特許第6052521号(P6052521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6052521耐食性金属部材被覆の製造プロセス、及び、耐食性金属部材の製造プロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052521
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】耐食性金属部材被覆の製造プロセス、及び、耐食性金属部材の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/12 20060101AFI20161219BHJP
   C23C 22/30 20060101ALI20161219BHJP
   C23C 22/33 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C23C22/12
   C23C22/30
   C23C22/33
【請求項の数】24
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-544708(P2014-544708)
(86)(22)【出願日】2011年11月28日
(65)【公表番号】特表2014-534351(P2014-534351A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】US2011062214
(87)【国際公開番号】WO2013081574
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2014年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】514133807
【氏名又は名称】エコ−グリーン コーティングス、エル.エル.シー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クリップス、ウィリアム ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャローズ、セオドア
(72)【発明者】
【氏名】セラフィーニ、マイク
(72)【発明者】
【氏名】カピッツァーノ、ウィリアム
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−200768(JP,A)
【文献】 特開2001−316841(JP,A)
【文献】 特表2000−509434(JP,A)
【文献】 特開2001−172770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/0−30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物及び少なくとも1種のクロム化合物を組み合わせて、第1の溶液を形成するステップと、
別途に、少なくとも1種のケイ酸塩化合物を水と組み合わせて、第2の溶液を形成するステップと、
前記第1の溶液を前記第2の溶液と組み合わせて、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材の上に、被覆を形成するための耐食性金属部材被覆混合物を形成するステップと、
前記亜鉛又は亜鉛合金表面を有する前記金属基材の上に、前記被覆の被覆重量が少なくとも0.0053オンス/ft(1.61g/m)となるように、前記耐食性金属部材被覆混合物を用いて前記被覆を形成する段階と、
を含み、
前記金属基材の前記表面の前記亜鉛又は前記亜鉛合金の重量は、少なくとも0.04オンス/ft(12.20g/m)であり、
前記被覆は、前記被覆の被覆重量が少なくとも0.0053オンス/ft(1.61g/m)となるように、前記耐食性金属部材被覆混合物が前記金属基材に塗工されたときに、前記金属基材の表面の前記亜鉛又は前記亜鉛合金が0.04オンス/ft(12.20g/m)の重量を有する場合のASTM B117規格に準拠して、少なくとも150時間の化学的耐性を与え、
前記耐食性金属部材被覆混合物は、
20重量パーセント以上95重量パーセント以下の第1の溶液と、
5重量パーセント以上12重量パーセント以下の第2の溶液と、
5重量パーセント以上50重量パーセント以下の水と、
を含み、
前記第1の溶液は、
4重量パーセント以上27重量パーセント以下の水と、
5重量パーセント以上27重量パーセント以下の少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物と、
5重量パーセント以上27重量パーセント以下の少なくとも1種のクロム化合物と、
を含む、
耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項2】
前記耐食性金属部材被覆混合物を少なくとも1種のアクリル樹脂と組み合わせるステップを更に含む、
請求項1に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項3】
前記耐食性金属部材被覆混合物を用いて前記被覆を形成する段階は、
前記耐食性金属部材被覆混合物を、前記亜鉛又は亜鉛合金表面を有する前記金属基材に塗工して、前記金属基材上に前記被覆を形成するステップを含む、
請求項1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項4】
前記少なくとも1種のアクリル樹脂が3.5以下のpH値を有する、
請求項2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項5】
前記耐食性金属部材被覆混合物を用いて前記被覆を形成する段階は、
前記被覆された金属基材を加熱して、前記塗工された耐食性金属部材被覆混合物と前記金属基材の前記亜鉛又は亜鉛合金表面との間の反応を促進するステップを含む、
請求項3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項6】
前記亜鉛又は亜鉛合金表面が、亜鉛、亜鉛合金、亜鉛−アルミニウム合金及びそれらの混合物からなる群より選択される、
請求項3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項7】
前記金属基材に塗工された前記耐食性金属部材被覆混合物が、前記金属基材の前記亜鉛又は亜鉛合金表面と反応して、前記亜鉛又は亜鉛合金表面と化学結合を形成する、
請求項3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項8】
前記耐食性金属部材被覆混合物が3.5以下のpH値を有する、
請求項1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項9】
前記少なくとも1種のケイ酸塩化合物がケイ酸カリウム化合物を含む、
請求項1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項10】
前記少なくとも1種のクロム化合物が、3価クロム化合物を含む、
請求項1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項11】
前記3価クロム化合物が、塩化クロム水和物、硫酸クロム(III)カリウム、水酸化クロム、フッ化クロム(III)、硫酸クロム(III)、硫化クロム(III)、酸化クロム(III)、2−エチルヘキサン酸クロム(III)、窒化クロム(III)、トリカルボニルクロム及びそれらの混合物からなる群より選択される、
請求項10に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項12】
前記少なくとも1種のクロム化合物が、6価クロム化合物を含む、
請求項1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項13】
前記6価クロム化合物が、ハロゲン化クロム(VI)、六フッ化物、塩化クロミル、クロム酸ナトリウム、過酸化クロム(VI)、クロム酸ナトリウム、酸化クロム(VI)、重クロム酸塩、クロム酸カリウム、クロム酸カルシウム、クロム酸バリウム、過酸化クロム(VI)及びそれらの混合物からなる群より選択される、
請求項12に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項14】
前記耐食性金属部材被覆混合物を塗工するステップが、前記耐食性金属部材被覆混合物を前記金属基材の表面上にロール塗工することを含む、
請求項3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項15】
前記耐食性金属部材被覆混合物を塗工するステップが、前記耐食性金属部材被覆混合物を前記金属基材の表面上に噴霧することを含む、
請求項3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項16】
前記耐食性金属部材被覆混合物を塗工するステップが、前記亜鉛又は亜鉛合金表面を有する前記金属基材の少なくとも一部を前記耐食性金属部材被覆混合物の浴に浸漬することを含む、
請求項3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項17】
前記耐食性金属部材被覆混合物を塗工するステップが、前記亜鉛又は亜鉛合金表面の全ての空隙に前記耐食性金属部材被覆混合物の溶液を充填することを更に含む、
請求項3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項18】
前記耐食性金属部材被覆混合物が、1.0以上2.5以下のpH値を有する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項19】
前記耐食性金属部材被覆が電気伝導性である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項20】
前記耐食性金属部材被覆が撥水性である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項21】
前記耐食性金属部材被覆が、亜鉛又は亜鉛合金で被覆された金属部材に対して、塗料への密着にとって向上した表面を与える、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項22】
前記耐食性金属部材被覆が自己修復性である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
【請求項23】
耐食性被覆混合物を亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工して、耐食性被覆を有する金属部材を提供するステップを含み、
前記耐食性被覆は、前記金属基材の表面の前記亜鉛又は亜鉛合金が0.04オンス/ft(12.20g/m)の重量を有する場合のASTM B117規格に準拠して、150時間を超える化学的耐性を有し、
前記金属基材の前記表面の前記亜鉛又は前記亜鉛合金の重量は、少なくとも0.04オンス/ft(12.20g/m)であり、
前記耐食性被覆混合物は、混合水溶液を含み、
前記混合水溶液は、
20重量パーセント以上95重量パーセント以下の第1の溶液と、
5重量パーセント以上12重量パーセント以下の第2の溶液と、
5重量パーセント以上50重量パーセント以下の水と、
を含み、
前記第1の溶液は、
4重量パーセント以上27重量パーセント以下の水と、
5重量パーセント以上27重量パーセント以下の少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物と、
5重量パーセント以上27重量パーセント以下の少なくとも1種のクロム化合物と、
を含み、
前記第2の溶液が少なくとも1種のケイ酸塩化合物及び水を含み、
前記耐食性被覆混合物を前記金属基材に塗工する段階は、前記耐食性被覆の被覆重量が少なくとも0.0053オンス/ft(1.61g/m)となるように、前記耐食性被覆混合物を前記金属基材に塗工する段階を含む、
耐食性金属部材の製造プロセス。
【請求項24】
前記耐食性被覆混合物が少なくとも1種のアクリル樹脂を更に含む、
請求項23に記載の耐食性金属部材の製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属及び被覆金属の連続塩水噴霧試験のための、米国材料試験協会インターナショナル ASTM B117−11(本明細書中では以下、ASTM B117と呼ぶ。)規格に適合する、亜鉛又は亜鉛合金被覆基材用耐食性被覆の製造プロセスに関する。2011年8月に最後に改定されたASTM B117規格は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
鋼は、保護が行われないままの場合には、殆ど全ての環境において錆びることは周知である。鋼に対して亜鉛の薄い被覆を塗工することは、鋼を腐食から保護するための効果的且つ経済的な方法である。鉄、鋼又はアルミニウムの何れであっても、金属基材を亜鉛メッキする最も一般的な形態は、厚く堅固な層が金属基材の表面上に溶着される、溶融亜鉛メッキである。金属基材が約850°F(460℃)の温度の溶融亜鉛浴に浸漬され、金属基材上に冶金的に結合した亜鉛被覆を形成する。得られる被覆金属基材は、非被覆金属基材と実質的に同様の方法で使用することができる。鋼帯コイルは、例えば、連続生産ラインにおいて、鋼帯を分当たり600フィートに及ぶ速度で溶融亜鉛浴に浸漬して、溶融亜鉛メッキすることができる。鋼が溶融亜鉛浴を出る際に、鋼上に溶着された過剰な被覆を除去するエア「ナイフ」によって、指定の被覆厚さが制御される。亜鉛メッキされた鋼は、鋼の強度に亜鉛の耐食性を併せもつことを要求される用途に使用される。連続的亜鉛メッキプロセスは、厚さ、外観、及び合金組成が相違する多くの異なる被覆を塗工することができる。用語「亜鉛メッキ」とは、亜鉛である主成分を有する標準的な連続的被覆をいう。約0.2%のアルミニウムを亜鉛メッキ浴に添加して、亜鉛被覆の形成を確実にする、薄い、鉄−アルミニウム抑制層を鋼表面上に形成してもよい。仕上がった亜鉛又は亜鉛合金被覆は、良好な成型性及び耐食性を有し、優れた犠牲防食を提供する。後に説明するように、一部の用途においては、亜鉛又は亜鉛合金被覆は金属基材の焼鈍と併せて塗工される。これらの製品は、多くの場合ガルバニール処理されたと呼ばれる。
【0003】
金属基材を亜鉛メッキする他のプロセスとしては、別名電気亜鉛メッキとして知られる電着亜鉛メッキ、熱拡散亜鉛メッキ、及びガルバニール処理が挙げられる。電気亜鉛メッキは、亜鉛及び塩類の溶液中に亜鉛陽極と共に鋼基材を浸漬することを含み、鋼基材が導体として作用する。回路に電流が流されると、鋼基材の表面上に亜鉛被覆が析出する。熱拡散亜鉛メッキにおいては、鋼基材が亜鉛粉末及び一般的には砂である促進剤化学物質の混合物と共に転倒混合され、亜鉛の融点よりもやや低い温度に加熱される。ガルバニール処理金属基材は、亜鉛メッキと焼鈍とを組み合わせたプロセスに由来し、特殊化した鋼シートを産み出す。ガルバニールを形成するためには、鋼が溶融亜鉛メッキプロセスに供され、非常に緻密で灰色がかった艶消しの仕上がりを有する亜鉛被覆鋼を形成する。この被覆鋼は、次に再結晶温度を超える温度に加熱され、適宜の温度にある時間保持され、その後冷却される。この加熱及び冷却が、強度及び延性などの鋼の特性を変化させる。ガルバニールの亜鉛被覆は、成形され、打ち抜かれ、及び曲げられる際に剥がれ落ちることがない。更に、非常に緻密な艶消しの仕上がりがプライマーの役割を果たし、防錆をもたらす一方で、塗料をより容易に接着させる。これらの特性により、ガルバニールは自動車、標識及び電装品産業において評価の高い選択肢となっている。
【0004】
亜鉛被覆は、その下にある鋼に対して物理的防壁並びに陰極防食を提供することにより鋼を保護する。亜鉛メッキ被覆が鋼を保護する主たる機構は、水分を鋼に接触させない、不浸透性の防壁を提供することによるものである。水分(必要な電解液)なしには、腐食は起こらない。例えば切傷、掻き傷又は磨滅によって基礎の鋼が露出した場合、露出した鋼に隣接する亜鉛被覆の犠牲的腐食によって、露出した鋼はなおも保護される。これは、亜鉛はガルバニ列において鉄に比べてより電気陰性(より反応性)であり、亜鉛が鉄よりも先に酸化されることによる。犠牲陽極として作用する亜鉛は、塗料、ほうろう、粉体塗装及びその他の防食方法にはない利点である。しかしながら、亜鉛は反応性の金属であり、経時的に、継続的に徐々に腐食し、最終的にはその保護材としての特質を失うこととなる。更に、多くの用途において、金属基材が、亜鉛メッキされた後に、通常は冷間圧延、それだけでなく熱間圧延、切削、又は研磨によって、所望の寸法まで抽伸され、亜鉛被覆の厚さが減少し、それ故に亜鉛被覆によりもたらされる耐食の有効性が減少する。この理由により、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する被覆金属基材が抽伸された場合であっても、亜鉛又は亜鉛合金被覆基材に対して高い防食性をもたらす耐食性被覆が求められている。
【0005】
本明細書に記載するプロセスは、亜鉛メッキ鋼に対してのみならず、ガルバニール処理炭素鋼にも適用することができ、ガルバニール処理炭素鋼は、溶融亜鉛メッキプロセスにより亜鉛で被覆された鋼であり、該プロセスは被覆を亜鉛−鉄合金に転化するものであり、上記鋼は続いて焼鈍される。この合金への転化が、当該シートを製造後の塗装に適したものとする、光沢のない艶消しの仕上がりをもたらす。更に、本プロセスは、連続溶融メッキプロセスによって炭素鋼がアルミニウム−亜鉛合金により被覆されるガルバリューム(Galbalume)(登録商標)プロセスに供された鋼に適用することができる。公称の被覆組成は、約55%のアルミニウム及び45%の亜鉛に、(少なくとも鋼基材に対する被覆の接着を向上させるために添加される)少量のケイ素が加わったものである。本プロセスは、ガルバリューム(登録商標)被覆を含む任意の亜鉛メッキ金属基材の形態に適用することができる。
【0006】
亜鉛被覆が鋼を保護する能力は、亜鉛の腐食速度に依存する。新たに曝露された亜鉛メッキ鋼は周囲の雰囲気と反応して一連の腐食生成物(例えば「白錆」又は「赤錆」)を生成する。空気中では、新たに曝露された亜鉛は酸素と反応して非常に薄い酸化亜鉛層を形成する。水分が存在すると、亜鉛は水と反応した結果水酸化亜鉛を生成する。水酸化亜鉛は空気中の二酸化炭素と反応するので、雰囲気への曝露に伴い生成する一般的な腐食生成物は炭酸亜鉛である。
【0007】
これらの亜鉛腐食生成物は、多くの有害な影響を生じることとなる。例えば、酸化亜鉛は、塗料の金属に対する密着を妨げるだけでなく、全ての亜鉛メッキ被覆の外観を損ねる金属の更なる腐食を促進する。純水は実質的に溶解した無機質を含まないが、亜鉛は純水と速やかに反応して、嵩高く、白く、相対的に不安定な亜鉛酸化物である水酸化亜鉛を生成することとなる。新たに亜鉛メッキされた鋼が、特に酸素が不足する環境において、純水(例えば雨、露又は結露など)に曝露されると、水は継続的に亜鉛と反応し、次第に被覆を消費していくこととなる。従って、指数関数的に向上した耐食性を有するだけでなく、向上した下地塗りに対する密着性をも有する、亜鉛又は亜鉛合金耐食性金属部材の製造プロセスが望まれている。
【0008】
一部の市販組成物は、亜鉛メッキ金属基材を不動態化する能力を有し、亜鉛腐食生成物の生成を低減する。これらの不動態化剤は、通常重クロム酸塩又はクロム酸塩組成物を利用し、一般的に浸漬を介して塗工される。これらの市販製品の殆どが提供する防食性は限定的である。未処理の表面は、ASTM規格A1003/A1004に準拠する中性塩水噴霧への0.5時間の曝露後に腐食の兆候を示すこととなるが、浸漬操作により形成されたクロム酸塩薄膜は、通常、塩水噴霧雰囲気への12〜75時間の曝露後に腐食の兆候を示すこととなる。塩水噴霧雰囲気への75時間を超える曝露の耐食性を提供する耐食性被覆が求められている。
【0009】
加熱浸漬被覆プロセスは、多数の有害な副生成物を生成する。例えば、噴霧被覆又は浸漬被覆を介して亜鉛メッキ金属基材にリン酸亜鉛被覆が塗工される場合、全ての過剰な被覆組成物を除去するための濯ぎステップが、その後に続かなければならない。次に、リン酸亜鉛化の濯ぎ水は、全ての有害成分を除去するための処理がなされなければならない。結果として生じるのは、環境保護局(EPA)により定められた指針に準拠した有害廃棄物として廃棄されなければならない、有害成分を多く含む汚泥である。汚泥は浸漬槽内でも発生し、これは除去され、EPA指針に準拠して廃棄されなければならない。更に、浸漬槽自体が有限の寿命を有し、これもまたEPA指針に準拠して廃棄されなければならない。有害廃棄物の廃棄は非常に大きな費用を要し、時間を消費する。従って、手間が掛かり費用を要する廃棄を必要とする有害廃棄物である副生成物を生成しない亜鉛メッキ金属基材用の被覆が、実際に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の耐食性被覆は、亜鉛又は亜鉛合金表面被覆を有する金属基材に対して1,000時間の保護を超える、及び、亜鉛又は亜鉛合金表面被覆を有する冷間抽伸金属基材に対して144時間を超える、向上した塩水噴霧環境に対する耐食性を提供する。更に、本開示の耐食性被覆は、有害廃棄物の廃棄の必要性をなくす、乾式適量(dry−in−place)塗工を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
水、少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物及び少なくとも1種のクロム化合物を組み合わせて、第1の溶液を形成するステップと、別途に、少なくとも1種のケイ酸塩化合物を水と組み合わせて、第2の溶液を形成するステップと、第1の溶液を第2の溶液と組み合わせて、混合水溶液を形成するステップと、該混合水溶液を少なくとも1種のアクリル樹脂と組み合わせて、被覆混合物を形成するステップと、該被覆混合物を亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工して、該金属基材上に被覆を形成するステップと、を含み、該被覆が、上記金属基材の上記亜鉛又は亜鉛合金被覆が0.04オンス/ft(12.20g/m)の重量を有する場合のASTM B117規格に準拠して、少なくとも150時間の化学的耐性を与える、耐食性金属部材の製造プロセスがここに開示される。
【0012】
水、少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物及び少なくとも1種のクロム化合物を組み合わせて、第1の溶液を形成するステップと、別途に、少なくとも1種のケイ酸塩化合物を水と組み合わせて、第2の溶液を形成するステップと、第1の溶液を第2の溶液と組み合わせて、被覆混合物を形成するステップと、上記被覆混合物を亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工して、該金属基材上に被覆を形成するステップと、を含み、該被覆が、上記金属基材の上記亜鉛又は亜鉛合金被覆が0.04オンス/ft(12.20g/m)の重量を有する場合のASTM B117規格に準拠して、少なくとも150時間の化学的耐性を与える、耐食性金属部材の製造プロセスもまた開示される。
【0013】
亜鉛又は亜鉛合金表面は、亜鉛、亜鉛合金、亜鉛−アルミニウム合金、亜鉛塩溶液、熱処理亜鉛合金及びそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。被覆混合物は、金属基材の亜鉛又は亜鉛合金表面と化学反応することができ、亜鉛又は亜鉛合金表面との化学結合を形成する。クロム化合物は、3価のクロム化合物(すなわちクロム(III))から構成されてもよい。3価のクロム化合物は、塩化クロム水和物、硫酸クロム(III)カリウム、水酸化クロム、フッ化クロム(III)、硫酸クロム(III)、硫化クロム(III)、酸化クロム(III)、2−エチルヘキサン酸クロム(III)、窒化クロム(III)、トリカルボニルクロム及びそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。クロム化合物は、また、6価のクロム化合物(すなわちクロム(VI))から構成されてもよい。6価クロム化合物は、ハロゲン化クロム(VI)、六フッ化物、塩化クロミル、クロム酸ナトリウム、過酸化クロム(VI)、クロム酸ナトリウム、酸化クロム(VI)、重クロム酸塩、クロム酸カリウム、クロム酸カルシウム、クロム酸バリウム、過酸化クロム(VI)、及びそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。
【0014】
水、少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物及び少なくとも1種のクロム化合物を組み合わせて、第1の溶液を形成するステップと、別途に、少なくとも1種のケイ酸塩化合物を水と組み合わせて、第2の溶液を形成するステップと、第1の溶液を第2の溶液と組み合わせて、混合水溶液を形成するステップと、該混合水溶液を少なくとも1種のアクリル樹脂と組み合わせて、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工して該金属基材上に被覆を形成するための耐食性金属部材被覆混合物を形成するステップであって、上記被覆が、上記金属基材の上記亜鉛又は亜鉛合金被覆が0.04オンス/ft(12.20g/m)の重量を有する場合のASTM B117規格に準拠して、少なくとも150時間の化学的耐性を与える上記ステップと、を含む、耐食性金属部材被覆の製造プロセスが更に開示される。他の実施形態において、第1の溶液及び第2の溶液は、組み合わされて被覆混合物を形成してもよく、該被覆混合物は、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工されて、該金属基材上に被覆を形成してもよく、該被覆は、上記金属基材の上記亜鉛又は亜鉛合金表面が0.04オンス/ft(12.20g/m)の重量を有する場合のASTM B117規格に準拠して、少なくとも150時間の化学的耐性を与える。
【0015】
上記被覆混合物は、上記金属部材上に該被覆混合物をロール塗工することによる、金属部材上に被覆混合物を噴霧することによる、又は亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材の少なくとも一部を被覆混合物の浴に浸漬することによるなどの、種々の方法で塗工してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の耐食性金属部材被覆の乾式適量塗工を提供するための装置、及び反応プロセスを促進するための加熱装置の概略の側面図を示す図である。
図2】120時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、溶融亜鉛メッキした(HDG)G−60非化学処理(「NCT」)パネルの写真である。
図3】クロム(VI)を含む本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆され、1008時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、ガルバニール処理パネルの写真である。
図4】96時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、非被覆のガルバニール処理パネルの写真である。
図5】クロム(VI)を含む本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆され、1512時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、ガルバニール処理パネルの写真である。
図6】144時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、HDG G−40(NCT)金属基材パネルの写真である。
図7】クロム(III)を含む本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆され、15%から23%で冷間抽伸され、144時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材パネルの写真である。
図8a】クロム(VI)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆を含む、本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆され、16%から23%で冷間抽伸され、120時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材パネルのおもて面の写真である。
図8b】クロム(VI)を含む本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆され、16%から23%で冷間抽伸され、120時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材パネルの裏面の写真である。
図9a】クロム(VI)を含む本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆され、16%から23%で冷間抽伸され、120時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する成形間柱完成品のおもて面の写真である。
図9b】クロム(VI)を含む本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆され、16%から23%で冷間抽伸され、120時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する成形間柱完成品の裏面の写真である。
図10】120時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、非被覆のHDG G−40(NCT)の成形間柱完成品の写真である。
図11a】クロム(III)を含む本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆され、23%から24%で冷間抽伸され、120時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する成形間柱完成品のおもて面の写真である。
図11b】クロム(III)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆され、23%から24%で冷間抽伸され、120時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する成形間柱完成品の裏面の写真である。
図12a】クロム(VI)を含む本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆され、23%から24%で冷間抽伸され、120時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する成形間柱完成品のおもて面の写真である。
図12b】クロム(VI)を含む本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆され、23%から24%で冷間抽伸され、120時間までの間塩水噴霧雰囲気に曝露された、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する成形間柱完成品の裏面の写真である。
図13】本開示の耐食性金属部材被覆と亜鉛又は亜鉛合金被覆金属基材表面との間の相互作用の走査電子顕微鏡(SEM)像である。
図14】本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆された、撥水性を有する、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
亜鉛又は亜鉛合金被覆基材用耐食性被覆の製造プロセス、及び耐食性金属部材の製造プロセスが開示される。また、化学的耐性を与える耐食性被覆を有する耐食性金属部材も開示される。
【0018】
図2から図12bまでを参照すると、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する非被覆の金属基材、及びクロム(VI)又はクロム(III)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆の溶液で被覆された、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材が、ASTM B117の要件に適合する塩水噴霧環境に曝露された。耐食性金属部材被覆の製造プロセスは、水、少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物及び少なくとも1種のクロム化合物を組み合わせて、第1の溶液を形成するステップと、別途に、少なくとも1種のケイ酸塩化合物を水と組み合わせて、第2の溶液を形成するステップと、第1の溶液を第2の溶液と組み合わせて、混合水溶液被覆混合物を形成するステップと、上記被覆混合物を亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工して、0.04オンス/ft(12.20g/m)の亜鉛又は亜鉛合金被覆重量に対するASTM B117規格に準拠して、少なくとも150時間の化学的耐性を与える耐食性被覆混合物を有する金属基材を提供するステップと、を含む。一部の実施形態において、少なくとも1種のケイ素化合物がケイ酸カリウム化合物を含んでもよい。更なる実施形態において、第1の水溶液と第2の水溶液との組み合わせからなる混合水溶液は、少なくとも1種のアクリル樹脂と組み合わされて、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工するための被覆混合物を形成してもよい。
【0019】
当業者は、0.04オンス/ft(12.20g/m)の亜鉛又は亜鉛合金被覆重量を有する金属基材に対するASTM B117規格に準拠して、少なくとも150時間の化学的耐性を与える耐食性被覆混合物は、金属基材の亜鉛又は亜鉛合金表面の被覆重量、及び金属基材の亜鉛又は亜鉛合金表面に塗工される耐食性被覆の被覆重量に依存して、耐食性の期間が変化することとなることを理解しよう。0.04オンス/ft(12.20g/m)の被覆重量をもつ亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に対するASTM B117規格に準拠する少なくとも150時間の化学的耐性との指標は、本開示の耐食性被覆の有効性を規定する比較基準であって、特定の金属基材上の亜鉛又は亜鉛合金の被覆重量への限定ではない。例えば、本プロセスは、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に対して、上記金属基材が0.02オンス/ft(6.10g/m)の被覆重量をもつ亜鉛又は亜鉛合金表面を有する場合のASTM B117規格に準拠して、少なくとも75時間の化学的耐性を与える耐食性被覆混合物を包含する。
【0020】
ASTM B117規格は、広範に用いられる標準化された塩水噴霧環境の小区画内試験である。かかる塩水噴霧試験は、95°F(35℃)の昇温状態で12mL/hrの塩水噴霧へ曝露された被覆材料又は非被覆材料の相対的な腐食の、すなわち化学的な、耐性を評価するために用いられる。ASTM B117規格は、試験片を囲まれた塩水噴霧小区画すなわちチャンバ内に載置し、中性(pH6.5〜7.2)の塩水溶液の連続的な間接噴霧に供することとすると規定する。かかる環境は、塩水噴霧試験期間を通じて一定に維持され得る。塩水噴霧試験に用いられる水は、反応剤水に関するASTM D1193規格、類型VIに準拠する。塩、通常は塩化ナトリウム、を上記の水に添加して5%の塩溶液からなる溶液を得る。ASTM B117によれば、試験片の塩水噴霧チャンバ内での規定値としての位置は、垂直線から15〜30度の角度で、一つの試験片からの凝縮液が別な試験片上に滴下することがないように配置される。
【0021】
水、少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物及び少なくとも1種のクロム化合物を組み合わせて、第1の溶液を形成するステップと、別途に、少なくとも1種のケイ酸塩化合物を水と組み合わせて、第2の溶液を形成するステップと、第1の溶液を第2の溶液と組み合わせて、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工して上記金属基材上に被覆を形成するための耐食性金属部材被覆混合物を形成するステップであって、上記被覆が、上記金属基材の上記亜鉛又は亜鉛合金被覆が0.04オンス/ft(12.20g/m)の重量を有する場合のASTM B117規格に準拠して、少なくとも150時間の化学的耐性を与える上記ステップと、を含む、耐食性金属部材被覆の製造プロセスも、また開示される。一部の実施形態において、該耐食性金属部材被覆の製造プロセスは、第1の溶液及び第2の溶液を組み合わせて混合水溶液を形成するステップと、該混合水溶液を少なくとも1種のアクリル樹脂と組み合わせて、耐食性金属部材被覆混合物を形成するステップと、を含んでもよい。
【0022】
更に、耐食性被覆を亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工して、上記金属基材の亜鉛又は亜鉛合金被覆が0.04オンス/ft(12.20g/m)の重量を有する場合のASTM B117規格に準拠して、150時間を超える化学的耐性を有する耐食性被覆を有する金属部材を提供するステップを含み、該耐食性被覆が混合水溶液を含み、該混合水溶液が第1の溶液及び第2の溶液を含み、第1の溶液が水、少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物及び少なくとも1種のクロム化合物を含み、第2の溶液が少なくとも1種のケイ酸塩化合物及び水を含む、耐食性金属部材の製造プロセスが開示される。一部の実施形態において、耐食性被覆は、少なくとも1種のアクリル樹脂を更に含んでもよい。
【0023】
更に、亜鉛又は亜鉛合金被覆を有する金属部材と、上記金属基材の亜鉛又は亜鉛合金被覆が0.04オンス/ft(12.20g/m)の重量を有する場合のASTM B117規格に準拠して、150時間を超える化学的耐性を与える耐食性被覆と、を含み、上記耐食性被覆が第1の溶液及び第2の溶液を含み、第1の溶液が水、少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物及び少なくとも1種のクロム化合物を含み、第2の溶液が少なくとも1種のケイ酸塩化合物及び水を含む、耐食性金属部材が開示される。一部の実施形態において、上記耐食性被覆は、少なくとも1種のアクリル樹脂を更に含んでもよい。
【0024】
第1の溶液は、4重量パーセントと27重量パーセントとの間の水、5重量パーセントと27重量パーセントとの間の少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物、及び5重量パーセントと27重量パーセントとの間のクロム化合物を含んでもよい。上記耐食性金属部材被覆は、20重量パーセントと95重量パーセントとの間の第1の溶液、5重量パーセントと12重量パーセントとの間の第2の溶液、5重量パーセントと30重量パーセントとの間のアクリル樹脂、及び5重量パーセントと50重量パーセントとの間の水を含んでもよい。本開示において用いられる、2つの両端の間として特定される範囲は、特定された両端を含む。
【0025】
第1の溶液は、第2の溶液と組み合わされて混合水溶液を形成してもよい。一部の実施形態において、該混合水溶液は、少なくとも1種のアクリル樹脂と組み合わされてもよい。他の実施形態において、混合水溶液はアクリル樹脂を含まなくともよい。少なくとも1種のアクリル樹脂は、3.5以下のpH値を有してもよい。一方、耐食性金属部材被覆混合物は2.5以下のpH値を有してもよい。一部の実施形態において、被覆混合物は1.0と2.5との間の両端を含むpH値を有してもよい。一部の実施形態において、溶液の凝結又は分離を避けるために、アクリル樹脂を部分に分けて水溶液に混合してもよく、アクリル樹脂の第1の部分を水溶液に混合し、該アクリル樹脂の水溶液への混合を完了する。アクリル樹脂の第1の部分を含む水溶液は、ある時間、例えば20分間混合され、その後アクリル樹脂の第2の部分が水溶液に混合される。このプロセスを、所望量のアクリル樹脂の全てを水溶液に混合するまで繰り返してもよい。更に、所望量のアクリル樹脂を全て水溶液に混合した後に、溶液を更にある時間混合して、溶液が均一な濃度を有し、移送がより容易になるようにしてもよい。
【0026】
耐食性金属部材被覆は、少なくとも1種のクロム化合物を含んでもよい。一部の実施形態において、クロム化合物は、3価のクロム化合物から構成されてもよい。3価のクロム化合物は、塩化クロム水和物、硫酸クロム(III)カリウム、水酸化クロム、フッ化クロム(III)、硫酸クロム(III)、硫化クロム(III)、酸化クロム(III)、2−エチルヘキサン酸クロム(III)、窒化クロム(III)、トリカルボニルクロム及びそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。
【0027】
他の実施形態において、クロム化合物は、6価のクロム化合物から構成されてもよい。6価クロム化合物は、ハロゲン化クロム(VI)、六フッ化物、塩化クロミル、クロム酸ナトリウム、過酸化クロム(VI)、クロム酸ナトリウム、酸化クロム(VI)、重クロム酸塩、クロム酸カリウム、クロム酸カルシウム、クロム酸バリウム、過酸化クロム(VI)及びそれらの混合物からなる群より選択されてもよい。
【0028】
耐食性金属部材被覆は、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属部材に対して、いくつかのプロセスで塗工することができる。被覆は、本開示の耐食性被覆の浴に亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属部材が浸漬されるなどの浸漬を通して塗工されてもよく、また、耐食性被覆は、電解の補助を受け若しくは補助なしで、金属部材の亜鉛又は亜鉛合金表面上に噴霧されてもよい。しかし、本開示の耐食性金属部材被覆は、図1に示すような乾式適量塗布プロセスにおいて特に有利に塗工され得る。金属帯部材10からなるコイル8を準備してもよい。亜鉛又は亜鉛合金表面11を有する金属部材帯10がコイル8から繰り出され、金属帯部材10は、一連の金属帯移送ロール16により、乾式適量塗布プロセスを通して移送されてもよい。図1に示す実施形態において、金属帯部材10は、耐食性被覆を受ける準備として、アルカリ洗浄装置14を通過する。アルカリ洗浄装置14では、金属帯部材10の亜鉛又は亜鉛合金表面11と本開示の耐食性被覆との間の反応を妨げ得る圧延機表面油が、金属帯部材10の表面から除去される。次に、金属帯10は、金属帯移送ロール16を介して、濯ぎ15a及び15bを通過し、アルカリ洗浄装置14を通過した後の金属帯10の亜鉛又は亜鉛合金表面11のpHレベルを中和する。金属帯10は、金属帯移送ロール16を介して塗工装置21を通って進行する。塗工装置21は、リバースロール被覆塗工法を用いて、耐食性金属部材被覆20を金属帯10に塗工する。塗工ロール12は、塗工ロールの回転方向が、塗工装置21を通って進行する金属帯10の進行方向に対して逆となるように回転する。耐食性金属部材被覆20が被覆トレー19に入っており、被覆トレー19からピックアップロール18によりピックアップされる。ピックアップロール18及び塗工ロール12は異なる速度で回転し、耐食性金属部材被覆20をピックアップロール18から塗工ロール12へ移動させる。塗工ロール12とピックアップロール18との間の速度差が、耐食性金属部材被覆20が亜鉛又は亜鉛合金表面11を有する金属帯10に対して塗工された状態での、耐食性金属部材被覆20の厚さ(被覆重量)を制御する。ロール12は、金属帯部材10の一つの表面11のみを塗工するように適合されてもよいが、その代わりに、図1に示すように、ロール12が、2又はそれ以上の金属部材10の側面が同時に塗工され得るように適合されてもよい。他の実施形態において、耐食性金属部材被覆が、ロール12の中心にある流通路(図示されない)を通してロール12に供給されてもよく、該流通路は、耐食性被覆15をロール12の表面へと外に向かって移動させる開口部14を有する。その代わりに、耐食性被覆15は、塗布機を介して直接ロール12の表面に塗布されてもよく、又は、ロール12上に噴霧されてもよい。
【0029】
耐食性金属部材被覆20が金属帯部材10の亜鉛又は亜鉛合金表面11に塗工された後、亜鉛又は亜鉛合金表面11と耐食性被覆20の間で反応が起きてもよい。耐食性金属部材の製造プロセスは、被覆金属基材10を加熱して、塗工された被覆混合物20と金属基材10の亜鉛又は亜鉛合金表面11との間の反応を促進するステップを更に含んでもよい。かかる加熱は加熱装置17により提供されてもよく、ここで金属基材10が移送ロール16を介して加熱装置17を通過し、反応を完結させる。加熱装置17は、金属部材10の表面11を加熱することができる赤外線加熱装置であってもよい。一部の実施形態において、加熱装置17は、金属部材10の表面11を170°F〜210°Fの間の温度に加熱してもよい。他の実施形態において、加熱装置17は、所望であれば、金属部材10の表面11を約700°Fといったより高い温度まで加熱してもよい。金属帯部材10が塗工ロール12及び加熱装置17を、約600ft/min(3.06m/s)の速度で通過してもよい。最後に、被覆金属帯部材10は、その後の輸送のために、コイル9へと再度巻き取られてもよい。
【0030】
耐食性被覆20により被覆した亜鉛又は亜鉛合金被覆を有する金属帯部材10は、耐食性被覆20なしの亜鉛又は亜鉛合金被覆を有する金属帯10に比較して、電気伝導性が向上することとなる。従って、被覆された亜鉛メッキ金属基材は、非被覆亜鉛メッキ金属基材に対して、溶接性を向上し得る。
【0031】
続いて、金属帯部材10は少なくとも700°Fの温度に加熱され、ガルバニール処理金属基材に対するASTM A−1004/A−1004M−99及びASTM A−1003/A−1003M−05試験規格、又は、ガルバリュームド(Galbalumed)(登録商標)金属基材を含む他の形態の亜鉛メッキ金属基材10に対する相当の規格を満たすために必要な耐食性を保持することができる。ASTM A−1004/A−1004M−99及びASTM A−1003/A−1003M−05試験規格は、参照により本明細書に援用される。
【0032】
非被覆の亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材、及びクロム(VI)又はクロム(III)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆で被覆した、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材の耐食性を、米国材料試験協会(ASTM)インターナショナルにより規定される規格及び手順に従って測定した。本開示の耐食性被覆で被覆した、又は該被覆なしの亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材を、ASTM B117の要件に適合する塩水噴霧環境に曝露した。ASTM B117は、所定の試験チャンバ内で曝露される金属及び被覆金属の試験片に対する、相対的な耐食性の情報を提示するために利用されてきた、制御された腐食環境を提供する。全ての腐食試験要領は、ASTM A−1004/A−1004M−99及びASTM A−1003/A−1003M−05に準じて実施した。ASTM A−1004/A−1004M−99及びASTM A−1003/A−1003M−05はガルバニール処理パネルを対象とするが、当業者は、ASTM A−1004/A−1004M−99及びASTM A−1003/A−1003M−05の下での試験は比較基準であることを理解し、本開示の耐食性金属部材被覆が、それらには限定されないが、溶融亜鉛メッキ金属基材、ガルバニール処理金属基材、及びガルバリューム金属基材を含む亜鉛メッキ金属基材の全ての形態に塗工することができ、関連するASTM規格に適合する、又はこれを凌駕することを認識することとなろう。一部の実施形態において、亜鉛又は亜鉛合金表面が、亜鉛、亜鉛合金、亜鉛−アルミニウム合金、亜鉛塩溶液、熱処理亜鉛合金溶液及びそれらの混合物からなる群より選択される。ASTM A−1003/A−1003M−05によれば、非構造材用途すなわち非荷重負荷用途での金属被覆シートに対して期待される腐食特性は、最低75時間であると共に、実験室試験試料の表面からの金属被覆の損失が10%未満である。実験室試験試料の表面からの金属被覆の損失は、ASTM B117に準拠した塩水噴霧環境への特定の曝露時間後の赤色腐食のパーセントを測定することによって決定した。
【0033】
図2は、ASTM B117に準拠した塩水噴霧環境へ120時間の期間曝露した2種のHDG G−60(NCT)を示す。図3を参照すると、ガルバニール処理金属シートをASTM B117の要件に適合する塩水噴霧環境へ、312時間、504時間、744時間、及び1008時間の期間曝露した。図2に例証するように、非被覆HDG G−60(NCT)金属基材パネルは、塩水噴霧への120時間の曝露後に広範な目視可能な腐食を示し、塩水噴霧環境への120時間の曝露後に金属基材パネルの表面積の50%超の赤色腐食を示した。図3は、クロム(VI)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆により被覆し、312時間、504時間、744時間、及び1008時間塩水噴霧環境に曝露した後の、4種のガルバニール処理パネルを示す。図3に例証するように、本開示の耐食性金属部材被覆により被覆したガルバニール処理パネルは、1008時間塩水噴霧環境に曝露した後に、目視可能な赤色腐食を全く示さない。本開示の耐食性被覆により被覆した4種全てのガルバニール処理パネルは、1008時間の塩水噴霧環境への曝露の後で、その表面の内赤色腐食を示したのはゼロパーセント(0%)であった。
【0034】
任意成分のアクリル樹脂を含まない、クロム(VI)化合物を含む本開示の耐食性被覆により被覆した、異なる生産運転由来のガルバニール処理パネルも、ASTM B117の要件に適合する塩水噴霧環境に、312時間、504時間、744時間、及び1008時間曝露した。表1は、塩水噴霧環境に曝露後の、本開示の耐食性金属部材被覆により被覆したガルバニール処理パネルに対する、赤色腐食に冒されたパネルの表面積のパーセントのまとめを提示する。塩水噴霧環境への1008時間までの曝露に対して、耐食性被覆で被覆した全てのガルバニール処理パネルが示した赤色腐食に冒された表面積は、ゼロパーセント(0%)であった。反対に、HDG G−60(NCT)金属基材パネルは、僅か120時間の塩水噴霧環境への曝露後に、それらの表面積の50%超の赤色腐食を示した。
【表1】
【0035】
別途の試験において、ガルバニール処理パネルを、ASTM B117の要件に適合する塩水噴霧環境に、504時間、744時間、1008時間、1248時間、及び1512時間曝露した。図4に例証するように、非被覆A−25金属基材パネル(少なくとも0.25オンス/ftすなわち76.29g/mの亜鉛又は亜鉛合金被覆重量を有するガルバニール処理金属基材)は、48時間の塩水噴霧環境への曝露後に広範な目視可能な腐食を示した。塩水噴霧への曝露が増加すると、赤色腐食の存在がより明らかとなった。非被覆A−25金属基材試験パネルは、塩水噴霧への僅か48時間の曝露後に、A−25金属基材の表面積の10%を超える赤色腐食を呈し、ASTM A−1003/A−1003M−05により制定された規格に適合しなかった。図5は、クロム(VI)化合物及びアクリル樹脂を含む本開示の耐食性金属部材被覆により被覆し、1512時間までの間塩水噴霧に曝露した後の、5種のガルバニール処理パネルを示す。図5に例証するように、アクリル樹脂を含む本開示の耐食性金属部材被覆により被覆したガルバニール処理パネルは、1512時間までの塩水噴霧への曝露の後に、何れも目視可能な赤色腐食の外観を全く示さなかった。本開示の耐食性被覆により被覆したガルバニール処理パネルの表面積の内赤色腐食の兆候を示したのはゼロパーセント(0%)であった。本開示の耐食性金属部材被覆によるガルバニール処理金属シートの被覆は、1512時間にわたり塩水噴霧環境へ曝露した場合に、腐食の兆候を示さなかった。
【0036】
図6から図12bまでを参照すると、クロム(III)又はクロム(VI)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆は、また、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工し、これを冷間抽伸することとしてもよく、抽伸プロセス後に向上した防食性を与えることとなる。亜鉛又は亜鉛合金被覆パネルを、本開示の耐食性被覆を被覆した後に抽伸し、ASTM B117規格の要件に適合する塩水噴霧環境へ暴露した。図7を参照すると、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属パネルを、本開示のアクリル樹脂を含む耐食性被覆で被覆し、15%から23%で冷間抽伸し、塩水噴霧に48時間、75時間、96時間、120時間、及び144時間曝露した。図6に例証するように、HDG G40(NCT)金属基材パネルは、塩水噴霧環境への75時間の曝露後に目視可能な腐食を示した。塩水噴霧環境への曝露が増加すると、赤色腐食がより明らかとなった。標準のHDG G40(NCT)金属基材パネルは、72時間、96時間、120時間、及び144時間の塩水噴霧環境への曝露後に、それぞれ1%、25%、50%、及び75%の赤色腐食に冒された表面積を示した。図7は、クロム(III)化合物及びアクリル樹脂を含む本開示の耐食性金属部材被覆で被覆し、次に15%から23%で冷間抽伸した、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属パネルを示す。次にこの被覆亜鉛メッキパネルを48時間、75時間、96時間、120時間、及び144時間の塩水噴霧試験に供した。冷間抽伸した被覆亜鉛メッキパネルの表面積の内赤色腐食に冒されたのはゼロパーセント(0%)であった。
【0037】
表2は、実施された試験のまとめを提示し、クロム(III)化合物及びアクリル樹脂を含む本開示の耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に15%から23%で冷間抽伸し、48時間、75時間、96時間、120時間、及び144時間、ASTM B117の要件に適合する塩水噴霧環境に曝露した亜鉛合金被覆パネルに対する、赤色腐食のパーセントを示す。本開示の耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に15%から23%で抽伸した全ての亜鉛合金被覆パネルが、120時間までの間塩水噴霧に曝露した後で示した赤色腐食に冒されたパネルの表面積は、ゼロパーセント(0%)であった。本開示の耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に15%から23%で抽伸した、亜鉛又は亜鉛合金表面を有するパネルは、144時間の塩水噴霧環境への曝露後に三パーセント(3%)未満の赤色腐食を呈することにより、ASTM A−1003/A−1003M規格を凌駕した。本開示の耐食性金属部材被覆で被覆し、15%から23%で冷間抽伸した亜鉛合金被覆パネルは、標準のHDG G−40(NCT)パネルの、塩水噴霧環境への144時間の曝露後での75%超の赤色腐食に比較して、120時間までの塩水噴霧に対する完璧な防食性及び144時間の塩水噴霧における3%未満の赤錆を示した。
【表2】
【0038】
図8a〜bを参照すると、亜鉛又は亜鉛合金被覆パネルを、クロム(VI)化合物及びアクリル樹脂を含む本開示の耐食性金属部材被覆により被覆した後、16%から23%で冷間抽伸した。非被覆の亜鉛又は亜鉛合金被覆パネルを、48時間、75時間、96時間、及び120時間、ASTM B117の要件に適合する塩水噴霧環境に曝露した。図6に例証するように、HDG G−40(NCT)金属基材パネルは、48時間の塩水噴霧環境への曝露後に、目視可能な腐食を示した。塩水噴霧環境への曝露が増加すると、赤色腐食がより明らかとなった。HDG G−40(NCT)金属基材パネルは、48時間、75時間、96時間、及び120時間の塩水噴霧への曝露の後、それぞれ5%、10%、25%、及び50%の赤色腐食を示した。図8aは、本開示のクロム(VI)化合物を含む耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に16%から23%で冷間抽伸し、次に48時間、75時間、96時間、及び120時間塩水噴霧に曝露した亜鉛合金被覆金属パネルの、おもて面の写真である。図8bは、本開示のクロム(VI)化合物を含む耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に16%から23%で冷間抽伸し、次に48時間、75時間、96時間、及び120時間塩水噴霧に曝露した亜鉛合金被覆パネルの裏面の写真である。クロム(III)化合物を含む耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に16%から23%で冷間抽伸した亜鉛合金被覆パネルの表面積の内、赤色腐食の兆候を示したのはゼロパーセント(0%)であった。
【0039】
本開示のクロム(VI)化合物を含む耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に16%から23%で冷間抽伸した、異なる生産運転由来の亜鉛合金パネルを塩水噴霧環境に曝露した。表3は、本開示の耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に16%から23%で冷間抽伸し、48時間、75時間、96時間、及び120時間の間、ASTM B117の要件に適合する塩水噴霧環境に曝露した亜鉛合金被覆パネルに対する、赤色腐食に冒された表面積のパーセントのまとめを提示する。本開示の耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に16%から23%で抽伸した全ての亜鉛合金被覆パネルが示した赤色腐食に冒されたパネルの表面積は、ゼロパーセント(0%)であった。本開示の耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に16%から23%で抽伸した全ての亜鉛合金被覆パネルは、塩水噴霧への120時間の曝露後で50%の赤色腐食を示した標準のHDG G−40(NCT)と比較して、120時間までの塩水噴霧への曝露に対して、腐食の兆候を示さなかった。
【表3】
【0040】
図9a〜bは、クロム(VI)を含む本開示の耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に16%から23%で冷間抽伸し、ASTM B117の要件に適合する塩水噴霧環境に75時間、96時間、及び120時間曝露した、亜鉛合金表面を有する成形間柱完成品を示す。図9aに例証するように、亜鉛合金表面を有し、本開示のクロム(VI)を含む耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に16%から23%で冷間抽伸した、成形間柱完成品のおもて面部分において、75時間、96時間、及び120時間塩水噴霧環境に曝露した後で、赤色腐食に冒された表面積はゼロパーセント(0%)を示した。同様に、図9bは、本開示のクロム(VI)を含む耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に16%から23%で冷間抽伸した、亜鉛合金表面を有する成形間柱完成品の裏面部分を示す。亜鉛合金表面を有し、本開示の耐食性被覆で被覆し、冷間抽伸し、120時間まで塩水噴霧環境へ曝露した、成形間柱完成品の表面積の内、赤色腐食の兆候を示したのはゼロパーセント(0%)であった。
【0041】
図10から図12bまでは、クロム(III)又はクロム(VI)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に23%から24%で冷間抽伸し、塩水噴霧試験環境に供した、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材を例証する。図10及び図11a〜bに示すように、クロム(III)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に23%から24%で冷間抽伸した、亜鉛合金被覆金属基材の成形間柱完成品を、ASTM B117の要件に適合する塩水噴霧環境に75時間、96時間、及び120時間曝露した。図10は、120時間までの間、塩水噴霧試験環境に供したHDG G−40(NCT)の成形間柱完成品を示す。HDG G−40(NCT)の成形間柱完成品は、96時間の塩水噴霧環境への曝露の後、目視可能な腐食を示した。HDG G−40(NCT)の成形間柱完成品は、96時間及び120時間の塩水噴霧環境への曝露の後、それぞれ5%及び25%の赤色腐食を示した。図11a〜bに例証するように、本開示のクロム(III)化合物を含む耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に23%から24%で冷間抽伸した、亜鉛合金被覆した金属基材から製造された成形間柱完成品は、向上した耐食性を有する。図11a及び図11bに見られるように、本開示の耐食性金属部材被覆で被覆した、亜鉛合金表面を有する成形間柱完成品のおもて面及び裏面の両方の所見で、75時間、96時間、及び120時間塩水噴霧に曝露した後で、赤色腐食に冒された表面積はゼロパーセント(0%)を示した。
【0042】
同様に、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材を、本開示のクロム(VI)化合物を含む耐食性金属部材被覆で被覆し、23%から24%で冷間抽伸し、塩水噴霧試験に供した。図12a〜bは、本開示のクロム(VI)化合物を含む耐食性金属部材被覆で被覆し、被覆後に23%から24%で冷間抽伸し、ASTM B117の要件に適合する塩水噴霧環境に75時間、96時間、及び120時間曝露した、亜鉛合金表面を有する成形間柱完成品を例証する。図12a及び12bに例証するように、本開示のクロム(VI)化合物を含む耐食性金属部材被覆で被覆した、亜鉛合金表面を有する成形間柱完成品のおもて面及び裏面の両方の所見で、75時間、96時間、及び120時間塩水噴霧環境に曝露した後で、赤色腐食に冒された表面積はゼロパーセント(0%)を示した。
【0043】
本開示のクロム(III)又はクロム(VI)化合物を含む耐食性金属部材被覆の、溶融亜鉛メッキ金属基材又はガルバニール処理金属基材などの亜鉛メッキ金属基材を、腐食から保護するための有効性は、亜鉛又は亜鉛合金被覆の厚さ及び本開示の耐食性金属部材被覆の厚さに依存する。表4は、本開示の耐食性金属部材被覆で被覆したHDG G−30金属基材に対して、塩水噴霧試験環境下で、十パーセント(10%)未満の重量損失を保って到達した時間数のまとめを提示する。少なくとも0.0106オンス/ft(3.23g/m)の被覆重量を有する、本開示の耐食性金属部材被覆で被覆した亜鉛メッキ金属に関して、1000時間を超える、腐食なしでの塩水噴霧環境試験が得られた。クロム(VI)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆で被覆した亜鉛メッキ金属基材に関して、少なくとも0.0053オンス/ft(1.61g/m)の被覆重量に対して、500時間を超える、腐食なしでの塩水噴霧試験が得られた。そして、クロム(III)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆で被覆した亜鉛メッキ金属に関して、少なくとも0.0053オンス/ft(1.61g/m)の被覆重量に対して、500時間を超える、腐食なしでの塩水噴霧試験が得られた。
【表4】
【0044】
同様に、クロム(III)又はクロム(VI)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆の、ガルバニール処理金属基材を腐食から保護するための有効性は、本開示の耐食性金属部材被覆の厚さに依存する。表5は、クロム(III)又はクロム(VI)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆で被覆した、ガルバニール処理A−25又はA−40金属基材をASTM B117の要件に適合する塩水噴霧環境へ曝露した後に、十パーセント(10%)未満の重量損失を保って到達した時間数のまとめを提示する。少なくとも0.0106オンス/ft(3.23g/m)の被覆重量を有する、クロム(III)又はクロム(VI)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆で被覆したガルバニール処理金属基材に関して、金属基材の表面で10%未満の赤色腐食を維持しつつ、1000時間を超える塩水噴霧試験が得られた。一方、クロム(VI)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆で被覆したガルバニール処理金属基材に関して、少なくとも0.0053オンス/ft(1.61g/m)の被覆重量に対して、金属基材の表面で10%未満の赤色腐食を維持しつつ、500時間を超える塩水噴霧試験が得られた。そして、クロム(III)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆で被覆したガルバニール処理金属基材に関して、少なくとも0.0053オンス/ft(1.61g/m)の被覆重量に対して、金属基材の表面で10%未満の赤色腐食を維持しつつ、500時間を超える、塩水噴霧環境試験が得られた。
【表5】
【0045】
図2から図12bまでに例証するように、クロム(III)又はクロム(VI)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆の亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材への塗工は、該金属基材の腐食を阻害する能力を顕著に向上する。本開示の耐食性金属部材被覆は、亜鉛又は亜鉛合金被覆金属基材と相互作用する。図13の走査電子顕微鏡(SEM)像は、本開示の耐食性金属部材被覆と金属基材の亜鉛又は亜鉛合金表面との間の反応を示している。かかる反応は、本開示の耐食性金属部材被覆と亜鉛又は亜鉛合金表面との間の、化学結合であり得る結合を形成する。あるいは、かかる反応は、耐食性金属部材被覆と金属基材の亜鉛又は亜鉛合金表面との間の異なる接着効果を形成し得る。上記SEM像は、亜鉛又は亜鉛合金表面に存在する欠陥(すなわち、割れ目及び/又は空隙)を示している。本開示の耐食性金属部材被覆が金属基材の亜鉛又は亜鉛合金表面に塗工されると、該被覆混合物は、亜鉛被覆内の如何なる深い割れ目及び空隙にも浸透し得る。耐食性金属部材被覆と金属基材の亜鉛又は亜鉛合金表面との間の反応は、外面腐食源を封じ込め、亜鉛層並びに炭素鋼基盤金属を保護する。
【0046】
一つの実施形態において、被覆混合物は、金属部材表面上に該被覆混合物をロール塗工することにより塗工してもよい。この直接的な塗工方法は、残余の被覆混合物の量を低減し得る。他の実施形態において、被覆混合物は、金属部材表面上に被覆混合物を噴霧することにより塗工してもよく、又はその代わりに、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材の少なくとも一部を本開示の耐食性金属部材被覆の浴に浸漬することによって塗工してもよい。
【0047】
図14に例証するように、クロム(III)又はクロム(VI)化合物を含む本開示の耐食性金属部材被覆により被覆した、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材は、撥水性となり得る。撥水性は、亜鉛又は亜鉛合金基材に対し、腐食に対する特別の保護を与える。空気中では、新たに暴露された亜鉛は酸素と反応して非常に薄い酸化亜鉛層を形成する。水分が存在すると、亜鉛は水と反応して水酸化亜鉛を生成し、乾燥状態では、これは酸化亜鉛になる。酸化亜鉛は塗料の金属への接着を阻害するのみならず、金属の腐食を更に促進し、これが全ての亜鉛メッキ被覆の外観を損ねる。更に、純水は実質的に溶解した無機質を含まないが、亜鉛は純粋と速やかに反応して、嵩高く、白く、比較的不安的な亜鉛酸化物である水酸化亜鉛を生成する。新たに亜鉛メッキされた鋼が、特に酸素不足の環境で純水(例えば雨、露又は結露、その他)に曝露されると、水は亜鉛と継続的に反応し、徐々に亜鉛又は亜鉛合金被覆を消費し得る。
【0048】
本開示の耐食性被覆は自己修復性であり得る。金属基材を腐食から保護する該被覆は、金属基材が切傷、掻き傷又は磨滅を受けても、金属基材を保護する。例えば、溶融金属の表面に掻き傷を与える表面欠陥を有するローラーを用いて冷間圧延を行う場合、金属基材は掻き傷を受ける。金属基材の引っ掻きは、当該部位から耐食性被覆を除去し、金属基材を露出させ得る。耐食性被覆が金属基材の露出した部位を保護することとなることが望ましい。かかる保護方法の一つは、被覆の一部が亜鉛又は亜鉛合金表面と未反応のまま残るように、十分な耐食性被覆材を供給することである。未反応の被覆は、その後、引っ掻かれて露出した金属基材の部位と反応して、その上に保護被覆を形成し得る。従って、上記耐食性被覆は自己修復性である。
【0049】
本発明の原理及び運転の方法を、特定の実施形態に関して説明及び例証してきた。しかしながら、本発明は、その趣旨又は範囲が逸脱しない限りにおいて、具体的に説明及び例証したものとは別の形態で実施されてもよいことが理解されるべきである。従って、本発明は、特定の実施形態に限定されることを意図せず、添付の特許請求の範囲に属する。
[項目1]
水、少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物及び少なくとも1種のクロム化合物を組み合わせて、第1の溶液を形成するステップと、
別途に、少なくとも1種のケイ酸塩化合物を水と組み合わせて、第2の溶液を形成するステップと、
上記第1の溶液を上記第2の溶液と組み合わせて、亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工して上記金属基材上に被覆を形成するための耐食性金属部材被覆混合物を形成するステップであって、上記被覆が、上記金属基材の上記亜鉛又は亜鉛合金被覆が0.04オンス/ft(12.20g/m)の重量を有する場合のASTM B117規格に準拠して、少なくとも150時間の化学的耐性を与えるステップと、
を含む、耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目2]
上記被覆混合物を少なくとも1種のアクリル樹脂と組み合わせるステップを更に含む、項目1に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目3]
上記被覆混合物を亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工して、上記金属基材上に被覆を形成するステップを更に含む、項目1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目4]
上記少なくとも1種のアクリル樹脂が3.5以下のpH値を有する、項目2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目5]
上記被覆された金属基材を加熱して、上記塗工された被覆混合物と上記基材の表面との間の反応を促進するステップを更に含む、項目3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目6]
上記亜鉛又は亜鉛合金表面が、亜鉛、亜鉛合金、亜鉛−アルミニウム合金、亜鉛塩溶液、熱処理亜鉛合金溶液及びそれらの混合物からなる群より選択される、項目3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目7]
上記被覆混合物が、上記金属基材の上記亜鉛又は亜鉛合金表面と反応して、上記亜鉛又は亜鉛合金表面と化学結合を形成する、項目3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目8]
上記第1の溶液が、
4重量パーセント以上27重量パーセント以下の水と、
5重量パーセント以上27重量パーセント以下の少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物と、
5重量パーセント以上27重量パーセント以下の少なくとも1種のクロム化合物と、
を含む、項目1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目9]
上記耐食性金属部材被覆が、
20重量パーセント以上95重量パーセント以下の第1の溶液と、
5重量パーセント以上12重量パーセント以下の第2の溶液と、
5重量パーセント以上50重量パーセント以下の水と、
を含む、項目1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目10]
上記被覆混合物が3.5以下のpH値を有する、項目1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目11]
上記少なくとも1種のケイ素化合物がケイ酸カリウム化合物を含む、項目1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目12]
上記少なくとも1種のクロム化合物が、3価クロム化合物を含む、項目1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目13]
上記3価クロム化合物が、塩化クロム水和物、硫酸クロム(III)カリウム、水酸化クロム、フッ化クロム(III)、硫酸クロム(III)、硫化クロム(III)、酸化クロム(III)、2−エチルヘキサン酸クロム(III)、窒化クロム(III)、トリカルボニルクロム及びそれらの混合物からなる群より選択される、項目12に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目14]
上記少なくとも1種のクロム化合物が、6価クロム化合物を含む、項目1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目15]
上記6価クロム化合物が、ハロゲン化クロム(VI)、六フッ化物、塩化クロミル、クロム酸ナトリウム、過酸化クロム(VI)、クロム酸ナトリウム、酸化クロム(VI)、重クロム酸塩、クロム酸カリウム、クロム酸カルシウム、クロム酸バリウム、過酸化クロム(VI)及びそれらの混合物からなる群より選択される、項目14に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目16]
上記被覆混合物を塗工するステップが、上記被覆混合物を上記金属基材の表面上にロール塗工することを含む、項目3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目17]
上記被覆混合物を塗工するステップが、上記被覆混合物を上記金属基材の表面上に噴霧することを含む、項目3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目18]
上記被覆混合物を塗工するステップが、上記亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材の少なくとも一部を上記被覆混合物の浴に浸漬することを含む、項目3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目19]
上記被覆混合物を塗工するステップが、上記亜鉛又は亜鉛合金表面の全ての空隙に上記被覆混合物の溶液を充填することを更に含む、項目3に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目20]
上記耐食性金属部材被覆が、1.0以上2.5以下のpH値を有する、項目1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目21]
上記耐食性金属部材被覆が電気伝導性である、項目1〜3のいずれか一項に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目22]
上記耐食性金属部材被覆が撥水性である、項目1〜3のいずれか一項に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目23]
上記耐食性金属部材被覆が、亜鉛又は亜鉛合金で被覆された金属部材に対して、塗料への密着にとって向上した表面を与える、項目1〜3のいずれか一項に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目24]
上記耐食性金属部材被覆が自己修復性である、項目1又は2に記載の耐食性金属部材被覆の製造プロセス。
[項目25]
項目1〜24のいずれか一項に記載の製造プロセスで製造された耐食性金属部材被覆を有する耐食性金属部材。
[項目26]
耐食性被覆を亜鉛又は亜鉛合金表面を有する金属基材に塗工して、上記金属基材の上記亜鉛又は亜鉛合金被覆が0.04オンス/ft(12.20g/m)の重量を有する場合のASTM B117規格に準拠して、150時間を超える化学的耐性を有する耐食性被覆を有する金属部材を提供するステップを含み、
上記耐食性被覆が混合水溶液を含み、上記混合水溶液が第1の溶液及び第2の溶液を含み、第1の溶液が水、少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物及び少なくとも1種のクロム化合物を含み、第2の溶液が少なくとも1種のケイ酸塩化合物及び水を含む、耐食性金属部材の製造プロセス。
[項目27]
上記耐食性被覆が少なくとも1種のアクリル樹脂を更に含む、項目26に記載の耐食性金属部材の製造プロセス。
[項目28]
亜鉛又は亜鉛合金被覆を有する金属基材と、
上記金属基材の上記亜鉛又は亜鉛合金被覆が0.04オンス/ft(12.20g/m)の重量を有する場合のASTM B117規格に準拠して、150時間を超える化学的耐性を与える耐食性被覆と、
を含み、
上記耐食性被覆が、組み合わせられて混合水溶液を形成する第1の溶液及び第2の溶液を含み、
第1の溶液が水、少なくとも1種のリン酸亜鉛化合物及び少なくとも1種のクロム化合物を含み、
第2の溶液が少なくとも1種のケイ酸塩化合物及び水を含む、
耐食性金属部材。
[項目29]
上記耐食性被覆が少なくとも1種のアクリル樹脂を更に含む、項目28に記載の耐食性金属部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11a
図11b
図12a
図12b
図13
図14