(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン(62)を搭載する機体フレーム(1)の下方に配置された走行装置(2)と、該機体フレーム(1)の前方に配置され、走行装置(2)の走行速度に同調した速度で駆動される刈取装置(4)と、該刈取装置(4)の後方に配置された脱穀装置(3)と、該脱穀装置(3)の扱室(50)の一側に形成された扱ぎ口(26B)に沿って配置されたフィードチェン(12B)を備えたコンバインであって、
前記フィードチェン(12B)の周辺部に、フィードチェン(12B)の搬送速度(VF)を刈取装置(4)の搬送速度(VH)に同調して変速する刈取脱穀モードと、フィードチェン(12B)の搬送速度(VF)を所定の搬送速度に維持する手扱ぎモードとの切換え操作を行なうモードスイッチ(6B)を設け、
前記刈取脱穀モード時に、前記エンジン(62)の回転数を所定の定格回転数に設定し、
前記手扱ぎモード時に、前記エンジン(62)の回転数を定格回転数よりも低速にし、
前記走行装置(2)の走行速度を操作する主変速レバー(16)が中立域を超えた前進側の増速域に位置する場合には、前記手扱ぎモードから自動的に刈取脱穀モードに切換えて、前記エンジン(62)の回転数を定格回転数まで増速する制御装置(85)を設けたことを特徴とするコンバイン。
前記フィードチェン(12B)の周辺部に配置された逆転スイッチ(6C)が操作された場合に、前記フィードチェン(12B)が脱穀作業時とは反対の方向へ向けて駆動するように、前記油圧式無段変速装置(10)が逆転出力する構成とした請求項3記載のコンバイン。
前記油圧式無段変速装置(10)のトラニオン軸(10F)を回動させる第1変速モータ(10C)と、該第1変速モータ(10C)よりもトラニオン軸(10F)を高速で回動させる第2変速モータ(10E)を備え、
前記手扱ぎモードに切換えられた場合に、前記第2変速モータ(10E)によってトラニオン軸(10F)を回動させる構成とした請求項3または4記載のコンバイン。
前記カウンタ軸(71)に、該カウンタ軸(71)の回転を前記扱室(50)の扱胴(55)側へ出力する第1プーリ(71C)と、カウンタ軸(71)の回転を前記選別部(51)側へ出力する第2プーリ(71E)と、カウンタ軸(71)の回転を前記油圧式無段変速装置(10)側へ出力する第3プーリ(71D)を備えた請求項6記載のコンバイン。
前記脱穀装置(3)の前壁(50A)にカウンタ軸(71)を支持する支持部材(80)を備え、該カウンタ軸(71)の軸心方向において、前記第1プーリ(71C)を支持部材(80)に対して一側に偏倚した部位に配置し、第2プーリ(71E)及び第3プーリ(71D)を、前記支持部材(80)に対して第1プーリ(71C)を配置した側とは反対側に偏倚した部位に配置した請求項7記載のコンバイン。
前記カウンタ軸(71)を脱穀装置(3)の前壁(50A)の前方において左右方向に向けて配置し、該カウンタ軸(71)の前方に、フィードチェン(12B)を機体外側方へ回動自在に支持する縦方向のフィードチェン回動軸(35B)を設け、
側面視において、前記油圧式無段変速装置(10)をカウンタ軸(71)とフィードチェン回動軸(35B)の間の部位に配置した請求項6〜8のいずれか1項に記載のコンバイン。
前記フィードチェン(12B)駆動用の駆動スプロケット(17A)を備えた駆動軸(68D)を、機体前後方向において前記フィードチェン回動軸(35B)とカウンタ軸(71)の間の部位であって、上下方向において前記油圧式無段変速装置(10)の入力軸(10A)とカウンタ軸(71)の間となる部位に配置した請求項9記載のコンバイン。
前記油圧式無段変速装置(10)から駆動力が入力されるギヤボックス(68)の出力軸(68B)の先端部に、前記駆動スプロケット(17A)と接続されるか、または該駆動スプロケット(17A)を支持する駆動軸(68D)と接続されるカップリング(68C)を設け、
前記フィードチェン(12B)を機体外側方に向けて回動させた場合に、前記出力軸(68B)と駆動スプロケット(17A)との接続が解除されるか、または前記出力軸(68B)と駆動軸(68D)との接続が解除され、
前記フィードチェン(12B)を機体内側方に向けて回動させた場合には、前記出力軸(68B)と駆動スプロケット(17A)とが接続されるか、または前記出力軸(68B)と駆動軸(68D)とが接続される構成とした請求項10記載のコンバイン。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。なお、理解を容易にするために便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0033】
コンバインは、
図1,2に示すように、機体フレーム1の下方には土壌面を走行するための左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の上方左側には脱穀・選別を行う脱穀装置3が設けられ、脱穀装置3の前方には圃場の穀桿を収穫する刈取装置4が設けられている。脱穀装置3で脱穀・選別された穀粒は脱穀装置3の右側に設けられたグレンタンク5に貯留され、貯留された穀粒は排出筒7により外部へ排出される。また、機体フレーム1の上方右側には操作者が搭乗する操作席6が設けられ、操作席6の下側にはエンジン62を搭載するエンジンルーム8が設けられている。
【0034】
<刈取装置>
刈取装置4は、刈取後フレーム28と、刈取後フレーム28の先端部に左右方向に横設された刈取伝動ケース29とによって形成された主枠となる刈取フレーム30に取付けられている。刈取後フレーム28の基部は、機体フレーム1の立設された左右一対の懸架台35,35の上部に回動可能に軸支された横伝動筒36の右側に偏倚した部位に取付けられている。
【0035】
刈取装置4は、前側下部に設けられた植立穀稈を分草する分草杆31と、分草杆31の後方に設けられた倒伏した植立穀稈を引き起こす引起装置32と、引起装置32の後方の下部に設けられた植立穀稈の株元を切断する刈刃装置33と、引起装置32と刈刃装置33の後方に設けられた刈取穀稈を脱穀装置3の一側に設けられた脱穀部搬送装置12へ向けて搬送する搬送装置34とを備えている。搬送装置34は、刈取穀稈の株元側を搬送する株元搬送装置34Aと、穂先側を搬送する穂先搬送装置34Bから構成されており、また、この搬送装置34から脱穀部搬送装置12へ引継ぐ際の穀桿の落下を防止するために、脱穀部搬送装置12の前端部の内側部(右側部)には、搬送装置34の後端部から扱室50の前端部に亘って、支持体37が設けられている。
【0036】
穀粒の回収率を高めるために、刈取られた穀桿が合流する刈取装置4の搬送装置34の前後部や、フィードチェン12Bの前側等に搬送される穀桿の量を検知する穀桿センサ34Cを設けて、穀桿センサ34Cの出力値に応じてフィードチェン12Bの搬送速度を切り換えるのが好適である。
【0037】
搬送装置34の終端部には、
図15に示すように、搬送装置34の終端部からフィードチェン12Bの始端部に引継がれる穀桿の姿勢の乱れを防止するために、搬送装置34の終端部の左右方向に延設された軸38Bを中心として上下方向に揺動する手扱ぎレバー38が設けられ、手扱ぎレバー38の下側には搬送装置34の終端部にボルト等の締結部材によって取付けられたバネ板等からなる補助挾扼杆38Aが設けられている。
手扱ぎレバー38は、挾扼杆12Aの左右方向の幅に形成され、手扱ぎレバー38の後端部は、振動等によって手扱ぎレバー38の誤作動を防止するために、挾扼杆12Aの前部の下側に延設している。また、補助挾扼杆38Aは、フィードチェン12Bの左右方向の幅に形成され、補助挾扼杆38Aの前端部は、手扱ぎレバー38の前端部の前側に延設し、後端部は、挾扼杆12Aの後部まで延設している。
通常の刈取脱穀作業時には、穀桿が補助挾扼杆38A及びフィードチェン12B上に上載されることを規制するために、手扱ぎレバー38を軸38Bを中心として下側に揺動させる(規制状態)。一方、手扱ぎ作業時には、穀桿を補助挾扼杆38A及びフィードチェン12Bに上載するために、挾扼杆12Aの前部を上側に持ち上げた後に、手扱ぎレバー38を軸38Bを中心として上側に揺動させる(非規制状態)。
【0038】
手扱ぎレバー38の操作性を向上させるために、手扱ぎレバー38を、左右方向において挾扼杆12Aとずらして配置したり、手扱ぎレバー38の前後方向の長さを短くして、手扱ぎレバー38の後端部が挾扼杆12Aの下側に延設しないようにすることもできる。
【0039】
手扱ぎレバー38の基部にモータを設け、操作席6から該モータを遠隔操作して、軸38Bを中心として手扱ぎレバー38を上下方向に揺動することもできる。
また、手扱ぎレバー38と主変速レバー16をワイヤで接続して、主変速レバー16の操作位置に合わせて手扱ぎレバー38を揺動させ、主変速レバー16が前側に移動した場合には、手扱ぎレバー38を下側に揺動させて規制状態に移動させるのが好適である。なお、主変速レバー16を前側に移動すると、エンジン62の回転は走行用油圧式無段変速装置66により増速され、走行装置2の走行速度Vは高速となる。
さらに、補助作業者の作業負担を軽減するために、操作席6内にモードスイッチ6Bを設けることもできる。
【0040】
また、搬送装置34から脱穀部搬送装置12に引継がれる穀桿の姿勢を良好に維持するために、穂先搬送装置34Bに対向する支持体37の上面または下面の右側に偏倚した部位に、補助搬送装置を配置することもできる。
【0041】
補助搬送装置には、穂先搬送装置34Bから引継がれた穀桿の穂先をフィードチェン12Bに搬送するために、前側から後側に移動するラグ付きベルト、突付きベルトが備えられている。また、補助搬送装置には、後述するカウンタ軸71の回転を、フィードチェン用油圧式無段変速装置(請求項における「油圧式無段変速装置」)10の出力軸10Bを介して伝動することによって、ラグ付きベルト等の移動速度をフィードチェン12Bの移動速度と同一速度にすることが好適である。なお、フィードチェン用油圧式無段変速装置10に代えて、静油圧式無段変速機と遊星歯車とを組み合わせて構成した油圧機械式無段変速機を用いてもよい。
【0042】
図3〜5に示すように、左側の懸架台35は、機体フレーム1に立設したベース35Aの上側に取付けられている。懸架台35の左側の前部には、横伝動筒36の左側部を軸支する横伝動フレーム35Cの基部を回転可能に支持する上下方向に延設したフィードチェン回動軸35Bが設けられている。また、横伝動筒36をフィードチェン回動軸35Bを中心として回動して刈取装置4の分草杆31、引起装置32等の装置の保守・点検作業を容易に行なうために、横伝動フレーム35Cは、正面視において基部から先端部に下方向に凸部を有する円弧状に形成されている。なお、後述するように、穀桿を搬送する脱穀部搬送装置12もフィードチェン回動軸35Bを中心として回動する。
【0043】
右側の懸架台35は、機体フレーム1に立設したベース35Aの上側に取付けられている。該懸架台35の上端部には、横伝動筒36の右側部を軸支する支持部材35Dが取付けられている。支持部材35Dは、略半円弧状に分割された前側支持部材と、後側支持部材とで構成されている。横伝動筒36の右側部を軸支する場合には、前後側支持部材を係合する。また、刈取装置4又はトランスミッション65のメンテナンスを行うために、横伝動筒36をフィードチェン回動軸35Bを中心として回動させて、刈取装置4を左側方へ移動させる場合には、前後側支持部材の係合を外して横伝動筒36を前方に引き出す。左右の懸架台35,35の変形等に対する剛性を高めるために、左右の懸架台35,35の上下方向の中間部には連結フレーム35Eが架設されている。
【0044】
エンジン62の回転は、走行用油圧式無段変速装置66の入力軸に支持されたプーリ66Bを介して走行用油圧式無段変速装置66に伝動され、走行用油圧式無段変速装置66に伝動された回転は、走行用油圧式無段変速装置66の出力軸に支持されたプーリ(図示省略)を介して、横伝動筒36に内装された横伝動軸36Aの右端部に支持されたプーリ36Bに伝動され、横伝動筒36と、横伝動軸36Aを回転させる。なお、横伝動軸36Aに伝動された回転は、フレーム27,28に内装された伝動軸(図示省略)を介して、刈取装置4の引起装置32、刈刃装置33、搬送装置34等に伝動される。
【0045】
また、エンジン62の回転は、走行用油圧式無段変速装置66の入力軸に支持されたプーリ66Bを介して走行用油圧式無段変速装置66に伝動され、走行用油圧式無段変速装置66に伝動された回転は、トランスミッション65を介して、走行装置2の左右のクローラに伝動される。
【0046】
<脱穀装置>
脱穀装置3は、
図4に示すように、前側の上部に穀稈の脱穀を行う扱室50を備え、扱室50の下側に脱穀された穀粒の選別を行なう選別室(選別部)51を備えている。
扱室50には、複数の扱歯を有する扱胴55が前後壁50A,50Cに軸支された扱胴軸55Aに支持されている。そして、扱室50の前壁50Aの左側下部には穀稈供給口26Aが開口され、左壁50Bの下部には扱胴55に沿って扱ぎ口26Bが開口され、後壁50Cの左側下部には排藁口26Cが開口されている。また、扱室50の左側には扱ぎ口26Bに沿って穀桿の株元を挟持して後方に搬送する脱穀部搬送装置12が並設され、脱穀部搬送装置12によって搬送された脱穀が完了した排藁穀桿は、脱穀部搬送装置12の後方に設けられた排藁搬送装置58に引き継がれてさらに後方に搬送された後、一対の排藁カッタ59によって裁断され外部に排出される。
【0047】
選別室51の上部には、揺動選別装置52が設けられ、揺動選別装置52を形成する移送棚上には、揺動選別装置52上の穀粒等の移送量を検出する層厚センサ52Sが設けられている。また、選別室51の下部には揺動選別装置52の前部のシーブに空気を送風する第一唐箕53Aと、揺動選別装置から漏下する穀粒を回収する一番受樋53Bと、揺動選別装置の後部のシーブに空気を送風する第二唐箕53Cと、揺動選別装置から漏下する枝梗等が付着した穀粒(二番物)を回収する二番受樋53Dとが前側から順に設置されている。一番受樋53Bで回収された穀粒は、一番受樋53Bに内装された一番移送螺旋53bによってグレンタンク5に移送され、二番受樋53Dで回収された穀粒等は、二番受樋53Dに内装された二番移送螺旋53dによって二番処理室に移送される。
【0048】
扱室50の右側の後部は、排塵処理室に連通し、排塵処理室の内部には、外周面にスクリュー羽根体を備える排塵処理胴57が前後方向に軸支され、排塵処理室の前側には、二番物を処理して還元するための二番処理室が設けられている。二番処理室の内部には外周面に間欠螺旋羽根を備える二番処理胴56が軸支されている。また、揺動選別棚の後方上側には、脱穀・選別時に発生する藁屑等を吸引し機外に排出する排塵ファン48が配置されている。
【0049】
<脱穀部搬送装置>
脱穀部搬送装置12は、
図3,6等に示すように、上側に位置する挟持杆12Aと、下側に位置するフィードチェン12Bを備えている。挟持杆12Aは、扱室50の上部カバー50Dに対してスプリング等の付勢手段14によってフィードチェン12B側に付勢されている。フィードチェン12Bは、上側チェンレール18Aの前後端部にそれぞれ回転自在に支持された張設輪17B,17Bと、張設輪17B,17Bの間に設けられた駆動スプロケット17Aに巻回されて駆動される無端のチェンである。上側チェンレール18Aに上載された作用側のフィードチェン12Bは、前側から後方に向かって移動する過程で挟持杆12Aと穀稈の株元を挟持する。なお、搬送される穀桿のフィードチェン12Bの終端部等への巻付きを防止するために、後側の張設輪17Bは両側部に巻付防止プレート17Dが設けられたアイドルスプロケットを使用するのが好適である。
【0050】
上部カバー50Dの側面には、手扱ぎ作業を行なっている補助作業者が手扱ぎ作業中のフィードチェン12Bの速度VFの速度調整を容易に行って作業性を高めるために、調速ダイヤル6Aが設けられている。また、手扱ぎ穀桿量に応じてフィードチェン12Bの速度VFの速度調整を効率的に行なうために、調速ダイヤル6Aを手扱ぎ穀桿を上載する補助挾扼杆38Aの周辺に配置したり、操作席6に着座する操作者が不慣れな補助作業者を効率的に補助するためには、調速ダイヤル6Aを操作席6のサイドパネルに配置することもできる。
なお、調速ダイヤル6Aと共に、あるいは調速ダイヤル6Aに替えて、脱穀装置3の前方の機体フレーム1に手扱ぎ作業中のフィードチェン12Bの速度VFの速度調整を行なう調速ペダル45を設けることもできる。
【0051】
側面視において、挟持杆12Aは、扱室50の穀稈供給口26Aから排藁口26Cまで扱ぎ口26Bに沿って後上がり傾斜に設けられている。作用側のフィードチェン12Bを上載する上側チェンレール18Aは、横軸伝動筒36の前方の前端から後上がり傾斜した後、緩やかに後上がり傾斜して扱室50の穀稈供給口26Aの前方に至った後、挟持杆12Aと対向して扱室50の穀稈供給口26Aから排藁口26Cまで扱ぎ口26Bに沿って後上がり傾斜する。その後、排藁口26Cから後方に水平に延在した後、後下がり傾斜して排藁搬送装置58の前端部の後方の後端に至る。なお、刈取装置4の刈取り条数の変更に伴う脱穀部搬送装置12の前後方向長さの変更を容易に行なうために、上側チェンレール18Aは前後方向に分割できる分割構造にするのが好適である。
【0052】
非作用側のフィードチェン12Bを上載する下側チェンレール18Bは、駆動スプロケット17Aにエンジン62の回転を伝動するカウンタ軸71の上方の前端から後上がり傾斜して後端に至っている。なお、下側チェンレール18Bの後端は、後側の張設輪17Bの前方であって排藁口26Cの下方に設けられている。
【0053】
下側チェンレール18Bの前端部には、非作用側のフィードチェン12Bを下側チェンレール18Bの前端部よりも下方に設けられた駆動スプロケット17Aに誘導するガイド18Dが着脱自在に取付けられている。ガイド18Dは、カウンタ軸71の上方に設けられ、略1/4円形状に形成されている。なお、ガイド18Dの上方に油等の落下によってカウンタ軸71等の汚れを防止するためにカバー(図示省略)を設けることが好適である。
【0054】
下側チェンレール18Bの下側には、レール連結プレート18Cによって上側チェンレール18Aと、下側チェンレール18Bを支持する支持フレーム19が設けられている。すなわち、フィードチェン12Bは支持フレーム19によって支持されている。また、上側チェンレール18Aと、下側チェンレール18Bに連結される連結プレート18Eには、穀稈搬送中のフィードチェン12Bから落下する藁屑が前記選別室51の駆動部に落下することを防止するための藁屑ガイド板(図示省略)が取り付けられている。
【0055】
支持フレーム19の前端部は、
図3,5に示すように、ブラケット19Bにボルト等によって取付けられたプレート19Aに取付けられ、ブラケット19Bは、左側の懸架台35に設けられたフィードチェン回動軸35Bの上下端部に回転自在に取付けられている。なお、フィードチェン回動軸35Bを中心としてフィードチェン12Bの回動時に、フィードチェン12Bの先端部の機体内側への入り込みを低減するために、フィードチェン回動軸35Bをフィードチェン12Bを巻回する前側の張設輪17Bの後側近傍に立設している。
【0056】
支持フレーム19は、フィードチェン用油圧式無段変速装置10等との干渉を防止するために、側面視において、前端部からフィードチェン用油圧式無段変速装置10の入力軸10Aとギヤボックス68の出力軸68Bの間を後方に向かって延在した後、第1変速モータ10Cの前方で略90度湾曲して上方に向かって延在する。そして、カウンタ軸71の前方を上方に向かって延在した後、ガイド18Dの下側から下側チェンレール18Bの下側に沿って後上がり傾斜して、略下側チェンレール18Bの前後方向の中央部に至っている。
【0057】
これによって、フィードチェン12B、フィードチェン用油圧式無段変速装置10等の保守・点検を行なう場合には、支持フレーム19をフィードチェン回動軸35Bを中心にして回動させて、フィードチェン12Bの後部を脱穀装置3の本体から離間させることにより容易に行なうことができる。なお、フィードチェン用油圧式無段変速装置10の保守・点検を容易に行なうために、フィードチェン回動軸35Bをフィードチェン用油圧式無段変速装置10の前部よりも前側に立設している。
【0058】
側面視において、前側の張設輪17Bは、
図3に示すように、刈取装置4にエンジン62の回転を伝動する横軸伝動筒36の前方近傍に設けられ、後側の張設輪17Bは排藁搬送装置58の前端部の後方近傍に設けられている。駆動スプロケット17Aは、前後方向にあっては前後側の張設輪17B,17Bの間であって前側の張設輪17B側に偏倚して配置されており、横軸伝動筒36とフィードチェン12Bにエンジン62の回転を伝動するカウンタ軸71の略中央に位置する。また、上下方向にあってはカウンタ軸71と下側チェンレール18B等を支持する後方に向かって延在する支持フレーム19の略中央に位置する。また、前側の張設輪17Bと駆動スプロケット17Aの間には、後述する駆動軸68Dに基部が支持されたテンションスプロケット17Cに設けられている。
【0059】
これにより、フィードチェン12Bは、駆動スプロケット17Aから上方に向かって移動した後、テンションスプロケット17Cに沿って移動して前側の張設輪17Bに至り、前側の張設輪17Bから上側チェンレール18Aの上側を後側の張設輪17Bに向かって移動する。その後、フィードチェン12Bは、後側の張設輪17Bから前方の下側チェンレール18Bに向かって移動した後、下側チェンレール18Bの後端から下側チェンレール18Bの上側を前側のガイド18Dに移動した後、ガイド18Dに沿って移動して駆動スプロケット17Aに至っている。
【0060】
エンジン62の回転は、
図6に示すように、カウンタ軸71を介してフィードチェン用油圧式無段変速装置10に伝動され、キヤボックス68で増減速された後に、脱穀部搬送装置12の駆動スプロケット17Aと接続される出力軸68Bに伝動される。
【0061】
カウンタ軸71の両側部は、脱穀装置3の前壁50Aの上下方向の中央部に前方に向かって立設した一対の支持部材80に軸支されている。エンジン62の回転は、カウンタ軸71の右端部に支持されたプーリ71Aを介してカウンタ軸71に伝動される。
【0062】
カウンタ軸71に伝動された回転は、プーリ71Aの左側に支持されたプーリ(請求項における「第1プーリ」)71C、ベルト92を介して扱胴55に伝動されると共に、カウンタ軸71の左端部に支持されたプーリ(請求項における「第2プーリ」)71Eの右側に支持されたプーリ(請求項における「第3プーリ」)71D、ベルト93等を介してフィードチェン用油圧式無段変速装置10の入力軸10Aに伝動される。フィードチェン用油圧式無段変速装置10の入力軸10Aに伝動された回転は、
図8に示すように、出力軸10Bを介してギヤボックス68に伝動されて、ギヤボックス68のギヤによって増減速されて出力軸68Bに伝動される。出力軸68Bに伝動された回転は、カップリング68Cを介してフィードチェン12Aの駆動スプロケット17Aに伝動される。なお、駆動スプロケット17Aは駆動軸68Dに回転自在に支持されている。
【0063】
駆動軸68Dは、支持フレーム19の右側に取付けられたプレート19Cに支持され、支持フレーム19をフィードチェン回動軸35Bに対して回動させた場合、カップリング68Cによる出力軸68Bと駆動スプロケット17Aの連結が解除され、エンジン62の回転は駆動スプロケット17Aに伝動されずフィードチェン12B、ガイド18D等の交換を安全に行なうことができる。なお、出力軸68Bと駆動軸68Dを連結するカップリング68Cに替えて、対向する出力軸68Bと駆動軸68Dの端部にかみ合いクラッチ、爪クラッチを設けることもできる。
【0064】
キヤボックス68は、
図7に示すように、脱穀装置3の前壁50Aの上下方向の下側に偏倚した部位に前方に向かって立設した後側プレート11Bの右側面に取付けられている。また、脱穀装置3の前側の空間を有効に活用するために、キヤボックス68の左側面には、フィードチェン用油圧式無段変速装置10が取り付けれ、さらに、フィードチェン用油圧式無段変速装置10の後側には、フィードチェン用油圧式無段変速装置10のトラニオン軸10Fを回転させる第1変速モータ10Cが取付けられている。
また、
図16に示すように、フィードチェン用油圧式無段変速装置10の後側に、フィードチェン用油圧式無段変速装置10のトラニオン軸10Fを回転させる第1変速モータ10Cと、第1変速モータ10Cよりも出力等が大きくトラニオン軸10Fを高速で回転させる第2変速モータ10Eが並設して取付けることもできる。
トラニオン軸10Fに基端部が支持されている扇形ギヤ10Gの先端部に、機体フレーム1に取付けられた第1変速モータ10Cのギヤ10cと、第2変速モータ10Eのギヤ10eが係合している。後述する制御装置85によって、通常の刈取脱穀モード時には第1変速モータ10Cを駆動させトラニオン軸10Fを回転させ、手扱ぎモード時には第2変速モータ10Eを駆動させトラニオン軸10Fを回転させる。なお、通常の刈取脱穀モード時には第2変速モータ10Eは自由回転し、手扱ぎモード時には第1変速モータ10Cが自由回転する。
【0065】
フィードチェン用油圧式無段変速装置10、キヤボックス68を機体フレーム1に取付けることもでき、キヤボックス68に第1変速モータ10C、第2変速モータ10Eを取付けることもでき、入力軸10Aを備えるポンプ部と出力軸10Bを備えるモータ部が一体構造とされたフィードチェン用油圧式無段変速装置10に替えてポンプ部とモータ部が分割構造とされたフィードチェン用油圧式無段変速装置を使用することもできる。
また、第1変速モータ10Cは、刈取装置4の駆動速度に連動してフィードチェン用油圧式無段変速装置10を変速する。具体的には、走行用油圧式無段変速装置66から出力され、刈取装置4へ伝達される回転の速度を検出し、この回転速度に応じて第1変速モータ10Cを作動させるのが好適である。
【0066】
後側プレート11Bの前端部と、左右の懸架台35,35の連結フレーム35Eに備えられた前側プレート11Aの後端部は、振動を低減するために、緩挿されたピンによって接続されている。なお、後側プレート11Bの後部は、カウンタ軸71側のブラケットとボルト等の締結手段により連結されている。また、横伝動軸36Aの下側には、刈取後フレーム28の上下方向の回転位置を検知する刈取位置センサ36Sが設けられている。
【0067】
右側のベース35Aの左側には、
図6に示すように、油圧系路を短くするために、フィードチェン用油圧式無段変速装置10、走行用油圧式無段変速装置66等の油圧系路の開閉を制御するコントロールバルブ9Aが設けられ、コントロールバルブ9Aの右側には、フィードチェン用油圧式無段変速装置10、走行用油圧式無段変速装置66等に油を供給するオイルタンク9Bが設けられている。
【0068】
脱穀装置3の前方下側の空間を有効活用し、フィードチェン12の回動時にフィードチェン12B、ベルト93等の干渉を防止するために、フィードチェン用油圧式無段変速装置10の入力軸10Aと出力軸10B及びギヤボックス68の出力軸68Bが上下に垂直になるように設けられている。
【0069】
油圧の圧力損失を防止するために、フィードチェン用油圧式無段変速装置10のポンプ部の入力軸10を出力軸10Bよりも下側に設け、フィードチェン用油圧式無段変速装置10とコントロールバルブ9Aと油圧経路を短くしている。
【0070】
フィードチェン12Bの巻回を容易にするために、ギヤボックス68の出力軸68Bをフィードチェン用油圧式無段変速装置10の出力軸10Bよりも上側に設け、フィードチェン12Bの長さを短くしている。
【0071】
<上部カバー>
上部カバー50Dは、前後2箇所に設けられた蝶番100により、脱穀装置3の機枠に対してピン101回りに回動自在に固定され、上部カバー50Dと脱穀装置3の機枠の間には、上部カバー50Dを上昇させる側(正面視において、上部カバー50Dを反時計回りに回動させる側)へ付勢するガススプリング等の付勢手段が設けられている。この上部カバー50Dは、刈取作業時には、上部カバー50Dが扱胴55の上方を覆い、かつ、挟持杆12Aがフィードチェン12Bに接触する閉鎖状態となる。また、上部カバー50Dを閉鎖状態に維持するために、第1フック50G、第2フック50H、ピン50K等から成るロック機構を備えている。
フィードチェン12Bと、挟持杆12Aまたは挟扼杆12Cとの間に詰まった異物を容易に除去するために、
図18,19等に示すように、扱室50の前部右側には、停止スイッチ6Dの操作に連動して駆動する第1モータ54が設けられている。なお、第1モータ54の配置位置については、特に制限はなく、扱室50の後部に配置することもでき、連結アーム54A、フックアーム54Bの構造を簡易にするためには、開閉レバー50Eの上方の扱室50の部位に配置するのが好適である。
上部カバー50Dの挟持杆12A側部を半開放状態にするには、基端部を上部カバー50Dに前後方向に延設する軸50Fに回転自在に支持された第1フック50Gと、扱室50に前後方向に延設するピン50Kとのロックを解除して、基端部を軸50Fに回転自在に支持された第1フック50Gよりも全長が長い第2フック50Hと、ピン50Kをロック状態にすることにより行なわれる。また、上部カバー50Dを開放状態にするには、第1フック50Gとピン50Kとのロック状態を解除して、第2フック50Hとピン50Kとのロック状態も解除することにより行なわれる。
なお、半開放状態とは、上部カバー50Dの挟持杆12A側部を略50〜100mm上方に移動させてフィードチェン12B上に詰まった異物を除去する状態をいい、開放状態とは、上部カバー50Dの挟持杆12A側部を略300〜450mm上方に移動させてフィードチェン12Bの保守・点検作業をする状態をいう。
【0072】
第1モータ54と第1フック50Gは、
図22,23に示すように、基端部(右端部)を第1モータ54の出力軸と偏倚した部位に支持された連結アーム54Aと、下部を軸50Fに回転自在に支持され、下端部を第1フック50Gの基端部に係合するフックアーム54Bとによって接続されている。なお、フックアーム54Bの上端部は連結アーム54の先端部(左端部)に回転自在に支持されている。また、連結アーム54Aの第1モータ54側の部位には、長孔が形成されており、この長孔に第1モータ54のピンが係合している。
【0073】
停止スイッチ6Dの操作に連動して第1モータ54が駆動すると、第1モータ54のピンが連結アーム54Aの長孔の端部(左端部)と係合し、連結アーム54Aの先端部は、正面視において略左方向に移動する。連結アーム54Aの先端部が略左方向に移動すると、フックアーム54Bは、正面視において軸50Fを中心として上方向(反時計方向)に移動する。フックアーム54Bが上方向に移動すると、フックアーム54Bの下端部に係合した第1フック50Gの基端部が軸50Fを中心に反時計方向に移動し、第1フック50Gは、正面視において軸50Fを中心として上方向に移動してピン50Kとのロック状態が解除される。なお、第1モータ54を逆回転に駆動して、第1フック50Gを軸50Fを中心に時計方向に移動させてピン50Kと係合させる構成とするのが好適である。
【0074】
第1フック50Gとピン50Kとのロック状態が解除された後は、軸50Fに基端部が支持されている第1フック50Gよりも全長が長い第2フック50Hがピン50Kと係合してロック状態となるまで付勢手段によって上部カバー50Dは上方に移動して、フィードチェン12Bと挟扼杆12Cの間に約50〜100mmの隙間を形成する。
【0075】
断線等によって第1モータ54が駆動できない場合に、上部カバー50Dの開放操作を行うために、
図21,24に示すように、開閉レバー50Eが設けられている。
開閉レバー50Eの基部は、第1フック50Kと第2フック50Hの間の軸50Fに回転自在に支持され、基部には第1フック50Kと第2フック50Hの基端部に係合する片50Lが設けられている。
【0076】
開閉レバー50Eを軸50Fを中心として上方(反時計方向)に移動させると、開閉レバー50Eの基部に設けた片50Lが第1フック50Kと第2フック50Hの基端部に係合する。片50Lを第1フック50Kと第2フック50Hの基端部に係合させながら開閉レバー50Eを上方に移動すると、第1フック50Kは、正面視において軸50Fを中心として上方向に移動してピン50Kとのロック状態が解除され、第2フック50Hも正面視において軸50Fを中心として上方向に移動してピン50Kと係合されない位置に移動する。これによって、断線等によって第1モータ54が駆動できない場合にあっても開閉レバー50Eを操作することによって、上部カバー50Dを開放状態にすることができる。第1フック50Gが開閉レバー50Eの操作により回動することに伴って、連結アーム54Aは左方向へ移動することになるが、連結アーム54Aに長孔が形成されていることにより、第1モータ54のピンに対して連結アーム54Aが左側に移動することができ、上部カバー50Dが開放状態となる。
なお、本実施形態では、開閉レバー50Eの片50Lの前後方向長さを第1フック50Kと第2フック50Hの間隔より長く設けて、開閉レバー50Eによって上部カバー50Dを開放状態できるようにしているが、開閉レバー50Eの片50Lの長さを短くして第1フック50Kにのみに係合させて上部カバー50Dを半開放状態できるようにすることもできる。
【0077】
(他の上部カバーのロック機構)
次に、上部カバー50Dの他のロック機構について説明する。なお、上述したロック機構と同一部材には同一符号を付して重複した記載を省略する。
【0078】
前後方向に延設する軸50Fには、
図31,32に示すように、第1フック50Gと、第1フック50Gの前側に所定の間隔を開けて第2フック50Hが、回転自在に支持されている。軸50Fに支持される第1フック50Gの上部の左側部位には、左右方向に延設する開閉レバー86の右端端部が固着され、第1フック50Gの上部の下側部位には、補助開閉レバー87を装着する中空状の支持部材88が固着されている。
なお、開閉レバー86の操作が行なわれていない状態において、ピン50Kと係合可能な位置に第1フック50Gを付勢するために、一端を第1フック50Gに接続し、他端を軸50Fの周辺部材に接続したトルクスプリング50gを第1フック50Gの後側に近接させて軸50Fに装着している。また、同様に、開閉レバー86の操作が行なわれていない状態において、ピン50Kと係合可能な位置に第2フック50Hを付勢するために、一端を第2フック50Hに接続し、他端を軸50Fの周辺部材に接続したトルクスプリング50hを第2フック50Hの前側に近接させて軸50Fに装着している。
【0079】
補助開閉レバー87は、支持部材88に形成された中空部に挿通される軸87Aと、軸87Aの右端部に装着された長方形状のプレート87Bと、軸87Aの左端部に装着された操作部87Cとによって構成されている。なお、ロック機構を簡易な構造とするために、前後方向において軸87Aは、第1フック50Gと第2フック50Hの間に配置し、プレート87Bは、プレート87Bの長手方向の下部を軸87Aに装着している。
【0080】
支持部材88に対して操作部87Cを時計方向に回転させ上方に移動させた場合には、軸87Aの右端部に装着されている長方形状のプレート87Bの長手方向が上下方向に向いて配置されるために、プレート87Bと第2フック50Hは係合しない。
【0081】
一方、支持部材88に対して操作部87Cを反時計方向に回転させ下方に移動させた場合には、長方形状のプレート87Bの長手方向が左右方向に向いて配置されるために、プレート87Bの長手方向の前端部と第2フック50Hが係合する。
【0082】
操作部87Cを時計方向に回転させ上方に移動させた状態において、軸50Fを中心として開閉レバー86を上方に移動させた場合には、開閉レバー86の上方への移動に伴って、軸50Fを中心として第1フック50Gの下端部が反時計方向に回転してピン50Kとの係合が外れロック状態が解除される。
第1フック50Gとピン50Kのロック状態が解除された後は、付勢手段によって上部カバー50Dは上方に移動し、第1フック50Gよりも長い第2フック50Hがピン50Kと係合して上部カバー50Dは半開放状態になる。
手扱ぎ作業時に、フィードチェン12B上に詰まった異物を除去するために、上部カバー50Dは半開放状態する場合には、第1フック50Gを係合状態に付勢するトルクスプリング50gに抗する力を開閉レバー86に加えれば良く、高齢者、女性等の補助作業者であっても容易に上部カバー50Dを半開放状態にすることができる。
【0083】
一方、操作部87Cを反時計方向に回転させ下方に移動させた状態において、軸50Fを中心として開閉レバー86を上方に移動させた場合には、開閉レバー86の上方への移動に伴って、軸50Fを中心として第1フック50Gの下端部が反時計方向に回転してピン50Kとの係合が外れロック状態が解除される。また、支持部材88を介して第1フック50Gの下端部に連結された補助開閉レバー87のプレート87Bが係合した第2フック50Hの下端部が反時計方向に回転して、第2フック50Hの下端部がピン50Kに係合ことができない位置に移動する。
第1フック50Gとピン50Kのロック状態が解除された後は、付勢手段によって上部カバー50Dは上方に移動し上部カバー50Dは開放状態になる。
【0084】
穀粒、排藁等の外部への飛散を防止するために、刈取装置4等が駆動中にもかかわらず、開閉レバー86の移動状態を検出する位置センサ位置センサにより開閉レバー86の上方への移動が検出された場合には、操作席6に設けられたモニタに異常状態を警告するのが好適である。また、緊急時に停止スイッチ6Dの操作を容易にするために、停止スイッチ6Dを補助開閉レバー87の前側近傍に配置し、補助開閉レバー87の移動領域を3時から9時に設定するのが好適である。さらに、補助作業者の作業負担を低減するために、補助開閉レバー87にワイヤを接続して操作席6から補助開閉レバー87を操作することもできる。
【0085】
<ナローガイド>
コンバインの左側(未刈取側)には側部に沿って、
図2に示すように、コンバインの外側に張り出す張出姿勢と、内側に収納される収納姿勢に切替え可能なナローガイド20が設けられている。
【0086】
ナローガイド20は、間接状態に連結された前側部20Aと後側部20Bからなり、前側部20Aの前端部は、最左側の分草体31の後側の分草フレームの前端部に回動自在に枢支され、後側部20Bの後端部は、機体フレーム1の左側の側部に設けた支持部材によって前後方向に移動自在に支持されている。また、ナローガイド20は、リンク構造を備える切替手段(図示省略)によって張出姿勢と収納姿勢に切替えられる。
なお、モードスイッチ6Bが接続されて通常の刈取脱穀モードから手扱ぎモード時には、手扱ぎ作業を行なう補助作業者とナローガイド20の接触を防止するために、ナローガイド20は収納姿勢に維持される。
【0087】
<伝動機構>
次に、本実施形態の伝動機構について説明する。エンジン62の回転は、
図9に示すように、フィードチェン用油圧式無段変速装置10に伝動される第1経路Aと、走行用油圧式無段変速装置66に伝動される第2経路Bと、グレンタンク5の前方のギヤボックス39に伝動される第3経路Cに分岐して伝動される。
【0088】
フィードチェン用油圧式無段変速装置10に伝動される第1経路Aでは、エンジン62の回転は、クランク軸70に支持されたプーリ70Aと、ベルト90と、カウンタ軸71に支持されたプーリ71Aを介してカウンタ軸71に伝動される。なお、第1経路Aには、ベルト90よりも伝動下流側への伝動を接続及び遮断する脱穀クラッチ90Aが設けられている。
【0089】
カウンタ軸71の回転は、プーリ71Bと、ベルト91等を介して二番処理胴56と排塵処理胴57に伝動され、プーリ71Cと、ベルト92と、プーリ72Aを介してカウンタ軸72に伝動され、カウンタ軸72の回転は、ギヤボックス73、扱胴軸55Aを介して扱胴55と排藁搬送装置58に伝動される。なお、扱胴軸55Aの端部には、扱胴軸55Aの回転数を検出する扱胴軸回転センサ55Sが装着されている。
【0090】
ギヤボックス73の保守・点検作業を容易にするために、
図17に示すように、扱室50の前側に設けられたギヤボックス73の前側には、ギヤボックス73と、扱胴軸55Aとの接続又は接続解除を操作するかみ合いクラッチ、爪クラッチ等の扱胴クラッチ74が設けられている。なお、クラッチを構成する部品点数を低減するために、扱胴クラッチ74を扱胴軸55Aと同一軸心上に設けるのが好適である。
カウンタ軸72に入力された回転は、スパーギアの噛合いにより、中間軸102へ伝達される。この中間軸102の一端には、ベベルギア102Aが一体で設けられており、扱胴軸55Aと同一軸心上に設けられたベベルギア55Bと噛合っている。このベベルギア55Bは、扱胴軸55Aの外周に回転自在に嵌め合わされており、このベベルギア55Bの前端部に備える爪クラッチと、扱胴軸55Aに固着された爪クラッチが相互に噛合うことにより、カウンタ軸72からの回転が扱胴軸55Aへ伝達される。
【0091】
扱胴クラッチ74の接続又は接続解除は、
図20に示すように、停止スイッチ6Dの操作に連動して駆動する扱胴クラッチ74の上側に設けられた第2モータ74Aによって行なわれる。第2モータ74Aと扱胴クラッチ74は、基端部を第2モータ74Aの出力軸に支持したクランクアーム74Bと、基端部を扱胴クラッチ74の入力軸に支持したクラッチアーム74Eと、クランクアーム74Bとクラッチアーム74Eを連動させるアーム74Cによって接続されている。
【0092】
停止スイッチ6Dの操作に連動して第2モータ74Aが駆動されると、クランクアーム74Bの先端部は、
図20に示す平面視において第2モータ74Aの出力軸に支持された基端部を中心として回転揺動する。クランクアーム74Bの先端部はアーム74Cに形成されている開孔部に入り込んでおり、クランクアーム74Bが揺動すると、アーム74Cは、平面視において軸74Dを中心として左右方向に揺動する。アーム74Cが左右方向に揺動すると、アーム74Cの中間部に形成されている切欠き部と係合するクラッチアーム74Eの先端部が、前後方向に揺動してクラッチアーム74Eの基端部を支持している扱胴クラッチ74の入力軸を回転させて扱胴クラッチ74の接続又は接続解除が行なわれる。
【0093】
扱胴クラッチ74の伝動下流側には、扱胴55の駆動を緊急停止するために、
図17に示すように、扱胴軸55Aの回転を停止させる湿式多板ブレーキ等の扱胴ブレーキ75が設けられている。なお、扱胴ブレーキ75の保守・点検作業を容易にするために、扱胴ブレーキ75をギヤボックス73の下側の扱胴軸55Aと並設された軸75Bに支持するのが好適である。この軸75Bは、扱胴軸55Aに固着されたスパーギアと連動されており、扱胴ブレーキ75が軸75Bを制動することにより、扱胴軸55Aの回転が停止される。
【0094】
扱胴ブレーキ75の接続又は接続解除は、
図19に示すように、停止スイッチ6Dの操作に連動して駆動する扱胴軸55Aよりも上側に設けられた第3モータ75Aによって行なわれる。第3モータ75Aと扱胴ブレーキ75は、基端部を第3モータ75Aの出力軸に支持したクランクアーム75Cと、基端部を扱胴ブレーキ75の入力軸に支持したブレーキアーム75Eと、クランクアーム75Cとブレーキアーム75Eを連結する連結アーム75Dによって連結されている。なお、連結アーム75Dは、扱胴軸55Aを停止する際に生じる振動等の外乱れによる第3モータ75Aの故障を防止するために、緩衝材として機能するスプリングと鋼材から形成されている。
【0095】
停止スイッチ6Dの操作に連動して第3モータ75Aが駆動されると、クランクアーム75Cの先端部は、正面視において第3モータ75Aの出力軸に支持された基端部を中心として上下方向に揺動する。クランクアーム75Cの先端部が上下方向に揺動すると、連結アーム75Dが上下方向に移動する。連結アーム75Dが上下方向に移動すると、連結アーム75Dの下部に連結されているブレーキアーム75Eの先端部が、正面視において上下方向に揺動してブレーキアーム75Eの基端部を支持している扱胴ブレーキ75の入力軸を回転させて扱胴ブレーキ75の接続又は接続解除が行なわれる。
【0096】
カウンタ軸71の回転は、
図9に示すように、プーリ71Dと、ベルト93と、フィードチェン用油圧式無段変速装置10の入力軸10Aに支持されたプーリ10Dを介して入力軸10Aに伝動される。さらに、カウンタ軸71の回転は、プーリ71Dの左側に支持されたプーリ71E、ベルト94を介して、第一唐箕53A、一番移送螺旋53b、第二唐箕53C、二番移送螺旋53d、排塵ファン48、揺動選別装置52、排藁カッタ59に伝動される。
【0097】
入力軸10Aの回転は、出力軸10Bを介してギヤボックス68に伝動され、ギヤボックス68に内装された複数のギヤ68Aによって増減速された後に、ギヤボックス68に軸支された出力軸68Bに伝動される。
なお、ギヤボックス68には、フィードチェン用油圧式無段変速装置10の出力軸10Bに備えるギヤ68Aの回転速度を測定するフィードチェン速度センサ10Sが設けられている。
【0098】
出力軸68Bの回転は、カップリング68Cを介して駆動軸68Dに伝動され、駆動軸68Dの左端に軸支された駆動スプロケット17Aを介してフィードチェン12Bに伝動される。なお、フィードチェン12Bを左側の懸架台35に立設されたフィードチェン回動軸35Bを中心として容易に回動するために、
図5に示すように、フィードチェン12Bの中心よりも機体内側にフィードチェン回動軸35Bの中心を設け、フィードチェン回動軸35Bを上下方向に垂直に延設し、
図6に示すように、出力軸68Bの左端は、カウンタ軸71の左端よりも左側に延設し、駆動スプロケット17Aもプーリ71Eよりも左側に支持されている。
【0099】
操作席6の左側には、走行用油圧式無段変速装置66を遠隔操作する主変速レバー16が設けられ、主変速レバー16の後側には植立穀桿の倒伏状態に応じてトランスミッション65内の伝動機構に備えた有段式の副変速装置を切換操作する副変速レバー15が設けられている。主変速レバー16には、フィードチェン用油圧式無段変速装置10を遠隔操作する増速スイッチ16Aと、減速スイッチ16Bが設けられている。増速スイッチ16Aを約2秒以上長押しすると、フィードチェン用油圧式無段変速装置10の出力軸10Bの回転を最高回転速度に変更することができ、増速スイッチ16Aを約1秒短押しすると、出力軸10Bの回転を段階的に高速にすることができる。同様に、減速スイッチ16Bを約2秒以上長押しすると、フィードチェン用油圧式無段変速装置10の出力軸10Bの回転を最低回転速度に変更することができ、減速スイッチ16Bを約1秒短押しすると、出力軸10Bの回転を段階的に低速にすることができる。上記増速スイッチ16Aおよび減速スイッチ16Bを、変速スイッチSと総称する。また、主変速レバー16の下部には、主変速レバー16の変移位置を測定する主変速レバー位置センサ16S設けられ、副変速レバー15の下部には、副変速レバー15の変移位置を測定する副変速レバー位置センサ15S設けられている。
【0100】
走行用油圧式無段変速装置66に伝動される第2経路Bでは、エンジン62の回転は、クランク軸70に支持されたプーリ70Bと、ベルト96と、走行用油圧式無段変速装置66の入力軸に支持されたプーリ66Bを介してこの走行用油圧式無段変速装置66に入力される。
【0101】
走行用油圧式無段変速装置66の入力軸の回転は、走行用油圧式無段変速装置66の出力軸を介してトランスミッション65に伝動され、トランスミッション65に内装された複数のギヤによって増減速された後に、トランスミッション65に軸支された左右の車軸65Aおよびこの車軸65Aの先端部に固定した駆動輪65Bを介して走行装置2に伝動される。また、走行用油圧式無段変速装置66の出力軸の回転は、トランスミッション65内の伝動経路における上記副変速装置よりも上手側の部位から出力する出力軸65Cから、この出力軸65Cの先端部に取り付けた出力プーリ65Dと伝動ベルト65Eを介して横伝動軸36Aの右端に支持されたプーリ36Bに伝動される。上記伝動ベルト65Eにはテンションローラを付勢する構成として、刈取クラッチ65Fを構成する。
【0102】
すなわち、走行用油圧式無段変速装置66の入力軸に伝動されたエンジン62の回転を走行用油圧式無段変速装置66で増減速した後に分岐して、一方をトランスミッション65に軸支された左右の車軸65Aを介して走行装置2のクローラに伝動し、他方を横伝動軸36Aを介して刈取装置4の引起装置32、搬送装置34等に伝動しているので、走行装置2の走行速度Vと、刈取装置4の引起装置32の引起し速度及び搬送装置34の搬送速度VHは一定の関係を持って決定される。例えば、走行装置2の走行速度Vを高速にした場合には刈取装置4の引起装置32の引起し速度及び搬送装置34の搬送速度VHも高速となり、走行装置2の走行速度Vを低速にした場合には刈取装置4の引起装置32の引起し速度及び搬送装置34の搬送速度VHも低速となる。なお、車軸65A、横伝動軸36Aには、回転速度を測定する走行速度センサ66S、搬送速度センサ34Sがそれぞれ設けられている。
また、トランスミッション65内の伝動経路において、副変速装置よりも下手側の部位に設けたセンターギヤ65Gの左右両側部には、左右のサイドクラッチギヤ65Hを係合および離脱自在に軸支している。このセンターギヤ65Gと左右のサイドクラッチギヤ65Hの間には、爪クラッチ式の左右のサイドクラッチ65Iをそれぞれ形成している。この左右のサイドクラッチ65Iには、左右の車軸65Aの基部に取り付けた左右の車軸ギヤを噛み合わせている。
【0103】
上記の左右のサイドクラッチ65Iは、操作席6の前方に配置した操向レバーの左右傾動操作によって作動するシフタ(図示省略)によってサイドクラッチギヤ65Hを左右方向に摺動して、センターギヤ65Gから離脱させることで伝動遮断状態となる。
また、左右のサイドクラッチ65Iは、操作席6の前下方のステップ上に配置した掻込ペダル22の踏込み操作に連動しており、掻込ペダル22が踏み込まれた場合には、左右のサイドクラッチ65Iを介してセンターギヤ65Gとサイドクラッチギヤ65Hが離脱してエンジン62の回転は車軸65Aに伝動されない。一方、掻込ペダル22の踏み込みが解除された場合には、左右のサイドクラッチ65Iを介してセンターギヤ65Gとサイドクラッチギヤ65Hが係合してエンジン62の回転が車軸65Aに伝動される。また、手扱ぎ作業時の掻込ペダル22の操作を容易に行なうために、掻込ペダル22をモータで駆動し、手扱ぎ作業時には該モータを駆動することにより踏込み操作に替えることができる。なお、掻込ペダル22の下部には、掻込ペダル22の踏込み操作状態を検出する掻込ペダルセンサ22Sが設けられている。
【0104】
圃場の一辺を畦際まで刈り進んだ場合には、主変速レバー16を中立位置へ操作して停車し、掻込ペダル22を踏み込んでサイドクラッチ65Iを介してセンターギヤ65Gとサイドクラッチギヤ65Hの係合を解除して車軸65Aの回転を停止する。
コンバインを停止させた状態で、主変速レバー16を再度前進側へ操作すると、走行用油圧式無段変速装置66の出力によって出力軸65Cが駆動し、刈取クラッチ65Fを介して刈取装置4が駆動される。この際、左右のサイドクラッチ65Iが遮断されているために、走行装置2は前進駆動されず、停車状態を維持する。この構成によって、畦際まで刈り進んで停車した状態で、刈取装置4に入ったままの植立穀稈を、掻込ペダル22と主変速レバー16の操作によって刈り取ることができる。
【0105】
なお、掻込ペダル22の踏込み操作に刈取クラッチ65Fを連動させることもできる。
すなわち、掻込ペダル22が踏込み込まれた場合には、刈取クラッチ65Fを介してトランスミッション65の出力軸65Cと刈取装置4の横伝動軸36Aが接続されて刈取装置4が駆動する。一方、掻込ペダル22の踏込みが解除された場合には、刈取クラッチ65Fを介してトランスミッション65の出力軸65Cと刈取装置4の横伝動軸36Aの接続を解除して刈取装置4の駆動を停止する。
【0106】
圃場の一辺を畦際まで刈り進んだ場合には、主変速レバー16を中立位置へ操作して車体を停車させる。コンバインを停止させた状態で、掻込ペダル22が踏込み込むと刈取装置4が駆動する。この際、主変速レバー16が中立位置に移動しているために、走行装置2は前進駆動されず、停車状態を維持する。
【0107】
グレンタンク5の排出螺旋39Aに伝動される第3経路Cでは、エンジン62の回転は、クランク軸70に支持されたプーリ70Cと、ベルト97、ギヤボックス39等を介して、グレンタンク5の下部に設けられた排出螺旋39Aに伝動される。また、排出螺旋39Aの回転は、グレンタンク5の後方に設けられた排出筒7に内装されたオーガー螺旋39Bに伝動される。なお、第3経路Cには、ベルト97よりも伝動下流側への伝動を接続及び遮断する排出クラッチ97Aが設けられている。また、排出螺旋39Aの一端には、排出螺旋39Aの回転の有無を検出、すなわち、グレンタンク5内に貯留された穀粒の外部への排出状態を検出する排出螺旋センサ39Sが装着され、排出筒7の外筒部には、排出筒7の張出状態を検出する排出筒センサ7Sが装着されている。
【0108】
<制御装置>
操作席6に設けられた制御装置85の入力側には、
図10に示すように、走行装置2の速度Vを検出する走行速度センサ66Sと、刈取装置4の搬送装置34の速度VHを検出する搬送速度センサ34Sと、脱穀部搬送装置12のフィードチェン12Bの速度VFを検出するフィードチェン速度センサ10Sと、副変速レバー15のレバー位置を検出する副変速レバー位置センサ15Sと、主変速レバー16に設けられたフィードチェン12Bの速度VFの増減速を行なう増減速スイッチ16A,16Bと、上部カバー50Dの側面に設けられているフィードチェン12Bの速度VFの増減を行なう調速ダイヤル6Aと、手扱ぎモードへの切り換えを行なうモードスイッチ6Bと、フィードチェン12Bを後側から前側に向かって逆回転させる逆転スイッチ6Cと、フィードチェン12B上の搬送される穀桿の有無を検知する穀桿センサ34Cと、上部カバー50Dの側面に設けられているフィードチェン12Bの駆動を緊急停止する停止スイッチ6Dと、扱胴55の扱胴軸55Aの回転数を検出する扱胴軸回転センサ55Sと、掻込ペダル22の踏込み操作状態を検出する掻込ペダルセンサ22Sと、刈取後フレーム28の上下方向の回転位置を検知する刈取位置センサ36Sと、グレンタンク5内に貯留された穀粒の外部への排出状態を検出する排出螺旋センサ39Sと、排出筒7の張出状態を検出する排出筒センサ7Sと、揺動選別装置52上の穀粒等の移送量を検出する層厚センサ52Sと、エンジン62への燃料供給の有無を検出する燃料供給センサ62Bと、第1フック50Gの回転を検出するフックセンサ50Sと、脱穀クラッチ90Aの接続状態を操作する脱穀スイッチ6Eと、主変速レバー16のレバー位置を検出する主変速レバー位置センサ16Sが所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
一方、制御装置85の出力側には、通常の刈取脱穀モード時にフィードチェン用油圧式無段変速装置10のトラニオン軸10Fを駆動する第1変速モータ10Cと、手扱ぎモード時にフィードチェン用油圧式無段変速装置10のトラニオン軸10Fを駆動する第2変速モータ10Eと、扱室50の上部カバー50Dをロック状態に維持する第1フック50Gを駆動する第1モータ54と、エンジン62と扱胴55の伝動の接続を行なう扱胴クラッチ74を駆動する第2モータ74Aと、扱胴55を緊急停止させる扱胴ブレーキ75を駆動する第3モータ75Aと、エンジン62の始動・停止を操作するエンジンキー62と、エンジン62の出力回転を操作するエンジン62に装着されたコントローラ62Cが所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
なお、モードスイッチ6Bは、補助作業者が手動で操作するスイッチに限定されるものではない。すなわち、刈取装置4の搬送装置34の終端部からフィードチェン12Bの始端部に引継がれる穀桿の姿勢の乱れを防止するために、搬送装置34の終端部には、上下方向に揺動する手扱ぎレバー38と、手扱ぎレバー38の下側に補助挾扼杆38Aが設けられている。手扱ぎモードへの切り換え時には、手扱ぎ穀桿を補助挾扼杆38A及びフィードチェン12B上に上載するために、手扱ぎレバー38を軸38Bを中心として上側に揺動させることで、規制状態から非規制状態へ切替える。手扱ぎレバー38を揺動させる操作に連動して、ON/OFFするスイッチ(モードスイッチ)38Cを設け、該スイッチ38Cをモードスイッチ6Bとして利用することもできる。
【0109】
<フィードチェンの駆動・停止方法>
次に、本実施形態のフィードチェン12Bの駆動・停止方法について説明する。
(フィードチェンの第1駆動方法)
図11には、フィードチェン12Bの速度VFの第1駆動方法が図示されている。横軸は走行速度センサ66Sで検出された走行装置2の走行速度Vを示し、V1,2は走行速度Vの第1,2設定値である。左側の縦軸はフィードチェン速度センサ10Sで検出されたフィードチェン12Bの速度VFを示し、VF1,2はフィードチェン12Bの速度VFの第1,2設定値であり、右側の縦軸は搬送速度センサ34Sで検出された搬送装置34の速度VHを示し、VH1,2は搬送速度VHの第1,2設定値であり、VH1,2は走行装置2の走行速度Vが第1,2設定値V1,2時の速度に対応する。
また、実線はフィードチェン12Bの速度VFを示し、破線は搬送装置34の速度VHを示している。
【0110】
先ず、制御装置85は、モードスイッチ6Bの入力があったか否か判断し、モードスイッチ6Bの入力が無いと判断された場合には、制御装置85は、搬送装置34の速度VH(搬送速度センサ34Sからの入力値)が第1設定値VH1よりも低速か否か判断する。
搬送装置34の速度VHが第1設定値VH1よりも低速と判断された場合には、第1状態に示すように、フィードチェン12Bの速度VFを下式1で演算される速度に制御する。なお、副変速レバー15により設定される変速段位により、走行装置2の走行速度Vに対する搬送装置34の搬送速度VHは変化する。
式1 VF=K×V
但し K=VH1/V1
【0111】
一方、搬送装置34の速度VHが第1設定値VF1よりも等速以上と判断された場合には、第2状態に示すように、フィードチェン12Bの速度VFを下式2で演算される速度に制御する。
式2 VF=VF1+1.5〜2.5×K×(V―V1)
但し K=(VH2―VH1)/(V2―V1)
【0112】
次に、制御装置85は、フィードチェン12Bの速度VF(フィードチェン速度センサ10Sの入力値)が搬送装置34の第2設定値VH2よりも低速か否か判断する。
フィードチェン12Bの速度VFが搬送装置34の第2設定値VH2よりも低速と判断された場合には、第2状態に示すように、フィードチェン12Bの速度VFを式2で演算される速度に制御する。
一方、フィードチェン12Bの速度VFが搬送装置34の第2設定値VH2と等速以上と判断された場合には、第3状態に示すように、フィードチェン12Bの速度VFを第2設定値VF2に維持する。
【0113】
(フィードチェンの第2駆動方法)
図12には、フィードチェン12Bの速度VFの第2駆動方法が図示されている。実線はフィードチェン12Bの速度VFを示し、破線は搬送装置34の速度VHを示し、第1駆動方法と同一部材には同一符号を付して重複した記載を省略する。
【0114】
先ず、制御装置85は、モードスイッチ6Bの入力があったか否か判断し、モードスイッチ6Bの入力が無いと判断された場合には、前述した第1〜3状態のフィードチェン12Bの速度VFを維持する。
一方、モードスイッチ6Bの入力があったと判断された場合、フィードチェン12Bの速度VFを下式3で演算される速度に制御する。なお、フィードチェン12Bの速度VFは調速ダイヤル6Aによって10〜20%の範囲で増減速することができる。
式3 VF=0.25〜0.5×VH1
【0115】
補助作業者の作業環境の安全性を高め、且つ、補助作業者が手扱ぎレバー38を非規制状態から規制状態への戻し忘れたことによって発生する通常の刈取脱穀作業時の穀桿の詰まり等の不具合を防止するために、
図30に示すように、モードスイッチ6Bまたは手扱ぎレバー38の基部に設けられたスイッチ38Cが入力され、フィードチェン12Bが第2駆動方法で駆動されている状態では、エンジン62の出力回転を定格回転数よりも遅い低速回転数にし、主変速レバー16のレバーが中立域を超えた前進側の増速域にあったり、走行装置2の走行速度Vが0.3m/secよりも大きな高速域にある状態では、エンジン62の出力回転を定格回転数にするのが好適である。
【0116】
先ず、制御装置85は、ステップS30で、手扱ぎレバー38の基部に設けられたスイッチ38C等の入力状態を判断し、スイッチ38C等が入力されておらず通常の刈取脱穀時と判断した場合には、エンジン62に装着されたコントローラ62Cに所定の信号を出力して、エンジン62の出力回転を定格回転数に維持する。
一方、スイッチ38C等が入力されており手扱ぎ作業時と判断した場合には、エンジン62に装着されたコントローラ62Cに所定の信号を出力して、エンジン62の出力回転を定格回転数よりも遅い低速回転数に変更し、ステップS31に進む。
【0117】
ステップS31では、主変速レバー16のレバー位置を判断するために、主変速レバー16のレバー位置を検出する主変速レバー位置センサ16Sの入力値が、中立域を超えた前進側に位置する増速域にあるか、中立域に位置する定速域に有るか判断する。
【0118】
主変速レバー位置センサ16Sの入力値が増速域に有ると判断した場合には、補助作業者の手扱ぎレバー38を非規制状態から規制状態への戻し忘れが考えられ、通常の刈取脱穀作業時に発生する不具合を回避するために、ステップS34に進む。
ステップS34では、スイッチ38C等の入力を解除して手扱ぎ作業から通常の刈取脱穀作業にモードを変更し、ステップS31に戻る。これにより、エンジン62の出力回転は、低速回転数から定格回転数に増速される。
【0119】
一方、主変速レバー位置センサ16Sの入力値が定速域に有ると判断した場合には、ステップS32に進む。
【0120】
ステップS32では、走行装置2の走行速度Vを判断するために、走行装置2の走行速度Vを検出する走行速度センサ66Sの入力値が、0.3m/secよりも大きな高速域にあるか、0.3m/secよりも小さい低速域に有るか判断する。
【0121】
走行速度センサ66Sの入力値が高速域に有ると判断した場合は、補助作業者の手扱ぎレバー38を非規制状態から規制状態への戻し忘れが考えられ、通常の刈取脱穀作業時に発生する不具合を回避するために、ステップS34に進む。
ステップS34では、スイッチ38C等の入力を解除して手扱ぎ作業から通常の刈取脱穀作業にモードを変更し、ステップS31に戻る。これにより、エンジン62の出力回転は、低速回転数から定格回転数に増速される。
【0122】
一方、走行速度センサ66Sの入力値が低い速域に有ると判断した場合は、ステップS33に進み、エンジン62の出力回転を定格回転数よりも遅い低速回転数に維持する。
【0123】
(フィードチェンの第1停止方法)
図13には、第1駆動方法によって駆動されているフィードチェン12Bの第1停止方法が図示されている。
図13の上側から第1段には停止スイッチ6Dの操作状況が図示され、第2段にはフィードチェン12Bに伝動される回転速度の増減速を行なうフィードチェン用油圧式無段変速装置10のトラニオン軸10Fの位置状況が図示され、第3段にはフィードチェン12Bの速度VFが図示されている。また、
図13の第4段にはエンジン62の駆動状況が図示され、最下段には走行装置2と連動して駆動する刈取装置3に設けられた搬送装置34の速度VHが図示されている。なお、
図13においては、トラニオン軸10Fの中立位置を0としている。
【0124】
先ず、制御装置85は、停止スイッチ6Dの入力があったか否か判断し、停止スイッチ6Dの入力が無いと判断された場合は、第1駆動方法によってフィードチェン12Bを駆動する。
【0125】
一方、停止スイッチ6Dの入力があったと判断された場合、フィードチェン用油圧式無段変速装置10のトラニオン軸10Fに接続された第1変速モータ10Cを駆動して、トラニオン軸10Fの回転位置が中立位置となるように回転させて、フィードチェン用油圧式無段変速装置10の出力軸10Bの回転を停止させる。これによって、フィードチェン12Bへの駆動力が遮断され、フィードチェン12Bの回転は停止する。
また、停止スイッチ6Dの入力があったと判断された場合、エンジン62を停止させて走行用油圧式無段変速装置66に伝動される回転を遮断して、走行装置2、刈取装置4に設けられた搬送装置34の回転を停止する。
【0126】
なお、フィードチェン12Bをより速やかに停止させるために、トラニオン軸10Fを中立位置を超えて若干逆転側の位置まで回転させた後に中立位置に戻すのが好適である。
【0127】
(フィードチェンの第2停止方法)
図14には、第2駆動方法によって駆動されているフィードチェン12Bの第2停止方法が図示されている。なお、第1停止方法と同一部材には同一符号を付して重複した記載を省略する。
【0128】
先ず、制御装置85は、停止スイッチ6Dの入力があったか否か判断し、停止スイッチ6Dの入力が無いと判断された場合は、第2駆動方法によってフィードチェン12Bを駆動する。
【0129】
一方、停止スイッチ6Dの入力があったと判断された場合、フィードチェン用油圧式無段変速装置10のトラニオン軸10Fに接続された第2変速モータ10Eで駆動して、トラニオン軸10Fの回転位置が中立位置となるように回転させて、フィードチェン用油圧式無段変速装置10の出力軸10Bの回転を停止させる。これによって、フィードチェン12Bへの駆動力が遮断され、フィードチェン12Bの回転は停止する。
また、停止スイッチ6Dの入力があったと判断された場合、エンジン62を停止させて走行用油圧式無段変速装置66に伝動される回転を遮断して、走行装置2、刈取装置4に設けられた搬送装置34の回転を停止する。
【0130】
フィードチェン12Bを緊急停止するために、第2変速モータ10Eは、第1停止方法で使用される第1変速モータ10Cよりも減速比等を大きく設定し、第1変速モータ10Cでトラニオン軸10Fを回動させる場合と比べて、トラニオン軸10Fを高速で回転させることができる。また、フィードチェン12Bをより速やかに停止させるために、トラニオン軸10Fを中立位置を超えて若干逆転側位置となるまで回転させ、回転センサ68Gによって出力軸10Bの回転が停止し、再度出力軸10Bの回転が検出された後に、または、再度出力軸10Bの回転が検出され1〜2秒経過後にトラニオン軸10Fを逆転側位置から中立位置に回転させるのが好適である。
【0131】
フィードチェン12Bと挟扼杆12Cの間に詰まった穀桿等を除去するために、逆転スイッチ6Cを操作してフィードチェン12Bの回転方向を切換えることができる。この場合に、不用意なフィードチェン12Bの逆転を防止して補助作業者の安全を高めるために、逆転スイッチ6Cが操作されている場合にのみフィードチェン12Bを逆転駆動させたり、補助作業者がコンバインから離れる時間を確保するために、逆転スイッチ6Cが操作され1〜2秒経過した後にフィードチェン12Bを逆転駆動させたり、周囲の共同作業者にフィードチェン12Bの逆転状態を告知するために、フィードチェン12Bの逆転時にホーンを鳴らすのが好適である。
【0132】
また、停止スイッチ6Dが操作され、フィードチェン12B、エンジン62等が停止した後に、再びエンジン62を起動するためには、モードスイッチ6Bが解除され通常の刈取脱穀モードに切り換える必要がある。
【0133】
<上部カバーの半開放方法>
次に、本実施形態の上部カバー50Dを半開放状態にする方法について説明する。
図25の上側から第1段には停止スイッチ6Dの操作状況が図示され、第2段には上部カバー50Dをロックして閉じた状態に維持する第1フック50Gを駆動する第1モータ54の駆動状態が図示され、第3段には第1フック50Gのロック状態が図示され、第4段には第1フック50Gの全長よりも長く形成された第2フック50Hのロック状態が図示されている。なお、ロック状態とは、第1,2フック50G,50Hがピン50Kに係合する状態をいう。
【0134】
先ず、制御装置85は、停止スイッチ6Dの入力があったか否か判断し、停止スイッチ6Dの入力が無いと判断された場合は、第1モータ54の停止を維持する。
【0135】
一方、停止スイッチ6Dの入力があったと判断された場合には、第1モータ54を所定時間駆動して、第1フック50Gをロック状態から解除状態に移動させる。これにより、第1フック50Gとピン50Kの係合が外れ、上方への付勢手段によって上部カバー50Dは上方に向かって移動する。
上部カバー50Dが上方に所定高さ移動すると、第1フック50Gよりも長く形成されている第2フック50Hがピン50Kと係合して、上部カバー50Dの上方への移動が停止し上部カバー50Dの挟持桿12A側は半開放状態になる。
なお、第2フック50Hのロック状態は、開閉レバー50Eを操作することによって解除することができる。
【0136】
<扱胴の停止方法>
次に、本実施形態の扱室50の扱胴55の停止方法について説明する。
図26の上側から第1段には停止スイッチ6Dの操作状況が図示され、第2段にはエンジン62の駆動状況が図示され、第3段には扱胴55の扱胴軸55Aにエンジン62の回転の伝達を接続する扱胴クラッチ75を操作する第2モータ74Aの駆動状況が図示され、第4段には扱胴クラッチ75の接続状態が図示され、第5段には扱胴55の扱胴軸55Aを緊急停止する扱胴ブレーキ75を操作する第3モータ75Aの駆動状況が図示され、第6段には扱胴ブレーキ75の接続状態が図示されている。
【0137】
先ず、制御装置85は、停止スイッチ6Dの入力があったか否か判断し、停止スイッチ6Dの入力が無いと判断された場合は、エンジン62の駆動(回転)を維持し、第2モータ74A及び第3モータ75Aを駆動させない。
【0138】
一方、停止スイッチ6Dの入力があったと判断された場合には、エンジン62の駆動を停止させると共に、第2モータ74Aを駆動して扱胴クラッチ74を接続状態から接続解除状態に操作する。これによって、エンジン62よりも伝達下流側で扱胴軸55Aよりも伝達上流側に設けられているカウンタ軸71,72、プーリ71C,72A等と、扱胴軸55Aとの接続を解除して、エンジン62を停止した後も慣性で回転しているカウンタ軸71,72、プーリ71C,72A等の回転の扱胴軸55Aへの作用を遮断することができる。
【0139】
次に、第3モータ75Aを駆動して扱胴ブレーキ75を接続解除状態から接続状態に操作する。これによって、エンジン62を停止した後も慣性で回転している扱胴軸55Aに負荷を加えて扱胴軸55Aの回転を緊急停止することができる。なお、本実施形態においては、第2モータ74Aと、第3モータ75Aを停止スイッチ6Dに伝動させて同時に駆動させているが、第2モータ74Aを駆動させて扱胴クラッチ74を接続状態から接続解除状態に操作して、所定時間経過した後に、第3モータ75Aを駆動させて扱胴ブレーキ75を接続解除状態から接続状態にすることもできる。
【0140】
<エンジン、フィードチェン、扱胴及び上部カバーの操作方法>
次に、緊急停止の停止スイッチ6Dが操作された場合のエンジン62、フィードチェン12B、扱胴55、及び扱室50の上部カバー50Dの操作方法について説明する。
【0141】
(手扱ぎ作業時における操作方法)
図27には、手扱ぎ作業(非規制状態)時に、緊急停止の停止スイッチ6Dが操作された場合におけるエンジン62、フィードチェン12B、扱胴55、及び上部カバー50Dの操作方法が図示されている。
【0142】
先ず、ステップS1において、制御装置85は、停止スイッチ6Dの入力が有ったか否か判断する。停止スイッチ6Dの入力が有ったと判断した場合には、ステップS2に進み、停止スイッチ6Dの入力が無かったと判断した場合には、上述したフィードチェンの第2駆動方法でフィードチェン12B等を駆動する。
【0143】
ステップS2において、制御装置85は、補助作業者の作業環境の安全性を高めるために、ステップS2Aでエンジン62側のコントローラ62Cに停止信号を出力するか、エンジンキー62Aを回動させることにより、エンジン62への燃料の供給等を停止してエンジン62を停止し、ステップS2Bで第2変速モータ10Eを駆動してフィードチェン用油圧式無段変速装置10のトラニオン軸10Fを中立位置に回動してフィードチェン12Bの駆動を停止し、ステップS2Cで第2モータ74Aを駆動して扱胴クラッチ74の接続を解除して扱胴軸55Aに伝動されるエンジン62の回転を遮断する。
なお、ステップS2A〜S2Cの操作は、順序を変えて行なっても良く、また、同時に行なっても良い。
【0144】
次に、ステップS3において、制御装置85は、モードスイッチ6B、あるいはスイッチ38Cの故障に伴う誤作動に伴う、扱胴ブレーキ75の早期摩耗や、上部カバー50Dの開きに伴う排藁等の離散を防止するために、ステップS3Aで刈取装置4の駆動状態を判断し、ステップS3Bで走行装置2の駆動状態を判断し、ステップS3Cで掻込ペダル22の踏込み状態する。
【0145】
ステップS3Aでは、刈取装置4の駆動状態を判断するために、刈取装置4の搬送装置34の速度VHを検出する搬送速度センサ34Sの入力値が所定の範囲で有るか否か判断する。
搬送装置34が停止し搬送速度センサ34Sからの入力値が0m/secである場合には、刈取装置4は停止中と判断し、ステップS3Bに進み、搬送速度センサ34Sからの入力値が0m/secで無い場合には、刈取装置4は駆動中と判断し、ステップS2に戻る。
【0146】
ステップS3Bでは、走行装置2の駆動状態を判断するために、走行装置2の速度Vを検出する走行速度センサ66Sの入力値が所定の範囲で有るか否か判断する。
走行装置2の速度Vが0.3m/sec以下であり走行速度センサ66Sからの入力値が0.3m/sec以下である場合には、走行装置2の駆動状態が低速、停止中と判断し、ステップS3Cに進み、走行速度センサ66Sからの入力値が0.3m/secよりも大きい場合には、走行装置2の駆動状態が高速中と判断し、ステップS2に戻る。
【0147】
ステップS3Cでは、掻込ペダル22の踏込み状態を判断するために、掻込ペダル22の踏込み状態を検出する掻込ペダルセンサ22Sの入力値が所定の範囲で有るか否か判断する。
掻込ペダル22が踏込まれサイドクラッチ65Iの接続が解除され掻込ペダルセンサ22Sの入力値が0であると判断した場合には、ステップS4に進み、掻込ペダルセンサ22Sの入力値が0で無い場合には、掻込ペダル22が踏込まれていないと判断し、ステップS2に戻る。
なお、ステップS3A〜S3Cの操作は、順序を変えて行なっても良く、また、同時に行なっても良い。
【0148】
ステップS4において、制御装置85は、扱胴55の回転を速やかに停止するために、第3モータ75Aを駆動して扱胴ブレーキ75で扱胴軸55Aにブレーキを掛ける。
【0149】
次に、ステップS5において、制御装置85は、脱穀部搬送装置12に挟まった異物等を除去するために、第1モータ54を駆動して第1フック50Gとピン50Kの係合を解除した後に第2フック50Hとピン50Kを係合させて上部カバー50Dを半開放にする。
なお、本実施形態にあっては、第1モータ54を駆動して第1フック50Gとピン50Kの係合を解除して上部カバー50Dを半開放にした後に、手動で開閉レバー50Eを操作して第2フック50Hとピン50Kを解除して上部カバー50Dを全開にしているが、第1モータ54を駆動して第1フック50G及び第2フック50Hと、ピン50Kの係合を解除して上部カバー50Dを全開にすることもできる。
【0150】
次に、ステップS6において、制御装置85は、手動で扱胴55を回転させて脱穀部搬送装置12に挟まった異物等を速やかに除去するために、ステップS6Aでエンジン62の停止状態を判断し、ステップS6Bで扱胴軸55Aの停止状態を判断し、ステップS6Cで扱室50の上部カバー50Dの開閉状態を判断し、ステップS6Dで刈取クラッチ65Fと脱穀クラッチ90Aの接続状態を判断する。
【0151】
ステップS6Aでは、エンジン62の停止状態を判断するために、エンジン62内に燃料を供給するエンジン62に実装されている燃料供給センサ62Bの入力値が所定の範囲で有るか否か判断する。
エンジン62への燃料供給が行なわれておらず燃料供給センサ62Bからの入力値が0である場合には、エンジン62が停止中と判断し、ステップS6Bに進み、燃料供給センサ62Bからの入力値が0でない場合には、エンジン62が駆動中と判断し、ステップS4に戻る。
【0152】
ステップS6Bでは、扱胴軸55Aの停止状態を判断するために、扱胴軸55Aの回転数を検出する扱胴軸回転センサ55Sの入力値が所定の範囲で有るか否か判断する。
扱胴軸回転センサ55Sからの入力値が0rpmである場合には、扱胴軸55Aが停止中と判断し、ステップS6Cに進む、扱胴軸回転センサ55Sからの入力値が0rpmでない場合には、扱胴軸55Aが回転中と判断し、ステップS4に戻る。
【0153】
ステップS6Cでは、扱室50の上部カバー50Dの開閉状態を判断するために、軸50Fに装着されたフック回転センサ50Sの入力値が所定の範囲で有るか否か判断する。
フック回転センサ50Sの入力値が所定値(略30度)以上であった場合には、上部カバー50Dが半開放状態であると判断し、ステップS6Dに進み、フック回転センサ50Sの入力値が所定値以下であった場合には、上部カバー50Dが閉じていると判断し、ステップS4に戻る。
【0154】
ステップS6Dでは、刈取クラッチ65Fと脱穀クラッチ90Aの接続状態を判断するために、刈取クラッチ65Fを駆動する掻込ペダル22の掻込ペダルセンサ22Sの入力値と、脱穀クラッチ90Aを駆動する操作席6の脱穀スイッチ6Eの入力値が所定の範囲で有るか否か判断する。
掻込ペダルセンサ22Sと脱穀スイッチ6Eの入力値が0である場合には、刈取クラッチ65Fと脱穀クラッチ90Aの接続が解除された判断し、ステップS7に進み、掻込ペダルセンサ22Sと脱穀スイッチ6Eの入力値が0でない場合には、刈取クラッチ65Fと脱穀クラッチ90Aが接続中であると判断し、ステップS4に戻る。
なお、ステップS6A〜S6Dの操作は、順序を変えて行なっても良く、また、同時に行なっても良い。
また、ステップS6Aにおいて、エンジン62の停止状態の判断は、エンジン62の出力軸の回転数に基づいて行うこともできる。すなわち、エンジン62の出力軸の回転数が0rpmであることにより、エンジン62が停止中であると判断しても良い。さらに、ステップS6Cにおいて、上部カバー50Dの開閉状態の判断は、上部カバー50Dのピン101まわりの回転角度に基づいて行うこともできる。
【0155】
ステップS7において、制御装置85は、手動で扱胴55を回転させて脱穀部搬送装置12に挟まった異物等を速やかに除去するために、第3モータ75Aを逆転方向に駆動して扱胴ブレーキ75による扱胴軸55Aへのブレーキの作動を解除する。
【0156】
(通常の刈取脱穀作業時における操作方法)
図28には、通常の刈取脱穀作業(規制状態)時に、緊急停止の停止スイッチ6Dが操作された場合におけるエンジン62、フィードチェン12B、扱胴55、及び上部カバー50Dの操作方法が図示されている。
【0157】
先ず、ステップS10において、制御装置85は、停止スイッチ6Dの入力が有ったか否か判断する。停止スイッチ6Dの入力が有ったと判断した場合には、ステップS11に進み、停止スイッチ6Dの入力が無かったと判断した場合には、上述したフィードチェンの第1駆動方法でフィードチェン12Bを駆動する。
【0158】
ステップS11において、制御装置85は、脱穀部搬送装置12内への異物の侵入による周辺機器の破損を防止するために、ステップS11Aでエンジンキー62Aを回動させてエンジン62への燃料の供給等を停止してエンジン62を停止し、ステップS11Bで第1変速モータ10Cを駆動してフィードチェン用油圧式無段変速装置10のトラニオン軸10Fを中立位置に回動してフィードチェン12Bの駆動を停止する。なお、ステップS11A、11Bの操作は、順序を変えて行なっても良く、また、同時に行なっても良い。
【0159】
次に、ステップ12において、制御装置85は、通常の刈取脱穀作業時における緊急停止の停止スイッチ6Dの誤操作や、上部カバー50Dの開きに伴う排藁等の離散を防止するために、ステップS12Aで刈取装置4の駆動状態を判断し、ステップS12Bで走行装置2の駆動状態を判断し、ステップS12Cで脱穀装置3の駆動状態を判断し、ステップS12Dでグレンタンク5に貯留された穀粒の排出状態を判断する。
【0160】
ステップS12Aでは、刈取装置4の駆動状態を判断するために、刈取装置4の搬送装置34の速度VHを検出する搬送速度センサ34Sの入力値と、刈取後フレーム28の上下方向の回転位置を検知する刈取位置センサ36Sの入力値が所定の範囲で有るか否か判断する。
搬送装置34が停止し搬送速度センサ34Sからの入力値が0m/secであり、刈取後フレーム28が所定の退避位置よりも上方に移動し刈取位置センサ36Sからの入力値が所定値よりも大きい場合には、刈取装置4は停止中と判断し、ステップS12Bに進み、搬送速度センサ34Sからの入力値が0m/secで無い場合には、刈取装置4は駆動中と判断し、ステップS11に戻る。
【0161】
ステップS12Bでは、走行装置2の駆動状態を判断するために、走行装置2の速度Vを検出する走行速度センサ66Sの入力値と、副変速レバー15の位置を検出する副変速レバー位置センサ15Sの入力値が所定の範囲で有るか否か判断する。
走行装置2の速度Vが0.3m/sec以下であり走行速度センサ66Sからの入力値が0.3m/sec以下である場合や、走行装置2が後進しており走行速度センサ66Sからの入力値が後進走行を示す0m/sec以下である場合や、副変速レバー15が低速、中立位置にあり副変速レバー位置センサ15Sからの入力値が低速、中立位置を示す場合には、走行装置2の駆動状態が低速、停止中と判断し、ステップS12Cに進み、走行速度センサ66Sからの入力値が0.3m/secよりも大きい場合には、走行装置2の駆動状態が高速中と判断し、ステップS11に戻る。
【0162】
ステップS12Cで、脱穀装置3の駆動状態を判断するために、揺動選別装置52上の穀粒等の移送量を検出する層厚センサ52Sの入力値と、フィードチェン12B上の搬送される穀桿の有無を検出する穀桿センサ34Cの入力値が所定の範囲で有るか否か判断する。
揺動選別装置52上に移送される穀粒がなく層厚センサ52Sからの入力値が0mmである場合や、フィードチェン12B上に搬送される穀桿がなく穀桿センサ34Cからの入力値が0である場合には、脱穀装置3が停止中と判断し、ステップS12Dに進み、層厚センサ52Sからの入力値が0mmよりも大きい場合には、脱穀装置3が駆動中と判断し、ステップS11に戻る。
【0163】
ステップS12Dで、グレンタンク5に貯留された穀粒の排出状態を判断するために、グレンタンク5の下部に設けられた排出螺旋39Aの回転数を検出する排出螺旋センサ39Sの入力値と、排出筒7の張出状態を検出する排出筒センサ7Sの入力値が所定の範囲で有るか否か判断する。
排出螺旋39Aが所定の回転数で回転し穀桿センサ34Cからの入力値が所定の回転数以上である場合や、排出筒7が収納位置から左右方向に回転して排出筒センサ7Sからの入力値が所定の角度以上である場合には、グレンタンク5と、排出筒7が穀粒の排出中であると判断し、ステップS13に進み、穀桿センサ34Cからの入力値が0rpmである場合には、グレンタンク5と、排出筒7が停止中と判断し、ステップS11に戻る。
なお、ステップS12A〜S12Dの操作は、順序を変えて行なっても良く、また、同時に行なっても良い。
【0164】
ステップS13において、制御装置85は、作業環境の安全性を高めるために、第2モータ74Aを駆動して扱胴クラッチ74の接続を解除して扱胴軸55Aに伝動されるエンジン62の回転を遮断し、ステップS14に進む。なお、ステップS13と、ステップS14は、扱胴55の回転を速やかに停止するために行なうステップであるが、扱動ブレーキ75の耐久性を高めるためにステップS13と、ステップS14をスキップしてステップS12に引続いてステップS15を行なうこともできる。
【0165】
ステップS14において、制御装置85は、扱胴55の回転を速やかに停止するために、第3モータ75Aを駆動して扱胴ブレーキ75で扱胴軸55Aにブレーキを掛け、ステップS15に進む。
【0166】
次に、ステップS15において、制御装置85は、脱穀部搬送装置12に挟まった異物等を除去するために、第1モータ54を駆動して第1フック50Gとピン50Kの係合を解除した後に第2フック50Hとピン50Kを係合させて上部カバー50Dを半開放にする。
【0167】
<緊急停止解除時のエンジン、フィードチェン、扱胴及び上部カバーの操作方法>
次に、緊急停止の停止スイッチ6Dの操作が解除された場合のエンジン62、フィードチェン12B、扱胴55、及び扱室50の上部カバー50Dの操作方法について説明する。
【0168】
図29には、手扱ぎ作業(非規制状態)及び通常の刈取脱穀作業(規制状態)時に、緊急停止の停止スイッチ6Dが操作が解除された場合におけるエンジン62、フィードチェン12B、扱胴55、及び上部カバー50Dの操作方法が図示されている。
【0169】
先ず、ステップS20において、制御装置85は、停止スイッチ6Dの再入力により緊急停止が解除されたか否か判断する。停止スイッチ6Dの再入力が有り、緊急停止が解除された判断した場合には、ステップS21に進み、停止スイッチ6Dの再入力が無く、緊急停止が解除されていないと判断した場合には、上述した手扱ぎ作業時における操作方法等を引続いて行なう。
なお、停止スイッチ6Dには、第1回目の入力による緊急停止状態を第2回目の入力が有るまで維持するために、オルタネイト動作式のスイッチを使用するのが好適であり、更には、緊急停止操作と緊急停止解除操作にそれぞれ異なる動作を要するスイッチを使用することが好ましい。例えば、停止スイッチ6Dの操作部を押し込むことによりこの押し込みが維持されて緊急停止状態となり、緊急停止状態の停止スイッチ6Dの操作部を捻ることにより、操作部が押し込みから開放されて緊急停止状態が解除される態様のスイッチを採用すれば、不用意に緊急停止状態が解除されることを防止できる。
【0170】
ステップS21において、制御装置85は、排藁等の外部への離散を防止し、作業環境の安全性を高めるために、手動で上部カバー50Dを押し下げて、第1フック50Gとピン50Kを係合させ、ステップS22に進む。
【0171】
ステップS22において、制御装置85は、扱胴55の回転を速やかに開始するために、第3モータ75Aを駆動して扱胴ブレーキ75による扱胴軸55Aへのブレーキの作動を解除し、ステップS23に進む。
【0172】
ステップS23において、制御装置85は、扱胴55の扱胴軸55Aにエンジン62の回転を伝動するために、第2モータ74Aを駆動して扱胴クラッチ74の接続し、ステップS24に進む。
【0173】
ステップS24において、制御装置85は、フィードチェン12Bを速やかに駆動するために、第1変速モータ10Cあるいは第2変速モータ10Eを駆動してフィードチェン用油圧式無段変速装置10のトラニオン軸10Fを所定位置に回動し、ステップS25に進む。
【0174】
ステップS24において、制御装置85は、エンジンキー62Aを回動させてエンジン62への燃料の供給等を再開してエンジン62を駆動させる。
なお、ステップS23〜S25の操作は、順序を変えて行なっても良く、また、同時に行なっても良い。