(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調査原版用感光材料を露光する際における前記調査原版用感光材料への前記物体光の入射角度の値は、前記調査用感光材料を露光する際における前記物体光の入射角度の値と180°異なっている、請求項3または4に記載のホログラムの製造方法。
前記第1調査用ホログラムを作製する工程における前記第1調査用感光材料への前記参照光の入射角度の値と、前記第2調査用ホログラムを作製する工程における前記第2調査用感光材料への前記参照光の入射角度の値と、前記第3調査用ホログラムを作製する工程における前記第3調査用感光材料への前記参照光の入射角度の値と、前記カラー用感光材料を露光する工程における前記カラー用感光材料への前記第1〜第3波長の光を含む前記参照光の入射角度の値とが、互いに同一である、請求項6に記載のカラーホログラムの製造方法。
前記第1調査用ホログラムを作製する工程における前記第1調査用感光材料への前記物体光の入射角度の値と、前記第2調査用ホログラムを作製する工程における前記第2調査用感光材料への前記物体光の入射角度の値と、前記第3調査用ホログラムを作製する工程における前記第3調査用感光材料への前記物体光の入射角度の値と、が互いに同一である、請求項6又は7に記載のカラーホログラムの製造方法。
前記第1中間ホログラムを作製する工程における前記第1中間感光材料への前記物体光の入射角度の値と、前記第2中間ホログラムを作製する工程における前記第2中間感光材料への前記物体光の入射角度の値と、前記第3中間ホログラムを作製する工程における前記第3中間感光材料への前記物体光の入射角度の値と、が互いに同一である、請求項6〜8のいずれか一項に記載のカラーホログラムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1〜
図19においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0020】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する用語、例えば、「平行」、「対称」等の用語や角度の値等については、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差範囲を含めて解釈することとする。
【0021】
以下に説明する製造方法は、反射型の体積ホログラムであるホログラム30を製造する方法、並びに、互いに異なる波長域の光を回折することを意図された複数のホログラム30を用いて反射体積型のカラーホログラム40を製造する方法である。反射型の体積ホログラムは、縞状パターンを形成されており、この縞状パターンの間隔、入射光の波長および入射角度に関するブラッグの反射条件が満たされた場合、当該入射光を高い回折効率で回折するようになる。反射型体積ホログラムは、このような入射光に対する波長選択性および角度選択性によって、反射型体積ホログラム自体または反射型体積ホログラムが貼付された物品の意匠性を向上させることや、物品の真正性を標示することが可能であり、物品、とりわけ、包装材料、カード、証明書、有価証券、商品券等に貼付されて使用され得る。
【0022】
以下に説明する製造方法では、特定波長域の参照光L
irおよび物体光L
ioによって中間感光材料22を互いに異なる側から露光し、中間ホログラム20を作製する工程と、次に、中間ホログラム20と積層された感光材料32に入射する特定波長域の参照光L
rと、感光材料32を透過した後に中間ホログラム20において回折される特定波長域の参照光L
rからなる物体光Loと、によって感光材料32を露光する工程と、を経て、ホログラム30を作製する。したがって、ホログラム30を作製するための感光材料32の露光に用いられる物体光L
oは、中間ホログラム20からの再生光を用いている。中間ホログラム20を用いて感光材料32を露光するので、容易かつ高い自由度でホログラム30を量産することができる。とりわけ以下で説明する製造方法では、所望の回折特性をホログラム30に付与し得るよう、後述する方法によって、ホログラム30を作製するための感光材料32の変形等を考慮した上で、中間感光材料22への参照光L
irの入射角度の値θ
ir、中間感光材料22への物体光L
ioの入射角度の値θ
io、及び、感光材料32への参照光L
rの入射角度の値θ
rが決定され、また、感光材料32への参照光L
rの入射角度の値θ
rにともなって感光材料への物体光L
oの入射角度の値θ
oが決定される。
【0023】
さらにここで例示する製造方法では、前記特定波長の参照光L
mrおよび被写体6からの物体光L
moによって原版用感光材料12を同一の側から露光してホログラム原版10を作製する工程が実施される。そして、中間ホログラム20を作製するための中間感光材料22の露光に用いられる物体光L
ioは、ホログラム原版12からの再生光を用いている。ホログラム原版10を用いて中間感光材料22を露光するので、容易かつ高い自由度で中間ホログラム20を作製することができる。
【0024】
また、以下に説明する製造方法では、第1波長域の参照光および物体光を用いて作製された第1ホログラム30R、第1波長域とは異なる第2波長域の参照光および物体光を用いて作製された第2ホログラム30G並びに第1波長域および第2波長域の両方と異なる第3波長域の参照光および物体光を用いて作製された第3ホログラム30Bを含む積層原版としての積層体38を用いて、デニシューク法とも呼ばれる一光束露光によってカラー用感光材料42を露光することにより、カラーホログラム40を作製している。
【0025】
以下、まず、ホログラム30の製造方法について説明し、次に、ホログラム30を利用したカラーホログラム40の製造方法について説明する。なお、ホログラム30の製造方法については、第1波長域の光を回折すること意図されたホログラム30を第1波長域の光を用いて作製する例について説明する。
【0026】
上述したように、ホログラム30の製造方法は、ホログラム原版10を作製する工程と、ホログラム原版10からの再生光を利用して中間ホログラム20を作製する工程と、中間ホログラム20からの再生光を利用してホログラム30を作製する工程と、を含んでいる。また、中間ホログラム20を作製する工程における中間感光材料22への参照光L
irの入射角度θ
ir及び中間感光材料22への物体光L
ioの入射角度θ
io、並びに、ホログラム30を作製する工程における感光材料32への参照光L
rの入射角度θ
r及び感光材料32への物体光L
oの入射角度θ
oを決定する工程が、少なくとも中間ホログラム20を作製する工程の前に実施される。以下、各工程について順に説明する。
【0027】
まず、ホログラム原版10を作製する工程について
図1を参照して説明する。ホログラム原版10は、原版用感光材料12を露光し、次に、露光された原版用感光材料12に対して後処理を施すことによって、作製される。原版用感光材料12は、例えば、フォトポリマー、銀塩乳剤、重クロム酸ゼラチン、フォトレジスト等の感光性を有した材料により形成される。感光性を有した原版用感光材料12を、干渉性を有する関係にある参照光L
mr及び物体光L
moによって露光することにより、原版用感光材料12に縞状パターン15が形成される。
【0028】
図1には、原版用感光材料12の露光方法の一例が示されている。
図1に示された例において、ホログラム原版10は、透過型のホログラムとして、被写体6を記録する。具体的には、ホログラム原版10をなすようになる原版用感光材料12と被写体6とが、間隔を空けて対向するように配置され、原版用感光材料12の第1面12aに対向する第2面12bが、被写体6の側を向いている。この状態で、第1波長域の波長を有するコヒーレントな光、典型的にはレーザ光源から発振されたレーザ光を分割して、参照光L
mr及び物体光L
moとして、原版用感光材料12に入射させる。このうち参照光L
mrは、平行光束として、原版用感光材料12に対して入射角度θ
mrをなす方向から、原版用感光材料12の第2面12b側に入射する。一方、物体光L
moは、被写体6からの反射光として、原版用感光材料12に第2面12bの側から入射する。この際、物体光L
moは、原版用感光材料12に対して入射角度θ
moをなす方向を包含する角度域に広がる発散光として、原版用感光材料12に入射する。
【0029】
なお、本明細書において、シート状、フィルム状、板状またはパネル状の対象物への光、例えば参照光、物体光、再生照明光の入射角度とは、最高強度を示す入射光の対象物へ接近する向きが、当該対象物への法線方向に対してなす角度のことを指す。また、後述するシート状物、フィルム状物、板状物またはパネル状の対象物で回折された光の回折角度とは、最高強度を示すようになる回折光の進行方向に沿って対象物へ接近する向きが、当該対象物への法線方向に対してなす角度のことを指す。そして、これらの入射角度および回折角度の値は、対象物への法線方向ndに沿って参照光または再生照明光と同一の面の側から当該対象物へ接近する向きを基準方向として、この基準方向sdに対して参照光または再生照明光が対象物へ接近する向きがなす角度が0°以上90°以下となる回転方向になす角度の値とする。また、対象物への法線方向とは、シート状、フィルム状、板状またはパネル状の対象物を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状物、フィルム状物、板状物またはパネル状物によって画成される平面に対して直交する方向とする。
【0030】
以上のようにして、参照光L
mr及び物体光L
moが原版用感光材料12に入射する。参照光L
mr及び物体光L
moは同一のレーザ光源から発振されたレーザ光であることから、互いにコヒーレントな関係にある。この結果、原版用感光材料12が参照光L
mr及び物体光L
moによって露光されると、参照光L
mr及び物体光L
moが干渉してなる干渉縞14が原版用感光材料12上に生成される。そして、この光の干渉縞14が、何らかのパターン、一例として屈折率変調パターンや凹凸パターンとして、原版用感光材料12に記録される。その後、原版用感光材料12をなす材料の種類に対応した適切な後処理が施される。以上の手順により、原版用感光材料12からホログラム原版10が得られる。
【0031】
次に、中間ホログラム20を作製する工程について
図2を参照して説明する。中間ホログラム20は、中間感光材料22を露光し、次に、露光された中間感光材料22に対して後処理を施すことによって、作製される。中間感光材料22の材料は、上述した原版用感光材料12と同様に選択され得る。感光性を有した中間感光材料22を、干渉性を有する関係にある参照光L
ir及び物体光L
ioによって露光することにより、中間感光材料22に縞状パターン25が形成される。
【0032】
図2には、中間感光材料22の露光方法の一例が示されている。
図2に示された例において、中間ホログラム20は、反射型のホログラムとして、ホログラム原版10からの再生像16を記録する。具体的には、中間ホログラム20をなすようになる中間感光材料22とホログラム原版10とが、間隔を空けて対向するように配置され、ホログラム原版10の第2面10bと中間感光材料22の第1面22aとが向かい合っている。この状態で、第1波長域の参照光L
irが、平行光束として、中間感光材料22に対して入射角度θ
irをなす方向から、中間感光材料22の第2面22b側に入射する。同時に、第1波長域の再生照明光L
maが、平行光束として、ホログラム原版10に対して入射角度θ
maをなす方向から、ホログラム原版10の第1面10aの側に入射する。再生照明光L
maの進行方向は、原版用感光材料12の露光時における参照光L
mrの進行方向と共役な方向となっている。したがって、再生照明光L
maは、ホログラム原版10の縞状パターン15で回折され、再生像16を再生する再生光をなす。この再生光が、物体光L
ioとして、中間感光材料22に対して入射角度θ
ioをなす方向を包含する集束光のプロファイルを呈しながら、中間感光材料22の第1面22aへ入射する。
【0033】
なお、ホログラム原版10に形成された縞状パターン15は、透過型のホログラムを構成する。透過型のホログラムを構成する縞状パターン15は、ホログラム原版10の面方向に沿って配列されたパターンをなしている。このような縞状パターン15は、原版用感光材料12が仮に収縮したとしても、そのピッチや向きは変形し難い。したがって、原版用感光材料12の露光時における参照光L
mrと共役な方向に進み且つこの参照光L
mrと同一波長域の再生照明光L
maは、ホログラム原版10の縞状パターン15で回折されると、原版用感光材料12の露光時における物体光L
moと同一経路を逆向きに進行する。
【0034】
以上のようにして、参照光L
ir及び物体光L
ioが中間感光材料22に入射する。参照光L
irは、ホログラム原版10へ照射される再生照明光L
maと同一のレーザ光源で発振されたレーザ光とすることができ、この場合、中間感光材料22に入射する参照光L
ir及び物体光L
ioは互いに干渉性を有する。この結果、中間感光材料22が参照光L
ir及び物体光L
ioによって露光されると、参照光L
ir及び物体光L
ioが干渉してなる干渉縞24が中間感光材料22上に生成される。そして、この光の干渉縞24が、縞状パターン25として、中間感光材料22に記録される。その後、適切な後処理が施され、中間感光材料22から中間ホログラム20が得られる。
【0035】
図3には、
図2の露光工程を経て得られた中間ホログラム20の回折作用、言い換えると像26の再生作用が示されている。
図3に示されているように、第1波長域の再生照明光L
iaは、入射角度の値がθ
iaとなる方向から中間ホログラム20に入射する。当該再生照明光L
iaを中間ホログラム20で回折してなる再生光L
ibは、中間ホログラム20の法線方向ndに対して角度θ
ibをなす方向に、回折される。すなわち、再生照明光L
iaは、回折角度の値がθ
ibとなるように回折される。なお、再生照明光L
iaの入射方向および再生光L
ibの回折方向、すなわち再生方向は、次のようにして特定する。まず、対象となる波長域を含む広帯域の試験光、ここでは第1波長域を含む広帯域の試験光を種々の方向から中間ホログラム20に照射し、分光光度計、例えば島津製作所製の「UV-2450」を用いて分光透過率を調査する。そして、特定波長域、例えば第1波長域の光がピーク強度となっている分光透過率が測定された条件における試験光の入射方向を、再生照明光L
iaの入射方向として特定し、これにより、再生照明光L
iaの入射角度の値θ
iaが定まる。次に、特定波長域、例えば第1波長域の再生照明光L
iaで中間ホログラム30を照明した際に、最も強度が高くなる方向を、再生照明光L
iaの回折方向、言い換えると、再生光L
ibの出射方向として特定する。再生光L
ibの出射方向が定まることにより、回折角度の値θ
ibを特定することができる。
【0036】
次に、ホログラム30を作製する工程について
図4を参照して説明する。ホログラム30は、感光材料32を露光し、次に、露光された感光材料32に対して後処理を施すことによって、作製される。感光材料32の材料は、上述した原版用感光材料12及び中間感光材料22と同様に選択され得る。感光性を有した感光材料32を、干渉性を有する関係にある参照光L
r及び物体光L
oによって露光することにより、感光材料32に縞状パターン35が形成される。
【0037】
図4には、感光材料32の露光方法の一例が示されている。
図4に示された例において、ホログラム30は、反射型のホログラムとして、中間ホログラム20からの再生像26を記録する。具体的には、まず、中間ホログラム20の第1面20aと感光材料32の第2面32bが対面するようにして、中間ホログラム20と感光材料32とが積層される。また、中間ホログラム20の第2面20b上に遮光層29が積層される。遮光層29の積層により、迷光の発生を防止することが図られている。この状態で、特定波長域、ここでは、第1波長域のコヒーレント光からなる参照光L
rが、感光材料32の第1面20a側から照射される。参照光L
rは、感光材料32を透過して中間ホログラム20に入射し、中間ホログラム20の縞状パターン25によって所定の方向に回折される。この結果、参照光L
rを構成する光が、中間ホログラム20の縞状パターン25で回折されて再生像26を再生する。再生像26をなす光は、物体光L
oとして、感光材料32の第2面32bへ入射する。
【0038】
以上のようにして、参照光L
r及び物体光L
oが感光材料32に入射する。参照光L
r及び物体光L
oは、同一のレーザ光源で発振されたレーザ光とすることができ、この場合、感光材料32に入射する参照光L
r及び物体光L
oは互いに干渉性を有する。この結果、感光材料32が参照光L
r及び物体光L
oによって露光されると、参照光L
r及び物体光L
oが干渉してなる干渉縞34が感光材料32上に生成される。そして、この光の干渉縞34が、縞状パターン35として、感光材料32に記録される。その後、適切な後処理が施され、感光材料32からホログラム30が得られる。
【0039】
図5には、
図4の露光工程を経て得られたホログラム30の回折作用、言い換えると像36の再生作用が示されている。
図5に示されているように、第1波長域の再生照明光L
aは、入射角度の値がθ
aとなる方向からホログラム30に入射する。当該再生照明光L
aをホログラム30で回折してなる再生光L
bは、ホログラム30の法線方向ndに対して角度θ
bをなす方向に、回折される。すなわち、再生照明光L
aは、回折角度の値がθ
bとなるように回折される。なお、再生照明光L
aの入射方向および再生光L
bの回折方向、すなわち再生方向は、上述した中間ホログラム20についての再生照明光L
iaの入射方向および再生光L
ibの回折方向と同様にして特定する。
【0040】
ところで、
図2及び
図3、並びに、
図4及び
図5から理解され得るように、反射型体積ホログラムとして感光材料22,32から作製されたホログラム20,30では、通常、再生照明光L
ia,L
aの入射角度の値θ
ia,θ
aは、感光材料22,32への参照光L
ir,L
rの入射角度の値θ
ir,θ
rと異なり、再生光L
ib,L
bの回折角度の値θ
ib,θ
bは、感光材料22,32への物体光L
io,L
oの入射角度の値θ
io,θ
oと異なる。このような相違が生じることから、ここで説明する製造方法では、ホログラム30に対して所望の回折特性を付与し得るよう、言い換えると、製造されたホログラム30への再生照明光L
aの入射角度が所望の値θ
aとなり且つ製造されたホログラム30での再生光L
bの回折角度が所望の値θ
bとなるよう、次のようにして、中間感光材料22への参照光L
ir及び物体光L
ioの入射角度の値θ
ir,θ
io、並びに、感光材料32への参照光L
r及び物体光L
oの入射角度の値θ
r,θ
oを設定している。
【0041】
以下の方法では、中間ホログラム20並びにホログラム30の製造に先立ち、調査用感光材料62を露光して調査用ホログラム60を作製する。そして、調査用感光材料62の露光条件および得られた調査用ホログラム60の回折特性を考慮して、さらに具体的には、調査用感光材料62への参照光L
sr及び物体光L
soの入射角度の値θ
sr,θ
soと、調査用ホログラム60への再生照明光L
saの入射角度の値θ
saと、調査用ホログラム60での再生光L
sbの回折角度の値θ
sbと、を考慮して、中間感光材料22及び感光材料32の露光条件が決定される。以下、
図11〜
図13を主に参照して調査用ホログラム60の製造方法を説明し、その後、所望の回折特性をホログラム30に付与するための中間感光材料22及び感光材料32の露光条件の決定方法について順に説明する。
【0042】
ここで説明する例では、中間ホログラム20の製造と同様に、調査用ホログラム60の作製前に調査用ホログラム原版50が作製され、調査用感光材料62の露光に用いられる物体光L
soは、調査原版用感光材料52からの再生光を利用している。このような方法によれば、調査用ホログラム原版50を用いて調査用感光材料62を露光するので、容易かつ高い自由度で調査用ホログラム60を作製することができる。
【0043】
調査用ホログラム60の製造方法における調査用ホログラム原版50を作製する工程は、上述したホログラム原版10を作製する工程と、略同様にして実施される。調査用ホログラム原版50は、調査原版用感光材料52を露光し、次に、露光された調査原版用感光材料52に対して後処理を施すことによって、作製される。調査原版用感光材料52は、原版用感光材料12と同一材料または同様の特性を有した材料から形成され、調査原版用感光材料52を、干渉性を有する関係にある参照光L
smr及び物体光L
smoによって露光することにより、調査原版用感光材料52に縞状パターン55が形成される。
【0044】
図11には、調査原版用感光材料52の露光方法の一例が示されている。
図11に示された例において、調査用ホログラム原版50は、透過型のホログラムとして、調査用被写体7を記録する。調査原版用感光材料52と調査用被写体7とが、間隔を空けて対向するように配置され、調査原版用感光材料52の第2面52bが、調査用被写体7の側を向いている。この状態で、ホログラム原版10の製造に用いられた特定波長域、より具体的には第1波長域の波長を有し且つ互いに対して干渉性を有する参照光L
smr及び物体光L
smoが、調査原版用感光材料52に照射される。調査原版用感光材料52が参照光L
smr及び物体光L
smoによって露光されると、参照光L
smr及び物体光L
smoが干渉してなる干渉縞54が調査原版用感光材料52上に生成される。そして、この光の干渉縞54が、縞状パターン55として、調査原版用感光材料52に記録される。その後、調査原版用感光材料52をなす材料の種類に対応した適切な後処理が施される。以上の手順により、調査原版用感光材料52から調査用ホログラム原版50が得られる。
【0045】
なお、調査原版用感光材料52の露光時における物体光L
smoの入射角度の値θ
smoは、ホログラム30に付与したい所望の回折特性に基づいて決定されることが好ましい。具体的には、物体光L
smoの入射角度の値θ
smoは、製造対象となるホログラム30での再生光L
bの回折角度の目標値θ
pbと180°ずれた値、または、その近傍の値となっていること好ましい。この場合、ホログラム30での再生光L
bの回折角度の値θ
bが、感光材料32の露光時における物体光L
oの入射角度の値θ
oからどの程度ずれるのかを、調査用ホログラム60の製造およびその回折特性の評価を通して精度良く推測することができる。すなわち、所望の回折特性をホログラム30に精度良く付与することが可能となる。
【0046】
ここで、本明細書における角度の値は、小数第1位の値を四捨五入することによって整数として取り扱い、同一か否かを判断する。
【0047】
また、調査用ホログラム原版50に記録される調査用被写体7は、被写体6と同一とすることができる。他の例として、
図11〜
図18に示すように、最終的に製造される調査用ホログラム60の回折特性を精度良く評価する観点から、等方拡散能を有した散乱板を調査用被写体7として使用することができる。
【0048】
次に、調査用ホログラム原版50を用いた調査用ホログラム60の作製方法について説明する。調査用ホログラム60を作製する工程は、上述したホログラム原版10を用いて中間ホログラム20を作製する工程と、略同様にして実施される。調査用ホログラム60は、調査用感光材料62を露光し、次に、露光された調査用感光材料62に対して後処理を施すことによって、作製される。調査用感光材料62は、中間感光材料22及び感光材料32と同一材料または同様の特性を有した材料から形成される。干渉性を有する関係にある参照光L
sr及び物体光L
soによって調査用感光材料62を露光することにより、調査用感光材料62に縞状パターン65が形成される。
【0049】
図12には、調査用感光材料62の露光方法の一例が示されている。
図12に示された例において、調査用ホログラム60は、反射型のホログラムとして、調査用ホログラム原版50からの再生像57を記録する。具体的には、調査用ホログラム60をなすようになる調査用感光材料62と調査用ホログラム原版50とが、間隔を空けて対向するように配置され、調査用ホログラム原版50の第2面50bと調査用感光材料62の第1面62aとが向かい合っている。この状態で、ホログラム30の製造に用いられた特定波長域、より具体的には第1波長域の波長を有し且つ互いに対して干渉性を有する参照光L
sr及び再生照明光L
smaが、例えば平行光束として、それぞれ、調査用感光材料62及び調査用ホログラム原版50に照射される。このとき、再生照明光L
smaの進行方向は、調査原版用感光材料52の露光時における参照光L
smrの進行方向と共役な方向となっている。したがって、調査用ホログラム原版50への再生照明光L
smaの入射角度θ
smaは、調査原版用感光材料52へ参照光L
smrの入射角度θ
smrと同一である。このため、再生照明光L
smaは、透過型ホログラムとして作製された調査用ホログラム原版50の縞状パターン55で回折され、再生像57を再生する再生光をなす。
【0050】
以上のようにして、調査用感光材料62が参照光L
sr及び物体光L
soによって露光されると、参照光L
sr及び物体光L
soが干渉してなる干渉縞64が調査用感光材料62上に生成される。そして、この光の干渉縞64が、縞状パターン65として、調査用感光材料62に記録される。その後、調査原版用感光材料52をなす材料の種類に対応した適切な後処理が施される。以上の手順により、調査用感光材料62から調査用ホログラム60が得られる。
【0051】
なお、調査用感光材料62の露光時における物体光L
soの入射角度の値θ
soは、ホログラム30に付与したい所望の回折特性に基づいて決定されることが好ましい。具体的には、物体光L
soの入射角度の値θ
soは、製造されるべきホログラム30での再生光L
bの回折角度の値θ
b、すなわち、目標とする回折角度の値θ
pb、または、その近傍の値となっていること好ましい。この場合、ホログラム60での再生光L
bの回折角度の値θ
bが、感光材料32の露光時における物体光L
oの入射角度の値θ
oからどの程度ずれるのかを、調査用ホログラム60の製造およびその回折特性の評価を通して精度良く推測することができる。すなわち、所望の回折特性をホログラム30に精度良く付与することが可能となる。
【0052】
上述したように、調査原版用感光材料52の露光時における物体光L
smoの入射角度の値θ
smoが、製造されるべきホログラム30での再生光L
bの回折角度の値θ
bすなわち、目標とする回折角度の値θ
pbから180°ずれた値、または、その近傍の値となっている場合には、調査用ホログラム原版50及び調査用感光材料62とを平行に配置することによって、物体光L
soの入射角度の値θ
soは、製造されるべきホログラム30での再生光L
bの回折角度の値θ
b、または、その近傍の値とすることができる。この場合、調査用感光材料62の露光時における調査用ホログラム原版50及び調査用感光材料62の位置決めを容易に行うことができる。この点は、ホログラム原版10及び中間ホログラム20についても当てはまる。
【0053】
同様に、調査用感光材料62の露光時における参照光L
srの入射角度の値θ
srは、ホログラム30に付与したい所望の回折特性に基づいて決定されることが好ましい。具体的には、参照光L
srの入射角度の値θ
srは、製造対象となるホログラム30での再生照明光L
aの入射角度の値θ
aすなわち、目標とする再生照明光L
aの入射角度の値θ
pa、または、その近傍の値となっていること好ましい。この場合にも、ホログラム30への再生照明光L
aの入射角度の値θ
aが、感光材料32の露光時における参照光L
rの入射角度の値θ
rからどの程度ずれるのかを、調査用ホログラム60の製造およびその回折特性の評価を通して精度良く推測することができる。すなわち、所望の回折特性をホログラム30に精度良く付与することが可能となる。
【0054】
次に、以上のようにして作製された反射型体積型の調査用ホログラム60の回折特性を調査する。具体的には、中間ホログラム20及びホログラム30の場合と同様にして、調査用ホログラム60への再生照明光L
aの入射角度の値θ
a及び調査用ホログラム60での再生光L
bの回折角度の値θ
bを調査する。
図13に示されているように、第1波長域の再生照明光L
saは、入射角度の値がθ
saとなる方向から調査用ホログラム60に入射する。当該再生照明光L
saを調査用ホログラム60で回折してなる再生光L
sbは、調査用ホログラム60の法線方向ndに対して角度θ
sbをなす方向に、回折される。すなわち、再生照明光L
saは、回折角度の値θ
sbがとなるように回折される。
【0055】
図12および
図13から理解され得るように、反射型体積ホログラムとして調査用感光材料62から作製された調査用ホログラム60では、通常、再生照明光L
saの入射角度の値θ
saは、調査用感光材料62への参照光L
srの入射角度の値θ
srと異なり、再生光L
sbの回折角度の値θ
sbは、調査用感光材料62への物体光L
soの入射角度の値θ
soと異なっている。このような相違は、感光材料の感光時における変形を主たる原因の一つとしており、反射型体積ホログラムにおける不可避的な問題と考えられている。この感光材料の変形は、干渉縞を記録してなる縞状パターンの向きや配列方向に応じて、変化する。
【0056】
このため、ここで説明する方法では、予め調査用ホログラム60を作製することによって、感光材料への参照光の入射角度と得られたホログラムへの再生照明光の入射角度とのずれ、並びに、感光材料への物体光の入射角度と得られたホログラムでの再生光の回折角度とのずれの傾向を調査する。そして、実際にホログラムを作製する際には、これらのずれを予め見込んで、感光材料32への参照光L
rの入射角度θ
rを、作製対象となるホログラム30への再生照明光L
aの所望の入射角度θ
paからずらしておき、同様に、感光材料32への物体光L
oの入射角度θ
oを、作製対象となるホログラム30での再生光L
bの所望の回折角度θ
pbからずらしておく。また、これを実現するため、中間感光材料22の露光条件を調整して、ホログラム30に適切な回折特性を付与する。
【0057】
具体的には、ホログラム30への再生照明光L
aの入射角度の値をθ
paに設定したい場合には、参照光L
rの感光材料32への入射角度の値θ
rは、調査用感光材料62への参照光L
srの入射角度の値θ
sr及び調査用ホログラム60への再生照明光L
saの入射角度の値θ
saと、式(a)を満たすように決定され得る。
θ
r=θ
pa−(θ
sa−θ
sr) ・・・(a)
この場合、調査用感光材料62への参照光L
srの入射角度の値θ
srと得られた調査用ホログラム原版50への再生照明光L
saの入射角度の値θ
saとのずれ量分だけ、参照光L
rの感光材料32への入射角度の値θ
rを、目標とする入射角度の値θ
paから予めずらしておくことになる。とりわけ上述したように、ホログラム30に所望の回折特性を付与する観点からは、ホログラム30に実際に形成されるべき縞状パターン35と同様の向き及びピッチで調査用ホログラム60へ縞状パターン65を形成しておくことが好ましい。この場合、調査用感光材料62への参照光L
srの入射角度の値θ
srを目標とする入射角度の値θ
paに設定しておくことが好ましく、したがって次の式(ax)が満たされるように、参照光L
rの感光材料32への入射角度の値θ
rを設定することができる。
θ
r=2×θ
sr−θ
sa ・・・(ax)
式(ax)が満たされる場合、作製されたホログラム60において、調査用感光材料62への参照光L
srの入射角度の値θ
srと同一または略同一の入射角度で当該ホログラム30に入射する光が、当該ホログラムにてブラッグ条件を満たし高回折効率で回折されるようになる。
【0058】
同様に、ホログラム30での再生光L
bの回折角度の値をθ
pbに設定したい場合には、物体光L
oの感光材料32への入射角度の値θ
oは、調査用感光材料62への物体光L
soの入射角度の値θ
so及び調査用ホログラム60での再生光L
sbの回折角度の値θ
sbと、式(b)を満たすように決定され得る。
θ
o=θ
pb−(θ
sb−θ
so) ・・・(b)
この場合、調査用感光材料62への物体光L
soの入射角度の値θ
soと得られた調査用ホログラム原版50での再生光L
sbの入射角度の値θ
sbとのずれ量分だけ、物体光L
oの感光材料32への入射角度の値θ
oを、目標とする回折角度の値θ
pbから予めずらしておくことになる。とりわけ上述したように、ホログラム30に所望の回折特性を付与する観点からは、ホログラム30に実際に形成されるべき縞状パターン35と同様の向き及びピッチで調査用ホログラム60へ縞状パターン65を形成しておくことが好ましい。この場合、調査用感光材料62への物体光L
soの入射角度の値θ
soを目標とする回折角度の値θ
pbに設定しておくことが好ましく、したがって次の式(bx)が満たされるように、物体光L
roの感光材料32への入射角度の値θ
oを設定することができる。
θ
o=2×θ
so−θ
sb ・・・(bx)
式(bx)が満たされる場合、作製されたホログラム30のブラッグ条件を満たし高回折効率で回折される特定波長域の再生照明光L
aは、調査用感光材料62への物体光L
soの入射角度の値θ
soと同一または略同一の値となる回折角度で回折されるようになる。
【0059】
以上のようにして、ホログラム30を作製する際における感光材料32の露光条件が決定される。ここで説明するホログラムの製造方法では、中間ホログラム20を原版として用いたデニシューク法ともよばれる一光束露光により、感光材料32を作製する。したがって、上述した式(a)及び(b)を満たす露光、より好ましくは、上述した式(ax)及び(bx)を満たす露光を実現し得る回折特性を中間ホログラム20に付与するよう、中間ホログラム20を作製するための中間感光材料22の露光条件を決定する。
【0060】
まず、中間ホログラム20の製造の安定性や、調査用ホログラム60を用いて調査した露光条件と回折条件とのズレを中間ホログラム20及びホログラム30の製造に効果的に反映する観点からすれば、中間感光材料22への物体光L
ioの入射角度の値θ
ioは、調査用感光材料62への物体光L
soの入射角度の値θ
soと同一であることが好ましく、また、作製対象となるホログラム30についての目標となる回折角度の値θ
pbと同一であることも好ましい。すなわち、次の式(c)が満たされることが好ましい。
θ
io=θ
so ・・・(c)
【0061】
一方、理想的には、中間ホログラム20への再生照明光L
iaの入射角度の値θ
iaが、感光材料32を露光する際における感光材料32への参照光L
rの入射角度の値θ
rと一致し、中間ホログラム20での再生光L
ibの回折角度の値θ
ibが、感光材料32を露光する際における感光材料32への物体光L
oの入射角度の値θ
oと一致していることが好ましい。しかしながら、上記(c)が満たされる場合、この理想的な条件を実現することができないこともあり、上記(c)を無視したとしても、調査用ホログラム60の作製を通した調査だけではこの理想的な条件を実現し得ないこともある。そこで少なくとも、作製された中間ホログラム20の縞状パターン25の向きにより、上述した感光材料32の露光条件が実現され得るよう、次の式(d)が満たされるよう、中間ホログラム20の回折特性を設定する。式(d)が満たされる場合、中間ホログラム20を調査原版用感光材料52に平行に積層してデニシューク法により当該調査原版用感光材料52を露光した際に、上述した式(a)及び(b)の両方が、より好ましくは式(ax)及び(bx)の両方が同時に満たされるようになる。
(θ
ia+θ
ib)/2=(θ
r+θ
o)/2 ・・・(d)
【0062】
そして、ホログラム30と同様に、反射型体積ホログラムである中間ホログラム20の製造においても、参照光L
irの入射角度θ
irと再生照明光L
iaの入射角度θ
iaとの間にずれが生じ、物体光L
ioの入射角度θ
ioと再生光L
ibの入射角度θ
ibとの間にずれが生じる。そして、このずれは、調査用ホログラム60の作製を通した調査結果から、次の式(e)及び(f)で表されることが見込まれる。
θ
ia=θ
ir+(θ
sa−θ
sr) ・・・(e)
θ
ib=θ
io+(θ
sb−θ
so) ・・・(f)
【0063】
以上の式(c)〜(f)を考慮して、ホログラム30への再生照明光L
aの入射角度の値をθ
paに設定したい場合、
感光材料32への参照光L
rの入射角度の値θ
rおよび感光材料32への物体光L
oの入射角度の値θ
oが、上述した式(a)及び(b)を満たすように決定されるとともに、中間感光材料22への参照光L
irの入射角度の値θ
irおよび中間感光材料22への物体光L
ioの入射角度の値θ
ioが、次の式(g)及び(h)を満たすように決定される。
θ
ir=θ
pa−2×(θ
sa−θ
sr)−2×(θ
sb−θ
so)
・・・(g)
θ
io=θ
so=θ
pb ・・・(h)
また、ホログラム30に所望の回折特性を付与する観点からは、ホログラム30に実際に形成されるべき縞状パターン35と同様の向き及びピッチで調査用ホログラム60へ縞状パターン65を形成しておくことが好ましい。この場合、調査用感光材料62への参照光L
srの入射角度の値θ
srを目標とする再生照明光の入射角度の値θ
paに設定し、且つ、調査用感光材料62への物体光L
soの入射角度の値θ
soを目標とする回折角度の値θ
pbに設定しておくことが好ましい。この観点からは、式(g)に代えて次の式(gx)が満たされることがより好ましい。
θ
ir=3×θ
sr+2×θ
so−2×θ
sa−2×θ
sb ・・・(gx)
【0064】
以上のようにして決定された露光条件にて中間ホログラム20を作製した場合、得られた中間ホログラム20の回折特性として、再生照明光L
iaの入射角度θ
iaおよび再生光L
ibの回折角度θ
ibは次のようになる(式(i)及び(j))。
θ
ia=θ
pa−(θ
sa−θ
sr)−2×(θ
sb−θ
so) ・・・(i)
θ
ib=θ
pb+(θ
sb−θ
so) ・・・(j)
そして、得られた中間ホログラム20は原版として感光材料32に積層された状態で、上述した式(a)及び(b)、或いは、式(ax)及び(bx)で表された露光条件を満足するようになる。
【0065】
次に、以上のようにして作製されたホログラム30を用いて、カラーホログラムを作製する方法について説明する。
【0066】
まず、以上に説明した反射型体積ホログラムの製造方法にしたがって、第1原色成分である第1波長域のコヒーレント光を用いて、第1波長域の光を回折することを意図された第1ホログラム30Rを製造する。次に、反射型体積ホログラムの製造に用いるコヒーレント光を、第2原色成分である第2波長域のコヒーレント光に変更して、第2波長域の光を回折することを意図された第2ホログラム30Gを同様の製造方法で製造する。さらに、反射型体積ホログラムの製造に用いるコヒーレント光を、第3原色成分である第3波長域のコヒーレント光に変更して、第3波長域の光を回折することを意図された第3ホログラム30Bを同様の製造方法で製造作製する。この際、第1〜第3のホログラム30R,30G,30Bの回折特性が、同一となるようにする。すなわち、ホログラムへ再生照明光の入射角度の目標値θ
pa及びホログラムでの再生光の回折角度の目標値θ
pbを、それぞれ、第1〜第3のホログラムで互いに同一に設定し、上述した条件を満たすようにして、第1〜第3のホログラム30R,30G,30Bを作製する。
【0067】
次に、第1〜第3のホログラム30R,30G,30Bをホログラム原版として用いて、カラーホログラム40を作製する。第1〜第3のホログラム30R,30G,30Bは、互いに異なる第1〜第3波長域の光を同一の回折特性にて回折する。したがって、第1〜第3のホログラム30R,30G,30Bを積層して積層原版としての積層体38を作製し、この積層体38に第1〜第3波長域の合成光を一方向から照射することにより、積層体38において第1〜第3波長域の再生光を互いに同一の方向へ回折して、カラーホログラム40を作製するためのカラー用感光材料42を露光することができる。カラー用感光材料42は、第1〜第3波長域の光のすべてに対して感光性を有する単層として形成してもよいし、第1〜第3波長域の光のいずれか一以上に対して感光性を有する層を複数積層して形成してもよい。カラー用感光材料42の材料は、上述した原版用感光材料12と同様に選択され得る。
【0068】
なお、積層体38の背面側には、遮光層39が設けられ、迷光の発生を防止することが図られている。
【0069】
図6には、カラー用感光材料42の露光方法の一例が示されている。
図6に示された例において、カラーホログラム40は、反射型のホログラムとして、再生像36を記録する。具体的には、第1〜第3ホログラム30R,30G,30Bを積層してなる積層体38がカラー用感光材料42と積層される。この状態で、第1〜第3波長域のコヒーレント光の合成光からなる参照光L
crが、カラー用感光材料42の側から積層体38に照射される。参照光L
crは、カラー用感光材料42を透過して、第1〜第3ホログラム30R,30G,30Bへの再生照明光L
aの入射角度の値θ
aと同一の入射角度で、積層体38へ入射する。この結果、参照光L
crを構成する第1〜第3波長域の光が、それぞれ、対応する第1〜第3ホログラム30R,30G,30Bで、互いに同一の値θ
bとなる回折角度で回折され、同一の再生像36を再生する。
【0070】
以上のようにして、カラー用感光材料42は、互いに同一の方向から入射する第1〜第3波長域の参照光L
crと、互いに同一の方向から入射する第1〜第3波長域の物体光L
ro,L
go,L
boと、によって露光される。この結果、カラー用感光材料42上に、第1波長域の参照光および物体光の干渉と、第2波長域の参照光および物体光の干渉と、第3波長域の参照光および物体光の干渉と、に起因した干渉縞44が生成され、この干渉縞44が縞状パターン45として記録される。その後、カラー用感光材料42をなす材料の種類に対応した適切な後処理が施される。以上の手順により、カラー用感光材料42からカラーホログラム40が得られる。
【0071】
以上のカラーホログラム40の製造方法では、反射型体積ホログラムの製造中における変形等を見込んで、ホログラム30に付与すべき再生照明光L
aの入射角度の目標値θ
pa及びホログラム30に付与すべき再生光L
bの回折角度の目標値θ
pbから、参照光L
rおよび物体光L
oの入射角度θ
r,θ
oをずらして露光した複数のホログラム30を原版として用いている。この結果、互いに異なる波長域の光を用いて作製された複数のホログラム30が、同様の回折特性を有するようになる。したがって、
図7に示すように、製造されたカラーホログラム40は、第1〜第3波長域の合成光からなる再生照明光L
caを概ね同一の方向に回折し、第1〜第3波長域の各光によって概ね同一の位置に再生像46を再生する。したがって、得られたカラーホログラム40は、優れた色再現性を呈するようになる。また、カラーホログラム40の照明方向や観察方向の変化にともなって再生像46の色味が著しく変化してしまうことを効果的に防止することができる。
【0072】
なお、本件発明者は、上述の製造方法により、互いに異なる第1〜第3波長域の光を用いて第1〜第3ホログラム30R,30G,30Bを実際に製造し、且つ、製造された第1〜第3ホログラム30R,30G,30Bを用いてカラーホログラム40を実際に製造した。第1〜第3ホログラム30R,30G,30Bは、再生照明光L
aの入射角度の目標値θ
aを42°且つ再生光Lbの回折角度の目標値θbを180°とし、上述の式(ax)、式(bx)、式(gx)及び式(h)を満たすように中間感光材料22及び感光材料32の露光条件を設定して作製した。第1〜第3ホログラム30R,30G,30Bを製造する際における、調査用ホログラム原版50及び調査用ホログラム60の露光条件および回折特性、並びに、ホログラム原版10、中間ホログラム20及びホログラム30の露光条件および回折特性を、表1に示す。
【0073】
表1に示すように、透過型体積ホログラムであるホログラム原版10及び調査用ホログラム原版50については、露光条件における参照光の入射角度と回折特性における再生照明光の入射角度とが同一となり、露光条件における物体光の入射角度と回折特性における再生光の回折角度とが同一となった。一方、反射型体積ホログラムである中間ホログラム20、ホログラム30及び調査用ホログラム60については、露光条件における参照光の入射角度と回折特性における再生照明光の入射角度とがずれており、しかも、ずれ量は、第1〜第3ホログラムの間で異なっていた。同様に、中間ホログラム20、ホログラム30及び調査用ホログラム60について、露光条件における物体光の入射角度と回折特性における再生光の回折角度とがずれており、しかも、ずれ量は、第1〜第3ホログラムの間で異なっていた。このため、調査用ホログラム30の回折特性は、第1〜第3ホログラムの間で大きく異なっていた。一方、上述の式(ax)、式(bx)、式(gx)及び式(h)を満たすようにして製造された第1〜第3ホログラムの回折特性については、すべて、再生照明光L
aの入射角度の値θ
aが目標とする42°となり、且つ再生光L
bの回折角度の値θ
bが目標とする180°となった。
【0075】
互いに同一の回折特性を有する第1〜第3ホログラムを用いてカラーホログラム40を製造した際の露光条件および回折特性を
図6〜
図10に示す。なお、カラー用感光材料42を露光する際、第1〜第3ホログラムからなる積層体38に対する入射角度が42°となる方向から、第1〜第3波長域の光の合成光L
crを照射した場合、
図6に示すように、第1〜第3波長域の再生光L
ro,L
go,L
boは回折角度180°で回折された。
図7に示すように、このようにして製造されたカラーホログラム40に対して、入射角度が45°になるようにして、第1〜第3波長域の合成光をカラーホログラム40に照射したところ、第1〜第3波長域の光がそれぞれピーク強度を示す方向は4°の角度範囲内に入っていた。また、
図8〜
図10に示すように、第1〜第3波長域の光L
rca,L
gca,L
bcaをそれぞれカラーホログラム40に照明した場合、第1〜第3波長域の光L
rca,L
gca,L
bcaの入射角度は、それぞれ、37°、44°、41°となり、第1〜3波長域の再生光L
rcb,L
gcb,L
bcbの回折角度は、それぞれ、186°、178°、185°となった。
【0076】
さらに、本件発明者は、上述したカラーホログラム40の回折特性との比較のため、第1〜第3ホログラムの製造時にそれぞれ製造された第1〜第3の調査用ホログラム60を積層した積層体68をホログラム原版として用いて調査用カラー用感光材料72を露光し、調査用カラーホログラム70を作製した。調査用カラー用感光材料72は、カラー用感光材料42と同一にした。また、
図14に示すように、調査用カラー用感光材料72の露光条件は、カラーホログラム40を製造する際のカラー用感光材料42の露光条件と同様にした。すなわち、
図14に示すように、第1〜第3波長域の合成光からなる参照光L
scrは、42°の入射角度で、調査用カラー用感光材料72及び積層体に入射した。一方、第1〜第3の調査用ホログラム60で回折されてなる第1〜第3波長域の物体光L
scro,L
scgo,L
scboは、それぞれ、181°、180°、184°の入射角度で調査用カラー用感光材料72に入射した。
【0077】
なお、積層体68の背面側には、遮光層69が設けられ、迷光の発生に防止が図られている。
【0078】
図15に示すように、このようにして製造された調査用カラーホログラム70に対して、入射角度が45°になるようにして、第1〜第3波長域の合成光を調査用カラーホログラム70に照射したところ、第1〜第3波長域の光がそれぞれピーク強度を示す方向は8°の角度範囲に広がった。また、
図16〜
図18に示すように、第1〜第3波長域の光L
srca,L
sgca,L
sbcaをそれぞれ調査用カラーホログラム70に照明した場合、第1〜第3波長域の光L
rca,L
gca,L
bcaの入射角度は、それぞれ、37°、44°、41°となり、第1〜3波長域の再生光L
srcb,L
sgcb,L
sbcbは、それぞれ、回折角度の値が187°、178°、189°となる方向にピーク強度を示した。
【0079】
さらに、このようにして実際に作製されたカラーホログラム40及び調査用カラーホログラム70に対して、各ホログラムへの法線方向に対して所定角度だけ傾斜した複数の方向から白色光を試験照明し、トプコン社製の色彩輝度計「BM-7」を用いて、各照明方向から照明した際における各ホログラムの法線方向でのピーク強度を呈した色を調査した。試験照明は、サンプルの法線方向に対して40°傾斜した方向から50°傾斜した方向まで1°ずつ変化させて、計11の方向から行った。結果を
図19に示す。
図19において、カラーホログラム40についての測定結果を□で示し、調査用カラーホログラム70についての測定結果を○で示している。
【0080】
以上のように本実施の形態によれば、所望の回折特性が精度良く付与されたホログラムを製造することができる。また、本実施の形態によれば、照明角度の変化にともなった色変化が抑制され且つ優れた色再現性を有したカラーホログラムを製造することができる。
【0081】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
【0082】
上述した実施の形態において、中間感光材料22及び調査用感光材料62の露光工程において、同一固体から発振されたレーザ光を分割し、レーザ光の一部が参照光として中間感光材料22又は調査用感光材料62に入射し、且つ、レーザ光の他の一部が原版として機能するホログラム原版10又は調査用ホログラム原版50で回折された後に、物体光として中間感光材料22又は調査用感光材料62に入射する、すなわち所謂H1H2法により中間感光材料22及び調査用感光材料62を露光する例を示した。しかしながら、例示した形態に限られることなく、所謂デニシューク法として一光束にて露光を行うようにしてもよい。また、上述した実施の形態において、感光材料32及びカラー用感光材料42の露光工程において、所謂デニシューク法として一光束にて露光を行うようにした例を示したが、これに限られず、所謂H1H2法により露光を行うようにしてもよい。