で24時間乾燥させた後の高さを足し合わせたものを意味する。第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は、0.75〜2.50の範囲内となるように設計され、好ましくは0.85〜2.00の範囲内となるように設計され、植物の育成と施工性の両立の観点からは、0.90〜1.95の範囲内となるように設計されることがより好ましく、1.10〜1.90の範囲内となるように設計されることがさらに好ましい。また、第2保水層24のロックウールシートは、比較的低い30〜90kg/mの範囲の乾燥時密度(低乾燥時密度)を有し、好ましくは、40〜80kg/mの範囲の乾燥時密度を有する。
【0036】
第2保水層24が、積層された複数枚のロックウールシートで構成される場合、ロックウールシートの運搬容易性とロックウールシートを展開して敷設する際の作業性との両立の観点から、1枚のロックウールシートの高さ(100℃の温度条件下で24時間乾燥させた後の高さ)は、20〜40mmであることが好ましく、25〜35mmであることがより好ましい。なお、第2保水層24を構成する複数枚のロックウールシートは、同一の高さを有していても、それぞれ異なる範囲の高さを有していてもよい。また、第2保水層24を構成する複数枚のロックウールシートは、前述した範囲の乾燥時密度(低乾燥時密度)であれば、同一の乾燥時密度を有していても、それぞれ異なる範囲の乾燥時密度を有していてもよい。
【0037】
第2保水層24の面積は、第1保水層23の面積と略同一となるように設計される。より具体的には、第2保水層24の面積は、第1保水層23の面積を100とした場合に、95〜105の範囲内である。
【0038】
そして、第2保水層24には、複数の穴部24aが設けられている。各穴部24aは、第2保水層24の上面に向けて開口しており、積層方向に直交する断面は円形断面である。穴部24aは、たとえば2〜20cmの範囲の深さを有し、より好ましくは、4〜12cmの深さを有し、さらに好ましくは、5〜10cmの深さを有する。穴部24aの深さを第2保水層24の高さより浅く設計し、第2保水層24を貫通しない穴部24aとすることも、第2保水層24の高さより深く設計し、第2保水層24を貫通して第1保水層23に及ぶ穴部24aとすることもできるが、植物の育成及び穴を設ける際の加工性の観点から、穴部24aの深さを、第2保水層24の高さと同一に設計し、穴部24aが第2保水層24を貫通し、第1保水層23には及ばないようにすることが好ましい。また、穴部24aの円形断面は、たとえば3〜20cmの範囲の直径を有し、より好ましくは、5〜15cmの直径を有する。なお、穴部24aの断面は、上述した円形断面に限らず、たとえば楕円形断面や多角形断面等であってもよい。
【0039】
第2保水層24の穴部24aは、作業性の観点から、素手で空けることが好ましいが、適宜穴を形成するための器具を用いてもよい。
【0040】
上述した第2保水層24の各穴部24aには、植栽25が収容される。本実施形態における植栽は、培地25aに植え付けられた低木であり、その培地25aが第2保水層24の穴部24a内に収容されている。ここで、本明細書における「低木」とは、高さが30〜100cm(好ましくは、40〜70cm)の樹木のことを指し、たとえば、クルメツツジ、オタフクナンテン、アジサイ等である。培地25aは、通水可能な容器に収容された状態で穴部24aに収容されてもよい。培地25aとしては、ロックウールや人工軽量土壌等の土壌を採用し得る。なお、植栽25は、培地25aに植えられた植物でなくてもよく、植物単体であってもよい。なお、植栽25は、上述した低木に限らず、たとえば、ヘデラへリックスなどのツル・ツタ類やヤブラン、ツワブキなどの草本類とすることもできる。
【0041】
枠部材30は、積層体20の全周を囲む部材(いわゆる見切り材)であり、四角形状に形成された積層体20の四辺に沿うように設けられる。枠部材30は、複数の枠部品を繋ぎ合わせて構成することができ、この場合には、部品同士を繋ぎ合わせるためのコーナーキャップ38やジョイント39が用いられる。積層体20の周囲を囲む枠部材30により、積層体20の位置がずれる事態を抑制したり、風などによって浮き上がる事態を抑制したりすることができる。
【0042】
上述した緑化システム1は、さらに複数の灌水管40を備えている。灌水管40は、たとえば、直径が8〜20mmの範囲のパイプである。灌水管40は、図示しない給水タンクまたは水栓から延びており、降雨量が少ないとき等、植栽に必要な水分が不足するときに、第1保水層23および第2保水層24に水を供給する。
【0043】
複数の灌水管40は、図1に示すように、水勾配方向(X方向)に延びる灌水管と、水勾配方向に対して直交する方向(Y方向)に延びる灌水管とを備えており、互いに直交する箇所では水が流通するように連結されている。
【0044】
各灌水管40は、図2に示すように、第1保水層23と第2保水層24とで挟まれるようにして第1保水層23と第2保水層24との間に配置されている。各灌水管40の周面には、図示しない給水口が設けられており、その給水口を介して、灌水管40から第1保水層23および第2保水層24に対して給水がおこなわれる。なお、灌水管40は図2に一点鎖線で示すように、複数枚のロックウールシートにより形成される第2保水層24のロックウールシート間に配置し、第2保水層24に対して重点的に給水をおこなうようにすることもできる。この場合、第1保水層23および第2保水層24にバランスよく給水するという観点から、灌水管40は、第1保水層23の直上に積層される第1のロックウールシートと、第1のロックウールシートの直上に積層される第2のロックウールシートとの間に配置されることが好ましい。
【0045】
灌水管40は、必要に応じて、第1保水層23の上面や第2保水層24の下面にV溝を設けてそのV溝内に配置したり、第2保水層24を構成するロックウールシートの内部に灌水管40の延在方向に沿う貫通孔を設け、その貫通孔内に灌水管40を挿通させたりする態様にすることもできる。
【0046】
図1に示す態様では、Y方向に平行に延びる2本の灌水管40は、その間隔が0.5〜6mの範囲に設計されている。なお、X方向に延びる灌水管40のように、同方向に延びる灌水管が存在しない場合には、灌水管同士の間隔ではなく、灌水管40と平行に延在する積層体20の側端部との距離を、0.5〜6mの範囲に設計する。なお、Y方向に平行に延びる2本の灌水管40の間隔、又は、灌水管40と平行に延在する積層体20の側端部との距離は、植物の育成と灌水管施工の効率性との両立の観点から、1.5〜6.0mであることが好ましい。
【0047】
上述した緑化システム1は、植栽25以外の植物(雑草等)の繁茂を抑制するために、第2保水層24の上に、図2に示したようなマルチング材50(たとえば、砂利、バークチップ等)を配置することが好ましい。マルチング材50の代わりに、合成樹脂シート(ポリエステル製織布、ポリエステル製不織布等)も採用され得るが、景観向上の観点からは、マルチング材50を配置することが好ましい。
【0048】
以上で説明した緑化システム1は、第1保水層23および第2保水層24の各ロックウールシートが保水することで、十分な保水性が確保されている。その上、ロックウールシートの採用により、緑化システム1においては、軽量化が図られており、かつ、土壌飛散の問題も生じないため、高い施工性を有している。
【実施例】
【0049】
以下では、図4、5の表を参照しつつ、上述した緑化システムの実施例および比較例を示して、緑化システム1の各特性について説明する。
【0050】
図4、5の表には、第1保水層23におけるロックウールシートの「乾燥時密度(kg/m)」および「高さ(mm)」、第2保水層24におけるロックウールシート「1層の乾燥時密度(kg/m)」、「積層数」および「高さ(mm)」(各ロックウールシートの高さの合計)、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比、灌水管40の「灌水管間隔(m)」、植栽25における「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」、第2保水層24の「積層加工性」および灌水管40の「灌水管施工性」を評価した結果が示されている。
【0051】
ここで、「植物の育成」は、保水性および排水性に関係する特性であり、植物が良く育つことは、良好な保水性および排水性を有することを意味する。図4、5の表において、植物の育成が「◎」とは、植物が3ヶ月間枯れずに生長し続けることを意味し、植物の育成が「○」とは、植物は3ヶ月間枯れないが大きさが変化しない(生長しない)ことを意味し、植物の育成が「×」とは、植物は3ヶ月以内に枯れてしまったことを意味する。
【0052】
「踏圧耐久性」は、緑化システムの積層方向(Z方向)における強度に関する特性であり、踏圧が負荷されたときに窪みが生じない緑化システムは踏圧耐久性が高いことを意味する。図4、5の表において、踏圧耐久性が「○」とは、緑化システム上を平均的な成人男性が歩行しても窪みを生じないことを意味し、踏圧耐久性が「×」とは、緑化システム上を平均的な成人男性が歩行した場合には、窪みが生じるおそれがあることを意味する。
【0053】
「穴部加工性」とは、穴部24aを形成する際の加工のしやすさに関する特性であり、図4、5の表において、穴部加工性が「○」とは素手で穴が空けられることを意味し、穴部加工性が「×」とは素手では穴が空けられないことを意味する。
【0054】
「積層加工性」とは、第2保水層24の形成する際の加工のしやすさに関する特性であり、図4、5の表において、積層加工性が「○」とは、第2保水層24を構成するロックウールシートをロール状にすることができ、ロール状のロックウールシートを展開することで積層可能であることを意味し、積層加工性が「×」とは、第2保水層24を構成するロックウールシートをロール状にすることができず、硬いマット状のロックウールのシートを積層する必要があることを意味する。
【0055】
「灌水管施工性」とは、灌水管40を設置する際の施工のしやすさに関する特性であり、図4、5の表において、灌水管施工性が「○」とは、施工の手間が少ないことを意味し、灌水管施工性が「△」とは、施工の手間が多いことを意味する。
(実施例1)
【0056】
実施例1では、乾燥時密度180kg/m、かつ、高さ40mmのロックウールシートで形成される第1保水層23と、乾燥時密度70kg/m、高さ25mmのロックウールシート2層で形成される、高さ50mmの第2保水層24を用いた。すなわち、実施例1では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は1.25である。第2保水層24に直径7cmで、第2保水層24を貫通し、第1保水層23には及ばない円柱状の穴部を設け、土壌に植え付けられたオタフクナンテンを収容した。
【0057】
また、灌水管40の灌水管間隔は2mとした。さらに、実施例1では、導水層22における不織布の目付を180g/mとし、排水層21における凸部高さHが4.5mm、凸部間隔Pが2mmとした。
【0058】
実施例1に係る緑化システムにおいては、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」、「積層加工性」および「灌水管施工性」の全てにおいて良好な結果が得られた。なお、実施例1では、植物の育成の特性が、特に優れていた。
【0059】
このように実施例1に係る緑化システムは、高い施工性および高い保水性を有する。
(実施例2)
【0060】
実施例2では、乾燥時密度100kg/m、かつ、高さ40mmのロックウールシートで形成される第1保水層23と、乾燥時密度45kg/m、高さ35mmのロックウールシート2層で形成される、高さ70mmの第2保水層24を用いた。すなわち、実施例2では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は1.75である。
【0061】
実施例2は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。
【0062】
実施例2に係る緑化システムにおいても、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」、「積層加工性」および「灌水管施工性」の全てにおいて良好な結果が得られた。なお、実施例2でも、植物の育成の特性が、特に優れていた。
【0063】
このように実施例2に係る緑化システムも、高い施工性および高い保水性を有する。
(実施例3)
【0064】
実施例3では、乾燥時密度70kg/m、高さ25mmのロックウールシート3層で形成される、高さ75mmの第2保水層24を用いた。
【0065】
実施例3は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、実施例3では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は1.875である。
【0066】
実施例3に係る緑化システムにおいても、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」、「積層加工性」および「灌水管施工性」の全てにおいて良好な結果が得られた。なお、実施例3でも、植物の育成の特性が、特に優れていた。
【0067】
このように実施例3に係る緑化システムも、高い施工性および高い保水性を有する。
(実施例4)
【0068】
実施例4では、乾燥時密度70kg/m、高さ25mmのロックウールシート3層で形成される、高さ100mmの第2保水層24を用いた。また、実施例4では、灌水管40の灌水管間隔を0.5mとした。
【0069】
実施例4は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、実施例4では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は2.25である。
【0070】
実施例4に係る緑化システムにおいては、灌水管間隔が狭くなって設置すべき灌水管の数が増えた分だけ、灌水管40の設置に要する手間が増えるものの、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」および「積層加工性」のいずれにおいても良好な結果が得られた。なお、実施例4でも、植物の育成の特性が、特に優れていた。
【0071】
このように実施例4に係る緑化システムも、高い施工性および高い保水性を有する。
(実施例5)
【0072】
実施例5では、灌水管40の灌水管間隔を2mとした点のみ実施例4と異なり、その他は実施例4と同じである。
【0073】
実施例5に係る緑化システムにおいては、灌水管間隔を実施例4より広くしたことで、灌水管施工性は改善され、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」および「積層加工性」のいずれにおいても良好な結果が得られた。
【0074】
このように実施例5に係る緑化システムも、高い施工性および高い保水性を有する。
【0075】
(実施例6)
実施例6では、乾燥時密度45kg/m、高さ35mmのロックウールシート1層で形成される、高さ35mmの第2保水層24を用いた。
【0076】
実施例6は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、実施例6では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は0.875である。
【0077】
実施例6に係る緑化システムにおいても、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」、「積層加工性」および「灌水管施工性」の全てにおいて良好な結果が得られた。
【0078】
このように実施例6に係る緑化システムも、高い施工性および高い保水性を有する。
(比較例1)
【0079】
比較例1では、乾燥時密度70kg/m、かつ、高さ25mmのロックウールシートで形成される第1保水層23を用いた。
【0080】
比較例1は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、比較例1では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は2である。
【0081】
比較例1に係る緑化システムにおいては、十分な「踏圧耐久性」得られなかった。これは、第1保水層23のロックウールシートの乾燥時密度が低く、ロックウールシートを構成する鉱物繊維が密でないために、第1保水層23において十分な硬度が得られなかったためである。
(比較例2)
【0082】
比較例2では、乾燥時密度100kg/m、高さ40mmのロックウールシート2層で形成される、高さ80mmの第2保水層24を用いた。
【0083】
比較例2は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、比較例2では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は2である。
【0084】
比較例2に係る緑化システムにおいては、十分な「穴部加工性」および「積層加工性」の特性が得られなかった。これは、第2保水層24のロックウールシートを構成する鉱物繊維が密になり過ぎて、素手で穴を空けることができなくなったため、および、第2保水層24が重くなったことで持ち運びやロール展開の作業が大変になったためである。
(比較例3)
【0085】
比較例3では、乾燥時密度20kg/m、高さ25mmのロックウールシート2層で形成される、高さ50mmの第2保水層24を用いた点のみ実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。
【0086】
比較例3に係る緑化システムにおいては、植栽25の植物が3カ月以内に枯れてしまった。これは、第2保水層24のロックウールシートの乾燥時密度が低く、植物の育成に十分な量の水を保水できなかったためである。
(比較例4)
【0087】
比較例4では、乾燥時密度180kg/m、高さ80mmのロックウールシートで形成される第1保水層23を用いた。
【0088】
比較例4は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、比較例4では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は0.625である。
【0089】
比較例5に係る緑化システムにおいては、植栽25の植物が3カ月以内に枯れてしまった。これは、第1保水層23の高さが高すぎて、十分な排水性を得ることができなくなったためである。
(比較例5)
【0090】
比較例5では、乾燥時密度45kg/m、高さ35mmのロックウールシート3層で形成される、高さ105mmの第2保水層24を用いた。
【0091】
比較例5は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。すなわち、比較例5では、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比は2.625である。
【0092】
比較例5に係る緑化システムにおいては、植栽25の植物が3カ月以内に枯れてしまった。これは、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比が高すぎて、灌水管40から給水される水が、第2保水層24のロックウールの上面まで達しづらくなったためである。
(比較例6)
【0093】
比較例6では、第2保水層24の代わりに土壌層を用い、その土壌層に植栽が植えた。 比較例6は、上記の条件のみ上述した実施例1と異なり、その他は実施例1と同じである。
【0094】
比較例6に係る緑化システムにおいては、第2保水層24の代わり用いた土壌層の土壌が飛散したため、緑化システムを設置する際の施工性が全般的に低下し、「積層加工性」も低下した。
【0095】
以上で説明したように、実施例1〜6のように、第1保水層23が100〜190kg/mの乾燥時密度を有するロックウールシートで構成されており、第2保水層24が、30〜90kg/mの乾燥時密度を有するロックウールシートで構成されており、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比が、0.75〜2.50の範囲内であるため、高い施工性および高い保水性を有する緑化システムが実現される。
【0096】
一方、上述の条件を一部満たさない比較例1〜6はいずれも、「植物の育成」、「土壌の飛散」、「踏圧耐久性」、「穴部加工性」、「積層加工性」および「灌水管施工性」のうちの少なくとも1つを満足しないため、緑化システムとしての機能が不十分である。
【符号の説明】
【0097】
1…緑化システム、20…積層体、21…排水層、22…導水層、23…第1保水層、24…第2保水層、25…植栽、25a…培地、40…灌水管、50…マルチング材。
【要約】
【課題】 高い施工性および高い保水性を有する緑化システムを提供する。
【解決手段】
緑化システム1は、構造物の上面10に設置される緑化システムであって、第1保水層23が100〜190kg/mの乾燥時密度を有するロックウールシートで構成されており、第2保水層24が、30〜90kg/mの乾燥時密度を有する少なくとも1層のロックウールシートで構成されており、第1保水層23の高さに対する第2保水層24の高さの比が、0.75〜2.50の範囲内である。このような緑化システム1は、高い施工性および高い保水性を有する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5