(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記評価装置は各被検体の表面特性を検査した際の各出力信号を蓄積する記憶手段を備え、前記しきい値は蓄積された出力信号に基づいて更新されることを特徴とする請求項1に記載の表面特性検査方法。
前記初期オフセット値と前記検査オフセット値の差である前記差分電圧が、表面特性検査装置の使用条件に基づいて設定された許容値を超えたときには被検体の表面特性の検査を行わないことを特徴とする請求項3に記載の表面特性検査方法。
前記評価工程は、前記交流ブリッジ回路から出力された出力信号の変化に基づいて、前記検査検出器への被検体の配置状態を検出する工程を含み、前記検査検出器への被検体の配置が検出された後、被検体の表面特性の評価が実行されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の表面特性検査方法。
前記表面特性検査装置は複数個の検査検出器及び切換手段を備えており、前記切換手段は、前記交流ブリッジ回路から出力された出力信号の変化に基づいてブリッジ回路を構成している検査検出器から被検体が取り出されたことを検出した後に、検査検出器の切換えを行うことを特徴とする請求項6に記載の表面特性検査方法。
前記表面特性検査装置は複数個の検査検出器及び切換手段を備え、前記評価装置は記憶手段を備えており、前記記憶手段は、被検体の検査を行った検査検出器の識別情報と被検体の表面特性の検査データとを関連付けて記憶することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載の表面特性検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1実施形態]
(表面特性検査装置)
図1(A)に示すように、本発明の実施形態による表面特性検査装置1は、交流電源10、交流ブリッジ回路20及び評価装置30を備えている。
【0036】
交流電源10は、交流ブリッジ回路20に周波数が可変の交流電力を供給可能に構成されている。
【0037】
交流ブリッジ回路20は、可変抵抗21、被検体Mに渦電流を励起するようにコイルを配置可能に形成された検査検出器23及び被検体Mと同一構造の基準検体Sを配置可能に形成され、検査検出器23からの出力と比較する基準となる基準状態を検出する基準検出器22を備えている。ここで、「被検体Mと同一構造」とは、材質、形状が同一のことを意味し、表面処理の有無を問わない。
【0038】
可変抵抗21は、抵抗R
Aを抵抗R1と抵抗R2とに分配比γを可変に分配することができるように構成されている。抵抗R1、抵抗R2は、基準検出器22及び検査検出器23とともにブリッジ回路を構成している。本実施形態では、抵抗R1と抵抗R2とを分配する点A及び基準検出器22と検査検出器23との間の点Bが評価装置30の交流電源10に接続され、抵抗R1と基準検出器22との間の点C及び抵抗R2と検査検出器23との間の点Dが増幅器31に接続されている。また、ノイズの低減のため、基準検出器22及び検査検出器23側が接地されている。
【0039】
評価装置30は、交流ブリッジ回路20から出力される電圧信号を増幅する増幅器31、全波整流を行う絶対値回路32、直流変換を行うローパスフィルタ(LPF)33、交流電源10から供給される交流電圧と増幅器31から出力される電圧の位相を比較する位相比較器34、交流電源10から供給される交流電圧の周波数を調整する周波数調整器35、R1とR2の分配を最適化する非平衡調整を行うとともに、LPF33からの出力に基づいて被検体Mの表面状態の良否を判断する判断手段36及び判断手段36による判断結果を表示、警告する表示手段37、評価位置の温度を検出する温度測定手段38を備えている。また、判断手段36内部または図示しない領域に記憶手段を備えている。
【0040】
増幅器31は、点C及び点Dに接続され、点Cと点Dとの間の電位差が入力される。また、絶対値回路32、LPF33の順に判断手段36に接続されている。位相比較器34は、交流電源10、増幅器31及び判断手段36に接続されている。周波数調整器35は、交流電源10及び増幅器31に接続されている。また、判断手段36は、制御信号を出力することにより、交流ブリッジ回路20の点Aの位置、即ち、抵抗R1と抵抗R2の分配比γを変更することができるように構成されており、これにより、後述する可変抵抗設定工程が実行される。
【0041】
温度測定手段38は、非接触式の赤外センサや熱電対などからなり、被検体Mの表面の温度信号を判断手段36に出力する。判断手段36は、温度測定手段38で検出された被検体Mの温度が所定範囲内である場合に、被検体Mの表面処理状態の良否を判断し、温度測定手段38で検出された温度が所定範囲外である場合に、被検体Mの表面処理状態の良否の判断を行わない。これにより、被検体Mの温度が検査の精度に影響を及ぼすような場合に被検体の表面処理状態の良否の判断を行わないようにすることができるので、精度の高い検査を行うことができる。ここで、熱電対などで評価位置Tsの温度を測定し、被検体Mの表面の温度を代表する温度として被検体Mの表面処理状態の良否を判断するか否かの判断を行う構成を採用することもできる。
【0042】
検査検出器23及び検査検出器23と同様の構成の基準検出器22として、被検体Mの評価部を挿通可能なコアの外周にコイルが巻回されて形成され、コイルを被検体Mの表面と対向させて近接させ被検体Mに渦電流を励起可能な検出器を用いる。すなわち、このコイルは、被検体の表面特性検査領域を囲むように対向されて巻回されている。ここで、被検体の表面特性検査領域を囲むとは、少なくとも表面特性検査領域の一部を包囲する(包むよう囲む)ことで、表面特性検査領域に渦電流を励起することを含むことを意味している。
【0043】
ここでは、被検体Mとして歯車部を備えた被検体、例えば、歯車部が表面処理されたギヤGの表面特性を検査するために用いる検査検出器23について説明する。検査検出器23は、
図1(B)に示すように、ギヤGの歯車部を覆うように形成された円筒状のコア23aと、コア23aの外周面に巻回されたコイル23bと、を備えている。コア23aは非磁性材料、例えば、樹脂により形成されている。なお、コア23aの形状は、ギヤGを内側に配置できれば円筒状に限らない。なお、基準検出器22では、被検体Mは配置されず、基準出力を出力するための基準検体Sを配置することができる。
【0044】
本発明の検査検出器23は、渦電流の反応を高精度に捉えて表面特性を評価することを特徴としているため、表面特性を検査したい領域に渦電流が流れるように、被検体Mに対して配置することが好ましい。つまり、コイル23bの巻方向が渦電流を流したい方向と同方向となるように配置することが好ましい。
【0045】
ギヤGはショットピーニング処理により歯車部に残留応力層が形成される。被検体MとしてギヤGを評価する場合には、歯先だけではなく、歯面及び歯底の表面特性を評価することが好ましい。そのため、コイル23bの巻方向がギヤGの回転軸とほぼ直交するようにコイル23bを配置するとよい。これにより、回転軸の方向に磁界ループが発生するため、ギヤGの回転方向に渦電流を励起させることができるので、歯先だけではなく、歯面及び歯底の表面特性を評価することができる。従来の接触型の検出器では、歯の形状に合わせて数種類の検出器を用意する必要があるとともに、接触部近傍の表面特性しか検査することができなかったが、検査検出器23によれば、単一の検出器で広い範囲の表面特性を一度に検査することができる。
【0046】
検査検出器23は、コイル23bが形状を維持できればコア23aを備えていなくてもよい。このようなコイル23bは、例えば、硬化性のエポキシ樹脂等にて、空芯にて巻回したエナメル銅線を接着、若しくは、熱にて硬化する作用のある融着エナメル銅線を用いて空芯にて巻回した後に熱風や乾燥炉等の熱にて硬化させて形成することができる。
【0047】
コイル23bが被検体Mの検査対象面を囲むように対向させて検査検出器23を配置し、交流電源10によりコイル23bに所定の周波数の交流電力を供給すると交流磁界が発生し、被検体Mの表面に交流磁界に交差する方向に流れる渦電流が励起される。渦電流は残留応力層の電磁気特性に応じて変化するため、残留応力層の特性(表面処理状態)に応じて増幅器31から出力される出力波形(電圧波形)の位相及び振幅(インピーダンス)が変化する。この出力波形の変化により表面処理層の電磁気特性を検出し、検査を行うことができる。
【0048】
検査検出器23の外方であって被検体Mを囲んで配置される磁気シールド23cを設けることもできる。磁気シールド23cを用いると、外部磁気を遮蔽することができるため、電磁気特性の検出感度を向上させることができ、表面処理状態に対応する電磁気特性の検出感度が向上するので、被検体Mの表面処理状態をより精度良く評価することができる。
【0049】
(交流ブリッジ回路からの出力)
次に、非平衡状態に調整された交流ブリッジ回路20からの出力について、
図2の等価回路を参照して説明する。基準検出器22には基準出力を出力するための基準検体Sが近接され、検査検出器23には表面処理状態の良否を判定すべき被検体Mが近接されている。ここで、基準検体Sは被検体Mと同一構造であり、好ましくは表面処理を行っていない未処理品を用いる。
【0050】
可変抵抗R
Aの分配比をγとした場合、抵抗R1はR
A/(1+γ)、抵抗R2はR
Aγ/(1+γ)となる。基準検出器22のインピーダンスをR
S+jωL
S、検査検出器23のインピーダンスをR
T+jωL
Tとする。また、点Aの電位をEとし、基準検出器22、検査検出器23に各検体(基準検体S、被検体M)を近接させていないときのブリッジの各辺に流れる励磁電流をそれぞれi
1、i
2、各検体を基準検出器22、検査検出器23に近接させることにより磁気量が変化し、その変化量に応じて流れる電流をそれぞれiα、iβとする。このときの基準検出器22及び検査検出器23の電位E1、E2及び励起電流i
1、i
2は以下の式(1)〜(4)で表される。
【0055】
増幅器31に出力される電圧はE1、E2の差分であり、次式で表される。
【0057】
式(3)〜(5)より次式が導かれる。
【0059】
式(6)の右辺を次の成分A、Bに分けて差分電圧の各成分について考える。
成分A:
成分B :
【0060】
成分Aは、各検出器成分:(R
S+jωL
S)、(R
T+jωL
T)、各検出器に各検体が近接したときに変化する電流量:iα、iβにより構成される。iα、iβは各検体の透磁率、導電率などの電磁気特性に起因する検体を通る磁気量によって大きさが変化する。このため各検出器から発生する磁気量を左右する励磁電流i
1、i
2を変えることでiα、iβの大きさを変化させることができる。また、式(3)、式(4)より、励磁電流i
1、i
2は可変抵抗の分配比γによって変わるので、可変抵抗の分配比γを調整することにより成分Aの大きさを変化させることができる。
【0061】
成分Bは、各検出器成分:(R
S+jωL
S)、(R
T+jωL
T)、可変抵抗の分配比γで分けられた抵抗のパラメーターにより構成される。このため、成分A同様に可変抵抗の分配比γの調整により成分Bの大きさを変化させることができる。
【0062】
被検体Mを所定の位置に配置し、交流電源10により検査検出器23のコイル23bに所定の周波数の交流電力を供給すると、被検体Mの表面に交流磁界に交差する方向に流れる渦電流が励起される。渦電流は残留応力層の電磁気特性に応じて変化するため、残留応力層の特性(表面処理状態)に応じて増幅器31から出力される出力波形(電圧波形)の位相及び振幅(インピーダンス)が変化する。この出力波形の変化により残留応力層の電磁気特性を検出し、表面処理層の検査を行うことができる。
【0063】
ブリッジの増幅器31から出力される信号は、基準検出器22及び検査検出器23の電圧波形の差分面積を抽出した信号であり、検出器を流れる電流(励磁電流)を一定にする回路構成になっている。また、抽出された電圧信号は電力信号として考えることができる。
また、検出器へ供給する電力は常に一定となる。これにより、被検体Mへ供給する磁気エネルギーも一定とすることができる。
【0064】
(表面特性検査方法)
次に、表面特性検査装置1による被検体の表面特性検査方法について
図3を参照して説明する。
【0065】
まず、準備工程S1では、表面特性検査装置1と基準検体Sとを用意する。
【0066】
次に、可変抵抗設定工程S2を行う。可変抵抗設定工程S2では、まず、交流電源10から交流ブリッジ回路20に交流電力を供給する。この状態で、表面特性検査装置1による検体の検出感度が高くなるように、可変抵抗21の分配比γを調整する。即ち、検査検出器23に検体を近接させずに、交流ブリッジ回路20の出力信号が小さくなるように、可変抵抗21の分配比γを調整する。このように可変抵抗21を設定しておくことにより、検査検出器23に近接した被検体Mの表面処理状態が不良である場合と、表面処理状態が良好である場合の出力信号の差異が大きくなり、検出精度を高くすることができる。具体的には、オシロスコープなど波形表示機能を持つ表示装置(例えば、判断手段36が備えている)にて交流ブリッジ回路20からの出力信号の電圧振幅、またはLPF33からの電圧出力をモニターし、出力が小さくなるように分配比γを調整する。好ましくは、出力が最小値又は極小値(局所平衡点)をとるように、可変抵抗21の分配比γを調整して、設定する。
【0067】
可変抵抗21の分配比γの調整は、差分電圧(E2−E1)を小さくすることにより表面状態の差異に応じた出力差を増大させ、検査精度を向上させるために行われる。上述したように成分A、Bは分配比γを調整することにより変化するため、基準検出器22、検査検出器23のインピーダンス(R
S+jωL
S)、(R
T+jωL
T)に応じて、可変抵抗21の分配比γを調整し、交流ブリッジ回路20からの出力である差分電圧(E2−E1)を小さくすることができる。これにより、基準検出器22と検査検出器23との特性の違いを軽減して、被検体Mの本来の特性を少しでも大きく抽出することができるので、検査精度を向上させることができる。
【0068】
周波数設定工程S3では、基準検体Sを基準検出器22に近接させた状態で、交流電源10から交流ブリッジ回路20に交流電力を供給し、周波数調整器35により交流ブリッジ回路20に供給する交流電力の周波数を変化させて交流ブリッジ回路20から電圧振幅出力またはLPF33からの電圧出力をモニターする。
【0069】
周波数調整器35は、周波数調整器35において設定された初期周波数f1になるように交流電源10へ制御信号を出力し、周波数f1における増幅器31からの出力電圧Ef1が周波数調整器35に入力され、記憶される。続いて、周波数f1よりも所定の値、例えば100Hz高い周波数f2になるように交流電源10へ制御信号を出力し、周波数f2における増幅器31からの出力電圧Ef2が周波数調整器35に入力され、記憶される。
続いて、Ef1とEf2との比較を行い、Ef2>Ef1であれば、周波数f2よりも所定の値高い周波数f3になるように制御信号を出力し、周波数f3における増幅器31からの出力電圧Ef3が周波数調整器35に入力され、記憶される。そして、Ef2とEf3との比較を行う。これを繰り返し、Efn+1<Efnとなったときの周波数fn、つまり出力が最大となる周波数fnを、しきい値設定工程S4及び交流供給工程S5で用いる周波数として設定する。これにより、表面処理状態、形状などが異なりインピーダンスが異なる被検体Mに対応して交流ブリッジ回路20からの出力を大きくする周波数を一度の操作により設定することができる。最適な周波数は、被検体の材料、形状、表面処理状態により、変化することとなるが、これがあらかじめわかっている場合、周波数の設定は不要である。これにより、表面処理状態の変化に出力が敏感に対応し、検査の感度を向上させることができる。
ここで、周波数設定工程S3は、可変抵抗設定工程S2よりも先に実施することもできる。
【0070】
しきい値設定工程S4では、被検体Mの表面状態の良否を判断するために用いるしきい値を設定する。ここでは、被検体Mの評価開始時に用いるためあらかじめ設定しておくしきい値(以下、「初期しきい値」という。)の設定方法について説明する。まず、基準検体Sを基準検出器22に近接させ、周波数設定工程S3において設定された周波数の交流電力を交流電源10から交流ブリッジ回路20に供給する。交流ブリッジ回路20から出力された電圧出力は、増幅器31で増幅され、絶対値回路32において全波整流を行い、LPF33において直流変換を行い、判断手段36へ出力される。未処理の被検体と表面状態が良好である表面処理後の被検体とをそれぞれ10〜数10個程度用意し、検査検出器23にそれぞれの被検体を近接させたときに判断手段36へ出力された出力値から、出力値の分布データを取得する。
図4に模式的に示す。
【0071】
初期しきい値Ethiは、検査検出器23に未処理の被検体Mを配置したときの出力信号EA及び検査検出器23に表面状態が良好である表面処理後の被検体Mを配置したときの出力信号EBに基づいて、それぞれの出力信号のばらつきを考慮し、次式により定める。
図4に未処理の被検体の出力信号EA及び表面処理後の被検体の出力信号EBの分布を模式的に示す。
【0072】
(数7)
Ethi=(EAav・σB+EBav・σA)/(σA+σB)
EAav:出力信号EAの平均値、EBav:出力信号EBの平均値、σA:出力信号EAの標準偏差、σB:出力信号EBの標準偏差
【0073】
これにより、少ない測定数により精度の高い適切なしきい値を設定することができる。この初期しきい値Ethiをしきい値として設定し、判断手段36に記憶させておく。ここで、初期しきい値Ethiは、出力信号EAの最大値EAmax及び出力信号EBの最小値EBminとの間に、
EAmax<Ethi<EBmin
の関係を持つ。
なお、上記関係が成立しない場合にも、出力信号EA及び出力信号EBのばらつき、分布から大きく外れた特異的な測定値がないか、など考慮して、適切な初期しきい値Ethiを設定することができる。例えば、同じ被検体の未処理状態、表面処理状態を複数個測定し、これを用いて初期しきい値Ethiを再度算出する等の方法がある。
【0074】
更に、しきい値設定工程S4では検査検出器23に被検体Mが近接していない状態での出力信号を初期オフセット値Eiとして判断手段36に記憶させておく。
【0075】
交流供給工程S5では、周波数設定工程S3において設定された周波数の交流電力を交流電源10から交流ブリッジ回路20に供給する。ここで、基準検体Sは基準検出器22に近接している。
【0076】
次いで、配置工程S6では、表面処理状態の良否を判定すべき被検体Mを検査検出器23に近接させ、被検体Mに渦電流が励起されるように配置する。このとき、交流ブリッジ回路20から電圧出力信号が出力され、出力信号は、増幅器31で増幅され、絶対値回路32において全波整流され、LPF33において直流変換される。
【0077】
温度測定手段38は、被検体Mが検査検出器23に近接する前、または被検体Mの配置後に被検体Mの表面の温度を測定し、被検体Mの表面の温度信号を判断手段36に出力する。
【0078】
検査状態判断工程S7では、位相比較器34により交流電源10から供給される交流電力の波形と交流ブリッジ回路20から出力される交流電圧波形を比較し、それらの位相差を検出する。この位相差をモニターすることにより、検査状態が良好である(例えば、検査検出器23と被検体Mの位置ずれがない)か否かを判断することができる。交流ブリッジ回路20からの出力が同じであっても、位相差が大きく変化した場合には、検査状態に変化があり、検査が適正に行われていない可能性があると判断することができる。また、判断手段36は、温度測定手段38で検出された被検体Mの温度が所定範囲内である場合に、被検体Mの表面処理状態の良否を判断し、温度測定手段38で検出された温度が所定範囲外である場合に、被検体Mの表面処理状態の良否の判断を行わない。ここで、所定の温度範囲は、被検体Mの温度変化が検査に実質的に影響を及ぼさない温度範囲であり、例えば、0〜60℃と設定することができる。被検体Mの表面の温度が所定の温度範囲外であった場合には、被検体Mが所定の温度範囲内になるまで待機する、被検体Mにエアを吹き付ける、被検体Mの検査を行わず別のラインに移動させる、などを行うことができる。
【0079】
良否判断工程S8では、LPF33において直流変換された信号が判断手段36に入力され、判断手段36は、入力された信号に基づいて被検体Mの表面状態の良否を判断する。つまり、本工程は交流ブリッジ回路20から出力された出力信号に基づいて、被検体Mの表面特性を評価する評価工程である。判断手段36による判断結果は、表示手段37により表示され、表面状態が不良である場合には警告する。
【0080】
被検体Mの表面処理状態の良否の判断は、LPF33からの出力値(測定値)と、しきい値設定工程S4において設定されたしきい値と、を比較することにより行われる。判断手段36はLPF33からの出力値(測定値)がしきい値を超えている場合には、表面状態が良好であると判断し、LPF33からの出力値(測定値)がしきい値以下である場合には、表面状態が不良であると判断する。
【0081】
測定値、良否判断結果、測定日時、検査状態(温度、湿度、後述する差分電圧ΔEなど)などの検査データは、ロット、製造番号、履歴などの各被検体Mの識別情報と関連付けて評価装置30の判断手段36、または、図示しない記憶手段に記憶され、必要に応じて呼び出すことができる。すなわち、被検体には、それぞれの測定データと対応付けられる識別表示が直接若しくは間接的に付与されるようにしてもよい。例えば、測定データに対応付けられたバーコードや製品管理番号を被検体に直接的に表したり、間接的に表したりしてもよい。このように、バーコード、製品管理番号等の識別表示に測定データが対応付けられることにより、表面特性検査装置により検査した被検体の表面処理の状態を流通後に追跡可能な状態にすることができ、トレーサビリティを担保することができる。
【0082】
以上の工程により、被検体Mの表面処理状態の良否を簡単かつ高精度に検査することができる。検査を継続するには、被検体Mのみを交換して、配置工程S6、検査状態判断工程S7、良否判断工程S8を繰り返し行えばよい。被検体Mの種類、表面処理の種類などを変更する場合には、再度、可変抵抗設定工程S2、周波数設定工程S3、しきい値設定工程S4を実施する。
【0083】
検査検出器23は、被検体Mの表面を流れる渦電流の変化を捉えることにより、表面抵抗変化を間接的に捉えている。ここで、表面処理としてショットピーニング処理を行った場合には、渦電流の流量が変化する要因としてはショットピーニングによる歪みや組織の微細化、転位が挙げられるが、これらは測定環境の温度変化(0℃〜40℃)程度ではほぼ一定である。検査検出器23で検出する磁気変化は、渦電流の反磁界の変化によるものであり、渦電流が変化する要因が、測定環境の温度変化の影響を受けにくいことから、温度変化による検査精度への影響を小さくすることができる。
基準検出器22において基準状態を検出するために、被検体Mと同一構造の基準検体Sを用いているため、温度、湿度、磁気などの検査環境の変化により出力値が変動しても、その影響は被検体Mと同等になる。これにより、温度、湿度、磁気などの検査環境の変化による出力値の変動をキャンセルすることができ、測定精度を向上させることができる。特に、基準検体Sとして表面処理を行っていない未処理品を用いると、被検体Mとの表面状態の差に基づいた出力を大きくすることができるので、更に測定精度を向上させることができるとともに、しきい値を設定しやすく、好ましい。
【0084】
(しきい値の更新設定)
初期しきい値Ethiは、検査検出器23に未処理の被検体Mを配置したときの出力信号EA及び検査検出器23に表面状態が良好である表面処理後の被検体Mを配置したときの出力信号EBの差が大きい場合などには、出力信号EAの平均値EAav側に近づいて、良品と判定される出力の幅が大きくなる可能性がある。そのため、更に精度の高いしきい値を設定したい場合には、初期しきい値Ethiを用いて繰り返し測定を行うことにより蓄積された数多くの検査データに基づいて、しきい値を設定し直すことができる。このとき新たに設定されるしきい値を更新しきい値Ethnという。
【0085】
更新しきい値Ethnの設定は、例えば、100個以上の被検体Mの検査を行った後に実施する。更新しきい値Ethnの設定方法を以下に例示する。ここで、初期しきい値Ethiを用いて検査した被検体Mの出力信号をEC、その最小値をECmin、最大値をECmax、平均値をECav、標準偏差をσCとする。
【0086】
一つの方法として、初期しきい値Ethiと最小値ECminとを比較し、以下のように更新しきい値Ethnを算出する。
【0087】
ECmin≦Ethiの場合には、更新しきい値Ethnを設定せず初期しきい値Ethiを用いる。
【0088】
ECmin>Ethiの場合には、ECminを更新しきい値Ethnとして設定することができる。
【0089】
また、平均値ECav及び標準偏差σCを用いて、更新しきい値EthnをECav−3σCまたはECav−4σCとすることができる。ECav−3σC、ECav−4σCのいずれを用いるかは出力信号ECの分布を考慮して判断し、ECav−3σCまたはECav−4σCが初期しきい値Ethi以下である場合には、更新しきい値Ethnを設定せず初期しきい値Ethiを用いる。
【0090】
また、最小値ECmin、最大値ECmax、平均値ECavの大小関係に基づいて、以下のように更新しきい値Ethnを設定することもできる。具体的には、最小値ECminと最大値ECmaxとの平均値(ECmin+ECmax)/2と平均値ECavとの比較を行い、場合分けをする。
【0091】
(ECmin+ECmax)/2≦ECavの場合:ECav−3σCを更新しきい値Ethnとして設定
(ECmin+ECmax)/2>ECavの場合:ECav−4σCを更新しきい値Ethnとして設定
ここで、ECav−3σCまたはECav−4σCが初期しきい値Ethi以下である場合には、更新しきい値Ethnを設定せず初期しきい値Ethiを用いる。
【0092】
更新しきい値Ethnは更新後に検査した被検体Mの検査データに基づいて繰り返し更新することができる。例えば、初期しきい値Ethi設定後に100個の被検体Mの検査を行い、更新しきい値Ethnを設定した後に、更に100個の被検体Mの検査を行い、その検査データに基づいて新しい更新しきい値Ethnを設定することもできる。また、200個の検査データすべてを用いて新しい更新しきい値Ethnを設定することもできる。
【0093】
(測定値の校正)
前述した初期オフセット値Eiと検査オフセット値Eikとを用いて測定値の校正を行うことができる。
【0094】
図5に示すように、ステップS101では、配置工程S6で被検体Mを配置する前に検査オフセット値Eikを測定し判断手段36に記憶させる。
【0095】
続くステップS102では、初期オフセット値Eiと検査オフセット値Eikとを比較、差分電圧ΔE=Ei−Eikを算出する。ステップS102以降は、良否判断工程S8に対応する。
【0096】
続くステップS103で被検体Mの検査を行いステップS104において測定値(E2−E1)を記憶し、ステップS105において記憶された測定値に差分電圧ΔEを加算する。
【0097】
そして、ステップS106において、差分電圧ΔEが加算された測定値をしきい値と比較して良否判断を行う。
【0098】
これにより、温度、湿度、磁気などの測定環境の変化により、オフセット電圧が変化した場合でも、その影響を排除した精度の高い測定を行うことができる。すなわち、検量機器(検査装置)としての校正(calibration)を毎回行った状態で適切で精度の高い測定を行うことができる。
【0099】
また、差分電圧ΔEが表面特性検査装置1の使用条件に基づいて設定された許容値を超えた場合には、外乱が大きい、装置の不具合など、検査状態が適切でなく、検査が適正に行われていない可能性があると判断することができる。この場合、検査状態判断工程S7において被検体Mの表面特性の検査を行わないようにすることができる。このとき、基準検出器22、検査検出器23の点検、測定環境の温度の確認、基準検体Sの点検や交換などを行うことができる。当該許容値は、検査が適正に行われる条件として設定し、例えば、初期オフセット値Eiの5%(ΔE=0.05Ei)と設定することができる。
【0100】
(被検体の配置、取出しの制御)
被検体Mの検査検出器23への配置及び検査検出器23からの取出しを測定値En(En=E2−E1)を用いて制御することができる。
被検体の配置、取出しの制御方法を
図6及び
図7を参照して説明する。なお、
図6は、初期値Ei0、出力値Enなどを説明のために例示し、模式的に示したもので、実際の出力値ではない。
【0101】
まず、
図7(A)に示すステップS201で検査検出器23に被検体Mを配置すると、
図6(A)に示すように出力値が被検体Mが配置されていないときの初期値Ei0=3.000から低下し始める。
【0102】
次にステップS202において、被検体Mが検査検出器23に配置されたことを検出し、出力値の記録を開始する時間のカウントを開始する基準(
図6(A)の測定待ち開始)のトリガーを検出する。
図6(A)では、出力値が1.500になったときを配置完了待ちトリガーEn1とし、ステップS203において待ち時間をカウントする。なお、配置完了待ちトリガーEn1となる出力値(1.500)は、次段落で説明する所定の待ち時間が経過すれば出力値が安定するように、逆算して設定する。
【0103】
出力値が安定するまでの所定の待ち時間(例えば、2〜3秒)が経過すると、ステップS204において測定を行い、安定した出力値En2(0.370)を検出し、記憶する。
【0104】
これにより、検査検出器23への被検体Mの配置状態、すなわち、被検体Mが適切な検査可能な状態に配置されたこと、を検出して被検体の表面特性の評価を開始することができるため、測定条件を統一し、安定した出力値En2を検出することができるので、作業者によるばらつきなどをなくすことができ、精度の高い測定を行うことができる。
【0105】
また、被検体Mの取出しの制御は以下のように行う。
【0106】
まず、
図7(B)に示すステップS301で検査検出器23から被検体Mを取り出すと、
図6(B)に示すように測定値が被検体Mが配置されているときの出力値En2から上昇し始める。
【0107】
次にステップS302において、被検体の取出し確認を行うための待ち時間のカウントを開始する基準(
図6(B)の完了待ち開始)の取り出し完了待ちトリガーEn3を検出する。
図6(B)では、測定値が2.500になったときを取り出し完了待ちトリガーEn3とし、ステップS303において待ち時間をカウントする。なお、取り出し完了待ちトリガーEn3となる出力値(2.500)は、次段落で説明する所定の待ち時間が経過すれば出力値が安定するように、逆算して設定する。
【0108】
測定値が初期値Ei0近傍まで回復するまでの所定の待ち時間(例えば、2〜3秒)が経過すると、ステップS304において出力値Ei1(3.000)を検出し、記憶する。このとき、記憶された出力値Ei1を検査オフセット値Eikとして用いることができる。
【0109】
これにより、被検体Mが取り出されたことを検出し、測定値が初期状態に戻った状態で次の測定を行うことができる。
【0110】
上述のような被検体Mの配置、取出しの制御を行う構成によれば、被検体Mが検査検出器23に対して適切に配置されたかどうかを検出するための位置センサなどを設ける必要がなく、装置を簡単な構成にすることができる。また、表面処理を行う表面処理装置から表面特性検査装置1に被検体Mを搬送する搬送手段(例えば、ベルトコンベア)や検査後の被検体Mを良品と不良品とに仕分ける選別手段などと組み合わせたシステムとすることにより、被検体Mの表面処理から検査までを一貫して行い、自動化可能なシステムとして構築することができる。
【0111】
(変更例)
検査状態判断工程S7を実施しない場合には、表面特性検査装置1は位相比較器34を省略することができる。例えば、レーザー変位計などの位置検出手段にて検査検出器23と被検体Mの位置関係の検出を行い、検査検出器23の軸と被検体Mの軸とのずれが所定の範囲内であるか否かを光電センサ(レーザ)等で判定する、などを行う構成とすることができる。また、位相比較器34、周波数調整器35または表示手段37は、判断手段36に内蔵させるなど一体的に設けることもできる。
【0112】
被検体Mの測定時の交流ブリッジ回路20からの出力が十分に大きい場合には、可変抵抗設定工程S2、周波数設定工程S3を省略することもできる。周波数設定工程S3を省略する場合には、表面特性検査装置1は周波数調整器35を省略することができる。
【0113】
[第1実施形態の効果]
本発明の表面特性検査装置1及び表面特性検査方法によれば、検査検出器23のコイル23bにより被検体Mに渦電流を励起し、交流ブリッジ回路20から出力された出力信号としきい値とを比較して、被検体Mの表面特性を評価することができる。これにより、簡単な回路構成で高精度の表面状態の検査が可能である。
基準検出器22において基準状態を検出するために、被検体Mと同一構造の基準検体Sを用いているため、温度、湿度、磁気などの検査環境の変化により出力値が変動しても、その影響は被検体Mと同等になる。これにより、温度、湿度、磁気などの検査環境の変化による出力値の変動をキャンセルすることができ、測定精度を向上させることができる。特に、基準検体Sとして表面処理を行っていない未処理品を用いると、被検体Mとの表面状態の差に基づいた出力を大きくすることができるので、更に測定精度を向上させることができるとともに、しきい値を設定しやすく、好ましい。
また、適切なしきい値を設定したり、オフセット値を用いて測定値を校正したりすることにより、更に測定精度を向上させることができる。
【0114】
[第2実施形態]
図8の表面特性検査装置2のように、交流ブリッジ回路20に検査検出器23を複数個備えた構成を採用することもできる。ここでは、3つの検査検出器23A、23B、23Cを備えた構成を示す。
【0115】
検査検出器23A、23B、23Cは、切換手段24を介してそれぞれが交流ブリッジ回路20に接続可能に構成されている。切換手段24は、評価装置30の判断手段36により、検査検出器23A、23B、23Cのうちのいずれか1つが、抵抗R1、抵抗R2及び基準検出器22とともに、交流ブリッジ回路20を構成するように切換える機能を有し、例えば、アナログスイッチ等のデジタル回路素子やトグルスイッチ等の機械式切換スイッチを用いることができる。
【0116】
切換手段24による検査検出器23A、23B、23Cの切換えは、以下に示すステップにより行われる。
図9(A)(B)(C)は、検査検出器23A→検査検出器23B→検査検出器23Cの順で切換えるステップを示すフローチャートであり、
図9(A)→(B)→(C)の順に実行される。
図10は、被検体Mの検査検出器23A、23B、23Cへの配置状態を示す説明図である。
【0117】
検査検出器23A、23B、23Cはそれぞれ
図3に示すステップS2〜S4よりあらかじめ調整されている。ここで、検査検出器23Aにおいて、ステップS2〜S4を行った後に、検査検出器23Bに切り換えて、ステップS2〜S4を行うというように、検査検出器毎に、ステップS2〜S4を繰り返して設定を行ってもよいし、各ステップを検査検出器23A、23B、23Cを切換えながら実行し、設定を行ってもよい。
【0118】
まず、初期状態は、検査検出器23Aがブリッジ回路を構成するように接続されているものとする。
【0119】
ステップS401では、搬送手段により被検体Mの搬送を開始する。まず、
図10(A)に示すように、被検体Mは検査検出器23Aに搬送される。
【0120】
続くステップS402では、検査検出器23Aに搬送された被検体Mが、検査検出器23Aに配置されているか否かを判断する。被検体Mが検査検出器23Aに配置されているか否かの判断は、
図7(A)のステップS202で示した配置完了待ちトリガーの検出により行う。
【0121】
ステップS402でYESと判断された場合には、被検体Mが検査検出器23Aに配置されているので、ステップS403に進み、被検体Mの検査を行い、出力値を記憶する。ここで、ステップS403は、
図7(A)のステップS204に対応する。出力値はどの検査検出器により検査したか関連付けられて記憶される。ここでは、出力値は検査検出器23Aにより検査されたという情報(検査検出器の識別情報)と関連付けられて記憶される。
【0122】
ステップS402でNOと判断された場合には、被検体Mが検査検出器23Aに配置されていないので、被検体Mが検査検出器23Aに配置されるまで待機する。
【0123】
ステップS403において、被検体Mの検査を行い、続くステップS404において、被検体Mの検査出力値が記憶されているか否かを判断する。
【0124】
ステップS404でYESと判断された場合には、被検体Mの検査出力値が記憶されているので、ステップS405に進む。
【0125】
ステップS404でNOと判断された場合には、被検体Mの検査出力値が記憶されていないので、ステップS403まで戻る。
【0126】
続くステップS405において、被検体Mが検査検出器23Aから取り出されたか否かを判断する。被検体が検査検出器23Aから取り出された否かの判断は、
図7(B)のステップS302で示した取り出し完了待ちトリガーの検出及びステップS303の待ち時間のカウントにより行う。
【0127】
ステップS405でYESと判断された場合には、被検体Mは検査検出器23Aから取り出されているので、ステップS406に進む。
【0128】
ステップS405でNOと判断された場合には、被検体Mが検査検出器23Aから取り出されていないので、被検体Mが検査検出器23Aから取り出されるまで待機する。
【0129】
ステップS406では、
図7(B)のステップS304で示すように、出力値を他の検査検出器23B、23Cと区別して、検査検出器23Aの出力値として記憶したか否かを判断する。
【0130】
ステップS406でYESと判断された場合には、検査検出器23Aの出力値が記憶されているので、ステップS406に進む。
【0131】
ステップS406でNOと判断された場合には、検査検出器23Aの出力値が記憶されていないので、検査検出器23Aの出力値が記憶されるまで待機する。
【0132】
ステップS407では、ブリッジ回路30を構成する検査検出器23を切換手段24により検査検出器23Aから検査検出器23Bに切り換える。
【0133】
上述のように、検査検出器23Aを検査検出器23Bに切換える条件は、被検体Mの検査が終了した後に、
・被検体Mが検査検出器23Aから取り出されたこと
・被検体Mが検査検出器23Aから取り出された後の出力値を記憶したこと
を充足することとなる。
【0134】
ここで、ステップS407までの処理を実行している間、または実行後に、
図10(B)に示すように新たな被検体Mが検査検出器23Bへ搬入される。
【0135】
ステップS408からステップS412では、切換えられた検査検出器23Bについて、ステップS402からステップS406と同様の処理を実行する。
【0136】
そして、ステップS412でYESと判断された場合には、被検体Mの検査が終了し、検査検出器23Bから取り出され、出力値が記憶されているので、ステップS413に進み、ブリッジ回路30を構成する検査検出器23を切換手段24により検査検出器23Bから検査検出器23Cに切り換える。
【0137】
なお、検査検出器23Bにより検査された被検体Mの出力値及び検査検出器23Bのみの出力値は、検査検出器23Bと関連付けられて記憶される。
【0138】
ステップS413までの処理を実行している間、または実行後に、
図10(C)に示すように新たな被検体Mが検査検出器23Cへ搬入される。
【0139】
ステップS414からステップS418では、切換えられた検査検出器23Cについて、ステップS402からステップS406と同様の処理を実行する。
【0140】
そして、ステップS418でYESと判断された場合には、被検体Mの検査が終了し、検査検出器23Cから取り出され、出力値が記憶されているので、ステップS419に進み、ブリッジ回路30を構成する検査検出器23を切換手段24により検査検出器23Cから検査検出器23Aに切り換える。
【0141】
なお、検査検出器23Cにより検査された被検体Mの出力値及び検査検出器23Cのみの出力値は、検査検出器23Cと関連付けられて記憶される。
【0142】
続けて被検体Mの検査を行う場合には、続いてステップS402以下の工程を繰り返し行えばよい。
【0143】
上述の表面特性検査装置2及び表面特性検査方法によれば、検査検出器23を複数個備え、検査検出器23を複数個備えており、次々に搬送される被検体Wを検査検出器23内に配置し、切換手段24により交流ブリッジ回路20を構成する検査検出器23を切換えて順次検査を行うことができるので、搬送から検査完了までに要する時間を短縮することができる。また、交流電源10、評価装置30を共用し、複数台の表面特性検査装置を用意する必要がないので、装置コストを低減することができる。基準検体Sを共用するため、基準検体Sのばらつきに起因する出力値の変動の影響を考慮する必要がない。
【0144】
また、検査検出器23A、23B、23Cの切換えを、各検査検出器からの出力に基づいて行うため、迅速かつ確実に切換えて効率的かつ正確な検査を行うことができる。
【0145】
そして、被検体Mの検査結果及び検査検出器23A、23B、23Cのみの出力値は、検査検出器23A、23B、23Cの識別情報と関連付けられて記憶されているため、
図5に示す測定値の校正や更新しきい値Ethnの設定を、検査検出器23A、23B、23Cそれぞれについて行うことができる。
【0146】
(変更例)
本実施形態では、検査検出器23を3個備えた構成を示したが、これに限定されるものではなく、必要数の検査検出器23を備えた構成を採用することができる。また、
図10では、検査検出器23A、23B、23Cは模式的に示してあり、離れて配置されているが、筐体などにより一体的に配置することなど各種形態を採用することができる。
【0147】
本実施形態では、検査検出器23A、23B、23Cそれぞれについて、
図3のステップS2〜S4の設定を行ったが、検査検出器23A、23B、23Cに機差がないことが保証されている場合には、いずれか1つについて設定を行い、その設定条件を共有して用いることもできる。
【0148】
図10には、被検体Mが検査検出器23A、23B、23Cに順次搬送されてくる形態を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、被検体Mが検査検出器23A、23B、23Cに同時に搬送されてくる構成も採用することができる。
【0149】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態の表面特性検査装置2及び表面特性検査方法によれば、第1実施形態の表面特性検査装置1及び表面特性検査方法が奏する効果に加え、以下の効果を奏することができる。
表面特性検査装置2は、検査検出器23を複数個備え、切換手段24により交流ブリッジ回路20を構成する検査検出器23を切換えて順次検査を行うことができるので、搬送から検査完了までに要する時間を短縮することができる。また、交流電源10、評価装置30を共用し、複数台の表面特性検査装置を用意する必要がないので、装置コストを低減することができる。
また、検査検出器23A、23B、23Cの切換えを、各検査検出器からの出力に基づいて行うため、検査検出器23を迅速かつ確実に切換えて、効率的かつ正確な検査を行うことができる。