特許第6052523号(P6052523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6052523
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】無動力搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 25/10 20060101AFI20161219BHJP
   B65G 13/073 20060101ALI20161219BHJP
   B65G 47/88 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   B65G25/10
   B65G13/073
   B65G47/88 A
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-139265(P2015-139265)
(22)【出願日】2015年7月10日
【審査請求日】2015年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】515190984
【氏名又は名称】株式会社 日伸
(74)【代理人】
【識別番号】100122127
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 大刀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 健一
(72)【発明者】
【氏名】勅使河原 孝
(72)【発明者】
【氏名】勅使河原 昭
(72)【発明者】
【氏名】林 新二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 基紀
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−362728(JP,A)
【文献】 特開平11−011613(JP,A)
【文献】 実公平06−028486(JP,Y2)
【文献】 実開昭63−166524(JP,U)
【文献】 実開昭57−138818(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/08、13/07
B65G 25/08−25/10
B65G 47/82、47/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に複数のフリーローラを搬送方向に一定間隔で並列配置したローラーコンベアであって、上記ローラーコンベアの端部の搬入口に載置された、ワークを積載したパレットを上記ローラーコンベアの他の端部の搬出口で、フォークリフトを用いて、上記パレットを搬出する無動力搬送装置において、
上記無動力搬送装置は、上記ローラーコンベアの上記端部の上記搬出口を低く、上記他の端部の上記搬入口を高くした状態に傾斜を設け、並列配置された隣接する上記フリーローラの間隙に、スライダーを備え、
上記スライダーは、弾性体を係止するための係止部と上記パレットを上記搬出口に引き寄せるための回動可能なフックを配設し、
上記弾性体の端部は、上記係止部に係止され、上記弾性体の他の端部は上記基台に係止され、上記弾性体により上記スライダーは搬送方向に常時附勢され、上記ローラーコンベアの上記基台に設置されたプッシャーを上記フォークリフトが押圧したときに、上記弾性体の附勢に逆らって上記搬入口方向にスライド作動し、上記フォークリフトの押圧が解除されたときは、上記搬出口方向にスライド作動する往復動自在であって、
上記フックは、上記スライダーが搬送方向に作動するときは上記フックの爪は、搬送面上に垂直に回動され、搬送方向と逆方向に作動するときは、上記パレットの底部に接触しつつ上記搬送面下に回動することを、
特徴とする無動力搬送装置
【請求項2】
上記搬出口において、ワークを積載したパレット同士の接触を回避するための縁切り機構を備え、
上記縁切り機構は、A機構部とB機構部からなり
上記A機構部は、上記プッシャーの先端に取付けられ、端部に凸部を備えた回動自在の連接棒と、上記基台に取付けられた傾斜板と、一方の端部を上記基台に、他の端部を上記プッシャーに取付けて、上記プッシャーを常に搬送方向に附勢する弾性体と、からなり、
上記B機構は、上記ローラーコンベア端部の上記搬出口の搬送方向下流側にペダルと、搬送方向上流側にストッパーと、リンクと、遊動リンクと、上記遊動リンクを載置する台と、被連接棒と、を備え、
上記ペダルと上記ストッパーは、上記リンクを介して連動して上下作動し、上記ペダルを上記パレットの底部が上記フリーローラの搬送面より下に押下げたときは、上記ストッパーは、上記フリーローラの搬送面より上にせり上り、後続の上記パレットの搬送を止め、
上記ストッパーが、上記フリーローラの搬送面より上にせり上ったとき、上記遊動リンクは、上記台に載置され、
上記フォークリフトが上記プッシャーを押したとき、上記連接棒の他の端部が、上記傾斜板に接触しつつ回動をし、上記凸部が上記B機構を構成する上記被連接棒の凹部に嵌合結合し、
上記フォークリフトの押圧が解除されたときは、上記連接棒と上記被連接棒が、上記リンクに取付けられた上記遊動リンクを搬送方向に引寄せることにより上記ペダルを上記搬送面より上にせり上げ、上記ストッパーを上記搬送面より下にせり下げることを、
特徴とする請求項1に記載する無動力搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、パレットに積載されたワークのローラーコンベアによる搬送装置に関する。詳しくは、ローラーコンベアに傾斜を設け、端部搬入口でローラーコンベア上に載置された一連の複数ワーク積載パレットを、動力を使用することなくローラーコンベアの他の端部搬出口まで確実に搬送する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ローラーコンベア上に載置された一連の複数ワーク積載パレットを、ローラーコンベアの端部搬出口まで電気又はエアー等の動力を使用することなく搬送するためには、ローラーコンベアを傾斜させて、自然落下エネルギーを利用することが考えられる。しかし、ローラーコンベアを傾斜させると、ローラーコンベアの搬入端部の高さと搬出端部の高さに差ができるため、ローラーコンベアの長さと高低差には一定の制限が生じる。
【0003】
また、ワーク積載パレットを確実に搬送するためには、傾斜角度を大きくする必要がある。しかし、傾斜角度を大きくすると、ローラーコンベアの端部搬出口において、ワーク積載パレットの衝突が生じ、ワークの荷崩れが問題になる。さらに、荷崩れを防止するために、ローラーコンベアの傾斜角度を小さくすると、ワーク積載パレットがローラーコンベアの途中で止まってしまう等の問題が生じる。
【0004】
従って、一般的には、ワーク積載パレットをローラーコンベアの端部搬入口から端部搬出口まで確実に搬送するためには、ローラーコンベアを水平に保ちつつ、このローラーコンベアにアクチュエータを設けて、ワーク積載パレットの搬送を制御する。しかし、ローラーコンベアにアクチュエータを設けて、ワーク積載パレットの搬送を制御するには、アクチュエータの設置、配線、配管等の設備及び制御プログラム等のイニシャルコスト及びその設置スペース等の問題が生じる。
【0005】
特許文献1は、ローラーコンベアそのものには、動力を使用することなく、ワーク積載パレットを搬出口まで確実に移動させる装置であるが、ローラーコンベアを傾斜させるためにアクチュエータを使用している。このため、アクチュエータの設置費用及び設置スペース等に課題が残る。また、特許文献2には、ローラーコンベアの搬入口には、傾斜を設けて自然落下エネルギーを利用しているが、中途の搬送経路においては、搬入されるパレットに積載されたワークの荷崩れを考慮してアクチュエータを採用している。
【0006】
本願発明は、上述の動力を使用することなく、ローラーコンベアに最小限の傾斜を設け、搬送中に停滞したワーク積載パレットを搬出口に引き寄せる構造として、更に必要に応じて、パレット同士の衝突を回避し、フォークリフトによる搬出時における荷崩れを防止するための、連続して搬送されるワーク積載パレットの縁切り機構を設けた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−319163号広報
【特許文献2】特開2002−145440号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、ローラーコンベアにエアー駆動又は電気駆動のアクチュエータを使用することなく無動力で、ローラーコンベアの端部搬入口に載置された、ワーク積載パレット群を他の端部搬出口に荷崩れが生じることなく且つ確実に順次搬送し、フォークリフトを用いて、搬出移動することが可能である。本願発明は主として外部から工場に搬入されるワーク積載パレットの受け入れと、このワークを必要とする作業現場にフォークリフトを用いてワーク積載パレットの移送に利用される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明1は、複数のフリーローラ104を備えた傾斜したローラーコンベア100、プッシャー111、弾性体106を係止する係止部108及びフック107を備えたスライダー105で構成される。フリーローラ104とは、動力を備えないローラーのみで構成されたコンベアをいい、複数のフリーローラ104で、ローラーコンベア100を構成する。このフリーローラ104は搬送方向に並列に基台103に設けられ、この基台103に高低差を設け、ローラーコンベア100を傾斜させる。
【0010】
この傾斜角度が大きい場合は、搬入口101に載置されたワーク積載パレットP(以下、単に「パレットP」ともいう。)は、確実に搬出口102まで、自然落下エネルギーで搬送されるが、搬出口102におけるパレットP同士の衝突による荷崩れが問題となる。また、傾斜角度が大きいと搬入口と、搬出口の高低差が問題となり、搬送作業が困難になる場合がある。
【0011】
このため、アクチュエータ等の動力を使用しないローラーコンベアにおいては、この傾斜角度を必要且つ最小限のものにすることが望まれる。この傾斜角度に制限はないが、積載するワーク、パレットの種類、材質、及び大きさ、ローラーの径等により決定される。しかし、無動力ローラーコンベアを使用する場合には、パレットPがローラーコンベアの途中で止まってしまい搬送がスムーズに行えない場合が時々生じる。この場合、従来は人力でパレットPを押して搬出口まで搬送する必要があった。
【0012】
このフリーローラ104は、複数使用する。搬送方向に沿って並列に設置して、隣接するフリーローラ104の間隙に、スライダー105を設ける。このスライダー105は係止部108を備え、弾性体106の一方の端部を係止する。弾性体106の他の端部は基台103に係止して、スライダー105の端部をプッシャー111の端部に当接させて常に搬出方向に附勢する。上述の弾性体106は、バネ又はゴムを用いる。
【0013】
このスライダー105は、プッシャー111がフォークリフトのマストで押圧されて、弾性体106による搬送方向への附勢に逆らって、搬入口101の方向に基台に取付けられたスライダー受け109上をスライドして移動する。フォークリフトがプッシャー111の押圧を解除すると、弾性体106の力で搬出口102の方向にスライドして移動する。
【0014】
上述のフック107は、スライダー105の側面に複数取付けられる。フック107の爪は通常は垂直の状態であり、搬送面の上に突き出ている。プッシャー111がフォークリフトで押されて、スライダー105が、搬入口の方向にスライドして、パレットPの底面に接触したときは、搬送平面の下まで回動し、パレットPの底面に接触していない状態では、垂直状態に反転回動する。従って、フォークリフトのマストがプッシャー111を押したとき、ローラーコンベア100上にパレットPが存在しても、スライダー105は搬送方向と逆方向にスライド移動が可能である。
【0015】
フォークリフトの爪がパレットPの定位置まで挿し込まれたときには、このフック107の上に、空隙があれば垂直になる。フォークリフトが搬出口にあるパレットPを持ち上げて、後方に下がったとき、プッシャー111に当接していたスライダー105は、弾性体106の反力で、パレットPの底部間隙をフック107が引掛けて搬送方向にパレットPを引き寄せる。従って、本発明の無動力搬送装置1は、搬送途中において停滞したパレットPが存在したとしてもすべてのパレットPを搬出口に確実に搬送する。
【0016】
本願他の発明2である無動力搬送装置2は、上述の無動力搬送装置1に加えてパレットPの縁切り機構200を備える。パレットPの縁切り機構200とは、相隣りあうパレットPが、搬出口102での接触を防止する装置をいい、搬出口102でパレットPが他のパレットPと接触をするとフォークリフトで持ち上げたときに荷崩れをする危険性を伴う(図5(1)及び図5(2)を参照)。
【0017】
この縁切り機構200は、搬送方向の下流側に配設されたペダル252に荷重がかかると、搬送方向の上流側に配設されたストッパー253が搬送面の上方にせり上がり、後続のパレットPの搬送を止める。ペダル252の荷重が除去されると、ストッパー253が搬送面の下方に下がり、後続のパレットPは搬送を再開する。
【0018】
縁切り装置200は、A機構部210とB機構部250で構成される。
A機構部210は、基台に取付けられた傾斜板220と、プッシャー111の先端部に取付けられた、シャフトを中心に回動自在の、凸部を設けた連接棒211と、一方の端部を基台103に、他の端部をプッシャー111に取付けて、プッシャー111を常に搬送方向に附勢する弾性体260と、からなる。フォークリフトのマストがプッシャー111を押すと、プッシャー111の進行とともに、連接棒211の先端が上方回動しつつ、搬送方向と逆方向に進行する。
【0019】
フォークリフトの爪がパレットPのスリットに所定位置まで挿し込まれると(プッシャー111が、搬送方向と逆方向の所定の位置まで押されると)、この連接棒211は回動して凸部214がB機構250を構成する被連接棒251の凹部251aに嵌合する。
【0020】
B機構部250は、ペダル252、ストッパー253、リンク256、遊動リンク254、この遊動リンクを載置する台262及び先端に凹部251aを備えた被連接棒251で構成される。B機構部250は、ローラーコンベア端部搬出口の搬送方向下流側にペダル252と、搬送方向上流側にストッパー253と、を備え、このペダル252とストッパー253は、リンク256を介して連動して上下作動し、ペダル252をパレットPの底部がフリーローラ104の搬送面より下に押下げたときは、ストッパー253は、フリーローラ104の搬送面より上にせり上り、後続のパレットPの搬送を止める。
【0021】
また、フォークリフトがプッシャー111を押したとき、連接棒211は、一方の端部212が、傾斜板220に接触しつつ回動をし、連接棒211の備える凸部214がB機構部250を構成する被連接棒251の凹部251aに嵌合結合し、フォークリフトの押圧が解除されたときは、連接棒211と被連接棒251が、リンク256に取付けられた遊動リンク254を搬送方向に引寄せることによりペダル252を搬送面より上にせり上げ、ストッパー253を搬送面より下にせり下げる。
【0022】
次いで、待機状態にあった後続のパレットPは、ストッパー253が搬送面より下にせり下がったため、搬送方向に進み、その後、搬出口102に設けられたペダル252を踏む。ペダル252に荷重がかかると、ストッパー253が、搬送面より上にせり上り、後続のパレットPの搬送を止める。
【発明の効果】
【0023】
本願発明1の無動力搬送装置によれば、電気、エアー等のアクチュエータを使用ことなく、ワークを積載したパレットを確実に搬送することが可能である。このため、配線、配管、制御盤等の設備の必要が無く、イニシャルコスト及びランニングコストが小さい。
また、設置スペースが小さく、工場の有効活用に資する。
更に、本願発明1の無動力搬送装置は、配線、配管等が無いため、移設が容易である。
【0024】
他の本願発明2の無動力搬送装置は、パレットの縁切り機構を備えるため、パレット搬出時にパレット同士が接触しないため、荷崩れを生じない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本願発明1の斜視図及び部分拡大図である。
図2】本願発明1の組み立て、分解図である。
図3】本願発明1のスライダー、スライダー受け、フック及び係止部の関係を示す一部横断面図である。
図4】本願発明に係るフックの具体例を示す図である。
図5】本願発明1のパレットPの搬送状態を示す図である。
図6】本願発明2のパレットPの搬送状態を示す図である。
図7】本願発明2の斜視図及び部分拡大図である。
図8】本願発明2の平面図及び部分拡大図である。
図9】本願発明2の側面図及び部分拡大図である。
図10】縁切り機構のA機構部及びB機構部の側面図である。
図11】A機構部を下方向から見た斜視図である。
図12】B機構部を上下方向から見た斜視図である。
図13】遊動リンクの説明図である。
図14】本願発明2の作動を示す説明図1である。
図15】本願発明2の作動を示す説明図2である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本願発明を実施するための形態を図に基づいて詳細に説明する。これらの図中の記号(または番号)は、共通する部材の場合は省略している。また、図中において部材が明瞭である場合も省略している。これらの図は本願発明を説明するために模式的に描いたものであり、本願発明がこれらの図に拘束されるものではない。
【0027】
本願発明の無動力搬送装置1は、下記の課題を解決するためになされたものである。
ローラーコンベア100の端部搬入口101に受け入れたパレットPを、ローラーコンベア100で他の端部搬出口102まで搬送し、搬出口102において、フォークリフトを用いて、このパレットPを所定位置に移動させる場合に、ローラーコンベア100を傾斜させて、自然落下エネルギーでパレットPの搬送は可能である。
【0028】
搬入口101から搬出口102までパレットPを確実に搬送するためには、ローラーコンベア100の傾斜角度を大きくすることにより解決できる。
しかし、この傾斜角度を大きくすると、
(1)パレットPの搬送速度が大きくなり、搬出口102でパレットP同士の激しい衝突が懸念され、最悪の場合はパレットPに積載されたワークの荷崩れが生じる。
(2)搬入口101と搬出口102の高低差が大きくなり、特に搬送距離が大きくローラーコンベアが長くなる場合には、パレットPの搬入作業に支障をきたす。また、ローラーコンベア100の設置スペースにも制約を受ける。
【0029】
また、傾斜角度を小さくすると、ローラーコンベアの搬入口に載置されたパレットPが搬送途中でローラーの抵抗で止まってしまうことが生じる。この場合は、人力でパレットPを搬出口まで押して搬送しなければならない。この傾斜角度は、フリーローラの性能、パレット底部の形状、積載ワークの重量等で任意に決定することができる。本願発明の無動力搬送装置1は、傾斜角度を極限に小さくし、自然落下エネルギーを利用しつつ、パレットが搬送途中で止まった場合においても、確実に搬出口まで搬送し、パレットP同士の激しい衝突を回避する。
【0030】
本願発明の無動力搬送装置1は、複数のフリーローラ104を搬送方向に沿って並列に並べたローラーコンベア100、係止部108及び回動自在のフック107を備えたスライダー105、弾性体106及びプッシャー111で構成される。弾性体106の具体例は、バネ及びゴムが挙げられる(以下、弾性体を代表して「バネ106」ともいう。)。
【0031】
図1は、本願発明無動力装置1の斜視図及び部分拡大図である。ローラーコンベア100は、複数のフリーローラ104搬送方向に並列に間隙を設けて、基台103上に取付ける。ローラーコンベア100の傾斜角度は前述のように、任意にすることができるが、通常は1度〜5度、であり、好ましくは2度〜4度である。こフリーローラ104の間隙にスライダー105を設ける。このスライダー105は、基台103に取付けたスライダー受け109の上を搬送方向に進み、搬送方向と反対方向に後退し、進退自在である。
【0032】
このスライダー105は係止部108を備え、バネ106の端部をこの係止部108に取付け、他の端部を基台103に取付けて、スライダー105を常に搬送方向に附勢する。この係止部108及びバネ106の数は、特に限定はなくパレットPの積載ワークの重量等を考慮して適宜取付けることができる。
【0033】
このスライダー105の搬出口102方向の端部にスライダー当接部105aを設けて、プッシャー111との接触を確実にすることもできる。このスライダー当接部105aは、プッシャー111を搬送方向に附勢し、プッシャー111はフォークリフトがパレットPをすくい上げる位置まで進行するとき、フォークリフトのマストがプッシャー111を押すことにより、スライダー105は、バネ106の附勢に逆らって、搬送方向と逆方向に後退する。
【0034】
図2は、本願発明1の組み立て、分解図である。係止部108、バネ106、フック107及びスライダー受け109の数に制限はなく、また、位置も特に制限はなく、取り扱うパレットPに応じて適宜選択する。フック107は、パレットPの底部を引掛けて、搬送方向に引き寄せる。
【0035】
図3は、スライダー105、スライダー受け109、フック107及び係止部108の関係を示す一部縦断面図である。フック107は、スライダー105が搬送方向に作動するときは略垂直に保持され、爪部が搬送面Lより上に突出して、パレットPの底部の空間に挿し込まれる。また、搬送方向と逆方向に作動するときは、パレットPの底部に接触しつつ回動して、ローラーの搬送面Lの下になる。このフックの具体例を、下記の図に示す。
【0036】
図4は、フック107の具体例を示す図である。フック107は、通常は略垂直状態にあり、パレットPの底部に間隙があるときは、この間隙の位置でフックの爪部107aは軸107bを介して、バネ107dの作用で略垂直状態となる。スライダー105がバネ106の附勢により搬出口方向にスライド移動するときは、回転止め107eのため、垂直状態を維持しつつ、パレットPを搬送方向に引寄せる。
また、スライダー105が、搬送方向と逆方向にスライド移動するときは、パレットPの底部に接触したときは、爪部107aは、軸107bを中心に回動して搬送表面Lの下に押し込まれるため、この搬送中のパレットPはこのフック107の上を抵抗なく通過できる。
【0037】
図5は、本願発明1の無動力搬送装置を用いた際の、パレットPの搬送状態を模式的に描いたものである。搬送装置1に載置されたパレットP1、P2、P3、P4、P5は通常は搬出口まで、ローラーの傾斜で搬送されてくる。しかし、パレット同士の激しい衝突を回避するために傾斜角度を小さくすると、図5(1)中のパレットP5のように、搬送途中で止まってしまうものがある。
【0038】
図5(1)は、フォークリフトがパレットP1をすくい上げるために、前進したとき、フォークリフトのマストがプッシャー111を押す。スライダー105は、スライダー当接部105aを介して、搬送方向と逆方向にスライドして移動する。
図5(2)は、フォークリフトがP5をすくい上げて移動すると、他のパレットP2、P3、P4はローラーコンベア100の傾斜で搬出口に整列して待機する。またパレットP5は、スライダー105がバネの力で搬送方向にスライド移動するときに、スライダー105が備えるフック107でパレットP5の底部を引掛けて搬出口に引寄せる。
【0039】
他の本願発明である無動力搬送装置2は、上述の無動力搬送装置1に加えてパレットPの縁切り機構200を備える。縁切り機構200とは、上述の図5に示すように複数のパレットPが接触しつつ搬出口に待機しているとき、フォークリフトで、パレットP1をすくい上げるとパレットに積載したワークの種類、積載状態等により、パレットP2との間の摩擦による荷崩れが生じる場合がある。この荷崩れを防止するためにパレットP1とパレットP2の間に距離を開けて待機させる機構をいう。
【0040】
図6は、本願発明2のパレットP搬送状態を示す図である。パレットPの底部が搬出口のペダル252を踏んでいるときは、ストッパー253が、搬送面Lの上にせり上り、他のパレットP2、3、4は待機状態となる。また、搬送の途中で停滞したパレットP5は、パレットP1が、フォークリフトで移動されたときには、上述の本願発明1の機能がそのまま働き、図5(2)に示すように、搬出方向に引寄せられて待機状態となる。
【0041】
図6(1)の状態で、フォークリフトがパレットP1をすくい上げて移動し、フォークリフトのマストがプッシャー111の押圧を解除すると、ストッパー253が搬送面Lの下にせり下がり、パレットP2が、搬出口まで搬送される。このとき、パレットP2は搬出口に設置されたペダル252を踏む。パレットP2がペダル252を踏むと、ストッパー253が搬送面Lの上にせり上り、図6(2)の状態にパレットP3、4、5は待機状態となる。
【0042】
図7は、本願発明2の斜視図及び部分拡大図である。本願発明2は、本願発明1の無動力搬送装置1に、パレットPの縁切り機構200を取付けたものであり、無動力搬送装置1に使用した符号及び数字はそのまま引用する。図中の2個のペダル252は同一の作動をし、また2個のストッパー253も同一の作動をする。また、ペダル252とストッパー253は連動して作動し、ペダル252が搬送面Lより下にせり下がると、ストッパー253は搬送面Lの上にせり上がる。また、ペダル252がせり上がると、ストッパー253はせり下がる。
【0043】
図8は、本願発明2の平面図及び部分拡大図である。A機構部201は、基台103とプッシャー111の裏側に取付けられる。プッシャー111がフォークリフトのマストにより搬送方向と逆の方向に押されると、A機構部201を構成する連接棒211とB機構部250を構成する被連接棒251が一体となる。また、フォークリフトが後退して、プッシャー111の押圧が解除されると、プッシャー111は、搬送方向に後退し、連接棒250と被連接棒251は、切り離される。
【0044】
図9は、本願発明2の側面図である。本願発明2は、本願発明1の無動力搬送装置1に加えて、更に、A機構部201及びB機構部250からなる縁切り機構200を備える。
図10は、A機構部201及びB機構部250の側面図である。
図10(1)A機構部201の側面図である。A機構部201は、傾斜板220と、端部213に凸部214を備えた連接棒211と、一方の端部を上記基台に、他の端部を上記プッシャーに取付けて、上記プッシャーを常に搬送方向に附勢する弾性体260と、からなる。弾性体260の具体例は、バネ及びゴムが挙げられる(以下、弾性体を代表して「バネ260」ともいう。)。傾斜板220は基台に取付けられ、連接棒211は、プッシャー111の先端部111aに取付けられ、軸211aを中心に回動自在であり、プッシャー111がフォークリフトのマストによって、搬送方向と逆方向に押されたとき、連接棒211は連接棒の他の端部212が傾斜板220に沿って移動するため、軸215と中心に回動を開始する。
【0045】
図10(2)は、B機構部の側面図である。
B機構部250は、リンク256を介して上下動して連動するペダル252及びストッパー253と、凹部252aを備えた被連接棒251と、遊動リンク254と、この遊動リンク254を載置する台262と、を備える。
図9に示すように、ペダル252及びストッパー253は、搬送方向下流側にペダル252及び搬送方向上流側にストッパー253を配設する。
フォークリフトの爪がパレットPの差し込み口に、所定の距離だけ挿入されたとき、連接棒211の回動が終わり、端部213の凸部214が、B機構部250を構成する被連接棒251の有する凹部251aに嵌合する。
【0046】
次いで、フォークリフトはパレットPをすくい上げて後退する。このとき、フォークリフトのマストがプッシャー111の押圧を解除するため、プッシャー111が、バネ260の附勢により後退するとともに連接棒211も後退し、連接棒211の凸部214が嵌合したB機構部250を構成する被連接棒251も後退する。この被連接棒251に取付けられた遊動リンク引寄せ部材251bが遊動リンク254の鉤部254aを引掛けて遊動リンク254を搬出口の方向に引寄せる。
【0047】
このため、ストッパー253は、搬送面Lの下にせり下がる。このときリンク256は、aジョイント258、bジョイント259及び接合部材261(リンク256とストッパー3263を接合する部材)を介して、ペダル252を搬送面Lの上にせり上げり、ストッパー253が、搬送面Lの下にせり下がる。このため、ローラーコンベア100の上に待機中のパレットPが、傾斜したフリーローラ104上を搬出口102まで搬送される。また、パレットPの底部がペダル252をせり下げる。ペダル252をせり下げるとリンク256はaジョイント258、bジョイント259及び接合部材261を介して、ストッパー253を搬送面Lの上にせり上げ、後続して搬送途中のパレットPを停止させる。
【0048】
図11は、A機構部下方向から見た斜視図である。傾斜板220は基台103にとりつけられ、連接棒211は、プッシャー111の先端部111aにとりつけられ、軸211aを中心にして回動自在である。連接棒211は、端部が傾斜板に接触しつつ前進するため、前進するとともに回動を始める。
図12は、B機構部を上下方向から見た斜視図である。
図12(1)は、B機構部250を上方向から見た斜視図である。
図12(2)は、B機構部250を下方向から見た斜視図である。
【0049】
図13は、遊動リンク254の説明図である。図13(1)は、遊動リンク254を側面から見た一部断面図である。図13(1)の(a)に示すように、遊動リンク254は、遊動リンクジョイント255を中心として回動自在である。図13(1)の(b)に示すように、遊動リンク254の鉤部254aを被連接棒251の凸部251aが、矢印方向(搬送方向)に遊動リンク254を引き寄せると、遊動リンク254及び遊動ジョイント255は、仮想線L1から仮想線L2まで、移動する。この仮想線の移動距離だけ、ストッパー253を搬送面Lの下方向にせり下げる。
【0050】
また、遊動リンク254を載置するための台262を設け、ペダル252をパレットPが踏んでいる状態のときには、この遊動リンク254を台262の上に載置する。ストッパー253にパレットPが接触して、ストッパー253に上からの荷重がかかり、せり下がろうとするのを防止し、ストッパー253の位置を維持するためである。
パレットPがフォークリフトで持ち上げて、フォークリフトが後退するとともに、プッシャー111が後退すると、ペダル252の荷重が取り除かれ、遊動リンク254の鉤部254aを、被連接棒251の凸部251aが、矢印方向(搬送方向)に引き寄せ、遊動リンク254が、台262から落下してペダル252が素早く且つ確実に作動して、搬送面Lの下にせり下がる。このため、縁切り機構がスムーズに機能する。次いで、上述の連接棒211の凸部214と被連接棒251の凹部251aは、切り離される。その後、後続のパレットPがペダル252を踏むと、ストッパー253はせり上り、遊動リンクもせり上がり、回動自在の遊動リンクは、図13(1)の(a)の状態に戻る。また、回動自在の遊動リンク254が、必要以上に回動しないために、停止部材263を設けることもできる。
図13(2)は、遊動リンク254を正面から見た状態を示す図である。遊動リンクジョイント255は、通常ストッパー253とリンク256を接合する接合部材261に固定される。
【0051】
図14は本願発明2の作動説明図1である。
図14(1)は、ステップ1を表し、搬送されてきたパレットPが搬出口にあり、このパレットP1はペダル252を踏んでいる。他のパレットP2はストッパー253で搬送を停止され待機中である。
【0052】
図14(2)は、ステップ2を表し、搬送されてきた搬出口にあるパレットP1を移動させるためにフォークリフトが爪でパレットPをすくう状態を示している。フォークリフトのマストがプッシャー111を押し、連接棒211が、基台103に取付けられた傾斜板220により回動しつつ凸部214が被連接棒251に備える被連接棒251の凹部251aに嵌合する。
【0053】
図15は、本願発明2の作動説明図2である。
図15(3)は、ステップ3を表し、パレットP1をフォークリフトがすくい上げて移動した状態を示す。上述のスライダー105は、常にバネ260により搬送方向に附勢されているため、このバネ260が、プッシャー111を所定位置まで押し戻す。このとき、被連接棒251の備える遊動リンク引寄せ部材251bは、遊動リンク254を引っ張るため、リンク256、aジョイント258、bジョイント259及び接合部材261を介して、ストッパー253は搬送面の下にせり下がり、ペダル252は搬送面の上にせり上がる。
【0054】
図15(4)は、ステップ4を表し、プッシャー111は、バネ106により搬送方向に附勢されているため、後退しつつ連接棒220の端部は傾斜板に220に沿って回動するため、連接棒220の備える凸部214は、被連接棒凹部251aから外れる。
一方、ストッパー253が搬送面したにせり下がったため、待機していたパレットP2は、搬出口に向かって搬送を開始する。このとき、図示はしないがパレットP3にブレーキをかけて、縁切りを確実にすることもできる。
【0055】
次いで、ステップ1の状態にもどり、パレットP2がペダル252を踏むことにより、ストッパー253が搬送面からせり上り、後続のパレットP3の搬送を止める。
【符号の説明】
【0056】
1 本願無動力搬送装置
100 ローラーコンベア
101 搬入口
102 搬出口
103 基台
104 フリーローラ
105 スライダー
105a スライダー当接部
106 弾性体(バネ)
107 フック
108 係止部
109 スライダー受け
110 搬出台
111 プッシャー
2 他の本願無動力装置
200 縁切り機構
201 A機構部
211 連接棒
211a 軸
212 連接棒の他の端部
213 連接棒の端部
214 凸部
220 傾斜板
250 B機構部
251 被連接棒
251a 凹部
251b 遊動リンク引寄せ部材
252 ペダル
253 ストッパー
254 遊動リンク
254a 遊動リンク鉤部
255 遊動リンクジョイント
256 リンク
258 aジョイント
259 bジョイント
260 弾性体(バネ)
261 接合部材
262 台
P パレット
L 搬送面
































【要約】
【課題】本願発明は、ローラーコンベアに電気駆動等のアクチュエータを使用することなく無動力で、コンベアの端部搬入口に載置された、ワーク積載パレット群を他の端部搬出口に確実に順次搬送し、フォークリフトを用いて、荷崩れなくパレット搬出することができる。
【解決手段】本願発明2の無動力搬送装置は、パレットPの底部が搬出口のペダル252を踏むと、ストッパー253が、搬送面の上にせり上り、他のパレットP2、3、4は待機状態となる。また、搬送の途中で停滞したパレットP5は、パレットP1が、フォークリフトで移動されたとき、P4のところまで搬送されて待機状態となる。パレットP1をフォークリフトで移動させると、ストッパー253が搬送面の下にせり下がり、パレットP2が、搬出口まで搬送される。このとき、パレットP2は搬出口に設置されたペダルを踏み、ストッパーがせり上り、他のパレットPは待機状態となる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15