(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2半導体領域の、前記半導体基板側に対して反対側の表面は、前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面よりも前記半導体基板側に位置することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記第2半導体領域と前記第1半導体層との界面は、前記第1半導体領域と前記第1半導体層との界面よりも前記半導体基板側に位置することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることの一例を意味するが、最適な構造によっては濃度が逆転する場合もある。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“−”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“−”を付けることで負の指数を表している。
【0028】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置の構造について、炭化珪素(SiC)半導体を用いたプレーナゲート構造の縦型MOSFETを例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図1に示す実施の形態1にかかる半導体装置は、n
+型ドレイン層となるn
+型炭化珪素基板1のおもて面上にn型ドリフト層(第1半導体層)2となるn型炭化珪素エピタキシャル層およびp型ベース層(第2半導体層)4となるp型炭化珪素エピタキシャル層を順に堆積してなる炭化珪素半導体基体(半導体チップ)を用いて製造(作製)される。炭化珪素半導体基体には、中央部付近に活性領域101が設けられ、活性領域101の周囲を囲む外周部に終端構造部102が設けられている。活性領域101は、オン状態のときに主電流が流れる領域である。終端構造部102は、n型ドリフト層2の基体おもて面側の電界を緩和し耐圧を保持する領域である。
【0029】
炭化珪素半導体基体のおもて面側において、p型ベース層4となるp型炭化珪素エピタキシャル層は、活性領域101から活性領域101と終端構造部102との境界付近にまで延在する。すなわち、炭化珪素半導体基体のおもて面には、終端構造部102の、活性領域101との境界付近に、p型ベース層4の外周部が除去されることでp型ベース層4とn型ドリフト層2との間に生じた段差部103が設けられている。炭化珪素半導体基体のおもて面の、段差部103よりも外側(チップ端部側)の部分は、n型ドリフト層2の表面を露出させてなる平坦部104である。平坦部104における基体おもて面(後述するp
-型領域(第2半導体領域)5aやp
--型領域5bの表面)は、活性領域101における基体おもて面(p型ベース層4の表面)よりも深い(基体裏面に近い)位置にある。
【0030】
活性領域101において、炭化珪素半導体基体のおもて面側(p型ベース層4側)には、プレーナゲート構造のMOSゲート(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)構造が設けられている。
図1には、活性領域101に1つ以上配置される単位セル(素子の機能単位)のうちの1つの単位セルを図示する。具体的には、n型ドリフト層2(n型炭化珪素エピタキシャル層)の、n
+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面層には、p
+型ベース領域(第1半導体領域)3が選択的に設けられている。最も外側(終端構造部102側)のp
+型ベース領域3は、終端構造部102の平坦部104にまで延在し、平坦部104における基体おもて面(すなわち終端構造部102の、p型ベース層4が堆積されていない部分)に露出されている。p
+型ベース領域3は、p型ベース層4とともにベース領域を構成する。
【0031】
n型ドリフト層2の、n
+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面には、n型ドリフト層2の、隣り合うp
+型ベース領域3間に挟まれた部分、および、p
+型ベース領域3の、平坦部104に延在する部分以外の部分を覆うように、p型ベース層4(p型炭化珪素エピタキシャル層)が選択的に堆積されている。p型ベース層4の不純物濃度は、p
+型ベース領域3の不純物濃度よりも低い。エピタキシャル成長によりp型ベース層4を形成することで、チャネルが形成される部分の結晶性を高めることができるため、チャネル抵抗(すなわちオン抵抗)を低減させることができる。p型ベース層4の内部には、p
+型ベース領域3上の部分に、n
+型ソース領域(第3半導体領域)6およびp
+型コンタクト領域(第5半導体領域)7がそれぞれ選択的に設けられている。n
+型ソース領域6およびp
+型コンタクト領域7は互いに接する。n
+型ソース領域6は、p
+型コンタクト領域7よりも後述するn型ウェル領域(第4半導体領域)8に近い位置に配置されている。
【0032】
また、p型ベース層4の内部には、深さ方向にp型ベース層4を貫通してn型ドリフト層2に達するn型ウェル領域8が設けられている。n型ウェル領域8は、隣り合うベース領域間に挟まれ、かつゲート電極10直下(基体側)に配置されるJFET(Junction Field Effect Transistor)領域である。n型ウェル領域8は、n型ドリフト層2とともにドリフト領域を構成する。p型ベース層4の、n
+型ソース領域6とn型ウェル領域8とに挟まれた部分の表面には、ゲート絶縁膜9を介してゲート電極10が設けられている。ゲート電極10は、ゲート絶縁膜9を介して、n型ウェル領域8の表面に設けられていてもよい。ゲート絶縁膜9は、コンタクト電極を必要とする部分を除いて炭化珪素半導体基体のおもて面側の全面に設けられていてもよい。図示省略するが、複数の単位セルが配置される場合、各単位セルのMOSゲート構造は並列に配置される。
【0033】
層間絶縁膜11は、炭化珪素半導体基体のおもて面側の全面に、ゲート電極10を覆うように設けられている。ソース電極(第1電極)12は、層間絶縁膜11を深さ方向に貫通するコンタクトホールを介してn
+型ソース領域6およびp
+型コンタクト領域7に接するとともに、層間絶縁膜11によってゲート電極10と電気的に絶縁されている。おもて面電極パッド13は、すべての単位セルのソース電極12に接するように、活性領域101全体にわたって設けられている。おもて面電極パッド13の端部は、終端構造部102の層間絶縁膜11上に延在し、例えば段差部103よりも内側(活性領域101側)で終端している。終端構造部102において、層間絶縁膜11上には、おもて面電極パッド13の端部、および、最も外側の単位セルのソース電極12の外側の端部を覆うように、例えばポリイミドからなるパッシベーション膜などの保護膜14が設けられている。保護膜14は、放電防止の機能を有する。
【0034】
また、終端構造部102において、n型ドリフト層2の、n
+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面層には、不純物濃度の異なる複数のp型領域(p
-型領域5aおよびp
--型領域5b)で構成された耐圧構造が設けられている。この耐圧構造は、活性領域101と終端構造部102との境界付近の電界集中を緩和する機能を有する。具体的には、p
-型領域5aは、平坦部104における基体おもて面に露出されるように設けられ、最も外側のp
+型ベース領域3に接し、かつ当該p
+型ベース領域3の周囲を囲む。また、p
-型領域5aは、平坦部104から内側に例えば段差部103にまで延在し、最も外側のp
+型ベース領域3の、平坦部104に延在する部分の下側(ドレイン側)全体を覆う。p
--型領域5bは、p
-型領域5aよりも外側に設けられ、p
-型領域5aに接し、かつp
-型領域5aの周囲を囲む。
【0035】
すなわち、p
-型領域5aおよびp
--型領域5bは、活性領域101の周囲を囲む同心円状に設けられ、ダブルゾーンJTE(Junction Termination Extension)構造を構成する。p
-型領域5aおよびp
--型領域5bとn型ドリフト層2との界面は、p
+型ベース領域3とn型ドリフト層2との界面よりもドレイン側に位置する。すなわち、p
-型領域5aおよびp
--型領域5bの厚さは、p
+型ベース領域3の、平坦部104における厚さ(基体おもて面からの深さ)よりも厚い。終端構造部102(段差部103および平坦部104も含む)における基体おもて面は、層間絶縁膜11(またはゲート絶縁膜9および層間絶縁膜11を順に積層した絶縁層)によって覆われている。p
-型領域5aおよびp
--型領域5bは、この層間絶縁膜11によって活性領域101の単位セルと電気的に絶縁されている。
【0036】
終端構造部102に配置する耐圧構造は、ダブルゾーンJTE構造に代えて、マルチゾーンJTE構造や、FLR(Field Limiting Ring)構造など、電界集中を緩和するための他の耐圧構造としてもよい。マルチゾーンJTE構造とは、不純物濃度の異なる3つ以上のp型領域を活性領域101の周囲を囲む同心円状に、かつ外側に向うほど不純物濃度の低いp型領域が配置されるように隣接して配置した耐圧構造である。FLR構造は、複数のp型領域を活性領域101の周囲を囲む同心円状に、所定の間隔を空けて配置した耐圧構造であり、製造の難易度によらず適用可能である。炭化珪素半導体基体の裏面(n
+型炭化珪素基板1の裏面)には、活性領域101から終端構造部102にわたって、ドレイン電極である裏面電極(第2電極)15が設けられている。裏面電極パッド16は、裏面電極15の表面に設けられている。
【0037】
次に、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について、例えば1200Vの耐圧クラスの、炭化珪素半導体を用いたプレーナゲート構造の縦型MOSFETを作製する場合を例に説明する。
図2〜7は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、
図2に示すように、例えば、2×10
19/cm
3程度の不純物濃度で窒素(N)などのn型不純物がドーピングされたn
+型炭化珪素基板(半導体ウエハ)1を用意する。n
+型炭化珪素基板1のおもて面は、例えば<11−20>方向に4度程度のオフ角を有する(000−1)面であってもよい。次に、n
+型炭化珪素基板1のおもて面上に、n型ドリフト層2として、例えば、1.0×10
16/cm
3の不純物濃度で窒素などのn型不純物がドーピングされた厚さ10μmのn型炭化珪素エピタキシャル層を成長させる。
【0038】
次に、
図3に示すように、フォトリソグラフィおよびイオン注入によって、活性領域101におけるn型ドリフト層2の表面層に、p
+型ベース領域3を選択的に形成する。最も外側のp
+型ベース領域3は、終端構造部102に延在するように形成する。このイオン注入においては、例えば、ドーパントをアルミニウム(Al)とし、p
+型ベース領域3の不純物濃度が1.0×10
18/cm
3となるようにドーズ量を設定してもよい。p
+型ベース領域3の厚さは、例えば、0.5μmであってもよい。隣り合うp
+型ベース領域3間の距離は、例えば1.6μmであってもよい。
【0039】
次に、n型ドリフト層2の表面に、p型ベース層4となるp型炭化珪素エピタキシャル層を例えば0.5μmの厚さで成長させる。p型ベース層4は、例えばアルミニウムがドーピングされてなる。このとき、例えば、p型ベース層4の不純物濃度が5.0×10
15/cm
3となるようにアルミニウムがドーピングされたp型炭化珪素エピタキシャル層を成長させてもよい。これにより、n
+型炭化珪素基板1、n型ドリフト層2およびp型ベース層4を順に堆積してなる炭化珪素半導体基体が作製される。
【0040】
次に、
図4に示すように、フォトリソグラフィおよびイオン注入によって、p型ベース層4の、n型ドリフト層2上の部分の導電型を反転させて、n型ウェル領域8を選択的に形成する。このイオン注入においては、例えば、ドーパントを窒素とし、n型ウェル領域8の不純物濃度が5.0×10
16/cm
3となるようにドーズ量を設定してもよい。n型ウェル領域8の幅および厚さは、例えば、それぞれ2.0μmおよび0.6μmであってもよい。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングによって終端構造部102におけるp型ベース層4の外周部を除去し、終端構造部102にn型ドリフト層2を露出させる。
【0041】
p型ベース層4の外周部を除去することによって、終端構造部102の、活性領域101との境界付近において、p型ベース層4とn型ドリフト層2との間に段差部103が形成される。また、この段差部103よりも外側(チップ外側となる部分)に、n型ドリフト層2の表面が露出されてなる平坦部104が形成される。このとき、最も外側のp
+型ベース領域3の、平坦部104に延在する部分を所定の厚さで残すことができればよく、終端構造部102の外周部におけるエピタキシャル層を、p型ベース層4の厚さ以上の厚さ(例えば0.7μm程度)で除去してもよい。この場合、最も外側のp
+型ベース領域3の、平坦部104に延在する部分は0.3μm程度の厚さで残る。
【0042】
次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入を繰り返し行い、終端構造部102に露出したn型ドリフト層2の表面層に、ダブルゾーンJTE構造を構成するp
-型領域5aおよびp
--型領域5bをそれぞれ選択的に形成する。このとき、p
-型領域5aは、最も外側のp
+型ベース領域3の、平坦部104に延在する部分の下側全体を覆うように形成する。p
-型領域5aを形成するためのイオン注入は、例えば、ドーパントをアルミニウムとし、p
-型領域5aの不純物濃度が6.0×10
17/cm
3となるようにドーズ量を設定してもよい。p
-型領域5aの幅および厚さは、例えば、それぞれ80μmおよび0.5μmであってもよい。p
--型領域5bを形成するためのイオン注入は、例えば、ドーパントをアルミニウムとし、p
--型領域5bの不純物濃度が3.0×10
17/cm
3となるようにドーズ量を設定してもよい。p
--型領域5bの幅および厚さは、例えば、それぞれ60μmおよび0.5μmであってもよい。
【0043】
次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入によって、p型ベース層4の、p
+型ベース領域3上の部分の表面層に、n
+型ソース領域6を選択的に形成する。次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入によって、p型ベース層4の、p
+型ベース領域3上の部分の表面層に、p
+型コンタクト領域7を選択的に形成する。次に、p
-型領域5a、p
--型領域5b、n
+型ソース領域6、p
+型コンタクト領域7およびn型ウェル領域8を活性化させるための熱処理(アニール)を行う。このときの熱処理温度および熱処理時間は、例えば、それぞれ1620℃および2分間であってもよい。p
-型領域5a、p
--型領域5b、n
+型ソース領域6、p
+型コンタクト領域7およびn型ウェル領域8を形成する順序は種々変更可能である。p
-型領域5aおよびp
--型領域5bは、平坦部104の形成後、活性化熱処理の前に形成すればよい。p
-型領域5aを形成するためのイオン注入の注入領域と、p
+型ベース領域3を形成するためのイオン注入の注入領域とが一部重なってもよい。また、活性化熱処理は、各領域を形成するためのイオン注入ごとに行ってもよい。
【0044】
次に、
図5に示すように、炭化珪素半導体基体のおもて面側を熱酸化し、ゲート絶縁膜9を例えば100nm程度の厚さで形成する。この熱酸化は、例えば、酸素(O
2)ガスと水素(H
2)ガスとの混合雰囲気中において1000℃程度の温度の熱処理によって行ってもよい。これにより、p型ベース層4およびn型ドリフト層2の表面に形成された各領域がゲート絶縁膜9で覆われる。次に、ゲート絶縁膜9上に、ゲート電極10として、例えばリン(P)がドープされた多結晶シリコン層を形成する。次に、多結晶シリコン層をパターニングして、p型ベース層4の、n
+型ソース領域6とn型ウェル領域8とに挟まれた部分上に多結晶シリコン層を残す。このとき、n型ウェル領域8上に多結晶シリコン層を残してもよい。次に、ゲート絶縁膜9を覆うように、層間絶縁膜11として例えばリンガラス(PSG:Phospho Silicate Glass)を1.0μm程度の厚さで成膜(形成)する。
【0045】
次に、
図6に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングによって層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜9を選択的に除去してコンタクトホールを形成し、n
+型ソース領域6およびp
+型コンタクト領域7を露出させる。次に、層間絶縁膜11を平坦化するための熱処理(リフロー)を行う。次に、
図7に示すように、層間絶縁膜11上に、コンタクトホールの内部に埋め込むように、ソース電極12となる例えばニッケル(Ni)膜を成膜する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングによってニッケル膜を選択的に除去し、コンタクトホールに露出するn
+型ソース領域6およびp
+型コンタクト領域7上にのみニッケル膜を残す。次に、炭化珪素半導体基体の裏面(n
+型炭化珪素基板1の裏面)全面に、裏面電極15を構成する複数の金属膜のうちの最下層となる例えばニッケル膜を成膜する。
【0046】
次に、例えば970℃程度の温度で熱処理して、炭化珪素半導体基体の両面のニッケル膜を炭化珪素半導体部と反応させてニッケルシリサイド膜を生成する。これにより、ソース電極12と炭化珪素半導体部とのオーミック接合、および、裏面電極15と炭化珪素半導体部とのオーミック接合が形成される。次に、例えばスパッタ法によって、炭化珪素半導体基体のおもて面の全面に、ソース電極12を覆うようにおもて面電極パッド13を堆積(形成)する。おもて面電極パッド13の、層間絶縁膜11上の部分の厚さは、例えば5μm程度であってもよい。おもて面電極パッド13は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属で形成してもよい。次に、おもて面電極パッド13をパターニングして、終端構造部102における層間絶縁膜11を露出させる。
【0047】
次に、層間絶縁膜11およびおもて面電極パッド13の表面に、保護膜14として例えばポリイミド膜を形成する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングによって保護膜14を選択的に除去して、おもて面電極パッド13を露出させるとともに、終端構造部102における層間絶縁膜11上からおもて面電極パッド13の端部に延在するように保護膜14を残す。次に、炭化珪素半導体基体の裏面のニッケルシリサイド膜の表面全面に、裏面電極パッド16として例えばチタン(Ti)膜、ニッケル膜および金(Au)膜を順に積層してなる積層膜を形成する。その後、半導体ウエハをチップ状に切断(ダイシング)することで、
図1に示すMOSFETが完成する。
【0048】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、最も外側のp
+型ベース領域を終端構造部の平坦部にまで延在させ、かつ耐圧構造を構成する最も内側のp型領域の内周部によって、最も外側のp
+型ベース領域の、平坦部に延在する部分の下側全体を覆うことで、ドレイン電極に高電圧を印加したときに、最も外側のp
+型ベース領域の外周端部、または、耐圧構造を構成する複数のp型領域に電界を集中させることができる。このため、活性領域にエピタキシャル成長により不純物濃度の低いp型ベース層を形成してオン抵抗を低減させた構成とする場合においても、p型ベース層を形成することによって生じた段差部に電界が集中することを防止することができる。
【0049】
また、耐圧構造を構成する複数のp型領域に電界を集中させることができるため、エピタキシャル成長により形成された不純物濃度の低いp型ベース層側に空乏層が伸びることを防止することができる。これにより、耐圧が低下することを防止することができるため、従来よりも耐圧を向上させることができる。したがって、低オン抵抗で、かつ高耐圧の半導体装置を提供することができる。また、実施の形態1によれば、最も外側のp
+型ベース領域を形成するためのイオン注入や、耐圧構造を構成する最も内側のp型領域を形成するためのイオン注入に用いるマスクの開口範囲を適宜変更することで、新たな工程を追加することなく、低オン抵抗で、かつ高耐圧の半導体装置を作製することができる。
【0050】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体装置の構造について説明する。
図8は、実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態2にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、ダブルゾーンJTE構造を構成する2つのp型領域(p
-型領域25aおよびp
--型領域5b)のうちの内側のp
-型領域25aを、基体おもて面に沿って平坦部104から活性領域101にまで延在させ、p型ベース層4の外周部に重なるように設けている点である。
【0051】
具体的には、p
-型領域25aは、p
+型ベース領域3の、平坦部104および段差部103に延在する部分と、p型ベース層4の、段差部103に延在する部分とに重なるように設けられ、例えば最も外側のp
+型コンタクト領域7に接する(ハッチングされた部分)。実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において、p
-型領域25aを形成するためのイオン注入を、p型ベース層4の外周部にまで重なる広い範囲に行えばよい。このとき、p
-型領域25aを形成するためのイオン注入の注入領域と、p
+型ベース領域3を形成するためのイオン注入の注入領域とが一部重なってもよい。
【0052】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、耐圧構造を構成する最も内側のp型領域を、最も外側のp
+型ベース領域の、平坦部に延在する部分に重なるように設けることで、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態2によれば、耐圧構造を構成する最も内側のp型領域をp型ベース層の一部にまで重なるように設けることで、p型ベース層の外周部の不純物濃度を高くすることができる。これにより、p型ベース層の内部に空乏層が伸びることを防止することができる。また、実施の形態2によれば、p型ベース層の外周部の不純物濃度を高くすることができ、プロセス変動による耐圧のばらつきを回避することができる。
【0053】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる半導体装置の構造について説明する。
図9は、実施の形態3にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態3にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、最も外側のp
+型コンタクト領域(第5半導体領域)27を、基体おもて面に沿って活性領域101から平坦部104にまで延在させ、ダブルゾーンJTE構造を構成する2つのp型領域のうちの内側のp
-型領域5aの内周部に重なるように設けている点である。
【0054】
具体的には、最も外側のp
+型コンタクト領域27は、p型ベース層4の、段差部103に延在する部分と、p
+型ベース領域3の、平坦部104および段差部103に延在する部分と、p
-型領域5aの、p
+型ベース領域3の下側を覆う部分と、に重なるように設けられている(ハッチングされた部分)。実施の形態3にかかる半導体装置の製造方法は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において、p
+型コンタクト領域27を形成するためのイオン注入を、p
-型領域5aの内周部にまで重なる広い範囲に行えばよい。このとき、p
+型コンタクト領域27を形成するためのイオン注入と、p
+型ベース領域3を形成するためのイオン注入の注入領域とが一部重なってもよい。
【0055】
実施の形態3においては、p
+型ベース領域3の、平坦部104に延在する部分の下側全体が、最も外側のp
+型コンタクト領域27によって覆われる。このため、p
+型ベース領域3の、平坦部104に延在する部分の下側がp
-型領域5aによって覆われていなくてもよい。すなわち、最も外側のp
+型コンタクト領域27は、p型ベース層4の、段差部103に延在する部分と、p
+型ベース領域3の、平坦部104および段差部103に延在する部分と、に重なるように設けられていてもよい(不図示)。また、p
+型ベース領域3の、平坦部104に延在する部分の下側がp
-型領域5aによって覆われている場合、最も外側のp
+型コンタクト領域27は、p
-型領域5aの内周端部に接する程度に延在した状態であってもよい。
【0056】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、最も外側のp
+型コンタクト領域を、耐圧構造を構成する最も内側のp型領域の一部にまで重なるように設けることで、ドレイン電極に高電圧を印加したときに、最も外側のp
+型コンタクト領域の外周端部、または、耐圧構造を構成する複数のp型領域に電界を集中させることができる。これにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施の形態3によれば、最も外側のp
+型コンタクト領域を、耐圧構造を構成する最も内側のp型領域の一部にまで重なるように設けることで、p型ベース層の外周部の不純物濃度を高くすることができる。これにより、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(実施例)
次に、実施例にかかる半導体装置の耐圧について検証した。
図10は、比較例1の半導体装置の構造を示す断面図である。
図11は、ダブルゾーンJTE構造を構成する内側のp
-型領域の不純物濃度と耐圧との関係を示す特性図である。まず、実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法にしたがい、例示した上記諸条件で、ダブルゾーンJTE構造を構成する内側のp
-型領域25aをp型ベース層4の一部にまで重なるように設けたMOSFET(
図8参照)を作製した(以下、実施例とする)。比較として、ダブルゾーンJTE構造を構成する内側のp
-型領域35aによって、最も外側のp
+型ベース領域3の、平坦部104に延在する部分の下側の一部を覆うMOSFET(
図10参照)を作製した(以下、比較例1とする)。
【0058】
実施例および比較例1は、それぞれ、終端構造部102に段差部103を形成するときのエピタキシャル層のエッチング量(エッチング深さ)を、標準の0.7μm(以下、標準エッチング量とする)と、標準より深い0.9μm(以下、過剰エッチング量とする)とした2つの試料を作製した。また、実施例および比較例1ともに、ダブルゾーンJTE構造を構成する外側のp
--型領域5bの不純物濃度を内側のp
-型領域25a,35aの不純物濃度の半分とした。比較例1のp
-型領域35a以外の構成は、実施例と同様である。これら実施例および比較例1のp
-型領域25a,35aの不純物濃度と耐圧との関係をシミュレーションした結果を
図11に示す。
図11の横軸はp
-型領域25a,35aの不純物濃度であり、縦軸は耐圧BVdssである。
【0059】
図11に示す結果より、比較例1では、標準エッチング量である場合、p
-型領域35aの不純物濃度が3.0×10
17/cm
3未満で耐圧が低下することが確認された。また、比較例1では、過剰エッチング量である場合、p
-型領域35aの不純物濃度が3.0×10
18/cm
3未満で耐圧が低下することが確認された。これらのことから、活性化率の低下や過剰エッチングによるキャリア濃度の低下が重複して起こることにより耐圧の低下が生じることがわかる。一方、実施例においては、標準エッチング量である場合と過剰エッチング量である場合ともに、p
-型領域25aの不純物濃度が1.00×10
17/cm
3未満で耐圧が低下することが確認された。このことから、実施例は、プロセス変動による悪影響の少ない構造であることが確認された。
【0060】
次に、実施例にかかる半導体装置の活性領域と終端構造部との境界付近の電界強度分布について検証した。
図12は、比較例2の半導体装置の構造を示す断面図である。
図13は、活性領域と終端構造部との境界付近の電界強度分布を示す特性図である。
図13(a)には、実施例の終端構造部111(
図8参照)の電界強度分布を示す。
図13(b)には、比較例1の終端構造部121(
図10参照)の電界強度分布を示す。
図13(c)には、比較例2の終端構造部122(
図12参照)の電界強度分布を示す。比較例2は、最も外側のp
+型ベース領域33を平坦部104にまで延在させない構成となっている。比較例2の、p
+型ベース領域33以外の構成は、比較例1と同様である。
【0061】
図13(b)に示すように、比較例1では、活性領域101と終端構造部102との境界付近131に電界が集中していることが確認された。一方、
図13(a)に示すように、実施例においては、電界強度を終端構造部102に分散させることができることが確認された。このことから、実施例のように、ダブルゾーンJTE構造を構成する内側のp
-型領域25aによって、最も外側のp
+型ベース領域3の、平坦部104に延在する部分の下側全体を覆うことで、活性領域101の電界集中を緩和することができることが確認された。
【0062】
また、
図13(c)に示すように、比較例2では、活性領域101と終端構造部102との境界付近132にのみ電界が集中していることが確認された。すなわち、比較例2のように最も外側のp
+型ベース領域33を平坦部104にまで延在させない場合、比較例1と同様に活性領域101の電界集中を緩和することができず、耐圧が低下することが確認された。一方、実施例においては、最も外側のp
+型ベース領域3を平坦部104にまで延在させることで、電界が集中する箇所を平坦部104に移動させることができる。このため、活性領域101の電界集中を緩和することができ、高耐圧を維持することができる。
【0063】
したがって、
図11,13の結果から、実施例のように、最も外側のp
+型ベース領域3を平坦部104にまで延在させ、かつ当該p
+型ベース領域3の平坦部104に延在する部分の下側全体をp
-型領域25aによって覆うことで、高耐圧を維持することができることが確認された。図示省略するが、実施の形態1,3にかかる半導体装置(
図1,9参照)においても、実施例(実施の形態2にかかる半導体装置)と同様に、最も外側のp
+型ベース領域3を平坦部104にまで延在させ、かつ当該p
+型ベース領域3の平坦部104に延在する部分の下側全体をp
-型領域5aまたはp
+型コンタクト領域27によって覆う構成であるため、実施例と同様の効果を有する。
【0064】
以上において本発明は、上述した各実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した各実施の形態において、各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて適宜設定される。また、上述した各実施の形態では、炭化珪素基板の主面(おもて面)を<11−20>方向に4度程度のオフ角を有する(000−1)面とした場合を例に説明したが、これに限らず、炭化珪素基板の主面の面方位は設計条件などに合わせて種々変更可能である。また、本発明は、トレンチゲート構造のMOSFETに適用した場合においても同様の効果を奏する。この場合、例えばn
+型ソース領域、p型ベース層となるp型炭化珪素エピタキシャル層、およびp
+型ベース領域を貫通して、n型ドリフト層となるn型炭化珪素エピタキシャル層のp
+型ベース領域以外の部分に達するトレンチを形成し、このトレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート絶縁膜を設ければよい。
【0065】
また、上述した各実施の形態では、MOSFETを例に説明しているが、本発明は、基体おもて面側にMOSゲート構造を備えたIGBTなどのMOS型半導体装置に適用可能である。また、上述した実施の形態では、炭化珪素半導体を用いた場合を例に説明しているが、これに限らず、窒化ガリウム(GaN)やダイヤモンドなど他のワイドバンドギャップ半導体やシリコン(Si)半導体を用いた場合においても同様の効果が得られる。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。