(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
室内に設置される筐体を有し、当該筐体内に燃焼装置と送風機が内蔵され、筐体内から筐体が設置された室内に向かって送風する温風暖房装置であって、燃焼装置が燃焼中のみならず燃焼装置の燃焼が停止している場合にも特定の条件下で送風機が回転され、送風機の実回転数が目標回転数となる様にフィードバック制御される温風暖房装置において、
送風機のフィードバック制御は、少なくとも比例制御と微分制御とを含む制御方法であり、燃焼装置が燃焼中であるときの比例制御の定数及び/又は微分制御の定数と、燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後における比例制御の定数及び/又は微分制御の定数とが異なることを特徴とする温風暖房装置。
燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後における比例制御の定数は、燃焼装置が燃焼中であるときの比例制御の定数よりも小さく、燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後における微分制御の定数は、燃焼装置が燃焼中であるときの微分制御の定数よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の温風暖房装置。
燃焼装置が燃焼中であるときの目標回転数と、燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後における目標回転数が相違し、比例制御の定数及び/又は微分制御の定数が、送風機の目標回転数又は実回転数に応じて変わることを特徴とする請求項1又は2に記載の温風暖房装置。
目標回転数は段階的に変化する段階的変数または連続して変化する連続的変数であり、比例制御の定数及び/又は微分制御の定数が、送風機の目標回転数又は実回転数に応じて変わることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の温風暖房装置。
燃焼装置が燃焼中であるとき及び燃焼停止直後における目標回転数は高回転領域に属し、燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後における目標回転数は低回転領域に属し、前記高回転領域及び/又は低回転領域には幅があることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の温風暖房装置。
比例制御の定数及び微分制御の定数の組み合わせが複数記憶されており、前記組み合わせの中から各定数が選択されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の温風暖房装置。
目標回転数又は実回転数が低下傾向にある場合における比例制御の定数及び/又は微分制御の定数を変更する起点となる回転数と、目標回転数又は実回転数が上昇傾向にある場合における比例制御の定数及び/又は微分制御の定数を変更する起点となる回転数が異なることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の温風暖房装置。
室内に設置される筐体を有し、当該筐体内に燃焼装置と送風機が内蔵され、筐体内から筐体が設置された室内に送風を排出する温風暖房装置であって、送風機の実回転数が目標回転数となる様にフィードバック制御される温風暖房装置において、
送風機のフィードバック制御は、少なくとも比例制御と微分制御とを含む制御方法であり、送風機の目標回転数又は実回転数に応じて比例制御の定数及び/又は微分制御の定数が異なることを特徴とする温風暖房装置。
温風暖房装置の送風機を制御する温風暖房装置の送風機制御方法であって、送風機は、燃焼中と燃焼直後においては高回転数で運転され、燃焼停止中であって特定の条件下においては低回転数で運転され、送風機の実回転数が目標回転数となる様にフィードバック制御され、当該フィードバック制御は、少なくとも比例制御と微分制御とを含む制御方法であり、高回転数で運転される際の比例制御の定数及び/又は微分制御の定数と、低回転数で運転される際の比例制御の定数及び/又は微分制御の定数とが異なることを特徴とする温風暖房装置の送風機制御方法。
【背景技術】
【0002】
家庭用の暖房機器として、ガスファンヒータが知られている。ガスファンヒータは、人が居住する室内に直接設置されるものであり、筐体内に燃焼装置と送風機とが内蔵されている。そして送風機によって室内の空気を取り込み、燃焼装置で当該空気を加熱して再度室内に排出する。
なおガスファンヒータには、室内の空気を筐体内に吸入して燃焼に供する形式のものと、燃焼用の空気を室外から取り込む形式のものがある。前者のファンヒータでは、燃焼装置に空気を供給する機能と、加熱した空気を室内に排出する機能を一つの送風機で兼用するものが多い。また後者の燃焼用の空気を室外から取り込む形式のファンヒータでは、燃焼装置に空気を供給するための送風機と、加熱した空気を室内に排出するための送風機とを個別に備えているものが多い。
【0003】
またガスファンヒータの燃焼装置は、室温や設定温度に応じて燃焼量を変化させるものがある。さらに近年では、燃焼量を変化させるだけではなく、燃焼自体をオンオフさせる機能を備えたものがある。送風機は、燃焼量やオンオフの状況に応じて、送風機の回転数を変化させたり、送風機自体をオンオフさせる。
例えば送風機のモータを制御し、送風機の実回転数が目標回転数と一致する様にフィードバック制御される。フィードバック制御は、比例制御と積分制御と微分制御を含んだ制御方法が採用される。すなわち送風機は、PID制御によるフィードバック制御が行われる場合が多い。即ち目標回転数と実回転数との偏差に応じた操作量(比例項)と、前記偏差の積分値に応じた操作量(積分項)と、前記偏差の単位時間あたりの変化量に応じた操作量(微分項)とを演算し、これらを合算した操作量(具体的には電圧や電流)をモータに供給し、送風機を制御する。
【0004】
なお公知の様に、比例項は、基本的に、目標回転数と実回転数との偏差に比例ゲインと称される比例乗数を乗じた項目である。また積分項は、基本的に、偏差の積分値に、積分ゲインと称される比例乗数を乗じた項目である。微分項は、基本的に、偏差の単位時間あたりの変化量に、微分ゲインと称される比例乗数を乗じた項目である。なお比例制御の定数、積分制御の定数及び微分制御の定数は、まとめてフィードバック定数と称されている。
実際には、これらにその他の定数や変数が加減乗除されて演算された操作量をモータに供給し、送風機を制御することとなる。
一般にPID制御においては、フィードバック定数は一定であり、変わらない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、燃焼自体をオンオフさせる機能を備えたファンヒータでは、燃焼装置が燃焼している際のみではなく、燃焼が行われていない状態でも送風機が回転される場合がある。
例えば燃焼装置に点火する前に送風機が起動され、燃焼装置に新鮮な空気を供給する動作が行われる。また燃焼を停止した直後においては燃焼装置内を掃気したり、冷却するために一定時間の間、送風機が駆動される。
なお、前者の動作はプリパージ動作と称され、後者の動作はポストパージ動作と称される。また燃焼を停止した後に一定時間の間、送風機を運転しても、燃焼装置内の温度が低下しない場合には、当該温度が低下するまで送風機を回転する。即ち燃焼装置内の温度が低下しない場合には、実質的にポストパージ動作が延長される。
さらに燃焼装置をオンオフ動作して室温を調整する機能を備えたファンヒータでは、室内の空気を筐体内に取り込んで室内の温度を検知する目的や、燃焼装置を冷却する目的、室内の空気を循環させる目的等から、燃焼が停止している間でも送風機が駆動される場合がある。
【0007】
ここで燃焼中においては、送風機は、高回転領域で回転される。またプリパージ動作及びポストパージ動作(実質的に延長される場合を含む)においては、送風機は、燃焼時に比べて幾分低い回転数で回転されるものの、高回転領域と言える回転数で回転される。
これに対して、燃焼装置が停止中であって、前記したプリパージ動作及びポストパージ動作以外の条件下における送風機の運転(以下 燃焼完全停止中の送風と称する場合がある)は、目標回転数が低く抑えられる。即ち燃焼完全停止中の送風は、燃焼装置からの発熱が無いので、高回転で送風機を運転する必要がない。また燃焼完全停止中に送風機を駆動すると、使用者に寒さを感じさせてしまうので、回転数は、必要最小限に抑えることが望ましい。即ち燃焼完全停止中の送風は、微風運転であることが望ましい。
【0008】
そのため燃焼完全停止中の送風は、モータを極力低い回転数で回転させることが望ましい。そこで本発明者らは、高回転領域における送風機の運転を、毎分400回転から1000回転程度で行い、燃焼完全停止中の微風運転を毎分150回転程度の極低回転数で行う構成のファンヒータを試作した。
【0009】
ところが試作したファンヒータは、送風が安定しないという予期しない問題が生じた。即ち送風機を低回転数で回転させるとモータの回転数が不安定なものとなってしまうという予期しなかった問題が発生した。
この問題を検討したところ、積分制御部分の追従遅れが原因の一つであることが判明した。即ち送風機を低い回転数で回転させる場合、目標回転数と実回転数との偏差がそもそも小さいものとなる。そのためPID制御における積分項の増加が遅れ、積分項が実質的に機能しない。
積分項を機能させようとして積分項の係数を大きくすると、定常時や給排気抵抗変化を伴う外乱発生時の追従性は良くなるが、設定回転数が大きく変化する際に過敏に反応して回転数が不安定になり、ハンチングが発生する。
【0010】
そこで本発明者らは、積分項を外して、実質的に比例制御と微分制御によって送風機を制御した。即ちPD制御によって送風機をフィードバック制御した。
しかしながらこの場合においても微風運転を行った場合には送風機の回転数が安定せず、回転数が振幅するという問題があった。
【0011】
そこでさらに原因を追求したところ、微風運転時は送風機の回転数が極端に低いため、フィードバック制御における回転数の検出タイミングと、送風機の回転数が安定する時間間隔と、フィードバック制御における操作量変化のタイミングが一致せず、一旦回転数を検知した後、次回の回転数検知までの間に、フィードバック制御における操作量の変化が複数回実行され、回転数が不安定になってしまうのであった。
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、燃焼完全停止中における送風機の運転を安定して行うことができる温風暖房装置を開発することを課題とするものである。
また同様に、燃焼完全停止中における送風機の運転を安定して行うことができる制御方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、室内に設置される筐体を有し、当該筐体内に燃焼装置と送風機が内蔵され、筐体内から筐体が設置された室内に向かって送風する温風暖房装置であって、燃焼装置が燃焼中のみならず燃焼装置の燃焼が停止している場合にも特定の条件下で送風機が回転され、送風機の実回転数が目標回転数となる様にフィードバック制御される温風暖房装置において、送風機のフィードバック制御は、少なくとも比例制御と微分制御とを含む制御方法であり、燃焼装置が燃焼中であるときの比例制御の定数及び/又は微分制御の定数と、燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後における比例制御の定数及び/又は微分制御の定数とが異なることを特徴とする温風暖房装置である。
【0013】
ここで「一定条件を満足した後」の「一定条件」は、本発明を採用する温風暖房装置の機能によって種々のものが考えられる。例えば燃焼を停止した後に「一定時間が経過した場合」や、燃焼を停止した後に「筐体内の温度が一定以下になっている場合」、あるいはこの両者を共に満足する場合が「一定条件」の候補として挙げられる。燃焼装置の冷却や掃気が終了し、送風機を通常範囲の回転数で回転する必要性が希薄になった状態が「一定条件を満足した後」であるとも言える。「一定条件を満足した後」の具体例としては、前記したポストパージ運転が終了した後が考えられる。またポストパージ運転が、実質的に延長されている場合には、その終了後を「一定条件を満足した後」とすることが推奨される。
本発明の温風暖房装置は、燃焼装置が燃焼中である場合における送風機制御のフィードバック定数と、燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後におけるフィードバック定数が異なる。そのため送風機を高回転で回転させる場合であっても低回転で回転させる場合であっても回転数が安定する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後における比例制御の定数は、燃焼装置が燃焼中であるときの比例制御の定数よりも小さく、燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後における微分制御の定数は、燃焼装置が燃焼中であるときの微分制御の定数よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の温風暖房装置である。
【0015】
比例制御の定数が大きい場合は、偏差に過敏に反応して送風機に供給する電力等が変化する。逆に比例制御の定数が小さい場合は、偏差に対する反応が遅れる。
燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後においては、送風機の運転は、低回転で行われる。本発明では、燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後においては、比例制御の定数が小さい状態で制御されるから、偏差に対する反応が遅くなり、送風機が安定する。
また燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後においては、微分制御の定数が大きくなるので、変化に対する対応速度が速くなり、回転数が安定する。
【0016】
請求項3に記載の発明は、燃焼装置が燃焼中であるときの目標回転数と、燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後における目標回転数が相違し、比例制御の定数及び/又は微分制御の定数が、送風機の目標回転数又は実回転数に応じて変わることを特徴とする請求項1又は2に記載の温風暖房装置である。
【0017】
定数の変化は、2段階、3段階という様に、段階的に変わるものであってもよい。例えば目標回転数又は実回転数が一定の回転数よりも上か下かによって二段回に変化するものであってもよい。
また定数が不連続的に変わるものであってもよい。
本発明の温風暖房装置は、比例制御の定数及び/又は微分制御の定数が、送風機の目標回転数又は実回転数に応じて本特性を備えた温風暖房装置は、本発明の作用効果を十分に発揮することができる。
【0018】
目標回転数は段階的に変化する段階的変数または連続して変化する連続的変数であり、比例制御の定数及び/又は微分制御の定数が、送風機の目標回転数又は実回転数に応じて変わるものであってもよい(請求項4)。
【0019】
燃焼装置が燃焼中であるとき及び燃焼停止直後における目標回転数は高回転領域に属し、燃焼装置が燃焼を停止して一定条件を満足した後における目標回転数は低回転領域に属し、前記高回転領域及び/又は低回転領域には幅があることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の温風暖房装置であってもよい(請求項5)。
【0020】
「燃焼停止直後」はポストパージ等のためにある程度の回転数で送風機を駆動する場合が多い、ポストパージ等の際における送風機の回転数は、燃焼時のそれに比べると低い場合が多いが、「微風運転」における回転数に比べると格段に高い。
【0021】
比例制御の定数及び微分制御の定数の組み合わせが複数記憶されており、前記組み合わせの中から各定数が選択されるものであってもよい(請求項6)。
【0022】
目標回転数又は実回転数が低下傾向にある場合における比例制御の定数及び/又は微分制御の定数を変更する起点となる回転数と、目標回転数又は実回転数が上昇傾向にある場合における比例制御の定数及び/又は微分制御の定数を変更する起点となる回転数が異なるものであってもよい(請求項7)。
【0023】
また同様の課題を解決するための発明は、室内に設置される筐体を有し、当該筐体内に燃焼装置と送風機が内蔵され、筐体内から設置された室内に送風を排出する温風暖房装置であって、送風機の実回転数が目標回転数となる様にフィードバック制御される温風暖房装置において、送風機のフィードバック制御は、少なくとも比例制御と微分制御とを含む制御方法であり、送風機の目標回転数又は実回転数に応じて比例制御の定数及び/又は微分制御の定数が異なることを特徴とする温風暖房装置である(請求項8)。
【0024】
また同様の課題を解決する方法の発明は、温風暖房装置の送風機を制御する温風暖房装置の送風機制御方法であって、送風機は、燃焼中と燃焼直後においては高回転数で運転され、燃焼停止中であって特定の条件下においては低回転数で運転され、送風機の実回転数が目標回転数となる様にフィードバック制御され、当該フィードバック制御は、少なくとも比例制御と微分制御とを含む制御方法であり、高回転数で運転される際の比例制御の定数及び/又は微分制御の定数と、低回転数で運転される際の比例制御の定数及び/又は微分制御の定数とが異なることを特徴とする温風暖房装置の送風機制御方法である(請求項9)。
【発明の効果】
【0025】
本発明の温風暖房装置及び送風機制御方法によると、温風暖房装置がどの様な運転状況であっても送風機の動作が安定する。そのため燃焼が完全停止している際に微風運転を行うことができ、使用者に冷風感を与えず、不快な思いをさせることがない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
【0028】
本実施形態の温風暖房装置1は、室内の床上に載置して使用するガスファンヒーターであり、
図1乃至3で示されるように、略直方体状の筺体2を備えている。そしてこの筺体2には、燃焼装置3、送風機4、制御装置5、室温検出用サーミスタ6等が内蔵されている。
【0029】
筺体2は、
図1,2で示されるように、前面側に筺体側排気口10が設けられており(
図1参照)、背面側に筺体側吸気口11が設けられている(
図2参照)。そしてこれらはいずれも筺体2の内部空間と外部とを連通している。
【0030】
燃焼装置3の内部は
図4の様に二重構造となっており、大きく燃焼部20と空気迂回部21とに分かれている。
そして燃焼装置3の燃焼部20には、
図4で示されるように、バーナ8、点火プラグ11等によって構成される燃焼用機構が内蔵されている。そして、このバーナ8には燃料ガス供給路22及びガスノズル23から燃料ガスを供給可能となっている。
なお燃料ガス供給路22には、電磁弁25が設けられている。
さらに、この燃焼装置3の下端近傍には送風機4が内蔵されている。即ち、燃焼装置3の下部はファンケースを構成するものであり、燃焼装置3はファンケース一体型の燃焼ケースとなっている。
空気迂回部21は、燃焼部20の周囲を取り巻くものであり、主として混合用の空気を流す空気流路として機能する。
【0031】
燃焼装置3の前面下部には、略長方形状のケース側排気口28が設けられている。このケース側排気口28は、燃焼装置3の前面を貫通しており、燃焼装置3の内部と外部とを連通している。なお、このケース側排気口28は、送風機4が内蔵されている部分の前方に形成されており、前記した筺体2の筺体側排気口10と対向する位置にある。
【0032】
送風機4は、所謂DCファンと称される送風機であって、
図3で示されるように、DCファンモータ15と、外形略円柱状の羽根車16とを備えており、DCファンモータ15の回転に応じて羽根車16が回転することで空気を流動させる構造となっている。またDCファンモータ15には回転数を検知する回転数検出手段が設けられている(図示せず)。回転数検出手段には、例えば回転子の位置を検出するホール素子からの信号に基づいてパルス信号を出力するものや、別途エンコーダを設けたものが考えられる。
【0033】
制御装置5(
図3)は、温風暖房装置1を制御するマイコン(図示せず)を備えた制御基板を有しており、温風暖房装置1の各部の動作を制御可能となっている。
具体的には、制御装置5は、温風暖房装置1の各種温度センサ(サーミスタ)からの信号を取得可能であり、バーナ8の炎の有無や火炎の温度、バーナ8の燃焼量、筺体2の内部の温度、温風暖房装置1が設置されている部屋の室温等を取得可能となっている。そして、取得した情報に基づいた温風暖房装置1の各部の制御が可能となっている。
また制御装置5は、バーナ8と、バーナ8に燃料ガスを供給するガス供給路22に設けられた電磁弁25や比例弁等の各種制御弁(図示せず)と、点火プラグ11とに接続されている。そのことにより、バーナ8に対して燃焼開始動作、燃焼完全停止動作、安全動作、燃焼量を増減させる動作等を行うことができる。
さらに、制御装置5は図示しない記憶手段(メモリー)を有し、後記するフィードバック定数を記憶している。
【0034】
本実施形態の温風暖房装置1は、載置された室内温度を昇温、維持する暖房運転状態を行う。即ち、バーナ8で燃料ガスを燃焼し、発生した燃焼ガスと空気とを撹拌して生成される温風を送風機4によって吹き出す運転(以下燃焼運転と称す)を実施することによって、室内を設定された温度まで昇温させることができる。
即ち筺体2に配された操作パネルやリモコン等に設けられた運転スイッチ(図示せず)がオンにされ、温風暖房装置1の暖房運転が開始されると、制御装置5の信号によって送風機4が起動される。そして電磁弁25を開いてバーナ8にガスを供給し、点火プラグ11を動作させ、バーナ8に炎を形成する。
そしてバーナ8で加熱された空気がケース側排気口28から燃焼装置3の外部へ吹き出され、筺体側排気口10から筺体2の外部へ吹き出される。
【0035】
また室温検出用サーミスタ6によって温風暖房装置1が設置された室内の温度が検知され、当該室温と設定温度との差に応じて図示しない比例弁の開度が調整され、燃焼量が増減される。さらに室温が設定温度に至り、一定の条件を満足すると電磁弁25が閉じられ、燃焼が一時的に停止する。また室温が低下してくると、電磁弁25が開き、バーナ8に自動点火される。即ち本実施形態の温風暖房装置1は、燃焼装置3をオンオフして室温を調整する機能も持っている。
【0036】
次に本発明の特徴たる送風機の制御について説明する。
本実施形態の温風暖房装置1は、燃焼装置3の燃焼量がPID制御されており、前記した様に設定温度と現在の室温が一致する様に燃焼量が変化する。また送風機4は、燃焼装置3の燃焼量に応じて回転数が変化する。
即ち本実施形態では、送風機4の目標回転数を8段階に変化させることができ、燃焼装置3の燃焼量が多い場合には、これに応じて回転数が上昇し、燃焼量が少ない場合には、回転数が降下する。ただし、送風機4の最も低い目標回転数は、他の回転数に比べて著しく低い。従って本実施形態では、8段階の目標回転数の内、上から7段階が高回転領域であり、最も下が低回転領域である。低回転領域は、毎分200回転未満であり、より詳細には150回転未満である。
本実施形態の温風暖房装置1は、7段階の回転数が高回転領域に属し、高回転領域に一定の幅がある。
【0037】
送風機4の回転数は、フィードバック制御される。より具体的には、比例制御と、微分制御を含むPD制御によってフィードバック制御される。
次式は、本実施形態で採用するフィードバック制御を表す式であり、操作量Mが送風機4のDCモータ15に入力される。
【0039】
さらに本実施形態の燃焼装置3は、前記した様に燃焼自体をオンオフさせることができる。また燃焼自体が停止する場合にはポストパージ動作が実行され、燃焼が開始される場合にはプリパージ動作が実行される。ポストパージ動作は、原則として時間を限定して行われるが、掃気が十分でない場合や、燃焼装置3の温度が高い場合には、実質的にポストパージ動作が継続される。
【0040】
即ち温風暖房装置1の燃焼装置3が燃焼をしている間、上記した式に基づいて送風機4の回転数が、高回転領域に制御される。
ここで燃焼装置が燃焼をしている間におけるフィードバック定数の内、比例制御の定数は、Kp(H)である。より詳細には、燃焼装置が燃焼をしている間における比例ゲインは、Kp(H)である。またフィードバック定数の内、微分制御の定数は、Kd(L)である。より詳細には、燃焼装置が燃焼をしている間における微分ゲインは、Kd(L)である。
【0041】
燃焼装置3が燃焼を開始すると、室内の気温が上昇し、室温と目標温度との偏差が減少してゆく。これに伴って、燃焼装置3の燃焼量が減少し、送風機4の目標回転数が下方に修正される。
しかしながら、燃焼装置3が燃焼をしている間は、フィードバック定数は一定であり、比例制御の定数は、Kp(H)である。またフィードバック定数の内、微分制御の定数は、Kd(L)である。
【0042】
即ち燃焼装置が燃焼をしている間、送風機4は、次式に基づいてフィードバック制御が行われ、操作量Mが送風機4のDCモータ15に入力される。
【0044】
そしてこの状態で燃焼装置3が運転を続け、室内温度が設定温度に達し、かつ燃焼量が絞られた状態に至ると、燃焼装置3は燃焼を自動的に停止する。そして燃焼が停止してから、一定時間は、ポストパージ動作が実行され、送風機4の回転が高回転領域に維持される。
ポストパージ動作が実行されている間についても、フィードバック定数は一定であり、比例制御の定数は、Kp(H)である。またフィードバック定数の内、微分制御の定数は、Kd(L)である。
即ち送風機4は、前記した式2に基づいてフィードバック制御が行われる。
【0045】
そして一定時間が経過する等の「一定条件」を満足し、ポストパージ動作が終了すると、燃焼装置3は燃焼完全停止状態となる。そして本実施形態では、燃焼完全停止状態の際に、送風機4が微風運転される。即ち送風機4の目標回転数が最も下の8段階目に変更される。
これに応じて、フィードバック定数が変更される。即ち比例制御の定数が、Kp(L)に変更される。
ここで変更後の比例制御の定数たるKp(L)は、変更前の定数たるKp(H)よりも小さい。
より具体的には、Kp(L)は、Kp(H)の80パーセントから10パーセント程度であり、望ましくは60パーセントから40パーセントである。
【0046】
また微分制御の定数は、Kd(L)からKd(H)に変更される。
ここで変更後の微分制御の定数たるKd(H)は、変更前の定数たるKd(L)よりも大きい。
燃焼装置3の燃焼が停止して一定時間が経過すると、前記した様に比例制御の定数が下方に変更され、微分制御の定数が上方に変更された状態で、フィードバック制御が行われる。
即ち燃焼装置3が燃焼を停止して一定時間が経過すると、送風機4は、次式に基づいてフィードバック制御が行われる。
即ち燃焼装置が燃焼を停止して一定時間が経過すると、送風機4は次式に基づいてフィードバック制御が行われ、操作量Mが送風機4のDCモータ15に入力される。
【0048】
燃焼が完全停止することによって室温が低下すると、燃焼装置3が自動的に燃焼を開始する。即ちプリパージ動作が開始される。より具体的には送風機4の目標回転数が上方に修正される。これに応じて、フィードバック定数が元に戻る。即ち比例制御の定数Kpが、上方に修正される。即ち比例制御の定数Kpが、Kp(L)からKp(H)に修正される。また微分制御の定数Kdが下方に修正される。即ち微分制御の定数KdがKd(H)からKd(L)に修正される。
そして送風機4は、前記した式2に基づいてフィードバック制御される。
【0049】
またプリパージ動作が開始されると、電磁弁25が開かれて燃料ガスが供給され、点火プラグ11で点火されて燃焼が開始される。
燃焼装置3が燃焼をしている間、送風機4は、前記した式2に基づいてフィードバック制御が行われる。
【0050】
図5のグラフは、本実施形態と比較例とを示したものである。
図5のグラフは、温風暖房装置1の燃焼装置3を時刻T1まで燃焼させ、時刻T2で燃焼を停止してポストパージ運転を開始し、時刻T3でポストパージ運転を終了して微風運転を開始した場合における時間と、送風機4の実回転数との関係を示している。
比較例は、フィードバック定数が一定であり、常に式2に基づいて送風機4が制御されている。
これに対して実施形態は、目標回転数が高回転領域である場合には式2に基づいてフィードバック制御が行われ、微風運転の際には、式3の様にフィードバック定数が変更される。
【0051】
図5のグラフは、時刻T1まで燃焼が行われているので、送風機3の目標回転数は毎分700回転に設定されている。また時刻T2で燃焼を停止してポストパージ運転が開始しされ、目標回転数が620回転に変更されている。さらに時刻T3を境に目標回転数が130回転に変更されている。
即ち時刻T3に至るまでの間は、目標回転数が高回転領域であり、時刻T3以降は、目標回転数が低回転領域である。
実施形態では、目標回転数が130回転に変更され時点でフィードバック定数が変更される。
図5のグラフから明らかな様に、本実施形態によると、送風機4を極低回転数で回転させても回転数は安定している。これに対して、フィードバック定数を変更せずに制御した場合は、送風機4を極低回転数で回転させたときに回転数がふらつく。
【0052】
以上説明した実施形態では、フィードバック定数の内、比例制御の定数と微分制御の定数を目標回転数に応じて変更したが、いずれか一方だけを変更してもよい。即ち比例制御の定数だけを変更してもよく、微分制御の定数だけを変更してもよい。
【0053】
以上説明した実施形態では、目標回転数に合わせてフィードバック定数を変更したが、単に、燃焼が完全停止していることを契機としてフィードバック定数を変更してもよい。例えば、ポストパージが終わると直ちに目標回転数を下方に修正し、一定時間が経過して実回転数が目標回転数に一致した後にフィードバック定数を変更してもよい。
また実回転数に応じてフィードバック定数を変更してもよい。例えば、ポストパージが終わると直ちに目標回転数を下方に修正し、実回転数がこれに追従して低下傾向にある場合であって、実回転数が一定の回転数に至ったことを契機としてフィードバック定数を変更してもよい。
【0054】
またフィードバック定数を基に戻すタイミングは、上記した実施形態の様に目標回転数の変更を契機としてもよく、燃焼が安定した後にフィードバック定数を基に戻してもよい。また実回転数が一定の回転数となったことを条件としてフィードバック定数を基に戻してもよい。
またフィードバック定数を変更する契機と、フィードバック定数を元に戻す契機が異なるものであってもよい。
例えば実回転数が、一定の回転数Naに低下したことを条件としてフィードバック定数を下方に変更し、実回転数が、他の一定の回転数Nbに上昇したことを条件としてフィードバック定数を元に戻してもよい。
【0055】
また上記した実施形態では、フィードバック定数は、2組の比例定数と微分定数である。即ち上記した実施形態では図示しない記憶装置に、2組のフィードバック定数〔Kp(H),Kd(L)〕及び〔Kp(L),Kd(H)〕が記憶されており、随時置き換えられるが、より多くの組み合わせを記憶し、必要に応じて変更してもよい。
【0056】
例えば低回転領域において複数段に回転数を変更できる構成とし、各段階ごとにフィードバック定数を変更してもよい。
またフィードバック定数を実質的に不連続に変更してもよい。
例えば高回転領域と低回転領域で補正係数を定め、補正係数を元に比例配分した係数を基本となる比例定数または微分定数に乗ずることによって実際に使用するフィードバック定数を定めてもよい。例えば次式によってフィードバック定数を定めることができる。
【0058】
また式4においてAFの演算値の絶対値が1を越える場合は、1としてもよい。
【0059】
いずれにしても、燃焼時におけるフィードバック定数と、燃焼完全停止から一定時間が経過した後におけるフィードバック定数は異なるものとなる。
【0060】
本実施形態の温風暖房装置1は、燃焼が継続中のフィードバック定数と、燃焼が停止していて微風運転を行う際におけるフィードバック定数とを異なるものとすることにより、燃焼中の送風機4の目標回転数に対する追従性と、微風運転中の安定性とを両立させることができる。
またフィードバック定数の切替えを目標回転数の変更に応じて行うことにより、風等の外乱を受けて送風機4の回転数がふらついた場合にもフィードバック定数が不用意に変わってしまうことがない。特に、送風機4の回転数が変更される過渡期にフィードバック定数が不用意に変わってしまうことがなく、実回転数のハンチングを抑制する効果があるので推奨される。
【0061】
また目標回転数や実回転数が、高回転領域における最低回転数と、微風運転における回転数との間の一定回転数となったときにフィードバック定数の切替えを行ってもよい。
【0062】
本実施形態の温風暖房装置1は、送風機4を高回転数で運転する場合と、低回転数で運転する場合とでフィードバック定数が変わるので、燃焼時等の大風量を要する場合に回転数の追従性を維持することができると共に、微風運転時における安定性を確保することができる。