特許第6052482号(P6052482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052482
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】養殖装置および養殖方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   A01K63/04 C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-20313(P2012-20313)
(22)【出願日】2012年2月1日
(65)【公開番号】特開2013-158250(P2013-158250A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年12月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 典生
(72)【発明者】
【氏名】有冨 礼子
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−229436(JP,A)
【文献】 特開2010−246493(JP,A)
【文献】 特開2006−071190(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3027664(JP,U)
【文献】 特表2007−508031(JP,A)
【文献】 特開平09−000109(JP,A)
【文献】 特開2010−057410(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/142995(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/00−63/04
C01B 13/02
F25J 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生生物を養殖する水槽と、
前記水槽に水を供給する水供給装置と、
前記水槽中に配設された散気管と、
前記散気管に吹出し側が接続されたブロア装置と、
工場敷地内に配設された窒素製造装置と、
前記窒素製造装置が排出する高濃度酸素ガスを原料として、酸素含有量が90%以上の酸素ガスを排出する酸素製造装置と、
前記水供給装置と、原料ガスから前記水槽内に微細泡を生成する微細泡発生手段と、
前記ブロア装置と、前記窒素製造装置と、前記酸素製造装置と前記微細泡発生手段とを配管で分岐連通させる第1の三方バルブ、第2の三方バルブ、第3の三方バルブ、第4の三方バルブおよび第5の三方バルブを有し、
前記第1の三方バルブ(62a)は、
入口端が前記窒素製造装置(20)の原料供給口に接続され出口端が前記第2の三方バルブ(62b)の入口端に連通され、分岐端が前記第3の三方バルブ(62c)の分岐端に連通されており、
前記第2の三方バルブ(62b)は、
入口端が前記第1の三方バルブ(62a)の出口端に連通され、出口端が前記第5の三方バルブ(62e)の入口端に連通され、分岐端が前記酸素製造装置の原料供給口に連結されており、
前記第3の三方バルブ(62c)は、
入口端が前記第4の三方バルブ(62d)の出口端に連通され、出口端が前記ブロア装置の吸込み側に連通され、分岐端が、前記第1の三方バルブ(62a)の分岐端と連通されており、
前記第4の三方バルブ(62d)は、
入口端が前記酸素製造装置(22)の排出口に連通され、出口端が前記第3の三方バルブ(62c)の入口端に連通され、分岐端が前記第5の三方バルブ(62e)の分岐端に連通されており、
前記第5の三方バルブ(62e)は、
入口端が、前記第2の三方バルブ(62b)の出口端と連通し、出口端が前記微細泡発生手段24の原料供給口に連通し、分岐端が前記第4のバルブ(62d)の分岐端に連通していることを特徴とした養殖装置。
【請求項2】
前記工場敷地内の熱源に接続され、前記水槽中の水温を20℃から25℃に保持する熱交換手段を有することを特徴とした請求項1に記載された養殖装置。
【請求項3】
前記水槽内に設けられた溶存酸素計と、
前記高濃度酸素ガス排出口に設けられ、指示信号によって作動する流量調節弁と、
前記溶存酸素計と前記流量調節弁に接続された制御装置をさらに有することを特徴とした請求項1または2の何れかの請求項に記載された養殖装置。
【請求項4】
工場内の設備に窒素を供給するために窒素を製造する工程から高濃度酸素ガスを得る工程と、
前記高濃度酸素ガスを原料として酸素含有量が90%以上の酸素ガスを得る工程と、
前記高濃度酸素ガス、前記酸素ガス、微細泡にした前記高濃度酸素ガス、または微細泡にした前記酸素ガスのいずれかを選択する選択工程と、
前記選択されたガスを水に付与する工程と、
前記水を前記工場内に設置され水生生物に供給する工程を有することを特徴とする養殖方法。
【請求項5】
前記水槽は密閉型であり前記水槽中の前記水を加圧する工程を含むことを特徴とする請求項に記載の養殖方法。
【請求項6】
前記水槽の水を工場内の熱源で加熱若しくは冷却する工程を含むことを特徴とする請求項またはの何れかの請求項に記載された養殖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品等の製造工場内に設置された窒素製造装置の排出ガスである高濃度酸素ガスを用いて、工場内で水生生物を養殖する養殖装置および養殖方法に関するものであり、特に貝類の養殖に好適に利用することのできる養殖装置および養殖方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
魚を初めとする水生生物は、食糧源だけでなく、さまざまな分野の資源として需要がある。例えば、世界的に人々の健康志向の意識が向上し、魚を食する人口が増加しつつあり、魚の消費量が増加傾向にある。一方、これまでは、いくつかの例外はあるものの、水生生物の生育は、自然環境にまかせ、人類は水生生物を捕獲するだけであった。そのため、水生生物を資源としてみると、枯渇のおそれが考えられる。したがって、今後は捕獲して消費するだけでなく、積極的に養殖し、増やすことが求められている。
【0003】
たとえば、真珠貝や牡蠣の養殖は古くから行われている。また、近年では、マグロといった大きな回遊魚の養殖も試みられている。
【0004】
貝類は、生息領域であまり移動を行わないため、養殖は行いやすい水中生物と考えられている。しかし、それでも出荷できる大きさまで成長させるには、数年という長い時間を要するため、コストの観点から養殖を行う際の問題点となっている。この問題点を解決するため、特許文献1は、貝類の成長を促進させる方法として、貝類を飼育する海水中の溶存酸素濃度を上げるという方法を開示している。
【0005】
例えばアワビ類の養殖においては、海水を満たした飼育水槽内で稚貝を飼育するときに、酸素ガスを養殖水槽に直接投入する若しくは酸素ガスで溶存酸素濃度を調整した海水を少しずつ供給する。養殖環境中の溶存酸素量を調整することにより、貝類の餌の摂取量は増大し、成長が促進させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−190014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明は、海洋生物である貝類を入り江や湾といった自然環境の中で飼育するのではなく、陸上で飼育しようとするものである。したがって、酸素ガスの供給源以外にも飼育用の水槽が必要になる。また、陸上で飼育しようとすると、酸素ガスの供給装置や、海から接収してくる海水の殺菌が必要となる。飼育用の水槽は限られた空間なので、一度細菌や害虫などが侵入すると、飼育水槽中の全ての飼育生物が死滅するおそれがあるからである。特許文献1ではこの殺菌に紫外線照射殺菌を使用する。すると、さらに、紫外線照射装置と運転電力設備が必要になる。
【0008】
また、多くの水生生物は、水深10m以上の水中に生息している場合が多い。従って、常時水圧を感じながら生育している。しかし、陸上に設置した水槽では、そのような水圧を発生させるのは、容易でない。このように、陸上で水生生物を養殖しようとすると、大きな設備と場所が必要となる。これは、養殖産業にとっては、大きなコスト負担となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、陸上での水生生物の養殖のための設備や場所の問題を解決するものである。すなわち、養殖のために必要な設備や場所がより提供しやすい場所で水生生物の養殖を行い、養殖の生産性を高める。
【0010】
より具体的に本発明の養殖装置は、
水生生物を養殖する水槽と、
前記水槽に水を供給する水供給装置と、
前記水槽中に配設された散気管と、
前記散気管に吹出し側が接続されたブロア装置と、
工場敷地内に配設された窒素製造装置と、
前記窒素製造装置が排出する高濃度酸素ガスを原料として、酸素含有量が90%以上の酸素ガスを排出する酸素製造装置と、
前記水供給装置と、原料ガスから前記水槽内に微細泡を生成する微細泡発生手段と、
前記ブロア装置と、前記窒素製造装置と、前記酸素製造装置と前記微細泡発生手段とを配管で分岐連通させる第1の三方バルブ、第2の三方バルブ、第3の三方バルブ、第4の三方バルブおよび第5の三方バルブを有し、
前記第1の三方バルブ(62a)は、
入口端が前記窒素製造装置(20)の原料供給口に接続され出口端が前記第2の三方バルブ(62b)の入口端に連通され、分岐端が前記第3の三方バルブ(62c)の分岐端に連通されており、
前記第2の三方バルブ(62b)は、
入口端が前記第1の三方バルブ(62a)の出口端に連通され、出口端が前記第5の三方バルブ(62e)の入口端に連通され、分岐端が前記酸素製造装置の原料供給口に連結されており、
前記第3の三方バルブ(62c)は、
入口端が前記第4の三方バルブ(62d)の出口端に連通され、出口端が前記ブロア装置の吸込み側に連通され、分岐端が、前記第1の三方バルブ(62a)の分岐端と連通されており、
前記第4の三方バルブ(62d)は、
入口端が前記酸素製造装置(22)の排出口に連通され、出口端が前記第3の三方バルブ(62c)の入口端に連通され、分岐端が前記第5の三方バルブ(62e)の分岐端に連通されており、
前記第5の三方バルブ(62e)は、
入口端が、前記第2の三方バルブ(62b)の出口端と連通し、出口端が前記微細泡発生手段24の原料供給口に連通し、分岐端が前記第4のバルブ(62d)の分岐端に連通していることを特徴とする。
【0013】
また、上記養殖装置は、
前記水槽内に設けられた溶存酸素計と、
前記高濃度酸素ガス排出口に設けられ、指示信号によって作動する流量調節弁と、
前記溶存酸素計と前記流量調節弁に接続された制御装置をさらに有することを特徴としている。
【0015】
また、上記養殖装置は、
前記縦長筒状の本体の両端に加圧手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
さらに、上記養殖装置は、
前記工場敷地内の熱源に接続された熱交換手段を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る養殖方法は、
工場内の設備に窒素を供給するために窒素を製造する工程から高濃度酸素ガスを得る工程と、
前記高濃度酸素ガスを原料として酸素含有量が90%以上の酸素ガスを得る工程と、
前記高濃度酸素ガス、前記酸素ガス、微細泡にした前記高濃度酸素ガス、または微細泡にした前記酸素ガスのいずれかを選択する選択工程と、
前記選択されたガスを水に付与する工程と、
前記水を前記工場内に設置され水生生物に供給する工程を有することを特徴とする。
【0018】
また、上記養殖方法では、
前記水槽は密閉型であり前記水槽中の水を加圧する工程を含むことを特徴とする。
【0019】
さらに、上記養殖方法は、
前記水槽の水を工場内の熱源で加熱若しくは冷却する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、貝類などの養殖を電子部品等の製造工場の敷地内で行うため、酸素ガス産生源や電力源、また熱源といった付帯設備を新たに設置することなく、水生生物を養殖することができる。そのため、養殖装置を単独で設置、運営する場合より大幅なコストダウンをすることができる。
【0021】
また、養殖用の水槽をパイプ形状にすることによって、内圧を容易に上昇させることができる。この内圧が上昇することで飽和溶存酸素濃度を上昇させることができる、したがって、溶存酸素濃度を上昇させることで貝類の呼吸速度が上がり、貝類の殻の成長に必要なカルシウム、マグネシウムなどの栄養源を積極的に吸収しやすい環境となり、結果的に貝類の、成長速度を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明にかかわる養殖装置の構成を示す図である。
図2】本発明にかかわる養殖装置の他の実施形態の構成を示す図である。
図3】本発明にかかわる養殖装置の他の実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明するが、以下の説明は本発明の一実施形態を例示するのであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更することができる。
【0024】
(実施の形態1)
図1に本実施の形態に係る養殖装置の構成を示す。本実施の形態に係る養殖装置1は、電子部品や半導体若しくは液晶、有機ELといった物質の表面処理を行う工程を有する電子機器の製造工場内に設置される。ここで工場内とは、工場の敷地内だけでなく、工場に隣接して建設されている場合も含み、工場に供給される電力、熱やガス、また工場から余剰物として産生される資源を利用可能な場所に設置されていればよい。
【0025】
また、海の近くに設置されているのが望ましい。養殖装置は陸上で水生生物、特に海洋生物を養殖する。そのため、新鮮な海水が得やすい場所に設置されるのが好適であるからである。
【0026】
養殖装置1は、養殖用の水槽10と、窒素製造装置20と、酸素製造装置22と、微細泡発生手段24と、熱交換手段40と、溶存酸素計45と、水温計46と、制御装置50を含む。
【0027】
窒素製造装置20は、工場内に窒素を供給するための装置である。最もよく使用されているのは深冷分離式の窒素製造装置である。この装置は、酸素と窒素の沸点の違いを利用する。具体的には、空気を圧縮、冷却することで、沸点の異なる窒素と酸素を分離する。窒素は物体の表面を酸化させないため、表面処理が行われる工程では、一般的に用いられるガスである。したがって、製造工程中に表面処理を行う工程を有する製品の製造工場では、工場の敷地内に窒素製造装置を有している。
【0028】
このような窒素製造装置20では、空気から窒素を分離するため、分離後の排気空気中では酸素の濃度が相対的に高くなる。結果、窒素製造装置20からは、高濃度酸素ガスが副生物として排出される。高濃度酸素ガスが排出される箇所を、窒素製造装置20の高濃度酸素ガス排出口(または単に「高濃度酸素ガス排出口20a」)と呼ぶ。窒素製造装置20からの排気ガスである高濃度酸素ガスは、配管21bの上流端である開口式回収口21aで回収される。配管21bは散気管23に連結されている。なお、散気管23までの間の配管21bには、ブロア装置27が配置されている。
【0029】
なお、高濃度酸素ガス排出口20aは、開口式回収口21aの近傍に配置されるが、この状態を「接続」と呼んでもかまわない。したがって、高濃度酸素ガス排出口20aは、配管21bを介して散気管23に接続されていると言える。また、窒素製造装置20と配管21bと散気管23によって、曝気装置が形成される。また、配管21bは、一部が分岐して(配管21c)、酸素製造装置22および微細泡発生手段24の原料供給口にも連結されている。
【0030】
以上の窒素製造装置20と、酸素製造装置22とブロア装置27と散気管23と、微細泡発生手段24の接続関係をまとめると以下のようになる。なお、三方バルブにおいては、流体が入力する口を入口端といい、順方向に流体がでていく口を出口端といい、もう一方の出口を分岐端とよぶ。なお、分岐端は流体が入る場合もある。窒素製造装置20の高濃度酸素ガス排出口20aからは、三方バルブ62aを介して配管21bが接続され、三方バルブ62cを介して、ブロア装置27、散気管23と順に連結される。
【0031】
また、三方バルブ62aは三方バルブ62bに連結される。三方バブル62bの分岐端には酸素製造装置22の原料供給口が接続される。酸素製造装置22の酸素ガス排出口は三方バルブ62dを介して、三方バルブ62cと連結されている。従って、酸素製造装置22から排出される酸素ガスは、三方バルブ62d、三方バブル62c、ブロア装置27を通って、散気管23に送ることができる。
【0032】
三方バルブ62bは、また三方バルブ62dに連結された三方バルブ62eにも連結されている。この三方バルブ62eは、微細泡発生手段24の原料供給口の1つに連結される。三方バルブ62bから微細泡発生手段24への連結配管が配管21cである。したがって、三方バルブ62eは、配管21cの途中に配置されている。
【0033】
これらの三方バルブを適宜開閉することで、高濃度酸素ガス排出口20aから排出される高濃度酸素ガスは、散気管23、酸素発生装置22、微細泡発生手段24に独立して供給することができる。
【0034】
水槽10と海(図示せず)の間には、海水をくみ上げるための汲み上げ用配管35とポンプ32が設置される。汲み上げ用配管35には、流量計34と、フィルタ30および紫外線照射手段31が配置されている。また、紫外線照射手段31の下流には、三方バルブ61が配置される。三方バルブ61は、出口端が水槽10の内部に向かう配管に接続され、分岐端が微細泡発生手段24の原料供給口に連結している。なお、微細泡発砲手段24は、原料供給口を2つ有しており、三方バルブ61と、配管21c(三方バルブ62eの出口端)が連結されている。また、微細泡発生手段24の排出口には、散気管25が連結されている。
【0035】
水槽10の内部には、熱交換手段40と、溶存酸素計45と水温計46が設置されている。また、水槽10の水面付近には、水面検出器37が備えられている。熱交換手段40は、工場内で作られる熱源からの溶媒をパイプ内に通過させることで周囲との間で熱交換を行うものである。熱源の種類には高温源と低温源がある。それぞれの熱源によって熱量を付与された溶媒が熱交換手段40を通過することで、水槽10中の水と熱交換を行い、水を加熱もしくは冷却することができる。
【0036】
なお、熱交換手段40のON・OFFのために、バルブ41a、41bおよび42a、42bが配置されている。これは高温源と低温源からの溶媒を切り替えるためである。もちろん、すべてのバルブを閉じて熱交換手段40を動作させなくすることもできる。また、溶媒は熱量を有する液体であれば、特に限定されるものではなく、水を用いてよい。なおここでは、バルブ41a、41bを加温用バルブと呼び、バルブ42a、42bを冷却用バルブと呼ぶ。
【0037】
溶存酸素計45は、水槽10中の溶存酸素量を測定するもので、隔膜電極式や蛍光式が好適に利用することができる。
【0038】
また、養殖装置1には、各バルブ(三方バルブを含む)、酸素製造装置22、微細泡発生手段24、溶存酸素計45、水温計46が連結される制御装置50が設置されてもよい。このような構成によって制御装置50は、溶存酸素計45、水温計46からの信号を入力信号50iとして受け、各種装置および各バルブを制御信号50oによって制御することで、水槽10中の溶存酸素量や水温を貝類の生育に適した状態に保持させることができる。
【0039】
以上の養殖装置1についてその動作を説明する。ポンプ32によって海中からくみ上げられた海水は、汲み上げ用配管35を通って、フィルタ30を通過し、不純物が排除される。さらに、紫外線照射手段31によって紫外線が照射され、殺菌される。そして、三方バルブ61を介して水槽10内に送り込まれる。水槽10の海水は、排水配管36を通って再び海に戻される。この時、再度フィルタ30を通過させると好適である。水槽10には貝類の育成を促進させる餌が提供される場合もあり、そのまま自然に戻すのは適当でない場合もあるからである。
【0040】
一方、工場内に設置されている窒素製造装置20からは副産物として含有量が約30%の高濃度酸素ガスが排出される。窒素製造装置20は、工場が稼働している限り、常に稼働する。従って、高濃度酸素ガスも安定して供給される。
【0041】
この高濃度酸素ガスは、開口式回収口21aで回収され、配管21bに流される。配管21bにはブロア装置27が配置されている。そして、散気管23に高濃度酸素ガスを含んだガスを供給する。この際、ブロア装置27は、外部空気と高濃度酸素ガスを混合して散気管23に送ることができる。
【0042】
散気管23からは高濃度酸素ガスを含む気体が噴出し、水槽10中の海水を曝気する。従って、水槽10中には酸素リッチなガスが供給され、水中の溶存酸素濃度を高く保持することができる。
【0043】
貝類の育成には、酸素量だけでなく、水温も重要な要因となる。水温は20℃から25℃が適温である。そこで、水槽10には、熱交換手段40が備えられている。工場内には、さまざまな高温源や低温源が配置されている。例えば、溶剤を用いて塗料化した高機能材料を塗布後に乾燥させる工程や、半田付を行う際のリフロー工程などでは高い熱を発生させている。
【0044】
また、揮発させた溶剤を回収するための回収装置では、溶剤を含んだ気体を冷却することで溶剤を凝集させる。従って、このような工程では、低温源が備えられている。これらの高温源や低温源からの熱を水などの適当な媒体に乗せて、熱伝導性の高いパイプを通すことで、水槽10中の水との間で熱交換をすることができる。この熱交換手段40によって水槽10中の水温を調整することができる。水槽10には水温計46が設置されているので、たとえば、制御装置50が水温計46からの水温値から、熱交換手段40を制御することで、水槽10中の水を常に所定の温度に保持することができる。
【0045】
しかし、水中の溶融酸素量は、水温が低いほど多くなる。つまり、水温が高くなると、溶融酸素量が減少する。そこで、本発明に係る養殖装置1には、微細泡発生手段24と、酸素製造装置22が配置されている。
【0046】
酸素製造装置22は、通常の空気を原料として酸素を分離する装置である。通常PSA(Pressure Swing Adsorption)方式が通常用いられる。この酸素製造装置22も工場内の設備として設置されているものを使用することができる。この酸素製造装置22の原料として高濃度酸素ガスを用いれば、容易に酸素含有量が90%以上の酸素ガスを得ることができる。
【0047】
微細泡発生手段24は、ガスと水を原料として、微細な泡を発生させる手段である。より具体的には、マイクロバブル発生装置もしくはナノバブル発生装置を利用することができる。マイクロバブル発生装置は、大きさがおよそ50μm前後の微細気泡を水中に発生させる装置である。また、ナノバブル発生装置は、大きさがおよそ100nm前後の超微細気泡を発生させる装置である。マイクロバブルは、水中に放出されると、消滅するが、その際に海水のガスの溶解性を高める。また、ナノバブルはその大きさで水中に長期間存在することができる。
【0048】
そこで、酸素製造装置22からの酸素を散気管23で曝気する。若しくは、高濃度酸素ガスまたは酸素ガスを微細泡として水中に放出することで、水中の見かけの酸素量を高くすることができる。つまり、水温が高めであっても酸素リッチな環境で貝類の養殖を行うことができる。また、マイクロバブルは、水生生物にとっては、生理活性を高める効果があるため、育成を促進させるという効果もある。
【0049】
以上の動作を制御装置50が制御する場合の処理について説明する。制御装置50は、流量計34および水面検出器37によって、海中からポンプ32によってくみ上げる海水の量と水槽10の水面の高さをモニタする。そして、常に水槽10の水量を一定に保持する。
【0050】
また、窒素製造装置20の排気ガスである高濃度酸素を含んだ空気は、定常的に散気管23より曝気されるようにブロア装置27を稼働させる。この時は、三方バルブ62aの入口端と分岐端を連通させ、三方バルブ62cの分岐端と出口端を連通させる。
【0051】
また、制御装置50は、溶存酸素計45と水温計46をモニタする。もし、水温が所定の値からずれた場合は、加温用のバルブ41a、41b若しくは冷却用バルブ42a、42bを開閉することで、水槽10の水温が所定温度になるように調整する。
【0052】
また、溶存酸素量が所定の値より下がった場合は、高濃度酸素ガスよりさらに酸素量の多い、酸素ガスで曝気をするか、高濃度酸素ガス若しくは酸素ガスを微細泡にして水中に供給する。酸素ガスで曝気する場合は、三方バルブ62aの入口端と出口端を連通させ、三方バルブ62bの入口端と分岐端を連通させる。そして、三方バルブ62dの入口端と出口端を連通させ、三方バルブ62cの入口端と出口端を連通させる。
【0053】
これによって、高濃度酸素ガス排出口20aから酸素製造装置22に高濃度酸素ガスが送られ、酸素製造装置22の酸素ガス排出口から排出される酸素ガスがブロア装置27を経て散気管23に送られる。
【0054】
次に高濃度酸素ガスを微細泡として水中に供給する場合を説明する。この場合は、三方バルブ62a、62b、62eそれぞれの入口端と出口端を連通させる。また、三方バルブ61の入口端と分岐端を連通させる。このようにすることで、高濃度酸素ガスと、汲み上げ用ポンプ32からの海水が、微細泡発生手段24に供給される。そして、微細泡が散気管25から水中に放出される。
【0055】
また、酸素ガスを微細泡として水中に供給する場合は、上記のバルブ設定のうち、三方バルブ62bを入口端と分岐端で連通させ、三方バルブ62dの入口端と分岐端を連通させ、三方バルブ62eの分岐端と出口端を連通させる。このようにすることで、酸素製造装置22からの酸素ガスを微細泡発生手段24に供給することができる。
【0056】
なお、水中の溶存酸素量が減少した際に、上記のうちどの方法を選択するかは適宜決めてよいが、水中への酸素の供給効果という点からは、酸素ガスでの曝気、高濃度酸素ガスの微細泡、酸素ガスの微細泡の順で高くなる。また、三方バルブをある程度開いて、微細泡と、曝気を同時に行ってもよい。
【0057】
以上のように、本実施の形態の養殖装置1は、電子部品等の工場からの余剰資源を利用することで、貝類などの養殖を好適に行うことができる。
【0058】
(実施の形態2)
図2に本実施の形態に係る養殖装置2の構成を示す。実施の形態1と同じ構成については、説明を省略する。本実施の形態では、水槽10内の水を循環して利用する。より具体的には、水槽10からの排水は、フィルタ30および紫外線照射装置31を経由した後、水槽10に再び戻る。そこでこの経路を循環配管35rとよぶ。この循環配管35rの途中で、フィルタ30の上流側には、三方バルブ63と循環ポンプ32bと三方バルブ64がこの順で配置される。三方バルブ63の分岐端は、海からの汲み上げ用配管35に連結されている。また、三方バルブ64の分岐端は、フィルタ30を介して海に向かう排水配管36に連結される。
【0059】
次にこの養殖装置2の動作について説明する。養殖装置2は通常は、水槽10からの排水をフィルタ30を通過させ、紫外線照射手段31で殺菌し、再び水槽10に戻す。このようにすることで、水槽10内の水を海から独立させておくことができる。これは、たとえば赤潮などが発生している場合など、海からの水を取得しないほうが好ましい場合に特に有用である。フィルタ30を介しているとはいえ、すべてのプランクトンをフィルタ30で濾しきれるとは限らず、水槽10内に赤潮中のプランクトンが混入するおそれもあるからである。
【0060】
水槽10中の水を入れ替える場合は、まず水槽10からの排水を、海に放出する。この時は、三方バルブ63の入口端と出口端を連通させ、三方バルブ63の入口端と分岐端を連通させる。このようにすることで、水槽10からの排水は、フィルタ30を通過してから放出される。一方、海水を取得するときは三方バルブ63の分岐端と出口端を連通させ、三方バルブ64の入口端と出口端を連通させる。このようにすることで、汲み上げ用配管35から海水をくみ上げて、フィルタ30、紫外線照射手段31を経由したのち、水槽10中に供給することができる。
【0061】
その他の機能については、養殖装置2は、実施の形態1で示した養殖装置1と同じである。
【0062】
(実施の形態3)
図3に本実施の形態に係る養殖装置3の構成を示す。養殖装置3は、水槽11をパイプ形状にしたものである。水槽11は円筒状の本体と、両端に設けられたフランジ14で形成されている。従って、フランジ14同士を突き合わせることで、水槽11は連結することができる。また、同じくフランジ14を有するエルボーパイプ13を組み合わせることで、図3に示すように、複数の水槽11を並立させて連結した状態に形成することができる。図3では、水の流れの上流側から第1水槽11a、第2水槽11b、第3水槽11cとする。
【0063】
連結された水槽11は1つの水路を形成することとなる。この水路は、上流側の水槽11aから下流側の水槽11cを経由し、再び上流側の水槽11aに戻る閉水路を形成することができる。しかも、これらの水槽11は全体として密閉することができ、後述するように内部に圧をかけることができる。下流側の水槽11cの終端から上流側の水槽11aに向かう循環配管35r中に、バルブ69、三方バルブ65、66、フィルタ30、紫外線照射装置31、ポンプ32、三方バルブ67、68が配置される。
【0064】
なお、三方バルブ67および68は出口端が逆止弁になっており、出口端の外側からの圧力が入口端若しくは分岐端側に伝わらないようにしてある。図3中では、出口端に矢印で示した。また、バルブ69は、開口度を調整することができるバルブである。もちろん、他のバルブ(三方バルブを含め)開口度を調整できるタイプのものであってもよい。
【0065】
また、三方バルブ67と68の分岐端の間に、バッファタンク16とポンプ33が連結される。バッファタンク16には、窒素製造装置20の排気ガスである高濃度酸素ガスの配管21bが連結されている。また、酸素製造装置22が、高濃度酸素ガス排出口20aと三方バルブ63aを介して連結されている。酸素製造装置22の酸素ガス排出口は、三方バルブ63bを介して配管21bに連結されている。
【0066】
また、バッファタンク16には配管21bと連結された散気管(図示せず)が設けられている。さらに、バッファタンク16には、溶存酸素計45sと、水温計46sと、微細泡発生手段24と、熱交換手段40が設置されている。微細泡発生手段24は、バッファタンク16中に浸漬されるものを例示したが、もちろん、バッファタンク16外に配置されていてもよい。微細泡発生手段24には、配管21bからの分岐管によってガスが供給される。そして微細泡発生手段24は、ガスと周囲の水を原料として微細泡が含有された水をバッファタンク16内に放出する。
【0067】
連結された水槽11には、観察用の窓11wが形成されていてもよい。内部の貝類等の成長具合を確認するためである。また、各水槽11の上流側には、熱交換手段40が巻きつけられている。また、フランジ14のうち少なくとも1のフランジ14には、溶存酸素計45、水温計46、圧力計47が取付けられたものを用いるのが好適である。後述するように水槽11内部の状態を観測できるからである。
【0068】
なお、養殖される貝類は、水槽11内に網底を張って、載置して飼育してもよいし、また、吊り下げ紐で吊り下げるように保持してもよい。図3では、第3水槽11cが吊り下げ紐で吊り下げた貝を示している。
【0069】
以上のように構成された養殖装置3についてその動作を説明する。定常的な水の流れは、始端フランジ14aから終端フランジ14zに向けて水が流れ、その水は循環配管35rを通って、再び始端フランジ14aから第1水槽11aに入る。本実施の形態にかかわる養殖装置3の特徴は水槽11が密閉系で構成されている点である。
【0070】
従って、水槽11内を陽圧にすることができる。水槽内11を陽圧にするには、バルブ69を絞り、ポンプ32若しくはポンプ33で循環配管35r内に圧力をかける。バルブ69とポンプ32若しくはポンプ33で加圧手段を構成する。この加圧手段は、水槽11の両端に設けられることとなる。
【0071】
このようにすると縦長筒状の水槽11内は水圧がかかる。例えばアワビなどは、水深が15m前後に生息しているので、約1.5気圧程度の圧がかかる環境で生息している。この養殖装置3はそのような環境を実現することができる。
【0072】
窒素製造装置20の排気ガスである高濃度酸素ガスはバッファタンク16中で曝気され、バッファタンク16中の水の溶存酸素量を高くする。また、バッファタンク16内に設けられた熱交換手段40によってバッファタンク16中の水温は調整することができる。バッファタンク16中の水温と溶存酸素量は、水温計46sと溶存酸素計45sで測定する。
【0073】
所定の水温および溶存酸素量となったバッファタンク16中の水は、ポンプ33によって加圧されながら、水槽11中に供給される。これらの水は始端フランジ14aから第1水槽11a中に供給され、第1、第2、第3の水槽に順次供給される。なお、それぞれの水槽11の上流側には、熱交換手段40bが配置されている。熱交換手段40bは、熱源からの溶媒が通るパイプをエルボーパイプ13若しくは水槽11に巻きつけたものである。バッファタンク16で温度調整された水は、水槽11中を流れる間に、水温が変化する場合がある。そこで、それぞれの水槽11に供給する前に加熱若しくは冷却し、各水槽11中の水温を所定の値に保持するためである。
【0074】
各水槽11中の水温、溶存酸素量、水圧は、それぞれ水槽11に設けられた水温計46、溶存酸素計45、圧力計47で確認する。なお、図3では第2水槽11bの上流側のフランジ14に水温計46、溶存酸素計45、圧力計47が設置された様子を示す。しかし、他の水槽に対してもこれらの測定計を設けてもよい。
【0075】
ここで、水槽中の溶存酸素量を増やしたい場合は、バッファタンク16中の曝気に、酸素製造装置22からの酸素を使って曝気する。また、バッファタンク16中に配設した微細泡発生手段24を稼働させてもよい。本養殖装置3では、水槽11内の圧力が高いので、水温が高くなっても、溶存酸素量を高く設定することができる。また、酸素によって形成された微細泡は水圧によって圧迫され水中に溶け込んでいます。これによって溶存酸素量を大きくすることができる。これは貝類の育成に大変効果的である。
【0076】
なお、水槽11中で使用する水は、定期的に入れ替えるのが好適である。循環配管35r中にフィルタ30を介しているとはいえ、水中に貝などの排せつ物が蓄積するからである。特に窒素化合物は、水中ではアンモニアの生成につながる。循環水中にアンモニアがあると、貝の育成には悪影響を及ぼし、稚貝では死亡する場合もある。そこで、水槽11中の水は所定期間毎に入れ替えをする必要がある。
【0077】
水槽11中の水の入れ替えを行う場合は、三方バルブ66の分岐端を開き、フィルタ30を介しながら水槽11からの水を海に投棄する。
【0078】
次に三方バルブ66の出口を出口端(循環配管35r側)に切り替え、三方バルブ65の分岐端を開く。三方バルブ65の分岐端は海と繋がっており、また、ポンプ32とも直結しているので、汲み上げ用配管35を通じて海水が循環配管35r内に取得される。取得された海水は、フィルタ30を通り、紫外線照射手段31で殺菌されバッファタンク16に送られる。バッファタンク16の海水は、水温と溶存酸素量を調整された後、ポンプ33で加圧されながら水槽中に送られる。
【0079】
以上のように本実施の形態に係る養殖装置3は、工場内の資源を利用しながら、さらに加圧水圧下で養殖ができる。さらに、高い水圧を利用して、水温が高めであるにもかかわらず、溶存酸素量を上げることができるので、貝類等の養殖に好適な環境を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、貝類だけでなく、カニを初めとする甲殻類の養殖や、ウナギを初めとする比較的小型の魚類の稚魚などの養殖にも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1、2、3 養殖装置
10、11 水槽
11a 第1水槽
11b 第2水槽
11c 第3水槽
11w 窓
13 エルボーパイプ
14 フランジ
14a 始端フランジ
14z 終端フランジ
16 バッファタンク
20 窒素製造装置
20a 高濃度酸素ガス排出口
21a 開口式回収口
21b 配管
22 酸素製造装置
23 散気管
24 微細泡発生手段
25 散気管(微細泡発生手段用)
27 ブロア装置
30 フィルタ
31 紫外線照射手段
32 汲み上げ用ポンプ
32b 循環ポンプ
34 流量計
35 汲み上げ用配管
35r 循環配管
36 排水配管
37 水面検出器
40、40b 熱交換手段
41a、41b 加温用バルブ
42a、42b 冷却用バルブ
45、45s 溶存酸素計
46 46s 水温計
50 制御装置
61 三方バルブ
62a〜62e 三方バルブ
63a、63b 三方バルブ
図1
図2
図3