特許第6052584号(P6052584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6052584ハイブリッド車両のエンジン始動制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052584
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両のエンジン始動制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 21/08 20060101AFI20161219BHJP
   F02M 26/00 20160101ALI20161219BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20161219BHJP
   F02D 41/02 20060101ALI20161219BHJP
   F02D 41/06 20060101ALI20161219BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20161219BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20161219BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20161219BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20161219BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20161219BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20161219BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F02D21/08 301A
   F02M26/00
   F02D21/08 301C
   F02D29/02 321B
   F02D41/02 301E
   F02D41/06 310
   F02D41/06 330A
   F02D43/00 301K
   F02D43/00 301H
   F02D43/00 301N
   F02D45/00 301F
   F02D45/00 314B
   F02D45/00 362H
   F02D45/00 312B
   B60K6/20 310
   B60K6/48ZHV
   B60K6/54
   B60K6/20 320
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-183715(P2012-183715)
(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公開番号】特開2014-40804(P2014-40804A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】西頭 昌明
【審査官】 戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−020981(JP,A)
【文献】 特開2009−150379(JP,A)
【文献】 特開2000−204997(JP,A)
【文献】 特開平09−117012(JP,A)
【文献】 特開平11−062662(JP,A)
【文献】 特開2010−164010(JP,A)
【文献】 特開2011−208601(JP,A)
【文献】 特開平09−079091(JP,A)
【文献】 特開2011−235818(JP,A)
【文献】 特開2002−242723(JP,A)
【文献】 特開2006−063833(JP,A)
【文献】 特開2000−018065(JP,A)
【文献】 特開昭58−072628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 21/08
B60K 6/48
B60K 6/54
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 20/00
F02D 29/02
F02D 41/02
F02D 41/06
F02D 43/00
F02D 45/00
F02M 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンを回転駆動するモータと、前記エンジンのシリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記エンジンに空気を供給する吸気管路と、前記エンジンから排ガスを排出する排気管路と、前記排気管路と前記吸気管路とを連通させ前記吸気管路に排ガスを還流させるEGR管路と、前記吸気管路と前記排気管路との連通部よりも上流側の吸気管路に設けられ前記上流側の吸気管路を開閉する吸気スロットルと、前記EGR管路に設けられ前記EGR管路を開閉するEGRバルブと、を有するハイブリッド車両に搭載されるエンジン始動制御装置であって、
前記エンジンの始動時に前記エンジンの回転速度が所定の回転速度となる始動時回転状態に達しているか否かを判定するエンジン状態判定手段と、
前記エンジンの回転速度が前記所定の回転速度となる始動時回転状態に達していると前記エンジン状態判定手段が判定するまで前記エンジンの回転速度を上昇させた後、前記所定の回転速度に維持するモータ制御手段と、
前記連通部よりも下流側の吸気管路を流通する吸気中の酸素濃度を、前記EGR管路を介した前記吸気管路への排ガスの還流状態に基づいて吸気酸素濃度推定値として推定する吸気酸素濃度推定手段と、
前記吸気酸素濃度推定値が第1の酸素濃度目標値以下であるか否かを判定する吸気酸素濃度判定手段と、
前記エンジン状態判定手段の判定結果と、前記吸気酸素濃度判定手段の判定結果とに基づいて、前記燃料噴射弁を制御する燃料噴射制御手段と、
前記エンジン状態判定手段の判定結果と、前記吸気酸素濃度判定手段の判定結果とに基づいて、前記EGRバルブと前記吸気スロットルとを開閉制御する吸気組成制御手段と、を備え、
前記エンジンの回転速度が前記始動時回転状態に未だ達していないと前記エンジン状態判定手段が判定している間は、前記燃料噴射制御手段は、前記燃料の噴射を停止し、
前記エンジンの回転速度が前記始動時回転状態に達していると前記エンジン状態判定手段が判定している間であって、前記吸気酸素濃度推定値が前記第1の酸素濃度目標値を超えていると前記吸気酸素濃度判定手段が判定している間は、前記燃料噴射制御手段は、所定量の燃料を噴射し、前記吸気組成制御手段は、前記EGRバルブを開放し且つ前記吸気スロットルを閉止する
ことを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両のエンジン始動制御装置であって、
前記モータのトルクが所定トルク未満であるか否かを判定するモータトルク判定手段を備え、
前記エンジンの回転速度が前記始動時回転状態に達していると前記エンジン状態判定手段が判定し、前記モータのトルクが前記所定トルク未満ではないと前記モータトルク判定手段が判定し、且つ前記吸気酸素濃度推定値が前記第1の酸素濃度目標値以下であると前記吸気酸素濃度判定手段が判定している場合、前記吸気組成制御手段は、前記吸気酸素濃度推定値が前記第1の酸素濃度目標値よりも低い第2の酸素濃度目標値になるように前記EGRバルブと前記吸気スロットルとを開閉制御する
ことを特徴とするハイブリッド車両のエンジン始動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン始動時の排ガスの悪化を抑制するエンジン始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003−20981号公報には、モータとディーゼルエンジン(エンジン)とを、車両走行用にそれぞれ独立あるいは併用して運転可能にしたパラレルハイブリッド方式の車両に搭載される内燃機関の始動時制御装置が記載されている。このエンジンでは、EGR弁は、排気通路から分岐したEGR通路を介して吸気通路の吸気管に排気(排ガス)の一部を還流する。また、吸気通路には吸気絞り弁が設けられている。エンジン始動時は、モータリングが実行され、エンジンがアイドリング回転速度に達するまでは、燃料噴射弁からエンジンへの燃料供給は停止される。エンジン回転速度がアイドリング回転速度に到達すると燃料が噴射供給されるとともに、エンジンの水温が低いほど吸気絞り弁の開度を小さく、EGR弁の開度を大きくするように制御され、燃料は水温が低いほど増量して供給するように燃料噴射弁が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−20981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の装置では、燃料の噴射供給時の吸気絞り弁及びEGR弁の開度は、エンジンの水温に基づいて制御されており、吸気通路の吸気酸素濃度が直接的には把握されていない。従って、吸気通路の吸気酸素濃度が燃料の燃焼時のNOx発生を抑制可能な吸気酸素濃度よりも高い場合は、排ガス中のNOx量が増大する可能性がある。また、EGR通路を介した吸気通路への排ガスの還流には時間遅れを伴うので、燃料の噴射供給直後は吸気通路の吸気酸素濃度が比較的高く、排ガス中のNOxが増加する傾向にある。このため、上記特許文献1に記載の装置では、燃料の噴射供給の態様(燃料の量及び増加率)によっては、エンジン始動時のNOx排出量を増大させてしまうおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、エンジンの始動時から排ガス中のNOx排出量を効果的に抑制することができるハイブリッド車両のエンジン始動制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明のハイブリッド車両のエンジン始動制御装置は、エンジンと、エンジンを回転駆動するモータと、エンジンのシリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、エンジンに空気を供給する吸気管路と、エンジンから排ガスを排出する排気管路と、排気管路と吸気管路とを連通させ吸気管路に排ガスを還流させるEGR管路と、吸気管路と排気管路との連通部よりも上流側の吸気管路に設けられ上流側の吸気管路を開閉する吸気スロットルと、EGR管路に設けられEGR管路を開閉するEGRバルブとを有するハイブリッド車両に搭載される。
【0007】
この、エンジン始動制御装置は、エンジン状態判定手段と、モータ制御手段と、吸気酸素濃度推定手段と、吸気酸素濃度判定手段と、燃料噴射制御手段と、吸気組成制御手段とを備える。エンジン状態判定手段は、エンジンの始動時にエンジンの回転速度が所定の回転速度となる始動時回転状態に達しているか否かを判定する。モータ制御手段は、エンジンの回転速度が所定の回転速度となる始動時回転状態に達しているとエンジン状態判定手段が判定するまでエンジンの回転速度を上昇させた後、所定の回転速度に維持する。吸気酸素濃度推定手段は、連通部よりも下流側の吸気管路を流通する吸気中の酸素濃度を、EGR管路を介した吸気管路への排ガスの還流状態に基づいて吸気酸素濃度推定値として推定する。吸気酸素濃度判定手段は、吸気酸素濃度推定値が第1の酸素濃度目標値以下であるか否かを判定する。燃料噴射制御手段は、エンジン状態判定手段の判定結果と、吸気酸素濃度判定手段の判定結果とに基づいて、燃料噴射弁を制御する。吸気組成制御手段は、エンジン状態判定手段の判定結果と、吸気酸素濃度判定手段の判定結果とに基づいて、EGRバルブと吸気スロットルとを開閉制御する。
【0008】
燃料噴射制御手段は、エンジンの回転速度が始動時回転状態に未だ達していないとエンジン状態判定手段が判定している間は、燃料の噴射を停止する。また、エンジンの回転速度が始動時回転状態に達しているとエンジン状態判定手段が判定している間であって、吸気酸素濃度推定値が第1の酸素濃度目標値を超えていると吸気酸素濃度判定手段が判定している間は、燃料噴射制御手段は、所定量の燃料を噴射し、吸気組成制御手段は、EGRバルブを開放し且つ吸気スロットルを閉止する。
【0009】
上記構成では、ハイブリッド車両のエンジン始動前の状態では、吸気管路の吸気酸素濃度は空気と略同じ酸素濃度であり、エンジンのシリンダ内に噴射した燃料の燃焼時に発生するNOxの抑制が可能な適正な吸気酸素濃度よりも濃度が高い。エンジンの始動時は、燃料噴射制御手段がエンジンに対して燃料の噴射を停止している状態で、モータ制御手段が、エンジンの回転速度を所定の回転速度にまで上昇させてエンジンを始動時回転状態に到達させた後、所定の回転速度に維持する。エンジンが始動回転状態に達したとエンジン状態判定手段が判定すると、噴射制御手段が所定量の燃料を噴射する。所定量の燃料には、エンジンを着火するのに必要な比較的少量の燃料量が設定される。燃料が噴射されるとエンジンが着火して排気管路に排ガスが排出される。エンジンの着火によりエンジンは回転トルクを発生させ、モータ制御手段は、エンジンの回転トルクに応じてモータのトルクを低減させ、エンジンの回転速度を所定の回転速度に維持する。また、吸気組成制御手段が、吸気スロットルを閉止し、EGR弁を開放するので、連通部よりも下流の吸気管路には新たな空気は流入せず、排気管路からEGR管を介して空気よりも酸素濃度の低い排ガスが還流して、吸気管路の吸気酸素濃度が低下する。噴射制御手段は、吸気酸素濃度推定手段が推定した吸気管路の吸気酸素濃度推定値が第1の酸素濃度目標値以下になるまで所定量の燃料の噴射を継続する。なお、第1の酸素濃度目標値は、排ガス中のNOx発生の抑制が可能な適正な吸気酸素濃度よりも高く、且つ適正な吸気酸素濃度の近傍の値に設定されることが好適である。エンジンの回転速度は所定の回転速度に維持され十分な排ガスの還流量が得られるので、吸気管路の吸気酸素濃度を第1の酸素濃度目標値まで急速に低下させることができる。また、吸気酸素濃度が第1の酸素濃度目標値以下に低下するまでの間、燃料噴射制御手段は、所定量の燃料を噴射するので、エンジンへの燃料供給量は比較的少量であり排出される排ガス量も少ないのでNOx排出量を抑制することができる。また、吸気管路を流通する吸気中の酸素濃度を、吸気酸素濃度推定手段が推定する吸気酸素濃度推定値を用いて直接的に把握できるので、第1の酸素濃度目標値まで効率良く低下させることができる。このように、エンジン始動時からの排ガス中のNOx排出量を抑制しつつ、吸気酸素濃度を排ガス中のNOx発生の抑制が可能な適正な吸気酸素濃度の近傍の第1の酸素濃度目標値まで低下させることができる。
【0010】
なお、吸気管路の酸素濃度推定値は、例えば、燃料噴射量、エンジンの回転速度、連通部よりも上流の吸気管路の空気流量及びEGR管路の排ガス流量をパラメータとする排ガスの還流状態に基づいて推定される。
【0011】
また、上記ハイブリッド車両のエンジン始動制御装置は、モータのトルクが所定トルク未満であるか否かを判定するモータトルク判定手段を備えてもよい。エンジンの回転速度が始動時回転状態に達しているとエンジン状態判定手段が判定し、モータのトルクが所定トルク未満ではないとモータトルク判定手段が判定し、且つ吸気酸素濃度推定値が第1の酸素濃度目標値以下であると吸気酸素濃度判定手段が判定している場合、燃料噴射制御手段は、噴射する燃料を所定量の燃料から徐々に増大させ、吸気組成制御手段は、吸気酸素濃度推定値が第1の酸素濃度目標値よりも低い第2の酸素濃度目標値になるようにEGRバルブと吸気スロットルとを開閉制御する。
【0012】
上記構成では、エンジンの回転速度が始動時回転状態に達しており、モータのトルクが所定トルク以上であって、吸気酸素濃度推定値が第1の酸素濃度目標値以下に低下すると、燃料噴射手段は、噴射する燃料を所定量から徐々に増大させる。また、吸気組成制御手段は、第1の酸素濃度目標値よりも低い第2の酸素濃度目標値となるようにEGR弁と吸気絞り弁とを開閉制御する。なお、第2の酸素濃度目標値は、NOx発生の抑制が可能な適正な吸気酸素濃度に設定されることが好適である。燃料噴射量の増大によって、エンジンの回転トルクが増大し、モータ制御手段は、エンジンの回転トルクの増大に応じてモータのトルクを低減させてエンジンの回転速度を所定の回転速度に維持する。モータのトルクが所定トルク未満に減少したときは、燃料噴射量の増量が停止され、エンジンはエンジンの回転トルクで所定の回転速度を維持する自立運転状態となる。燃料噴射量の増大に応じて排出される排ガス量も増大するが、吸気管路の吸気酸素濃度が第2の酸素濃度目標値に制御されているので、排ガス中のNOx発生が抑制され、排ガス中のNOx排出量が抑制される。このように、エンジンが自立運転状態になるまでエンジンへの燃料供給量が増大しても、エンジン始動時から排ガス中のNOx排出量を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハイブリッド車両のエンジン始動時から排ガス中のNOx排出量を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係わるハイブリッド車両のパワートレイン説明図である。
図2図1のエンジンの吸気・排気系統図である。
図3】ハイブリッド車両の要部を示すブロック図である。
図4】吸気酸素濃度と排ガス中のNOx量との関係を示すエンジン特性図である。
図5】エンジン始動制御処理のフローチャートである。
図6】エンジン始動時のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。本実施形態に係わる車両1は、車両走行のためにモータとエンジンとをそれぞれ独立あるいは併用して運転可能に配置したパラレルハイブリッド方式の車両であり、エンジン2と、変速機24と、モータ25と、ECU40等を備えている。
【0016】
図1に示すように、エンジン2の出力は、エンジン2と変速機24との間に設けられた、流体カップリング21及び変速クラッチ23を介して変速機24に伝えられる。変速クラッチ23が接のときにエンジン2の出力が変速機24へ伝達され、変速クラッチ23が断のときはエンジン2の出力の変速機24への伝達が遮断される。流体カップリング21はロックアップクラッチ22を備えている。変速クラッチ23が接の状態で、ロックアップクラッチ22が接の時はエンジン2の出力を直接的に変速機24に伝達し、ロックアップクラッチ22が断の時はエンジン2の出力を流体カップリング21の流体を介して変速機24に伝達する。変速機24で適切に変速された変速機24の出力はプロペラシャフト31を経て駆動輪32に伝えられる。モータ25は、インバータ26を介してバッテリ27から電力が供給されるとモータトルクT(モータのトルク)を発生し、モータトルクTは、ギア29を介して変速機24のギア列(図示省略)に伝達され変速機24を介してプロペラシャフト31に伝えられる。モータ25に電力が供給されていないときであって、エンジン2に燃料が供給されて回転トルクを発生させている場合、モータ25は、エンジン2に対する負荷として従動回転する。また、エンジン2に燃料が供給されていないときであって、モータ25に電力が供給されモータトルクTを発生させている場合、エンジン2は、モータ25に対する負荷となって従動回転する。モータ25には、モータトルクTを検出するモータトルクセンサ30が設けられている。
【0017】
図2に示すように、エンジン2には、シリンダ3に空気を取り入れる吸気管路5及びシリンダ3から燃焼排ガスを排出する排気管路7が設けられており、シリンダ3には燃料を噴射する燃料噴射弁4が設けられている。また、エンジン2には過給機12が備えられている。排気管路7に設けられた過給機12のタービン13が排ガスによって回転し、過給機12の回転軸12aが吸気管路5に設けられた過給機12のコンプレッサ14を回転させて、吸気管路5から吸入される空気を圧縮する。過給機12のタービン13の上流側の排気管路7と過給機12のコンプレッサ14側の下流側の吸気管路5とがEGR管路8で連通されている。図2中の矢印で示すように、吸気管路5に取り入れられた空気はシリンダ3を経由して排ガスとして排気管路7に排出され、排ガスの一部がEGR管路8を介して吸気管路5に還流される。EGR管路8には排ガスを冷却するためのEGRクーラ16と、EGR管路8を開閉してEGR管路8を流通する排ガスの流量を調節するためのEGRバルブ11が設けられている。また、過給機12のコンプレッサ14の下流側であって、吸気管路5とEGR管路8との連通部9よりも上流側には、上流側から順に、コンプレッサ14で圧縮加熱された空気を冷却するインタークーラ15と、吸気管路5を開閉して、吸気管路5を流通する空気量を調節する吸気スロットル10とが設けられている。また、過給機12のコンプレッサ14の上流側の吸気管路5には、吸入する吸気量を検出する吸気量センサ18が設けられ、連通部9よりも下流の吸気管路6には吸気の圧力を検出する吸気圧センサ19と吸気の温度を検出する吸気温度センサ20とが設けられる。
【0018】
ECU40は、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを備える。CPUはROMに格納されたエンジン始動制御処理プログラムを読み出して、エンジン始動制御処理を実行することによって、図3に示すように、モータトルク判定部41、エンジン状態判定部42、吸気酸素濃度推定部43、吸気酸素濃度判定部44、クラッチ・変速機制御部45、モータ制御部46、燃料噴射制御部47、吸気組成制御部48として機能する。RAMは、エンジン回転速度センサ17、モータトルクセンサ30、吸気量センサ18、吸気圧センサ19及び吸気温度センサ20がそれぞれ検出した検出値、CPU演算結果の一時記憶領域、判定の各種判定基準値及びフラグの設定領域として機能する。
【0019】
モータトルク判定部(モータトルク判定手段)41は、モータトルクセンサ30が検出したモータトルクTが所定トルクTl未満か否かを判定し、判定結果を燃料噴射制御部47及び吸気組成制御部48に出力する。
【0020】
エンジン状態判定部(エンジン状態判定手段)42は、エンジン回転速度センサ17が検出したエンジン2の回転速度Nがアイドリング回転速度(所定の回転速度)Niとなるアイドリング状態(始動時回転状態)に達しているか否かを判定し、判定結果をモータ制御部46と燃料噴射制御部47と吸気組成制御部48とに出力する。
【0021】
クラッチ・変速機制御部45は、流体カップリング21のロックアップクラッチ22、及び変速クラッチ23を接状態又は断状態に切替え、変速機24の変速モードを制御する。
【0022】
モータ制御部(モータ制御手段)46は、エンジン2の回転速度Nがアイドリング回転速度Niとなるアイドリング状態に達しているとエンジン状態判定部42が判定するまでエンジン2の回転速度Nを上昇させた後、モータトルクTを調整してエンジン2の回転速度Nをアイドリング回転速度Niに維持する。
【0023】
吸気酸素濃度推定部(吸気酸素濃度推定手段)43は、連通部9よりも下流の吸気管路6の吸気酸素濃度値OLを推定し、推定結果を吸気酸素濃度判定部44に出力する。シリンダ3に噴射された燃料の燃焼時に発生するNOx量は、図4に示すように吸気酸素濃が高くなるにつれて増大し、ある吸気酸素濃度(図中の第2の吸気酸素濃度目標値OL2)よりも高くなると急増する傾向にある。本実施形態では、連通部9よりも下流の吸気管路6の吸気酸素濃度を推定し管理することによってNOx排出量を抑制する。吸気酸素濃度OLの推定には、例えば燃料噴射量、エンジン2の回転速度、吸気量、吸気圧及び吸気温度に基づいて吸気酸素濃度を推定する公知の方法(例えば、特開2010−285957号公報に記載された方法)が用いられる。
【0024】
吸気酸素濃度判定部(吸気酸素濃度判定手段)44は、吸気酸素濃度推定部43が推定した吸気酸素濃度推定値OLが、図4に示すように第2の吸気酸素濃度目標値OL2よりも高く、且つ第2の吸気酸素濃度目標値OL2の近傍である第1の吸気酸素目標値OL1以下であるか否かを判定し、判定結果を燃料噴射制御部47及び吸気組成制御部48に出力する。
【0025】
燃料噴射制御部(燃料噴射手段)47は、エンジン状態判定部42と吸気酸素濃度判定部44とモータトルク判定部41との判定結果に基づいて燃料噴射弁4を制御する。
【0026】
吸気組成制御部(吸気組成制御手段)48は、エンジン状態判定部42と吸気酸素濃度判定部44とモータトルク判定部41との判定結果に基づいてEGRバルブ11と吸気スロットル10とを開閉制御する。
【0027】
次に、ECU40のエンジン始動制御処理を図5に示すフローチャート及び図6に示すタイミングチャートに基づいて説明する。本処理は、所定時間毎に繰り返して実行される。ECU40は、始動フラグFsがオンか否かを判定する(ステップS1)。Fsがオフの場合は、ステップS2に進み、始動指示の有無を確認する。始動指示があった場合は、ステップS3を実行した後、Fsをオンにし(ステップS4)、始動指示がない場合は処理を終了する。始動指示は、例えばエンジン2の始動スイッチ(図示省略)等から入力される。ステップS3では、流体カップリング21のロックアップクラッチ22を接にし、変速クラッチ23を接にして、エンジン2と変速機24とを流体カップリング21の流体を介することなく接続する。さらに、変速機24の変速モードをエンジン出力のプロペラシャフト31への伝達が遮断されたニュートラルモードにする。ステップS3及びステップS4を実行すると、次にステップS8に進み、EGRバルブ11の開度を全開とし、吸気スロットル10の開度を全閉とする。以上が図6に示す区間(1)の処理である。
【0028】
ステップS1で始動フラグFsがオンと判定された場合は、エンジン始動制御処理が開始されているので、ステップS5に進みモータ25の回転速度制御を行う。モータ25の回転速度制御では、図6に示すようにモータ25にモータトルクTを発生させて、エンジン2の回転速度Nをアイドリング回転速度Niまで上昇させ、エンジン2がアイドリング回転速度Niを超えるアイドリング回転状態(始動回転状態)に達した後は、エンジン2の回転速度Nをアイドリング回転速度Niに維持する。次に、エンジン2の回転速度Nがアイドリング回転速度Ni以上になったか否かを判定する(ステップS6)。エンジン2の回転速度Nがアイドリング回転速度Ni未満である場合は、燃料噴射弁4からの燃料噴射量をゼロにする(ステップS7)。続いてステップS8へ進みEGRバルブ11の開度を全開状態、吸気スロットル10の開度の全閉状態を維持する。以上が図6に示す区間(2)の処理である。
【0029】
エンジン2の回転速度Nがアイドリング回転速度Ni以上になった場合(ステップS6の判定がYESの場合)は、連通部9よりも下流の吸気管路6の吸気酸素濃度推定値OLを算出する(ステップS9)。次に、モータトルクTが所定トルクTl未満か否かを判定する(ステップS10)。モータトルクTが所定トルクTl未満ではない場合は、ステップS11に進み、吸気酸素濃度推定値OLが第1の酸素濃度目標値OL1以下か否かを判定する(ステップS11)。吸気酸素濃度推定値OLが第1の酸素濃度目標値OL1を超えている場合は、ステップS12に進み、所定量の燃料を燃料噴射弁4からエンジン2に対して噴射供給する。続いてステップS8に進み、全開のEGRバルブ11の開度と、全閉の吸気スロットル10の開度を維持する。以上が図6に示す区間(3)の処理である。
【0030】
ステップS11において、吸気酸素濃度推定値OLが第1の酸素濃度目標値OL1以下であると判定された場合は、ステップS13に進み、前回噴射した燃料量よりも今回噴射する燃料量を増量することによって、燃料噴射量を徐々に増大する。燃料噴射量の増量によってエンジン2の回転トルクが増大し、モータ制御部46がエンジン2の回転速度Nをアイドリング回転速度Niに維持するためにモータトルクTを減少させる(図6参照)。次に、ステップS14に進んで吸気組成制御を実行する。吸気組成制御では、吸気酸素濃度推定値OLが、図4に示す第2の酸素濃度目標値OL2となるように、EGRバルブ11と吸気スロットル10とを開閉制御する。すなわち、吸気酸素濃度推定値OLが、第2の酸素濃度目標値OL2よりも低い場合は、EGRバルブ11の開度を閉方向に、吸気スロットル10の開度を開方向に駆動し、吸気酸素濃度推定値OLが、第2の酸素濃度目標値OL2よりも高い場合は、EGRバルブ11の開度を開方向に、吸気スロットル10の開度を閉方向に駆動する。以上が図6における区間(4)の処理である。
【0031】
ステップS10において、モータトルクTが所定トルクTl未満であると判定された場合は、エンジン2の回転トルクによってエンジン2の回転速度Nがアイドリング回転速度Niに略到達しているので、ステップS15に進んで流体カップリング21のロックアップクラッチ22を断とする。これによって、エンジン2の駆動力は流体カップリング21の流体を介して変速機24に伝達される。次に、モータ25の回転速度制御をオフとしてモータトルクTをゼロにし(ステップS16)、エンジン始動フラグFsをオフとして(ステップS17)、エンジン始動制御処理を終了する。以上が図6の区間(5)の処理である。なお、エンジン始動制御処理の終了後、エンジン2の制御は別途備えるエンジン制御処理(説明省略)等に引き継がれ、エンジン回転速度が制御され、吸気組成制御が継続される。
【0032】
本実施形態では、車両1のエンジン2の始動前の状態では、吸気管路6の吸気酸素濃度は空気と略同じ酸素濃度であり、エンジン2のシリンダ3内に噴射した燃料の燃焼時に発生するNOxの抑制が可能な適正な吸気酸素濃度(第2の吸気酸素濃度OL2)よりも濃度が高い。エンジン2の始動時は、燃料噴射制御部47がエンジン2に対して燃料の噴射を停止している状態で、モータ制御部46が、エンジン2の回転速度Nをアイドリング回転速度Niにまで上昇させてエンジン2をアイドリング回転状態に到達させた後、アイドリング回転速度Niに維持する。エンジン2がアイドリング回転状態に達したとエンジン状態判定部42が判定してから、燃料噴射制御部47が所定量の燃料を噴射する。所定量の燃料には、エンジン2を着火するのに必要な比較的少量の燃料量が設定される。エンジン2が着火すると排気管路7に排ガスが排出される。また、吸気組成制御部48が、吸気スロットル10を閉止し、EGRバルブ11を開放する。このため、連通部9よりも下流の吸気管路6には新たな空気は流入せず、排気管路7からEGR管路8を介して空気よりも酸素濃度の低い排ガスが還流して、連通部9よりも下流の吸気管路6の吸気酸素濃度が低下する。燃料噴射制御部47は所定量の燃料の噴射を継続し、エンジン2の回転速度Nはアイドリング回転速度Niに達しており十分な排ガスの還流量が得られるので、吸気管路6の吸気酸素濃度推定値OLを第1の酸素濃度目標値OL1まで急速に低下させることができる。
【0033】
また、吸気酸素濃度推定値OLが第1の酸素濃度目標値以下OL1に低下するまでの間、燃料噴射制御部47は、所定量の燃料を噴射するので、エンジン2への燃料供給量は比較的少量であり排出される排ガス量も少ないのでNOx排出量を抑制することができる。また、連通部9よりも下流の吸気管路6中の吸気酸素濃度を、吸気酸素濃度推定部43が推定する吸気酸素濃度推定値OLを用いて直接的に把握できるので、第1の酸素濃度目標値OL1まで効率良く低下させることができる。
【0034】
また、吸気酸素濃度推定値OLが第1の酸素濃度目標値OL1以下に低下したときから、燃料噴射制御部47は、噴射する燃料を所定量から徐々に増大させ、吸気組成制御部48は、第1の酸素濃度目標値OL1よりも低い第2の酸素濃度目標値OL2となるようにEGRバルブ11と吸気絞り弁とを開閉制御する。吸気組成制御の開始時には、吸気酸素濃度推定値OLが第2の酸素濃度目標値OL2の近傍の第1の酸素濃度目標値OL1まで低下しているので(図4参照)、吸気組成制御部48は、噴射燃料量の増大に対して吸気酸素濃度推定値OLを第2の酸素濃度目標値OL2に良好に制御することができる。噴射する燃料を増大させると排出される排ガス量も増大するが、吸気管路6の吸気酸素濃度推定値OLが第2の酸素濃度目標値OL2に制御されているので、排ガス中のNOx発生が抑制され、排ガス中のNOx排出量が抑制される。
【0035】
このように、エンジン2の停止状態からアイドリング状態に移行するまでのエンジン始動時から排ガス中のNOx排出量を効果的に抑制することができる。
【0036】
なお、本実施形態では吸気組成制御部48は、吸気酸素濃度推定値OLを推定し、吸気酸素濃度を目標値とする吸気酸素濃度制御を実行したが、吸気組成制御部は、吸気酸素濃度に対応する吸気管路5の吸気量を目標値とした吸気量制御を実行してもよい。また、吸気組成制御部は、吸気酸素濃度に対応するEGR率(吸気管路6の吸気量に対するEGR管路8からの排ガスの還流量の比率)を目標値としたEGR率制御を実行してもよい。
【0037】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ハイブリッド車両のエンジン始動制御装置として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 車両
2 エンジン
3 シリンダ
4 燃料噴射弁
5 吸気管路(連通部よりも上流側の吸気管路)
6 吸気管路(連通部よりも下流側の吸気管路)
7 排気管路
8 EGR管路
9 連通部
10 吸気スロットル
11 EGRバルブ
24 変速機
25 モータ
40 ECU
41 モータトルク判定部(モータトルク判定手段)
42 エンジン状態判定部(エンジン状態判定手段)
43 吸気酸素濃度推定部(吸気酸素濃度推定手段)
44 吸気酸素濃度判定部(吸気酸素濃度判定手段)
46 モータ制御部(モータ制御手段)
47 燃料噴射制御部(燃料噴射制御手段)
48 吸気組成制御部(吸気組成制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6